■『仮面ライダー電王』感想まとめ8■
“始まりはいつも突然 運命を連れて行く
Time tripin'ride
不可能越えて 掴み取るさ Climax”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダー電王』
感想の、まとめ8(45〜最終話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
クライマックスは続くよどこまでも。
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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・
〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕 ・
〔劇場版『俺、誕生!』〕
〔まとめ5〕 ・
〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・
〔総括&構成分析〕
- ◆第45話「甦る空白の一日」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子)
-
クリスマスの飾り付け中、ツリーの下敷きになった良太郎は、1年前の事を思い出す。
その時、ツリーの下敷きになったのは……桜井さん。
(もう一年なんだ、桜井さんがいなくなって……)
そこへ良太郎が自分宛に送った、覚えのない小包が届く。
中から出てきたのは……懐中時計。
それは裏面に文字は入っていないものの、かつて愛理と良太郎が桜井さんにプレゼントしたものと、同じデザインの懐中時計であった。
これで懐中時計は、ミルクディッパーに隠されていたもの、過去を彷徨う桜井さんが持ち歩いているもの、新たに良太郎に届いたもの、
と合計三つ。良太郎とコハナは、かつて桜井さんへのプレゼントとしてその時計を買った店へと向かう……。
一方、街を彷徨うカイは、
「調べなきゃなぁ……アレ、野上良太郎の抜けた記憶。……いつに跳べばいいと思う?」
通りすがりの適当なサラリーマンの体を開いて、記憶を覗く。
「ろくな記憶持ってないな……さてと……あれ? 何考えてったけ?」
「野上良太郎の消えた記憶」
姿を見せる、アルビノレオイマジン(ヤクザ声)。
「あ、そっか」
となにやらカイに、一種の健忘症のような描写が入ります。
時計店に向かいながら、良太郎は一年前の出来事を思い出す。
一年前……桜井侑斗と愛理の結婚が決まり、クリスマスが間近に迫った頃、愛理は「新しい家族の時間」の象徴にもなると、
時計店の店頭に飾られていた懐中時計を気に入り、桜井さんにプレゼントしようと考える。
お値段、16,800円。
しかし当初の予算は1万円。年末で家計も厳しいしもっと安いやつに……と良太郎、
姉の婚約者へのプレゼントを安上がりにしようとする(笑)
しかし結局、愛理に拝み倒され、その懐中時計を購入。
以前、さもいい話のように語られていた
「僕と姉さんからのプレゼント」
に込められていた真実は、予算不足による折半だった!(笑)
その頃、デンライナーは、クリスマスを前にサプライズパーティの準備で盛り上がり中。ノリノリのナオミとイマジン達、
クリスマスツリーに願い事をかけた短冊を吊すなど、意味不明。
ナオミの願い「食堂車がずっと満員でありますように」
は、作品の流れからするとちょっとぐっと来る所なのかもしれませんが、今までの話を見る限り、
デンライナー車内が空いていた方が世界は平和な気がしますよナオミさーん。
時計店を訪れた良太郎は、それが、本当なら8月に送られてくる筈だった事を知る。店主の記憶によると、
昨年末のクリスマス、姉弟で懐中時計を買った後に“なんか嬉しそう“な良太郎が一人で戻ってきて、
「来年の8月にこれと同じものを送ってほしい」と予約注文をしていったのだという。
店主の手違いによって発送が大幅に遅れた懐中時計であったが……その一連の出来事について、良太郎は全く覚えていない。
ある狭い範囲において、良太郎の記憶が消えているのだ。
思いあまった良太郎は、侑斗にゼロライナーでの過去への移動を頼むが、拒否される。
「侑斗、お願いだから……」
「駄目だって言ってるだろ!」
「……何か知ってるんだ」
割と顔に出る侑斗、バレる(笑)
「何でもこっちのせいにすんな!」
「でも前から何か隠してるよね?」
逆ギレしてみせる侑斗であったが、良太郎、返す刀で一刀両断。一歩も引かない気配を見せる良太郎であったが、その時、
モモタロスがイマジンの出現に気付く。
良太郎達が去った後で時計店の店主に憑依し、「在庫を綺麗にさばきたい」という望みを、
街中で時計を配り歩いてかなえようとするのは、スノーマンイマジン。
…………えーこれ、肩から角が生えてますが、ぎりぎり、トナカイという事で動物扱いなのでしょうか(笑)
強引に繋がった過去へ跳ぼうとするスノーマンを食い止めるS電王だったが、サンタ人形と戯れている内に結局は過去へ跳ばれてしまう。
その日付は――2007年1月10日。
それは、野上愛理が記憶を失くした日。
「野上行くな!」
「侑斗、やっぱり何かあるんだ」
「おまえが知る必要ない!」
「そう言われて止めると思う?」
「なんでもいい。とにかく行くな」
「何かあるなら僕は知りたい。どんな事でも」
侑斗の制止を振り切り過去へと跳んだ良太郎は、ライナーファームクリスマスSP(車内が)に変身すると、
電車斬りロッドバージョン(突き)で、さっくりとスノーマンを撃破。愛理が居た湖へと急ぐと、追いかけてきた侑斗と遭遇。
そこで二人が見たのは、カイ&ヤモリ軍団と戦うゼロノスの姿だった!
多勢に無勢、ヤモリ軍団の攻撃を受けたゼロノスの変身が解除されると、倒れていたのは金田一帽子の桜井侑斗。
カイは咆吼とともに空間を切り開いて何かを呼び込み、その衝撃波で倒れていた桜井侑斗と、その湖に居た愛理が消滅する。
「未来は、きっと……」
そんな言葉を残して。
世界は一面の砂となり、歓声をあげるカイ。
「これあれだよなぁ! やったぞぉ! 過去を手に入れたぁ! やったぞ俺……俺の世界だ! これで未来も繋がる!!」
呆然とする良太郎と侑斗を尻目に、砂地ではしゃぎまくるカイ……そう、カイは一度、過去を手に入れていたのだ。
- ◆第46話「今明かす愛と理」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子)
-
「あのカイもこれも過去だ! 俺たちは過去を見てるだけなんだ!」
「でも、過去にこんな事なかっ……」
良太郎はオーナーの言葉を思い出す。
そう、
「なにか重大な事が、抜け落ちているような……」
今回はここで、ノーマルバージョンに戻ったOP。
やたらアバンタイトルの長い今作としては、非常に珍しく短めですが、すぱっとはまりました。
「変わってないなぁ……なんで俺たちの時間が繋がらない?」
「何かが邪魔になってる」
「それって、あーれ、桜井侑斗だと思ってたんだけどなぁ」
「野上良太郎の抜けた記憶の方はどうする?」
「え? なんだっけそれ?」
「おまえ……酷くなっているな」
カイはイマジンの未来へ繋がる過去を手に入れた筈だった……が、世界は変化せず、分岐点はねじれたまま。
過去――2007年1月10に起きた大破壊は、特異点:野上良太郎の記憶によって修復された可能性が高いが、
良太郎の抜け落ちた記憶については不明なまま、桜井侑斗と野上愛理が一度消滅していた、という新たな謎が浮上する。
そして桜井侑斗は、ゼロノスとして電王の前から戦っていた。
問題は解決するどころかより複雑になり、侑斗とデネブは今日は砂浜で焚き火中。
侑斗には良太郎に隠している事がまだあるが、過去の大爆発については知らなかった模様。
「過去にあんな事があったなんて、全然聞いてなかった、つーか」
「桜井にはまだ隠している事があるのかも」
「ったく、なんなんだよ。なぁ……未来の俺って、なんかやなやつじゃね? ……彼女どこが良かったんだ?」
最近、視聴者が微妙に思っていた事をハッキリと(笑)
基本、桜井さんは描写が少ないので、あの愛理さんが惚れた相手=きっといい人に違いない、という以外にプラス要素が無いし(笑)
「桜井は、愛理さんの事も、野上の事も、この時間の事も、未来の事も、全部大切にしてた。一人で、必死に、
戦ってた。だから俺は、カイを裏切って桜井と契約したんだ。……望みが侑斗を戦わせる事だとは思わなかったけど」
ここで明かされる、桜井とデネブ、契約の秘密。
桜井侑斗はもともとゼロノスであった、そしてデネブは、単純にいいヤツだった。
桜井侑斗の方に謎の核心があった以上、デネブの方はひねらず、単純な所に着地。そして桜井侑斗に力を貸す際の契約により、
過去の侑斗はこの戦いの渦中に加わる事となったのだった。
「侑斗……巻き込んで本当にごめん」
「そう思ってんなら、ずっと一緒に戦え! 消えたら承知しねえ」
「……うん!」
戦い続ければイマジンが消滅するかもしれない、という点に関して、こちらのコンビもお互いの在り方を確認、とこの辺りは細かく巧い。
謎が解決するどころかむしろ増えた今日この頃、それでもクリスマスはやってくる。
「ナオミちゃん、パーティやろうよ」
「今日はナオミ、おまえが客だ」
「僕たちの手料理だよ。まあ僕の以外は食べない方がいいけどね」
「アホか、オレの男料理食べたら、惚れるで!」
短冊に書いた「食堂車がずっと満員でありますように」(なお裏にはいつの間にやらMさんにより「ずっとクライマックス!」の文字)
という願い事を見つめていたナオミを、イマジンカルテット、接待パーティ。
いつか来るだろう別れを控え、ナオミにも気を遣うイマジン達がまた、いい味を出しています。
ミルクディッパーでも、クリスマスパーティ中。懐中時計について語る良太郎とコハナ。
「新しい家族の時間を刻むか……なんかいいね」
「僕も姉さんもあんまり家族と過ごした記憶がないから。姉さん、本当に嬉しかったんだと思う」
やはり懐中時計は、良太郎から愛理への秘密のプレゼントだったのでは? しかし、愛理の誕生日は8月というわけではなく、
結婚式の日取りからもズレている。良太郎の卒業を待って行われる筈だったので、結婚式は4月か5月。
「あれ? 桜井さんが居なくなったのって、結婚式の、一ヶ月前、って言ってなかった?
