■『仮面ライダー電王』感想まとめ7■


“闇の中で唯一光る 「真実」 守るため
時の中で旅を続ける 約束の場所まで”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダー電王』 感想の、まとめ7(39〜44話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。そこはかとなくゼロノス風味。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・  〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕 ・  〔劇場版『俺、誕生!』〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ8〕 ・  〔総括&構成分析〕


◆第39話「そしてライダーもいなくなる」◆ (監督:田村直巳 脚本:小林靖子)
 冒頭いきなり、「会社に入りたい」という願いを、“入社”ではなく、“夜間に侵入”、 で叶えて扉を開いた白黒ウサギイマジンを叩きのめすソード電王。
 「おまえ……弱いだろ?」
 相手が自分より格下と見るや、果てしなく青天井でつけあがるMさん(チンピラ)は、良太郎に剣の指導と言いつつ乱暴に剣を振り回し、 最後は「懐かしの……俺の必殺技――パート2」でイマジンを撃破。
 その光景を目にするカイは、邪魔者である特異点・野上良太郎に“何か”を見せようと、ほくそ笑む。
 非常にぞんざいな扱いだった白黒ウサギイマジンは、クレジットによると、パンダラビットイマジンとの事。パンダラビットって、 実在する種類? と思って検索かけてみたら、「パンダラビットイマジン」と「ラビットパンダ」(『ウルトラマンタロウ』に登場する、 ZATの特殊車輌との事)ばかり引っかかったので、どうやら架空の種類らしい。
 あと今回の本命イマジンであるスネールは何かと思ったら、巻き貝、との事。
 前回、カイが自力で扉を開いたのを見た良太郎は、イマジンはただ闇雲に過去を壊しているわけではなく、 跳ぶ時間に何か意味があるのではないかと考え、白黒ウサギイマジンが利用せずに開きっぱなしの過去への扉を使い、 2006年1月19日へと跳んでみる。良太郎とコハナはそこで桜井さんを見かけるが、彼はまたも姿を消し、 オーナーも恐らくそこに何か意味はあるのだろう、と語る。
 そんなオーナーは、前回、エクストリームフラッグバスターデスマッチインチャーハンで駅長に敗れたらしく、 リベンジに燃えながら暗黒スプーン闘術の訓練中。更にデンライナーに並走して走り込みなど、 最終クールに入って段々とリミッターが外れて滅茶苦茶になってきました。
 「ねえ良ちゃん……私、何か忘れてる……? きっと、私の知らない事があるのよね。だから、良ちゃんも……。大事な事?」
 「――物凄く大事な事。でも、僕が説明しても意味ないんだ。姉さんが思い出さないと。……絶対覚えてる筈だから」
 ミルクディッパーでは、ここ最近の良太郎の言動や態度に何か思う事があったのか、思いふける愛理。
 ゼロライナーでは、これまでと違う色のカードを手にした侑斗が「もう、あの店行くのやめた」とミルクディッパーに行かない宣言をし、 D侑斗になって買い物へ。しいたけを巡る激しい攻防戦の後、道で蹴り飛ばしたペットボトルが通りすがりの良太郎を直撃し、 もつれあって共に土手を転がり落ちる二人。
 侑斗、良太郎の「不幸」に責任を転嫁してしますが、半分以上、貴方の責任のような。
 「侑斗。姉さんが何か忘れてる事に気付いたよ。何かはまだわかってないけど。でも、きっと」
 「俺は……最後まで変身するだけだ。そう決めた」
 愛理さんは“気付いた”というより、最近良太郎がおかしいので“そんな気がしてきた”レベルの気はしないでもないけど(^^;
 ここまでコミカル分強めに展開したAパートから一転、良太郎の前に姿を見せるカイ。
 過去を変え、人の大切な記憶を失わせる事になんの躊躇いも罪の意識もないカイに、良太郎は怒りを燃やす。
 「けど、それで変わった時間のほうが良ければ?」
 「いい筈ない」
 「そうかなぁ。試してみるかぁ?」
 そこでM良太郎が登場し、カイを囲むイマジンカルテット。完全に、不良グループが4対1で因縁をつけているようにしか見えません!
 「あ〜ぁ、俺今、凄い盛り下がっちゃった気がする。引くわー。おまえたちみたいなあれ、今しか見れないヤツに用はないっていうか。 俺、そういう顔してるだろ?」
 カイはブロック塀を軽い感じで投げつけて砂イマジンを追い払い、ただの平凡な人間ではない所をアピール。
 「さっきの話のアレ、試させてあげるよ」
 カイが指を鳴らすとスネールイマジン女が中年男性を一人連れてきて、過去への扉を開く――その日付は、1993年3月27日。 M良太郎は後を追いかけ、(イマジンの気配に気付いて?)やってきた侑斗も、続いて過去へと跳ぶ。
 そこで二人が見たものは――
 「あれって……」
 「デネブと契約する前の俺だ」
 ちょっと地味目な感じの、高校時代の桜井侑斗であった。イマジンが扉を開くのに使った中年男性は、天文部?の顧問。 あの望遠鏡を大事そうに抱える過去侑斗の前で、教師の体から出現したスネールイマジンは部員達を追い散らし、 車の爆発に巻き込まれて吹っ飛ぶ過去侑斗。
 過去の桜井侑斗が死亡した事により、消えていく現在の桜井侑斗。
 「俺のことは気にするな……デネブをよろしく……」
 まさかの、侑斗消滅。
 「面白い? 勝手に時間いじって、こんな簡単に人を消して、それで面白いって、どういう事?」
 「だってぇ、カイがそう言ってたし」
 「そんなの、僕は絶対認めない――――変身
 怒りの良太郎、ライナーフォームに。
 (大丈夫、僕は忘れない。きっと侑斗は戻る)
 桜井侑斗の記憶は、ゼロノスカードによって大きく消費されている。だが、良太郎が侑斗の事を覚えている限り、 桜井侑斗は時から零れ落ちはしない筈。
 スネールイマジンとの戦闘は、ライナーフォームとしてはここまでで最も長い尺の戦闘になりましたが、 ライナーフォームをどう見せるのか悩んだのか、ドラマ部分とのバランスを意識しすぎたのか、冴えない出来に。 どうしてもライナーフォームそのものが、テーマ曲もそんなに格好良くない、武器と本体のバランスが悪い、 しかも本体は良太郎ベースでアクションしなくてはいけないと、格好良く見せにくいのですが、それにしても、 もう少し頑張ってほしかった所。
 最後は、柄の部分を激しく回転させ、4つの電車の力をチャージアップし、 CGエフェクトてんこ盛りで放った大回転電仮面斬が炸裂。
 スネールイマジンの消滅と共に、再生されていく時間。
 ――だがそこに、桜井侑斗の姿は、無かった。
 何故なら、この時間の桜井侑斗の事は、良太郎もコハナも、知らないのだ。そしてそれを知る人達の記憶は、 既にゼロノスカードによって、消費され尽くしていた。
 急いで現在へ戻った良太郎が目にしたのは、星の本の並ぶ「ミルクディッパー」ではなく、 フラワーアレンジメントで飾りつくされた「花時計」という名前のカフェ。パーマをかけた愛理さん。 店内に群れる女性信者達。
 愛理さんのフェロモンが、男性にではなく、女性に効果を発揮するように!
 何という恐ろしい歴史改変!!
 三浦と尾崎は、性別まで変換された!
 そして男の子がこのカフェで働くのは、そうとうレベルの高い苦行だと思われるのですが、 凄いゾその設定の良太郎!
 羽虫空間から壮絶かしましい空間と化したカフェで呆然とする良太郎が見つめる先、あの望遠鏡があった場所には、 巨大な花が飾られていた。過去侑斗の消滅により、当然その延長線上に居る、桜井さんの存在まで歴史から抹消されたのだ――。
 夏の特別編のみの参加かと思われた田村監督の再登板ですが、全体として、テンポがいまいち。ちょっとこの終盤の重要回 (もはやどこを取っても重要回なのですが)をやってもらうというのは、監督にとっても難しかったような。この辺り、 各監督の担当回がまばらになりがちなのは、劇場版進行の弊害を感じる所です。ローテがっちりでカツカツにやりすぎると、 それはそれで疲労が蓄積して切れ味が鈍ってくるので、バランスは難しい所ですが。
 今回、“桜井さん”の年齢が、おおよそ判明。1993年(14年前)に17,8ぐらいっぽいので(デネブとの契約前、 そして“現在の侑斗”とそれほど容姿が変わらない所を見るに、高校2.3年ぐらいと推測される)、31,2という所でしょうか。 個人的には30半ばぐらいかと思っていたので、予想よりちょっと若かった。
 しかし愛理さんは、桜井さんと会わずに何と出会って、ああなってしまったのか(笑)

