■『仮面ライダーストロンガー』感想まとめ2■


“突っ走れ 空を飛べ
ブラックサタンを倒すまで”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーストロンガー』 感想の、まとめ2(6〜10話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕 ・  〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕
〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔まとめ8〕 ・ 〔総括〕


◆第6話「先生に化けたクラゲ奇械人!」◆ (監督:内田一作 脚本:村山庄三)
 水道の蛇口から小学校に侵入し、テストを採点中の女教師の前に現れる奇械人。
 見た目グロテスク系で名前にも何のひねりも与えられていないのですが、
 「ブラックサタンのクラゲ奇械人」
 市川治なので声が滅茶苦茶格好いい!
 「何も怖がる事はない。私はおまえのその体を、ちょっとばかり拝借したいだけだ」
 発言から既に駄目怪人の香りしかないのですが、声が滅茶苦茶格好いいぃ!
 その頃タイタンは、日本中から秀才の子供を集めていた。
 「お前達は日本中から選ばれた秀才だ。その若くて優れた脳みそを取り出して、我が奇械人に植え付けてやるのだ」
 ……うん、前回、頭悪すぎましたからね。
 そこへかかってくる電話。
 「ミスター・タイタン。只今、松本先生の体を乗っ取りました」
 この頭の悪い台詞を、市川治が重々しく喋るだけで、無駄に面白くてずるい(笑)
 「よろしい。で、その学校の秀才は誰だね」
 「ホリ・フミオとかいう小僧が、100点を取っておりますが」
 そ の レ ベ ル な の か。
 やはり、怪人への改造手術は、脳の一部に深刻なダメージを与えてしまうのでしょうか。
 どうして天才ではなく秀才を集めているのかと思ったら、元の奇械人のレベルが低すぎるというブラックサタンの悲しい事情。
 今日もバイクで放浪中の茂とユリ子が、松本先生から逃げる少年と接触。現場に残った粘液に気付いた二人は先生を追いかけ、 まずは正体を暴いたタックルが戦いを挑むも、クラゲの泡を浴びて崖下に転落してしまう。その後に出てきて、茂はストロンガーに変身。
 「これでも食らえ!」
 「おっと、その手は食わないぞ!」
 「なに?!」
 ……不自然に遅れて現れた茂、ユリ子を囮に使ってないか(笑)
 作劇上、タックルが前座でストロンガーがメインイベンターというのは仕方ないのですが、スタート地点を一緒にしてしまった為に、 何だか酷い事に(^^; しかもこの後、少年を救出した茂はユリ子を探しもせずに少年を家に送ってしまうというコンボ(笑)  ……いや、信頼、信頼なのでしょうが!
 なお、崖下に大の字に転がっていたユリ子は、通りすがりの困ったおじさん(藤兵衛)に拾われました。
 松本先生の憑依を解いたクラゲは今度は少年の母に憑依しており、まんまと少年を連れ去ってしまう。 追うストロンガーの前にブラックサタンのオートバイ部隊が立ちはだかり、広い砂浜を走り回るバイク、海では爆発、と迫力のシーン。 なにやら、リアルにクラッシュしていないかこれ、という映像がそのまま使われていたりして気になりますが(^^;
 「ふふふふふふふ、小僧、幾らわめいても無駄だ。たとえ城茂といえども、ここまでは入ってこれん、ふっふっふふふふふ」
 率直な所、城茂が絡んできた時点でこの少年にここまでこだわる必要はないと思うのですが、余裕を見せた所で案の定、 口笛の音が響き渡り、壁をぶち破って基地へと突入してくるストロンガー!
