■『仮面ライダーストロンガー』感想まとめ6■


“ストロンガー 電・キィック!!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーストロンガー』 感想の、まとめ6(26〜30話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔まとめ8〕 ・ 〔総括〕


◆第26話「見た!! 大首領の正体!!」◆ (監督:山崎大助 脚本:鈴木生朗)
 あ、引き続き、火山が映った……のはいいのですが、ここに来て、150%支離滅裂で呆然とするエピソード。
 「あのペンダントには、ブラックサタンの最高機密が隠されている。一刻も早く取り返さぬと、ブラックサタンが危ない」
 そんな物を奇械人に預けるという選択肢が、既に裏目の大首領の命を受け、 遠隔ハンドでこっそりペンダントを奪い返そうとするライオンだが、茂に気付かれてしまい、戦闘員を交えた戦いに。段々、 藤兵衛とユリ子(タックル)の連携が形になってきているのが笑えます。一方、茂とタックルの連携率が上がらないのは涙が出ます。
 ライオンと戦闘員を振り切った茂達の前に巨大スペードのKが立ちふさがり、「シャドウ!」と警戒しながら後ろに下がると、 そこに背中を向けて決めポーズで現れるシャドウ(笑)
 下手すると後頭部に思いっきり電パンチされる所でしたが、体を張ったギャグが成功して深く満足したシャドウは、 ペンダントはブラックサタンの謎を解く鍵だと告げて姿を消す。憎きブラックサタンを追い詰めるべく、 再びライオンのアジト(どうやら、火山の地下らしい)に向かった茂達は、再生奇械人軍団に襲われて外へ。 蹴散らすとその場には何故か一匹のサタン虫だけが残るが、そこへライオンが姿を見せる。
 ストロンガーは新技エレクトロキック(エレクトロファイヤーと同じモーションで、 遠距離攻撃だと思って飛び込んできた敵にカウンター気味に浴びせるトリック技)でライオンを撃退するが、 アジトへ入るとまたライオン。
 奇械人が適当に出たり逃げたりするのはいつもの事ではありますが、それにしても今回は酷すぎます(^^;  ひたすら移動と戦闘を繰り返しているだけなので面白みも薄いですし、その上で藤兵衛のギャグシーンでやたら尺を使ったり、 一応ブラックサタンとの最終決戦の筈なのに、ぐっちゃぐっちゃ。
 アジト内部で取っ組み合いの末ライオンが強引にペンダントを基地のシンボルにはめると、画面がぐにゃりと歪み、 ライオンは姿を消し、ストロンガーは何もない空間に攻撃を繰り返すという謎の演出。バリアで閉じ込められ、 変身の解けてしまった茂が、ペンダントが発する光に気付いてそれを謎めいた機械にかざすと、いきなり外へ。
 茂に「だが、この放射線に俺の体が耐えられるかどうか……」という台詞があるのですが話の前後が全く繋がっておらず、 どうも大事な所が色々カットされているような気がするのですが、その割には露骨な尺稼ぎを感じるレベルで延々と戦闘が繰り返され、 ひねった首が戻りません(^^;
 山崎監督といえば第11話(脚本:伊上勝)が大事故だったものの、その後は今作基準ではそこまで破滅的なものは撮っていないのですが、 今回は映像も物語も全てが混沌。脚本の内容があまりに無くて演出で誤魔化している内にあらぬ方向へ行ってしまった感じもありますが、 説明不足の所を幻惑して逃げたら、物凄くスッキリしない出来上がりになってしまいました。
 茂は戦闘員に囲まれ、ライオン、まさかの被り物投げ。
