■『仮面ライダー電王』感想まとめ3■


“海を走る稲妻 いつでも仕掛ける罠
君が 染める 太陽さえ青く”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダー電王』 感想の、まとめ3(14〜20話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。そこはかとなくウラタロス風味。

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◆第14話「ダンス・ウィズ・ドラゴン」◆ (監督:金田治 脚本:小林靖子)
 体を取り戻した良太郎はデンライナーに運び込まれるが、なんと紫のイマジンが実体化。あっという間に怖い先輩方に取り囲まれるが、 車内で実力行使するとデンライナーが危ない……とまずは話を聞く事に。
 それによると紫イマジンはウラタロスが良太郎に取り憑いた際にそれをカモフラージュに利用して一緒に取り憑いた後、 良太郎の奥底に潜んでいた、との事。……となると、実はキンタロスより先輩。
 H「狙いは、電王? 特異点?」
 紫「わかんない。頭の中にやる事が入ってくるんだよ、勝手に。イマジンはみんなそうでしょ?」
 良「そうなの?」
 U「ま、そんなところかな」
 この情報はハナも初耳だったらしく、驚いた表情。
 それがイマジンという種の本能的なものなのか、“何かの意思”が介在しているのかはわかりませんが、 どうやらイマジンはイマジン自身にもわからない所から、目的/情報を与えられているらしく、 「電王」や「特異点」に関する情報を共有していたのも、その為の模様。
 「はーいみんな、今週の『LET’sイマジン!』の時間だよ! 進行はお馴染み、DJ石丸と」
 「アシスタントのオシリーナでーす」
 「まずはみんなに緊急のお知らせから。先日、アイビーくんが電王にやられてしまいましたー。あちゃー。いいビーム持っていたのに、 残念! みんなも電王には気をつけて、契約取りはくれぐれも慎重に! さーて、暗い話題はこれぐらいにして、 最初のお便りの紹介の前に、まずは一曲どうぞ、今日の最初のナンバーは電車旅行に欠かせない名曲、『世界の車窓から』――」
 多分こんな感じで。
 そして紫イマジンは、良太郎を殺す事で、時の列車の車掌にしてもらえる、と約束されたらしい。
 「僕、リュウタロスでいいんだよね?」
 と名前も決めて大はしゃぎ。
 手早く劇中で名前を決定してもらえると、感想書きとしてはやりやすいですが(笑)
 で、ここまで桃太郎、浦島太郎、金太郎、と「日本むかしばなし」路線だったのが、龍の加入で、「西遊記」も加味。
 つまり、
 三蔵法師=野上良太郎=夏目雅子
 孫悟空=モモタロス=堺正章
 沙悟浄=ウラタロス=岸部シロー
 猪八戒=キンタロス=左とん平
 玉龍(三蔵法師の馬)=リュウタロス=藤村俊二
 という事か。
 ハナさんはむしろ敵っぽいな……(おぃ)
 (※なお正しくは、リュウタロスのモチーフは「龍の子太郎」との事)
 しかし、リュウタロスが目的をもって良太郎に憑依したのなら、なぜ今頃になって出てきたのか? この問いかけにリュウタロスは、 良太郎についていると「凄くいい事がある」といい、その「いい事」のために、もうちょっとこのままでいたい、と「お願い」。
 「その後でちゃんとやるから。ばーん」
 どこまでも人を食ったリュウタロスは、再び良太郎の中へ。
 現れたオーナーにリュウタロスを乗車拒否してほしいと頼む面々だが、リュウタロスはどういうわけか、時の列車の無期限チケットを、 “誰か”に貰って持っていた……。ハナに連れられてミルクディッパーに戻った良太郎は、愛理が外出している事を知る。 望遠鏡の下から持ち出された、何か……ハナは再び公園へと向かい、愛理の不在を知ったリュウタロスは、良太郎に憑依。 催眠能力で操ったダンスグループを呼び出すと、一踊り。
 一方、デンライナーでは
 「おいいいか、もういがみあっている場合じゃねえぞ」
 「確かに。協力するしかないよねぇ。一緒にやりますか、先輩」
 「うむ、良太郎のためやからな!」
 ここで流れだす、妙に壮大な音楽が、凄く面白い(笑)
 良太郎を取り戻すべく、3イマジンはがっちりだんけ……
 「俺ぁ、誤解してたぜ。おいクマ! 正直バカな置物だと思ってて悪かったなぁ。カメこう!  おめえもただのスケベ亀じゃなかったんだな! 俺ぁ嬉しいよ、ええ!」
 「いやぁ、僕も先輩の事、キンちゃんと同じで脳みそ干物かと思ってたから、あおいこかなぁ」
 「オレも、おまえら脱いだ靴下ぐらいに思っとぅた」
 つするわけなかった。
 しかし、何はともあれ本音はともかく、
 「よーしよしよし、一緒に力をあわせ、あわ、あわ、あわねぇ、あわせっ」
 モモの音頭でスクラムを組む3イマジン。
 東映特撮において「スクラム組んで」というのは、伝統ある友情と団結のキーワードなのですが、 共通の敵を前に駄目な人達がとりあえず手を組んだ、という素晴らしくダメな構図に。
 台詞回し、中の人達の演技、BGMの面白さも加え、まさに『電王』という名シーン(笑)
 その頃、相変わらず公園に近づく人間を襲っていたオウルイマジンは、車や自転車を積み上げて公園入り口にバリケードを作成。 匠の仕事ぶりに満足していた所に、公園入り口に集う、戸川、ハナ、ダンサーズ、そしてR良太郎。 動物好きのR良太郎は公園の動物たちと戯れて喜ぶが、そこに現れたオウルイマジンが契約完了、戸川の過去へと跳んでしまう。
 それは、1997年2月20日。ダンスグループの一員だったレージが公園に足繁く通っていた少年時代、 公園で餌をやっていた犬・コロが自転車にはねられて死んでしまった日。コロを病院に連れて行こうとして迷子になってしまい、 助けられなかった事を悔いたレージは公園から足が遠のき、戸川はそんなレージの事をずっと気にしていた。
 「隙が出来た、今だ!」
 なんだかんだでスクラム組んだ3イマジンは、動物の話に気を取られたリュウタロスを強引に良太郎から引きはがし、M良太郎、参上。 過去ではオウルイマジンが、懐中時計の謎の男・金田一(仮)を狙うような動きを見せていたが、そこへソード電王、見参。
 ひっさびさに、Mさん見せ場だ!
 「さーて、久しぶりにクライマックスといくか」
 自覚あった!(涙)
 「どこまでも邪魔するつもりらしいな」
 「わりぃな、趣味なんだよ!」
 バイクアクションも交えつつ、テンション高くオウルイマジンを追い詰めていくソード電王だったが、またも空に逃げられる。 しかし……どうやら空中の相手への対抗策を考えていたようで、構えを取るソード電王。
 「どうしても俺の必殺技を見たいらしいな……ふんっ、いくぜ、必殺俺の……」
 R(早くしないと子犬がしんじゃうよぉ!)
 良(え?)
 リュウタロス、強制割り込みで、電王ガンフォームに。

 見せ場が……(涙涙涙)