 「改造液体人間、おまえの後をつけてきたんだ」
 「馬鹿もん! ドジを踏みおって」
 本日三度目の粘液バレで、怪人への改造手術は、脳の一部に深刻な(以下略)。
 タイタン怪人とストロンガーは初顔合わせだと思うのですが、これといってやり取りはないまま、タイタンはあっさり退却。 クラゲは電キックを受けて、首がもげた?!と思ったらそれはクラゲの傘の部分で本物の頭部が下にあり(白い覆面)、 投げ飛ばされた所が水辺だった為に電気ストリームの餌食になって大爆死。
 囚われの子供達は無事に救出され、大団円のいい場面で走ってくる困ったおじさん。
 「俺も君達と一緒に、ブラックサタンと戦うんだ」
 何故かいきなりの握手、の上で、置き去りにして走り去る茂とユリ子。
 基本的に、関わり合いになりたくない。
 早く東京に辿り着かないと藤兵衛の心の病がどんどん深刻になっていきますが、結構ロードムービー展開が長く、ひたすら引っ張ります。 引っ張った上で急に握手などしてみるのですが、このままずっと、困ったおじさんのままだったらどうしよう。
 藤兵衛の台詞だけ取り上げると、完全に妄想の世界を彷徨っています。
 前回同様、頭の悪すぎる怪人とタイタンおじさんの脳の機能を疑う作戦のコンボだったのですが、テンポ良く進行し、 アクションの見せ場もあった上で、駄目すぎて面白くなってくる作戦と怪人の言動と行動に対して格好良すぎる市川治の声の相乗効果で、 見ていて変に面白い回になりました。
 この、悪の組織の駄目な作戦がある一線を越えた時にむしろ面白くなってしまう現象に、 何かいい名前が欲しい(笑)

◆第7話「ライダー大逆転!!」◆ (監督:折田至 脚本:伊上勝)
 先週の相模湖から、今週は、鎌倉までやってきました!
 観光バスの乗客を奴隷人間にしようとするワニ奇械人によって、ドライブインで強引に奇械虫を食わされそうになるという嫌なシーン。 元レスラーのお父さんが子供を守って立ち回るが捕まってしまい、逃げた子供は車通りで助けを求め、 ここで子供の叫びに止まってくれない車が何台か通り過ぎる中、車を止めて事情を聞く藤兵衛、 と初めて藤兵衛が真っ当な人間味でポイントを稼ぎました!
 「なんだかわかんないけど、そのドライブインへ行ってみようや!」
 ……しかし脳の回路の方は、まだ故障中の模様です。
 藤兵衛は、何故か道路に寝転んでいたワニ怪人をジープで引っかけてブラックサタンに囲まれるが、そこへやってくる茂とユリ子。 奇械人ワニーダは、茂とユリ子の事を脱走者として把握している初めての怪人のような気がするのですが、 挑発に乗って茂に噛みついて感電したので、やはり脳の回路が(以下略)。
 戦闘の末ワニは逃走するが、気絶させた戦闘員を踏みつけにするタックル。
 「今度はあたしの勝ちね。見なさいよ、人質がいっぱい。何をたくらんでいるのか、白状させてやるんだ」
 力強く監禁と拷問を宣言した!
 「タックル、君の最期だ。ふふふ」
 だがそれを見ていたタイタン、戦闘員標準装備と思われる自爆装置を遠隔操作でぽちっとな。
 「危ない伏せろ!」
 「0.1秒タイミングがズレた。命冥加な二人め」
 タイタンは、それらしく格好いい事を言えば誤魔化せると思っていないか(笑)
 「あんまりいい気になると、長生きできないぞ」
 「なによ! あたしだって爆発する事ぐらい知ってたわよ!」
 「おやおや。それはわるうござんしたね。今度は絶対知らねえからな」
 「ほっといてよね!」
 爆発をまぬがれ、土だらけになった茂とユリ子のやり取りはきびきびして面白く、この二人の関係をしっかり描こうという意識が見えます。 これがメインライターだからというだけでなく、他の脚本回でも繋がってくれると良いのですが。
 そこへドライブインで捕まっていた筈のレスラー父がやってきて息子を連れて行き、その様子に不審を感じて追いかけた茂は、 ブラックサタンの罠にはまって捕まってしまう。一方、謎の婦警コスプレで問題のドライブインの調査に向かったユリ子だが奇械人に感づかれ、 格好良く鏡を叩き割った瞬間、落とし穴へ(笑)
 「あたしが駄目でも茂がいるのよ! 覚えてらっしゃい!」
 憎まれ口を叩きつつ、茂への本音が見え隠れして良い台詞ですが、そんなユリ子に、洗脳されてしまった茂が迫る。 ユリ子の首を絞めるようにして電流を流す茂だが……突然、にっこり。
 「出しゃばりの罰だ」
 え、えええええええええ?!
