■『仮面ライダーブレイド』感想まとめ10■


“いつかどこか遠い場所で 今日のことを思い出すよ
後悔さえ残さず歩く道 恐れることはないはず”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーブレイド』 感想の、まとめ10(46〜最終話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
 なお、サブタイトルが存在しない為、全て筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい。

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◆第46話「聞け万国の労働者」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇)
 前回派手に弾け飛んだように見えたケルベロス、奥に大の字で寝ていた……と思ったら、それを封印してカードにする天王路。 その後にはケルベロスの奪ったカードが散らばり、睦月がそれを回収する。
 遂に表に出てきて秘めた悪意を振りまいたと思ったら、秘密兵器があっさりと撃破され、 怒れる仮面ライダー達に囲まれて大ピンチの理事長。いったいどうやってこのピンチを切り抜けるのかと思ったら……
 「お、おまえ達がちゃんと仕事しないからなんだからね?!」
 と、説教スタート。
 大人のずるさを見せつけてきました(笑)
 何のバックアップもしていなかった事は棚にあげ、いつまで経ってもアンデッドの封印作業を完遂できないばかりか、 一般市民の鬱陶しい思春期まで巻き込んで全くもってなってない、この役立たずのプロレタリアートどもめ、という事で
 「君たちは、退職処分とさせてもらった」
 「それってクビって事ですか?」
 「何故ですか? 私達は今までアンデッドを封印してきた。それを今更」
 橘さん、あなた前回、その偉い人に向かって
 「奴を止めろ! やめさせろ!」
 とか暴言はいてたよーな。
 かくして、めでたく正真正銘の無職となった2人に、本来ボードの所有物であるライダーベルトと集めたカードを渡してもらおうと要求する天王路。 色々な点で何を今更感が漂いますが、前回を汲んでここで「仕事」要素がねじ込まれてきました。
 「それは……出来ません」
 だが、橘はそれを拒否する。
 ここは剣崎ではなく、かつて自分探しの旅に出る為にベルトを返却した過去のある橘さんに言わせる事で、 桐生編を経た後の橘さんの覚悟と責任感が出ました。
 「俺の知っているボードは、人類の平和の為に作られた組織だ。あなたのやっている事は、まるでその逆だ!」
 色々とまとめに入って、前半戦を思い出す機会も増えてきましたが、20代前半〜半ばぐらいの男が叫ぶ青臭さというのは、 このぐらいが限界だよな、と。また、前半からもっとしっかりと「仕事」の要素が描かれていたら、 この対立項にも面白みと盛り上がりがより増したと思うのですが、どうにも勿体ない。
 「おまえがケルベロスで何を企んでいたかは知らない。だがそれは葬られた。おまえの負けだ!」
 「俺たちはこれからもアンデッドを封印する。それが、俺たちの使命だ」
 そう、我々はブルジョワジーに屈しはしない!
 長き搾取に悩みたる 無産の民よ決起せよ
 今や二十四時間の 階級戦は来たりたり
 起て労働者奮い立て 奪い去られし生産を 正義の手もて取り返せ!

 仕方ないので理事長、黙って帰る。
 これは、次は法務部から正式な書類が来る→裁判→有罪→服役コース。
 「それじゃあ、本当に天王路理事長が生きていたの」
 天王路との遭遇を聞いての広瀬さんの反応なのですが、いや別に、理事長は死んだ事にはなってなかったよーな(笑)  アンデッド解放の責任を取って理事長の座を退いた事には言及されていましたが、広瀬さんの中では、 しばらく連絡の取れない人はみな死んだ事になるのか。
 で、どうしてわざわざ夜に屋外で話しているのかと思ったら、ジョーカーを運び込んだ小屋の外でした。 剣崎はジョーカーのベルトにスピリットのカードを通し、姿は人間に戻る始だが、目を覚まさない。
 一方、家に帰った理事長は、ケルベロスを倒されたにも関わらず、余裕の表情を浮かべていた。
 「ケルベロスよ、おまえの本当の力を見せる時が来た! ライダー達を越える、真の力を」
 そこへやってくる出来るクワガタ。このバトルファイトを始めた者に興味があったという金居に対し、 ケルベロスのカードを見せる天王路。
 「これが欲しいのか?」
 「そのカードを使えば、アンデッドを封印できる」
 封印の石が現れなくとも、ライダーシステムを用いずとも、ケルベロスの力があればアンデッドを封印する事が出来る。 金居はその力を得ようとするが、天王路が欲したのも、まさしくその力であった。 ケルベロスの力があればクワガタもジョーカーも封印する事が可能であり……
 「そして神が顕れて、ケルベロスに祝福を与える。……バトルファイトの、勝利者に。ふふふふふふ、 はっはっはっはっはっは」
 ここで天王路が恍惚と、封印の石を撫ですさるのが気持ち悪くて素晴らしい。
 あくまで天王路主観の発言ですが、「バトルファイトの勝利者の前に神が顕れる」と、ちゃぶ台返しのもう一回ひっくり返し。 封印の石がアンデッド同士の戦いに際して出現しなかった理由は謎ですが(ボードが確保しているから?)「封印の石が現れない」 「事故で始まったものだから」という根拠によるイレギュラーな「偽りのバトルファイト」という見方は間違いだという事になりました。 この点に関してはあくまで登場人物それぞれの主張なので、まだ幾らでもひっくり返せてはしまいますが(^^;
 そしてどうやら、それを見極める為に表立って動いていなかった様子の金居は、 ケルベロスカードがあれば自分がジョーカーを封印して最後の勝者になれる、と天王路と対峙、アンデッドへと変身する――。
 「さあ、カードをよこせ」
 一方、目を覚まさない始を農場へ運び込んで看病していたぼんくら軍団だが、サーチャーがキングの変身に反応。橘と睦月が出撃し、 ジョーカーを見張るという名目で剣崎は残る事になる。