◆第40話「チェンジ・イマジン・ワールド」◆ (監督:田村直巳 脚本:小林靖子)
 OP、イマジン合唱に。
 びみょーーーに、画と合っていません(笑)
 桜井侑斗の消滅により、変貌した世界――イマジン達も侑斗の事を忘れ、覚えているのは、オーナー、コハナ、良太郎の3人のみ。 そして、デネブは良太郎に憑いた事になっていた。
 これにより、劇的に豊かになっているデンライナーの食生活(笑)
 「デネブ、君が忘れる筈ないよね?!」
 何事も無かったかのように、イマジンカルテットと馴染んでいるデネブに詰め寄る良太郎だったが、嘘でも誤魔化しでもなく、 デネブは侑斗の事を忘れていた。
 まるで、最初から、桜井侑斗という人間など居なかったかのように。
 「こんな簡単に忘れるんだ。どんなに大事な事でも」
 「そう。人の記憶は、強く……脆い。街一つ元に戻してしまうこともあれば、瞬き一つで、消えてしまう。残酷であり、 優しい」
 「でも……それじゃあ侑斗が居た時間って何なんですか? 桜井さんが姉さんと一緒にいた時間は?! 確かに存在していたのに」
 「そんな時間は存在しません。人の記憶こそが、時間なのですから。そういえば侑斗くんは、特異点ではなかった事になりますねぇ。 なるほど」
 特異点、それは、その存在している時間を“現在”とするもの。ゆえに過去に何があってもその記憶と存在は影響を受けず、 継続し続ける。
 「特異点って……こういう事だったんだね」
 「私たちは、忘れられないから」
 聞いた時は、「忘れる事ができない」という意味で聞いたのですが、文字にしてみると、「忘れられる事がない」の意でしょうか、 これ。或いは両方か。
 突然襲ってきたスネールイマジンにコハナがさらわれ、それを追ったアックス電王/良太郎は、カイと接触。
 「感想聞こうと思ってさぁ」
 カイによると、桜井侑斗こそが、分岐点と繋がる未来を決める鍵だった。
 「あれが消えれば未来は俺の時間、イマジンの時間と繋がる」
 スネールに加え、ニュートとゲッコーイマジン(劇場版再利用)を従えるカイの口から、遂に語られるその目的の一端。
 「俺が言った通りだろ。変わった時間のほうがいい、って」
 「人が一人消えてるんだよ! いいわけない!」
 「へ? そうか? 誰か悲しんでるか? 誰も居ないよなぁ? 今のこの時間は最っ高にうまくいってるって気がするよぉ」
 桜井侑斗の消滅によって発生した、新たな時間。
 ここは、“誰にとっても幸せな時間”なのか?
 魔愛理空間に囚われず、子供をあやす羽虫B、彼女たちとよろしくやってる羽虫A、が挿入。
 「姉さん、桜井侑斗って……」
 「ん? 誰?」
 「……なんでもない」
 ケーキを作りながら楽しげに微笑む姉の姿に、良太郎は言葉を続ける事ができない。
 (あれはなかったんだ……桜井さんはいない……侑斗も……もう居ない……)
 買い物するD良太郎、デネブを交えて楽しそうなイマジン達。
 (デネブも、もう侑斗を心配する事は無い。モモタロス達の時間は、僕たちの時間と繋がる)
 全てはこれで落着、なのか?
 「じゃあ、良太郎はこのままの方がいいと思ってる?」
 「姉さんがあんな風に笑うの久しぶりに見たよ。けっこう笑い上戸だったの忘れてた。桜井さんのこと忘れてた時でも、 あんな風には笑ってなかったし。今の姉さんは幸せなんだと思う。でも……それでもこの時間がうまくいってるとは思えないよ、 カイ」
 「なんでそういう結論になるのか、さっぱりだな? みんな楽しくやってるだろ」
 「楽しくてもこれは本当の時間じゃない」
 「おまえもしかして馬鹿? 今が本当だよ。あれは、桜井侑斗は、存在してない」
 「違う。僕は桜井さんが居た事を知ってる。侑斗が戦ってきた事を覚えてる。どんなに辛くたって、絶対忘れない」
 良い事も悪い事も全て含めて“今”がある、というのは時間改変ものの王道とも言えるテーゼですが、 改変された世界が大胆に描かれた事で、それが強調されました。
 確かに愛理は幸せそうに笑っている。
 けれどそれは、都合の良い嘘の世界だ。
 人の記憶こそが、時間。
 それは優しく残酷で、脆く――強い。
 野上良太郎は、忘れない事を選ぶ。
 それがどんなに辛くても、大切な事を忘れてしまう事の方がもっと辛い、そう、信じているから。
 ここで“本当の時間”というのが、実は主観によってブレかねない事が提示されているのですが、 その上で良太郎が自分の覚えている時間を“本当の時間”として選ぶに際して、大義とか正義とか以上に、 良太郎のある種のエゴが浮かび上がっているのが、平成ライダー的なところ。
 極端な話、良太郎にとって、直接的にはともかく、間接的に例えば尾崎や三浦の人生が変化しているのはどうでもいい事であって (そこまで責任を取れない、という部分を含めて)、良太郎にとって最大の問題は、桜井侑斗が消え、 それにともない愛理が桜井侑斗を忘れている事。そして良太郎は桜井侑斗を知らない愛理が幸せに笑っている事よりも、 どんなに辛くても愛理は桜井侑斗を覚えていた方がいいと、信じている。
 だから、桜井侑斗の居ない世界を、認めない。
 改変世界で、尾崎と三浦が通りすがりの存在としてのみ描かれているのは、実際には深い意図の無い小ネタだったのかもしれませんが、 「個人」と「ヒーロー」が並立しながら相克する世界では、例え「ヒーロー」でも、関係者全てを救う事は出来ないし、 その責任を負う事もない、という点が示唆されているようにも思えます。