 「倒すけどいいよね? 答えは聞かないけど!」
 背後のビルの被害など一切気にせず、銃を乱射するガン電王。
 思わず、「こいつおかしいんじゃねえのか?!」と言ってはいけない本音の出るオウルイマジン(笑)  ガン電王は凄まじい銃捌きでオウルイマジンを追い詰め、フルチャージ。
 「最後行くよ……いい?」
 「駄目だ……」
 一応、言ってみた。
 「答えは聞いてない」
 やっぱり、駄目だった。
 銃と両肩からの3点ビームで吹き飛ぶオウルイマジンだったが、2つに分かれて暴走。ガン電王は紫電車を呼び出し、4つの電車が、 今、一つに連結! 紫電車はわかりやすく龍で、龍、マサカリ、亀、犬、猿、雉が一斉に攻撃態勢に入り、なんかもう、大変な事に。 某宇宙刑事ばりに、バイクで先頭車両の屋根に乗るガン電王は、電車と一緒に射撃フルバーストで、暴走イマジンを消滅させる。
 ……ただでさえ飛び道具な所に、銃の威力は物凄いし、接近戦の回避能力も高いしで、何だかやたら強いぞガン電王。
 コロも無事に助かり、レージ少年の心の傷も生まれる事なく、大団円。特に描写されませんが、普通に走っても間に合わない筈 (そういう過去)なので、とりあえずガン電王がバイクで病院まで運んだとか、そういう事でしょうか。ただそれだと、 ライダー状態で過去の人物とかなり関わる事になりますし、そこは少々強引。
 まあ、今回のエピソード自体が、リュウタロスの引き起こす騒動と混乱+愛理さんの過去?が中心で、 イマジンがらみのエピソードは付け足しっぽい造りではあるのですが。
 現在へ戻るデンライナーの中で、姉さんを迎えにいかなきゃと良太郎はミルクディッパーではなく、 愛理が居ると思われる希望ヶ原で途中下車。
 (もし姉さんが思い出したのなら……でも、思い出したら姉さんは)
 「あら、良ちゃん」
 果たして愛理はそこに居た…………いつものままで。
 「本当にどうしてこんな所まで来たのかしらね……こんな物まで持って」
 「覚えてないんだ」
 「んー……三浦さんの催眠治療までは覚えてるんだけど」
 完全には、忘れている何かを思い出さなかった愛理。
 ホッとした所で疲労がどっと来たのか良太郎はベンチに座り込み、それを心配する愛理さん。
 飲み物持ってやってきた羽虫Aはどうにも入り込みにくいその光景を見て、
 「あれ? なんで? こーいうオチ?」
 まあ、羽虫Aは愛理さんを車の助手席に乗せた罪で裁かれるといいよ!
 そしてデンライナーでは……
 「あ……お姉ちゃんだ」
 良太郎を通して愛理さんの波動を感じ、リュウタロスがなんだか喜んでいた。
 というか拝んでいた。
 「……お姉ちゃん、って……そうか。良太郎に憑いていると、凄くいい事があるって、愛理さんの事かも」
 「ええ? 甘えん坊ってこと? ますます謎だな」
 振り返るリュウタロス。
 「ねえ、良太郎死んだら、お姉ちゃん、泣く?」
 「あぁ?」「え?」「むう?」「は?」「えっ?」
 この出鱈目な言動に呆気にとられるも、一斉に、「泣く」アピールをする、ハナ、3イマジン、ナオミ。
 「そっか、じゃあ、良太郎殺さない」

 ……これが、真のヒロインの、パワァー!

 「でも、時の列車の車掌も、いいよねー」
 踊り出すリュウタロスの無縫すぎる言動に、顔を見合わせる5人。
 「あいつ、あぶねえよ……ぜったい」
 「無邪気」というよりも「狂気」。果たして、この危険な新入りは何をもたらすのか。 「先輩」たちの立場はどうなる?! 次回、久々にロッド登場の模様。
 良太郎憑きイマジンが揃い踏みすると共に、徐々に明かされていく愛理さんの過去。懐中時計といえば、あの謎の男ですが、 いったいぜんたい、何がどう繋がっていくのか。それはそれとして、ヒロイン力とは、出番の量ではない という事を見せつける、そんなエピソードとなりました(笑)
 まあハナさんは、「修羅」枠だから……。
 しかし金田治は、TVシリーズで見る限りは、そんなに悪い監督とは思わないのですが……劇場版を撮らせてはいけないタイプなのか。 あと前回今回と、短時間とはいえバイク単品のアクションが入ったのは、金田監督(JAE所属)という事でか。
 で、前2話と、今回の2話を続けて見ると、11−12話がどうも作品の流れに合ってないように見える最大のポイントは、 良太郎の使い方なのだなーと。
 今作の大きなポイントは、1話でモモの必殺技を止めた所に始まり、イマジンだったり周囲の自由な人達だったりに振り回されつつも、 肝心要な所では良太郎の精神力/心の強さと優しさが最大の武器になり、物語の軌道を(良い方向に)導く、という所。そしてそこで、 良太郎のヒーロー性を、積み重ねている。
 ところが11−12話では、K良太郎(キンタロス)のウェイトが大きすぎ、かつ、良太郎がキンタロスの暴走を止められていない。 更にラストも、タイムパラドックス&オーナーの粋な計らいで物語が畳まれてしまい、キンタロスがデンライナーに残る事に、 良太郎が寄与していない。
 『電王』らしさを出す為には、良太郎がキンタロスの思い込みによる暴動をうまく軌道修正しなければいけなかったし (劇中では自己解決してしまっている)、オーナーがキンタロスを許す判断に繋がる一押しを、何か入れるべきであったのかと思います。
 全体の筋もさる事ながら、ここに集約されるのかな、と。
 13−14話ではこの点わかりやすく、13話ラストでハナの手をひねりあげるリュウタロスを良太郎が止める、 というシーンが描かれています。ラストの戦闘に関して言えば、犬を助けたい、という点においてリュウタロスとの方がシンクロ率が高かった、 という見方も出来ると思います。
 ではラスト、リュウタロスが良太郎に与する理由が「お姉ちゃん」なのは、良太郎が影響しないという点において減点ではないのか、 という考えが出るかもしれません。ところが、ここまでの描写で今作において唯一、 良太郎に対する絶対上位の存在こそが、愛理さんなのです。
 愛理さんこそ今作における潜在的なバランスブレイカーであり、故に、これまでの3イマジンよりも良太郎に対する強い支配力を持ち、 ここまで構成されてきたヒエラルキーに一石を投じたリュウタロスが、愛理さんの軍門に降っているというのは、 構成として全くもって正しい。
 言い方を変えると今回の展開により、劇中における愛理さんの立ち位置が明確に表現された、といえましょう。
 で、こう見ると7話冒頭で
 「姉さんって、昔から、ちょっと……強引だよね」
 と、愛理さんがただの天然ほんわか系受け身キャラではないよ、という台詞を置いている脚本のセンスは抜群。
 OPで表現されているキャラクターが一揃いし、ここからどんな線路を進むのか、ますます楽しみです。
◆第15話「銭湯(バス)ジャック・パニック」◆ (監督:石田秀範 脚本:米村正二 ダイアログ監修:小林靖子
 自転車泥棒を追いかけた良太郎、銭湯立てこもり犯に人質にされる。
 コミカルさを強調する為の早回しなどを多用しているのですが、石田監督のこの手の演出は、どうも肌に合わない。
 良太郎から立てこもりを犯を通して人質になっている事を聞いた愛理は、「差し入れ作らなきゃ」と、 木星辺りまで吹っ飛んだ反応を見せるが、天然とか泰然自若とか悠長とか通り越して、若干キ○ガイに振れてしまっているのは、 前回の反動か。
 良太郎に取り憑いて立てこもり犯を叩きのめそうとしたモモタロスは「イマジンと戦う時以外は取り憑くの禁止」 令によりチャンプと取っ組みあいになるが、ホエールイマジンの気配を感じて、俺、参上。 しかし犯人をしばこうとした所でデンライナーが銭湯に到着し、ハナ、参上。
 ハナがM良太郎と入れ替わり、M良太郎はイマジン退治にデンライナーで外へと向かう。
 どうやらデンライナーが到着して乗り込む為に“扉”を開いている間、一般人の体感時間は一時停止する模様で、 立てこもり犯ともう一人の人質の男には、瞬間的に良太郎が消えてハナに変わったように見えている様子。
 「余計な事は気にしないの。人質なら私がなってあげるから」
 満面の笑みで立てこもり犯に迫るハナ。
 「なんだおまえ、どっからきた?」
 「私じゃ不足だとでもいうの?」

 人質! それはヒロイン力を爆発的にあげるという伝説のイベント!  この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない!