それだと……結婚式は2月じゃない?」
良太郎の記憶の矛盾に気付くコハナ。
そう、桜井侑斗が消えたのが1月10日ならば――結婚式の日取りに関する良太郎の記憶が間違っている、
という事になる。
桜井侑斗の失踪と愛理の部分的な記憶の喪失が語られたのが約30話前の17−18話ですが、そこで「結婚式の一ヶ月前」
「2007年の始め」「良太郎の卒業を機に結婚」と矛盾しない範囲で出されていた断片的な情報が、遂に明かされた
“実際に桜井侑斗が失踪した日付”の判明により、矛盾としてひっくり返る。
……いやはや、気の長い伏線です。
まあもう一つ、良太郎が「卒業寸前の高校を中退」というのがあって、断片情報の仮定から結婚式が3月(卒業式は終わっている筈)
か4月――桜井失踪が2月か3月とした場合、幾ら愛理の件があるにしてもそこで中退は学校側で何とかしてくれるのでは
(その時期の3年生ならほぼ学校にも行かないでしょうし)、という引っかかりがあったのですが、
そこは良太郎が愛理の為に無理をしたと見せかけて、最初から「1月の方がしっくり来る」という仕込みだったようで、実に細かい。
(僕の記憶から抜け落ちているもの……)
無人のスタジアムで独り考え込んでいた良太郎は、カイと出会う。
「なー……おまえ、過去に行きたいって顔してるよなあ? 俺はおまえの抜け落ちた記憶を知りたい――って気がする」
瞬間で間合いを詰めたカイは、良太郎の記憶を読み取る。
「なるほど。そういう事か。消さなきゃいけないのはアレ、桜井侑斗じゃないな。今度は間違えないようにしないと」
カイは過去への扉をセルフオープンし、過去へと跳ぶアルビノレオイマジン。駆けつけた侑斗がカードを当てると、
そこに浮かび上がった日付は。再び――2007年1月10日。
「ずっと騙してくれて、ほんと最高って気がするよ。あはははははは」
軽い一蹴りで、侑斗を吹き飛ばす、と超人的な力を随所で見せるカイ。
「急げ……!」
「どういう事?」
「囮だったんだ……時間の中を逃げてる俺は、イマジンを引きつけていただけだ」
「え?」
「本当の分岐点の鍵を隠す為に。だからおまえにも迂闊に言えなかった。こいつらには絶対知られるわけにいかなかったから」
遂に侑斗の口から語られる、桜井さんの行動目的と、侑斗の抱えていた秘密。
そしてその裏に隠されていた真実、それは――
「でももう、バレちゃったぁ……ははっ。本当の鍵は…………のがみ・あいり」
これが、真のヒロイン力だ!!
「姉さん……姉さんが?!」
――2007年1月10日。
愛理の前に姿を見せるカイ、の中から出現するアルビノレオ。アルビノレオは愛理を直接葬り去ろうとするが、
そこへ出てくる変な列車――連結キングライナー? 愛理は電車に回収され、アルビノレオの前には、良太郎と侑斗が立ちはだかる。
愛理を守る為に変身する二人だったが、前回チンピラ声のアルマジロがあんなに強かったのに、今回は真ヤクザ声(黒田崇矢)だ!
龍が如く!
「おまえ達は俺には勝てん」
R電王と赤茶ゼロノスの猛攻をしのぎ、逆に両者を圧倒するアルビノレオ。
「勝てんと言ったろう」
だがそこへ、響き渡るバイクの排気音。
そこに立っていたのは――桜井侑斗。
「変身」
ここでまさかの、トリプルライダー。
桜井ゼロノス(緑)は、ちょっと俯き加減の変身から、顔を上げてアクションに入るのが格好いい。
そしてここで流れる、Action-Zero!
君の声聞いた気がして
失われた時間彷徨う
存在さえ忘れられた
この想いはどこへ続くの?
桜井ゼロノスはボウガン連射でアルビノレオに突撃し、R電王と赤茶ゼロノスも体勢を立て直す。レオの火球をR電王に任せ、
炸裂するWゼロノスキック! そしてトドメの、電車斬り!!
闇の中で唯一光る
「真実」守るため
時の中で旅を続ける
約束の場所まで
アルビノレオは倒れ、良太郎の呼びかけに答えることなく、桜井ゼロノスは無言で走り去って行く。
たぶん、義弟(予定)のセンスに改めて絶望した。
……いや本当に、これから命がけの大仕事を前に、「電車斬り!」を聞かされた桜井さんの心中を慮ると涙なしでは居られません。
救出された過去愛理はデンライナーの中で良太郎達と出会う。
「少し、未来の良ちゃんかな?」
なんとか状況を説明しようとした良太郎に、現状への理解を見せる愛理。
ここに来て、記憶を失う前の愛理さんが、物語の物凄い中心に近い場所に居た上に、幾つかの事情を知っていたという事実が判明。
こーいう展開(初期から居る主人公に近いキャラクターが事情を知っているのに黙っているせいでややこしくなる)
は一歩間違えると非常に白けるのですが、そもそも愛理がその記憶を持っていない――しかもどうやらそれ自体が物語の核心に関わる、
という力技で、ギリギリ突破。
そして愛理が時の列車について知っているのは、そもそも桜井と愛理が、ゼロライナーと出会っていたからだった。
「消えた未来を、もう一度私たちの時間に繋げないと、未来も、過去も今も、時間は、人が、
ちょっとずつ刻んでいく、大切な記憶だから……」
桜井侑斗は消えた未来を取り戻す為に人知れず戦い、野上愛理もまた人知れずそれを見守っていたのだった。
物語の真相に近づいたかと思いきや、だいぶまたややこしくなって来ましたが、
ゼロライナーがかつてハナが生きていた時間に属していた筈という事は、ハナ/ゼロライナーの時間=良太郎達の時間軸の未来(予定)、
という事でいいのでしょうか。そしてイマジン達は手に入れたその時間(未来)を確定させる為に、その過去の時間(良太郎視点の現在)
を、手に入れようとしている?