 「分岐点で繋がるのは本当に君の時間?」
 良太郎の問いに、顔色を変えるカイ。
 「きっと……まだ未来は決まってない」
 本当に未来がカイの望むイマジンの時間と繋がったなら、カイが良太郎にかまう必要も無くなるし、コハナにも何らかの変化が起きる筈。 その指摘に、カイは嘲りの態度を崩す。
 「俺今、滅茶苦茶気分悪いって気がするよ。そういう顔してるだろ。今のこのいい時間は少ししか保てない。もう元に戻ったかな」
 桜井侑斗のいない時間、は永続的なものではなく、一時的なものでしか無かった。
 花時間はミルクディッパーへと戻り、愛理の元にはいつものように羽虫ーズが。
 「なんでそんな事」
 「あ? なんでだっけ? ……ああ、一度見せておけば邪魔はもうしないと思ったのかも。……無駄だったけど。 素直におまえから消せば良かったんだよね」
 3体のイマジンが登場して良太郎を撃つが、間一髪、滑り込んできたゼロライナーの車体が銃弾を弾き返す!
 立っていたのは、一度は消えた筈の、桜井侑斗!
 「俺は特異点じゃないが、ゼロノスは過去の影響をセーブできる。時間はかかるけどな。 カードを使うのはデメリットばかりじゃないってことだ」
 「そうなんだよねぇ。結局、追いかけて直接消すしかない」
 復活する侑斗、それをあっさりと認めるカイ。
 前回からの言動を考えると、どうやら両者、はじめからこの展開は全て織り込み済みだった模様。
 過去侑斗を消せば、現在侑斗も桜井さんも消滅し、桜井侑斗の存在しない改変世界が生じる。 しかしゼロノスの力により桜井侑斗はいずれ再生し、それにともない改変世界も元通りとなる。これにより、過去侑斗を消し去る、 という簡単な手段がありながら、カイがそれをこれまで用いていなかった理由も判明し、あくまで良太郎の意志をくじく為の、 ちょっとだけ改変だった、と説明がつきました。
 そして前回の感動的な
 「俺のことは気にするな……デネブをよろしく……」
 は、文字通りの意味だった事が判明(笑)
 カイはセルフオープンでスネールイマジンを過去へと跳ばし、良太郎と侑斗には二体のトカゲが襲いかかるが、突然現れ、 隙をついてカイにカードを当てるデネブ。
 前回今回と完全にギャグ担当かと思ったら、まさかのスニーキング!
 「侑斗、チケットぉ!」
 「ほんと、気分悪いって気がするわ」
 ゼロノスは巻き貝を追って1999年2月1日へと跳び、電王は二体のトカゲと対峙。誰が憑くかで揉める中、 久しぶりのてんこ盛り発動!
 早速、誰が主導権を握るかで揉めながら、トカゲたちを適当にしばくCLIMAX(笑)
 ライナーフォームが構造上どうしても、戦闘現場と車内の回転設備とのやり取りで面白くしないといけない為にテンポが難しいのに対して、 中の人の超絶演技とイマジンカルテット&良太郎の直接の掛け合いで面白さを造れる分、画面も造りやすそうで、CLIMAXはノリがいい。 ……高岩さんはとにかく大変そうですが。
 足のステップとか腰の入れ方とかで各フォームを表現しているなど、何度見ても凄い。
 過去でスネールイマジンと戦うゼロノスは、裏側の赤い、新しいカードをベルトにセットする。
 「そろそろ未来の俺の記憶だけじゃ、足りなくなってきたらしい」
 それは、“今”の記憶を、消費するゼロノスカード。
 (桜井くん……綺麗な名前ねぇ)
 侑斗の胸に去来する、ミルクディッパーでの愛理の言葉。
 チャージアップしたゼロノスはスネールの銃撃を受けて吹き飛ばされ、地面に大の字に転がる。
 その上に降りしきる白い――雪。
 そして、ぼろぼろに崩れ落ちていく……愛理と“侑斗”の記憶。
 恐らく、2月1日というのは、2007年に桜井侑斗が失踪し、愛理が桜井に関する記憶を失った時機と重なっていると思われ、 その時の愛理のイメージシーンと被せた演出。
 前回今回と、ここまで演出が今ひとつだったのですが、ここは非常にいいシーンになりました。
 まるで最初から何も無かったかのように、失われていく愛理との記憶、それに呼応するかのように、赤茶色に変色していき、 新たな姿へと変貌を遂げ、立ち上がるゼロノス!
 「錆びちゃった?」
 「最初に言っておく。俺は、かーなーり、強い!」
 「ついでに言っておく。これは自分でもビックリだ」
 その手にあるのは、デネブ銃。
 こちらもビックリです。
 ゼロノス・濡れ落ち葉フォーム(仮称)は、格好いい新曲とともに、スーパーデネブ砲でスネールイマジンを撃破。 現在でもCLIMAX電王が国電キックを炸裂させ、2体のトカゲイマジンをあっさり滅殺。
 「やっぱり主役は、俺だぜぇ!」
 最初見た時はどうしようかと思ったCLIMAXフォームですが、ライナーフォームを見た後だと当社比1.5倍ぐらい格好良く見えるマジック!
 最終盤に来て、ゼロノスも新しいフォームに。崩れていく記憶と錆び付いていくボディ、という演出が重なり、 見た目以上の素晴らしい格好良さが出ました。しかしそれは、これまで以上に己の存在を削る変身となり、 帰路につく侑斗が首飾り?を落とすという、なにやら意味深長な演出も。
 ミルクディッパーへ帰った良太郎は、カフェが女の園から元に戻っていて、一安心。ところが、 床に落ちていた侑斗用ブレンドノートを拾った愛理の言葉に衝撃を受ける。
 「なにこれ?」
 慌てて望遠鏡の下の懐中時計を探ると、それは何故か、錆びてぼろぼろに。
 果たして、桜井侑斗の身に、いったい何が起こっているのか――?