 チャンプ、犯人を怯えさせて、人質の座に居座る。
 一方、釣り人を襲っていたホエールイマジンの元へ向かったM良太郎であったが、
 「おーまえ……電王に……電王に……ばーけるー?」
 「ばけるぅ? ばける……なける!」
 無残にキンタロスに吹っ飛ばされ、Mさん(バブル崩壊)に、今日もまた見せ場は来ないのであった。
 変なテーマ曲で土俵入りするK良太郎/アックス電王。
 ……これは、Kバージョンの「double action」?
 真っ正面から受け止めて進もうとする為に、ホエールの潮吹き攻撃に思わぬ苦戦をするアックス電王だったが、なんとか攻撃を決め、 ホエールは逃走。良太郎はデンライナー経由で銭湯へ戻り、どこからともなく現れた良太郎に、銭湯内部は大混乱。
 面倒くさくなったチャンプ、椅子に縛られたままの状態から、黄金の右!

 YOU WIN! K.O.!

 立てこもり犯ノックダウンで一件落着かと思いきや、もう一人の人質の男が立てこもり犯のピストルを奪い、 良太郎とハナにそれを向ける。なんと、男・袴田もまた、警察に追われる身であったのだ。二転三転する銭湯内部だったが、 そこへ周辺を取り囲む警官隊を魔愛理ステルスでかいくぐり、差し入れ持った愛理さんが登場。警官隊の強行突入は、 U良太郎が刑事部長を強請る事で中止され、事態はまたも膠着状態へ。
 ……うーん、ドタバタコメディを意識しているのはわかるのですが、これならいっそ、 井上敏樹か浦沢義雄レベルで吹き飛ばしてもらえば良かったのでは、みたいな。
 二重三重に難しい事をやりすぎというか。
 ただでさえ構成的に他の脚本家が入りにくい小林ワールドなところへ来て、“ギャグのリアリティライン” (どこまでがその世界観では“ギャグ”として許されるのか)というのは、作家性と非常に強く結びつく為に、 メインでないライターがギャグ回をやるというのは、非常にその案配が難しくなります。
 どうしてわざわざこんなにハードル上げたのか(^^;
 いっそ、どシリアスにでもすれば良かったのに。
 その後、立てこもり犯が別に凶悪犯でも何でもなかった事、拳銃も玩具だった事が判明し、愛理さんの差し入れでお食事タイムに。 横領疑惑をかけられて逃亡中の袴田は自首しようとするが、魔愛理空間が発動し、 どうやって冤罪を晴らすかみんなで考えようモードに。
 ところがそこで、ホエールイマジンが再び釣り人を襲撃。U良太郎がそちらへ向かい久々登場ロッド電王で戦うが、 ホエールにはまたも逃げられてしまう。報道から、被害者の二人が袴田の元同僚であった事が判明し、そのまま袴田のかつての勤め先、 火口鉄工所を訪れる良太郎。イマジンの契約者が社長であった事がわかるが、それを知ったリュウタロスが、 いきなりガンフォームで社長を銃撃。
 社長を守りに出てきたホエールイマジンをフルチャージで撃破するのだが……。

◆第16話「幸福の星、降伏の犯人(ホシ)」◆ (監督:石田秀範 脚本:米村正二 ダイアログ監修:小林靖子
 逃げ惑う社長を追撃するガン電王。
 危ない、危なすぎる。
 一般人を問答無用で攻撃する仮面ライダーとか、さすがにシリーズ初か?
 社長はなんとか逃げ延び、デンライナーへ戻ってくる良太郎だが、良太郎ですら止められないリュウタロスの暴走に、危機感は募る。 実体化したリュウタロスをシメようとするが、むしろコケにされるモモタロス。
 「バカにしやがって……」
 Mさん! Mさん! 株価が下がりすぎてどん底も突き抜けて、数字が見えないよ!!
 なお、銭湯に愛理さん登場でヒロイン力を上げる戦場がここには無いと感じたのか、チャンプはちゃっかりデンライナーに戻っていた。
 良太郎が戻った銭湯では、袴田と立てこもり犯の二人がすっかり愛理のフェロモンにやられていた。愛理さん、 服着替えてるし、普通に家に戻って、朝食を用意して戻ってきたっぽい。なお謎の緑色のおにぎりは 、にんにくわさびおにぎりであった事が後で判明。
 その時、再び警察が突入準備。「お姉ちゃんが、困ってる」と強制憑依したR良太郎は外へ出て、突入する機動隊の前で指を鳴らし、 ダンサーズ登場。超集団洗脳で警官達を追い散らす事に成功する。
 この行動に、「リュウタロス、もしかして、姉さんの事」と気付く良太郎。再び火口社長の元へ話を聞きに向かうが、 工場の前でMさん(リーマンショック)にお願い。
 「俺に? なんだ、言ってみろ! 言ってみろ!」
 超・嬉しそう(笑)
 再び、強制憑依で社長を襲おうとするリュウタロス、をデンライナーからの突撃で体の支配権を奪って止めようとするモモタロスであったが …………無理でした。
 すみません、調子に乗っていました。

 期待したのが間違いでした。

 だが……
 「せめて……右手だけでもぉ!」
 気合いと根性を見せたモモタロス、強引に右手の支配権だけを手に入れると、それで良太郎のポケットの携帯電話を操作。それは、 良太郎が準備していた愛理へのメール送信であった。
 「僕に電話して「やめて」と言って」
 というメールに応え、その通りにする愛理。愛理が冤罪を晴らしてあげたいと考える袴田の為に、 邪魔な火口社長を始末すればいいと考えていたリュウタロスは、それで攻撃を中止。
 と、なんとか合わせ技でリュウタロスの暴走を止める事に成功。一応、良太郎がここぞという所でモモを信じる、 という状況も描けました。
 社長がイマジンに望んだのは、「俺の酒癖の悪さを治してくれ」というもの。イマジンが社員を襲ったのは、 「酒癖を知っている人を消す」事で契約を完遂しようとしたからに違いない……と一瞬でイマジン理論を解釈してしまう良太郎は、 少々イマジンに毒されすぎではないか(笑)
 急いで社長行きつけの屋台に向かう二人だったが、屋台のおじさんが目の前で襲われ、契約完了。イマジンは2004.3.31、 社長が袴田に金を盗まれた(と思っている)日に跳んでしまう。その日も泥酔していたという社長……果たしてあの日、 本当は何があったのか?
 泥酔した社長が、金の入った鞄を通りすがりのトラックの荷台に放り投げていました。
 ……というか袴田は、3年も業務上横領で告訴されたつもりで逃げ回っていたのか(^^;
 社長を介抱しようとして、いわれのない誤解を受ける袴田、そして現れるホエールイマジン。 先に跳んだイマジンより早く良太郎が過去に辿り着いているのは、ホエールイマジンが喋り方だけではなく、時間移動も遅い、 という強引な解釈でいいのかどうなのか。
 良太郎はソード電王に変身し、花見客を襲うホエールイマジンと激突。ここでの夜桜バトルは、かなり格好良かったです。最後は、 「俺の必殺技パート3」による水中攻撃から、空中に打ち上げた所を
 「と見せかけてストレートど真ん中ぁ!」
 で撃破。よくはわかりませんが、クライマックスが来る日を夢見て日々イメトレしながら技のバリエーションを増やしているのかと思うと、 枕を濡らさずにはいられません。
 良太郎が、社長が金を放り投げたトラックの運送会社に電話した事で会社の資金は社長の手に戻り、社長と袴田は和解。 しかし立てこもりの責任は取らねば……と意を決して外へ出ていく袴田と立てこもり犯だったが、実は警察が取り囲んでいた籠城事件は、 銭湯ではなく隣の質屋であった、でオチ。
 愛理さんや羽虫ーズが銭湯に出入りできた事、警察が説得もせずに突入しようとしている事、とギャグだから、 で済ます強引なネタなのかと思われた箇所が、一応説明ついた部分は、綺麗にまとまりました。……個人的には終始ノリが合わず、 オチに辿り着くまでに疲れてしまいましたが(^^;
 これまで、タロス増員→役割が落ち着く話、というパターンでしたが、そもそも変則的なリュウタロスという事でか、 パーティメンバーとして収まるというよりも、良太郎がリュウタロスへの対抗手段を発見する話、となりました。同時に、 コキュートス辺りまで落ちていたMさんを、少しフォロー。