 「始……起きてくれよ」
 ――起きた(笑)
 駄目師弟が居なくなった途端に速攻で目覚めたのですけど、何か、目に見えない役立たずフィールドでも発生していたのでしょうか。
 そして、光った。
 「みなさん、初めまして」
 突然、その場に居る、剣崎、広瀬、虎太郎の脳内に響く声。
 「私は、相川始でも、ジョーカーでもありません。あなた達の言う、カテゴリー・2」
 「ヒューマン、アンデッド……」
 おおお、ここでこう来ましたか。
 研究所では、正体を露わにしたギラファクワガタアンデッドに対し、ただの人間である筈の天王路が余裕の笑みを浮かべていた。
 「ふふふ……君はまだ、ケルベロスの本質を理解していないようだね」
 「なに? ぬ?!」
 天王路がスーツの袖をまくると、その左腕からは、金属製のスロットが醜く突き出していた。
 「――変身」
 ケルベロスのカードが天王路の左腕へと吸い込まれ――天王路はケルベロスアンデッドへと変貌、更に強化された姿となる。 そしてケルベロスの胸に浮かび上がる、天王路の顔が超気持ち悪い。
 「ふふへへへへへへへへ」
 「アンデッドと、融合しただと?!」
 「いーや。私はアンデッドになったのだ! ははははははは」
 成る程。
 天王路の真の目的は、“自ら”をバトルファイトの勝利者にする事だった、と。
 そもそもライダーシステムがその前段階のだったと思うと、最初からきちんと話は繋がりました。
 ずっと、なぜライダーシステムはアンデッドとの擬似的な融合という手段を取っているのか、 という疑問があったのですが(劇中では度々「アンデッドの力を借りる」という表現を使っていましたが、 カードギミックの描写不足の為もあり、リスキーな部分の方が目についていた)、これで腑に落ちました。
 こういった「実は最初から凄い黒幕が居て全てその陰謀でした」という展開は、 しばしば「どうしてそこまで遠回りして時間をかける必要があったのか」という疑問が浮かんでしまいがちですが、 アンデッドを分析しつつ封印する必要もある周到かつ遠大な陰謀、としては納得のいくレベル。
 胸に輝く天王路ヘッド、ケルベロスアンデッドゴールデンは出来るクワガタを圧倒。レーザー光線まで放ち、大爆発を引き起こす。 どちらが格好いいかといえば実に戦闘栄えするクワガタの方が格好いいのですが、格好良くても負ける時は負けるのだ。
 出来るクワガタとケルベロス理事長がド派手に戦っている頃、留守番組はヒューマンアンデッドの話を聞いていた。 始がジョーカーの力によって獣に戻らないようにと自己催眠をかけて意識を深く深く沈めた事により、 始の中に封印されていたヒューマンアンデッドの意識が表に浮上したのである。
 「私は、彼の内部から働きかけてきました。そして今では彼は、人間になりたいと願っています」
 て、やっぱり、おまえのせいか。
 これ、ジョーカーの僅かな感情の部分に訴え続ける事でジョーカーの中に理性と良心が芽生えてきた…… とかそういうニュアンスなのかもしれませんが、どうしても、ヒューマンアンデッド自体がある種のウィルスプログラムとしか思えません(笑)  なんか話し方が、機械的だし!
 「アンデッドが最後の一体となった時、何が起こるんですか?」
 自分達の始祖に問う広瀬。
 「バトルファイトに勝利した時、統制者の声が聞こえました」
 遂に明かされる、1万年前のバトルファイトの結末。
 バトルファイトの管理者が、その勝者に与えるもの――それは、望み通りに世界を変える力。 勝者の種族を繁栄させる、と伝えられてきたそれは、世界を思うがままに組み替える、神のごとき万能の力であった。
 剣崎「それで貴方は、何を望んだんです?」
 「――君なら、何を望みますか?」
 そこで時間切れして、意識を失うヒューマンアンデッド。
 いい質問が出た所で、引いてきました(笑)
 実は今作、後半戦に入って大きく盛り返してきた中で一つ欠けている要素がありまして。それは、“人間の守る価値” “人間の勝つべき理由”という部分。人間が主人公の物語なので、当然の前提であるが故に描かれていなかったというのはあると思いますが、 種族対立の概念や部分的な共感を描いてしまった以上、物語としてはそこに触れる必要があると思っています。
 ここに来てのヒューマンアンデッドの登場や、統制者への望み、というのはその布石かと思うので、うまく取り込んでくれる事に期待。
 一方、サーチャーの反応に向かっていた橘と睦月はぼろぼろになった金居を発見し、 それを追ってきたアンデッドが天王路である事に気付く。情報を得る為に金居を農場へと連れ帰り、天王路がケルベロスと融合したという、 衝撃の事実が皆の知る事となる。
 「人間が、アンデッドに……?」
 天王路博史にとって、社会に多くの被害をもたらしたこの凄惨な戦いの全ては、自らがアンデッドとなり、 バトルファイトの勝者となって統制者に出会う為の踏み台に過ぎなかった。
 登場自体は最終盤になってからの天王路理事長でしたが、これまで物語に散りばめられていた数々の要素を統合し、 実に立派なラスボスになりました。森次晃嗣さんの、どんどん気持ち悪くなっていく演技も素敵。
 始が目を覚まし、雰囲気悪いので傷ついた体のまま去って行く金居。 怪我による傷と体液の表現で緑色のスライムみたいなものを顔につけていたりするのですが、何となく格好いいという二枚目力。 目覚めた始は、仮面ライダー達を始末するべく迫る、ケルベロスアンデッドゴールデンの気配に気付く。
 「天王路? そうか、やつがアンデッドと」
 起きたばかりの始さん、超理解早い(笑)
 「カテゴリーキングの事は後だ。天王路を止める」
 バイクで並んで出撃した4人は、黒塗りの高級車と擦れ違い、お互いに停止。後部座席からゆったりと降り立つ理事長。……運転手、 健在なのか。
 「ライダーシステムを返還する気になったのかね?」
 剣「おまえがバトルファイトの勝利者になった時、何を願う?」
 ここで少し離れてバイクを停めた4人が、天王路の方を振り向く事なく、背中を向けたまま、というのが非常に格好いい。
 「むろん平和だ。二度と人間が、互いに争ったりする事のないように」
