■『仮面ライダー電王』感想まとめ2■


“二つの声重なる時 誰よりも強くなれる
動き出そうぜ Double-Action”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダー電王』 感想の、まとめ2(7〜13話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。そこはかとなくモモタロス風味。

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◆第7話「ジェラシー・ボンバー」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
 ミルクディッパーにおいて愛理さんへのプレゼントは、

 忘れ物

 扱いで処理されている事が判明。
 一応客が居るのに、店主はカウンターから出て本を読んでいたり、エプロンつけた(これが仕事という事らしい) 良太郎がテーブルで夕食の鰻丼を食べだしたり、愛理さんも、たいがい「自由」。
 「姉さんって、昔から、ちょっと……強引だよね」
 「そう?」
 やたら眠そうで愛理さんに特製スタミナ料理を食べるように言われている良太郎には、どうもウラタロスが頻繁に憑依している様子。
 「良太郎の体を、勝手に使わない事! いい?! あんたがついてから、なんだか良太郎、疲れ気味だし!」
 デンライナーの中で、ウラタロスに詰め寄るチャンプ。
 相変わらず仲の悪いモモタロスもウラタロスに文句を言うが、
 「てめぇ、わかりやすく無視しやがって。先輩の話聞いてんのか!」
 「はい、これからもよろしくお願いします、先輩」
 「なんだよ……わかってんじゃねえか。ま、頑張りたまえ」
 あっさりと懐柔され、唐辛子入りコーヒーで眠らされる(笑)
 ウラタロスはハナが食堂車を離れ、モモタロスが眠り込んでいる間に良太郎に乗り移り、
 「僕と一緒に、夜空の釣りを楽しまない?」
 遊園地でモテていた。
 前回を受け、ウラタロスがひたすら好き放題。
 単細胞のモモタロスと良い対比になっています。
 翌日……知らないアパートの一室で目を覚ます良太郎。
 携帯電話に収められた写真を見て、昨夜の放蕩三昧を知る。
 慌てて女・斉藤優美の部屋を飛び出すが、それを階下から見つめる男の姿があった。怒りを見せる男・大林友也は、 逃走時に階段から転げ落ちた良太郎が落とした財布(名前と住所付き)を拾う……。
 デンライナーでは、戻ってきたウラタロスとモモタロスが大げんか。
 眠りこけた所をハナに2発はたかれ、更に踏まれ、ここでもストレートを叩き込まれるモモタロスは、けっこうな被害者。
 切り札である「乗車拒否権」をちらつかせるオーナーの前では、肩を組んで仲良しこよしを演じてみせるモモとウラであったが、 オーナーが出て行くと再び揉めて、良太郎に止められる。
 今回、食堂車には他の乗客が乗っている映像多し。また、オーナーの“旗を倒さないようにチャーハンを食べる”は、 スポーツであった事が判明。
 ナオミ「そういうの、スポーツマンシップに欠けますよ」
 オーナー(スポーツだったのかぁ……!)
 本人も、今日知ったようですが。
 デンライナーを降りた良太郎はM良太郎となりイマジンの匂いに気付くが、商店街を飛ぶクロウイマジン(CV:事務長)との戦闘では、 飛び道具を弾いて遊んでいる内に、逃げられる(笑)
 契約者は斉藤優美である事が明かされつつ、クロウイマジンが特定の人間を「消去」する理由は不明、 と契約者の望みを隠したミステリー展開。
 一方、ミルクディッパーに自転車で乗り込んだ大林は、愛理さんのペースに巻き込まれそうになりつつもノコギリを振り回して 他の客は退散。そこにケーキを持って三浦がやってくるが……あれ、愛理さん、三浦見て、嫌な顔した?(笑) 単に、 「忘れ物」が増えるから?
 そして電話を受けた良太郎も戻ってくるが、
 「俺は元・優美の亭主だぁ!」
 と殴り飛ばされる。
 即座に良太郎に乗り移ったモモタロスが大林を殴り返そうとするが、良太郎に止められて帰還。良太郎に掴みかかる大林であったが、 愛理に箒で頭をはたかれる。
 「ここはライブラリーですよ。ちゃんと落ち着いて静かに話をしてください」
 「は……は、はい」
 「良ちゃんも、それぐらいでノックダウンされちゃ駄目でしょう」
 「そんな事言ったって……」
 しばらく話し合いの席が持たれたが、そこへ、消失事件の情報を持ってやってくる尾崎。べらべらまくしたてる尾崎を、愛理さん、 華麗にスルー。尾崎の話にイマジンの関与を感じ取る良太郎だったが、良太郎が尾崎の話を聞こうとした事、尾崎の高笑い、 それら色々混じり合って、遂に大爆発した大林がノコギリ振りまわして再び大暴れ。
 「優美連れてこい! 話つけてやる」
 と腹に巻いた爆弾?らしきものを見せつける。
 ……一応、こういうのには普通に悲鳴あげて反応するのですね愛理さん。
 愛理のリアクションに関しては、どこまでぶっ飛ばしていいものか、作り手もまだ若干手探りの気配が窺えます。
 外に飛び出して優美を探す良太郎は、クロウイマジンから逃げる優美を見つけて後を追うが、その前にクロウイマジンが立ちはだかる。 ソード電王に変身するが、空中からの立体的な攻撃に苦戦するソード電王。電王、初めての苦戦のまま、次回へ続く。
 石田監督は基本的に見せ方上手いと思うのですが、どうも遊びすぎるのが、好みと少々ズレる所。

