■『仮面ライダー電王』感想まとめ6■


“邪魔なヤツは倒して構わない? 言ってみただけ答いらない”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダー電王』 感想の、まとめ6(33〜38話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。そこはかとなくリュウタロス風味。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・  〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕 ・  〔劇場版『俺、誕生!』〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・  〔総括&構成分析〕


◆第33話「タイムトラブラー・コハナ」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 前回の流れは児童層にわかりにくいという意見が内部であったのか、オーナーのナレーションにより 「桜井侑斗がゼロノスに変身するカードは、他者の中の侑斗の記憶を消費している事」が冒頭で説明。
 そして全ての桜井侑斗の記憶が他者の中から消えた時、桜井侑斗は時間の中でその存在を保てなくなる。
 土手で転がる侑斗(無職)は、手持ち全てのカードを使い切ってしまった事により今後のイマジン対策に頭を悩ませる事になるも、 自分の存在をこれ以上消費しないで済む(したくても出来なくなった)事に関しては、“ちょっとだけ”の安堵を得ずには居られなかった。
 最終的な目的は未だ不明の侑斗ですが、デネブと共に良太郎さのサポートに回る事に決定。モブ転落の危機に、 徳俵いっぱいで踏みとどまりました。
 その頃、ウルフイマジンの回に登場したかつての同級生・沢田と電話する良太郎は、 沢田がかつて出会った「桜井さん」を覚えているか水を向けてみるが、沢田もまた、「桜井侑斗」の記憶を失っていた……一方、 デンライナーは時の道程の中で、今まで見た事もない、捻れた線路を発見していた。
 「ともかく、何か変化が起きてますよ……何か……」
 それは、新しい時間へ繋がる線路なのか……?
 そして、デンライナーから姿の見えなくなったハナと、同じ服装をした少女が、長石階段で鏡を見上げて叫んでいた。
 「嘘でしょ…………うそぉぉぉぉぉ!」
 長石監督、TVシリーズに帰還。
 帰還早々、チャンプ小型化という、衝撃の新展開。
 潜伏期間が長かったですが、モモタロスに続いて、遂に、チャンプも良太郎の不幸に感染した!!
 野上姉弟に深く関わってしまった者の辿る運命は、
 愛理さんのフェロモンに脳までやられるか
 良太郎の不幸が伝染するか
 二つに一つ!
 「良太郎……あたし、ハナ……」
 デンライナーにハナの姿が見えないとモモタロスに聞かされた良太郎、ちょうどかかってきた電話でハナに呼ばれた場所へ向かう途中、 チンピラにからまれてしまうが、そこへ飛んでくる生卵。
 「良太郎から離れなさい」

 そして炸裂する鋼鉄の拳。

 「良太郎、逃げるよ」
 小学生ぐらいの少女に手をひかれ、以前、K本条がらみで空手部員に囲まれる羽目になった時の事を思い出す良太郎 (劇場版で離れる前の長石監督回なので、脚本家の遊び心といったところでしょうか)。
 「あの……まさかと思うけど……ハナさん?」
 「わかってくれた?」
 良太郎の中で、チャンプのアイデンティティは闘争にあるのだな、 という事を改めて確認して、どんな顔をすればいいかわかりません。
 ひとます小型ハナをミルクディッパーに連れて行った良太郎だが、そこへ愛理がぶんぶんまとわりつく羽虫ーズと一緒に戻ってくる。 とりあえず、ハナの「妹みたいなもの」として紹介する良太郎。
 「お名前は?」
 「あ……ええと……」
 「……こ、コハナちゃん」
 咄嗟に良太郎が口にした名前により、小型ハナのコードネームは、コハナに決定。
 不満そうなまなざしのコハナに、つねられる良太郎。
 「駄目……?」
 まあ、ハナタロスより良かったと思います。
 ここは公開版の映画を見ていると、「小太郎」の絡みでもう一笑いできる所でしょうか。
 ファイナルカット版では「小さい良太郎」=「小太郎」の名付け親はモモタロスなので……えー色々、 これもタイムパラドックスなのか何なのか(笑) いったい誰が一番悪いのか。
 しかしまあ、ハナタロスではなくて本当に良かった。
 そこへこっそりと顔を覗かせ、良太郎を外へと連れ出す侑斗(住所不定電車・無職)。
 愛理や羽虫ーズと顔を合わせなかった為、「桜井侑斗の記憶が消費された事」が、現在の侑斗の認識にどう影響を与えるのかは、 わからずじまい。意識的に顔を合わせないようにこっそり顔を見せた感じには描かれていましたが。
 街のあちこちでピアノを勝手に(しかし見事に)弾いてまわる謎めいた燕尾服の男がイマジンと契約したのを見た侑斗は、 デネブに男を追わせつつ、良太郎に連絡しに来たのだった。良太郎はイマジンを追い、侑斗はコハナをデンライナーへ連れて行く事となる。
 役立たずが露骨に役立たずに見えないように、必然性のある仕事を回してあげるのは、脚本家のちょっとした愛を感じます(笑)
 あと子供とか拳骨一発で黙らせそうな感じの侑斗でしたが、意外と、態度が優しい。
 エアピアノを弾きながら街を彷徨い歩く怪しい燕尾服の男は、とある病院の一室を外から見つめていた。そこに入院しているのは、 昏睡状態の元ピアニスト・奥村祐希。果たして二人はどんな関係なのか? 病院を離れた男の前に、「ピアノが欲しいのか、よしよし、 かなえてやろう」と勝手に契約を決めたクラーケンイマジンが、他人の家から強奪してきたピアノを投げ落とす。だが、男の扉は開かない。
 …………うんまあ、何も言っていないのに、目と目で通じ合って勝手に契約決めましたから、たぶん、 間違っているんだと思うんですよクラーケンさん(CV:稲田徹)。
 本当は、おでんとか欲しかった可能性も否定できない。
 男に扉の開放を無理矢理迫るクラーケンに立ち向かうデネブ、そして駆けつけた良太郎はソード電王に変身。 最初は押し気味だったS電王だが、クラーケンが銃を持ち出し、触手との合わせ技で苦戦。
 しかし、デンライナーの面々は侑斗に連れてこられたコハナに驚いていて戦闘の事など完全に忘れていた。
 触手に掴まれた状態でなんとかフルチャージ、反撃をはかるS電王。
 「俺の必殺技ぁ! いくぞ――俺の必殺技パート……パート? ……何にすっかなぁ」
 (迷ってる暇ないよ。……5でいいじゃない)
 「よし、パート5!」
 Mさん、そろそろ技増やしすぎて、自分で整理できなくなっている模様。
 強引に放った俺の必殺技パート5はクラーケンを切り裂くがS電王も銃撃を受け、両者痛み分け。クラーケンは逃亡し、 S電王も変身を解除。
 デンライナーでは、オーナー、コハナ、侑斗が、先頭車両から、あの新しい線路を見つめていた。
 「ハナくんの異変は、あれに関係しているとも……考えられます」
 「どういう事ですか?」
 「たとえば……あの路線が、ゼロライナーやハナくんの居た時間に、続いている、とか……」
 ここで、燕尾服の男が弾くピアノの音色(「double-action」ピアノアレンジ)がデンライナー組に重なるのは格好いい流れ。
 戦場を離れた所で休ませていたと思ったら、クラーケンが持ってきたピアノを無心に奏でている男を、呆然と見つめる良太郎とデネブ。
 一心不乱にピアノを弾き続ける男は何者なのか……。
 そして新しく生まれた路線の先には何があるのか……?