 茂は他の女性キャラとの絡みが無いので、ユリ子と気安いのか、全体的に他人の扱いが雑なのか、わからなくて困ります(笑)
 「な、何故だ、何故あのガスが効かなかった……?!」
 「そんな事、俺が知るか!」
 茂、脳改造されていないし、説明書受け取る前に脱走してきたので、本当に知らない。
 ちなみに茂に使われたのは、「ブラックサタンが貴様用に発明したスレイブガス」だそうなのですが、 ブラックサタンの科学開発陣にはひたすら疑問が付きまといます。大丈夫かブラックサタン。 本当に日本征服とか出来るのかブラックサタン。とりあえずご町内レベルからやり直した方がいいのではないかブラックサタン?!
 車で逃げようとしたワニはマグネットで引き寄せられた上に、車体に電タッチ(OPの映像)され、車内で蒸し焼きに(笑)  ストロンガーの前で、金属と水中は鬼門です。
 海岸で一当たりした後、何故か川に逃げ込むワニ。だからそこも、鬼門で……
 「電気・ストリーム!」
 が、今回は水深があった為か通用せず、しかしめげないストロンガー。
 「よぅし、今度は電熱で川の水を蒸発させてやる」
 「ない、ない、水がない」
 ストロンガー、宣言通りに川を蒸発させる(笑)
 干上がった川の中に立ち尽くすワニに、電キックを炸裂させてストロンガー圧勝。 水中→電気ストリームも3回目だとパターンなので変化をつけようとしたのかもしれませんが、お陰で何だかトンデモない事になりました(^^;
 ドライブインに捕まっていた奴隷人間達は解放され、茂、ちょっとふらふらしているユリ子を置いて「あばよ!」とバイクで走り去る(笑)
 ……ユリ子さんは、色々、考え直した方が良いのではないか。
 次回――
 「ある日突然町中の人間が暴れ出し、全員が死ぬという事件が発生した。またしてもブラックサタンの仕業か」
 ユリ子は角材で殴られまくり、奇械人モウセンゴケで、トドメにサブタイトルが「溶けるなライダー!」と、破壊力抜群すぎてもう、 次回はたとえ面白くなくてもこの予告だけで満足です(おぃ)

◆第8話「溶けるなライダー! とどめの電キック!!」◆ (監督:折田至 脚本:阿井文瓶)
 手に手に武器を取って暴れ回る市民が、突然倒れて死亡するという事件が発生。種を明かすとダムに毒ネタなのすが、 暴れ回る人々が次々と倒れた後に、サスペンス調の音楽を繋げたまま、説明抜きでダムと不思議な輝きをワンカット挟む、 という演出がなかなか格好いい。
 毒薬を扱う奇械人モウセンゴケは、いつもどちらかというと間抜けな事が多い奇械人の目出しが、 食虫植物の花弁の奥に垣間見える事で不気味さを醸し出しており、秀逸なデザイン。
 「ブラックサタンでも指折りの、私の悪知恵を信用してください」
 発言には非常に、不安がありますが(笑)
 事件を耳にして隣町までやってきた茂は、突然狂ったように暴れ出した父親に襲われていた少年を救出。 気絶した父親の為に薬を買おうと少年と街へと向かった所で、ユリ子と、暴徒達から逃げる藤兵衛と遭遇。
 藤兵衛に対する茂の呼びかけが前回ぐらいから「オヤジさん」に変わっており、対応もこれまでよりも微妙に親しげになっているのですが、 やはりフラグ構築の基本は、どんなに冷たい扱いを受けてもしつこくエンカウントし続ける事なのか。
 茂(お、俺の意志に反して、何故か好感度が上がってしまう!!)