「人の記憶は、強く、脆い。そしてまた、残酷であり、優しい――」

 以前に、ゼロノスカードの消費によって桜井侑斗の記憶が消えた際、現在進行形の侑斗に関する記憶はどうなるのだろう、 という事に触れましたが、そちらは別枠で一安心していた所で、今度はそちらを消費する、という惨い所に踏み込んで参りました。
 今回ばかりは言わせてほしい。
 酷い、酷いよ小林靖子!
 話が進めば進むほど、主役ばりの背景を背負っていく侑斗ですが、次回、ちょっとモテ?
 ゼロノスの特殊ルールに関しては、ゼロノス自身が、いわば時の運行から脱線した存在、とでも考えればいいのでしょうか。 初期は明言されていませんでしたが、侑斗は完全に、過去から来てちょっと未来で戦っているという事が判明しており、 大きくルールを外れた存在ですし。次回、良太郎が問う「桜井侑斗の矛盾」というのは、その辺りの話になるのか。
 桜井侑斗の謎、カイの目的も見え始め、ますます毎回楽しみです。

◆第41話「キャンディ・スキャンダル」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
 侑斗&デネブ、公園の一角?で寝泊まりしていた事が判明。
 ……と言っても、ゼロライナー車内で食事している所は何度も描かれていますので、普段はゼロライナーで寝ていると考えた方が自然であり、 監督の悪ノリの一環かと思いますが。
 冒頭の雪崩式坂転がりに始まり、遊園地を彷徨う良太郎と侑斗、突然の着ぐるみ、など石田監督の悪ノリが全開。
 まあ、石田監督に長い尺の説明会話シーンを与えたら何かやってくれるに違いない、むしろ何かしろ、という雰囲気がありますが。
 このノリが好きか嫌いかでいえば、やり過ぎが目立つのは気になるのですが、石田秀範が00年代の東映ヒーローものを代表する監督なのは間違いありません。
 平成ライダー10年で、“巧い”のはやっぱり、長石多可男と石田秀範。
 演出テンポの好みの問題もありますが、80・90年代なら、小林義明、東條昭平、長石多可男。00年代なら、長石多可男、石田秀範。
 と、名前を挙げたい。
 雪崩式坂転がりはドタバタギャグなのですが、自転車の人はけっこう命がけ。
 愛理が侑斗の事を覚えていないのをハッキリと目にした良太郎は、侑斗を追いかけて遊園地でここまでのまとめ。
 「ずっと考えてたんだ……」
 「何を?」
 「君と桜井さんのやってる事は矛盾してるって」
 侑斗はもしかしたら、良太郎を撒こうと思って遊園地に突入したら、平気でついてこられてしまったのか。
 ゴーカート、メリーゴーラウンド、ミラーハウスなどアトラクション行脚をする二人。
 分岐点の鍵である桜井侑斗を消そうとするカイから逃げる為に桜井さんは過去を巡り、そして侑斗には戦う力を与えた。 しかし、ゼロノスが戦えば戦うほど桜井侑斗の記憶は失われ、その存在は削られていく。ならば、桜井の行為は、 自分の存在を危うくするもの……突き詰めればカイのやっている事と同じではないのか?
 「俺は自分を消す為に戦ったりしない。ただ、未来を消さないために、やらなきゃいけない事をやってる。言えるのはそれだけだ」
 「自分を消すつもりじゃないならいいよ」
 侑斗の言葉に納得した良太郎は、改めて、自分も戦い続け、愛理の記憶も諦めない、と決意を表明。あと台詞を聞く限り、 侑斗にはまだ、良太郎に説明していない何かがある模様。
 一方、黒幕たるカイは、部下の無能な仕事ぶりに、少々お疲れの様子であった。
 「この時間を俺たちの時間につなげるんだよ。そうすれば…………ふふっ。俺もああいう顔して何か思い出したりするのかも」
 良太郎を思い浮かべるカイ、台詞を額面通りに受け止めると、カイは“過去を持たない”存在なのでしょーか。 残り話数1桁っぽいのに未だに黒幕の背景がさっぱり見えてきませんが、それで物語が成立しているというのも見事。
 「居た……あれでいい」
 必要な時間に跳ぶ為の、目標の人物を見定めるカイ。
 やっぱりカイ、けっこう一生懸命、自力で検索していたのか(笑)
 契約者の目標を指定したり、電王関係の最新ニュースをラジオで伝えたり、イマジンラジオの取締役も、割と大変なお仕事の模様。
 カイが探し当てた人間は、望月翔子。なにやら病院を退院し、快気祝いに遊び歩いているらしい翔子に、オクトイマジンが憑依する……。
 前回の件(自分が侑斗を忘れていた事)にふかーく落ち込んだデネブ、思いあまって、眠った侑斗に憑依。
 D侑斗になって、夜の街で飴を配りまくり、侑斗の記憶を持った人を増やそうと暗躍。その秘密活動中、 遊び疲れて公園のベンチで眠りこけてしまった翔子を見つけ、上着をかけてあげたのがきっかけで、全く自覚のないまま、 何となく翔子といい雰囲気になってしまう。
 意外と、天然ジゴロだ、デネブ。
 少なくとも、M、K、Rよりは、モテスキル高いゾ(笑)
 そしてデネブ、鼻が悪いので、翔子に憑いたイマジンには気付かず。自宅に戻って恋する乙女モードの翔子は、イマジンの声をスルー、 という離れ業をやってのけるが、会話の流れで、「侑斗を連れてくる事」が望みになってしまう。
 翌朝、翔子と約束した公園にそれとなく侑斗を連れて行こうとするデネブだったが、 途中で昨夜のキャンディ大作戦が侑斗にバレてしまう。怒りの侑斗に、突如からみつくタコイマジンの触手!  不意打ちをうけて大ピンチに陥る侑斗だったが、そこに、俺、参上!
 珍しいバイク戦でタコの触手を切り裂くS電王であったが、タコの特殊能力でバイクが操られ、暴走してしまう。
 「操られてる?! この馬鹿野郎! しっかりしろぉ」
 普段の扱いが雑(ごくたまにしか乗らない)だから、バイクとの間に信頼関係が感じられない仮面ライダー電王であった。
 挙げ句、強行降車でバイク放棄。
 暴走バイクから強引に脱出したS電王は、タコに「俺の必殺技――パート5!」を炸裂させている最中に、 後ろからぐるっと回ってきたバイクに轢かれる(笑)

 愛が足りてない(笑)

 バイクはそのまま海に転落、タコは煙玉(タコ墨玉)で逃亡。
 「俺のバイク……デンバードぉ!」
 て、名前、あったのか。
 よくよく考えると、バイクが無いとデンライナーで過去へ跳べない気がしてきましたが、これ、演出上の勢いなのか、 はたまた次回への伏線なのか(笑)
 オクトイマジンの目的は、誰かの元へ「桜井侑斗を連れて行く事」。本来ならこの時間で侑斗の事を知っている人間はごく限られている筈だったが、 デネブのキャンディ大作戦により、契約者候補が絞れなくなってしまう……。公園で侑斗を待ち続ける翔子……果たして、 時の旅人と恋する乙女の関係はどうなるのか?!
 前回からのイマジン合唱OPに映像が合わないのが気になったのか、今回からOPに本編映像が大量に挿入される形となり、 歌と絵の違和感は多少、軽減されました。しかしイマジンバージョン、強烈に耳につく(^^;

◆第42話「想い出アップデート」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
 いーね! いーね! スゴいね!
 OPの合いの手がウラバージョンに。
 ……なんか、気持ち悪い(おぃ)
 「俺は決めたんだ! 関係ないやつを巻き込むなっ! この馬鹿ぁぁっ!!」
 タコイマジンの攻撃で負傷してデンライナーに運び込まれた侑斗は、色々な人に侑斗の記憶を持ってもらおうとしたデネブの行動を責める。 興奮状態の侑斗だったがナオミに謎のお薬を注射されて意識を失い、とりあえずデネブと良太郎は翔子との待ち合わせの場所へ向かう。 はたして……待ち合わせを3時間もオーバーしたにも関わらず、二人は公園で遊んでいた翔子の姿を発見。
 「俺じゃ駄目だ……。ほら野上、彼に、頼んでくれ」
 「彼って……?」
 「ほら、カメタロス」
 「カメタロス……?」
 確か以前にキンちゃんの事も、クマタロス扱いしていた事がありましたが、結局のところ割と侑斗以外の事はぞんざい(笑)  心の中の棚が足りないというか。
 ご指名にお応えして登場したU良太郎は翔子と接触、コートを取り戻そうとするがさらりとかわされ、 代わりに携帯電話の番号を渡される事になる。
 「ま、簡単に言って……桜井侑斗に一目惚れ、だね」
 久々に女性相手の活躍の場だったのに釣り針を完全にスルーされ、少々プライドの気付くウラタロスであったが、U良太郎とデネブは、 翔子が寝転がっていた場所に砂の跡を見つけ、彼女こそがオクトイマジンの契約者であったと知る。翔子の願いは恐らく、 一目惚れした王子様と再会したい……
 M「その王子様ってのは、おデブと侑斗のどっちなんだよ?」
 K「当然おデブやろ。“男は中身“やからなぁ、はっはははは」
 「あー、それは幻想ですよ」

 ナオミさーん(笑)