 しかし、一発芸なのに出会い頭に使って跳ね返される、という非常に駄目な使い方(笑) それは、最後の、切り札でしょう!
 本日3度目ぐらいの変身をしたストロンガーは、デッドライオンのリモコンハンドを追って洞穴の中へと入り込み、 ペンダントを持つと壁をすり抜け、遂に大首領の元へと辿り着く。
 「はははははは! 私は幻にすぎん。幻を掴めるかな?」
 「これを受けてみろ!」
 ペンダントを投げると、謎の機械装置に張り付いているサタン虫。
 「サタン虫……? 大首領の正体はサタン虫だったのか」
 ストロンガーがサタン虫をチョップで吹き飛ばすと、その背後にドクロの顔をした巨大なクモが姿を見せる。
 「おのれストロンガー、よくも私の姿を見たな」
 大首領の正体、それは巨大なサタン虫だったのだ……!
 全身を紫色の布ですっぽり包み、人間の胴体にあたる部分に大きなドクロの顔がついてその左右にクモの足が伸びている、 という大首領はなかなかグロテスクでインパクトはあるのですが、 どうしても頭からゴミ袋を被った人間に見えて凄く間抜け(^^;
 奇械人や戦闘員をサタン虫で操っていたというブラックサタン大首領の、サタン虫による全世界の支配を止めるべく立ち向かうストロンガー。 画面手前で、謎の機械装置が妙に強調されるのですが、意味はよくわかりません。
 「いかん、神経がやられた……!」
 とにかく今回、半分ぐらいの台詞に前後の脈絡がないのですが、既に過去形のストロンガーは何もない空間を攻撃し始め、 その間に大首領クモは外へ。
 「そうか、そうだったのか……奴等がもう、ここまで乗り込んできていたとは」
 だが、別のアジトへ入り込んだ大首領は謎の呟きと共に再び外へ出た所で、回復したらしいストロンガーと遭遇。 戦いは全く盛り上がらないまま、ストロンガーのフェイントに引っかかった大首領は、 電パンチから電キックのコンボを受けて虚しく弾け飛ぶのであった。
 大首領のダメージに連動してアジトの謎の機械装置がスパークし、最後は一緒に大爆発するのですが、本体だったのか何だったのか、 劇中における取っかかりがあやふやすぎる為、妄想による解釈にも限界を感じます(^^; 筋の通った説明をつけようとすると、 一体いつから幻覚だったのか?というサイコサスペンスになりそう。
 とりあえず、最強の奇械人(夢想)がクモだったのは、大首領の身内贔屓だった事はわかりました(笑)
 ストロンガーは高い所で勝利のポーズを決め、亡き友・沼田五郎に一切言及の無いまま、 ブラックサタン壊滅を祝して乾杯する茂・ユリ子・藤兵衛。だが茂は、大首領の最後の様子に、言いしれぬ不安を覚えていた……。
 そして――
 「クーデターは見事に成功した。ブラックサタンの乗っ取りは終わった。これからいよいよ、我らがこの地球を支配するのだ」
 白マント姿のシャドウの言葉に続き、謎の怪人達が、深い闇の中から姿を見せようとしていた…………………………あれ?  ライオンは?
 あまりに酷すぎてブラックサタンが壊滅したという事を受け入れにくいのですが、これ、 3話ぐらい後に組織復活の儀式で茂の血を舐めた大首領が百本足大首領になって復活するパターンではないのか……?!
 困惑を通り越して混乱してきたので、手元にある『仮面ライダーVS怪人軍団』(実業之日本社)という、 初代〜『スーパー1』までのストーリーがそれなりに紹介されている児童書(だいぶ昔に友人にネタ的に貰ってそのまま未読だった) にどう書いてあるのか確認してみたのですが、