◆第34話「時の間のピアニスト」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 意を決して、ピアノの男に話しかける良太郎。
 「さっきの怪物に望んだ事教えてもらえませんか。きっとまた、来ると思うんです」
 「そう。じゃ、もう一度待ってみるか」
 男は去っていってしまうが、デネブによると、男がイマジンに望んだのは確かに「ピアノ」らしい。しかし過去への扉は開かなかった…… 果たして契約の裏に隠された真実はいったいなんなのか?
 前回のクラーケンとピアノの男のやり取りが、目と目で通じ合っているようにしか見えなかったのですが、思いの外、 ちゃんと通じ合っていたらしい、心。
 クラーケンイマジンには、伏してお詫び申し上げます。
 それはそれとして、これまで数多の契約をイマジン流拡大解釈でクリアしてきたイマジンですが、今回、 ピアノの男の扉を開けなかったのは、クラーケンさんの押しが弱いのか、男の精神力の問題なのか。
 デンライナーでは、コハナをからかうリュウタロス。
 オーナーによると、ハナの変化は「消えた筈の、ハナの居た時間が、戻ろうとしているのかもしれない」との事だったが、 オーナーも良くわかっていないのかもしれない。しれない。
 「おまえ、本当にあのハナくそ女か?」
 あまりの変わりように、上から覗きこむモモタロスの顔面にクリーンヒットする、修羅の拳。
 「間違いない。ハナくそ女だ……」
 モモタロス、K.O.!
 修羅の本質とは器にあらず、心と拳にあり!
 ピアノの男を見張る良太郎と侑斗は、彼がある病室を見つめている事に気付く。 お見舞いと称して乗り込んだD侑斗が滑った所をU良太郎がフォローに入り看護師から聞き出したところ、入院している青年は、 奥村祐希。少年時代から天才と謳われたピアニストだったが、3年前に事故で植物状態となり、以来ずっと眠り続けているのであった。 病室をじっと見つめる燕尾服の男については看護師も知らず、すっかりナンパモードのU良太郎とそれにドギマギするD侑斗は、 乱入したコハナによって回収されていく。
 「珍しいね。ウラタロスがこういう地味な事を手伝ってくれるなんて」
 「ハナさんのご使命……というより、ご命令?」
 小型チャンプ、早くもデンライナーで覇権確立。
 警備員に病院前から追い払われた燕尾服の男を追った一行は、楽器店でピアノを弾き始めた男に対し、 U良太郎がナンパ道108の奥義の一つ・ピアノ演奏により接触を試みるも空振り。
 「一緒に演奏してて思ったんだけど、あのおじさん。世界と繋がっていたくないって感じなんだよねぇ」
 地道に情報収集する事になる。そしてその結果、わかった事は……
 「何もわからない事がわかった」
 男は再び病院の前に戻り、良太郎と侑斗は合流するが、燕尾服の男の目撃者を探した聞き込みの収穫は、ゼロ。 各地でピアノを弾く男を目撃している者は居たが、誰も、彼の名前も素性も知らない。
 「似てるね……桜井さんと」
 忘れられた男。
 「人の記憶がどれだけ大切か、何度も見てきたよ。たとえ過去が壊れても、人の記憶がもう一度、時間を作る……」
 良太郎が思い出すのは、神の列車が喰らった時間と、その復元。
 そして侑斗の言葉。
 「人の記憶こそが、時間なんだ」
 ここで劇場版の最重要ワードが、TV版にも挿入されました。また、ジークが消えかけた時の話/映像と繋げる事で、 TV版しか見ていない視聴者にも、繋がりをスムーズに示唆。
 「変身する為にその記憶を消費して、何でもない筈ないよね、君も、桜井さんも」
 侑斗を問い詰めようとする良太郎だったが、その時、風を切るグランドピアノ!
 良太郎は現れたクラーケンに対して、ロッド電王に変身。
 「おまえ、僕に釣られてみる?」
 ロッド電王がクラーケンイマジン(広義の魚介類)と戦闘する中、ピアノに近寄った男は、それを奏ではじめる。 その音色が届くのは――奥村祐希の病室。
 男の望みとは、この病院の前でピアノを弾く事にあった。
 過去への扉は開いてしまい、クラーケンは過去――2004年1月18日へ。それは、
 「あの子と初めて会った日だ……」
 3年前――ゴミ捨て場にうち捨てられていたピアノを、一心不乱に弾く燕尾服の男。
 「自分とピアノだけの世界に居た私を、あの子は見つけ出した……」
 かつて“奇跡のピアニスト”とまで言われながら、突如引退。誰かの為に弾くのではなく、自分とピアノだけの世界に居た燕尾服の男は、 天才ピアニストと呼ばれる自分への重圧から壁にぶつかっていた奥村祐希と出会う。奥村のピアノへの想いは燕尾服の男にも繋がり、 やがて二人は連弾をするなどピアノを通じて仲を深めていく。しかしある日―― コンサートのチケットを燕尾服の男に渡そうと道路に飛び出して奥村は事故に遭い――植物状態となった。
 ゴミ捨て場でピアノを弾く燕尾服の男の中から姿を現すクラーケンイマジン。そこにやってくるデンライナー。
 「一度釣り上げかけた獲物は、逃がしたくないんだよね」
 ロッド電王、文字通りにクラーケンを釣り上げにかかり、多少の苦戦はあったものの、 最後はバイクによる不意打ちから必殺技へのコンボ。
 「塩辛にでもしますか」
 必殺の蹴りがクラーケンを砕くが、クラーケンイマジンは暴走し、かつてない大量分裂が発生。暴れ回る暴走イマジンにより次々とビルが壊され、 数多くの人々が瓦礫の下敷きとなってしまう。その中を一緒に逃げていた奥村と燕尾服の男も降り注ぐ瓦礫の犠牲となり、 現在におけるその存在が消失――。
 「お仕置きしなきゃいけないのは、あいつらの方らしいね――良太郎、行くよ」
 この惨状に、ウラタロスも本気モード。劇場版ばりの電車大集合で、分裂した暴走イマジンを各個撃破していき、 最後はぐるりと取り囲んでの、蒸し焼き集中砲火で暴走イマジンを壊滅させる。
 久々の電車ですが、前段の良太郎と侑斗の会話を含め、ここでゼロライナー含めた電車による総攻撃(大連結はなし)を行う事で、 物語及び演出面において、劇場版の内容を補完しきった、という所でしょうか。
 かくて時の運行は守られ、人の記憶――時間の復元力により、現在で存在を取り戻す人々。
 この、“過去でイマジンによって破壊されたもの”が、イマジンを倒した事で元に戻る、という描写は劇中初。
 以前に一度、過去でイマジンに殺された事で現在の人が消失する、という描写は入った事があり、 イマジンを倒すとその人はどうなるのだろうと少々気になっていたのですが、 イマジンを倒せば人命の損失もリセットされる事が明確になりました。
 もう一つこれでハッキリしたのは、イマジンは“現在”においては物理的な被害を及ぼせるけど、 “過去”においてはあくまで記憶に被害を及ぼしているという事。記憶の連続性を破壊する、というか。
 ……と思ったのですが、そもそもイマジンは2007年(良太郎主観の“現在”)より未来から来ている筈であり、 イマジン主観においては2007年も過去、となると、必ずしも2007年に物理的被害を及ぼしているとは言い切れない気もしてきました。
 イマジンが2007年で及ぼしている被害も、もしかしたら記憶、という可能性はあり。
 ただイマジンはあくまで2007年で暴れるのではなく、そこから更に過去へ跳ばないと時の運行を乱せないルールのようなので、 2007年が“現在”という事については、時への干渉に関する未だ明かされないルールがあるといったところでしょうか (その辺りが「特異点」と絡んでくるのかとは思われますが)。
 あまり突き詰めると流れる時間に対する主観や観測者の問題など出てきて非常にまたややこしくなるので、 現状わかっている範囲ではそういうルールっぽいなぁ……程度の話で、脇に寄せておこうと思います(^^;
 過去で瓦礫の下敷きとなった奥村も、当然、病室のベッドへと植物状態ながら戻り、そして―――― 路上に置かれたグランドピアノの前は、無人だった。
 「あの人は…………?」
 「消えた」