……というかそもそも、ハナの言う「消滅した未来」というのは、最初からストレートに「この時間軸の未来」という意味だったのでしょうか(^^;
私そこ、もっとパラレルなものだと捉えていたのですが。
なんか凄く勘違いしていたかもしれない。
さてこうなると、ゼロライナーが桜井と愛理に接触した理由が気になる所ですが、さすがにここまで仕込んで「偶然」と言う事は無いだろうし、
どう持って行くのか気になる所です。そもそも電車であるゼロライナーに意図があるのかさえわからないといえばわからないですが。
過去侑斗と良太郎の戦いを知り、二人を気遣う愛理。
それにしても、前回今回あたりで侑斗は完全に露骨になっていますが、未来の自分の婚約者に惚れちゃっている今の自分、
て凄まじいキャラクターだなぁ……思いついてもやらないというか。
愛理は大破壊のあった湖での下車を望み、止める良太郎を「それはあった事で、必要な事」と諭す。
この台詞から判断すると、大破壊による二人の消滅?はどうも桜井と予定済みの計画だったようですが、その意図は何がなにやら。
「いつか、未来が守られた時、そこに、きっと……だから、今は、忘れなきゃ。侑斗が……待ってるから」
そして愛理は湖で下車し、桜井と共に消滅する。
それが、ここに始まり、これから続く、二人の戦い。
――2007年1月10日。
湖上のボートに残された懐中時計。
復元した?時間で、桜井侑斗は懐中時計とともに囮作戦の為に去って行き、記憶を失った愛理の元へは良太郎が駆け寄る……これが、
過去に起きた真実。
だがまだ、何かが、抜け落ちている……。
真相解明編かと思いきや、むしろ謎が深まってしまいました(笑)
結局、良太郎の抜け落ちた記憶は不明のまま、桜井と愛理の真意も不明、と、語られていない部分が多く、
正直最後はこんがらがってちょっとよくわからなくなってきてしまいました(^^;
エピソードとしてのポイントは、何をしているかわからなかった桜井さん、戦いから最も縁遠いと思われた愛理、その二人が、
実は二人なりのやり方で戦っていた、という事の判明でしょうか。
諸々すっきり解決して収まってくれる事に期待。
「最悪って気がするよ、本当に最悪」
アルビノレオイマジンによる過去愛理の抹殺に失敗したカイは、空に浮かぶイマジン達の粒子を吸収すると、
自らの体を通して大量のイマジンを実体化させる……何故か、モグラ。
まあモグラ、デザインは全編通しても印象深くて面白いですが。
後とりあえず、少なくとも3体あるからか(笑)
カイの動向に緊迫感が増す中、それはそれとして、次回、お正月。
そういえば『ディケイド』以降の平成ライダーは、放映スタート(&終了)がズレた事で、
物語のクライマックス近辺でクリスマスとお正月をしなくてはいけない、場合によっては制作進行上の理由で総集編を挟む、
というのが無くなっているのだなぁ。
ある程度、お約束となったのは90年代半ば以降かと思いますが、ちゃんと調べた事はない。
さて、伏線関係はここまで来たらもうあまり考えずに、本編の流れを楽しみにしようと思っていたのですが、
懐中時計に関してちょっと思いついた事があるので、メモ的に幾つか。
一つ謎になっている「良太郎はなぜ懐中時計を8月に予約したのか」ですが、パッと思いつくのが、愛理さんの妊娠。
一般的に妊娠が何ヶ月目ぐらいで分かるのか知りませんが、例えば「妊娠三ヶ月」という言葉は耳にしますしその前後でわかるとして、
とすればクリスマスの時点で妊娠二ヶ月が判明したとすれば、8月ぐらいが出産予定日になる筈。注文しに来た良太郎が「嬉しそう」
だったり、「新しい家族」というのがキーワード的に繰り返されている事も、推測の補強になります。
となると、良太郎の記憶にある結婚式の予定が「4月か5月」なのに対し、「桜井の失踪の一ヶ月後なら2月の筈」というのは、
妊娠でお腹が目立つ前に結婚式を早めたのではないか。
そして良太郎は、愛理の妊娠に関連付いた記憶だけが無くなっている。
だから、出産祝いの懐中時計に関する記憶や、早まった結婚式の予定に関する記憶が矛盾している。
仮にこの推測通りだとしても、どうして妊娠の事実が無くなっているのかとか、それが何を意味するのか、などはさっぱりですが、
そう考えるとなんとなく繋がるのではないか――って気がする。
一連の流れを見ると桜井さんはこの1月10日の件でカイの目を何かから誤魔化そうとしているっぽいので、その、
隠した何かが子供なのか。そこまで考えると、ゼロライナーが桜井と愛理の前に姿を見せた理由、もなんとなく見えてきますが。
(余談ですが、桜井と愛理がゼロライナーと出会った映像が、過去に何度か挿入された、
二人で星を見ていたシーンと繋がっているぽい辺りも、細かい。というか、下に良太郎居たのでは(笑))
愛理さんの
「いつか、未来が守られた時、そこに、きっと……だから、今は、忘れなきゃ」
という台詞も、子供の事かもと考えると、しっくり来るような気はします。
まあただ、(一応)子供向け番組としてはデリケートなネタなので、そもそもこういうネタが可能なのかわかりませんが。
今時は逆にこの程度、気にされないのかもしれませんけど。
全く見当外れという可能性もあるし(笑)
あと今回判明した桜井さんの行動は、根本的な解決ではなく、時間稼ぎなわけですが……カイが初登場時に
「そろそろ本当に片付けないと間に合わない」と発言していたり、前回今回の物忘れに対して「酷くなっている」
という言葉があったりというのを見ると、カイの方にも何らかのタイムリミットがあって、
時間切れに持ち込めば桜井さんの勝ちという事なのか。
次回、衝撃の時間差リストラ?!
- ◆第47話「俺の最期にお前が泣いた」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
-
年明けて2008年――良太郎達はデンライナーで正月を満喫し、
オーナーは駅長とエクストリームフラッグバスターチャーハンデスマッチの決着を付けるべく、ターミナルに向かっていた。
今を逃すとしばらくターミナルには行けない……そう、未来の繋がる日が、近づいてきていたのである。同時にそれは、
イマジン達との別離が近い事も意味していた……。
「ま、そういう事だよね……」
順序の問題なのか、他より消耗の早い感じのウラとキン、それとなく色々と匂わせる台詞と、砂演出。
そんな中、書き初めをするキンタロスが書いたのは、
「笑うで」
キンタロスは皆に、今年の抱負として書き初めをさせようと半紙を配る。
「まあ、おまえの望みを言え、ちゅうやな」
「僕はただ……今年も、モモタロス達と一緒に戦っていければいいかな」
「それやったら大丈夫や。任せときぃ」
元来、終わるべきであり終わらせるべきものであったヒーロー物の戦いを、日常化し、それもまた人生であるならば、
楽しまなくては損だ、むしろ楽しもう、というのは東映ヒーローとしては『超光戦士シャンゼリオン』(1996)で描かれたテーゼですが、
東映プロデューサーとしては白倉−武部ラインなので、多少の思想的影響はあるかもしれません。
この、ヒーロー性が日常の人間性を駆逐するのではなく、日常の人間性に包括された所にヒーロー性が存在する、いや、
そうでなくてはいけないのではないか、というのは、
90年代から徐々に形作られ00年代に明確に打ち出されていったポスト80年代ヒロイズムとでも言えるものの一形態(勿論、
個々の作品においてはそれ以前にも例があるかとは思いますが)。
ちなみにその、ヒーロー性と矛盾しかねない人間性の部分を取っ払ってみて、純然たる正義のヒーローの化身として誕生したのが
『特捜ロボジャンパーソン』(1993)であり、結果としてジャンパーソンがヒーロー性の抱える狂気を存分に抉りだしたり、
絶望的に人間愛を信仰しているというのは、00年代から振り返ってみた時に、かなり先進的であったと思えます。
『特救指令ソルブレイン』(1991)の場合、ヒーロー性と人間性を相克させるのではなく、ヒーロー性にリアリティをぶつけてしまった上に、
リアリティに軍配をあげてしまった事で脱線してしまいましたが、90年代初期の模索が生んだヒーローの敗北、
であったのかもしれません。
……話を『電王』に戻します。
「野上愛理……それにアレ、桜井侑斗。やってくれるよなぁ」
未来への分岐点に関する真相を知り、激高するカイは、前回呼び出したモールイマジ軍団とお喋り中。
とりあえず一画面に3体までは置けるモールイマジン、それ以上の時は、CGで水増し。
「潰さないとな……何も残らなくなるまで、潰す」
腹いせに、モグラに殴る蹴るの暴行。ここでの、イマジンに対する「誰かの記憶がなけりゃ存在する事もできないくせに」
「この時間を手に入れるって事は、この時間の人間の記憶を手に入れるって事だぞ」という台詞は、最終盤への伏線という所か。
「だから早く潰すんだよ。今も過去も、全部俺たちのものになる。アレ、野上愛理潰せば」
正月早々、初詣先でダブルで鼻緒が切れるという不運に見込まれた良太郎は、愛理をガードする為に侑斗が神社へ来ている事に気付く。
デネブが勝手に仕立てたという丈の足りない袴を見て一言。
「七五三みたいだね」
参拝者、参拝者の皆様の中に、お医者様はおられませんかーっ。
年明け早々、良太郎きついよ、きっと何か怒ってるよ!