 車内に戦慄が走る中、イマジンが直接侑斗を狙ってくるとは限らないと、契約者を直接見張る為、翔子とのデートに臨む事になるD侑斗。
 前回は何故か男二人で遊園地を彷徨う事になりましたが、今回は東武動物公園でれっきとしたデート。変なラブコメを、 ひたすら楽しそうに撮ってます、監督。
 初めは逃げ腰だったD侑斗だったが、《スキル:染み抜きLV5》の発動をきっかけに距離が縮まり、和気藹々。なお、 表に出る事を拒否してデネブに任せようとする侑斗はやはり、女性の扱いが苦手っぽい(笑)
 動物園を堪能し、どういうわけか砂浜でキャッチボールを始める二人。周囲をガードしていた良太郎はそこへ近づくオクトイマジンの気配に気付き、 ロッド電王に変身して迎え撃つ。
 「デートの邪魔する前に、僕に釣られてみない?」
 キャッチボールをしながら、最近まで闘病生活を送っていた事を語る翔子。明日があるかはわからないけど、 昨日があるのは間違いなくて、一日一日を生きていく内に、やがて明日は今日になる。必ずチョウになれるとは限らないけれど、 今日を生きているサナギが好きだ、という翔子の言葉にいたたまれなくなったD侑斗は、わざとボールを遠くに投げ、その場を逃げ出す。
 「侑斗……どうしよう……あんなに、あんなに一生懸命で、毎日大切にして。侑斗の事もほんとに……」
 「でも俺が変身すれば忘れる。……忘れられる方だけ考えるなよ、デネブ。……忘れる方だって辛いんだ」
 ここまで行動や言動ではそれとなく見せられていましたが、明確には語られていなかった、 侑斗が敢えて孤独で居ようとする理由がここでハッキリと言明されました。
 自分の変身は未来を守る為だが、その為に、誰かの記憶――すなわち時間を、いたずらに奪いたくない。
 39話、赤いゼロノスカードを手に、「もうあの店(ミルクディッパー)には行かない」と宣言していた心情もハッキリとし、 いったいどこまでヒーローなのか、桜井侑斗。
 というか、どこまで酷い設定なのかゼロノス。
 “ヒーローの持つ暴力性の矛盾”というのは古くより指摘される所ではありますが、“未来を守るために過去を消費する”という、 存在性の矛盾したヒーローであるゼロノスは、ヒーローの宿すそういった根源的な矛盾に対するアプローチの亜種なのかもしれません。
 一方で、愛理への未練を断ち切るような事を言いながらも、前回冒頭、明らかに偶然とは思えないタイミングで引ったくりを撃退した辺り、 変なスキルに目覚めてしまった気もしないでもないですが。そこが“人間”の葛藤というものであります。
 ただ“目的”と“心情”としてはともかく、状況としては追い詰められているので、“手段”を選んでいる場合なのか、 という問題はあるのですが、そこで“手段”にこだわるというのも、一つの正道ではありましょう。
 果たしてこの先“極限の選択”を迫られる事になるのかどうか、行き着く所を楽しみにしたいです。
 「桜井くん……? 桜井くん」
 デネブと分離した侑斗は、くしゃみをする翔子に自分のマフラーをかける。
 「ごめん……俺は忘れないから」
 そこへ暴走トラックでロッド電王を追い散らしたタコが出現。侑斗と翔子が一緒に居た事から、棚ぼた的に契約完了。完了というか、 要するに何もしていないぞタコ。
 タコは2006年11月15日――翔子が病院の庭でサナギを見つけた日へと跳び、タコを追う為、 翔子の目の前で「変身」するゼロノス。
 座り込む翔子と赤茶けたゼロノスを画面左に置いて、右手の空には真っ赤な夕陽が浮かぶ、落日の砂浜(撮影は多分、 このカットだけどこかの土手ですが)という、素晴らしいカット。
 やはり絵がいいと、見ていてボルテージが上がります。
 病院の庭で桜井侑斗を見つけ、暴れ回るタコ。なお今回、カイの台詞に「教えてやった場所を壊しまくれ」というものがあり、 必ずしも桜井さんを直接狙うだけでなく、場所を破壊する事にも、何らかの意味がある模様(多分)。 初期のイマジンの行動との整合性を取るため、というのもあるかとは思いますが。
 「最初に言っておく、俺は、かーなーり、強い!」
 タコとぶつかり合うゼロノス。タコの力で腰の剣を操られるが反撃に転じ、背後から迫った変則触手攻撃を、 やってきたライナー電王が切り払う! 最後は、電車斬りとスーパーデネブ砲がクロスで炸裂、とここで格好良くダブルライダーの共闘を入れました。
 ようやく並走しながらも、しかし互いの戦いへの姿勢から、交わらないと思われていた二人のヒーローの想い、 それが「失う者の悲しみを知る」事から交わり、それに合わせるかのように、必殺技もクロスで炸裂。
 溜めに溜めた上で、物語の意味と重ねた、非常に格好いいダブルライダーとなりました。
 また、ライナーフォームは、勢い良くすぱっと出てきて、一気に必殺技に持ち込む、というのが一番格好良く見える用法っぽい(笑)
 ところが、タコを倒したと思ったのも束の間、タコの能力が暴走したという事なのか、なんと、時の列車の「線路」が暴走。 デンライナーとゼロライナーは、時の砂の世界で、線路と戦う事に。
 最終盤に来て、まさかの、線路vs電車(笑) なお、デンバードは元に戻っており、 前回の水没は特に伏線ではありませんでした。
 暴走する線路(自分で書いていて日本語が意味不明)に苦戦するデンライナーとゼロライナーだったが、その時、 地平の彼方から巨大な電車が姿を現す――それはあの、ターミナルが変形した、キングライナー!  集結した電車がキングライナーと合体し、なんだかもう大変な事に……て我ながら毎度同じような表現で誤魔化している気もしますが、 正直、電車戦にはあまり興味がないので(^^;
 今回で言えば、暴走線路の疾走感とか、TVシリーズとしてはよく出ていると思いますし、電車戦のCGそのものは格好いいとは思うのですけれども。
 キングライナーの圧倒的な火力により暴走線路は粉砕され、平穏の戻る時の砂の世界。
 そして現在――
 砂浜で、我に返る翔子。
 「なんで、こんなマフラー…………大体なんでこんなとこ来たんだっけ。……かーえろ」
 この辺り、前回から一貫して陽性の人物と描いてきたのが、さっぱりとした切り替えに効果的となりました。若干、 物語が暗いトーンになる中、エネルギー溢れる恋する乙女、というキャラクターが良いアクセントにして、好演・好演出。
 翔子は駆け出すがその時、誰のものともしれないマフラーが、道ばたの灌木に引っかかって外れてしまう。
 一瞬足を止めるが、
 「んー、まあいいや」
 走り去る翔子。
 マフラーが落ちるのではなく、引っかかって、誰かの首に巻いたみたいに取り残される
 というのが、素晴らしい。
 走り去った翔子を見送り、砂浜に立ち尽くす3人の男。
 「俺が馬鹿だった……自分の勝手で記憶を持たせて。結局あの子にも、侑斗にも」
 「デネブ、俺は決めたんだ。だから、おまえも」
 「侑斗……一緒に来てくれる?」
 良太郎は侑斗をミルクディッパーへと連れて行き、扉の隙間からそっと店内を覗く侑斗。そこでは愛理が、あの、 誰の為のものだか忘れ去った筈のノートを手にしていた。
 羽虫B「愛理さん? なんですか、その、桜井君用スペシャルブレンドっていうのは」
 羽虫A「まさか、僕たち常連より、更にランクが上の常連がぁっ?!」
 さりげなく、この二人も侑斗を忘れている事がハッキリします(狙って個人の記憶を消すシステムではないでしょうから、今回あたり、 まとめて消えたか)。
 「いえ、自分でも書いた覚えないんです。……ただ、完成させなきゃいけないって。いつか、飲んでもらわなきゃ、 って。不思議なんですけど」
 微笑む愛理。
 「侑斗……オーナーが人の記憶は強くて脆いって言っていたけど、僕は強いと思う。……姉さんは思い出すよ」
 侑斗は唇を噛みしめながら無言で去って行き、良太郎はデンライナーへと戻り――固まる。
 そこに居たのは、オーナーと並ぶ、オーナーと瓜二つの男・駅長。
 ……ああ、先日はずっとR良太郎だったり駅で降りなかったりで、良太郎は駅長に会うのは初めてでしたか。
 駅長は前回、オーナーを通じて良太郎が問い合わせた、「桜井侑斗が分岐点の鍵とはどういう事なのか?」を調べ、 それに答える為にやってきたのだった。駅長が運んできたアタッシュケースの中から出てきたのは…………というところで、つづく。
 次回、やっぱり、
 いーやん! いーやん! スゴいやん!
 なのか、刮目して待て!