 あああああああ、その為か!!!

 す・ご・い

 どうして今回に限って、ある意味では野暮な、再生シーンを入れるのだろうと思っていたのですが、なるほど、 ここでこう繋げてきましたか。
 誰にも知られず、忘れ去られた男は、戻る時間を持たない。
 「おまえ言ったよな。あの男の事を覚えてる奴はいなかった、って。だから……戻らない。唯一、 三年前のあの男の事を覚えている人間は眠ったままだ」
 そしてそれは否応なく、良太郎に桜井侑斗を思わせる。
 「そう、記憶がある限り、時は消えない。しかし、記憶にない時間は戻らない。イマジンが過去で暴れる度、 ピアノの男のように忘れられ、零れ落ちてしまうものがあるんです。でも、大抵は、影響はありません。ただ、消えるだけです」
 「そんな……」
 「何もかも覚えているのがいい事とは、限りませんしね」
 去って行くオーナー、燕尾服の男の事を思い、沈み込む良太郎。
 「確かなのは一つ。僕は今日、一人、時間からこぼしてしまったんだ。守れなかった」
 その時、停車したデンライナーに一人の男が乗り込んでくる。それはなんとあの、燕尾服の男。ナオミによると、 時から零れ落ちた者は、いつか誰かがその者の記憶を取り戻すまで、時の中を旅するのだという。彼の記憶を持つ奥村が目を覚ませば、 いつかは燕尾服の男も、現在へ戻る事が出来るかもしれない……。
 オーナーの解説を聞いて皆が暗くなる中、ナオミが首をかしげるようなポーズをしていたのは、 このシステムを知っているからだった模様。
 実はこれまで存在理由が不明だったデンライナーですが、今回明かされた、時から零れ落ちた人のフォロー機能を考えると、 時の運行を守る戦闘力(電王)付き救済システム、といった所でしょうか。
 個人的にはどちらかというと今回の設定で一気に銀河鉄道っぽい雰囲気も出たような気がするのですが、 ここは良太郎のように全面的に前向きに捉えておく方が吉か、吉なのか。
 どうもこう、全面的に明るい話題という気もしないのですが(^^; これを明るいニュースぽく伝えているのは、 ナオミがナオミなりにデンライナーの中の人間として、浮き世の人間とは感覚がズレているから、という気はします (もちろん意図的な描写として)。
 当の奥村が、ピアノが聞こえてきた時も、消滅後に再生した時も、システムの解説時も、覚醒の気配をほんのちらっとでも匂わせない、 というのは、如何にも、記号的な道具立てを嫌う白倉−武部ラインだなぁ、というところ。
 なお、コチャンプは、リーチと筋力こそ落ちたものの、修羅として余計な肉が減った分突きのスピードが増したのか、 その拳の威力は以前より上との事(被害者の会代表・Mさん談)。
 次回、ソード→ロッドと来てアックス回かと思いきや、大の字に倒れていましたが、キンちゃんの活躍や如何に?!
 そして、色々な話が大きく動きそう。

◆第35話「悲劇の復活カード・ゼロ」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子)
 「おまえ……この先も戦ってけるのか。俺が変身できない以上、これからも電王だけだぞ」
 「やるよ……僕がやらなきゃ。その為にも――もっと強くなる」
 誰も零さない強さを手に入れようと、改めて決意する良太郎。
 前回、救済策が示されて良かった良かったみたいな雰囲気で落としましたが、やはり良太郎はピアノマンを救えなかった事を引きずっており、 まあそう楽天的な話でもないよね、と改めて。
 前回オチで表向き明るくまとめておいて、次回の冒頭ではピアノマンが消滅するシーンは回想するけど、 デンライナーに乗り込んでくるシーンは回想されないとか、作っている側の本音が見えて『本当は怖い「仮面ライダー電王」』みたいな、 少々ずるい(笑)
 さて、かつてここまで、良太郎が強くなろうとしてろくな事態になった事はないわけですが……

 ケース1:Mさんの場合
 鉄パイプ?持ってチンピラのグループを追い回すM良太郎。
 「良太郎いいか。雑魚はほっとけ、まず一番強いヤツを潰すのがコツだぜ。後は勢いだ」
 「最初に神官を倒せ」みたいな。
 必死に逃げるチンピラを楽しげに追いかけるM良太郎だったが、コハナのハリセン攻撃を受け、道路にひっくり返る。
 モモタロス、リタイア!

 ケース2:Uさんの場合
 ナンパ道・108の奥義が一つ、華道をたしなむU良太郎。
 「そして釣りは徹底的に楽しむ事」
 一緒に花を生けていた女性陣達をよろめかせた所で、コハナに網をかけられ引きずれていく……。
 「あんたはもう、女の子見るだけで、犯罪だわ」
 ウラタロス、リタイア!