 始「その為に、現在の人類を全て滅ぼす……」
 「当然だ! 今の人類は、邪悪な心に満ちている! 全てを滅ぼし、新たな平和を求める人類を、誕生させる」
 睦「そして、おまえがその支配者となる」
 万能の力を得て新人類を想像し、支配する――よく居る誇大妄想的悪役となりましたが、天王路の場合は、 ここまでの設定の統合が大事だったので、この辺りの思想的背景などに関しては、おまけ程度で構わないと思います。
 橘「なぜボードを作った!」
 「全ては計画通りだ。広瀬はアンデッドを解放し、君たちは効率良く、封印してくれた! お陰で私は、 ケルベロスを完成させる事ができた。感謝してるよ」
 橘「俺たちは最初からおまえの欲望の為だけに動かされていたというのか。俺たちの理想は……正義は……」
 とうとう、就職の時点から騙されていた事が判明した橘さん、人生裏目すぎて、手の施しようがありません。
 「全て幻。ふ、ふふひはははははははは!! 変身」
 ケルベロスアンデッドゴールデンへと変貌する天王路。4人はベルトとカードを構えるとバイクをスタートし、ターン。
 「「「「変身!!」」」」
 バイクで走りながら仮面ライダーへと変身し、真っ直ぐの道路の先で待ち構えるケルベロスゴールデンへ突っ込んでいく、とここは、 気合いの入った演出。
 「まもなく、カテゴリーキングとジョーカーを封印する。その時、神が降臨するのだ。その光景を見るがいい。 人間とアンデッドが完全に融合した私こそが、最強なのだ」
 レーザーで吹き飛ばされ、戦闘場所、移動。遠雷の音が響く中、ケルベロス理事長は4人のライダーを叩きのめし、 投げ飛ばされたレンゲル……を受け止めたのは出来るクワガタ。ここで、走ってくる時のシルエットが無駄に格好いい。
 「さっきはこの坊やに助けられたんでねぇ。頑張ってくれよ。実現させようぜ、君が望んでいた平和ってやつを」
 奮起したレンゲルはケルベロス理事長に冷凍ステッキアタックを直撃させ、よろめくケルベロス。
 「私を……私を封印するつもりか。君たちをライダーに選び、その力を与えてやった私を」
 「全てのアンデッドを封印する。それが俺の仕事だ!」
 「違う! 私という新たな神を生み出す。それが、君たちの仕事だったんだ」
 どだい、2話の時点でほぼ破綻していた仕事ネタに関しては前回、「もうこれ以上はどうにもなりません、 というか無理」みたいな感じでジャイアントスイングで投げ飛ばし気味になりましたが、ここは綺麗に繋げました。 脚本家の、プロとしての意地を見る所です。
 「誰に命じられたわけでもない。俺は、全ての人を守りたい。そう願った!」
 エボリューションしたキングブレイドは装備を構えるが、黄金ケルベロスのビーム攻撃を受けてしまう。その時、 飛び出したカリスがダッシュしながらエボリューションし、ジャンプ攻撃を決めながらケルベロスの背後へ回る。
 「やれ、剣崎!」
 叩きつけるように降り出す雨。キングブレイドは5枚のカードをセットし、嵐の中、ケルベロスアンデッドゴールデンを挟む形で、 ロイヤルストレートフラッシュとワイルドずんばらりんスラッシュがクロスで炸裂する。二つのキングフォームの攻撃を同時に受け、 大ダメージを受けたケルベロスは逃げ出し、それを追った4人は、人に戻った天王路の姿を目の当たりにする。
 「馬鹿な……」
 理事長、視聴者の気持ちを代弁(笑)
 ラスボスではなかったのか天王路、そして2話連続で実質瞬殺なのか、ケルベロス……。
 「なんという事を……貴様達、何をしたのか、わかってるのか!」
 このままでは、バトルファイトの勝者は出来るクワガタかジョーカーになってしまう。待ち受ける結末は、 世界の破滅かクワガタワールドかの、二つに一つ。自分の正当性を主張する理事長だったが、その時背後に立つ、クワガタ王子。
 「封印されるのは……おまえだ」
 金居は変身すると、恐慌状態の天王路を一刀両断。
 「ジョーカー、最後に勝ち残るのは、俺だ」
 アンデッドを封印可能な力、自分を最後の勝者へと導くケルベロスのカードを入手する、出来るクワガタ。人間の時の容姿や台詞回し、 変身後の声のトーンなど、最終盤に来て実にいいキャストを当てました。
 睦「なぜだ! なぜ無駄に人の命を奪うんだ!」
 ク「奴はアンデッドだったんだぞ。それだけで充分だ」
 橘「もう……戦う力は無かった」
 剣「ただの人間だ!」
 一斉に出来るクワガタを責める3人ですが、ついさっきまで、封印する気満々だったじゃないですか貴方がた(^^;  クワガタにぶった切られた天王路が赤い血を流しているので、カードと分離した事で人間に戻ってはいたようですが、 その辺りの判断基準というか、切り替えはさすがに早すぎるような。
 仮にアンデッドとしての力を失っていても、財力と組織力と悪意を兼ね備えている困った人なわけですが、一体全体、 どうやって始末をつける気だったのか。まあそこで私刑に走ると桐生さんになってしまうわけですが、 しかし劇中でそれ以外のルートを提示しているわけではない(それこそ、単体で1年やれるようなテーマ性なので、 踏み込む余裕は当然ない)。
 勿論、クワガタさんの行為を肯定するわけにはいかないのですが、逃げを打つのは仕方ないとしても、 あまりに条件反射的な綺麗事になってしまった感はあります。睦月と剣崎はともかく、特に橘さん。
 始「無駄だ。ヤツはケルベロスを倒す為に、俺たちに力を貸したにすぎない」
 実際は睦月に爽やかにエールを送っただけで、特に手伝ってもいない(笑) 
 睦「そうなのか……? 嘘だったのか! 平和を実現させようって!」
 ク「嘘じゃないさ。俺はジョーカーを封印し、万能の力を得る。俺の平和に、人類など不要だ!」
 出来るクワガタに詰め寄った睦月ははたかれますが、まあ当然。
 簡単に、自分達の理屈と倫理観で異種族とコミュニケーションが取れるなど思いこんではいけないのです。
 というわけで、すっかりラスボスかと思われた天王路、まさかのリタイア。出来るクワガタ自体は好きですが、 天王路がこれだけやった後だと、ラスボスとしてはちょっと弱いのですが、さてどうなりますか。
 次回、ジョーカーを巡って激しく争う4人の男達!