◆第43話「サムシング・ミッシング」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:小林靖子)
 OP合いの手は
 えーやん! えーやん! スゴいやん!
 でした。
 どうでもいいけど、「ええやん」と書くと微妙にいやらしくなるのは何故でしょう。
 駅長が開いたアタッシュケース……中から出てきたのは、黄金のスプーンセット。
 それは、チョモランマをも制すと言われた、神のスプーンフルセットであった!
 それこそが分岐点の鍵……なわけはなく、ギャグでした。
 はいみんなかいさーん。
 しかしここまで堂々と、引っ張って出オチ、をやられると、なにか悔しい(笑)
 だが駅長は、一つの重要な示唆を一同にもたらす。
 「サービスとして結論を申し上げますと、桜井侑斗なる人物を分岐点の鍵とするのは、疑問があります」
 駅長の調べでは、桜井侑斗が分岐点の鍵だというのは疑わしい、というのだ……。それが真実を指摘しているとするならば、 桜井侑斗が自分の重要性を認識しているにも関わらず、自分の存在を消耗させながら戦っている、というゼロノスに関する矛盾はなくなる。
 真実に近づく鍵は一つ……桜井侑斗が姿を消す前後に、いったい何があったのか?
 「良太郎くん。実は気になってたんですがねぇ……桜井さん失踪に関しては……君の証言しか、ない」
 桜井侑斗が湖上で消えた事、その後で愛理が桜井侑斗について忘れ去った事。
 それを口にしているのは、良太郎、ただ一人。
 良太郎はもちろん自分のその記憶を正しいと思っているし、嘘をついているつもりもない。
 しかし、そのたった一つの証言が間違っていたら?
 全ての始まりから、もしかたら、何か重要な事が抜け落ちているのかもしれない――。
 ここに来て、全ての大前提をひっくり返す、しかも、主人公であると同時に性格的に、 最も虚言から縁遠い人間の言葉が疑われるという、視聴者の盲点をついた強烈な一撃。
 勿論、ここまで来て、良太郎が意図して嘘をついていたという可能性は限りなくゼロと考えて良いでしょうが(そこまでやると、 作品としてひっくり返しすぎ)――しかし、何かが間違っている可能性はある。
 何かとブレやすい(しばしば、ざるをえない)1年の特撮ヒーロー物において、 一種の叙述トリックに近いミステリ構造の仕込みが浮かび上がる、という非常に大胆な展開で、素直にビックリ。
 さすがにこれは初期から温められていた中核のアイデアでしょうし、いったいここからどう転がって、 どんな風に仕込みが明かされていくのか、実に楽しみです。
 一方、桜井侑斗を狙うカイは、進まない事態に苛立っていた。
 「時間を変えるなんて、簡単なんだけどなぁ。ははは、あはははははっ」
 手帳をめくり、直接(?)、1年前――2006年12月17日――に干渉して、 たまたま目にしたカップルが入っていった家を焼き尽くす、という新たな力を見せるカイ。
 というこれが本当の
 リア充爆発しろ!
 か(笑)
 いったい何がどうなっているのか……現在で考え込む良太郎とコハナの前に砂モモタロスが現れて、特訓の続きをしようとするが、 コチャンプの蹴りで粉砕される(笑)
 どうも侑斗話になるとコハナの出番が減りがち(スポットを回しきれない)なので、コハナアピールタイムといった感じ。 忘れがちですが、中身はハナさんです。もっとも、発言や挙動が微妙に子供化している事はあって、これは、 分岐点の登場などによる“未来の変化の影響”という事で理由づけているようですが。
 アピールが何故か打撃になるのは、各位、深く考えないように。
 デネブと侑斗は外で焼き芋をしながら、互いの決意を改めて確かめ合う。
 そこに過日のキャンディ大作戦で「桜井侑斗」を知った子供達が現れて、文句を言いながらも、とっさにD侑斗っぽい挨拶を返す侑斗は、 なんだかんだでやっぱり子供に優しい。
 新たな謎が浮かび上がる中、イマジンの暗躍は続く。「ヤクザと縁を切りたい」という願いを「切られたい」 と解釈したアルマジロイマジンによって切られそうになっていたチンピラが気絶し、サービスで開く過去への扉。 気配に気付いてやってきたM良太郎とコハナは過去へと跳ぼうとするが、その前に現れる、カイとアルビノレオイマジン。
 「イマジンの時間がこの時間に繋がらなかったら、おまえら根無し草みたいなのは、やっばいんじゃないかなぁ」
 良太郎に協力して邪魔をし続けるモモタロス達に警告と挑発を行うカイ。
 「そうだ。イマジンはみんな……消える」
 (なにそれ?)
 「消えるんだよ、あんな風に」
 カイは冒頭に使った能力で、高層ビルを丸ごと一つ消し去って見せ、その言葉に動揺する良太郎は強引にモモタロスをはじき出す。
 「モモタロス達が……消える……?」
  「知らなかったぁ? 過去のない未来は、存在できない。この時間が手に入らないなら、消えるしかないだろ? はははっ、 俺はあーれ、特異点だからいいけど」
 モモタロス達が隠していた、自分とモモタロス達の、戦いの矛盾を知ってしまう良太郎。
 なんかもう今更ですが、M良太郎の時の「ちっ、余計な事喋りやがって」という表情と、 素の良太郎の動揺の演じ分け/物語上の見せ方が、この終盤に来てますます冴え渡ります。
 「ほんとなの、消えるって……」
 「まあ、僕たちも色々……ね」
 「色々じゃわかんない!」
 過去へと向かうデンライナー車内で怒りをあらわにする良太郎だが、イマジンの暴虐は待ってはくれない。 2005年6月25日――ヤクザに叩きのめされる契約者の男の体から出現したアルマジロイマジンは鉄球攻撃で街を破壊し、 その現場へとデンライナーは到着する。
 (戦えばモモタロス達は消える……でも、戦わなかったら……)
 攻撃に巻き込まれ、倒れ伏す人の姿に視線をやる良太郎。
 戦わなければ、その人々は、時間から零れ落ちてしまう。
 「やらなきゃ……変身」
 固い装甲で鉄球を振り回すアルマジロに苦戦しつつも何とか渡り合うライナーフォームだったが、良太郎の迷いは消えない。 みんな大好き電車斬りの発動をためらった良太郎は、遂に電仮面剣を地面に置くと、アルマジロに体当たりを敢行。 イマジンカルテットの抗議を無視して体当たりを繰り返し続けるが、アルマジロに簡単に打ち払われてしまう。
 物語終盤の強力フォームがここに来て、喧嘩慣れしていない弱者の行動にしか見えない、無我夢中で体当たりを繰り返すというのは、 着ぐるみ芸にひたすらこだわり、そこに物語を込めてきた今作らしいバトル。
 奮闘虚しくライナーフォームはアルマジロに大きく吹き飛ばされ、その近くに佇む桜井さん。 もろともに打ち倒そうと放たれたアルマジロの鉄球から、駆けつけたゼロノスは、ライナーフォームを守る。
 「……ん?」
 その光景に、違和感を覚えるカイ。
 「なんだ……なんであれより野上を」
 ゼロノスはデネブ銃でアルマジロと交戦。なんとかダブル攻撃でアルマジロを倒そうと、 拾った電仮面剣をライナーフォームへ投げ渡すが、必殺のチャンスにやはり良太郎はみんな大好き電車斬りを使わず、 普通に切りつけるだけ。アルマジロは簡単にライナーフォームを弾き飛ばし、大ピンチに陥った二人は、 デンライナーに回収されて何とか逃げ出すが、アルマジロイマジンを倒せずに終わってしまうのであった。
 「おまえ一人でどうにかなると思ったのかよ、ええ? 今のお前で勝てるとでも思ったのかよ! 良太郎っ?!」
 負傷して運び込まれた良太郎に、怒りをぶつけるモモタロス。
 「モモタロス……」
 「俺たちが消えるかもしれないからか……? そんな戦い出来ない、とかってやつかよ」
 「ちょっと違うけど……」
 「けどなんだよ?」
 怪我をおして立ち上がった良太郎は、正面からモモタロスと視線を交わす。
 「一緒に戦うわけには……」
 「あぁ?」
 「一緒に戦うわけにはいかないと思った」
 「……なんだと?」
 真っ向から睨み合う二人。
 「今なんて言った?」
 「一緒に戦わない、て言ったんだ。――願いを言えば、モモタロス達は僕から出て行けるよね!」
 忘 れ て た !(笑)
 「てめぇ……」
 食堂車がこれまでで最高に険悪な雰囲気に包まれる中、時の世界を疾走する車体には、アルマジロイマジンが張り付いていた。
 「お邪魔しちゃおうかなぁ、へっへっへへ」
 そして、
 「なっんか、変だなぁ……うん、変って気がする」
 カイが何かに気付こうとしていた……。
 次回、
 「必殺、俺たちの必殺技!」
 と予告のこれだけで、物凄く盛り上がりますなこれは。