多分、桜井侑斗に。
2007年1月10日――あの日、桜井侑斗と愛理はいったい何をしようとしていたのか。そして、良太郎は、何を忘れたのか。
桜井侑斗に踊らされているとしても、やるべき事は、愛理のガードだ、と改めて意志を固める二人だったが、
その目前で突如崩壊していくビル群。
「過去でイマジンが暴れてる……」
「くっそ、いったいどの時間に」
その時、風を切るJPカード!
……じゃなかった、カイが投げた電車のチケット。その日付は、2000年6月16日。しかし、カイが自ら姿を見せた事といい、
愛理を狙う罠である可能性は高い。変身カードの残り少ない侑斗が現在へ残り、良太郎が過去へ跳ぶ事になる。
変身カードが残り少ない=現在の方が都合がいい、理由が全くわからないのですが、
フェロモンにやられているから仕方がない。過去でイマジンと戦うより、
現在で愛理さんをガードする方が盛り上がる、盛り上がるさ!
「“過去が希望をくれる”……僕たちが踊らされてるとしても、それは本当だと思う。過去も今も未来も守りきって、
姉さんと桜井さんに思いっきり文句言ってやろうよ」
良太郎は、桜井のものだった懐中時計を侑斗に渡し、デンライナーは過去へ。そこでは、モール&再利用イマジン軍団が大暴れしており、
良太郎はライナーフォームへと変身する。再利用のお約束として一体一体の力は弱まっているようだが、
とにかく数の多いイマジンに手を焼く良太郎。
(変だ……なんか、時間稼ぎしてるような)
一方現在では、侑斗の読み通り、愛理がイマジン軍団に狙われていた。侑斗は愛理の前でゼロノスに変身して彼女を逃がし、
デネブ経由で、現在で愛理が狙われているという連絡がデンライナーへともたらされる。
物語の焦点がそこからはズレているのでもうツッコむ所ではないのですが、なんだかんだで、
デネブのキャンディ大作戦が効いている気がして仕方がない(笑)
愛理が危ない……焦る良太郎だったが、過去で暴れるイマジンを放置するわけにもいかない。その時、
デンライナーを飛び降りたキンタロスがイマジン軍団の攻撃を防ぐと、ライナーフォームからベルトを奪い取り、
変身の解けた良太郎へ謎の物産セットを渡す。
「おい良太郎、おまえの望み、果たしたでぇ」
それは五月人形の金太郎……と、その他色々。
「これがモモの字カメの字。オレに、リュウタや。契約完了」
書き初めの際に口にさせた「今年も、モモタロス達と一緒に戦っていければいいかな」という良太郎の何気ない一言を“望み”として、
契約完了を主張するキンタロス。
明らかに以前から準備していたとおぼしく、良太郎の性格まで読み切ったキンちゃん、思わぬ策士ぶりを発揮。
「ただ消えるのを待つなんて、キンちゃんには出来ないし」
「あんた達、いつの間に……」
「こんなのは、わかりきってたことだろうが……。それより、クマにこのままいい格好させとく気かよ」
「クマちゃん、もう戻ってこないつもりだ。だって、実体化しちゃったら、デンライナーに乗れないし」
「あの馬鹿グマがぁ!」
「もともと、良太郎ちゃんとチケット共有でしたから……」
良太郎との憑依状態を解消してしまったキンタロスは、もう、デンライナーに乗る権利を持たない。
愕然とする良太郎の前で、キンタロスはベルトを装着するとアックス電王へと変身、再利用イマジン軍団へ向けて斧を振るう!
「気にするな! オレはとっくに、消える筈やったってゆうたやろ! おまえのお陰でここまでおれたんや!」
「そんなの……僕はそんな凄い事したつもりない!」
「凄い事なんや! 命だけの事や無い。オレは時間も持てたんやからな」
「時間?」
「カイの阿呆が云うとったように、オレらには、思い出すような過去はない。そやけど、良太郎に拾われてからの事は、
全部思い出せる。俺は自分より、この時間を守りたいと思うとる!」
あれだけ個性の濃いと思われたイマジン達は、しかし、思い出/過去/記憶――すなわち時間、ひいては己自身を持たない存在だった。
それ故にイマジンは人の記憶に依存し、その事によって存在を保てる。
そんなイマジン達が良太郎との旅の中で、思い出を――時間を――自分だけの記憶を、手にする。
自分を、手に入れる。
そして自己のアイデンティティを真に確立したからこそ、彼等は「自分」よりも、「今」を守ろうと決意する。
それが、何よりも「自分」らしいから。
「良太郎……デンライナーに乗れ、戻るぞ」
「モモタロス……」
「クマ公は置いてく」
「モモ!」
「いいんだよ! 良太郎、急げ!」
キンタロスの覚悟を汲み、決断を下すモモタロス。アックス電王は回転ダイナミックチョップで群がるイマジン軍団を蹴散らすと変身を解除。
キンタロスはベルトをデンライナーへと投げ込み、未だ尽きないイマジン軍団を食い止める為に立ち向かっていく。
「戻って戦うんや。おまえは強い! 良太郎、はよいかんかぁ!」
愛理を、今を、未来を、過去を守る為、良太郎はデンライナーへと乗り込み、走り出す電車。
「キンタロス……きっと迎えにくる……」
「おおきに」
デンライナーの小さな窓から、過去に残されていくキンタロスを見つめるシーンは、
少しばかり劇場版のラストシーンを思い起こさせます。
「そんなら本番いこかぁ……オレの強さに、おまえがわろた」
デンライナーを見送り、イマジン軍団へと向き直るキンタロス。
「あかん……しまらんのぅ。オレの強さは――やっぱ泣けるでぇ!」
現在へと急ぐデンライナー……だがそこではゼロノスが大量のイマジン軍団に足止めを食い、
ひとり逃げた愛理の前にはカイが姿を現していた。
「なぁ……なんでおまえみたいなのが、分岐点の鍵なんだ」
そしてカイの手刀が、愛理の背中へ突き刺さる――!
イマジンの設定はこれまでも小出しにされていましたが、それと、1年間の物語の意味、をダイレクトに繋げ、
出来上がったパズルの綺麗さはお見事。
M、U、K、に関しては人格とトラブル率はともかく、精神的には良太郎より“大人”ポジションに描かれていたわけですが、
実は物語は主人公・良太郎の成長話だけではなく、彼等の自己確立の物語でもあった、というのは鮮やか。
同じく小林靖子がメインライターを務めた『未来戦隊タイムレンジャー』において、
最終盤にしてサポートロボがロボットである自分を乗り越える、という名エピソードがありましたが、それを彷彿とさせつつ、
全体として更にそれを推し進めたような構造。
スキルバランス的に若干の使いにくさが見えていたキンタロスも渡世の仁義を果たし、らしくて良い見せ場となりました。
残す所、あと2話!