 しかし次回、チャンプ、リストラ宣言。

 もももももももももう駄目だ、真っ先にクビにされるの、一人しか思いつかないよ!(涙)
 あと一応、リュウタロスに手綱をつける必然性上、愛理さん話でもあったようですが、口癖とかけたサブタイトルにまでした割には、 袴田の冤罪を信じる愛理さんの態度が単なる「同情」とか「優しさ」でしかなく、全くその背景と繋がらなかったのは、非常に残念。 愛理さんは無敵キャラすぎる上で使いにくいので、無理にサブライターは触れない方が良かったなぁ、と。 エピソード的にはタイミング悪かったし、前回ローテと合わせて見ると、石田監督と愛理さんの相性も今のところ微妙か。

◆第17話「あの人は今!も過去?」◆ (監督:坂本太郎 脚本:小林靖子)
 ナオミコーヒー地獄から逃れるついでに、ミルクディッパーで良太郎の体調を気遣うハナ。
 「このままじゃいけないかなって……何とかしないと……」と洩らした良太郎が直後に倒れた事から、チャンプ、大激怒。
 「ちょっと! 全員聞いて!」
 デンライナー食堂車で今日も今日とて騒ぎ回る(すっかり、他のお客さんが入りにくくなりました)イマジンカルテットを一喝。

 「あんたたちイマジンを、リストラするって!」

 人 員 削 減

 不況の波が、時の列車の中にまで及ぶ時が来た! 年功序列はもう古い! これからは、実力主義だ!
 追い出し部屋とか作りそうな勢いのチャンプに、イマジン達、戦々恐々。増員展開で数が出そろったと思ったら、 今度は次々減っていくとか、それはそれで斬新かもしれないぞ!(おぃ)
 デンライナーが風雲急を告げている頃、一晩入院した良太郎は、病院の外で高校の級友・沢田由香と出会っていた。 高校3年生の途中でイギリスに留学した由香と旧交を温める良太郎。ちょっと可愛い元・同級生を前に、 「いつも倒れているわけじゃない」と少し格好つけてみる良太郎にちょっとホッとしてみたり(笑)
 部活帰りに時折ミルクディッパーを訪れていたという由香は、
 「お姉さん元気? もう結婚したんでしょ」
 と、爆弾発言。
 どこかに居るわけだけどこれまで出てこなかった、野上姉弟の過去を知る人物が登場。物語の都合で出しようがなかったわけですが、 「留学」というタイムラグを持ち込む事で、何の悪意も落ち度もなく、柔らかい所に触れてしまう人物として登場させ、 更にそれをワンエピソードの内容と繋げたのも秀逸。
 ……しかし回想シーンなどから昔の男の存在は暗示されていたものの、愛理さんを捨てるとはいったい何事ですか。 ガンフォームでなくても、フルチャージ炸裂しても許されると思います。
 (忘れたままでいい筈ない……いい筈ないけど)
 由香の言葉を聞いた良太郎は、今日は店は忙しい、と慌ててその場を立ち去ってしまう。 首をひねりながらも通っていた高校を見に行った由香だが、3年間の変化に、懐かしさよりも疎外感を覚えるのであった…… そしてそんな彼女に契約を迫る、ウルフイマジン。
 一方デンライナーでは、あの良太郎がそんな事を……と人減らしの可能性に疑心暗鬼になるイマジン達を、 ナオミが煽りまくっていた。
 「問題は、良太郎ちゃんが誰を残すかって事ですよねー」
 「ちょっと待てこらぁ! 問題はもうそこかよ!」
 「そうですよ。やっぱり、役に立つ人が残るのかなー」
 「つまり、強いもんが残るということか。ま、一番どべは、もう決まっとるけどな!」
 「ん? ん、なんでてめえら俺見てんだよ!」
 しょせんこの世は弱肉強食、弱者は淘汰されていくのみなのです。
 ナオミ謹製リストライマジンあみだくじでも、何回やっても的中するモモタロス(笑)
 今、番組史上最大のピンチ!
 前回、久々のクライマックスで軽く上げたところで……振りかぶって全力で地面に叩きつける!  Kさん来て以来、Mさんの星の巡りが悪いのは、やはり不幸が伝染している気がしてなりません。思えばむしろ、 最近の良太郎の運勢は比較的マシですし、モモタロスに、うつっているのか(笑)
 ナオミの勢い任せの煽りに盛り上がったイマジントリオは、リストラ回避の為に「誰が一番良太郎の役に立つか競争」スタート。 愛理が買い物に行っている間に留守番中の良太郎に乗り移って接客対決を繰り広げるが……勿論、 誰一人としてまともな接客など出来る筈が無かった(ウラタロスは男を接客する気なし)。 羽虫ーズを相手に散々状況を悪くした所で、ハナに回収され、説教タイム。しかしどうも、イマジン達を怒るわけでもなく、 望遠鏡の下に隠してあった懐中時計をぼんやりと見つめているだけと、良太郎の様子がおかしい。そんな時、 マジントリオに我関せずでマイペースなリュウタロスが、沢田由香がイマジンに憑依されている事を良太郎に教え、 良太郎とハナは現代へと飛び出していく……。
 良太郎の態度に、どうにも居心地の悪いイマジントリオ。
 「ていうか、愛想つかされちゃったんじゃないんですか?」
 「ナオミ……おまえ今日、凄くきつくないか?」
 最近、大した出番が無かったからでしょうか。
 ……しかし、秋山莉奈を見る度に言ってますが、真魚ちゃん(『仮面ライダーアギト』)はホントーに正統派美少女で、その後、 こういう風に育つとは、夢にも思いませんでした(笑) いや、悪いわけではないのですが、人は変わるものだなぁと、 つくづく思ってしまうわけです。監督陣のお気に入りっぽい所に加えて、着ぐるみ相手の芝居に凄く慣れているので、 平成ライダーにとって非常に有り難いバイプレーヤーとなってくれていますが。
 由香と契約したウルフイマジンは、テニス部の女子高生達を次々と襲撃し、テニスグッズを由香に投げつけまくる。 高校生の頃の思い出に触れたいという由香と契約完了し、ウルフイマジンが跳んだのは、2004年4月7日――それは3年前、 高校の入学式。
 留学先で言葉の壁にぶつかって周囲となじめず、一種のホームシックで一時帰国した由香が求めたのは、 変わらない思い出への回帰であった。「卒業前に高校を辞めた」事を告白した良太郎は由香の思いに理解を示し、過去へと跳ぶ――。
 怒濤の勢いで明かされていく、野上姉弟の過去。そして……
 「ちょっと一人で戦ってみるよ。どこまで出来るかわからないけど、やってみる」
 と、敢えてモモタロス達を憑依させずに戦う良太郎の真意は?
 焦れるイマジン達をデンライナーに残し、ウルフイマジンに立ち向かうへっぴり腰のプラットフォーム。 奮闘するもあえなく吹き飛ばされたプラットフォームは、あの謎の男・金田一(仮)とぶつかるが、その時、男の懐から転がり落ちたのは、 良太郎が持っているものと同じ懐中時計。思わず金田一(仮)の帽子の下をのぞき込むプラットフォームだったが男は逃げ出し、 そこでリュウタロスが強制憑依。容赦なく強いガン電王はウルフイマジンを圧倒し、ウルフイマジンは逃亡。 良太郎は慌てて金田一(仮)を追うが、その姿を見失ってしまう。
 (間違いない……でも、まさか……)
 2004年の街を彷徨う、良太郎。
 「どこに…………どこに……桜井さん!」
 2話構成の1話で早々と過去に跳んで、過去のまま次回に続く、というこれまでにない構成。良太郎のちょっとした変化、 そして愛理さんの過去に秘められた真実とは……?