 どこへ行っても現れるし、藤兵衛が主人公のアドベンチャーゲームを、攻略対象(茂)視点で見ているのかと思うと、とてもホラー。
 「俺に考えがある。あの人達をここに引きつけておいてくれ」
 茂は藤兵衛と少年を連れて逃げ、囮に残されたユリ子は暴徒達の中に紛れていたブラックサタンの戦闘員に、 しがみつき→角材のコンボ攻撃を受けるが、ユリ子が適度に殴られた所で響き渡る口笛の音色。
 「やっぱりブラックサタンが街の人に混じっていたな!」

 お・ま・え

 「「「城茂!」」」
 「俺の名前も売れてきたなぁ。感激だぜ。しかし、城茂が女の子に後を任せて、逃げちまったと思ったのかい。バカだねぇ」
 言っている事は面白いのですが、茂の人格に関する疑問がどんどん膨らんでいきます(笑)
 茂は変身し、バック転を逆回しするという変わったジャンプで、えらく高い煙突の上に立つストロンガー。ユリ子も、 全て打ち合わせ通りだったかのようにタックルに変身するのですが、信頼……でいいのか(疑惑のまなざし)
 ストロンガーとタックルは戦闘員を蹴散らし、元に戻った父親とその知り合い(上司?)のおじさんも合流。
 ナレーション「緑の毒液を飲んだ人間は、1時間経つと、元通りに元気になる。しかし、三度にわたって飲むと、元の状態には戻らない、 恐ろしい毒なのである」
 ここで唐突に説明が入るのは、毒液の設定が少々ややこしいと思ったのか。
 おじさんの体を乗っ取っていたモウセンゴケがストロンガーを不意打ちし、 「よくも人の体を利用してくれたな!」と男らしく戦いに割って入ったおじさんは、モウセンゴケの毒液に溶かされてしまう。 最初の登場時にも飼い犬が溶かされてしまうのですが、モウセンゴケの溶解毒をアピールする為か、今回は犠牲者多し。
 おじさんの犠牲で生まれた隙を付いてストロンガーは連続蹴りを浴びせ、モウセンゴケは一時撤退。
 「ええぃ! 口ほどにもない!」
 「申し訳ありませぬ。つい見くびってしまって……」
 基本的に奇械人は戦うのが好きすぎるので、ブラックサタンは基本プログラムから色々考え直した方がいい。
 ブラックサタンの見張りに気付いた茂は、周囲を巻き込まない為にユリ子の出場するモトクロスレースに混ざり、レース会場の外れで、 敵オートバイ軍団と大規模オフロードバトル。今作こだわりのバイクバトルですが、 迫力を出そうとしてかカメラをわざと揺らしているので、ちょっと酔う(^^; 後、レース参加者は巻き込んでいいのか。
 茂はバイクから飛び出る光線カブトローサンダーで戦闘員を殲滅し、一息ついていた所に街の様子を報告しに来た藤兵衛が水道の水を飲んで豹変した事から、 ブラックサタンの狙いを突き止め、ダムへと急ぐ。親子を人質に取られて逆さ吊りにされるストロンガーだが、 それは毒の成分を探り出す為の潜入作戦であった。
 街の人々を救う為に命がけで捕まったという状況設定だったのかもしれませんが、基本ストロンガーが強すぎるのと、 何故か変身したまま逆さづりになっている為に、今ひとつピンチ感がありません(^^;
 絶縁体である特殊ゴム製の鎖で縛られ、三度目の毒液の効果により暴徒と化した市民にリンチを受けるストロンガーだが、 ユリ子と藤兵衛が解毒剤のシャワーを振りかけ、人々は正気に戻る。
 トラフグンの回も今回も、「毒の成分を調べて解毒剤を作る」という段取りを踏んでいるのですが、 「解毒剤を作る」という段階で実質的に《奇跡》が発動してしまっているのが、惜しい(^^; そして、 モウセンゴケの毒液で溶けた脳は、解毒剤で元に戻るのか(笑)
 「降りてこぉい!」
 「その必要はない」
 「なに?!」
 「おまえの相手は俺だ、ふん!」
 ストロンガーは体を縛り付けていた木そのものをへしおって戒めを脱出すると、モウセンゴケを電キックで撃破。 体内に毒液を貯め込んでいた筈のモウセンゴケがダム湖で大爆発していましたが、いいのか、それで。
 雰囲気造りに凝った演出・奇械人のデザイン・端々に理屈をつけた展開、とポイントポイントは面白かったのですが、総合すると、 凄く雑(笑) もう少しずつ丁寧にやると綺麗にまとまりそうなのに、要所要所で頭から壁に突っ込んでいて惜しい。
 次回、
 「丁度そこに居合わせた茂は、あの謎の人物、青年タイタンを目撃するのである」