- ◆第48話「ウラ腹な別れ…」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
-
前回キンタロスが良太郎に渡したイマジンセット。
ウラタロスを現すかめゼリーってどこで見つけたんでしょう(笑)
モモさんがピーチゼリーではなく、股引なのは、きっと傷つきやすいモモさんへの優しさ。
最初、シリアスな場面でこの赤鬼は何を握りしめているのだろう、と素で首をひねりましたが(笑)
「おまえら辛気くせえぞぉ。戦いは勢いなんだ。こんなんじゃ負けちまうっつうんだよ。そうだろ、良太郎」
キンタロスの思いを無駄にしない為にも、今は進むしかない。精一杯顔を上げ、現在へと向かう一行だったが、その途中でウラタロスは、
車内に潜り込んだNEWモールイマジン達が、先頭車両に爆薬を仕掛けているのを発見する。既に爆薬はセット済み、
後は起爆装置を押されれば、デンライナーの先頭車両は粉々に爆破され、彼等は時の中を永遠に彷徨う事になるだろう……。
「そろそろ僕も、そっちに戻ろうか」
「なに?」
「おまえ、まさか……」
「千の偽り万の嘘。僕が嘘をつき続けた理由、教えようか」
その頃……クライマックスだというのにオーナーはずっとチャーハンで対決していた。
駅長と二役なので、撮影の手間だけは、無駄にかかっています。
現在では侑斗とデネブが愛理の元へ急ぐが、愛理は道に倒れて気絶していた。そしてそれを見つめるカイは、
何か恐ろしいものを見たような表情で、拳をわななかせているのだった……。
カイはデザイン上のハッタリが無い謎の悪役、という事で難しいキャラクターだったと思うのですが、
この最終盤で非常に作品世界の中にはまってきて、演技と演出で積み上げてきた、良い仕事。
そして、突如、脱線するデンライナー。
「悪いけど降りてもらうよ。元の時間には、帰らせない」
ウラタロスはモグラ達と一緒に食堂車に乗り込んでくると、一行を強制的に途中下車させる。その日付は――2007年1月9日。
「嘘でしょ?! まさか、あんた、最初っから……」
「そう。最初っから。もっと疑っておくべきだったね?」
「カメ、てめぇマジかよ? クマ公があそこまでしたの見てたろうが。そいつを無駄にすんのかよ!」
「手に入れた時間を守る……か。けど自分が消えたら終わりだよ。あのクマ、やっぱり脳みそ干物だね」
なぜか電車の外でも実体化しているモモとリュウを交え、良太郎達はデンライナーから追い散らされ、
デンライナーを奪われてしまう……。
一方、愛理の中を覗いた現在のカイは、なぜか恐慌状態に陥っていた。
「なんだあれ……。分岐点の鍵なのに鍵じゃない。……どうなってんだ…………。俺最高に怒った顔してるよな……してるよなぁ!!」
そして一体のイマジンを吐き出す。
それは、銀の死神――デスイマジン。
「もう全部潰せよ……「「潰せぇ」」
ここの気持ち悪そうなカイは、吐きそうな顔しながら何故か後頭部を叩く、という謎アクションが秀逸(笑)
カイが最強のイマジンを出現させている頃、過去の良太郎達は路地裏でサバイバル中。灯油缶に薪をくべて暖をとっていた(笑)
……良太郎、財布ぐらい持っていないのか、と思ったのですが、イマジン達が居るので、人目につく所に出られない、という事か。
「あのカメ野郎……ずっと騙してやがったのかよ!」
「嘘つきだとは思ってたけど……」
「もう、あたしの食堂車には戻れないんですかね。これから、どこでコーヒー淹れればいいんだろう……。ウラちゃんも、
女の子には優しかったのに……」
今更ながら、ナオミのアイデンティティは食堂車でコーヒー淹れる事にあったのが判明。またここで、
両肩剥き出しで寒そうなナオミに、良太郎が上着をかける、という珍しい絡み。この辺りは、かばわれ守られる側だった良太郎の成長、
というニュアンスか。
「ねえ、なんで……。クマちゃん居なくなって、カメちゃんが変な風になって……なんか、凄く嫌だぁ」
ウラタロスの突然の裏切りに、モモタロスは荒れ模様、その他の面々も暗く沈み込む……だが。
「みんなおかしいよ。ウラタロスと一緒に居た間のこと、忘れちゃった? 僕は覚えてるよ、全部。ずっと一緒に戦ってきた事。
だから……心配してない」
良太郎、ずっと目が据わっていると思ったら、そういう事か。
この状況においてもなお、良太郎ただ一人だけが、ウラタロスを信じていた。
それは、無防備で愚かな優しさと表裏一体ではあるが、紛れもなく、良太郎の強さ。
そして良太郎は、今この時間で一つ、やるべき事を見つけていた。彼等が強制下車させられたのは、
くしくも2007年1月9日――愛理が記憶を失う前の時間であったのだ。
コハナとともにミルクディッパーへ向かった良太郎は、そこで過去愛理が、割と直球で過去良太郎に事情を説明していた事を知る。
「僕が時間を元に戻すとか……意味わかんないよ!」
それはそうだ、と店を飛び出してきた過去良太郎と接触する良太郎。
「ねえ、今言ってた“新しい家族“って……」
「ね、姉さんに、赤ちゃんが。桜井さん、との……」
「姉さんに、赤ちゃん……」
瓜二つの自分と出会った事で、目を回して気を失う良太郎。……そういえば、久しぶり。
「そんな……僕そんな事、全然……」
桜井と愛理の間の子供……それは今の良太郎の記憶には、全く存在しない。
「ねえ、もしかしてそれが、良太郎の欠けた記憶」
良太郎は過去良太郎の上着を身につけ、すり替わってミルクディッパーの愛理に話を聞きに行く。
「赤ちゃんを忘れるなんて、どうしてそんな……」
「この子を……イマジンから守る為に」
イマジンによる時間の破壊は、特異点たる良太郎の記憶によって修復が可能。だがその時、良太郎の記憶の中に「赤ちゃん」
の存在が無ければ?
「欠けた記憶で修復された時間には、赤ちゃんはいない。イマジンから赤ちゃんを隠せるのよ。そうしなければ、
イマジンは何度も何度も襲ってくる」
「でも、どうしてそこまで……」
「この子は……良ちゃんと同じ、未来の特異点なの。だから……明日侑斗はカードを使う。
忘れなきゃいけないから。未来を守るために。この子も、侑斗の事も」
今ついに明かされる、最後のピース。
正真正銘の分岐点の鍵は、桜井侑斗でも野上愛理でもなく、二人の間の子供であった。
本来なら、時間が破壊され、誰の記憶からも失われたならば、その子供は時の運行から零れ落ちる筈である。しかし、
特異点であるが故にその子供は、過去の破壊の影響に左右されずに、存在を確立し続けられる。
修復された時間には存在していないのに、しかし未来には存在する。
確かに存在しているのに、イマジンが探す過去には存在しない。
まさしく特異な存在と化すその子こそが、今と未来を繋ぐ全ての鍵。
ゼロノスカードを使って部分的に記憶を消費した上でカイに故意に大破壊を行わせ、良太郎の記憶によって修復された世界に、
鍵たる子供を欠落させる事こそが、桜井侑斗の真の計画であった。
裏技……というか、もはやバグ技。
極めて綱渡りな計画ですが、これで、ゼロライナーが侑斗と愛理の元を訪れたのは、二人が未来への鍵へと直接繋がっていたから、
という事で一応の説明がつきました。
そして桜井侑斗がこれだけの覚悟を貫き通したのは、今愛する人達の為だけではなく、まさしく、未来の為だった。
表に出ている二人のヒーローだけでなく、この最終盤に、
誰にも知られずに戦い続けていたもう一人のヒーローの姿が鮮明に浮かび上がる、とお見事、実にお見事。
しかも地味に30代ライダーだ!