 「ストロンガーは、そのいきおいでデッドライオンをも電キックでたおした。」

 ええっ?!
 混乱が増大(笑)
 ――次回、遂にその本性を現すゼネラル・シャドウと、ストロンガーの前に現れる新たな敵で急展開!
 (※デッドライオンは、本来なら電キックで爆死し、残されたデッドハンドを追いかけてストロンガーが大首領の元へ辿り着く、 という流れだったのがシーンカットの結果、生死不明になってしまったとの事(^^; この設定を汲み、 後に漫画『仮面ライダーSPIRITS』(村枝賢一)では本編で生存したという扱いで登場していたりするそうです。)

◆第27話「改造魔人! デルザー軍団現る!!」◆ (監督:内田一作 脚本:鈴木生朗)
 OPに、柴田秀勝、市川治、安原義人、曽我町子、の名前が並ぶ豪華キャスティング。
 ナレーション「闇の中から現れた、不気味な謎の一団があった。これこそ、ゼネラル・シャドウが、 故郷である遠い魔の国から呼び寄せた、恐るべき改造魔人の仲間、デルザー軍団なのである」
 前回ブラックサタンを支配下に収めた謎の軍団の正体は、冒頭ナレーションであっさり解説され、 その背景は「遠い魔の国から来た改造魔人」とざっくりファンタジー。
 そして胸騒ぎを感じる茂は、不穏な気配を探っていた。
 (大首領は死に際に、自分よりもっと恐ろしい奴らがやってくると言っていた)
 …………言ったっけ……?(^^;
 後のシーンで、ユリ子にも、
 「茂は、大首領の最後の言葉をとっても気にしてたわ。この俺を倒しても、もっと恐ろしい奴等がついそこまで来てるって」
 という台詞があるのですが、聞いた記憶が無いんですが(笑)
 前回の第26話は、ここまでの今作でも屈指の謎編集回でしたが、そんな大事な台詞までカットされていたのか……?!(^^;
 怪しい一団を追っていた茂は、(物音はドアの中へ消えた……)と思いっきりドアに体当たりを入れると崖に直通で、 物凄い勢いで壁面に叩きつけられながら落下し、脱力状態で川流れと、いきなり面白い事に……だがそれは、恐るべきデルザー軍団による、 主人公を主人公と思わぬ暴虐の、始まりに過ぎなかったのだ……!
 その頃、まんまとブラックサタンの地盤を奪い取ったデルザー軍団は、今後の方針を協議する為に集まっていた。デルザー軍団は、 幹部−怪人ではなく、それぞれが一騎当千(多分)の強者揃い、という構成。「俺たちをなんだと思っておる。遠い昔、 さんざん人間どもを震え上がらせた、魔人の子孫だぞ」との事ですが、魔人そのものではなく「子孫」という辺りに、 一抹の不安が漂います。
 ブラックサタン乗っ取りを成功させたシャドウの功績を評価しつつも、さっそく始まる身内の主導権争い。……率直に、 ブラックサタンを踏み台にした程度で大きな顔をするな、という意見には素直に頷けて困ります(笑)  ブラックサタンが最初から最後まであまりに低空飛行だった為、デルザー軍団も、 強大な悪の組織を手のひらで転がしたより凶悪でずる賢い悪の集団、というより、 残念すぎる悪の組織が瓦解しかけた所に現れた火事場泥棒、というイメージが(^^;
 結局、シャドウの提案でストロンガーを倒した者がリーダーになる事となり、一番槍として出陣する鋼鉄参謀は、 奴隷集めとストロンガーの誘き寄せを兼ねて工事現場を襲撃。
 「遠い魔の国から、世界を征服する為にやってきたデルザー軍団の一人、鋼鉄参謀だ」
 巨大な角が特徴的な兜に、上半身を重厚な金属鎧で固め、鉄球を振り回す怪力の持ち主である鋼鉄参謀は、 デザインも声(市川治)も格好いい。今作における市川治は、どうしてもクラゲ奇械人のイメージが強烈なのですが、 やっと格好いい役が(笑) また、上半身に比べて下半身はスッキリした黒タイツになっており、 見た目に反して思わぬ所まで上がる綺麗なハイキックが素敵。重量感を表現する為か、歩く時に足下を映して、 踏み出す度に砂地に足が沈む、という演出はもう一つ伝わりませんでしたが(^^;
 工事現場へ向かったユリ子がピンチになるが、川流れ状態から復活した茂が登場。「バカめ! 貴様が変身する前に、 こいつを殺してやる!」と別に男らしくは無かった鋼鉄参謀と生身で対峙する羽目になるが、背後から乱入した藤兵衛がユリ子を救出し、 ストロンガーに変身。
 ……あれ、戦闘員、前より弱い?(笑)
 と思ったら、タックルの「電波投げ!」を「電波返し!」であっさり無効化したので、 藤兵衛が急速にレベルアップしているのかもしれません。或いは、 いい加減前作で負った心の傷が癒えてきてかつての力を取り戻しつつあるのか。
 鋼鉄と戦うストロンガーだが、改造魔人軍団の電気パワー逆流体質により電キックを跳ね返され、「鋼鉄参謀、改めて会おう!」と、 戦術的撤退。思わず「ああ、うん」と頷いてしまいそうな明るく潔い逃げ方が、凄く茂らしい(笑)
 「デルザー軍団というのは恐るべき奴等だ。とてもブラックサタンの比ではない」
 「お褒めにあずかって恐縮だな」
 シャドウは茂に尻尾を巻いて手を引いたらどうかと告げるが、もちろん茂はそれを拒否。
 「人間が貴様達の奴隷にされるのを黙って見ているわけにはいかん。俺に命のある限り、どこまでも貴様達と戦うぞ!」
 一応ブラックサタンへの復讐は終了しているので、ここで改めて、茂にヒーローとしての宣言をさせたのは良かった所。
 ストロンガーはシャドウの分身攻撃に苦しめられ、更に鋼鉄参謀が登場。アース作戦で電気エネルギーを拡散されてしまったストロンガーは、 鉄球攻撃を受けて本日2度目の崖落ちで変身解除、という衝撃の完敗。だが、 配下のイーグル戦闘員に戦況を監視させていた荒わし師団長がそこに現れると、茂の身柄をかっさらって飛んでいく……と、 いきなりの身内同士の醜い足の引っ張り合いで次回へつづく。
 新組織登場編という事で、前半鬼畜の限りを尽くしていたストロンガーが、立て続けに酷い目に遭う新展開。 ブラックサタンがあまりに残念だったのと、シャドウがあまりに適当なので、デルザー軍団は恐るべき強敵、 というインパクトがもう一つ弱いですが(シャドウさえ、デルザー軍団では使いっ走りに過ぎなかった、 ぐらいまでやっても良かったのでは)、うまく転がってくれる事に期待したい。
 鋼鉄の配下はチェーン攻撃を得意とし、荒鷲の配下は飛行能力を持っている、と戦闘員が上司で色分けされているのは面白い。