 高まり続ける始さんのヒロイン力の明日はどっちだ?!
 ……よくよく考えると、ジョーカーが目覚めだしてから始さんのヒロイン力が激増したので、つまり、 『ブレイド』に全体として薄かったヒロイン力は全て、ジョーカーの中に眠っていたと。

 最終話目前にして結論:真ヒロインはジョーカー。

◆第47話「運命」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇)
 前回ラストで出来るクワガタにはたかれた睦月は剣崎が病院に連れて行き、天王路ルームを漁る橘さん。 始はそこで封印の石を目にするが、橘さんが触れた途端、光って消えてしまう。
 しまった! 裏目エネルギーがまた何かを起こした!
 統制者の意志を伝えるモノリスは姿を消したが、それは必ず、また現れる筈であった。
 「近い将来……最後の一体となった、アンデッドの前に」
 「そのアンデッドが望むものを、与える為に」
 睦月は軽傷ですぐに退院し、付き添った剣崎は睦月の平和共存の希望に対し、いいと思うけど「難しいよな、それ」と、 ドライな反応(笑) 剣崎はこう、“全ての人間を守る事”という自分の努力目標以外には、割とシビアです。
 そして何故か、睦月の同じ問いかけに対し始が「甘い」と言った事を聞き、妙に嬉しそう(笑) 今日も始さんのヒロイン力が、 唸りを上げて上昇していきます。
 「剣崎さんは……どうしてジョーカー、相川さんをそんな信じる事が出来るんですか?」
 「そうだな……なんでだろう」
 ここで足を止める剣崎は良かった。
 一方、橘はあの殺風景な部屋で回収してきた資料を調査しながら、バトルファイトを収める手段を模索していた。
 「ジョーカーが……キングを封印すれば……全てが滅びる……のか……」
 睦月は迎えにきた望美ちゃんと川原でデート、始さんは天音ちゃんを写真撮影、と、一時の穏やかな時間。
 (いつまで……このままでいられる……)
 だが、店に戻ったらカウンターに、クワガタ王子が座っていたーーーーー。
 今の時間を守ろうと、出来るクワガタに和平交渉を試みる始さんだったが、言うまでもなく始さんは、 交渉関係のスキルなど一つも持ってはいなかった。そして出来るクワガタの手には、 アンデッドの封印を可能とするケルベロスのカードが握られている。切り札を手にしたのは、出来るクワガタの方だったのだ。
 「ほぅ……これはあの雪山の時の……」
 栗原家の家族写真から、そもそもあの雪山でカリスと戦っていたのは出来るクワガタだったと判明。 そして戦闘中に吹っ飛んだクワガタの剣が突き刺さったのが、栗原父の死因であった。
 「おまえがここに住み着いた理由がわかった。父親を殺したのは自分だと、教えてやらないのか」
 「貴様……」
 栗原父が巻き込まれて死んだ、と言及されていたカリスの雪山の戦闘相手は特に誰でも良かったのでしょうが、 因縁付けを強くする為か、出来るクワガタさんが割り当てられました。本編で描写されていない部分で、 割と長い間ちまちまアンデッド同士の戦いがあった、という事の補強にもなったと思います。
 「おまえは俺を封印する事はできない。俺を封印した時、おまえの勝利が確定する。 ジョーカーの勝利――それはバトルファイトのリセット。全ての生命の消滅を意味する。あの親子も消滅する。おまえのせいで。 ジョーカー、それがおまえの宿命」
 森の中で対峙する、カリスと出来るクワガタ。クワガタ王子がカリスの動揺を誘って滅多切り。
 「人間になど愛情を持ったのが間違いだ」
 そこに天音から連絡を受け、サーチャーの反応で剣崎と虎太郎が駆けつける。
 「始を封印などさせない!」
 「ふっ、ふはは、ここにも居たなぁ。ジョーカーをかばい、世界を滅ぼしてしまおうとする馬鹿者が!」
 変身したブレイドだったが、投げつけられたケルベロスカードからカリスをかばい、カードに何か(カブトムシカード?)吸われて、 変身解除。滅多打ちにされたカリスも変身が解け、かつてなくボコボコにされる始さん。今度こそ封印の危機に陥るジョーカーだったが、 剣崎と虎太郎が出来るクワガタに組み付いて、それを阻止。叔父さん、姪っ子のために根性を見せました。
 「ジョーカー……」
 2人をもぎ離した出来るクワガタは、逃げて行った始を追う……愛され守られ追われ、 この最終盤に来て始さんのヒロイン力が留まる所を知りません。これがジョーカーの、本当の力だ!
 よろよろと逃げていた始は気絶。連絡を受けて現場へ移動中だった睦月に拾われ、睦月は駄目師匠へ連絡。一旦、 海辺の廃坑?のような所へ運び込まれ、戸板に乗せられる(笑)
 微妙に見覚えのある場所ですが、『未来戦隊タイムレンジャー』2話で使った所かな……?