物語の最初から最後までその陰で、一人の男が、“家族を守る為に”戦っていたという構図を入れたのは実に素晴らしい。
それにしても、ゼロライナー(のオーナー?)は、相当細かく、桜井&愛理に事情を説明していた模様。
一番丁寧に事情を説明してくれる人は、物語スタート時に既に不在だった、と(笑)
言われて急に忘れられるものでなし、良太郎が都合良く赤ん坊の記憶を忘れているのは、ゼロノスカードの影響、
という事で良いのでしょうか……?
過去改変の影響は特異点の記憶に影響を与えられないけど、ゼロノスカードならもしや……みたいな話は、
数話前にウラとキンが会話していましたし、あれがこちらの伏線だったとすると、納得。
桜井侑斗が物凄い策士すぎますが、そこは愛の力という事で、物語として美しいので良し。
「姉さん達は……そこまでして守ったんだ――未来を」
良太郎達が全ての真相を知った頃、路地裏で待機中のモモタロス達の元に、モグラ3体を引き連れたウラタロスがやってきて、
デンライナーを動かす為のパスの引き渡しを要求する。
「カメ……やっぱマジなのかよ?」
「だったら……?」
狙い澄ました流れで、ここで、モモタロスVSウラタロス、お久しぶりのガチ喧嘩!
激しいバトルの最中、ナオミ、モグラたちの数に気付く。
「1、2、3……あれ、今、デンライナー……からっぽ?」
ナオミさん、ここに来てまさかの大・活・躍。
ナオミとリュウタロスはデンライナーを取り戻すと良太郎とコハナを回収し、郊外に戦いの場を移していたモモタロス達の前に電車が滑り込む。
「あ〜、誰か留守番残るべきだったねぇ」
デンライナー強奪の為にパスを手に入れる必要がある、とモグラたちをそそのかしたウラタロスは更に、モグラの爆弾スイッチを取り上げる。
スイッチをONにするが、既に爆弾は解体済み。全てはウラタロスの、千の偽り万の嘘。
前回、キンちゃんの思わぬ策略を見せつけられたウラタロス、サギ師の品格に賭けて、モールイマジン達を一本釣り。
ウラタロスの場合、キンタロスと逆に、話術スキルが高すぎて常に全力を出せない、
というのがありましたが釣り師フルパワーでこれまた見事な見せ場。
ウラタロスは駆け寄ってきた良太郎からベルトを奪うと、自らロッド電王に変身。
いつもより沢山、回っております。
ロッド電王はモグラを一体片付けると良太郎を電車に押し込み、変身を解除したウラタロスはベルトとパスを車内へ放り投げると、
自らは過去へ残る事を選ぶ。デンライナーが現在へ向けて発車する中、残りのモグラを足止めして戦うウラタロス。
「おまえたちには感謝してんだよねぇ。これ以上、あっちにいたら、クールで格好いい僕じゃ、
居られなくなりそうだったから。僕……嘘泣きしかした事ないし。時間を手に入れるのも、良し悪しだよねぇ」
消滅の近づく我が身を前に、ウラタロスもまた、「自分」らしくある為に、自らの戦いを選んだのだった。
「今夜は……僕に釣られてみる?」
その頃現在では、病院に運び込んだ愛理を侑斗が甲斐甲斐しく看護していたが、そこへもイマジンは迫る。
「ここから先は立ち入り禁止だ!」
イマジンの大軍団に立ちはだかるゼロノスとデネブだったが、そこへ現れる、デスイマジン。
「今日、ゼロノスが死ぬ。覚えておけ」
他のイマジンとは別格の力に、病院の守りをデネブに任せたゼロノスはデスイマジンを病院から引き離すが、
大剣の攻撃をものともしないデスイマジンに大苦戦。
そして――
「よく見たらこんな時間。面白くもなんともない、って気がするよ」
分岐点の鍵を見失い、混乱の極みで怒れるカイは、この時間を破壊しようと空間に亀裂を走らせる。
「どいつもこいつも……消えろぉ」
果たして、デンライナーは間に合うのか。
現在の運命は。
次回、最後までクライマックス!
- ◆最終話「クライマックスは続くよどこまでも」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
-
「始まるな……この時間は消える。おまえもだ」
ゼロノスを追い詰めていたデスイマジンだが、空間断裂の状況を見てカイのガードへと向かう。
「もっとだぁ……もっとぉ! 分岐点でも特異点でもなっっっんでもいい。こんな時間、全部きれーーーいに吹き飛ばしてやる」
かつて2007年1月10日に引き起こされた大破壊が再び迫る中、現在へと到着したデンライナーから降り立つ、良太郎とモモタロス。
「おいおい、あれでこの時間吹っ飛ばすつもりかよ」
「させないよ……この時間は、絶対消させない」
歩み出す二人、にオープニングタイトル(歌なし)で、最終回スタート。
ホント平成ライダーは、時間の使い方が贅沢で素敵だなぁ。
「気合い入れてけよ、良太郎。俺たち二人だけなんだからな。おまえ。ここまで来て、迷ったりはしてないだろ?」
言葉に詰まる良太郎だったが、砂を吹くモモタロスの体を見て、最後の覚悟を固める。
「……モモタロス!」
「……なんだ」
「望みを言うよ」
「言っとくが、できねえ望みは聞かねえぞ」
「僕と…………最後まで一緒に戦ってくれる?」
近づいてきたイマジン達を切り払うモモタロス。
「おまえの望み――聞いたぜ」
遂に良太郎が望みを言い、それを聞くモモタロス。
またここで、良太郎がモモタロスの名前を改めて一度呼ぶ、というのがいい。
良太郎もライナーフォームに変身し、二人はカイを止める為、カイの居るビルの前をふさぐイマジン軍団へと突撃する。
一方、デスイマジンの猛攻を受けて変身が解けてしまった侑斗の前にもイマジン軍団が姿を見せる。変身しようとする侑斗だったが、
遂にキャンディ大作戦もとい赤いゼロノスカードも0。そこへ病院前のイマジン達を殲滅したデネブが駆けつける。
初期の強さに比べて自然と弱体化して、最近はサポート役のような扱いになっていたデネブでしたが、ここで大活躍。最終回ですから、
ノリがいい方が勝つのです。
もう変身は出来ない、しかし、立ち止まるわけにはいかない。
「“過去が希望をくれる”……やるしかないだろ!」
侑斗は懐中時計を手に徒手空拳でイマジン軍団へと突撃し、消滅が近づいている事を感じながら、デネブもそれに続くのだった。
モモタロスがイマジン達を引きつけている間にカイの元へ辿り着いたR電王だったが、その前にデスイマジンが立ちはだかる。
「無ー駄。この時間、潰すから」
R電王はデスイマジンに叩きのめされ、食堂車で座り込んでいたリュウタロスは、