◆第28話「あ!ストロンガーがこなごなに、、、、、?!」◆ (監督:内田一作 脚本:鈴木生朗)
 映像はともかく、OPナレーションが引き続きブラックサタンを壊滅させる気満々なのはさすがにどうかと思うのですが、 果たして変わってくれるのか(^^;
 網にひっかけられて荒鷲師団長に運搬される茂だったが、雷雲により電気エネルギーを回復して変身。反転キックで脱出に成功すると、 着地した所で子供のキャンプを襲うデルザー軍団と遭遇し、再び鋼鉄参謀と対決する。 頭脳プレイで鋼鉄を崖から蹴り落として前回の恨みを晴らすと、崖の上から高度をつけた電キックを放つが、やはり無効。
 「鋼鉄参謀、いずれまた会おう!」
 と、またもヒーロー逃走を繰り出すが、バイクにまたがった所で投網を投げつけられ、またも荒鷲に捕まると再び空へ。
 ……て、5分かけて冒頭に戻った(笑)
 色々と酷い展開はありますが、これはさすがにあんまりだと思います(^^;
 「力の強い者が勝つ。それが我ら、デルザー軍団の掟だからな」
 荒鷲の横槍に対して抗議に来た鋼鉄を、相変わらず適当に煽るシャドウ(笑)
 「お互いが手柄争いに必死になれば、それだけ早くライダーストロンガーが片付くというものだ。後の事は後の事……ふふふははははは」
 まるっきり逆効果な上に、何も考えてない……(笑)
 「さて、どっちがストロンガーを倒すかな。占ってみよう」
 そして趣味へ。
 シャドウはどうせ最終的には、「都合良く俺の競争相手を減らしたのだ」とか言い出しそうですが、基本、 身内クラッシャーなので、デルザー軍団の先行きに暗雲が漂います(^^;
 一方、荒鷲のアジトで絶縁体の網に囚われのストロンガーは、無駄にエネルギーを消耗してここ2回ですっかり間の抜けた感じになっていた。 そこへ鋼鉄が実力行使でカチコミを仕掛け、網の中で体育座りしながら吊されるストロンガーを挟んで対峙する2人……という、 まるでユリ子か藤兵衛のような扱いを受ける残酷な仕打ち。
 荒鷲はあっさりとストロンガーを引き渡し、鋼鉄の大回転鉄球アタックでサブタイトル通りに粉々に砕かれてしまうストロンガーだったが、 これは荒鷲の用意したダミーで、本物は別のアジトでくるくる回されていた。
 まるでユリ子か藤(以下略)
 改めて荒鷲に処刑されそうになったストロンガーだが、自ら滝の中に飛び込むと、絶縁体のネットに水を染み込ませる事で、 「水中・電気・ビーム!」(うまく聞き取れず、ビームでは無い気はします)により脱出。茂を探すユリ子達が荒鷲軍団と遭遇してしまうが、 そこに駆けつける。
 「茂! 無事だったのね!」
 「ああ。実は俺も一時は駄目かと思ったぐらいだ。デルザー軍団というのはブラックサタンとは比べものにならんほど恐るべき奴らだ」
 もうそろそろ、ブラックサタンの事は許してあげて下さい。
 やはり電パンチも電キックも通用しない荒鷲だったが、ストロンガー理論によって水の中に連れ込まれると、 水中エレクトロファイヤーで大爆発。さすがに2話連続で主役に良い所なしはまずかったのでしょうが、 割とあっさり最初の犠牲者となりました。
 改造電気人間ストロンガーは、水の中でこそ最強なのだ!
 そしてシャドウは、他人事で占いをしていた。
 次回――デルザー軍団の更なる刺客、深紅の魔女ドクター・ケイト現る!