◆第8話「哀メロディ・愛メモリー」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
 ソード電王、敗北、そしてデンライナーに退却。
 前回のロッド含め、ここまで圧倒的だった電王ですが、フォームチェンジの要素が加わった事もあり、敵がやや強化されてバランス変更。
 足に怪我を負った良太郎に代わり優美から話を聞きに行くというハナだったが……
 「ハナさんだと……」
 「なぁに?」
 「優美さんと、喧嘩しちゃう、かも……」
 チャンプ、良太郎から初のクリーンヒットを食らい、大ショック。
 一方、ミルクディッパーでは優美を待つ大林がイライラと動き回っていたが、
 「うちの良太郎は、人より倍、時間かかっちゃうんです。目的地に真っ直ぐ行けることが、少ないから」
 愛理さんはもう慣れた模様。
 結局ハナを置いて優美の元へ向かった良太郎はイマジンへの望みを聞きだそうとするが、失敗してしまう。そこで憑依したウラタロス、 観覧車一周の間に見事に釣り上げる(笑)
 優美の望み……それは、「結婚する筈だった人を忘れる」事だった。
 その相手は、現在ミルクディッパーに立てこもり中の大林友也。半年前、二人は結婚式の当日に大げんかして別れてそれっきり。
 だがそうなると、イマジンはどうしてビバルディの『四季』より「春」に反応して、人を襲っているのか……?
 良太郎は優美の本心を聞き出そうとしつこく追いすがる。
 その頃、やたら客で一杯のデンライナー食堂車では、帰還したウラタロスとモモタロスがまたもバトルスタート。 前回からやたらにモブ乗客が多かったのですが、この乱闘シーンは確かにモブが居た方が面白く(食事が飛んだり、逃げ出したり)、 2話がかりで演出が巧く効きました。この辺りはやはり、センスがいい。
 それを見ながら、
 「もういい……オーナに、追い出されちゃえ」
 テンプルにいいパンチを食らったようで、ふてくされるチャンプ。
 ブレイク! ブレイク!
 ミルクディッパーでは、愛理が大林にコーヒーを出して、魔愛理空間に引きずり込んでいた。
 「ゆったり構えてれば、星は自然と巡るんです」
 豆がいい仕事をしているコーヒーを口にして少し落ち着きを取り戻した大林、愛用の大工道具で、 ミルクディッパーの椅子の歪みを直し始める。
 優美を追いかける良太郎が最も気にしていたのは、優美の「忘れたい」という言葉だった。
 「本当に、忘れちゃいたいものですか。やなことがあったら、全部、その方が幸せなんでしょうか」
 つっけんどんに良太郎から逃げ続ける優美だったが、
 「僕、運悪い方なんですけど、経験的に今日って最悪の部類に入る予感があって……巻き込んじゃうと、悪いから」
 という良太郎が土手を看板で滑り落ちてトラックに突っ込みそうになった所を思わず助けてしまう。
 良太郎、経験則でその日のラック値がわかる事が判明(笑)
 そんな二人の前に現れるクロウイマジン。その気配に気付く、ダブルノックアウト寸前のモモとウラ。 クロウイマジンは良太郎を吹き飛ばすと、契約の最後の仕上げとして、優美がいつも身につけていたネックレスを引きちぎる。 それは、優美と大林の思い出の品。結婚式の大げんかの日、大林が道路に投げ捨てたが、優美は捨てられずにいたもの。 そしてネックレスから響く、オルゴールの「春」。
 イマジンは「大林を忘れたい」という優美の望みを、「思い出の曲(に関わるもの)を消す」という、 悪徳弁護士もびっくりの拡大解釈で達成しようとしていたのだ。
 「忘れたいわけがない……」
 呟く優美の目の前で、踏みつぶされて砕かれるネックレス。
 「契約完了」
 優美の過去を手に入れたクロウイマジンは行きがけの駄賃に良太郎を仕留めようとするが、砂状態のモモとウラが良太郎をかばい、 良太郎を放って優美の過去へと飛ぶ。
 ここで、散々喧嘩していたモモとウラが、同じタイミングで良太郎のピンチに気付き、砂のまま助けに飛んでくる、 というのは良いところ。
 「やっぱり、そうですよね……辛くても、忘れたくなんかないんですよね。大切な事を忘れてしまうのって、きっと……凄く辛い」
 カードを優美にかざし、クロウイマジンの飛んだ時間を感知する良太郎。
 ハナさんがふてモード続行中の為、良太郎単独で時間を読み取ったのは初。
 「待ってて、下さいね。――変身」
 “この瞬間”を、きちっと格好良く抜いて描いてくるのは、さすが。
 「良太郎、俺で行くだろ、な?」
 「ううん、ウラタロスで」
 「な、なにぃ?」
 「考えがあるんだ」
 「やっぱり、適した釣り竿を使わないとね」
 ロッド電王はクロウイマジンを追って過去へと飛ぶ――2006年7月24日(仏滅)、 大林と優美の結婚式当日に。
 式場では今まさに、新郎新婦による問題の大喧嘩の真っ最中。
 派手な階段落ちを披露する、一部列席者達。そこへクロウイマジン、続けてデンライナーとロッド電王が現れ、 ロッド用の新挿入歌(エンディングテーマ)。ロッド電王は空を舞うクロウイマジンを華麗に釣り、地面へと叩きつける。
 「さーて、そろそろ」
 「モモタロス、代わって」
 「待ってたぜ!」
 「ええ? そんなぁ」
 抵抗するが、フォームチェンジのボタン押されてしまうロッド電王(笑)
 「カメにばっか、いい格好させられるかぁ」
 上手い事二人のバランスを取りつつ肝心の所では主導権を握り、手綱をうまく操り始める良太郎。
 「へへっ、たっのしぃ!」
 考えてみれば、逃げられる→溺れる→ボロ負けする、と、この所いいとこなしだったソード電王、テンション上がる。
 「さっきから密かに温めてた必殺技、俺の必殺技――パート3」
 三連続斬りが炸裂し、クロウイマジンを撃破。
 「最っ高!」
 安定の、チンピラです。
 過去に戻ってすぐ、ロッド電王の武器で道路に投げつけられたネックレスを回収していた良太郎は現在へと急ぎ戻り、 そしてミルクディッパーにやってくる優美……。デンライナーから降車してミルクディッパーの床に滑り出た良太郎はネックレスを渡そうとするが、 その前で、大林が腹に巻き付けていた物を取り出し、優美へと手渡す。それは爆弾などではなく……新しい揃いのネックレスだった。
 「半年もかかっちまったんだよ……新しいの造るのに」
 かくて面倒くさい二人は復縁し、ミルクディッパーはいつもの平穏を取り戻す……。
 常に良太郎の手助けが最重要なピースになるのではなく、ちょっとしたきっかけとなった後、 当事者の行動が人間と人間の繋がりを良い方向へ変える、というのをはっきり描いたのは実に良かったところ。
 閉店後の店内で、姉に話しかける良太郎。
 「姉さんも……」
 「ん?」
 「姉さんも、忘れない方がいいよ……きっと」
 「何を?」
 「この望遠鏡の事、思い出してみない?」
 「思い出すって……いったい……」
 前回から意味ありげに強調されていた、店内に置かれた小さな望遠鏡を見つめる愛理は、不意に涙をこぼす。しかしその理由は、 わからない。姉の姿に慌てて、今の話は無し、と誤魔化す良太郎。
 果たして、愛理は何を忘れているのか……?
 「忘れたい」という優美に良太郎としてはかなりしつこく食い下がり、「なによ、あんたも忘れたい事があんの?」と聞かれて、 「いえ……ちょっと」と言葉を濁していたのが、愛理さんが絡んでいた為だった事が判明。天然悪魔の愛理さんの背景に物語を広げつつ、 ここまで手が回っていなかった、良太郎から愛理への愛情、というのを、普段とちょっと違う良太郎の姿を見せる事で鮮やかに入れてきました。
 モモタロスとウラタロスの関係も形となり、更に両者の扱いの呼吸を掴みつつある良太郎、と内容の詰まった好編。
 脚本の巧さもさる事ながら、演出面でも、平成ライダーの中核を担ってきた二人(長石多可男、石田秀範)が、 物語を完全に軌道に乗せました。
 そして、夜の街ではまた新たなイマジンが契約を求めていた――「おまえの望みを言うてくれ。どんな望みも、 かなえたる」
 世紀王・てらそままさき、関西弁で降臨!
 失意のチャンプは、果たして再び立ち上がる事が出来るのか?!
 唸る鉄拳、舞い飛ぶコーヒー!
 時の列車デンライナー、次の停車駅は、仏か――修羅か。
 次回、「死線! 燃えろフラワー必殺拳!!」
 こいつは泣けるで!
 (予告は本編の内容とは異なる場合があります)