◆第18話「時計仕掛けの婚約者(フィアンセ)」◆ (監督:坂本太郎 脚本:小林靖子)
 良太郎が桜井さんを探して過去を彷徨っている頃、這々の体でガン電王の必殺技から逃げ出したウルフイマジンは、
 「何狙えばいいかわかんねーし、2007年に戻れねーし」
 困っていた(笑)
 「なんにも頭に響いてこねぇ!」
 どうやら、イマジンラジオが故障中の模様。
 良太郎の態度とリストラの危機にいらつくモモタロスは、他のイマジンに八つ当たり。……まあただ、戦力と迷惑度のバランスでいうと、 キンタロスが一番マイナスが大きい、という気はするんですが(笑)
 懐中時計を握りしめたまま、疲れ切って倒れていた所をハナに発見された良太郎はデンライナーに運び込まれ、 久々登場のオーナーに促される形で、桜井の事、懐中時計の事、愛理の事を語り出す。
 桜井――桜井侑斗、それは
 「僕の姉が、結婚する筈だった人」
 しかし結婚式を一ヶ月前に控え、2007年の始め(前回、良太郎の卒業を機に結婚、という台詞があるので、2月頃か)、 桜井は湖上で謎の失踪を遂げる。最初は気丈に振る舞っていた愛理だが、ある日…… (良太郎が卒業寸前の高校を辞めるきっかけとなる出来事があったと思われますが、明確には描写されず)……そして愛理は、 桜井に関する全てを忘れた。
 桜井と星を見た記憶も。
 桜井から貰った望遠鏡も。
 桜井にあげた懐中時計の事も。
 ミルクディッパーに隠されていた懐中時計は、愛理と良太郎が去年、失踪前の桜井にプレゼントしたものであり、 “3年前の桜井”が持っている筈はない。ならば、“2004年に居た桜井”は時間を超えているのか? そして、 良太郎の物と桜井の物、懐中時計はなぜ二つ存在しているのか。そもそも、桜井はなぜ姿を消したのか――。
 じわじわと伏線を敷いてきた愛理さんの過去が、ついに明確に。丹念に少しずつ展開してきただけあり、 2話から思わせぶりな謎の男とも繋がって、物語の中核に絡んできそうな気配です。
 良太郎の語る過去に、さすがに言葉を失うイマジン達。ハナの先導で全員が食堂車を出て、良太郎をゆっくり休ませてあげる事に……って、 食堂車以外に、居場所あるのかイマジンズ。ハナはさすがに客車とかあるのでしょうけど、 イマジンズは出入り口の辺りで雑魚寝とかしていそう……。
 その頃、2007年では気を取り直した由香がミルクディッパーを訪れていたが、
 「お姉さん、結婚式はどうでした?」
 「結婚式? 誰の?」
 「え……あの……いえ」
 愛理の態度に言葉を失っていた。ホームシック状態で帰国し、懐かしい学校を訪れてみるも、 そこに自分の居場所が無い事に気付いた事を語る由香に、優しく微笑む愛理。
 「でも、変わっちゃうのよね。みんな同じ所には、居られない。このブレンドと、同じかな。ただ、覚えている事は、確かじゃない?  沢田さんが、ちゃんと覚えていれば、それは無くならないと思うな」
 良太郎が愛理の過去を語った後で、実にえげつない台詞。
 愛理さえも忘れている背景を知った視聴者に見えるものと、素直に由香が受け止めるものとに大きく隔たりがあるのが、 またえげつない。
 この台詞を置けるのは、実に凄い。
 凄くて酷い。
 一方デンライナー、休息する良太郎の元をそっと訪れるキンタロス。
 「良太郎、オレに望みを言え」
 「どうして急に……」
 「契約完了したら、オレはおまえから降りられる。降りとなったんや。他の奴らと一緒では、狭すぎる」
 良太郎の体調や心情を気遣い、自ら憑依を解こうと、キンタロス、久々にいい方向に男気を見せる。 強引に契約を結んで完了してしまおうとするキンタロスを必死に止める良太郎、そしてそこに乱入してくるのは、 同じような事を考えていたらしいモモタロス。
 「せっかく俺が考えてた感動シーン、横取りしやがって!」
 騒ぎが大きくなった所で、ウラタロスとナオミも登場し、各イマジンの様子に何だか話がおかしな事になっているのに気付いた良太郎、 ここでリストラ問題について知る。
 そこへ実体化したリュウタロス、良太郎が倒れたのと、「このままじゃいけない」と呟いていた真の理由を開陳。
 良太郎は、イマジン達との接触を切って秘密で、筋トレと体重増加の為の暴飲暴食――つまり、体を鍛えていたのだ!
 まあこれは、読めたオチですが(笑)
 良太郎が自力で戦えるようになる為の努力をしていた事、それを恥ずかしいのでイマジンにはなるべく秘密にしていた事、 と良太郎の“男の子”の部分が細かく描かれているのは面白いし、それが愛理さん絡みの回で強調された、 というのは良太郎の芯の部分の表現なのかな、と思われます。
 良太郎の発言と行動についての誤解は解けたが、良太郎を心配して振り回されていたモモタロスは、この結論にやさぐれる(笑)  ウルフイマジンが暴れ出したという情報に「てめえらだけで勝手にやれぃ!」と、ふて寝(笑)
 2004年では、一晩考えた結果……やけくそになったウルフイマジンが大暴れ中。ビルや車を次々と破壊する他、珍しく明確に、 過去の人死にで現在の人が消滅する、という描写。
 そこへ駆けつける、デンライナー、良太郎はロッド電王に変身。
 「ちょうどいいぜ、相手してくれぇ。やることなくて困ってたんだよ!」
 前回からそれっぽい所はありましたが、ウルフイマジンは、モモタロスの合わせ鏡という配役でしょうか。
 1話において、
 バット「貴様……何を考えている! 我々の使命を忘れたか?!」
 モモ「そんなもん最初っから覚えてねぇ。さっきはへこんだが、こっちの方が面白そうだぜ。ていうか、 俺はこういうのがやりたくて来たんだよ! 相手は関係ねぇ!」
 というやり取りがありますが、やる事わからなくなってただ暴れているだけのイマジン、というのは、 良太郎と出会わなかったモモタロス、の可能性という気がします。
 CV:檜山修之という配役も、凄くそれっぽいですし。
 個人的に、関俊彦・檜山修之・高木渉は、日本三大チンピラ声優だと思っているのですが、東映特撮との関わりを考えても、 モモタロスの声の候補に檜山修之は挙がっていたのでは、と邪推。
 ロッド電王はウルフイマジンを適当につつき、アックスに選手交代。三下系ちんぴらのウルフを追い詰めるアックスだが、 良太郎がモモタロスに変わるように頼み込み、ふて寝中のモモタロス、呼び出されてソード電王に。
 しかし……
 「おれ、さんじょ」
 やる気のないモモタロスは、棒立ちで滅多打ちを食らって倒れてしまう。
 (モモタロス!)
 「……おい良太郎、これからはコソコソすんじゃねえ。それからな、姉ちゃんの事もぜんぶ言え! 俺ぁな、 うじうじしてんのきれぇなんだよ!」
 (モモタロス……)
 「わかったか!」
 (うん、ごめん。それと――ありがとう)
 ここでくるっと、4話からの良太郎とモモタロスの関係がまとまり、お互いに謝り、お互いに気遣う、対等な相棒になる二人。 またモモタロスが、良太郎を通してとはいえ、姉ちゃん(愛理さん)に一定の気遣いを表している所も、ポイント。
 「おいこらぁ! 今日は特別に前振りしてやったんだ! だがこっからは、徹底的にクライマックスだからなぁ!」
 良太郎と心の絆をより強くし、テンション最高潮の、Double-Action。
 「いくぜ……必殺、俺の必殺技・パート5」
 強烈な3段斬りでウルフイマジンを成敗。
 ……4は?
 と視聴者を代弁して、良太郎にもツッコまれる……というより、「3の次は4だよ」とバカ確定扱いを受けるも、
 「一個飛ばすぐらいすげぇんだよ!」  と本人は主張しております。  (ふーん)  と生暖かい相づちをうつ良太郎。ここも4話の、
 「今日の必殺技はひと味違うぜ……俺の必殺技、パート2だぁっしゅ!」
(同じじゃん)
 を微妙に意識している、かも。
 しかしこう……ウルフイマジンはモモタロスの合わせ鏡という理解でいいと思うのですが……終始弱くて滅多打ちで、 泣けるで!
 出来ればテンション上がったモモタロス(ソード電王)が強敵を打ち破る、という形で解けた誤解と新たな一歩、 を見たかった所ですが(^^;
 Mさんのクライマックスはまだこれからだ! ……たぶんこれからだと思う。これからじゃないかな。まちょっと覚悟はしておけ。
 こうして事件は解決し、愛理の言葉を胸に由香はイギリスへ帰国。ハナと合流した良太郎は、過去に戻って桜井を探す事を考える。 失踪前の桜井が懐中時計の裏に刻んだと思われる言葉、
 “過去が希望をくれる”
 その意味は何なのか。そして、桜井が過去の時間に居るその目的は――。
 その時、
 「そんなことをされたんじゃ、大迷惑、ってやつ」
 二人の前に、時の列車のチケットを持つ謎の男が姿を現す。
 ナチュラルに良太郎をかばう位置に立っているチャンプ、男らしすぎて格好いい!(笑)
 「俺は、桜井、侑斗だ」
 愛理の消えた婚約者と同じ名前を持つ男――果たしてその正体は?!
 電王4フォームが揃い踏みした所で、畳みかけるように新キャラ登場。愛理さんの過去も一気に明かされ、 新キャラもそれに関わる存在っぽいと、やはり物語の中心に絡む模様。
 回想シーンの切れ切れのカットを見る限り、婚約者の桜井さんは割と年上というか、少なくとも愛理さんと同年代っぽい感じでは無かったのですが、 新キャラの桜井は割と若めで、いったいぜんたいどういう事なのか。まあこの流れで、桜井さん(ややこしい)がいきなり出てくるという事もないと思いますが。
 ただでさえややこしい構造の作品なのに、過去話を一気に明かしすぎて情報量オーバー気味な感じもありますが、ここから第2部、 といった所でしょうか。とりあえずこの流れだと、チャンプはヒロインの座はもう本当に諦めた方がいいかもしれない。
 修羅だ! おまえは修羅になるのだ!!