◆第29話「魔女怪人ケイト血ののろい!」◆ (監督:山崎大助 脚本:村山庄三)
 そういえば根本的な所で、OPの歌詞が「ブラックサタンを倒すまで」だという事に気付いて、どうすればいいのかわからない表情になりました。 歌詞を確認したら、3番までばっちり、「ブラックサタン」と入っていた……。
 キャンプ中に子供達が失踪し、助けを求める声の元に向かうと、咲き乱れる赤い花の中から子供達の声が響く。そしてそこに現れる、 デルザー軍団の深紅の魔女、毒の体を持つドクターケイト。
 やたら高い所に置いたカメラの映像で、豆粒サイズで茂と戦闘員が戦うカットがしばらく続き、 助けを求めていた少年が素手で鮮やかに戦闘員を蹴散らすのですが、やはりデルザーは戦闘員の質が低いのではないか。
 ケイトと戦うストロンガーは、マントにくるまれ、ナイフで滅多刺しにされるという、衝撃アクション。
 ……こういう作品の武器は、嘘っぽいぐらいで丁度いいのだなぁ、としみじみ思いました(^^;
 拾った杖でそれをガードするも、ケイトガスを浴びて筋肉の弛緩したストロンガーは、棺に収められてアジトへ連れて行かれるという、 本日も悲惨な扱い。だがそれを、邪魔する気満々の鋼鉄参謀が見ていた。
 電気エネルギーで地熱を吸収して棺から脱出したストロンガーはケイトに子供達を人質にされてしまうが、 そこに乱入してきた鋼鉄参謀が、「すてぃーーる!」の叫びも高らかに、ケイトの後頭部を鉄球で思い切り殴打。 なおケイトも戦闘中に「けーーー!」と叫び、児童層へのわかりやすさなのでしょうが、造形から微妙に怪人が抜けません(笑)
 鋼鉄は他人の集めた人質を強奪するとストロンガーに戦いを要求し、デザインも声も格好いいのに、とことんセコい(^^;  わかりやすく悪役ではあるのですが。
 ケイトのアジトを逃れた茂は、呼び出しの場所へ向かうと今日もチェーン軍団の攻撃を受け、 何故か茂だけがやたらにデルザーの戦闘員に苦戦するのですが、デルザー戦闘員、対ストロンガーに特化しすぎなのでは(笑)
 茂は変身して鋼鉄と激突し、いっけん性能差にものを言わせたパワーファイターだが、 相手の弱みを見逃さない戦士の嗅覚に優れるストロンガーは、電気技を捨てて打撃戦に持ち込み、鋼鉄参謀と互角の勝負。 投げ飛ばされた鋼鉄は、岩の間から漏れてきた毒に包まれて超もがき苦しむと逃走するが、 それは勿論ケイトの意趣返しによる嫌がらせであった(笑)
 「そうか、奴はケイトの毒ガスに弱いんだ。よーし、奴の弱点がこれでわかったぞ」
 そうこうしている内にユリ子と藤兵衛が鋼鉄組に捕まり、アジトへ潜入するストロンガーだが、鋼鉄参謀が再登場。
 「あの時の毒ガスの影響が少しも残ってない……」
 弱っている所を襲う気満々でした。
 再びの一騎打ちでしばらくプロレスが続き、漁夫の利を狙ったケイトが配置した毒花トラップに気付いたストロンガーは、 それを利用しようとするもちょっと目を離した隙に花が移動してしまって慌てるが、川岸に咲いているのを確認すると、 毒花をチョップで川へ。

