■『仮面ライダーストロンガー』感想まとめ7■


“チャージアップ!!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーストロンガー』 感想の、まとめ7(31〜35話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第31話「ストロンガー大改造!!」◆ (監督:内田一作 脚本:伊上勝)
 「ユリ子、許してくれ……俺の力が至らなかった為に、おまえを死なせてしまった」
 東映ヒーロー名物・脱法墓碑の前で、涙を流し地面を拳で叩く茂は格好いいのですが、
 「……茂、そんなにいつまでも悲しんでいちゃ、亡くなったユリ子は、決して喜びゃしない」
 「……わかっています。だが、決してお前の死は無駄にはさせないぞ」
 「それでこそお前は、仮面ライダーストロンガーだ」
 物凄い勢いで悲しみを上書きしていくヒーロー時空。
 茂は改造魔人の最後の一人を倒すまでここには来ないと墓前に誓いを立てる。
 「ユリ子…いや、電波人間タックル……安らかに眠ってくれ」
 ここで「タックル」と呼び直すのは、仮面を外した岬ユリ子を葬るのではなく、全ての戦いが終わるまで、 戦友である電波人間タックルと共にある、という想いが感じられて、仮面のヒーローとして格好いい所。  茂は自分を見張るドクロ忍者部隊を敢えて誘い出し、「ほねー!」「ほねっ!」と騒ぐ戦闘員を撃退。
 「戦闘員ども……間抜けが。あれほど言っておいたのに、おい! 目を覚ませ」
 気絶した戦闘員を蹴り起こしに来る幹部は初めて見たかもしれません(笑)
 ところがその中の一人は、
 「ご存じ、城茂!」
 倒れた戦闘員の扮装で不意を突いてドクロに組み付いた茂は、
 「ドクロ少佐、貴様、タックルの恨みを晴らしてやる!」
 と、マウントから八つ当たり気味の腹パンチを浴びせるが、突如として崖の上にも現れたドクロから機関砲の攻撃を浴びせられ、 ストロンガーに変身。
 ジャンプの度に奇怪な笑い声が入る演出や、多彩な能力など、小物めいていたドクロ少佐が、思いがけず面白いキャラに。
 更にドクロ少佐はドクロ分隊の術により、全身をバラバラにしてストロンガーに襲いかかる!
 「だからターンXっていうのか……四方へ飛ぶ……」
 「だからさ……!」
 まさかのオールレンジ攻撃に追い詰められるストロンガーだが、トドメの直前、シャドウに乗せられた岩石男爵が割って入り、 ダメージを受けつつも海中へと逃亡。
 一応、知力の数値が二桁(最大値100)ありそうなデルザー軍団の中では、これまでで最も単細胞に見える男爵は、 力強くドクロの妨害を宣言すると、岩隠れで帰還。
 この時、喋る男爵の足下で岩の破片が微妙に揺れ動いているのと、再び男爵を収納して丸い岩に戻る映像が面白いのですが、 会話する男爵とドクロの視線が微妙に合っていないので、男爵と岩は合成なのかなぁ……。
 また、男爵岩が崖を跳ねるように登っていくのはハイジャンプ飛び移りと同じ逆回しでしょうが、高さがあるのでなかなかの迫力かつ、 垂直に近い崖の上から思いっきり岩のはりぼてを投げ落とした?のかと思うと、けっこう凄い。
 場面変わって、カブトロー格好いいーと子供達がバイクを囲むシーンが挟まれるのですが、特に今回のゲストキャラというわけではなく、 視聴者出演企画とかでしょうか? そしてしれっと、その格好いいバイクは俺のもの的な発言をする藤兵衛(笑)
 何とか海岸の岩にへばりついていた茂は岩石男爵とその配下の襲撃を受け、男爵はスフィンクスの血を引いていると自称。 変身したストロンガーが立っている岩場が思いっきり波に洗われており、高い波を背景に、気合いの入った映像が続きます。
 (ドクロ少佐に受けた傷が痛む……恐らく、奴にも俺の力は通じるかどうか。しかし、やらねばならぬのだ)
 だが必殺の電キックは反射され、「岩石男爵、勝負は預けたぞ!」とストロンガーはヒーロー逃亡。 なんとか通りすがりのワゴンに身を潜めた茂だがそのまま気を失ってしまい、目を覚ますと、 手術台に縛り付けられている事に気付く。
 車に乗り込んで気絶していた不審者を調べて改造人間である事に気付いた男の名は、マサキ・ヨウイチロウ。 元ブラックサタンの科学者であり、組織から逃げ出して超電子の研究をしていた科学者であった。
 「電気のエネルギーを1とするなら、超電子のエネルギーはその100倍だ。ただし電気と違って長時間使えない。 せいぜい1分だが、超電子ダイナモの力は素晴らしい」
 すちゃっと、ダイナモを取り出す博士。
 「ただしその改造手術の成功の確率は、10分の1」
 「10分の1に賭けます!」
 「よし、すぐにとりかかろう」
 いっけん善意の協力者のように描かれているのですが、 気絶していた茂を手術台に拘束した上で謎のカプセルに閉じ込めている時点で、 最初からやる気満々です。
 わわわ私の超電子ダイナモを試せる素材がネギ背負って飛び込んできたぁぁぁぁぁ!!