◆第9話「俺の強さにお前が泣いた」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 イマジン憑きの男と遭遇したM良太郎、殴りかかるがそのパンチを受け止められてしまう。
 「いきがるだけの強さでは、オレに勝たれへん」
 「なんだとぉ?!」
 「強さにもランクがあってな……オレの強さは、泣けるでぇ」
 あっさりと、投げ飛ばされるM良太郎。
 「涙はこれでふいとけ」
 と、男が投げたのは……懐紙?
 「待てこの野郎っ、こんなもんで泣けるかぁ!」
 (痛いよぉ)
 「泣くな!」
 デンライナーに戻っては、ウラタロスに「投げ飛ばされてそのままとはねぇ……僕なら恥ずかしくて死んじゃうな」と厭味を言われ、 どうも最近、いい所少ないぞモモタロス(笑)
 イマジン憑きのジャージの男は、街灯に鉄砲をして壊して慌ててみたり、相撲スタイル?
 デンライナーの中では、時間の狭間であるトンネルの設定と、改めてハナのイマジン嫌いが強調。また前回、 過去からネックレスを持ち帰った事について、オーナーが一くさり。とはいえ、その程度の事では時の運行に重大な支障は生じない……ただし、 一度それに重要な影響が及ばされた時、その衝撃は計り知れない。
 オーナーの言葉に思う所があったのか、なんとしても時の運行を守らないと! とハナは力強く良太郎を引きずり、 二人は男の目的を探ろうと、尾崎から情報を得るためにミルクディッパーへと向かう。
 良太郎、そろそろ、特異点について聞いた方がいいと思います(笑)
 たぶん職業について言及したのは初めてだと思うのですが、愛理さんに近づく羽虫Bこと三浦は、 (自称)スーパーカウンセラーである事が判明。愛理に、良太郎くんをスーパーカウンセリングしたいと申し出るも、 適当に受け流される。羽虫Aこと尾崎は、雑誌記者、それも奇妙な事件を専門で扱っているとの事。 この辺りは情報提供役の都合でしょうが、ちょっと今回は、便利に使いすぎたかも。
 ……まあ私の羽虫Aへの好感度が奈落の底以下なので、 少しでも役に立つとイラッとするという理由もありますが(笑) とはいえ明らかに、 そこまで折り込み済みのキャラ造形だろうしなぁ(笑)
 謎の連続襲撃事件の被害者は、昨年の全国学生空手大会の上位入賞者達。そしてイマジン憑きの男の正体は、本条勝。 昨年の大会で決勝へ駒を進めた強豪だが、決勝戦の最中に急病で倒れ、そのまま引退。良太郎とハナは尾崎の集めたリストの中から、 去年の大会における本条の決勝戦の相手、不戦勝により優勝となった菊池信司の元へと向かう。
 ……が、道場をこっそり見ていたばかりに、襲撃の犯人ないし関係者だと誤解される二人。 空手部員達から「ひとり総掛かり」という名の稽古と称したつまりは制裁リンチを受けそうになる良太郎は、 道場でイマジンの砂を目撃した事もあってモモタロスを呼び出そうとするが……そんな時に限って、 デンライナーはトンネルの中を走っており、モモタロスは眠っていた!
 「お客様のおかけになった電話は、現在、電波の届かない所にあるか……」状態。
 モモタロスの株価が凄い勢いで下落しているのは、良太郎の不幸が伝染しているのでしょうか(笑)
 憑依期間に応じて徐々に不幸値が溜まっていって、その内ウラタロスも2D6振って5以下しか出なくなるのかもしれない……。
 必死に逃げ出す良太郎だが、追い詰められた際に振り回した一撃が空手部員の一人をあり得ない高さに吹き飛ばす。 そこへハナが駆けつけて空手部員を蹴散らすが、人間相手にはリミッターが発動するのか空手部員の反撃を受け、必死に逃げ出す二人。 というか空手部員、女の子に組み付くのはどうかと思うよ!
 なんとか空手部員達を振り切った二人、本当は僕がハナさんを守らないといけないのに……と志だけは男らしい良太郎と、 「電王として戦ってくれる良太郎を守るのが私の役目」と、心の底から男らしいチャンプ。そんなハナに思い切って、 彼女が何者であるのかを、良太郎は問いかける。
 「私は……どこの時間の人間でもない」
 「え? どういうこと?」
 だが、そこへ通りすがる本条。
 タイミング良くデンライナーがトンネルを抜け、M良太郎はソード電王に変身。本条から分離した金色イマジンと激突するが、 金色イマジン、強し。必殺技の打ち合いの結果、トマホークブーメランを受けてモモタロスはデンライナーへと弾き飛ばされ、 電王はプラットフォームとなって倒れてしまう。
 「電王は殺させない」と、プラットフォームをかばうハナ。そのハナを逃がそうと、良太郎は力を振り絞ってウラタロスを呼び出し、 ロッドフォームへと変身する。両者激突、と思ったその時、ふらふらと現れた本条に襲いかかる新たなイマジン――ライノイマジン。 金色イマジンはライノイマジンの攻撃から本条を守り、ライノイマジンは逃走。逃げたライノイマジンを電車砲撃で撃ちまくった所で 良太郎は限界に達し、変身を解いて気絶してしまう。一方、金色イマジンもそれ以上の戦いをする事なく、 気絶した本条を背負って去って行くのであった……。
 空手家を闇討ちしていたのは、本条@金色イマジンではなく、菊池と契約したライノイマジンであった。 どうやらまたイマジン拡大解釈詐欺にあっているらしい菊池の本当の「望み」は何なのか? そして闇討ちしないまでも、 道場破りなどを行って戦い続ける本条@金色イマジンの目的は? 大暴落したモモタロス株に、浮上の目はあるのか?!
 色々な謎をはらみつつ、次回へ続く。
 また、良太郎が空手部員を吹き飛ばしたのは、明らかに人間業でなく描写されており、「良太郎も強くなっているって事?」 とあははうふふ的に流されましたが、何らかの伏線になるのかとは思われます。というかこれで伏線で無かったら、 良太郎の潜在能力はなんとか神拳伝承者レベルという事に。
 で、なんとか神拳伝承者レベルのハナは、むくつけき空手部員ぐらいあっさり殲滅するのかと思っていましたが、 さすがにそんな事はありませんでした(笑) まあそれをやってしまうと良太郎が格好悪くなりすぎますし、 後で良太郎@プラットフォームがハナを逃がそうと立ち上がる所が格好良くならないので仕方がない。 憑依モードを前面に押し出しつつも、素の良太郎のヒーローゲージを小刻みに上げていく手管が、今作は実に手堅い。