 こうして順番の回ってきたK良太郎は……滝に打たれていた。
 (ねえキンタロス……これって本当、戦いの練習になるのかな。なんか、冷たくて痛いだけって感じが……)
 へんじがない。ただのいねむりのようだ。
 流木が滝を落下してきてあわや即死寸前に、コハナのキックでキンタロスが目を覚まして事なきを得るも、滝での修行はこれにて終了。 基礎体力の強化以外に実践的な戦闘技術を学びたいと考える良太郎と、それを応援するコハナであったが、キンタロスにはそれ自体が、 どうもピンと来ない。
 「しかし、強くなるゆうてもなぁ……」
 二人の懇願に押され、かつて本条に乗り移って殴り込んだ空手道場へ向かうが、相手を怒らせた上に、 憑依を解いた良太郎が空手家にかなうべくもなく、一発ノックアウト。慌ててK良太郎になって退散する事に。
 「あんな良太郎、なんでそんなに気張るんや」
 (だから、それは……)
 「何度も言ってるじゃない。強くなりたい、って」
 「そんなん必要ないやろ」
 (でも……)
 「良太郎はめちゃめちゃ強いやないか」
 自分を受け入れた時の事、モモやウラが従っている事などを例に出し、良太郎の持つ強さについて諭すキンタロス。
 “強さ”にこだわるキンタロスが、“良太郎の求める強さ”に疑問を感じ、“良太郎の持っている強さ”を語る、 というのは非常に上手く、久々にキンタロスが輝きました。
 「どう見ても、強い思うけどなぁ……あかんのか?」
 しかし、失ってしまったものの重みを感じる良太郎は、それに素直に頷くことは出来ない……。
 その頃、ゼロライナーの侑斗とデネブのもとを、桜井侑斗が訪れていた。
 無言で彼が差し出したのは、追加のゼロノスカード。
 これまで過去の時間にしか登場しなかった桜井侑斗が、ゼロライナーに直接乗り込んでくる、という急展開。 帽子の下の謎の赤バイザーが気になる所ですが、ますます謎めいた存在になって参りました。
 「契約は絶対俺が果たす。だからカードは持って帰ってくれ。とにかく帰ってくれ」
 侑斗をこれ以上変身させたくないデネブは桜井侑斗を強引に追い出すが、戦えば戦うほどに世界との繋がりを失っていき、 桜井侑斗の差し出したカードを咄嗟に受け取れなかった侑斗は、自分の戦う理由に惑う。
 (俺は……なんのために……戦うんだ……)
 時の運行を守る事に対して真摯で、大きな代償を払いながらも戦い続ける事を選び、 その為に良太郎の在り方を非難した事もあった侑斗の足下が揺らぐ、という、もう一人のヒーローであるゼロノスの、転換点。
 失わせない為に戦うヒーローである良太郎(電王)に対して、失いながら戦うヒーローである侑斗(ゼロノス)に、 根源的な問いがここで立ち上がり、その前段として“誰も覚えていない者”であり“良太郎が零してしまった者” であるピアノマンのエピソードが置かれている、という実に見事な構成。
 そしてそんな侑斗の足は、ミルクディッパーへと向かう……。
 今日は静かなミルクディッパーでは、カウンターで愛理が眠っていた。その下に広げられたノートに書かれていたのは、 「桜井君用スペシャルブレンド」(苦くないコーヒーの事と思われる)のアイデアメモ。
 小林靖子は本当に、さりげない小ネタを物語に絡めていく事に執念を見せるのですが、ある種のお笑い要素であったものが、 ここでこう繋がってしまうのは、全くもって、脱帽の出来。
 そして点と点が繋がった場所で、英雄的大義を掲げていたヒーローの、人間の部分が浮かび上がる。
 桜井侑斗はなんのために戦うのか?
 “ヒーロー性”と“人間性”の相克と共存しいては新生というのは《平成ライダー》の抱える大きな命題ですが、 側面からきっちりとそこへ辿り着いてきました。侑斗がカードを失ってからの一連の展開は、実に冴えています。
 あとちょっと謎だった、桜井侑斗の記憶が消える事は、現在進行形の侑斗の記憶に影響を及ぼすのかという問題ですが、 これを見る限り、進行形の侑斗に関する記憶は残っている模様。認識が別人だから、という事でしょうが。
 一方、後にしてきた空手道場でイマジンが暴れている事を知り、駆け戻るK良太郎だったが、 既にイマジンは空手家・山口の過去へと跳んでしまっていた。2006年11月22日――それは、 山口が町内のど自慢大会でこの道場の人間に負けた日。
 「また随分軽い記憶で跳んだなぁ……」
 何はともあれ、過去へと跳ぶK良太郎。
 山口の熱唱から始まる町内会のど自慢大会、会場の観客に加えて審査員まで用意して、無駄にキャスト使っています(笑)
 そこへ出現したモールイマジンは、青いスーツに赤い上着という派手な色使いで、イマジンとしては一風変わったデザイン。 追いかけてきたK良太郎の前に姿を見せる、もう2体のモールイマジン(手のデザインで、アックス、クロー、ドリル、の3体)。 モールイマジンもまた、初めから電王が狙いだったのだ……!
 「オレの強さにお前が泣いた」
 立ち向かうアックス電王だったが、3対1に加え、いつもより動き辛いという謎の不調で大苦戦。 追い詰められた所で2体のモールは姿を消し、残った1体がいざとどめ……という所で現れる、ゼロライナーと侑斗。 侑斗は姿を見せた桜井侑斗から追加のカードを受け取り、それを必死に止めようとするデネブ。
 「駄目だ侑斗、もう変身しちゃ、駄目だ」
 「デネブ……イマジンを放っておけば未来が消える。やるしかないって最初に俺のとこ来た時、おまえ、そう言ったろ」
 「そうだけど……でも」
 「俺がゼロノスになって戦う事。それがおまえと、未来の俺との契約だ」
 侑斗はベルトを取り出し、カードを手にする。
 「やめろぉぉ!」
 (侑斗!)
 「変身!」
 久々の落雷とともにゼロノスは登場し、その変身を見届けて、かき消えるように居なくなる桜井侑斗。
 「最初に言っておく。俺はかーなーり、強い!」
 アックス電王の危機を救ったゼロノスはそのまま勢いでモールイマジンを撃破。桜井侑斗は何を知り、何をしようとしているのか、 侑斗は良太郎の問いかけに答える事なく歩み去って行く……。
 以前から印象的に使われている桜井侑斗の懐中時計が、秒針が止まるという演出でクローズアップされましたが、 今のところは意味不明。登場する度に何時を示しているのかメモしようかと思ったけど面倒で結局やらなかったのですが、 何か意味があるのか無いのか。
 次回予告通り、戦闘ではさっぱり見せ場を貰えなかったキンタロスですが、良太郎とのやり取りが非常に良かったので、 むしろ株価は上昇。
 ここに来て、“何の為に戦うのか?”“強さとは何か?”と、“ヒーローとは何か?”という根源的命題 に二つの面からスポットが当たる形となりました。それぞれが、答えを掴み直す事が出来るのか。 そして物語はいよいよ核心に迫っていきそうな気配。
 なおリュウタロスは、どうせ乗り移ったら殺っちゃうからいいや、という立場の為、強さ談義には全く興味無く、 ナオミとあやとり三昧(笑)  次回、なんかまた、凄いのが……。