 せ、青年……?! まあ、青年実業家的なアレでしょうが(ちなみにOPの表記は「紳士」で、それで良かったのでは)。
 『ロボット刑事』や『大鉄人17』の演出はそれほど印象に残っていないのですが、内田監督も折田監督も、 割と『ストロンガー』の演出は面白いなぁ。

◆第9話「悪魔の音楽隊がやってきた!!」◆ (監督:内田一作 脚本:鈴木生朗)
 ――ある地方都市に、東京から有名な楽団がやってきた。
 茂(この街にそぐわない立派な音楽会。俺はそこにブラックサタンの計画を感じて見張っていた)
 街 の 人 に 謝 れ (笑)
 会場に居たタイタンおじさんに誘導され、今回は独り言の多い茂は、まんまとその後を追ってしまう。
 (神経ガスか。普通の人間ならともかく、俺がこんなもので参ると思うか)
 第7話のフォローのつもりだったのかもしれませんが、実質的に理由が無いのは全く同じなので、むしろ言わせない方が良かったような(^^;
 タイタンの罠により、背中にロケットをくくりつけたブラックサタン特攻隊(本当に70年代は平気でこういうネタが出てくるなぁ) がストロンガーに組み付いて大爆発。それを見届けたタイタン怪人は、次元の狭間にワープして消えるという一芸を披露。
 なおストロンガーは平然と無事でした。
 一方、音楽会ではブラックサタンにまとめて憑依されていたバンドが異常な音楽を奏でると、それを聞いた街の大人達が凶暴化し、 子供達を敵視して襲いかかるようになってしまう。ブラックサタンの目論みは、この凶暴化音楽を全世界規模に広げる事によって、 子供と大人を戦わせて人類を滅亡に追いやる事にあった!
 バンドリーダーに乗り移っていたカマキリ奇械人は、頭部に二つ並べたドクロでカマキリの大きな複眼が表現されているというデザインが非常に秀逸。 今回、話は正直全く面白くなかったのですが、このカマキリ怪人のデザインだけでも見る価値はありました。 右手の大きな鎌をブーメランのように投げるのも、映像的になかなか格好良く表現。
 ユリ子がステージに上がって演奏を妨害するも、正体を現したカマキリに苦戦している所にストロンガーが戻ってきて、 カマキリは一時撤退。ところがカマキリは教会の神父に憑依すると、今度は別の音波で子供達を凶暴化させる。 子供達を守っていたユリ子と藤兵衛は、哀れダブル磔で火あぶりにされそうになるが、 そこに例の口笛が響き渡ると何故か気絶する子供達。
 ストロンガーは遠距離エレクトリックファイヤーでユリ子達を拘束するロープを器用に切断するが、一歩間違えると、 二人とも盛大に火葬になっていたのでは(^^;
 カマキリ怪人はストロンガーに一方的に叩きのめされ、電キックに耐えるも新必殺技のエレクトロウォーターフォール (地面から吹き上がる強力な電気の滝)を受けて、爆死。大人も子供もバンドもみんな元に戻って大団円…………ただ一人、 カマキリの正体を見て殺されてしまった市長が、この日、謎の失踪を遂げる事になるのでありました。
 個々のシーンの繋がりが粗雑すぎて、非常にテンポの悪いエピソード。今作、適当なりに大きな流れはスムーズで、 だからアクションも気持ち良いのですが、今回は完全にアクションの為のアクションシーンになってしまっており、 ストーリーとアクションがお互いを切断し合っています。カマキリ奇械人が電キックに耐えるのも、単に新技を出す事情だったり、 第5話(トラフグン給食回)レベルのしっちゃかめっちゃかぶり(^^;
 原因の一つに、ラストの「エレクトローウォーターフォール」以外にも、 オートバイ部隊のバイクを遠隔で停止させる「バッテリーショート」、赤外線レーダー「カブトキャッチャー」など、 恒例の「エレクトリックファイヤー」含め、やたらとストロンガーが電気技を使う場面が入った事が考えられるのですが、 児童誌なりひみつ百科なり出版関係との連動の都合でもあったのか。
 また今回から、タイタン怪人が裏が赤地の黒マントを羽織り、ドラキュラめいたコスプレでイメチェン。 第2話以来の登場となった首領(の声)肝いりと思われる大規模作戦も失敗し、そろそろ立場が心配になってきますが、 タイタンおじさん(34歳)はいつまで格好をつけていられるのか?!