 おいこら。

 盛大に噴出するガスで泡立つ川に鋼鉄参謀を投げ込み、右手が麻痺して弱った鋼鉄の後頭部を思いっきり電キックで蹴り飛ばすと、 蓄積ダメージの影響か電気エネルギー反射が発動せず、鋼鉄参謀は大爆死。

 え? あれ?????

 てっきりシャドウと並ぶ後半のライバルになるのかと思われた鋼鉄参謀、まさかの、ドクターケイトの踏み台として死亡。
 電キックの通用しない鋼鉄を新必殺技で打ち破るぐらいの事は期待していたのですが、実質、内ゲバで引きずり殺されてしまいました。 先に後頭部に鉄球を投げつけたのは鋼鉄なので自業自得ではあるのですが、何だか前回死んだ荒わし師団長までまとめて浮かばれません(^^;
 (余談ですがこの、己の欲望に振り回されるという「悪」の在り方を、「悪」とはなにゆえ「悪」であり、 いかにして「悪」は敗れるのか、とロジカルに物語に組み込んでテーマの一つとして描いたのが後の『鳥人戦隊ジェットマン』で、 『ジェットマン』がヒーロー物の基本構造を丁寧に掘り起こそうとしていたのが、わかりやすい部分)
 強者同士の三つどもえ、という構図は面白かったのですが、単純に格好良かったので鋼鉄参謀の早期リタイアは残念。 あまりに雑な最期だったので、タイタンおじさんのように復活の可能性もゼロではなさそうですが……。
 次回――「だけどタックルは」とか「必殺技をかけるんだ」とか、ナレーションの口調がいつもの説明的な早口と違い、 子供への語りかけ口調なのが、ちょっと染みます。