◆第36話「憑かず、離れず、電車斬り!」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子)
 ゼロライナーに乗り込み、“桜井さん”とゼロノスのカードについて説明をうける良太郎。
 デネブによると、“桜井さん”とデネブが契約し、そのデネブが侑斗にカードを渡したのだという。
 「全部桜井さんが決めた事なんだ……突然居なくなったのも……桜井さんの記憶が消えていくのも……そんな……」
 「しょうがないだろ」
 「しょうがない……?」
 「ああ。やらなきゃ未来は消える」
 「僕はそんな簡単に納得できない。侑斗は本当にそれでいいの? 言われるままに変身して、戦って」
 「言われるままじゃない! 自分で決めて、受け取ったんだ。これからも俺は変身して戦う」
 「自分の存在を犠牲にして?」
 「……今更だろ。もう覚えてるヤツはほとんどいないしな。そのうちおまえだって忘れる」
 どうなのかなーと思ってはいたのですが、この台詞から判断すると、デネブの“お友達大作戦”はやはり、 現在進行形の侑斗を少しでも繋ぎ止める為、という理解でよさそう。
 愛理の事もあって珍しく良太郎が強行に反駁するのですが、その中に既に、良太郎にとって侑斗が“友達”になっている、 というニュアンスが含まれているのも上手い流れ。
 そして、“失わせたくない者”と“失われていく者”と、戦う二人の意義がぶつかり合う。
 「使う必要ないよ、こんなの!」
 良太郎は思わずゼロノスカードを奪って走り去り、俺が追う、と言いつつ侑斗を食い止めるデネブ。
 「侑斗、ここはこのまま……」
 「何がこのままだ、馬鹿!」
 ここ数回、心底、侑斗を心配しているという描写のデネブですが、改めてイマジンとしては、 デンライナー組に負けず劣らずぶっ飛んでいる模様。“桜井さん”と如何にして契約したのかなど、今一番、謎多き存在かもしれない(笑)
 最もストレートに考えると、本編の始まる約2ヶ月前(“桜井さん”失踪時)――或いはもっと以前からイマジンの侵略行為は始まっていて、 デネブに憑依された“桜井さん”がそれを知って……という流れになりますが。
 一方デンライナーでは、キンタロスが良太郎とうまくシンクロできなかった件について考えていた。
 オーナーの「どうやら、変化は続いているようですね……新しい路線が見えてから、ずっと」という言葉に、何かに思い至るウラタロス。
 「ぼくたちと、良太郎の未来は、一緒じゃない、てこと」
 「…………そんなのは最初からわかってる事じゃねえか。俺は暴れられれば文句ねえよ。戦えるだけ、戦うぜ」
 「そこや、問題は」
 「良太郎が強くなりたいって言い出したのも、案外、いいタイミングだったかもね」
 「ああん?」
 なにやら策を練り始める、イマジントリオ。
 どうやら電王が活躍した事で、“イマジンが過去に侵攻してこない未来”が生まれつつあり、 良太郎とイマジン達の存在する時間が大きくズレ始めている、とか、そんな所でしょうか。
 とすると電王は、戦えば戦うほど別離を必然とする、という事になりますが、 この辺りは今作と同じく小林靖子がメインライターを務めた『未来戦隊タイムレンジャー』を思い起こす所でもあります。
 モモさんがそれを飲み込んだ上で、「俺は暴れられれば文句ねえよ」という言葉の持つ意味が、1話の頃とは違うものになっている、 というのも実に上手い。
 そういえばウラは意図的に特異点に憑いたと言っていましたが、未来がズレても存在を保てる可能性が高いから……とか、 そんな所でしょうか。
 と、侑斗の秘密が明かされて以降、一気に色々と繋がっていく、点と点。
 初の衣装チェンジしたコハナ(ナオミ辺りが見繕って買ってきたのか?)とミルクディッパーに戻った良太郎は、 愛理から望遠鏡を譲ってほしいという客が居る、という相談を受けて思わず激高。
 「本当にそう思ってるの? あんなに大事にしてたのに」
 「え?」
 「姉さん、やっぱり思い出さなきゃ駄目だよ。この望遠鏡の事。それに……この時計の事も。忘れていい筈ないんだから。 思い出してよ、絶対覚えてる筈だよ!」
 「良ちゃん……?」
 ミルクディッパーを飛びだそうとした所で侑斗とばったり出会ってしまい、その場を離れる二人。 ゼロノス抜きでも戦えるように強くなると言う良太郎だが、それでは遅すぎる、と侑斗は容赦の無い言葉を浴びせる。
 「未来を消していいのか?」
 「何かを犠牲にするのが、正しい方法だとは思えない」
 あくまで侑斗を止めようとする良太郎だが、その時、2006年に残った2体のモールイマジンが電王を呼ぼうと暴れだし、 2007年のビル群が次々と崩壊していく。会話のバックにサイレンの音が聞こえるなど、現在進行形の被害が入る、 今作としては珍しい演出で、イマジンの脅威を改めて強調。
 「おまえ前に言ったよな……弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても、 それは何もやらない事の言い訳にならない。未来の俺が言ってたって」
 「そうだよ。だから僕は……」
 「知らないでもやれっていう奴が、知ってるのに黙って見てられると思うか。……犠牲になる気はない。 俺は強くて運もあるしな」
 油断していると、不幸は感染するけどな……!
 ここでくるっと、良太郎に力を与えた言葉が、侑斗の“理由”になる。
 その強さに、良太郎はある意味で、諦める。
 代わりに、信じる。
 「これ……君の事なのかも。“過去が希望をくれる”」
 桜井侑斗を信じる。
 持ち出してきてしまった懐中時計の裏蓋を見つめ――
 そして、
 「侑斗……僕も犠牲にする気はないよ。君が何枚カードを使ったって、僕は絶対忘れない。姉さんの記憶も取り戻す」
 野上良太郎を信じる。
 良太郎は侑斗にカードを返し、二人は並んで変身。今ここに二人のライダーが初の揃い踏みを果たし、過去へと跳ぶ……!
 「おい良太郎、過去に跳んだらやばい事になるかもしれないが、慌てんなよ!」
 (え? やばい事って……?)
 「まあ、行ってみてからだ。一応準備もしてるしな!」
 デンライナーではリュウタロスが皆に囲まれてお絵かき中。
 そして廃墟(劇場版のクライマックスと同じロケ地)でモールイマジンと対峙する、電王とゼロノス。
 「俺、参上!」
 「最初に言っておく。俺はかーなり、やる気だ!」
 ところが……
 (モモタロス……なんか、モモタロスの声が遠いんだけど)
 「やっぱりな……おい良太郎、もうおまえに憑いていらんねぇ。いいか、しばらく一人で――」
 戦闘開始早々、S電王への変身を保てなくなってしまう電王。強制的にプラットフォームに戻り、 モモタロスはデンライナーの中へと弾き飛ばされてしまう。ゼロノスは大剣をP電王へと渡し、 自らはデネブを呼んでヴェガフォームへとチェンジ。P電王はへっぴり腰で大剣を振るうもドリルモールに押されっぱなしとなり、 炸裂するダブルモグラビームの直撃を受け、ゼロノスともども吹き飛ばされる。 P電王をかばってデネブと分離するほどの大ダメージを受けたゼロノスが立ち上がれない中、 大剣を手によろめきながらも立ち上がるP電王。
 ここは意図的に被せたのだと思いますが、劇場版のクライマックスを思わせ、良太郎が個人で根性を見せる事がより強調。
 「野上……無茶だ……」
 「でも……やらなきゃ」
 更なるモグラの攻撃を受け、工場の屋根を突き破って地面に叩きつけられるも、死力を振り絞って立ち上がるP電王。
 「決めたんだ……強く……なる……」
 容赦なくモグラのとどめが迫るその時、飛び込んでくる4つの光。それは砂状態で過去へとやってきたモモタロス達であった。 4つの光は融合すると例の赤い携帯電話となり(もともと持っていた赤い携帯電話に合体したと考える方が自然ですが、 演出的にはこう見える)、P電王がそれをベルトに装着すると、黄金の線路に乗って飛んでくる、変な剣。