◆第44話「決意のシングルアクション」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:小林靖子)
 「何が願いだ、絶対そんなもん聞かねえからなぁ! 俺たち追い出して、おまえ一人で戦えると思ってんのか!」
 こんな時ですが、願いを言っても、イマジンが一方的にスルー、というのもありなのか(笑)
 「戦うよ! ……でも戦う事はモモタロス達を消すことになる。自分で自分を消す戦い、していい筈ないよ!」
 イマジン達へ向けた台詞ですが、侑斗が横に座っている状況で、前回、戦う信念は交差したけれど、改めて桜井侑斗の戦い方・ やり方を全面的には認めない宣言にもなっています。
 「今までさんざん戦ってきたんだ」
 「消えるなんて言ってくれなかったでしょ?! いつか、別れなきゃいけないのはわかってたけど……」
 「別れるのも消えるのも一緒だろ」
 「違うよ!!」
 「ちがわねぇ! いいか! 俺はなぁ、格好よく戦えればそれでいいんだよ! 俺たちの時間がどうとか、消えるとかぁ!  そんなものに、興味はねぇ」
 「……だったら……余計一緒には戦えない」
 それぞれを思うが故に、激しくぶつかり合う良太郎とモモタロス。
 滅茶苦茶気合いの入った、素晴らしい芝居。
 「良太郎と一緒に戦うの好きだし、消えるの、別に怖くないし」
 とボクはいいでしょアピールをするリュウタロスだったが、方向性失敗。
 「リュウタロス! そんな事、簡単に言わないでよ。君とだって一緒に戦うつもりはない」
 リュウタロスはこれに落ち込み、
 「勝手に決めてんじゃねえぞ良太郎」
 Mさん、とうとうぶちぎれ。ウラとキンに慌てて止められるが、良太郎の決意もまた固いのだった……。
 OPは今回から、ダイジェスト&イマジンカルテットのステージ映像に(笑)
 合いの手はリュウタロスで「いーじゃん! いーじゃん! スゴいじゃん!」。 モモタロスは台詞回しとしては「いーぜ! いーぜ! スゴいぜ!」になるかなと思っていたのですが、 既に41話でノーマルモードで「いーじゃん! いーじゃん! スゴいじゃん!」とやっていたとの事。
 デンライナーはターミナルに到着し、ウラとキンは興奮状態のモモを連れて待合室へ。 いじけモードのリュウタロスは一人でふらふらと駅舎の中へ。
 ターミナルはてっきり一発ネタかと思われたのですが、ここに来て大きく利用。イマジンが実体化可能という設定が、 活きる事になりました。
 「ほーら、ここが待合室やぁ。……って、なんにもないなぁ」
 と思われた待合室だが、バーチャル映像システムで屋外気分を味わえる機能つき。 娯楽要素でモモタロスの気を紛らわせようとする二人だったが、結局モモは待合室を出ていってしまう。
 ここに来て、ウラとキンが半歩引いた位置から、モモタロスと良太郎に気を遣っているのは面白いところ。 当初は同じく出たがりだった二人ですが、良太郎とはモモタロスが一番しっくりくる、というのを認めているようで、 関係の変化が窺えます。
 侑斗とデネブもデンライナーを下車し、デネブはターミナル観光モードに(笑) そして、 デンライナーに張り付いていたアルマジロイマジンは、ターミナルに潜り込んでいた。
 「過去で暴れるより、こっちの方が、ぜっったい面白い」
 そんなアルマジロの事は放置して、ゼロノスの行動に考えを巡らすカイ。
 「やっぱり妙だな…………最初に桜井侑斗を狙ったのはいつだった?」
 「この時間に来て、すぐだろう」
 「けど思い出さなきゃなぁ……なんか、だっいじなものが、抜け落ちてる、って気がするよ」
 侑斗はターミナル内の商業施設で、愛理の絵を見ながらいじけるリュウタロスを発見する。
 背中合わせで壁越しに、会話をかわす二人。
 「野上の事……怒ってんのか?」
 「別に。なんで良太郎があんな事言うのか、わかんないし。……僕の事、いらなくなったのかも」
 「逆だろ。……逆だから、あいつもどうしていいかわかんないんだ」
 そしてもう一人、現状に戸惑うコハナは、ミルクディッパーを訪れていた。
 「自分でもわかんなくて。大っ嫌いだし。……居なくなるのはちょっと、て思うけど。でも、その方が、いい筈なのに。今のまま、 変わってほしくない……変ですよね、本当に、大っ嫌いなのに」
 またまた、
 忘 れ て た !(おぃ)
 そういえばチャンプは、イマジンによって自分の時間が消された、という物凄いヒロイン設定を背負っている筈なのに、 愛理さんにヒロイン力で大きな格差を見せつけられ、一個の修羅の道を歩んでいるのでありました!
 物語上の大きな盲点が浮き上がると共に、最終盤の前におさらいされる、忘れがちだった幾つかの設定(笑)
 「あのね……コハナちゃんは、もう、その人達が大好きなんだと思うなぁ」
 「そんなこと……ぜんぜん」
 「ほんとに? 変わってほしくないって思うくらい、その人達との今が、大切になってるのよねぇ。……だから、辛いわねぇ」
 変わらなければいけないのに、変わってほしくないもの。
 この分岐点で、何を、選べばいいのか。
 それぞれの会話の合間合間には、踏切で佇む良太郎のカットが挿入。
 「カメの字……」
 「んー、居るねぇ。どうやって潜り込んだんだか」
 遊戯施設で時間を潰していたウラタロスとキンタロスは、アルマジロの気配に気付く。
 「あんな、良太郎がどう言おうと、オレは戦いを止める気はないでぇ。オレの命はとっくに良太郎に預けとる」
 「んー、泣けるねぇ」
 「はっ、なにがや。おまえかて止める気はないやろ」
 「さーね、僕はキンちゃんみたいな浪花節は似合わないから」
 「はっは、そら」
 「さーて」
 二人、滑り台で出撃(笑)
 こんな時でもユーモア要素を挟んでくるのが、今作らしい所です。そんななのに、格好いいし。
 アルマジロの攻撃から、人々を守るウラとキン。イマジンが暴れだした事で警報が鳴り響く中、踏切が開き、走り出す良太郎。 駅内の通路でその前に姿を見せるのは……モモタロス。
 「良太郎。ちょっとばかり強くなったからって調子に乗ってんじゃねえぞ。おまえ一人じゃ、イマジン一匹倒せやしねえよ」
 「やってみなきゃわからない」
 決意を込めて良太郎は変身するが、モモタロスはイマジンの元へ向かおうとするプラットフォームを突き飛ばし、剣を投げつける。
 「やれるって言うなら、そいつで俺に一発でも打ち込んでみろ」
 イマジンと戦える力を見せるならもう何も言わない……立ちはだかるモモタロスに向け、P電王は剣を拾って打ちかかる。
 ここに来て、プラットフォーム対モモタロス!
 またここで良いのは、たぶんモモタロスにも、そういう問題(強いか弱いか)ばかりで無い事はなんとなくわかっていて、 しかしモモタロスが、これしか会話のやり方をわからない事。良太郎が心配で心配で仕方なくて一緒に戦いたいけど、 その為の説得の手段が、力でわからせる以外に、わからない。
 ウラとキンは、2対1にも関わらず、アルマジロに大苦戦中。
 「おまえたちの攻撃、ぜーんぜん痛くないし」
 満を持して登場した、日本三大チンピラ声優(私見)最後の一人・高木渉の起用だけあって、頭悪そうな台詞回しとは裏腹に、 普通に物凄く強いアルマジロイマジン。そこへリュウタロスが駆けつけ、銃撃で多少はひるませるが、アルマジロの猛攻は止まらず。
 「形勢逆転狙うなら、あと10人ぐらい呼ばないとなぁ!」
 かつて、こんなに強いアルマジロが居ただろうか(笑)
 P電王vsモモタロスは、序二段vs横綱のぶつかり稽古状態。食い下がるP電王をモモタロスは何度も叩きつけ、投げ飛ばし、 遂に剣をもぎ取り、たたき伏せる。
 「くそ、粘りやがって……二度と一人で戦うなんて言うな。いいな!」
 だが、良太郎は涙声で首を左右に振る。
 「やだ……」
 変身を解除する良太郎。
 「出来るわけないよ。モモタロス達が消えるかもしれないのに、戦わせるなんて出来ない」
 「おまえまだわかんねえのか?!」
 「消えるかもしれないんだよ!!
 僕だって本当は戦いを止めて…………でも僕は迷えない。迷いなんかない。モモタロス達が消えるかもしれないのに、 僕はこの時間を守ろうと思ってる……今も。
 なんでかな。モモタロス達が消えるのはこんなにやなのに。なんで……」