 もはや標的でも何でもない為、出来るクワガタに捨て置かれた剣崎にも連絡を取り、始の無事を託される橘と睦月。
 だが――
 「睦月、リモートのカードを渡せ」
 考えに考え抜いた末の橘の結論。それは、ジョーカーの中に封印されたヒューマンアンデッドをレンゲルのリモートにより解放した上で、 ジョーカーと出来るクワガタを封印。ヒューマンアンデッドを最後の勝者とする事で、人類と世界を守るというものだった。
 ここで、睦月にも「選択」を突き付けてきました。
 ただまあこの理屈だと、それこそ嶋さんと女王様辺りを解放して金居だけ封印すれば平和共存可能なのでは?  という話になってしまうので、橘さんが考えているほどリモートの能力が都合良くないか、嶋さんと女王様を解放してしまうと、 レンゲルがまたエースに乗っ取られてしまうという面倒くさい仕様か、と考えておくべきか。
 「剣崎さんは、承知しているんですか?」
 「……」
 「……嫌です」
 「わかっているだろ?! あいつはジョーカーだ」
 「だけど! 相川始はどうなるんですか。剣崎さんは、信じています。ジョーカーは世界を滅ぼしたりしないって」
 駄目師匠、駄目弟子に剣崎を優先される(笑)
 折角ここで持ち上がった「選択」なのですが、睦月の始に対する意志というより、橘<剣崎、という話になってしまったのは勿体ない。 まあ睦月、殴り合うか鼻で笑われるか以外で、ほとんど始さんと絡んでなかったしな……。
 「俺も、信じたい。誰でも、運命と戦う事は出来る筈です。違いますか」
 と、思ったら、睦月のテーマと繋げつつ、睦月の意志も出してきました。
 前半、睦月と彼女の会話で「運命」云々の話をさせているのですが、これは前半戦のサポート参加の内から會川昇が作品に仕込んできていたキーワードであり、 こういった要素の統合作業は、実に巧い。光とか闇とか過去話まで拾えるのかはわかりませんが、扱いの悪かった睦月も何とかこの最終盤、 滑り込みで物語の中に組み込んできました。
 あくまでジョーカーを封印しようとする橘朔也――、運命と戦う道を信じようとする上城睦月――、 向かい合った2人はその思いと意地から、ベルトを構えて対峙する。
 この人達はどうしてすぐに、殴り合いの準備を始めるのか(笑)
 橘さんは、身内に銃を向けるの何度目だ。
 シーンとしては、向き合ってベルト構えて変身する2人は凄く格好いいのですけど。
 後、変身シークエンスの特性を活かし、ベルト装着後、宙に浮かぶ変身マークが、マークの方から向かってくる睦月と、 マークの方へ歩いて行く橘、というのは鮮やかな対比になりつつアクションに繋げました。
 振り下ろされるマジカルステッキに対し、横転撃ちで師匠、レンゲルを瞬殺。
 「やっぱり……強いですね、橘さんは」
 あーそこ、無理に持ち上げなくていいから。
 「ばかやろう」
 ギャレンは変身の解けた睦月を地面に横たえ、意識を取り戻した始はそれを目にする。
 この、変身から一瞬で決着が付くというのは、『椿三十郎』(でしたか? クライマックスに有名な決闘シーンがあるのは。全然、 間違えているかもしれないけど)とかのイメージか。
 抵抗する力の無い始に、銃口を向けるギャレン。だがその時、始の携帯に天音ちゃんから電話がかかってくる。
 …………使用が初だったかどうか覚えていないのですが、携帯持っているのか、始さん。いや、 ティターンに罠を仕掛ける時に剣崎に携帯を借りていたので、持っていたか持っていなかったちょっと考えたのですが、要するに、 始さんは携帯を持っているし使えるけど橘とか睦月とかのメールアドレスなんて登録している筈がなかったという事か。
 目前で交わされるあまりに“人間らしい”会話に、揺らぐギャレンの銃口。
 そして――――――
 「ジョーカーは、相川始は、渡さない!」
 橘朔也は、ジョーカーを探し求める金居の前に単身立ちはだかる。
 遂に、ヒロイン争奪戦にノミネート(おぃ)
 ジョーカーが勝ち残ればバトルファイトがリセットされ、この世界は消滅し人類は滅ぶぞ? という言葉に対して力強く、
 「そうなるとは限らない」

 フ ラ グ 立 て る な

 「信じてるのか?」
 「俺の友がな!」
 もともと職場の先輩後輩という事もあり、これまで「仲間」という表現は用いていたのですが、ここで剣崎を「友」と呼ぶのは、 凄く格好良く決まりました。お互いが無職になった事で、社会的関係が取り払われた、というニュアンスも含んでいるのかもしれません。 にしても、橘さんが単体でこんな格好良く変身したの、いつ以来だ。
 変身したギャレンは銃撃を叩き込むが、出来るクワガタの張るバリアに阻まれてしまう(カブトムシの力?)。 ジャックフォームからの空中射撃も通用せず、翼を斬られて落下したギャレンは出来るクワガタに追い詰められ、 ケルベロスカードを突き付けられるが、その力でアンデッドカードを奪われる寸前、腕を掴んで零距離射撃。
 「この距離なら、バリアは張れないな!」
 強引な連射にもがくギラファアンデッドは力任せに剣をギャレンに叩きつけ、砕け散るマスク。
 ここでマスクの下の流血描写が入りますが、今作ではトライアルEによる剣崎への銃撃、前回の天王路の最期、 そしてふと思って確認したら前年の『爆竜戦隊アバレンジャー』でも終盤の担当回でやっていたので、諸田監督のこだわりか。
 「俺は全てを失った。信じるべき正義も、組織も、愛する者も、何もかも。だから最後に残ったものだけは、 失いたくないっ。信じられる、仲間だけは!」
 この局面でも、浸る。
 先の台詞で剣崎を「友」と呼ぶ事で、ここの「仲間」には、剣崎以外の面々……恐らく始も含むのであろうな、 と橘さんの瀬戸際の決断を含ませているのが、巧い。
 反へたれ粒子MAXモードによる至近弾ラッシュは遂にギラファアンデッドを打ち崩し、開くバックル。だが、 取り出した封印カードが最後の抵抗ではたかれ、海に落ちてしまう。
 ここに来て、かつて無かった驚愕の展開(笑)
 「ジョーカーが残り、世界は滅びる。……バカだな、お前は」
 「うぁぁぁぁぁぁ!!」
 咆吼したギャレンは、最後の力を振り絞り、弱ったギラファに体当たりして岸壁から海へ落下。緑色の光が海中で輝き、 出来るクワガタと橘の反応は、もろともに消える――。
 さすがに回想は出ませんでしたが、出来るクワガタの台詞で「バカ」という単語がチョイスされたのは、 桐生さんの「もっとバカになれ。真面目すぎるんだよ、おまえは」という台詞を受けての事ではないかと思われます。
 最後の最後に責任感よりも、1人の人間として自分自身の信じたものを選んだ橘……始から話を聞いて橘を探していた剣崎、睦月、 虎太郎は、海岸に流れ着いた大量のアンデッドカードを目にする。剣崎はその中にダイヤのエースのカードを見つけ、愕然と握りしめる。 果たして、橘朔也は本当に死んだのか……?