◆第19話「その男、ゼロのスタート」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子)
 「俺は、桜井、侑斗だ」
 愛理の消えた婚約者と同じ名を名乗る謎の青年に珍しく突っかかる良太郎だが、きつい態度であしらわれる。
 「とにかく、過去の桜井侑斗と関わるな。でないと、時の運行が乱れるぞ」
 果たして彼は何者なのか……良太郎を追い払い、一人になった侑斗に「意地が悪い」と呼びかける声。侑斗、 自分の顔を殴る。
 しばらく平然と歩いていたが……やはり、痛い。
 「侑斗、大丈夫か」
 姿を現す、黒いローブ姿のイマジン・デネブ(声:大塚芳忠)。
 「おまえのせいだ、バカ!」
 侑斗、イマジンにいきなりボディブレス……からプロレス技。本気で喧嘩しているというよりは一気にじゃれている感じになりましたが、 素は間抜けという事なのか、桜井侑斗。キャラクターとして意図的なのかはわかりませんが、まだ、脚本・演出・役者、 が噛み合っていない様子で、必要以上に落ち着かないキャラになっている感じ(^^;
 一方、オーナーに3年前で停車してほしいと頼むが断られる良太郎。消えた桜井侑斗と同一人物である事を匂わせる侑斗であったが、 良太郎には、とても同じ人物とは思えない。それを確かめる為にも“3年前に居た桜井侑斗”と接触したいと考える良太郎であったが、 時間の指定されたチケットを持っていない限り、それは許されない事なのであった。
 と、愛理さんが絡むので、珍しく我を強く出す良太郎。
 この辺り、愛理さん絡みの件とそうでない時とで良太郎のアクティブさが大きく変わるのは、うまく物語の中で積み重ねてきて、 効いています。またそれが、“喪失”を嫌うという、良太郎が電王として戦う理由の一つと繋がっている、というのもお見事。
 桜井侑斗の顔を見て、良太郎が判断できない、というのはちょっとわかりませんが。 若い頃は知らないけど顔立ちは似通っている気はするけど性格違いすぎて同一人物とは思えない、ぐらいの感じなのか。
 なおここで、桜井が天文学者であった事、ミルクディッパーが星の本だらけなのは桜井の影響であった事が判明。
 良太郎が落胆している頃、問題の桜井侑斗は、デネブが破いたお気に入りの上着の替えを買おうと、服屋を訪れていた。
 「デネブ、8500円」
 イマジンが、財布を握っている。
 「高い」というデネブと「継ぎをあてた服で“あの店”に行けるか」、と試着室の中でもめる侑斗とデネブ……と冒頭に続いて、 ここもコメディタッチ。コメディシーンは、コメディシーンだよ! と物凄く強調する演出にしていますが、個人的には、 さらっと笑わせてくれる方が好みで、ちょっとやりすぎ。
 デネブとの銭闘を制し、無事に上着の替えを購入した侑斗が向かったのは“あの店”……ミルクディッパー。 カウンターでやかましい羽虫ーズ、山と積まれた“忘れ物”を目に、「けっこう楽しくやってんじゃん」とこぼす侑斗は超甘党らしく、 愛理の入れたコーヒーに砂糖を山のように追加しまくり、愛理に止められる一幕も……というか明らかにコーヒー飲めない人の反応なので、 無理して大人ぶって頼んでみた感。
 「あの……どこかで……。もしかして………………良太郎のお友達?」
 「全然」
 愛理に対しても態度の悪い侑斗であったが、この前のシーンで、お洒落してからミルクディッパーを訪れている事はハッキリしているので、 悪ぶっている、という立ち位置なのでしょうか。大学デビューしたい桜井さんと、世話焼きのおかん(デネブ)、みたいな。
 くしゃくしゃの千円をテーブルに残して店を出た侑斗は、桜井問題についてハナと検討していた良太郎と行き会う。 更にそこに、おつりを持って追いかけてきた愛理がやってきてしまう。
 「俺の名前は」
 「待って! 姉さん早く」
 「さくらい」
 「いいから戻ってよ! 関係ないから」
 愛理の前で名乗ろうとした侑斗に、愛理を強引に店に帰らせる良太郎。
 「どうして姉さんに……」
 「問題あるか。おまえも過去にいるあいつと、顔合わせたんだし」
 良太郎が3年前の時間で桜井と遭遇した事……その為、こそこそするのを止めて、“婚約者”に会いにきた、と語る侑斗。
 はたして侑斗は、“桜井侑斗”と本当に同一人物なのか?
 「何も考えてないっていうか……こういうの、おめでたいっていうんだっけ」
 姉すら嘲るような口調に、“怒り”を見せる良太郎。そして侑斗の態度が我慢ならないモモタロスが憑依して、M良太郎参上。 イマジンの匂いがする、というモモタロスの言葉に応え、侑斗もデネブをその身に憑依させる。
 「言っとくけどデネブはおまえより強いぞ。後悔するなよ」
 ……あー…………まー……Mさんだからなぁ。
 「ふんっ、おもしれぇ。どれだけ強いか知らないが……やるか」
 D侑斗と対峙するM良太郎だったが、
 「いや、謝る」
 デネブ、侑斗の態度の悪さを謝罪(笑)
 侑斗は本当は心優しいけどちょっとひねくれちゃってるだけなんだ友達も居ないし、とむしろ侑斗の友達になってほしい、 と飴を配りだすD侑斗。たまらず侑斗が表に出てくるが、ここでデネブが砂ではなく実体化可能な事が目の当たりになり、 これはイコール「契約している」という事だそう。良太郎が実体化デネブを見て「完全体」と口にしますが、 この辺りの話が台詞になったのは初めてか。
 オカンに家での恥ずかしい姿をばらされている状態の侑斗はデネブを引きずって撤退していき、そこへハナから、 イマジンらしき存在が公園で暴れているとの連絡が入る。M良太郎が公園に向かうと、そこではジェリーイマジンが、 契約者の男・天野晃平にタイムカプセルを掘らせようとしていた。
 天野の願いは「遙香が埋めたタイプカプセルを掘り出したい」だったが、 たまたま小学生の女の子が公園の砂場に埋めていたタイムカプセルを掘り出してそれで契約終了だ、 と天野を触手でびしびし叩きまくるという、いまだかつてない強引なイマジンに、モモタロスすら若干引き気味。
 自分ルール活用度の高いジェリーイマジンはソード電王の前口上の最中に攻撃(笑) 更に強力な電撃を浴びるソード電王だったが、 良太郎の機転で狭い所に誘い込んで反撃。しかし液状化によって逃げられてしまう。倒れていた天野の為に救急車を呼んだ良太郎の前に再び姿を見せる、侑斗。
 「優しいな、とか言わなきゃいけないのか」
 「ちゃんと話してくれないかな、君のこと」
 だが、侑斗は「時の運行を守りたいなら、桜井侑斗に関わるな」の一点張りで、自分の事を話そうとはしない。
 ……まあ、良太郎の周りに、未だかつて、丁寧に状況を説明してくれた人など一人も居た事がありませんが! ある意味、 何も考えずにぽろぽろと重要な事を喋るリュウタロスが、一番情報源かもしれない(笑)
 そして侑斗の背後に現れる、新たなる時の列車――!
 「野上、時の運行を守るってのは人助けとは違うんだよ。中途半端に時間の中うろうろするな、いいな」
 緑ベースで、先頭車両が牛っぽいデザインの時の列車に乗り込み、侑斗は姿を消す。
 その列車の名は、ゼロライナー――!