 変な剣。

 へんなけん。

 柄の所に電王4モードの 仮面が付いているという、脱力ものの大型剣 に言われるがままにパスをはめこむと、今度はデンライナーが走ってきて、それに触れたP電王は、 燃え上がるような新しい姿へと更なる変身を遂げる!
 その名を、ライナーフォーム!
 スーツの基本色が赤となり、赤い目の横に、青・紫・黄色のぎざぎざ、そして、頭にパンタグラフ。
 変身時のCGといい、頭のパンタグラフがえらく強調されているのですが、えーとこれはあれか、 外部からエネルギーを得ているというイメージなのかそうなのか。まあ単純に電車という事なのでしょうが。
 これこそ、良太郎に憑依できなくとも、電王に4人のパワーを与えるという秘策であった。
 デンライナーの中で、メリーゴーランドのような設備に座り、良太郎に話しかけるモモタロス達。
 「あ……これで話せる相手が変わるんだ」
 変な剣の取っ手を動かすと、マスク部分が回転。それに合わせてデンライナー内部の椅子も回転し、コンタクトできるイマジンが変化。
 ひどい、色々ひどい(笑)
 淡々と、「ウラロッド」「キンアックス」「リュウガン」「モモソード」と読み上げる、音声ナビもたいがい酷い(笑)
 ……何かに似ていると思ったらあれか、ダーツ板だ。
 「必殺技きめんだよ必殺技!」
 モモタロスの声に応じ、変な剣を構えたライナー電王は、浮かび上がる黄金の線路の上に身を滑らせ、 ライナーフォームの底知れぬ危険な雰囲気というか出鱈目さに恐怖を感じたモールイマジンの放つ合体モグラハリケーンとぶつかり合う!
 「必殺技! えと…………んー……電車斬り!」
 最悪な感じの必殺技は、しかしあっさりとモールイマジン2体を両断。強敵モールイマジン兄弟も、 良太郎達の絆の力(という事にしておこう)の前に撃滅されるのであった。
 変な剣、終始へっぴり腰、最悪な必殺技の名前と、かつてない衝撃、前代未聞、空前絶後、 超弩級の格好悪さで、新フォーム・ライナーフォーム登場。
 CLIMAXフォームも酷かったですが、輪を掛けて酷いものが突っ込まれてくるとは、夢にも思いませんでした。
 本体てんこ盛りに続いて武器てんこ盛りという事で、発想としてはCLIMAXソードといった所なのでしょうが……玩具、 あったのでしょうか、これ。クリスマスに買ってきたらむしろ泣かれそうなレベルですけど(※あったそうです。 なお正式名称は、デンカメンソード、との事。酷い、酷すぎる)。
 しかし、格好良いつもりで格好悪い、というのはままありますが、明らかに確信犯で、もう、 笑うしかありません。後々これを格好良く見せてくれるんですよね? という期待値込みで。
 泣けるで!
 祝勝会ムードのデンライナーでの説明によると、ライナーフォームへのパワーアップにはオーナーの協力もあったそうですが、 具体的にオーナーがどんな協力をしたのか、通常、積極的に助けてくれないオーナーがどうして協力してくれたのかは、謎。
 「どうして過去でみんな僕に憑けなかったんだろ……」
 という良太郎の疑問には、皆誤魔化して、だんまり。
 次回以降を見ないと何ともですが、今の所は、過去でのみうまく憑けない、という事でしょうか。となると今後は、 現在での戦いでは各フォームを使うけど、過去ではライナーフォーム、という事になるのか。 必殺技のギミックとか割と好きだったのですけど、CLIMAXフォームはお役御免になってしまうのか、心配です。
 必殺技といえば、ライナーフォームのダーツ剣も接続しているイマジンごとに技が変わったりするのでしょうか。
 さしづめ、
 電車突き・電車断ち・電車撃ち
 といったところか。
 特製ケーキも出てきて大騒ぎの中、オーナーは隅のテーブルで沈黙し、ひとりワインを口にするその視線は、 謎の路線を見つめていた……そしてその奥で、何かが光る――。
 侑斗の覚悟と決意、そして良太郎の新たな決意。
 二人の仮面ライダーは、改めてそれぞれの信念を強くしながら、戦いに臨む。
 ゼロノスカードの秘密編は、今作がここまでじわじわ積み上げてはいたものの、 直接は触れなかった「ヒーロー」という要素に踏み込んで、ひとまとまり。
 ゼロノス/侑斗のヒーローたる所以と、物語の謎も上手く絡まり、お見事。そしてそれを受けて、良太郎が更なる一歩を踏み出す、 という有機的な繋がりがしっかりと出来ており、主役が引っ込んでしまわないのも良い所。 ゼロノス/侑斗というヒーローにスポットを当てて描きながら、しかしそれが、野上良太郎というヒーローをあぶり出す形になっている。
 今作は、表向き突飛でイレギュラーな作風なのですが、その一方で、凄く丁寧にヒーロー物をやっており、 それをしっかりとまとめるエピソードとなりました。その骨組みがちゃんとしているのが、今作のとても優れた所。

◆第37話「俺、そういう顔してるだろ?」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子)
 「おい良太郎。電車斬りはねえだろ、電車斬りは。格好わりぃんだよ」
 (俺の必殺技パートなんとかー、よりは、いいと思うけど)
 故人曰く、どんぐりの背比べ。
 お互いのセンスに不満をこぼしつつ、腰の入った剣の使い方を、良太郎に指導するモモタロス。
 「俺が憑いてなくても、これぐらいは出来なきゃなあ。……なんだよ」
 「やっぱり変だよ。急にモモタロス達が僕に憑けなくなって」
 ……ああそれで、珍しく真面目に教えているという流れか。
 望むと望まざるに関わらず、変化していく、時間、関係、世界――モモタロスの様子に、良太郎も何かを感じ取る。
 夕焼けに染まる河川敷で向き合う二人、の絵はしんみりしていて良いのですが、 鉄パイプを一生懸命振っているので、一歩間違うと 「あー、君、ちょっとお話いいかな?」となりそうで、ドキドキします。
 その頃デンライナーでは、頭の中に響く声に対して、お絵描き中のリュウタロスが苛立っていた。
 「ボク、やらないからね。良太郎やっつけるのって、なんか……つまんないよ。もう一度命令したら、ボク怒るよ。いい?  答えは聞いてない」
 かつて、「良太郎を殺したら時の列車の車掌にしてやる」と約束した、その声。
 その主が、遂に、姿を現す――。