◆第10話「恐怖のガンマー虫! 人間を狙う!!」◆ (監督:内田一作 脚本:伊上勝)
 タイタンは人間を洗脳するガンマー虫を開発し、実験体とされた実験人間(さらっと「実験動物」とかけられていたり)が、 命令のままに自ら首を絞めて死亡するというショッキングシーンから入るのが70年代前半の空気。
 今回面白かったのですが、このガンマー虫がいつもの奇械虫とデザイン上の大きな差が無い為、何が特別なのかわかりにくかったのは、 惜しかった所。
 ブラックサタンは、ガンマー虫の培養に適した大学の細菌研究所に目をつけ、そこを管理するトドロキ博士を狙う。
 突然現れた奇械人ハゲタカンを相手に、割と普通に話し合う博士がたくましく、戦中派の力強さを感じさせます(笑)
 ハゲタカンの申し出を拒否して襲われる博士だが、そこへ最初から変身して現れるストロンガー。 オートバイ部隊とハゲタカンとの戦闘があり、ハゲタカは博士を諦めて逃走。博士を介抱して事情を聞こうとする茂 (と後から通りすがったユリ子)だが、そこへ「娘が交通事故に遭った」と博士の妻がタクシーで駆けつけ、博士が慌てて帰宅すると、 妻と娘はブラックサタンに憑依されていた!
 「おまえは、さっきの」
 「そう、ハゲタカンは一度狙った獲物は逃さん」
 何故か天井に逆さまに張り付いているのを含めて、妙に面白かった台詞(笑)
 博士を追いかけてきた茂は悲鳴を耳にして家にあがりこむが、ハゲタカに憑依されてしまった博士に追い返されてしまう。 かくしてハゲタカは博士の研究室で、東京上空にばらまく為のガンマー虫の培養を開始する。……そしてそれをフォローするべく、 研究所の正門前で、焼きトウモロコシ屋のおじいさんに変装して周囲を監視するタイタンおじさん。
 早速、培養中の虫が一匹、表に出てしまったのを発見。
 おい、奇械人。
 部下の頭が悪すぎるので、おじさんはもう、転職を考えた方が良いのではないでしょうか……。
 表に出た虫は人間に入り込み、そこに行き会った藤兵衛はブラックサタンに襲われる羽目に。やってきた茂が戦闘員を蹴散らすが、 ハゲタカはどさくさの間にガンマー虫を回収。
 「奇械人ハゲタカン、トドロキ博士を狙ったわけはなんだ」
 「知りたいかライダーストロンガー。死ね!」
 単刀直入(笑)
 戦いの末、またしても飛んで逃げられてしまうストロンガーだが、藤兵衛からの情報で、謎の虫の存在に気付く。と、じわじわ、 藤兵衛が役に立つようになってきている今日この頃。「レーサー……俺が育てるべきレーサーはどこだぁぁぁぁぁぁぁ」も薄れてきており、 ブラックサタンの存在を認識した事で、心の傷から立ち直りつつあるのでしょうか。
 ……もしかしたら、もはや悪の秘密結社の存在が無くては正気で生きていけない体質になっているのか。
 シ ョ ッ カ ー の仕業だ!
 茂に先んじて研究室に忍び込んだユリ子は培養中のガンマー虫を発見するが、タイタンおじさんにしっかり監視されており、 戻ってきたハゲタカンと戦いに。
 「今度こそライダーストロンガーより先に、このタックルが片付けてやる!」
 「身の程知らずめ」
 全視聴者の本音を代弁する怪人。
 そして、敗北シーンをカットされる勢いで一瞬で捕まるユリ子(笑)
 がんばれたっくる、めげるなたっくる、まけるなたっくる。
 茂も大学に向かうが憑依状態のトドロキ博士に追い払われ、頭の悪い部下のサポートに体を張るタイタンおじさんはその様子をよくやったと報告するが、 逆にそこを茂に見とがめられてしまう。200円を手に、「トウモロコシを売れよじーさん。それともあんた、耳が悪いのか、 あーん?」と迫る茂が、鬼・畜。
 「ところでいっけん老人だが手は若い。そろそろ正体を見せたらどうだ!」
 河川敷で変装を解いたおじさんは、遂に茂の目の前で怪人に変身。
 「ブラックサタン大幹部、その名も、ミスタータイタン」
 不意打ち気味にタイタンのパイロキネシスを受けた茂は倒れ、ユリ子ともども囚われの身になると、 ブラックサタンの処刑場に運ばれてしまう。あくまでストロンガーでなく茂、という事なのでしょうが、ここで茂が完全敗北しており、 例の如く例のようにやられたフリとかではなかったのは、タイタンおじさんが幹部の面目躍如したのと合わせて心底ホッとしました(笑)
 処刑場に火が入り、棺桶の中で火葬されそうになった茂だが、すんでの所で熱により目を覚ます。
 「このままでは焼き殺される、この体を電気分解して逃げなければ」
 なんかさらっと、凄い事言い出した!