 みたいな。
 そもそもこの博士、「元ブラックサタンの科学者」「逃げ出し、戦う為に超電子の研究をしている」と供述しているのですが、 いったい何から逃げていたのか。
 「ブラックサタンから逃げた」とは一言も口にしていないので、ブラックサタンを付け狙うストロンガーから逃げた、或いは、 ブラックサタンを乗っ取ったデルザー軍団から逃げた、のではないか。
 「超電子ダイナモの力は素晴らしい」の言い回しには、全く倫理の重みが感じられませんでしたし(笑)
 マサキ博士(苗字も良くない)に対する疑問は拭い切れないものの、改造電気人間から改造超電子人間へと、強化手術を受ける茂。
 副作用で知力が下がらないか、凄く心配です。
 「超電子ダイナモの使用タイムは1分だけ。それを1秒でもオーバーすれば、君は自爆する」
 念を押した博士は、手術直後で体調が万全ではない茂の代わりに藤兵衛の元に向かいその無事を知らせるが、 藤兵衛を見張っていたドクロ少佐を研究所に呼び込んでしまい、ドクロ火炎で無残に焼死。
 「罪もない、マサキ博士まで……!」
 いや、どうだろう(笑)
 変身するもドクロに苦戦したストロンガーは、博士の手術を信じ、超電子ダイナモを起動。
 「チャージアップ!」
 胸のSマークが激しく回転し、角が銀色になって胸部にも白いラインが入る超電子ストロンガー。通常モードが、 アメフトのプロテクターを意識したと思われるマッチョデザインだったのに対し、体型は変わらないのに色彩でしゅっとスマートになるのは面白い。 ただ当時の素材表現の限界か、角の銀色が妙に安っぽいのが勿体ない所です(^^;
 「超電子ドリルキック!」
 その放った回転キックはドクロ少佐の頭を一撃で吹っ飛ばし、まさかの瞬殺。そして発生する、 ちょっと頭おかしいレベルのかつてない大爆発。
 「恐るべし……超電子……」
 主人公のパワーアップ編という事で随所に気合いの入った映像演出で展開し、 この流れでパワーアップがどれだけヒロイックに描かれるのかと思ったら、 半信半疑のチャージアップというのは予想外で肩すかし気味でしたが、ドリルキックの瞬殺から大爆発は衝撃的。 さすがに規模は違いますが、勢い的には、後のライジングマイティキック(『仮面ライダークウガ』)を思い出します(笑)
 次回、仲間割れの進むデルザー軍団、まさかの休戦協定持ちかけ(笑)

◆第32話「必殺!超電三段キック!!」◆ (監督:内田一作 脚本:伊上勝)
 前回書き忘れましたが

 超電子ダイナモ

 という語感のパワーは、《仮面ライダー》史上でも5本の指に入る傑作だと思います。
 OPにチャージアップの絵が入り、遂にナレーションも新録に!