 「橘が、死んだ――」
 起き上がった始さん、疑問系というより断定に聞こえるのですが、剣崎から電話で連絡を受けたという感じでもないので、 アンデッドレーダーによる直感か?
 傷ついた体でよろめきながらも現場へ向かおうとする始だったが、その前に、封印の石が現れ、奇妙な光を放つ。
 「やめろ…………。俺は何も望まない。やめろぉぉぉっ!!」
 ジョーカーの姿へ変わってしまう始。石の中から現れるコオロギ?軍団。バトルファイトは終わり、 ジョーカーが勝者となった世界は滅びてしまうのか。遂に、絶望に満ちた最後の戦いが始まる――。
 世界を滅ぼすモンスター軍団が出現し、二転三転したラスボスはどうやら、神、というか「運命」というものになりそうです。 作品の中に巧く、石ノ森イズムを取り込んだという流れでしょうか。
 ジョーカーとして生まれた運命、仮面ライダーに選ばれた運命、滅びに向かう世界の運命――。
 果たして人は、運命と戦い、打ち勝つ事が出来るのか。
 「あのさぁ。もし運命なんてあるとして、でも、運命と、戦う事も出来るんじゃないかな?」 (剣崎一真/22話)
 いよいよ、ラスト2話。

◆第48話「史上最大の裏目」◆ (監督:長石多可男 脚本:會川昇)
 「本当に居るんですかね……人間を襲うような大きな生き物が」
 通報を受けて恐る恐る地下駐車場へ向かった2人の警官が目にしたのは、天井から落ちてきた靴……そして鈴なりに群がる怪物の軍団。 モンスター達に囲まれる警官だが、そこへ駆けつけた剣崎が、ブレイドとなってモンスターを切り払う。
 「お前達が何匹いようと、全て倒す!」
 その姿を見た警官が「仮面ライダー……」と呟いた所からOP、と非常に格好いい入り。
 一時期流行っていた、都市伝説仮面ライダー的な要素を含んでいた今作ですが、最後にもう一度それを持ってきて、 「仮面ライダー」を巡る物語、というのを強調してきました。
 砂浜に立つねじれたモノリス、は凄く長石多可男なカット。
 石の中からはモンスター軍団が次々と出現し、それと戦うブレイドとレンゲルは疲労困憊。栗原母子は農場に匿われ、人間社会はこの、 謎の怪物ダークローチの襲撃を受け、その被害は徐々に拡大しつつあった……。
 モンスターの名称はダークローチという事で、前回そんな気はしたけど、その単語を使いたくなかったのでコオロギ?とか書きましたが、 やっぱりGの軍団なのか。
 急展開による世界の危機、というのはそんなに派手な事が出来ない予算の関係もあって表現が難しい(真に迫りにくい)所があるのですが、 前回ラストから少し時間を飛ばす事により状況の激変を関係者のリアクションで物語に馴染ませたのは、巧い構成。映画的、ともいえ、 短時間でクライマックスの緊迫感を盛り上げる事に成功しました。
 (倒しても、倒しても、いつまで続くんだ……!)
 G軍団を蹴散らした睦月は彼女に遭遇。そこに剣崎の応援に回って欲しいと連絡が来て走り出そうとするが、 望美は思わず「行かないで」と止めてしまう。
 「あいつらは、一匹二匹じゃない。何千も居るかもしれないんだ。俺たちが戦わなきゃ」
 「わかってる。でも、一緒に居てほしいの」
 「必ず……帰ってくる」
 「睦月!」
 最終回目前という事でかエキストラも多めで、人々を襲うG軍団。CGで水増しできない場面では、 5体ぐらいが限界みたいですがG軍団!