◆第10話「ハナに嵐の特異点」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 本条@金色イマジン(以下、K本条)の真意を確かめようと、K本条に接触するハナとM良太郎。「よう、クマこう」……って、 クマだったのか。
 「強さを極めたもんどうしの契約や、凡人にはわからん」
 通りすがりに強盗に人質にされた女性を救っていたり、どうも悪意の感じられない金色イマジンだが、ハナとの会話は噛み合わない。 そこへライノイマジンが現れストレス解消に変身するソード電王だったが、ライノイマジンの強固な皮膚に攻撃が通じず……逃げられる。
 M株暴落、留まる所を知らず。
 イマジンを追ったM良太郎は菊池の大学に辿り着き、菊池こそがイマジンの契約者であった事を知る。その望みを聞き出す為に、 U良太郎が菊池と接触……と、頭脳プレイで、地道にポイントを稼ぐウラタロス。
 一方、K本条に張り付くハナは、K本条の空手道場襲撃の目的は、本条の体で再び空手をする為に、 金色イマジンが空手をマスターしようとしていた為だと知る。もはや究極の空手マスターになったと、 自信満々で型を演じてみせるK本条だが、
 「空手じゃないよ、それ」
 「全然違う、お相撲みたい」
 公園で練習していた空手教室の子供達に笑いものにされてしまう。
 「ほんまか?」
 「……まあね」
 「嘘やろぉ! 完璧やと思ったのに」
 がくっと落ち込むK本条の姿に、戸惑いを隠せないハナ。
 「なによ、イマジンなんていっつも契約は適当で、勝手な解釈で望み叶えてるくせに、どうして落ち込むのよ」
 「他のやつは知らん。けどな、こいつはもう一度空手をやりたいと望んだ。オレはそれを叶えたいと思うた。それだけや。 出来るのは、こいつの体をつこうて空手をする事。同じ強さを求める者として、最強の空手をな」
 だが、辿り着いたと思った武の極みは、少々見当違いであった。
 「オレ、空手しらんからなぁ……」
 モモタロスが“良くも悪くもバカ”だとすると、金色は“人が良いけど間抜け”といったところか。
 いっけん真摯に見える金色だが、どうせ目的は時の運行を変える事だろう、とハナは糾弾するが……。
 「……あ。忘れとった」
 「そんな馬鹿な」
 「おまえ随分オレらの事きらっとるんやな。なんかあったんか」
 ハナとK本条の会話は、本条の体の演技と、イマジンの声の演技が実にはまり、金色イマジンの間の抜けた感じが非常に上手く出ました。
 ひたすらイマジンを毛嫌いするハナに対して、イマジンとしては変わり者の部類の金色は、どうにもズレた返答で噛み合わない。そこへ、 U良太郎がうまく話を聞き出した菊池が、本条を探してやってくる。本条の急病により不完全燃焼で終わってしまった決勝戦……それをもう一度やりたいと 「本当のトップになりたい」と願った結果、ライノイマジンが菊池の空手のライバル達を襲撃していた事を告白。 最後の一人となった本条を守ろうとした菊池だったが、現れたライノイマジンに吹き飛ばされる。攻撃を受けた本条に金色が憑依し、 すんでのところで回避。反撃で綺麗な回し蹴りを決めるが、それを防がれてK本条も吹き飛ばされてしまう。 それをもって「契約完了」としたライノイマジンは菊池の過去へと跳び、金色イマジンは分離した本条の体をベンチに横たえる。
 菊池に向けて、自分もいつか必ず決着をつけたいと思っていた、と語る本条。彼もまた、その為にイマジンに、 空手の出来る体を望んだのだ。
 「なんか……夢で空手やってた気がする。すーごい、下手くそだったけど。でもさっきの蹴りは、久しぶりの感覚だったよ。 ありがとう」
 金色に向けて、握手の手を伸ばす本条。だが金色は敢えてその手を取る事なく、首を鳴らすと「契約完了」 して本条の過去へと跳んでしまう。
 「なんなのよ、やっぱりイマジンはイマジンね!」
 「そうなのかな……。僕たちも行こう」
 ライノイマジンが向かったのは、2006年5月21日。そして、金色イマジンが向かったのも、同じく2006年5月21日。
 それは、学生空手大会の決勝戦の日。おりしも本条と菊池の対戦が開始され、発病して倒れる本条。菊池の体からはライノイマジンが現れ、 会場を大破壊して大暴れ。
 これまで、過去を手に入れたイマジンが体を離れて暴れ出すと、契約相手の人間はしばらく気を失っていたのですが、 菊池がすぐに立ち直って本条を助けて逃げ出したのは、空手マンの力か。
 良太郎達も過去に辿り着き、ソード電王はライノイマジンと戦闘を開始するが、崩れてきた鉄骨に押しつぶされそうになる本条と菊池。 その時、本条の体から飛び出した金色が二人を助けるが、ライノイマジンの攻撃を受けて瓦礫の下敷きになってしまう。 二人を救うのには成功したものの、受けたダメージからか砂へと戻っていく金色のイマジン。
 「あいつら、大丈夫か?」
 「平気……。でもどうして?」
 「あいつの望み、果たしかっただけや」
 本条の、そして菊池の本当の望みは、本当の意味で二人の決着をつける事。その為に必要なのは、 イマジンが取り憑いた体で戦う事ではなく、自分の体でもう一度、空手をする事。
 「生きとったら、いつかは決着が、つくやろ」
 金色イマジンが過去に跳んだのは時の運行を乱す為でなく、本条の真実の望みを叶えるべく、二人を助ける為であった。 しかしその為に、自身は消滅していってしまう……。
 (モモタロス、あのイマジン消えちゃうよ。なんとかならないの)
 「ばかやろう! こっちに集中しろぉ!」
 この間、背景で戦っているソード電王とライノイマジン。
 電王サイドの戦闘と、ハナサイドの会話とを、うまく融合しながら進めていくテンポが絶妙。
 「ちょっと待ってよ、消える事ないでしょ!」
 消滅していく金色を、思わず引き留めてしまうハナ。
 「オレらのこと嫌いなんやから、ええやろ」
 「そうよ……大っ嫌いよ! ああもう!!
 ……私はね、あんた達が時の運行を変えたせいで消滅した未来に居たの。私の時間はもうどこにもない。だから、 あんた達イマジンなんかみんな消えちゃえばいいと思ってる!!」