 「世界征服を狙う悪の組織、デルザー軍団を倒すべく、敢然と立ち上がった!」ストロンガーの次なる敵は、 自在に巨大な岩の塊へと変身する、岩石男爵。子供達を人質にされ一方的に攻撃される茂だが、段々イライラしてきて反撃し、 いよいよ人質を無視して変身するストロンガーに、つい正々堂々と立ち向かってしまう男爵(笑)
 ストロンガーが戦闘中に思い出したかのように子供達を救出すると男爵は撤退。 ストロンガーにあっさりやられた部下を特訓している所にデルザー軍団の一員、狼長官が姿を見せ、 シャドウの足下をすくう為に両者は密かに手を結ぶ。
 その頃、何者かが自分を追い落とす策を練っている事に気付いたシャドウは、茂と接触していた。
 「シャドウを蹴落として、取って代わる謎の魔人が出たのか。そいつは面白いな」
 「俺には面白くはない」
 自分が適当に引っかき回すのは大好きだけど、他人にやられると不愉快極まりない、とわかりやすい(笑)
 「それで休戦の申し込みか。……断る!」
 そこへ謎の敵の砲撃が火花を吹き、どさくさに紛れてシャドウは藤兵衛を拉致。敵の姿を追った茂は、狼組の戦闘員に襲われる。
 狼組の黄色いお面は最初に地面に置いてあったのでカボチャの妖怪かと思ったのですが、満月の意匠でしょうか。
 ストロンガーの前に現れた狼長官は抱き込みを図り、協力関係にある岩石男爵が藤兵衛を連れ戻してくるが、 それを見ていたシャドウがそこに現れ、ストロンガーを間に挟んでのそれぞれの策謀が全く機能していない為、 ちっとも面白くなりません(^^; 男爵が藤兵衛の身代わりに泥人形を置いてくるシーンも妙に尺を採るのですが、 シャドウでなくても騙されない代物なので見ていて困惑。
 揉めるデルザー軍団を尻目に茂は藤兵衛を救出すると、追いかけてきた男爵と戦い、チャージアップ。
 すかさず放たれた超電子ドリルキックは今回も一撃の元に男爵の首を刈り取り、 それで収まらないストロンガーは残った体に超電三段キックを打ち込む、という文字通りの死体蹴りを決め、 岩石男爵は木っ端微塵に原子の塵へと還るのであった。
 「恐るべし超電子の威力……」
 改造魔人デルザー軍団、分子一つ残さず、滅すべし!
 「やはりストロンガーめパワーアップしていたのか」
 それを見ていたシャドウは、ストロンガーと狼長官をぶつけようと画策する……で、つづく。
 エンディング映像は完全新規で、今の所本編では秒殺キルマシーンの超電子ストロンガーの戦闘をたっぷり見せるという趣向。 歌も何度か使われた挿入歌に変更……敵は相変わらずブラックサタンですが(笑)

◆第33話「ストロンガー 満月に死す!?」◆ (監督:山田稔 脚本:村山庄三)
 ストロンガーへの対抗手段を得ようと父祖・狼男の肖像画に祈った狼長官は、 満月に子供の命を捧げればプラズマエネルギーが最高に達するからやってみな、とアドバイスを受け、次々と子供達を誘拐。
 恐らく山田風太郎的な忍法帖フォーマットなのでしょうが、ドクター・ケイトの毒、ドクロ少佐の火炎、などと同様、 狼長官はプラズマを与えられ、デルザー軍団は何となく属性分け。
 その頃、今日もストロンガー嗅覚で怪しい気配の方角へ向かっていた茂は、路上駐車された藤兵衛のジープを発見。その藤兵衛は、 怪しげな振りとは全く関係なく、歯医者で治療を受けていた。が、その歯医者の正体が狼長官で、 待合室の子供達ともども「罠にかかったな」と襲われる藤兵衛。
 前回は裏でこそこそ動き回る策士系キャラとして登場した狼ですが、冒頭から、何が罠なのかさっぱりわかりません(笑)
 子供達を守って戦う藤兵衛に投げ飛ばされる狼組(弱い……)だが、更にそこに茂が駆けつけてストロンガー変身。 長官は入れ歯を投げつけるという予想外の攻撃から、満月プラズマ光線を放つが、ストロンガーに効かず撤退。
 ……普通に電キックで倒せそうなのですが、大丈夫か、狼長官。
 さらわれた子供達の行方を二手に分かれて探す茂と藤兵衛だが、藤兵衛が狼組に襲われ、 悲鳴を聞いた茂が駆けつけるも罠にはまって地割れに飲み込まれ、地下施設でカプセルの中に閉じ込められてしまう。
 藤兵衛のヒロイン力が凄い勢いで上昇していきます。
 「地獄へゆく前に、天国の夢でも見るが良い。ははははははは」