 「全ての人を守り抜く、絶対に!」
 懸命に戦い続けるブレイドだが、その戦いには悲壮感すら漂う。疲労から窮地に陥ったブレイドを駆けつけたレンゲルが助け、 2人はなんとかG軍団を撃破。その撃破数は既に、この一週間で100体以上となっていた……。
 「剣崎さんだってわかってる筈です! あいつらが発生している原因は、ジョーカー……相川始だ!」
 事態の発生は一週間前――橘が消息不明となり、その橘が守った筈の始まで姿を消した後。
 「アンデッドは全て封印されたのに、何も起こっていない。ジョーカーが残ったら世界が滅ぶなんていうのは――」
 剣崎の言葉を遮るかのように、新たにカテゴリ不明のアンデッドがサーチャーに反応し、それは1体どころか次々と反応を増殖させていく。 それこそが、ダークローチ軍団、封印の石から無限に湧き続ける、世界を終わらせる死の軍団であった。
 それから一週間……剣崎と睦月は協力してダークローチ軍団を倒し続けていたが、その戦いも体力的に限界を迎えようとしていた。 ジョーカーはやはりジョーカー――世界を滅ぼそうとしている。あくまで始を信じ続ける剣崎だが、さすがに四面楚歌。そんな中、 農場に匿っていた天音が喫茶店へ向かってしまう。
 折悪しく、下宿先を覗きに来ていたジョーカーに呼ばれるかのようにG軍団が集合。喫茶店を襲いそうになるが、 それを止めるジョーカー。
 「あの家には近づくな! 俺はお前らの親でも何でもない。お前らを生み出したのは、俺の意志じゃない!」
 始は何とかカリスに変身し、付き従うG軍団をはたくが、すぐにジョーカーの姿に戻ってしまう。
 「やはり、駄目なのか……」
 座り込んだジョーカーは、自らの刃でその胸を突くが……
 「ふふふ、ふふふ、アンデッドが、死ねるものか……」
 「始、またその姿に……」
 「ジョーカー……」
 そこへ、天音ちゃんの救出に成功し、その見た怪物の姿を追ってきた剣崎と睦月が現れる。
 立ち上がったジョーカーの影から生まれる、Gの軍団。
 「ジョーカーが勝ち残った時、ダークローチは生まれる。全ての命を滅ぼす為に」
 「始……嘘だろ……」
 「剣崎さん、俺はやります。――変身!」
 変身マークに、ダッシュで飛び込んでいく睦月。
 前回の橘さんと似たような事を思いついた剣崎は、レンゲルにリモートでアンデッドを解放させ、 バトルファイトのチャンピオン決定をご破算にさせようとするが、レンゲルのリモートはその効果を発揮しない。 もはやバトルファイトには決着が付いたと認定され、アンデッド達の封印状態は次回大会の開幕まで固定されてしまったのだ。
 「どうやったらこいつらを止められるんだ!」
 「答は一つです……ジョーカーを封印する!」
 実はまあ、この状況でジョーカーを封印したらバトルファイトはどうなるのか? というのは、 シミュレーションされていないのですが……設定上はどうなるのか、ちょっと知りたい(笑) “最後に残った1体が封印される” というのは、統制者としては想定していないイレギュラーな状態となる筈なので、ルール違反で没収試合、 でいっそ思い切り全消滅させられそうな気もしないでもありませんが(^^;
 「俺がやる! 俺の責任だ!」
 レンゲルを押しとどめ、ジョーカーへ突撃する剣崎だが、その切っ先はジョーカーの寸前で止まり、変身解除。
 「剣崎……」
 ジョーカーは剣崎を殴って去っていき、それを追うレンゲル。頬の傷跡から流れる血をぬぐう剣崎は、何かを思いつく……。
 一方、ジョーカーを追ったレンゲルは、始と接触。
 いったいどこで探してきたのか、すすき野原の背後に観覧車が回っているという、凄いロケーション。
 「なぜ来た」
 「あなたはもう相川始じゃない。完全にジョーカーに戻ってしまったんだ」
 「だったらどうする?」
 「あなたを、封印する」
 「おまえには無理だ」
 「アンデッドを封印する。それが仮面ライダーだ!」
 散っていった橘の責任感を継ぎ、迷える剣崎に代わって「仮面ライダー」であろうとする、睦月。
 「剣崎さんに代わって、俺が戦う!」
 レンゲルはパンチから冷凍ガスキックを放ち、始は自動的にジョーカーに変身。その影から湧き出すGの軍団。
 「こいつらは全ての人類を滅ぼす。あんたが守ろうとしていた、あの親子も。それでもいいのか!」
 「俺には…………止められない!」
 戦いは始をジョーカーへと変え、ジョーカーはもはや封印の石に操られる破滅の使者として、始の意志を無視して戦い続ける。 新必殺技・毒ガステッキで飛びかかるレンゲルだったが、カウンターでばっさり。
 出来るものなら自決を、まで考えていたのに、睦月に封印されるはむかつくから嫌だ、とか、 反射的にカウンターでばっさりいっちゃう、とか、最後の最後まで、 始さんは睦月が嫌いだなぁ。
 「望美……」
 変身が解け、海岸に倒れる睦月。公開告白がスルーされたのが最大の敗因だったけど、望美ちゃんは実に扱いが適当で、ヒロイン力、 弱い。ジョーカーは最後の理性を動員してかその場を立ち去り、広瀬から連絡を受けて、ぴくぴくしている睦月を回収する剣崎。
 「もう、あなたしか、いない。あいつを倒せるのは……」
 けっこう腹から出血して気絶しましたが、生死は不明。
 結局最大の見せ場は、ブレイドの大剣を借りて蜘蛛エース倒した所だったか。……それだと睦月の、 になるのでレンゲルとしてだと……初登場時に問答無用でブレイドを蹴り飛ばした所かなぁ。
 多数ライダー路線は一旦『カブト』で限界を迎えますが、1シリーズに4人出すと、やはり使い分けが難しいな、と。
 「来い剣崎……俺を封印するのは、おまえだ」
 自分の前に剣崎が現れるのを、待ち続ける始。封印の石からは無慈悲にダークローチが生まれ続け、 新たな獲物を求めて飛び立っていく……人類は、世界は、滅びを迎えてしまうのか。次回、最終決戦。
 今回はとにかく、一旦流れの切れた前回ラストから少し時間を飛ばして、主人公達とは別の視点から入る事で視界を広げ、 一気に導入で緊張感を高める、という構成がお見事。個と個の戦いから、世界の運命を懸けた戦いへの転換において、 映画的な盛り上がりを作る事に成功しました。

◆最終話「未来、悲しみが終わる場所」◆ (監督:長石多可男 脚本:會川昇)
 OPテーマをBGMに、キングフォームでG軍団を切り払いまくるブレイド、と凄く格好いい入り。前回と重ねる形で意識した導入、 とも思えます。
 「戦え……俺と、戦え!!」
 キングブレイドは暴風のごとくダークローチを蹴散らし、その光景を目にした虎太郎は、 G軍団を倒すもその場にへたり込む剣崎に駆け寄る。元凶であるジョーカーを探さず、対処療法的にG軍団と戦い続けるブレイド。
 「始を封印する、覚悟がつかないのかい? でも……」
 「虎太郎、俺を殴ってくれ!」
 「剣崎くん……」
 さすがの僕もそれは引くよ、という顔になる虎太郎。
 「眠くてしょうがないんだ。今眠るわけにはいかない」
 締め切り間際の作家みたいな事を言い出す剣崎。
 「キングフォームのせいだよ。こんな事してたらまたおかしくなって、今度こそジョーカーになってしまうかも」
 「始との決着はつける。信じてくれ」
 それは、「締め切りには必ず間に合わせる」みたいで、信じにくいよ剣崎くん!