◆第30話「さようならタックル! 最後の活躍!!」◆ (監督:山崎大助 脚本:鈴木生朗)
 前回、「ケイトの花」という台詞があってちょっと調べたら、ケイトウという花があってまんまドクター・ケイトのモチーフなのですね。
 今日もデルザー軍団のアジトを探し回る茂の前にデルザー軍団のドクロ少佐が現れ、一当たり。翌日、 ドクロの用意した「城茂ここに眠る」という石碑の裏側に秘密の出入り口を発見した茂が地下に降りていくと、 そこはドクター・ケイトのアジトであった!
 シャドウとドクロが密談し、ドクロがケイトに協力するような会話をしているのですが、 この時点ではケイトの許可を取っていないので、他人の基地の出入り口に盛り土した上で勝手に茂を呼び込むドクロ、 超迷惑。
 ただ初登場時は物凄い小物っぽかったドクロが、ストロンガーを翻弄するなど、多少強そうな雰囲気が出たのは良かったと思います。
 ケイトのアジトで囚われの子供達を見つけたストロンガーは、牢屋にエレクトリックファイヤーを放つが、 突然エネルギー切れを起こしてしまう。茂が子供達を逃がしている間に、駆けつけたユリ子と藤兵衛がケイトを相手に時間稼ぎするが、 ユリ子は全身にケイトの毒を浴びてしまう……。
 ユリ子が致命傷を負う原因が、ストロンガーの唐突なエネルギー切れ、という締まらない展開(^^;  恐らく檻自体にストロンガー対策の吸電トラップなりが仕掛けてあったのでしょうが、レギュラーキャラの退場劇に繋がる要素だけに、 もう少し納得の行く描写が欲しかった所です。
 「お願い……決してこの事は、茂には言わないでいてね……」
 猛毒による死期を悟ったタックルは藤兵衛に口止めすると、苦痛を隠して茂との最後の時間を過ごす。
 「ユリ子とは長い付き合いだけど、コーヒーなんかいれてもらったの、初めてだぜ」
 「……ねえ茂」
 「ん?」
 「いつか、悪い怪人達がいなくなって、世の中が平和になったら……」
 「平和になったら?」
 「2人でどこか遠い、美しい所へ行きたいわ」
 「いいね〜。俺も行きたいよ」
 「…………本当に約束してくれる?」
 「ああ、約束だ」
 何故か遠ざかって明後日の方向を見ながら約束するのが、照れてるのか雑なのか微妙だ茂(笑)
 藤兵衛とユリ子の様子に異変を感じる茂だが、そこにドクロ少佐が現れ、挑発に乗った茂がドクロを追いかけている内に、 ユリ子と藤兵衛にはドクターケイトが襲いかかる。戻ってきたストロンガーが立ち向かうもケイトガスを浴びて大ピンチとなり、 覚悟を決めたタックルは決死の突撃を敢行すると捨て身の超必殺技「ウルトラサイクロン!」を発動し、ドクター・ケイトは大爆死。 だが全ての力を使い果たし、タックルもまた絶命するのであった。
 「ユリ子……なぜ死んだんだ」
 「茂……ユリ子はな…………ケイトのアジトで戦った時、ケイトの毒でやられたんだ。もう長く生きられない事を知ってたんだよ」
 「……それを、なぜ黙って」
 「ユリ子は……足手まといになる事ばかり気にしていた。だから苦しくとも隠してたんだ。この事は決して茂には言わないでくれと、 俺に頼んでた」
 「ユリ子…………。すまん……俺の力が、足らなかった……! ユリ子!」
 茂は冷たくなったユリ子の手を握りしめて男泣きにくれ、その亡骸を抱き上げて立ち上がる。
 ナレーション「束の間の青春を、ストロンガーの協力者として、人類の敵との戦いに捧げ、儚く散っていったタックル――岬ユリ子。 限りない悲しみと怒りを胸に、茂は、今こそデルザー軍団に対する復讐を、固く心に誓うのだった」
 茂の戦う動機が再び復讐に戻り……
 次回予告「電波人間タックルをなくした城茂は、岬ユリ子の墓に、デルザー軍団の改造魔人を、1人残らず倒す事を誓うのであった」
 墓の前に死体とか首とか積みそうで危険な雰囲気に……
 「元ブラックサタンの科学者、マサキ博士に助けられ、改造手術を受ける」
 そして、手段も選ばなくなった。
 構図としては、親友の復讐の為に悪の秘密結社で改造手術を受ける、という今作の原点に意図的に戻した、といえそうですが、次回、 超電子人間ストロンガー誕生!
 というわけで、電波人間タックル退場編。さすがにこれは知っていましたし、 コーヒーのシーンはマンガ『仮面ライダーSPIRITS』で村枝賢一が素晴らしい名シーンにして描いていたのを既読でしたが、 全体の流れとしては、タックルはもう一つ上手く使い切れなかったなぁというのが正直な印象。
 今作自体が50年代の東映時代劇映画黄金期のフォーマットが色濃いので、スター(城茂)と脇役、 という作劇になるのは致し方ないのですが、ロードームービー形式における藤兵衛の存在との相性が悪く、 ユリ子と藤兵衛の役割がどうしても重なってしまう事で、結局中盤以降は藤兵衛とほぼセット扱いで茂との距離感が離れてしまったのは残念でした。
 もう少し、前半に散見された、茂とユリ子、というコンビに焦点を与えたやり取りは見たかったな、と思う所です。
 次回、ユリ子の不在が茂にどんな影響をおよぼすのか、それが描かれるのかは、ちょっと期待したい。

→〔その7へ続く〕

(2016年5月15日,2016年6月3日)
(2017年3月16日 改訂)
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