 ストロンガーは催眠ガスを浴びて眠ってしまい…………ええともう、儀式、必要ないのでは。
 だがそこへやってくる、デルザー軍団の隊長ブランク。
 「ストロンガー、俺が殺す」
 乱入してくるなり狼組の戦闘員を射殺しており、デルザー軍団はもはや、仲悪いを通り越して、メンバーが自由すぎます。 シャドウだけが特別駄目なわけではないのかもしれない。
 「なるほど。だが、ブランク。おまえまさか、眠っている敵を殺すほど卑怯じゃあるまい」
 「なんだと?!」
 「そんな事をしてみろ。おまえの先祖のフランケンシュタイン様が泣くぞ」
 正面から刃向かっては分が悪いと見たのかブランクを丸め込む狼だが、一度は頷いたブランクはストロンガーを見張ると言ってその場に残り、 狼が儀式で離れている間にやっぱりカプセルを解除してストロンガーに銃を向ける。
 デルザー軍団がこだわりを持つ父祖の魔人を引き合いに出して説得材料にした所までは特性が出ていて良かったのですが、 結局その後あっさり無視してしまうので、色々と台無し(^^;
 案の定寝たフリだったストロンガーは銃撃をかわすといきなりチャージアップし、ブランクを適当に殴ると急ぎ儀式の祭壇へ。 満月の力を受けてパワーアップした狼長官はエレクトロファイヤーも電キックも跳ね返し、 超電スクリューキックにも超電三段キックにも耐えるが、月が雲に隠れてプラズマエネルギーが弱まった所に超電稲妻キックを受けて大爆死するのであった。
 前2話、なるべくデルザー軍団には見せない切り札扱いという使い方が格好良かった超電子モードですが、 あまりアクション無しというわけにもいかなかったのか、今回は前座とメインイベントで2回使用。 しかもドクロと岩石を瞬殺した必殺キックが効かず、最後は天候の助けでなんとか撃破する、 というやや冴えない描写になってしまいました(^^;
 狼長官の強化も、満月の夜に生け贄を捧げる→プラズマチャージアップ! という話だった筈が、 満月の力でプラズマチャージアップ!→お礼として生け贄を捧げる、と途中で因果関係がひっくり返ってしまい、 子供を大量に集めていた意味が霧消。
 超電子モードを用いてもやはりデルザー軍団は強敵、という力関係自体は良いのですが、 それにしては狼をあまりにも前半で弱く見せすぎてしまい、ブランクの行動原理・超電子モードの使い方・狼長官の見せ方、 と雑の3点盛りでちぐはぐになりすぎました(^^;
 次回、ヘビ女のデザインは格好いいけど、既に存在感のない隊長ブランクの運命や如何に?!

◆第34話「ヘビ女の吸血地獄!」◆ (監督:山田稔 脚本:鈴木生朗)
 とにかく大量にヘビがうねうねしており、苦手な人には嫌そうなエピソード(^^;
 「ストロンガーめ、意外としぶといというのに、どいつもこいつも勝手な事をしおって、なかなか思うようにいかん」
 その基地に鏡はないのか。
 ストロンガーを餌にする事で身内の対立を煽った挙げ句に、足の引っ張り合いで各個撃破されている現状に不満たらたらのシャドウですが、 どう見てもこの内部崩壊はシャドウの周到な誘導であり、もしかして、FBIのエージェントなのでは。
 最終決戦直前、意図的にストロンガーに敗れる事で真の黒幕の正体を暴き、
 「しゃ、シャドウ……!」
 「フッ、これでいいのだストロンガー……デルザー軍団を内部から破滅に導くべく、俺は人間を捨てたのだ。さあ行け、今なら、 奴は無防備……! 俺の代わりに、お前が奴を倒すのだ……ここでおまえに倒されるのも、全ては、占い……どお……り」
 「シャドぉぉぉぉぉぉ!!」
 みたいな。
 真相はさておき、そんなシャドウの招聘に応じて、ヘビ女が登場。シャドウの事を「シャドウ様」と呼んでおり、 直属の部下のようにも見えますが、詳細は不明。改造魔人の一員だとすると、名前が適当すぎて酷いですが(^^;
 山道を走っていた茂が助けを求める少女の家に赴くと、母と娘がヘビ人間で襲われる、というのは何だか昔話的な怖さ。 母子を気絶させた茂がヘビ女のシルエットを追うと、その前に隊長ブランクと戦闘員が現れるも、茂はストロンガーとなってこれを撃退。
 親子の元に戻って額の赤い鱗を剥がすと母娘は元に戻るが、表に出ると、カブトローが無くなっているという予想外のピンチに(笑)
 レ ッ カ ー 移 動 さ れ た ?!