良太郎の危機に反応してデンライナーを飛び出していく。
前後の台詞を考え合わせると、リュウタロスが状況を怖がった為に車内に置いていく、というようなシーンがあったけど、
尺の都合でカットされたとかっぽい。
迫る大破壊……モモタロスはビルの前で乱戦中、侑斗は愛の力を拳に込めて生身で敵陣突破中、と最終回らしく、着ぐるみと中の人達、
ド派手に大投入。
R電王の奮戦むなしく、カイは遂に破壊エネルギーを呼び込むが、その途中、R電王は捨て身のタックルを決め、
カイと共に屋上から転落、身を挺したリュウタロスによって、良太郎は落下の衝撃からは守られる。
個人的にはもう一回ぐらい、リュウタロスと“お姉ちゃん”を絡めて欲しかったのですが、
ここでお姉ちゃんに固執しないで良太郎を守る所に、リュウタロスの成長がある、という流れか。
前振りにちょっと尺が足りなかったぽいのですが(^^;
ビルから転落しながらも平然と瓦礫の中でほくそ笑むカイに、近づく良太郎。
「過去なんか覚えてなくても、時間なんて手に入る。これからが俺たちの時間だぁ。へへへ」
「違うよ。この時間も未来も、君のものじゃない」
身を起こしたカイは、現在の状況に気付く。カイの力で破壊は引き起こされたが、それはごく一部に留まっていた。
カイの目論みはまたも、失敗に終わったのだ。
「そっか……おまえが邪魔したんだ。――ったく、もっかいやんねぇとなんねえだろ」
「無駄だよ」
「なんで」
「君は気付いてないんだ。姉さんと桜井さんが守ったものに。消えた筈の未来に、特異点が残ってるって」
「未来の特異点? そんなものどこに」
「姉さんたちは生まれてくる筈の家族を忘れる事で隠したんだ。その子は誰の記憶からも消えたけど、
だからこそ君さえ気付かなかった。いつも目の前にいたその子……ハナさんに」
カメラに対する良太郎の立ち位置がちょっと不思議だな……と思ったら、良太郎が目線を動かして、そこにカメラのピントが合うと、
立っていたのはコハナ。
そう、彼女こそが、桜井侑斗と野上愛理がイマジン達から隠し通した、真の鍵であった。
「じゃあおまえが時間を繋ぎ止めてたってことか。だから俺たちの時間は繋がらなかった」
「そう。繋がるのは、私たちの未来」
時の世界で、分岐点から伸びていく線路……。
「うあぁぁぁぁぁ! さいっこうだよおまえら! さいっこう! 今すぐ……潰す」
良太郎とコハナは、廃墟に群がるイマジン軍団に囲まれる。
「俺死んでほしいって……顔してるよなぁ」
ここで良太郎がカイにネタばらしする理由は実は全く無いのですが、さすがにこれは、台詞で説明しないとわかりにくい
(ピンと来なかった人がすっきりしないままクライマックスを迎えてしまう)という判断か。
お陰で良太郎、悪の黒幕のような立場に(笑)
まあ今作の本当の黒幕は、ある意味で桜井さんだったので、義弟として黒幕代行といった所か。
そして悪の黒幕らしく、相手に大逆転の付け目を与えてしまう(笑)
その頃、爆心地へひた走る侑斗に、デネブが隠し持っていた最後の緑ゼロノスカードを手渡す。
「桜井が俺に託していた、最後のカードだ。これで、桜井の存在は全て消える。侑斗は、
桜井と違う時間を生きていく事ができる。それが……桜井が侑斗に託した、最後の希望だ」
良太郎とコハナに迫る再生イマジン軍団とデスイマジン。
「今度こそ……消えろ」
だがそこへ走り込んでくるデンライナー。
「ちょっと待ったぁ!」
降りてきたのはモモタロス……に続いて、ウラタロス、キンタロス。
「ウラタロス、キンタロス、みんなどうして」
「ナオミちゃんが迎えにきてくれた」
「やー、オーナーも居なかったんで、頑張ってください!」
「ナオミはやる時は、やる女やでぇ」
ナオミさん、最後の最後でまさかのルール違反。
さんざんシリアスに展開しておいて、ここで裏技中の裏技が炸裂するという、まさに『電王』。
「おまえら……消えてもいいわけ?」
「うるせぇ……もうそういう話は、うんざりなんだよ」
再び揃ったイマジンカルテット、カイのイマジン軍団と戦闘開始。良太郎はガン電王へと変身する。
「おまえたち倒すけどいいよね? 答えは聞いてない!」
そしてコハナに迫るイマジンを殴り飛ばした侑斗(関係を考えると、最後の最後で実に趣深い)は、最後のカードをその手にし、
ゼロノスへと変身。追いついたデネブと二人揃えて、
「「最初に言っておく。俺たちはかーなーり、強い!!」」
と、バッチリ決まりました。
台詞のポーズ中に振り回すゼロノスの大剣をデネブがしゃがんでかわすのが、ちょっとアルゴリズム体操(笑)
そして始まるクライマックス大乱戦。
電王はガンからアックス、ロッドと、フォームをチェンジし、次々とデスイマジンと交戦。
一方、戦場の匂いに沸き立つ修羅の血を抑えきれなかったのか、イマジンを背後から鉄パイプで殴りつけたコチャンプだったが、
かえってイマジンに目を付けられてしまう。
チャンプ、間違っているよチャンプ!
貴女の最凶の武器は、拳だ!
だがその時、コハナの危機を救う白い影。
「降臨……満を持して」
流れるは、キンちゃんのDouble-Action並みに恐ろしい、あのBGM。
「ジーク……?」
「姫、久しぶり。小さくなった姿もまた、麗しい」
まさかのジーク降臨!(笑)
小型化したのにすぐにチャンプに気付くあたりが、さすがすぎます。
「たまたま居たんで、連れてきちゃいました☆」
オーナー不在で、ナオミさんフリーダム。というか、普段のストレスを解消しているように見えない事もありませんガクガクブルブル。
ここに来て、完全に空気が変わってしまう最終決戦(笑)
ジークはテーマ曲のイントロが強烈すぎて、アレ流れると全て吹き飛んでしまいます。
ここまで色々あったけれど、徹底的に、最後は楽しく。
実に今作らしいクライマックス。
そう、
「どっちが強いかじゃねえ。戦いってのはなぁ……ノリのいい方が勝つんだよ!」
なんだかんだで能力は高いジークは、コハナに群がるイマジン達を蹴散らしていく。
「姫は、この私が守る。家臣一同、心おきなく働くがよい」
「だれが、家臣だよ! てめえに言われなくたってやるんだよ!」
ここでモモさん、良太郎に憑依。
真打ち登場ソード電王、なんか変な排熱してポーズ追加で
「俺、参上!」
途中のポーズはやっぱりあれですか、ノリがいいポーズなのでしょうか。
「へへっ、良太郎!」
(うん!)