 「良太郎…………」
 良太郎の隣に、どかっと座り込むモモタロス。
 「上等じゃねえか。迷う必要なんかねえよ。消えるとか消えねぇとか、そんなのは、後の話だ。……俺が暴れたいってのも、 ホントだしな」
 ためらいがちに、言葉をさぐる、モモタロス。
 「ただ……まぁ…………ちょっとでも守りたいと思うとしたらよ、“今”、ってやつだ」
 真摯な良太郎の言葉に向き合い、口べたなモモタロスがここで、拳でなく言葉で語る。
 「つーか、おまえ、運悪いからな。消えるとか言う前に、腐った饅頭でも食ってよ、ぽっくりかもしれねぇ。そしたら、 俺たちも道連れだ。たぶん、カメ公たちもそう思ってるぜ。だから……戦わせろよ、良太郎」
 「モモタロス……」
 「な?」
 立ち上がったモモタロスは良太郎へ手を伸ばし、
 「ほら立てよ。カメ公たちが負けちまうぞ」
 良太郎はその手を掴む。
 …………あんまり、泣けた、とか書きたくない方なのですが、まさか、 胡座かいた鬼の着ぐるみの語りで泣かされるとは思わなかったよ……!
 良太郎とモモタロスの最重要な会話は今回で3回目で、最初は4話、外(良太郎)とデンライナー(モモタロス)で、 「ごめんなさぁぁい!!」まで。
 次いで18話、変身状態でS電王(モモタロス)と中(良太郎)で、愛理の件もあって両者の関係がややちぐはぐになっていた時の (うん、ごめん。それと――ありがとう)まで。
 そして今回、お互いが同じ位置で、腹を割って話す。
 戦い続ける事を迷っていたのではなく、たとえ残酷な選択をしても「そこに迷いがない」自分に戸惑っていた良太郎。
 既に腹をくくっている自分達に対し、その手前で良太郎が迷っているのでないかと考えていたモモタロス。
 イマジン達を気遣っていたと言うよりも、見方によっては極めて非情ともいえる自分の選択にどうするのが一番いいのかわからなくなり、 場合によっては契約を完了すればイマジン達を救った上で戦い続けられるのではないかと考えた良太郎に、モモタロスが、 迷わず一緒のままでいいんだ、と正面から告げる。
 何故そこまでして戦うのか?
 「ただ……まぁ…………ちょっとでも守りたいと思うとしたらよ、“今”、ってやつだ」
 ここで良太郎が本当の意味で、モモタロス達の力を借りているのでもなく、モモタロス達を戦わせているのでもなく、 モモタロス達と一緒に戦っているのだという事を知る。
 そして恐らく、良太郎がそれをわかっていない、と思いつつも、自分達でもそれをどう言葉にすればいいかわからなかったイマジン達 (モモタロス)が、その言葉に辿り着く。
 だから――

2つの声重なる時
誰よりも強くなれる
動き出そうぜDouble-Action
「今と」「未来」1つになる瞬間

 今まで劇中で何度か、「ヒーローとしての脱皮」を描かれてきた電王ですが、本当に終盤の終盤、ここに来て、 真の意味でのDouble-Actionに辿り着くとは、いやはや、脱帽です。凄い。そんな今回のサブタイトルが、「決意のシングルアクション」。 サブタイトルには洒落も含めて非常に凝っている今作ですが、お見事。
 ウラ、キン、リュウを追い詰めるアルマジロに、良太郎&モモタロス、背後からダブル飛び蹴り。
 「ごめん……これからも一緒に戦ってくれる?」
 もちろん否の声がある筈もなく、強敵アルマジロイマジンを前に、盛り上がる良太郎&イマジン達、まずはソード電王に変身。
 「俺――参上!
 いいかなんとか野郎、今日の俺は、始まる前からクライマックスだぜ!」

 ソード電王は気合いでアルマジロを滅多切りにし、ロッドにチェンジ。
 「おまえ、僕に釣られてみる?」
 長物でアルマジロを翻弄したロッド、押さえ込んだ所でアックスにチェンジ。
 「オレの強さは、泣けるでぇ!」
 アックス、アルマジロの鉄球を受け止めて投げ返し、リュウがダイブしてガンに強制チェンジ。
 「これ痛いけどいいよね? 答えは聞いてない」
 銃撃乱射でアルマジロをひるませた所で、取り出す携帯電話。
 (みんな、行くよ)
 今、満を持して、本当のCLIMAX!
 「バカな……なんで急に……俺の方が強いのに!」
 「ばーか。どっちが強いかじゃねえ。戦いってのはなぁ……ノリのいい方が勝つんだよぉ」
 炸裂する、クインティプル・アクション!
 “ノリのいい”表現で、近接ソード攻撃の最中に変なステップ入れてるのが凄い(笑)

 「必殺――俺たちの必殺技、CLIMAXバージョン!!」

 珍しい、正統派の真っ正面ぶった切りで、アルマジロ両断。
 「よっしゃーーーー!!」
 こうして良太郎達はかつてない強敵を撃破すると共に、致命的になりかねなかった決裂を乗り越え、より深く団結する。 またも祝勝会ムードに包まれる食堂車、だが……
 「これからですよぉ、良太郎くん。本当の戦いは、これからです」
 駅長とのチャーハン対決の延期にかこつけて、オーナーは微妙に不穏な発言を残していくのであった……。
 そしてカイは、一つの答えに辿り着いていた。
 「ああそうか……あはははは。やられたよ、あーれに、桜井侑斗にさぁ。やっぱり足りないんだ、はははっ、 最初にこの時間に来た時から、一つだけ抜け落ちているものがある。……はは、ははははは……
 のがみりょうたろう……おまえの記憶だ」

 声なく嗤うカイ、次回、物語の核心に迫るクリスマス!
 いよいよラストが迫ってまいりましたが、いやーーーーーーー、面白かった!
 良太郎の理由を、良太郎の「優しさ」だと思わせておいて、実は良太郎の「強さ」であった、と持ってくる流れ。 そして良太郎の「強さ」を知るイマジン達と、本当の意味で「強さ」で繋がる。
 また今回は、自分を弱いと思い続けてきた良太郎が、選択肢の優先順位を「迷えない」 自分の強さに気付いたという面もあるかもしれません。
 表向き定番崩しの「アンチ・ヒーロー」的なギミックを多数取り入れながら、一方で丹念に「ヒーロー」を積み上げてきた今作らしい、 素晴らしいエピソードでした。

→〔その8へ続く〕

(2014年2月18日)
(2017年5月28日 改訂)
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