 その頃、路上でカブトローを発見した藤兵衛は茂を探し回るが、ヘビ女とヘビ戦闘員に襲われ、 割と巻き込まれた子供達と一緒にさらわれるという、今回も安定のヒロイン力。
 半端に変身しない事でむしろユリ子よりヒロイン力が高まるという予想外の事態に、 わたくし少々困惑しております。
 カブトローと誘拐の痕跡を発見した茂は洞穴に辿り着くと藤兵衛達を発見するが、ヘビ人間にされていた藤兵衛達に囲まれてしまう。 緑の化粧をした虚ろな表情の集団に迫られるというのは凄く嫌なシーンで、今回そこかしこの不気味な雰囲気は面白く見せているのですが、 対処法がわかっているのであっさり解決(笑)
 ヘビ女は逃走し、追跡するストロンガーはブランク組の待ち伏せを受けて激突。前回、 狼長官とのクライマックスバトルにおいてやたらキラキラしていたストロンガーの角、夜間フィルター対策かと思ったら、 今回もやたらキラキラしています。
 隊長ブランクの岩石落としがクリティカルヒットしたストロンガーは、更にマウント攻撃とタックルを受けてピンチに陥るが、 反撃に転じてチャージアップ。超電急降下パンチでブランクを地面に埋め込み、引っこ抜くと大爆死。哀れ隊長ブランクは、 一度も作戦の主導権を握る事なく、荒野に散るのであった。……やはり、「隊長」が良くなかったのか。
 「俺には、今に何か途方も無く恐ろしい事が起こるような、不吉な予感がする」
 ヘビ女が逃走した方向にそびえるキガン山を見つめ、呟く茂。そして……
 「実はな、近いうちにこの日本で、世界中がひっくり返るような事件が始まる」
 「デルザー軍団の手で?」
 「無論だ。世界が俺たちの物になる日も、遠くは無いぞ」
 アジト内部では、シャドウとヘビ女が何やらほくそ笑むのであった。
 次回、あの男が、帰ってくる!

◆第35話「帰って来た男! その名はV3!!」◆ (監督:内田一作 脚本:鈴木生朗)
 エジプトから神戸港に一隻の貨物船が到着し、その中に積み込まれていたエジプト風の棺の中から、改造魔人マシーン大元帥が登場。
 マシーン大元帥は人体模型をベースにしたようなデザインで、左半身は赤みがかって肉っぽく、右半身は青い装甲、 というそこはかとなくキカイダー配色。声が市川治という事もあり、来日魔人の一番手として十分な格好良さですが、 今作の市川ボイス怪人は大抵声倒れに終わるので、果たしてどうなる?!(笑)
 一方、キガン山の周辺を探っていた茂と藤兵衛だが、開始30秒で、またもヘビに洗脳されてしまう立花藤兵衛(ヒロイン)。
 ジープが崖から落ちるのを防ごうとした茂は派手に転落し、負傷した所をヘビ女に猛毒を流し込まれ、更に電気パワーを奪われてしまう。 正気を取り戻し、瀕死の茂を看病しながら、その横で祈る立花藤兵衛(ヒロイン)。
 血の気の引いた顔で番組史上かつてないピンチに陥る茂だったが、カブトローを使って緊急充電し、割と簡単に復活(笑)
 折角、いやらしい感じに立ち回る実力者、といった雰囲気の出たヘビ女の致命的な攻撃だったのに、 ストロンガーが例の如く力尽くでねじ伏せてしまったのはちょっと残念(^^;
 なおストロンガーに変身した途端に、猛毒の件は忘却の彼方に蹴り飛ばされました。
 復活したストロンガーにヘビ女と戦闘員が襲いかかっている頃、マシーン大元帥を追う黒ずくめの青年もまた、 マシーン戦闘員の襲撃を受けていた。その青年の正体は誰あろう――
 「行くぞ! 変身――ぶいすりゃぁぁ!!」
 仮面ライダーV3・風見志郎!