 遂に明かされるハナの秘密。
 「その私がちょっと待ちなさいって言ってるのよ。待ちなさいよ!」
 そして、「自由」。
 ようやくヒロイン度が上がったと思ったのに、それを一瞬でかき消す自由人度(笑)
 (あの……僕の中に入ったらどうかな)
 ライノイマジンと戦闘しながらも、金色が気になる良太郎は、一つの提案をする。
 M「なにぃ?!」
 U「まじで?!」
 K「あいつに?」
 首をかしげる金色(瀕死)を、ハナ、とりあえず殴る。
 「なにすんねん?!」
 「なんかもう、わかんないのよ!」
 わからないから殴る方がわかりません!
 M「うぁぁ〜もうめんどくせぇぇ! こっちに来るか、そのはなくそ女に潰されるか、はっきり決めろ!」
 K「はなくそ?」
 ハナ「なによ?」

 もう一発殴る。

 この一撃がトドメとなり、解体された金色のイマジン、半強制的に良太郎に憑依。
 多分ちょっと違うけど、そうとしか見えない(笑)
 (ほんまにええんか?)
 (うん、きっと一緒に戦えるよ)
 (おおきに!)
 ここに電王、第3の形態、アックスフォーム誕生!
 まあベルトにボタン、最初から4つ付いているわけですが。
 憑依イマジンが増える度にボタンがベルトに浮かび上がるような形でも面白かったとも思いますが、そういうのは玩具の都合もあるし、 難しかったか。
 「オレの強さに――おまえが泣いた」
 顔の真ん中に角っぽい突起、武器は手斧、とデザインはかなり独特。
 アックス電王は、ライノイマジンの攻撃をさばくと武器破壊、最後は特大ジャンプからの振り下ろしで真っ二つに両断する。

 「ダイナミックチョップ」

 (後で言うんだ)
 今のところ、ウラタロスだけ必殺技に名前をつけていませんが、そのうちつけるのでしょーか(笑)
 「あのやろぉ、かっこつけやがってぇ!」
 めっきりイマジン界の底辺を這いずる存在となってしまったMタロスさん(無職)、歯がみ。ライノイマジンは暴走するが、 デンライナーに金色電車が追加され、一斉攻撃で撃破。金色電車はクマかと思ったら、接近戦仕様のマサカリムカデ?
 かくてイマジンによる過去の改変は防がれ、現在――必死にリハビリする本条と、それに付きそう菊池の姿があった。 菊池は前回は、ちょっと嫌な感じの体育会系先輩キャラとして描かれていたのですが、スッキリしたのか最終的に爽やかキャラに。 ……まあ大学行ったら行ったで、後輩をしごきで蹴り飛ばすぐらいはしていそうですが(偏見)。
 「たーく、狭くなっちゃったなぁここも。空気薄いんじゃないのか」
 デンライナーでは、Mさん(牢名主)が、凄く最低な感じに、新入りに絡んでいた。
 U「けどそれって、どういうイメージ?」
 ナオミ「金太郎ですよ! キンタロスの、きんたろちゃーん」
 デザインは本条のイメージのまま変化無しという事で、本条はどうやら、良太郎寄りのセンスの持ち主だった模様(笑)  そんなこんなで金色イマジンが戦列に加わり、名前はキンタロスに決定。
 「ハナ……あの愛の叫び、泣けたでぇ」
 殴られる(笑)
 ……まあ、ウラよりはキンの方が、今の所はフラグ立っている感じですが。
 イマジンにより消滅した未来から来たというハナ――彼女の正体は、“(元?)特異点”であった。 オーナーの説明の言い回しだと過去形っぽいのですが、今も特異点なのかどうかは不明。  特異点、それは、時間への干渉に影響されない存在。
 ゆえにハナは自分の居た時間が消滅しても消える事なく存在し続け、“今居る時間”が、“ハナの時間”なのであった。
 そしてその為に、ハナはイマジンを追っていたのだ。
 オーナーはハナについては説明してくれたものの、良太郎については流し、デンライナー食堂車はそのまま特製旗つきプリン祭に突入。 最後に、着流し姿のK良太郎がコミカルに顔見せ。
 「俺の強さは、泣けるでぇ」
 いい話の要素をイマジンの男気に持っていきつつ、明かされる謎の一端。今回も巧い。
 しかしおかしいなぁ……明らかにチャンプのヒロイン度を上げに来た話で、実際にヒロイン度が上昇した筈なのに、 それを上回る勢いで、フリーダム度と地獄突きのスキルレベルが上がったというのは、 いったいどういう事でしょう。
 結果的に、依然、ヒロインランクより修羅ランクの方が高いという、阿鼻叫喚の状況に。
 次回、ウラタロスの時と同様に、キンタロスの立ち位置を落ち着ける話……になるのかな?
 Mさん(仮名)の、明日はどっちだ?!

 ……とかまあ色々酷い事も書きましたが、今作におけるモモタロス最大の価値は「モモタロスが一番面白い」 事だよなーと(笑)
 逆の言い方をすると、「良太郎&モモタロスが面白い事」に自信があるから、モモタロスの戦闘での見せ場を減らせる (いっそ踏み台に使える)、というのが今作の一つ凄い所であるな、と。
 なんだかんだでやっぱり、「強い」というのはこういった作品では「価値」なので、良太郎のキャラ付けにしてもそうですが、 その「価値」に対して変化球を投げていっているというのも、今作の一つ、挑戦的な要素であります。まあ平成ライダーは、 生身の強さはそれほど必須要件ではないというシリーズの流れがあったので、それで出来た部分もあるでしょうが。

◆第11話「暴走・妄想・カスミ草」◆ (監督:坂本太郎 脚本:米村正二 ダイアログ監修:小林靖子
 メインライターの小林靖子は、「ダイアログ監修」表記。よくわかりませんが、要するに設定とか時間軸関係とか、 とにかく監修という事でしょうか(何もわかっていない)。基本、がっちり自分の世界観を決めて展開するタイプですし。
 本編は、前回までのあらすじ、という名の、Mさん(チンピラ)の愚痴からスタート。
 「馬鹿力だけは凄いのは認めてやるが、体はデカいし態度もデカい。うざいやつだぜ。俺の出番を減らしたら、ただじゃおかねえぞ。 クマはクマらしく、冬ごもりでもしてろってんだ!」
 今回も、最低です。
 ジュニアモデル・小林カスミのもとへ度々届けられる、かすみ草の花束。たまたま姉に頼まれてかすみ草の花束を持って歩いていた良太郎、 その差出人と間違われる。インタビューを抜け出して良太郎を追いかけたカスミを連れ戻しにマネージャー・大槻実がやってくる、が……
 「いなくなる……なくなる……泣く?!」
 キンタロス、単語に反応(笑)
 「泣けるで!」
 「なんだおまえは?!」
 「怪しい人じゃないわ……そう、ファンなの」
 「ふぁん? おまえ、不安なんやな」
 カスミを連れ戻そうとしたマネージャーを、事情をさっぱり理解しないまま押しとどめるK良太郎。
 「さっきからなんなんだあんたは?」
 「オレか? オレの強さは泣けるでぇ!」
 とりあえず、マネージャを投げ飛ばす。
 「オレの強さにおまえが泣いた。涙はこれで拭いとけ」
 「やっぱり貴方が、かすみ草の人だったのね?」
 「ん、んん?」