◆第20話「最初に言っておく」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子)
 給仕をするデネブ。
 良太郎が可哀想だと、膝で詰め寄るデネブ。
 和食作ったり、つくろいものも出来たり、高・性・能。
 Mさんもこういう、戦闘以外の一般スキルで勝負してみたらどうか。
 そんな侑斗とデネブが、なんと直接デンライナーに乗り込んでくる。良太郎に釘を刺しに来たという侑斗と、 「侑斗は心の中ではよろしくって」と飴を配って歩いて、追い出されるデネブ。更にもめ要員として、一緒に追い出されるモモとキン(笑)  3人はしばらく通路で懇親会。……というか前回今回と、キンの扱いが割と酷いのですが、実際けっこう迷惑なので仕方がない。
 時の運行とは関係なく、いい人属性で動き、弱いし運も悪いし、と良太郎をぶったぎる侑斗。こんなやつが電王で困ったものだ、 と振られて、一瞬口ごもるチャンプ。
 チャンプ! それは酷いよチャンプ!
 そこに現れたオーナーは、ゼロライナーはある消えた時間とともに消滅した筈と尋ねるが、侑斗によると、 ゼロライナーは「ある事の為に預かっただけ」らしい。侑斗の去った車内でハナはオーナーに“ある消えた時間”が “かつての自分の時間”かと問うが、オーナーはそれには答えない。
 まあ、時の列車(デンライナー)そのものが、“そういうものだから”的なギミックなので、新しい列車が出てきても何ともかんとも、 という所ではありますが、色々と全方位に爆弾を投げまくる侑斗。
 そしてその火花は本人も思わぬ所に、引火、誘爆。
 「カメちゃん……あいつ良太郎じゃないのに、お姉ちゃんの匂いがしたよ。 ――殺っていい?
 「まあまあ。今度愛理さんに聞いとくよ」
 どうしてリュウタロスは追い出されないのかと思ったら、この仕込みでしたか(追い出したくても追い出せないという判断だったのでしょうが)。
 背後で刺客誕生などつゆ知らず、これで野上も余計な事はしないだろう、とゼロライナーで一息つく侑斗だったが、 へこみすぎてイマジン退治もしなくなるかも、というデネブの言葉に、自ら病院の天野に話を聞きに行く事に。
 1年前……結婚する筈だった恋人・遙香とタイムカプセルを埋めた天野。結婚を前にボクシングの道を諦め、 サラリーマンとなった天野だったが、遥香が病死。遙香の形見となるタイムカプセルをどうしても掘り出したい天野であったが、 1年前はそれほど重大な事とは思わず、カプセルを埋めた場所がわからなくなってしまっていたのだった。
 「今日、二度もこの話をするなんてな……」
 「二度?」
 既に良太郎が天野の話を聞きにきていた事に驚く侑斗だったが、そこへクラゲが急襲。天野はさらわれ、触手折檻を浴びて無理矢理に、 どこかの学生達が掘り返していたタイムカプセルを掘らされてしまい、契約完了。ジェリーイマジンは2006年3月12日。 天野と遙香がタイムカプセルを埋めた日へと跳ぶ。
 イマジンを追った良太郎(ソード電王、変身済み)は、一旦変身を解除して二人の生存を確認した後、カプセルを埋めた場所を確認。 公園で大暴れするジェリーイマジンを止めようとするが、良太郎が“過去の桜井”に気を取られた隙に手痛い反撃を受けてしまう。
 「バカだな。また余計な事してるから、そうなるんだよ」
 そこへ現れる、“今”の桜井侑斗。
 「たく、こんな所で一枚使わされるなんて、ホント迷惑。――変身」
 侑斗は腰にベルトをはめると黒いカードを通し、その姿は、新たな仮面ライダー――アルタイルフォームへと変身する!
 頭の線路を牛の鳴き声っぽい効果音と共にマスクが走ってくるアルタイルフォームは、 ど派手かつ無意味な稲妻落としで電王との違いをアピール。最初、天候操作系の攻撃手段かと思ったのですが、 全く無意味なパフォーマンス(笑)
 しぜんをだいじに!
 「最初に言っておく。俺は、かーなり、強い」
 クラゲの触手をかいくぐり、大剣を振り回すアルタイルフォーム。更にデネブを召喚し、クラゲの触手を掴ませ(デネブ、 感電無効でそれとなくMさんとの格の差をアピール)、攻撃手段を封じたところで滅多切りに…………いいのか、主役でないけど、 ライダーがそれでいいのか?!
 と思ったら、突然、「駄目だ」と触手を手放すデネブ。煽りでダメージを受けた怒りのアルタイルは、デネブにフライングラリアット、 と侑斗はプロレス路線。
 実は電撃が効いていたのかと思い来や、
 「なんで放すんだよ!」
 「駄目だ……卑怯すぎる!」
 正座で相対して膝でにじり寄るデネブ(笑)
 …………ちなみに感想書きとしては、劇中のキャラクターに同じツッコミをされると、割とダメージを受ける事を、 ここに付記しておきたいと思います(笑)
 「じゃあ、おまえやれ」と言われたデネブは、背後からアルタイルフォームに合体。その姿は肩にキャノン砲(デネブの両手)が付き、 マントを翻すヴェガフォームへと転じる。ヴェガフォームは変身時に地面が沈み込む、というこれまた無駄パフォーマンス。
 ……て、これもあれか、プロレスの入場シーンとかのイメージなのかしら。
 「最初に言っておく」
 「て、おまえもかよぉ」
 「胸の顔は、飾りだぁ!」
 「……はぁ?」
 (おまえ、なに言ってんの)