 次回予告からサブタイトルまでV3尽くしで、幾らナレーションで「謎の黒ずくめの青年」扱いされても驚きは全く無いのですが、 ここで『V3』主題歌インストでマシーン大元帥との戦いが始まると、ついノせられて盛り上がってしまいます(笑)
 V3キックを受けた大元帥は、備えれば憂い無し、常に準備してある密入国用の棺桶に入って脱出し、 空を飛んでいく棺桶が超シュール。
 一方ストロンガーは、ヘビ女の切り札であるマント攻撃を受けて大ピンチ。
 「さあいよいよストロンガーの最期だ、覚悟おし。ひーひっひっひ」
 「待てぇ!」
 「なにものだぁ?!」
 走行中のバイクに乗ったまま変身する荒技を決め、高い所に現れるV3!
 「V3?! どうして日本へ?!」
 「オヤジさんっ、しばらく。日本に危機が迫った時、必ず帰ってくると言いましたよ」
 「おぅ。ストロンガーの力になってやってくれ!」
 「わかりました!」
 なんだかんだここで、ヒーローを繋ぐ男、という藤兵衛の立ち位置は格好いい。
 画面手前で風呂敷かぶってピクピクしていたストロンガーはV3に助けられると再びヘビ女に挑み、V3の前にはゼネラル・シャドウが立ちはだかる。
 わざわざ助けに来るし、やはり「特別な関係」なのか……。
 チャージアップしたストロンガーは超電大車輪キックでヘビ女を撃破し、シャドウは撤退。難敵を退けた茂は、先輩ヒーローにご挨拶。
 「あいつを倒せたのは仮面ライダーV3、風見先輩のお陰です」
 「はははは、なにを言うんだ。君のパワーが、あのヘビ女を倒したんだ。君の腕前は、噂通り立派だよ」
 「いやぁ、僕の腕なんかまだまだですよ。先輩、よろしくお願いします」
 さっそく先輩を持ち上げる茂は、そういえば元アメフト部なので、体育会系の処世術が染みついています。
 (ん〜……やはり俺が育ててきた仮面ライダーの仲間だ。初めて顔を合わせたというのに、もうお互いの気持ちが通じ合ってる)
 そして藤兵衛は折角格好良かったのに、「ワシが育てた」発言で、一瞬で台無し(笑)
 風見はエジプトからマシーン大元帥を追ってきた事を告げ、日本を覆い始める不穏な気配。
 「ヘビ女……俺の片腕だった女を……。おのれ、ストロンガーめ!」
 珍しく感情露わに怒りを見せるシャドウの元にはマシーン大元帥がその姿を見せ、 物語は風雲急を告げるクライマックスへ――世界中から日本に集まる改造魔人、そしてそれを追ってやってくる仮面ライダー達、次回、 更にヒートアップ!
 形としては客演によるブースト構造なのですが、主人公の強さがある一線に到達してしまった所で、 敵との関係における“どちらがより強いのか”を繰り返すのではなく、 先輩ヒーローの大量投入により戦力ヒエラルキーをまっさらにしてしまう事で、純粋に活劇に視線を誘導する、 という凄まじい力技。
 また、50年代の時代劇映画を思わせるスターシステム的な作劇だった今作が、そのクライマックスでオールスターキャストに至るのは、 ある種の歴史的必然なのかもしれません。

→〔その8へ続く〕

(2016年6月3日)
(2017年3月16日 改訂)
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