 タチ、激悪っっっ(笑)

 なおこの最初のデンライナーのシーンでは、ウラタロスが後ろの方でチャンプに殴り飛ばされていたり、 モモタロスが一人でトランプで遊んでいたり、色々細かく仕込んでいます。
 翌日、ミルクディッパー。
 「かすみ草……花言葉は、清き心」
 「んーーー、愛理さんにぴったりです!」
 今日も絶好調で鬱陶しい、羽虫ーず。
 良太郎は怪我を負わせたマネージャーから電話で呼び出され、キンタロス問題に関しては殊勝なハナはそれについていく。 パリコレに参加する事が決まってからカスミの周囲では嫌がらせが続いており、良太郎(強いと思われている)は、 成り行きでそのボディガードになる事に。ショーの最中、ファンが次々と投げ込むプレゼント(アイススケートの演技後状態) を止めに入るマネージャー……
 「ん? なげない? なけない? 泣けない?!」
 の言葉にまたも反応するキンタロス、凄くタチ悪い(笑)
 「泣けるで!」
 K良太郎は、舞台の下に怪しいものがいると、ステージを破壊して暴れ回るが、出てきたのは大山鳴動してネズミ一匹。 しかし次の現場では、急な停電の後にカスミの衣装が汚されるという事件が発生。良太郎とハナは逃げる人影を捕まえ、 嫌がらせの犯人はカスミのライバルの少女であった事が判明するが……ホッとしたのも束の間、 潜んでいたアイビーイマジンがカスミに襲いかかる!
 イマジンを迎撃するも逃げられて、ひたすらストレスのたまるM良太郎。契約者を探す良太郎とハナはマネージャーを問いただし、 カスミの家庭の事情を知る。父親と二人暮らしだったカスミは、ある日突然父に家を追い出されたというのだ。 それ以来カスミは事務所の社長の家で暮らしており、父が自分を憎んでいると強く信じていた。
 「カスミ! 親父さんとの事は、オレが引き受けたで!」
 「え?」
 「わかっとる! 皆まで言うな」
 その話を聞き、父娘の仲を取り戻そうと、カスミの反応も置き去りにして一人で盛り上がりだすキンタロス。
 前回よりむしろ、イマジンぽいといえばいえるのか(笑)
 一方、チャンプは“誰か”にカスミの仕事のスケジュールを伝えているらしいマネージャーを、文字通りに締め上げていた。 その相手がイマジンにカスミを襲わせている契約者かもしれない……しかしマネージャーは、頑として口を割らない。その時、 再び出現したアイビーイマジンがカスミを襲い、駆けつけた良太郎はソード電王に変身する。
 とりあえずモモを使ってあげる、良太郎の優しさ。
 「はっは! やっぱ戦ってる時が最高だぜ!」
 ノリノリのソード電王、グラビアポーズを決める(笑) が……
 「亡き者にしてやるわ」
 「あーっ、その言葉は、だめぇ!」
 「亡き者……なき……泣き?! 泣けるでぇ!」
 特盛り天丼で、単語に反応してデンライナーから跳んでくるキンタロス。モモは強引に追い出され、アックス電王、登場。 単調な攻撃を見切られたかと思われたアックスだったが、敢えて相手の攻撃を誘って受け止め、懐に入って強烈な打撃を打ち込む。 そしてトドメの必殺技……が、その発動寸前に急停止。一方、物陰に隠れていたハナとカスミは、 砂を出しながら現場から離れる男を目撃する……その男はやはり、カスミの父・謙作?!
 イマジンの契約者は誰なのか、そして急に動きを止めたキンタロスの真意とは?!