 更に、
 「落ち着けぇ。さっきの攻撃はこっちが悪かった。謝る」
 「はぁ?」
 「侑斗も心ではそう思ってるから」
 戦場の空気を弛緩させ、崩壊させていくヴェガフォーム!!
 だが、両肩にキャノン砲、剣をボウガンに変形させるその戦闘力は本物。ヴェガフォームはクラゲを圧倒すると、フルチャージの一撃で、 葬り去るのであった。
 戦闘終了後、疲労から膝をつく良太郎に歩み寄る侑斗。
 「やっぱり駄目だな、おまえ。時の運行を守るのは人助けとは違うって言ったろ。おまえ弱いし運も悪いし、おまけに何もわかってない。 行き当たりばったりでいい人やるな。迷惑だから」
 侑斗の冷徹な言葉に、しかし立ち上がる良太郎。
 「やらなきゃいけないと思ったら、やるよ。これからも。人助けとかそんなんじゃなくて、出来る事があったらやるだけなんだ。 僕が電王になった時みたいに」
 「おまえ……」
 「弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても、それは何もやらない事の言い訳にならない。 僕の知ってる桜井さんが言ってた。桜井さんが生きてるなら、僕は必ず連れ戻すよ」
 実は20話にして、良太郎が、“戦う覚悟”に関して、決意表明を言葉にしたのは初。
 2話において、
 「なんだかよくわからないけど……やらなきゃいけない事だけは、わかった気がする」
 と、流され気味に電王になる中で一応の意思表示はしていますが、少々唐突かつ命を賭けるには覚悟が弱めで気になっていたのですが、 その背景に、愛理さんのみならず桜井さんの存在もあった事が判明。
 大雑把に、旧来のヒーローものが無自覚に「正義」を謳っていたのに対し、 現代にヒーローが成立しうるにはその背景となる個人的な理念なり欲求なりが必要ではないか、という思想性を持ち込んで、 「正義」の見直しと立て直しに基づいて“ヒーロー物”を構築し直したのがポスト『仮面ライダークウガ』の 《平成ライダー》シリーズにおける基本理念なのですが、野上良太郎という主人公は、もちろん根っこには良太郎自身の「良心」と 「優しさ」というものがあるのですが、野上愛理と桜井侑斗という、二人の人物の影響を大きく受けていた、 という背景が明確にされました。
 それは一つには、
 「僕の事はどうでもいいよ。慣れてるし。でも、泥棒とか、人にお金を要求したり、取り上げたり、好きじゃない。 大切なものとか……お金とか無くすのって、辛いよ」
(4話)
 喪失への悲しみと憤り――それを取り戻したいという想いであり(この台詞はモモタロスの使い込みを受けて、 良太郎の事のように語られているけれど、愛理の事を念頭に置いているのは間違いない)、 もう一つは恐らくかつての良太郎を励ましたであろう桜井侑斗の、
 「弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても、それは何もやらない事の言い訳にならない」
 という言葉――。
 故に野上良太郎は自分の良心に従い、何かを失わせない為に、己の出来る事をやり続ける。
 現代――2006年で確認した木の根元を掘り返す良太郎。そこへハナもやってきて、二人はタイムカプセルを掘り出すと天野にそれを届ける。 中に入っていたのは、天野が捨てた筈のボクサーグローブと、ボクサー時代の写真だった……。
 「私はね、良太郎が電王で、良かったと思ってるよ。本当にそう思う」
 ……て、チャンプのヒロイン度が上昇した?!
 チャンプ、誰に吹き込まれたか知らないけれど、ヒロイン度を上げるには時に出番にこだわらず、 ピンポイントで全力攻撃を仕掛ける事と学習した模様。
 一方ゼロライナーでは、折れず曲がらず捻れない良太郎に、侑斗が苛立っていた。 苛立ち紛れにデネブにヘッドバットするもむしろ自爆ダメージを受け、座席で体育座りモードに入る侑斗、 その横で生真面目に謝るデネブ。
 奇妙な二人と新たな時の列車――そして仮面ライダーが加わり、物語の謎は加速していく。
 次回、愛理さんを巡る、男の戦い勃発!…………?
 桜井ライダーの名称は知っているのですが、まだ劇中で名乗って……ないですよね? 聞き落としていなければ。出来る限り、 重要な固有名詞は劇中で使用されるまで使わないという自分ルールがあるので、早く名乗ってくれないと、 いちいち「アルタイルフォーム」と書くのが面倒くさいゾ(笑)
 ……まあそれ言うと「仮面ライダー」はありなのか? という話になるのですが、これはもう、メタ的に仕方ないという事でその辺りは適当で、 はい(おぃ)
 ところで「デネブ」って何だっけ、と思ったら、はくちょう座の一等星の事で、それで、「アルタイル」と「ヴェガ」で夏の大三角形で、 星繋がりという事なのですね。
 なるほど、ゼロライナーとアルタイルフォームは牽牛という事なのか。
 ……それはそれとして、緑+牛というと、祭忍ギュウマ(『世界忍者戦ジライヤ』)を思い出さずにいられないわけですが(笑)  デネブは世界忍者だったんだ!(待て)

→〔その4へ続く〕

(2013年7月18日,8月30日)
(2017年5月28日 改訂)
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