「行くぜ行くぜ行くぜ!」
ゼロノスも、デネブと合体、アルタイルからヴェガフォームへ。
「デネブ、来い!」と呼ばれた際、なんかデネブが凄い回転ジャンプしています。
デネブがデネブなのであまり目立たないけど、デネブの中の人って、けっこう凄いよね……と思って軽く調べたら、
デネブのスーツアクターは、押川善文さん。平成ライダーシリーズでは『アギト』のギルス以降、ゾルダ、
ギャレンなどメイン級のライダーを務め、現在ではキョウリュウレッドという、エース級の方でした。
「最後に言っておく! 侑斗をよろしく!」
ダブルライダーはデスイマジンに猛攻を加え、ひるんだ所でモモさんの号令一下――
「おめぇら、行くぜ!」
「いいよ!」
「よっしゃ。泣けるでぇ!」
「いぇい!」
「うむ」
「正真正銘のクライマックス……必殺!」
ソード電王の必殺技で飛ぶアレを、各々が武器で受け止めながら増幅しては投げを繰り返し、
次々とイマジン軍団とデスイマジンへ連続攻撃……なんかもう、無茶苦茶ですが、ノリがいい方が勝つので仕方がない。
そしてヴェガフォームのボウガンが炸裂し、最後に反射した切っ先をS電王が受け止め、今放たれるは――
「俺の必殺技! ――ファイナルバージョン」
クライマックスに怒濤の近接滅多切りがデスイマジンを切り刻み、最強のイマジン、大爆死。
その光景に、崩れ落ちるカイ。
「終わった……くそぉ……けどおまえらも消える。イマジンはみんな、消える……」
捨て台詞を残し、砂となって消滅するカイ……そして残りのイマジン達。
それは当然、モモタロス達も例外ではなく、強制的に変身解除された良太郎と侑斗の周囲には、イマジンは、
誰一人として存在しないのだった――。
「デネブ……」
ゼロライナーへ走った侑斗は、デネブの作った食事が残されているのを目にする。
「侑斗へ 椎茸ちゃんと食べて」
最後のメッセージに、静かに嗚咽する侑斗。
「モモタロス……ウラタロス、キンタロス……リュウタロス……まだ話したい事があったのに……。さよならも言えなかった」
膝をつく良太郎。言葉をなくすコハナ。
廃墟を風が吹き抜け、残るはただ砂ばか――
カメラ手前に見覚えのある後頭部。
何故か消滅しなかったイマジンカルテット&ジークが、地面の窪みに隠れてヒソヒソ話をしていた。
「やっべえなぁ……タイミング逃した。困ったぁ……」
「先輩、早く出てった方がいいって」
「無理だよおめえ。あんだけ盛り上がってんだからよぉ。出ていけねえよ」
「じゃあ僕が」
「なんでおまえなんだよっ」
「むぅ……あれたちは、なぜ私の名を呼ばぬのだ」
「こらっ、おまえが行くな」
「じゃあボクが行くぅ!」
「なぜ私の名を呼ばぬの」
「「「「頭が高い」」」」
「私が真っ先に」
「「「「頭が高い!」」」」
誰が最初に出て行くかで揉めていたイマジン達、半眼の良太郎に気付かれる。
「何やってんの?」
イマジンの未来は消え、しかし、彼等は消滅しなかった。
鬼気迫るチャーハンデスマッチもクライマックス、残り僅かの米が旗を支え、
奇跡の粘りで大逆転勝利を収めたオーナーは誰にともなく一人呟く。
「記憶こそが時間。そしてそれこそが、人を支える。もう、誰の記憶に頼る事もない。彼等が共に過ごした、
時間と記憶が、彼等を、存在させるんです」
皮肉にも、イマジンの未来との接触を断たれた事で、イマジンズは“今”に存在を確立するのであった。
最後本当にチャーハン食べているだけだったオーナーですが、基本バランスブレイカーなので、クライマックスの現場から外したい、
というのはあったのでしょう。その上で、オーナー不在がナオミにルール無視のチャンスを与え、
最後の最後でチャーハンが演出的に物語と繋がる、というのはお見事。
チャーハンの旗はもう、(たぶん演出の方が)完全に意地で繋げただけかとは思いますが(笑)
「みんなぁぁぁぁぁ!!」
良太郎、イマジンズにダイブ。ゼロライナーでは、泣きながら椎茸ご飯を頬張る侑斗の元へデネブも帰還し、涙を流す。
そして病室の愛理の元へは……
「守れたのね……私たちの、未来」
愛理の手が桜井侑斗の頬に触れ、そして、桜井侑斗は全ての人々の記憶から忘却される事で消滅する。
「わかってる……いつか、きっと……」
「未来は、きっと……」
かくて全ては終わり、時の運行と現在は守られた。
良太郎はオーナーにパスを返し、デンライナーを下車する。
今日もミルクディッパーには羽虫ーズと、にこやかな愛理の姿。
羽虫ーズは最後まで羽虫ーズでしたが、それでいい。
自転車で走る良太郎の横を、走り抜けていくゼロライナー。侑斗は自分の時間へと帰り、デネブは……ゼロライナーの車掌か?
続けて通り過ぎていくデンライナーから、それぞれ別れの言葉をかける仲間達。
「愉快であった」
「じゃあね」
「オレの、強さに、おまえが、泣いた。ぐぅぅー」
「楽しかったよね? 答えは聞いていない」
最後にずっと黙っていたモモタロスも立ち上がり、勢い込んで窓に頭をぶつけながら、良太郎に手を振る。
「まぁた会おうぜい!」
笑顔の良太郎も手を振り返し、自転車に始まり、自転車で終わる、『仮面ライダー電王』、これにて閉幕。
「いつか、未来で」
・・・
いやぁ、配信半年間、存分に楽しませていただきました。
念の入った伏線、丁寧な展開、泣いて笑ってそして怒濤の大団円!
様々な謎が解かれていく中で、失わせたくない者と、失いながら戦う者、二人のライダーの想いが交差し、そこに、
愛する者達の為に全てを賭けて戦っていたもう一人のライダーが浮かび上がる。特にこの、
ある種古典的なヒロイズムの延長線上に居た侑斗の更に先に、究極とも言える形で桜井侑斗が存在していた、
そしてそれが本当に最後の最後まで明かされない、という構造はお見事。
後の細かい解釈は個々にお任せ……という範囲だとは思いますが、個人的に気になった所を中心に、蛇足気味に幾つか。
過去侑斗と未来ハナはそもそもイレギュラーなのですが、それぞれの“現在”へ戻ったところで、
存在が固定されるという事でいいのでしょうか……桜井侑斗は最終的に自らの存在を消滅させる事により、
部分的に未来を知ってしまった過去侑斗が、自分と切り離された存在として人生を生きられるようになる所まで仕込んでいた……
という理解で良いのかな?(或いはそうしないと、過去侑斗が桜井侑斗をなぞってループしてしまうという事になるのか)
まあ、過去侑斗もバッチリ、貴方の嫁のフェロモンに脳髄まで浸蝕されていますが!
というか、そこまで仕込みっぽいんですけど。
ある種、時空を超えたノロケなのかもしれませんが、自分自身の事とはいえ、桜井さんの計画は、
過去侑斗が愛理さんに惚れるの前提っぽい(笑)
で、若干強引に解釈すると、ハナ→コハナの変化は、桜井侑斗の計画にともない、繋がった未来におけるハナの誕生が10年ほど遅れる、
という事なのか。
というか今頃、侑斗はミルクディッパーを探しているのか……(笑)
この辺は前向きに、大団円の一環として捉えたい。
ハナ&コハナは、紆余曲折の結果、ヒロインにはなれなかったものの、物語の最終的なキーに。
まあ、修羅だから仕方ない。
カイに関しては、最終的にはよくわからないまま消滅(?)。
恐らくカイの背景や、タイムリミットなどについて設定はあったのかとは思いますが、特に語られないまま終わりました。
この辺り設定の出し入れに関しては、別に全て語る必要はない(同時に、劇中で語られなかった設定は存在してないと同義)
と思っているクチなので、変にカイにも事情があるんだよ(終盤の描き方を見るとそういった感じであった)、とされるよりも、
作品としては良かったと思います。
ラスト3話は、普段通りにギャグもやりつつ各イマジンの見せ場も作りつつ謎解きもしてクライマックスにふさわしいバトルもして、
とさすがに少々、忙しくなった印象で、出来ればあと1話欲しかった所か。それでも充分面白かったですが。
あと今回ばかりは、配信で3話連続で見ると、つい30分ほど前に感動の別離をしたイマジンがしれっと帰って来て、
台無し感5割増し(笑)
まあ今作は、クライマックスフォームにしろライナーフォームにしろ、シリアスに盛り上げた後で、台無しな豪球を放り込んでくる、
というのが一つパターンになっていたので、許されるのですが。
この辺りもシリーズ構成の妙味というか。
個人的にリュウタロスの描いた“お姉ちゃん”の絵がどうなったか気になっていたのですが、これはラスト、
愛理さんと羽虫ーズのシーンで奥の壁に貼られていたそうで、尺の都合で成り行きは描かれなかったものの、
ミルクディッパーに届いたようで良かった。
最終話はかなりのカットシーンがあったようで、DVDではディレクターズ・カット版も販売されているとの事。
まあこういうのは、尺に収めるのもスキルの内ですから、やはり後1話欲しかったなぁ、とは。
後まあ落ち着くとまた少し出てくるかもしれませんが、非常に面白かったです。
厳密に突き詰めると幾つか筋の通りにくい所もあるかとは思いますが、多少の瑕疵は無視していいほどの完成度と面白さでした。
結局はそこの足し算引き算で、充分すぎるプラス。
素晴らしい作品でした。
また、感想連載中にコメントを下さった皆様、こういった複雑な作品に関して、非常にネタバレに配慮したコメントをいただき、
ありがとうございました。
個々のキャラクターの話など、残りは色々、最後にまとめで。
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(2014年2月18日)
(2017年5月28日 改訂)
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