◆第12話「走れタロス!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:米村正二ダイアログ監修:小林靖子
 攻撃を止めたキンタロスの目的、それは……
 「親父さんが、どんな思いでイマジンと契約をしたか、確かめるんや!」
 あくまで謙作の娘への想いを信じたいキンタロス、チャンプにがくがく揺さぶられて、逃げる(笑)
 イマジンを取り逃した二人は、仕方なく謙作の店(食堂)に向かうが、もうカスミとは縁を切った、と謙作は取り付く島もない。 しかし、二人の話を聞いた謙作は、怪人との遭遇を思い出していた。
 「まさか、あの時の事が……夢だと思っていたが」
 イマジンとの契約、夢にしている人、多め。
 その割にはイマジン本体を目撃すると、「怪物の実在」をみな結構すんなり受け止めるのは、『電王』ワールドの若干、気になる所か。
 まあ、実体を見た時には信じて貰えないと、良太郎とハナがますます電波な人になってしまい、 情報収集がにっちもさっちも行かなくなってしまうのですが。
 一方で、「(多分)イマジンを倒すと“現在”でイマジンを見た人達にとってもそれが無かった事になる」為に、 怪人やライダーが多くの人に目撃されてもリセットされるので世間には広まらない、というのは上手い設定。これにより、 世間の目をあまり気にする事なく、事件や変身→戦闘を組み込める事で、リアリティを保ちつつシナリオの自由度を確保する事には成功しています。
 いよいよ、カスミがパリコレへ向けて出発する日。
 空港に向かう車にアイビーイマジンが取り付き、埠頭から転落しかけた車が停車。 カスミとマネージャー(と運転手)が車から逃げ出した所で、車に手をかけるK良太郎。
 「親父さんが娘によくない事を契約するはずがない。それを証明したる」
 「親父さんはカスミを愛しとる。オレはそう信じる!」
 「これがカスミのためなんや」
 皆の制止を振り切り、K良太郎、車を海底へ放り捨てる。
 いまいちちょっと、この流れが意味不明(^^;
 キンタロスが勘違いで暴走しているという状況なのですが、いったいぜんたい、何をどう勘違いすると、 車を海に吹っ飛ばすと事態が解決すると思ったのか。
 しごく単純にキンタロスの中では、
 父親はカスミを愛している=父の望み通りにするのがカスミの為=だからカスミの為にそれに協力する
 という、図式なのかもしれませんが。
 少しわかりにくかったかと思います。
 そこへやってくる、謙作のミニバイク。謙作はカスミとマネージャーに空港へ急ぐよう促すが、
 「もう遅い。これで娘の仕事は全部潰した……契約完了」
 満足したアイビーイマジンは、過去へと跳んでしまう。
 「あんた……なんてことしてくれたんだ」
 「なんでや? これがあんたの、望んだ事なんやろ」
 「違う!」
 妻を亡くし、娘と二人の生活を送ってきた謙作は、ジュニアモデルとして人気を得ていく娘が、 家の手伝いを優先してモデルの道を諦めようと考えているのを知り、敢えて喧嘩別れをする事で、娘をモデルの道へと送り出したのだった。 そしてマネージャーの大槻に密かに娘の仕事を教えてもらい、こっそりと仕事場にかすみ草の花束を置いていく日々……しかし、 イマジンに望みを聞かれた時、謙作は「カスミに会いたい」と思わず願ってしまった。イマジンはその望みを「カスミの仕事を潰す事」 で叶えようとしていたのだ!
 「私のせいで、娘の夢を、打ち砕いてしまうとは」
 「いや……オレのせいや」
 ピンチになるとすぐに憑依を解いて逃げ出すキンタロスは、意外と男らしくない(笑)
 2006年11月8日――親子喧嘩の日。
 「親の言う事を聞けないおまえなんて出て行って事務所の社長さんの世話になってしまえ!」というお父さんは、 改めて超論理で滅茶苦茶(笑) 不器用な昔気質の男、みたいに描きたかったのでしょうが。
 荷物をまとめてカスミが出て行った直後、アイビーイマジンが到着。謙作の体から出てきたイマジンは、ビームで街を大破壊。 そこに良太郎も辿り着くが、モモとウラを押しのけて、キンタロスが憑依。
 「体貸してくれ!」
 と、アックス電王に変身するのかと思いきや、イマジンを無視して走り出す。
 (キンタロス、どうするつもりなの?)
 「決まっとる! カスミを親父さんと会わせるんや! 親父さんの本当の思いを、わかってもらうんや!」
 アイビービーム、勢いよく、街を大破壊。カスミの乗ったバスを追うK良太郎も、強引なショートカットでビルを大破壊。この展開に、 オーナー、遂に怒る。
 「キンタロスくん、イマジンに荷担した上、時の運行を変えようというのなら、乗車拒否です」
 「やったぁぁぁ! 邪魔もんが減るぜ!」
 「ははん、彼が居ると狭いもんね〜、ここも」
 最低な追随をする、先輩二人。
 「デンライナーから追放されたら、永遠に時間の中を彷徨うのよ! それでもいいの?」
 キンタロスを止めようとするハナだが、キンタロスの決意は変わらない。
 「オレのせいやからな!」
 一応、やった事をの責任を取ろうとする辺り、反省前のMさん(仮名)よりは、マシ……なのか?
 K良太郎はカスミの乗ったバスに追いつくと、走行中のバスに向かって必死に呼びかける。
 「親父さんはおまえを愛しとる! とことん信じたるんや! もう一度やり直せ!」
 その叫びが届いたのか届かなかったのか、走り去って行くバス……キンタロスはデンライナーへと戻ってオーナーから追放を宣告され、 良太郎は街を破壊するアイビーイマジンの元へ。
 「行くよ……キンタロス。――変身」
 「ごっつ泣けるで! これがオレの……電王としての最後の戦いや!」
 アックス電王は高い防御力を活かした戦法で、アイビーイマジンをずんばらりん。
 「俺の出番なしかよぉぉぉ」
 「まあいいんじゃない。クマも、見納めなんだし」
 そして現在へ戻るデンライナー車内……乗車拒否権により追放されそうになるキンタロスだが、停止信号によりデンライナーが停車。 皆を連れてオーナーが扉を開けると、そこは、“良太郎とカスミが出会うちょっと前”の時間。
 インタビューを受けていたカスミが不意に立ち上がり、フロントに向かうと、そこに居たのは父の姿。 K良太郎の言葉に父を信じる事を選んだカスミは、かすみ草の人が父親である事を自分の目で確かめ、親子は無事に仲直り、 それを見届けてキンタロスはデンライナーを降りようとするが……
 「その必要は無くなりました」
 オーナーの説明によると、小林父娘の仲直りにより、謙作とイマジンとの契約がなくなり、カスミと良太郎の出会いがなくなり、 キンタロスの暴走もなく……なった?
 ナオミ「でも、それって変じゃない?」
 ハナ「二人が出会わなければ、私たちが過去へ飛ぶ事も、無かったわけだし」
 オーナー「そう……変です。だから、時の運行を変えてはならない。このような事は、これっきりにしてください」
 タイムパラドックスの問題、「変」で済まされる。
 まあこれは後々、伏線とかにもなりそうですが。
 ここまでただただ怪しげなだけだったオーナ−、若干の人情味?を見せて立ち去る。約2名、不満たらたらですが(笑)
 かくてキンタロスは無事にデンライナー居残り、食堂車は狭っ苦しいまま、良太郎達の戦いは続くのであった。
 Mさん(チンピラ)の株は特に上がりませんでしたが、Kさん(バンカラ)の株が大暴落。
 すぐ寝る(寝たふり?)、すぐ逃げる、すぐ手を出す、思い込みが激しい、前後の状況を一切確認せずに行動する、 考えない、無駄に力強いと、物凄い勢いで数え役満。
 そう来たか。
 なおUさん(サギ師)は、良太郎にも憑依せずロッドフォームにもならず、現状維持。……やや、 言動の質がM先輩に似てきた感はありますが。
 細かい仕込みを散りばめるのが大好きな為、毎度難しそうな、小林靖子がメインライターの作品のサブライターですが、 前作『カブト』でメインライターを務めた米村正二が登板。これまでに較べて、憑依されている時の良太郎の押しが弱すぎる気がする、 というのは気になったところ。
 あと実際に怪物の襲撃が起きているのに、成り行きとは言えボディガードの二人(少なくとも、 嫌がらせの実行犯逮捕の実績はあげている)が疑いの目を向けた父親に関して、事情を知っている筈のマネージャーが、説明を拒否する、 というのは展開の為の展開になってしまい、いただけませんでした。

◆第13話「いい?答えは聞いてない」◆ (監督:金田治 脚本:小林靖子)
 「なんか……どんどん体重くなってく感じ。やっぱり、イマジンが3体ってきついのかな」
 「僕が替わるから、少し休みなよ。気持ちだけでも違うんじゃない?」
 甘い言葉で良太郎を引っかけるウラタロス、憑依した途端にガールフレンドに電話(笑)
 消す端から登録されるのかもしれないけど、アドレス帳をそのままにしてあるのは、良太郎の優しさなのか。
 「馬鹿だなぁ、愛「愛してるわけねえだろ! さっさと便所いって寝ろ!」
 そこへ割り込むモモタロス。
 「ちょっと先輩やめてよ、今の子ナンバー3なのにぃ」
 最近の株価暴落にともなう諸々で、ストレスの溜まっているモモタロス、M良太郎になって行動しようとするが、「あのクマ野郎、 なにかっつうと泣ける泣けるって」とつい口にしてしまった単語に、キンタロスが反応。
 「……泣けるで! 誰がオレの強さ見たいて?」
 そのまま主導権を握って揉める3人だったが、突然まとめてデンライナーへと吹き飛ばされ、何かの違和感を覚えるウラタロス。 その場に倒れた良太郎は、一連の奇行を目撃していた、街路樹の手入れをしていた老人・戸山秀二に、助けられる。
 「君……芸人さん? なんか、変わった芸だったけど」
 「けっこう……きつい……です」
 そして気絶(笑)
 翌日――デンライナーでは、チャンプが3人をシメていた。
 テーブルの上に足を乗せて(笑)
 えー……わたくし、9話の感想において「空手部員、女の子に組み付くのはどうかと思うよ!」と書きましたが、以後、 ハナに関しては「ヒロイン」というよりも、改めて