 「怒るよ、だってさ……アレが。怒ってんの、俺の方だよなぁ、たぶん。めちゃめちゃ怒ってる気がする。俺、 怒った顔してるだろ?」

 その男の名は、カイ。
 外見年齢は、良太郎や侑斗と同じか少し上程度に見える、青年。
 これまで存在を匂わされてはいたものの、影も形も見せていなかった、イマジンラジオのDJが、とうとう登場。 謎めいた言動の青年の、正体、そして目的は何なのか――?
 「そろそろ本当に片付けないと間に合わないし……おまえら、役に立たなさすぎ!」
 カイの怒声に空の星のような形で集まっていたイマジン達はざわめき怯え、傍らに控えていたレオイマジンと、 ヤモリの兵隊達が動き出す――。
 物語がぐっと緊張感を増す中、デンライナーではウラタロスが死にかけていた。
 風呂から流されて。
 「ホント、頼むよ。流されるとかさぁ……僕、そういうお笑い系じゃないし。先輩ならともかく」
 「なんだとぉ……?! カメが流されなくて、誰が流されんだよ?」
 「あんたぴったりじゃない、モモだし」
 「モモじゃねえ!」
 やっぱりピーチイマジンなのか。
 モモタロスとコチャンプが掴み合いを繰り広げる中、愛理の絵を完成させるリュウタロス。それを愛理に渡したい、 良太郎から渡せば自分が渡したのと一緒、と言うリュウタロスだが……
 「一緒じゃねえよ。姉ちゃんもおまえの姉ちゃんじゃねえ」
 「何言ってんの、お姉ちゃんだよ」
 「違うんだよ。俺達と良太郎は。……一緒じゃねえ」
 モモさん、ちょっと荒れ気味。
 こういう時のモモさんは、馬鹿だから口を滑らせるのではなく、優しさでつい言ってしまう、というのが巧い所。
 結局、良太郎がなだめて二人でミルクディッパーに向かう事になるが、そこでは侑斗が、愛理さんとちょっといい雰囲気になっていた。
 ブレンドに合わせてカップに凝ってみた、と愛理さんが出してきた変なカップ入りコーヒーを見て、何か色々吹っ切れたのか、笑い出す侑斗。
 その姿に、つられて笑う愛理。
 微笑み合う二人。
 覗くデネブ。
 「侑斗……」
 かなり変質者。
 タイミング悪く、そこへ絵を渡しにやってきたR良太郎、見てはいけない光景に大暴走。
 「おまえ……なんでいつもお姉ちゃんと」
 机の上をひっくり返して走り去ったR良太郎は、大荒れ。良太郎を奥底に押し込めると、デンライナー組とも接触を遮断し、 とりあえず踊り出す。
 ……ダンサーズの皆さんも大変です。
 だが、クラブで踊り狂うR良太郎の前になんとカイが姿を現し、突然始まるダンスバトル。
 「おまえ面白いねえ?」
 「おまえも面白いって気がする」
 「へへっ」
 「俺、そういう顔してるだろ? リュウタロス」
 場所を変え、向き合う二人。
 「なんでボクの事知ってるの? おまえ誰?」
 「カイだよ、カイ。……あれ、名前言ってなかったっけな? どうだったっけなぁ……」
 「そっか……うるさいのお前だったんだ」
 R良太郎はガン電王に変身するが、そこへレオイマジンが姿を現す。レオイマジンを追ったガン電王の目の前に、先回りして姿を現す、 と謎の動きを見せるカイ。
 カイは見た目は特に奇抜ではなく押し出しが強い如何にも悪役風でもなく、台詞回しや、カメラのフォーカスを一瞬ぼかすなど、 演出で“ちょっと奇妙で不気味な感じ”を出していっています。
 「野上良太郎、じゃなくて、あれ、桜井侑斗だっけか? ちょっと驚かしてみるってのは、どう。おまえだって、桜井侑斗なら、 殺りたいだろ?」
 カイはリュウタロスの心の隙間に忍び込み、変身を解いたR良太郎に謎のカードを渡すと、姿を消す。
 その頃、時の世界を走るデンライナーの前には、巨大な建造物がが姿を現していた。
 「そろそろ、分岐点に到着しそうですね。未来への」
 それは、未来への分岐点の近くに現れる、時の列車のターミナル。
 オーナーが大事な事を言っている中、
 「なんか景色がいつもと違うなぁ」
 コハナの北斗神拳もといデコピンを受け、後ろで首が180度回っているモモさん。
 ……なんか今回は、背景で次々とイマジンが死にそうになっています。
 デンライナーはターミナルへと向かい、それを見たゼロライナーも後を追う形で駅に停車する。 デネブもこの世界の詳細は知らないようで、ターミナルは初めて見た模様。オーナー、モモ、ウラ、キン、コハナは下車し、 彼等の前にはオーナーそっくりの駅長が登場。
 駅長は一人二役で、オーナーよりも甲高く変な抑揚で喋るのが特徴。二人は旧知の仲の様子で、また、 デンライナーの食料品の類いはターミナルで積み込んでいた事も判明。
 ひとり食堂車に残っていたR良太郎は、ゼロライナー組が下車したのを見ると、こっそりとゼロライナーの中へ潜り込む。 カイから受け取ったカードをパスに入れてゼロライナーのバイクにセットすると、勝手に動き出してしまうゼロライナー……  更にゼロライナーはデンライナーに連結し、暴走した2台の列車は、ターミナルを離れて走り出す!
 カイの口車にまんまと乗せられたリュウタロスは、ゼロライナーだけを暴走させるつもりだったが、カイは最初から、 ゼロライナーもまとめて暴走させ、一緒に破壊してしまうつもりだったのだ。
 暴走に気付いてデンライナーを追おうとしたイマジントリオの前に立ちはだかるのは、ヤモリ軍団。
 即座にファイティングポーズを取るコチャンプ。
 修羅はどこまでも修羅!
 さすがにコチャンプはキンタロスが物陰に隠し、ここで珍しい生イマジンバトル。ウラはやはり、蹴りが主体な模様。一方、 侑斗に見咎められて逃げ出したR良太郎の前にはレオイマジンが現れるが、パスはゼロライナーのバイクにはめてしまい、変身不能。 追いかけてきた侑斗がゼロノスに変身してレオイマジンと戦う中、カイはR良太郎を見下ろして残酷に嗤う。
 「おまえもういらないからさ、消すよ?」