 そんな事はつゆ知らず、タイタンおじさんは煙突から吹き上がる煙を見て満足して帰ってしまい、またも詰めが甘い。
 「ライダーストロンガーの最期にしては、呆気なかったな」
 処刑を終えて満足するハゲタカンだが――
 「ははははははは! ははははははは!」
 響き渡る笑い声に慌てて外に飛び出すと、そこには煙突の梯子に掴まった茂とユリ子の姿が! 電気分解の理屈はさておき、 二人の死の象徴とされた煙突の横に堂々と姿を見せつける茂とユリ子、それを見上げるブラックサタンと見下ろすヒーロー、 という逆転の構図が非常に格好いい。
 「城茂?!」
 「ハゲタカン! 俺の力を見くびったようだな!」
 「なにを?! どうして抜け出た?!」
 「その秘密はおまえ達には明かさん!」
 意趣返し(笑)
 そして改めて、茂をストロンガーに改造した博士がストロンガー脱出時のどさくさでアジトと一緒に爆死してしまい、 ブラックサタンの誰も、奇跡の傑作ストロンガーのスペックを把握していないという疑惑が濃厚になります。
 まあ、奇械人に関してはほぼ毎度、ストロンガーの情報を把握していない様子なので、タイタンの作戦指示をすぐに忘れる記憶力など、 奇械人の電子頭脳に致命的な欠陥がある可能性も濃いのですが。
 …………ブラックサタン、妖魔一族(『世界忍者戦ジライヤ』)並に不安になる悪の秘密結社だなぁ(笑)
 梯子を登ってこようとする戦闘員に対し、口で手袋を外して梯子に電流を流す、というのは第3話と同じアイデアですが、 高低差を活かした映像と茂の見せる外連味がこれまた格好いい。
 「ははっ、ちょっと電気が強すぎたかな」
 ストロンガーとタックルは変身し、ED曲をBGMにクライマックスバトルへ。
 「ストロンガーバーリア!」
 ――ストロンガーバーリアとは、ストロンガーの周囲に、見えない電磁波の防御膜を張るものである。
 なんでもありだな……。
 電キックを受けたハゲタカンは、培養したガンマー虫の詰まった鞄を手に、当初の作戦だけでも遂行しようと飛び立つが、
 「そうはさせん。エレクトロぉぉ・サンダー!!」
 ――エレクトロ・サンダーとは、超高圧の電流を空中に発射し、雷雲を呼び寄せ、人工的に、落雷を起こさせるものである。
 ストロンガー、普通に空飛んで追いかけそうだなぁとドキドキしましたが、落雷で撃墜し、ハゲタカはガンマー虫と共に大爆死。 かくしてブラックサタンの久々に大規模な東京乗っ取り作戦は阻止されるのであった。
 しかし今回、首領が「よその施設を借りよう」と言い出さなければストロンガーの介入を招かなかったような気がするのですが、 ブラックサタンだから仕方ありません。……大丈夫かブラックサタン?! 世界征服の前に、 もう少し地道な設備投資に予算を回した方がいいのではないかブラックサタン!
 そろそろ1クール目も終わりという事でか、正体を現すミスタータイタン、茂の生アクションも盛り目など見所が多く、面白かったです。 もしかしたら伊上脚本があまり得意でないのかもしれない、と気付いた今日この頃ですが、なんだかんだ、 茂の台詞の切れ味は伊上脚本がダントツ。そしてやはり、茂を格好良く描いてこその作品だな、と。
 そしてユリ子は、ふだん物凄く雑な扱いされるけど、さすがに命の瀬戸際では助けてくれるので、 反動も手伝ってときめきゲージがぐんぐん上昇してしまうのだろうなぁ……。
 前回同様、オール電化推進キャンペーン中のようですがテンポも良く進み、いい意味で『ストロンガー』らしい回でした。

→〔その3へ続く〕

(2016年4月7日)
(2017年3月16日 改訂)
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