 「一人の修羅」

 として扱いたいと思います。
 「いい! イマジンと戦う時以外は、良太郎に憑くの、ぜっっったい禁止!」
 「「「ええっ?!」」」
 「わかった?!」
 「「「はい……」」」
 一方、良太郎はミルクディッパーで、羽虫Bことスーパーカウンセラー三浦により、催眠治療を受ける事に。
 「さあ良太郎くん、君の奥にあるものを言ってごらん。何が見えているのか」
 しかし良太郎には、全く催眠効かず。
 「三浦くぅん、無駄だよぉ、そんなオカルトで何がわかるっていうの」
 ところが割って入ろうとした羽虫Aこと尾崎、さくっとかかって小学校時代からの恋の思い出を語り出す(笑)  更には背後ではぼんやりとした表情になった愛理の視線が、あの望遠鏡に向けられていた……。
 ……て、あれ、三浦、有能?
 いやこの際、何をもって有能といえばいいのかはよくわかりませんが。
 喋り続ける尾崎を外に放り出した三浦が再び良太郎に催眠術を試みたその時、デンライナーの3イマジンが何かの気配に反応する。
 (見つかっちゃった……)
 そして紫色に輝く、良太郎の瞳。
 「良太郎が消えた」
 良太郎に繋がらなくなる、M、U、K。いったい良太郎の身に何が起きたのか?!
 その頃、公園で動物や鳥に餌をやっていた戸山秀二は、公園の芝生の上でラジカセの大音量を鳴らしながらダンスの練習を始めた集団に抗議するが、 あしらわれる。ダンスグループの一員に、昔知っていた子供の面影を見る戸山であったが、すごすごと引き下がった帰り道、 その体にイマジンが憑依する――。
 良太郎の異変を知ってミルクディッパーに駆けつけたハナが目にしたのは、何かが大暴れして滅茶苦茶になったような店内と、 床でのびている三浦であった。「強力な悪霊が現れて……良太郎くんが乗っ取られてしまった」と告げる三浦。また、 望遠鏡の所で何かをしていたらしい愛理が、何故か店内から姿を消していた。
 謎が謎を呼ぶ中、戸山が去った後の公園でダンスグループをいきなり殴りつけたのは――紫良太郎(声:鈴村健一)。
 「猫たちおどかしたのおまえ?」
 紫良太郎は華麗なブレイクダンスでダンスグループを叩きのめすと、なおも抵抗する彼等に向けて、指を鳴らす。
 「僕のこと、好きになってくれるよねぇ」
 この台詞は、草加雅人(『仮面ライダー555』)の「俺の事を好きにならない人間は邪魔なんだよ」への、 軽いオマージュでしょーか。
 そんな騒ぎが起きている公園の入り口で、近づく人々を次々と襲うオウルイマジン。イマジンは戸山がつい口にした 「動物が安心して暮らせる場所に」という望みを公園に誰一人立ち入らないようにする事で叶えようとし、 止めようとした戸山すら殴り飛ばして気絶させる。
 オウルイマジンは白ベースのボディに顔など一部が銀色で、狂気が前面に出た良デザイン。 イマジンのデザインはここまでそれほど魅力に感じていませんでしたが、狂った感じがなかなか格好良い。
 良太郎を追っていたハナも公園に入り込んでいた事でオウルイマジンに襲われるが、そこに現れたのはダンス軍団を引き連れた紫良太郎。 紫良太郎はハナを攻撃した際に公園の木に設置してあった巣箱を壊したイマジンに、怒りを見せ……なんと、 電王ガンフォームへと変身する。
 「ちょっと倒してもいい? 答えは聞かないけど」
 踊るようなステップを踏みながら、えらく攻撃力の高い銃を乱射するガン電王。この辺りの動きも、ミズノスーツの力でしょうか。 ガン電王は飛行して逃げるオウルイマジンを追ってバイクを召喚。バイクで追撃しながら銃を連射し、公園の建物を蜂の巣にするが、 ハナに止められると「あ、そうか。鳥の巣が壊れちゃうね」とあっさり攻撃を中止。
 「あなたなんなの?!」
 「何って……?」
 さすがのチャンプも、まともな会話が成り立たない相手に困惑し、砂状態のモモタロスが突撃を敢行するが、あっさりと蹴散らされる。
 「ボク、良太郎やっつけなきゃいけないんだって。だから憑いたんだ」
 良太郎に取り憑き、なおかつ電王になった上で、衝撃の目的をさらっと口にするガン電王。
 ……えーと、一見まともそうだけど実は狂っているのはツッコミやすいのですが、明らかに狂っているとツッコミにくいので勘弁……!(笑)
 基本、ツッコんだら負け、という、戦慄のツッコミ殺し!
 この発言に危機感を抱き、ウラとキンもデンライナーから現在へと跳び、砂状態で居並ぶ3イマジン。 作り手の思惑に完全にはめられていますが、砂状態は、なんとも可笑しみがあります。特にじたばた走って行く姿は、 妙に可愛いと言わざるを得ない(笑)
 ガン電王に突っ込む砂弾3勇士であったが……あっさりと弾き飛ばされ、デンライナーまで戻されてしまう。 変身を解いた紫に食らいつくハナだが、その手をひねりあげる紫良太郎。
 「聞こえないよ。良太郎はすっごく深いところに――」
 (駄目だ)
 「あれ、なんで?」
 (駄目だ、放して)
 良太郎は強引に主導権を取り戻すが、その場に膝をついて倒れてしまう……。
 その頃、愛理さんはどういうわけか、羽虫Aの車に乗ってどこかへ向かっていた。
 「どこでも愛理さんの好きなところ、行きますよ」
 「いつもの、いつもの場所に行きましょう」
 「…………いつものって……どこでしたっけ?」
 「希望ヶ原。いつもの、星が見える丘」
 愛理の目は尾崎を見ず、過去の記憶の中を彷徨っていた。それは、一緒に星を見た男……そしてその手には、懐中時計が……
 という所で、続く。
 どうやら三浦の催眠術が余計な所で火を噴いたらしく、忘れていた何かを思い出しつつあるような愛理さん。 キーアイテムは懐中時計のようですが、果たしてそれが意味するものは何なのか?  そして戦慄のツッコミ殺しに乗っ取られた良太郎の運命や如何に?! 電王4フォームも揃い踏み、 物語はますます切れ味を増して盛り上がる!

→〔その3へ続く〕

(2013年7月18日)
(2017年5月28日 改訂)
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