◆第38話「電車の中の電車王」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子)
 そーいえばチャンプはOPには健在。むしろ、コチャンプがいないのか。
 「おまえ……自分がイマジンって事、わかってる?」
 「黙ってよ! おまえ本当にうるさいし嫌い。殺ってもいいよね。答えは聞いてない!」
 リュウタロスの召喚に応じ、時空を超えるダンサーズ!
 ……と思ったのですが、この後の展開を見ると、ターミナルで逃げだした途中で扉をくぐって、 R良太郎と侑斗は現在へと出てきていた模様。ミルクディッパー出てくるまで気付かなくて、ちょっと混乱してしまいました(^^;
 カイに襲いかかるダンサーズだったが、なんと逆洗脳され、R良太郎を攻撃。どうやらリュウタロスよりも上位の洗脳能力を持っているようで、 さすが、今一番ラスボスに近い男。
 「俺が今一番消したいのは、おまえだから。俺、そういう顔してるだろ? リュウタロス」
 変身できないまま良太郎の体で戦い続けるわけにもいかないとR良太郎は逃げだし、ダンサーズに追われる。 ゼロノスもなんとかレオイマジンを退け、その後を追う事に。
 一方ターミナル内部では、割と強かったヤモリ兵達に、イマジントリオは劇場版で使われた個人武器を取り出して勝利。
 なおそれぞれ、
 「俺の必殺技・モモタロスバージョン!」
 技名なし(ロッド投げからスライディングキック)
 「ダイナミックチョップ・生」
 と、電王時に準じた必殺技で撃破。
 その間に、列車は絶賛暴走中。
 取り残されたナオミは絶賛ヒロイン中。
 オーナーと駅長は、巨大チャーハンで対決中。
 そして、なんとデネブがゼロライナーに食らいついていた。
 今一番、ヒーローに近い男、まさかのデネブ!
 急浮上する、デネブ×ナオミ!!(しません)
 オーナーと駅長がナオミほったらかしで余裕のチャーハン対決で閃くスプーン捌きなど見せているのには、ある理由があった。現在、 彼等の居るターミナルは、駅でありまた、未来への分岐点を監視する場所。 その先にどんな未来があるかは分岐点を超えてみなければわからず、ターミナルには主に分岐点を探す為に自ら移動する能力を持っており、 暴走する2台の列車を駅そのものが探していたのである。
 電車の暴走シーンは、回ったり跳ねたり潜ったりと、ジェットコースター的に展開し、ナオミとデネブが体を張って、 内部の大騒ぎを表現。そして遂に行き止まりの岩壁に激突しようという寸前、ターミナルの一部が変形して超巨大な列車となって走り出し、 暴走車を背後から飲み込む事で、強引に停車させる。
 駅が変形して超巨大な列車になるという、ストレートに子供の喜びそうなギミック。ただ、周囲に対比するものがないので、 デンライナーに追いつくまで、実際にどれぐらい大きいのか伝わりにくかったのは、少々残念。
 こうして何とか2台の列車は回収されるが、カイがターミナルの能力について知らなかったのか、知っていて、 失敗したら失敗したでいいやと思っていたのかは、特に本人の言及が無い為、不明。
 その頃、ミルクディッパーに逃げ込んできたR良太郎を見て、それが良太郎ではないと、確信を得る愛理。
 「あなた……良太郎じゃないわね。……どなた?」
 それでもとにかく傷の手当てをしようとする愛理だったが、R良太郎は、背中を向けた愛理の態度を誤解してしまう。
 「違うんだ……ボクのじゃ、ないんだ」
 伸ばした手は、切なく空を切り、届かない。
 店を飛び出したR良太郎を追う侑斗。
 「……しょうがないだろ」

 勝者の、言葉!!

 …………いや実際には、侑斗にとっても愛理は届かない存在であり、どちらかといえば、 同病相憐れむという視点で聞くべきなのかもしれませんが、リュウタロスからすると、完全に追い打ちですよ!  リングアウトしたところに椅子を投げつけられた気分ですよ今!
 そんな黄昏のフェロモン罹患者達の前に現れる、カイとレオイマジン。
 (リュウタロス)
 「良太郎、起きてたの?」
 (ちょっとどいてくれる)
 本気声の良太郎は、強引にリュウタロスを追い出すと、自らカイの前に立つ。
 「君が誰だろうと今はいいよ。ただ、僕が邪魔なら、君が直接来て。僕は絶対に逃げない。だから、二度とリュウタロスに近づかないで」
 リュウタロスを物のように扱うカイに、怒りを見せる良太郎。タイミング良くデンライナーが滑り込んできて、ソード電王へと変身する。 対するカイは、レオイマジンを倒したらもうリュウタロスには構わないと告げ、大きく日付の書かれた手帳をめくると、2006年1月19日を選び、 自らの体に時間の扉を開いてレオイマジンを過去へと跳ばす。
 2006年1月19日にはカイが存在し、その体を使って出現するレオイマジン、それを見つめる桜井侑斗。 カイの肉体は砂となって消え、暴れ始めるレオイマジンの前にソード電王がやってくるが、やはり憑依は解けてしまう。 良太郎はライナーフォームへと変身し、モモタロスの教えを思い出して、腰の入った一撃をきめると、電車仮面剣でリュウガンを起動。 今ひとつ、どの程度のイマジンパワーが機能するのかはわかりませんが、鮮やかなステップでレオイマジンの攻撃を回避すると、 必殺技を放って撃破。
 今回は微妙に突きっぽくなり、お茶の間を震撼させる叫びは無し。
 良太郎がライナーフォームの力を少し使えるようになると同時に、 ゼロノス/アルタイルフォームがフルチャージを当てても倒しきれなかったレオイマジンを粉砕した事で、 ライナーフォームの強さが裏打ちされました。
 戦い終わって、暴走であちこちガタガタになってしまったデンライナー車内を修理するイマジン達。そんな中、 リュウタロスを止めきれなかった事を謝る良太郎に対し、体育座りのリュウタロスが口を開く。
 「ごめんな……さい」
 「え……」
 「リュウタが謝りよった……」
 「嘘……」
 「リュウタロス……」
 「いーーーや! 全然聞こえなかったな。小僧! もう一回、でかい声で、ちゃんと言え!」
 最低な人が、一人居ます(笑)
 なおモモさん、工具で机直していたり、密かに大工スキルを発揮。
 囃すモモタロスを踏みつけ、明るく振る舞いながら食堂車を飛び出したリュウタロスは、通路に出た所で膝を丸め、 結局渡せなかった愛理の絵を広げ、見つめるのだった……。
 “未来への分岐点”と、それぞれの登場人物の分岐点、をかけたとおぼしき今回、とうとうイマジンの黒幕的存在が登場。 侑斗には「でも……おまえ、人間だよな」と言われるも、自ら過去への扉を開いたり、イマジンを従えていたり、謎だらけ。 今の所は電王/ゼロノスの排除が目的のようですが、「間に合わない」とはどういう意味なのか? いよいよ物語は、 最終章へと走り出す――!
 今回とうとう謝り、分岐点でこちら側へ戻ってきたリュウタロスですが、愛理への気持ちは伝わるのか、 渡せなかった絵はどうなるのか、気になるところです。近年はほとんどアニメ見ていないのでこれまで特に印象が無かったのですが、 鈴村健一は、巧いなぁ。

→〔まとめ7へ続く〕

(2013年11月7日)
(2017年5月28日 改訂)
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