 「始……おまえに世界を滅ぼさせたりはしない。おまえだって、そんな事望んでいない筈だ!」
 キングフォームでひたすらG軍団を切り捨てるブレイドは、夜の街で襲われている人影を見つけて救出。その人物はなんと、 チベットに高飛びしたまま忘れ去られそうになっていた烏丸所長だった!
 「剣崎、それがおまえのキングフォームだ」
 何故、格好つけて言う(笑)
 所長、この土壇場でも相変わらずの駄目な人ぶりを見せつける。
 「遅くなってすまなかった。天王路に、命を狙われていた」
 存在を黒歴史にされつつあった所長、最終回でまさかの再登場。 ライダーシステムのコンセプトを考えると天王路と繋がっていた可能性が濃厚でしたが、 「てんのうじにいのちをねらわれていたからぼくはわるいにんげんじゃないよ!」とやや強引に無実を主張してきました。 という事は結局所長は、天王路に騙されたり伊坂に洗脳されたりを繰り返す、 ただの迷惑なおっさんだったという事に(笑)

 橘さんの未来か!

 実際のところ天王路のポジション自体はまんま所長でも成り立ったので、役者さんのスケジュールの都合による途中退場で黒幕を回避して、 最終回だけ何とか出演してもらった、という可能性もありそうですが(^^;
 別の仕事の役作りなのか、むしろ初期が染めていたのかはわかりませんが、所長が全体的に枯れた感じになっているのは、 妙に逃げ回っていたリアル感(笑) (いや、今回の為の役作りかもですが)
 所長の言い訳を聞いている内にG軍団の不意打ちを受けた剣崎は武器を落とし追い詰められてしまうが、 何者かが落ちた剣を拾ってダークローチをなぎ払う。剣崎の危機を救ったのは、なんと橘朔也。 ギラファアンデッドを封印するも死んだと思われた橘は、所長に助けられて生き延びたのだった。
 たぶん、大陸からボートで日本上陸を目指していた所長が、海にぷかぷか浮かんでいた橘さんを拾った。
 「いかん、キングフォームの影響が、想像以上に進んでいる」
 気絶した剣崎は2人によって農場へ担ぎ込まれるが、ダークローチ軍団の襲撃は激化を辿り、 とうとう全国に非常事態宣言が発令されていた。増殖し続けるG軍団の数は膨大で、もはや仮面ライダー1人はおろか、 警察や軍隊でもどうにもならない。
 ここで、TVニュース→更にその中継も襲われる、と見せる事で、前回から続いて、事態の拡大の推移の描き方はお見事。 割とこういうのは難しくて、雰囲気出しに失敗する事はままあるので(お金あればロケとかセットとか大量のエキストラ導入で雰囲気出せるけど、 そういうわけにもいかないので)、かなり成功していると思います。
 「俺がヤツを封印する! これは俺たちの責任だ!」
 剣崎のベルトを手にジョーカーの封印に向かおうとする橘だったが、意識を取り戻した剣崎が前に立ち、ベルトをもぎ取る。
 「俺は考えも無しに、ダークローチと戦っていたんじゃありません! 戦って……戦って……待っていたんです!」
 「待っていた……? 何をだ」
 「もしも、おれが失敗したら……その時は、お願いします」
 「剣崎。君は本当に、ジョーカーを封印するつもりなのか。それとも……」
 何かに気付く所長。
 いい笑顔で出て行く剣崎。
 剣崎さんは可愛げのあるいい笑顔出来るので、活用場所が少なかったのはちょっと勿体なかったな、と。 役者さんの演技の上達もあるでしょうから、前半は使えない技だったのかもしれませんが。
 残されたぽんこつ軍団は、所長に剣崎の真意を問う。
 「私が考えている通りなら、確かに人類は救われるだろう……。だが……」
 目頭を押さえて悲しそうな演技で、急速にちょっと怪しげだったけど最初からいい人だったんだよアピールする所長。 所長に関してはもう、役者力で誤魔化してもらうしかない感じですが。
 農場を出た剣崎は、かつて14話において、ギャレンのファイアー分身重力キックを受けた始を看病していた山小屋で、 待ち受けていた始と再会する。
 「懐かしいな」
 「ああ。この場所から、おまえと、俺は始まったのかもしれない」
 「だから、ここで終わるんだ」
 つまり、仲人は橋の下に蹴り飛ばした橘さんか。
 「始、おまえは本当に世界を……人類を滅ぼしたいのか?」
 「俺にはもうどうにもならない。俺はそうするように作られた。俺は……ジョーカーだ」
 自らの運命を受け入れて始は咆吼し、吹き飛ぶ思い出の廃屋。2人は変身し、切り結ぶ、カリスとブレイド。
 そもそもは商業的要請が強いと思われ、強引な面も多々あったライダー同士のバトル展開を、敢えて最後の最後まで貫く事で、 物語上の必然性を付けていったのは面白いところ。
 街ではG軍団が暴れ回って人間社会を破滅へ近づけていき、病院では安静状態だった睦月が目を覚ましていた。
 ブレイドの電光回転キックに対し、ビューティーセレインアローを放たず、武器で打ち払うワイルドカリス。
 「本気で戦うつもりはないのか始!」
 「なんだと……?」
 一度、人間の姿に戻る2人。
 剣崎を前にすると、始さんがやたらにジョーカーの力を押さえ込めて話も通じますが、これからわかる事は、 如何に始さんが睦月を嫌いかという事です!
 「おまえは俺に、わざと封印されるつもりだったんだな」
 「それ以外に……方法があるか?」
 今の始/ジョーカーは、完全に自分の意志で行動する事は出来ず、攻撃を受けるほど、闘争本能に支配された獣へ戻ってしまう。 そんなジョーカーを倒す力を持っているのは、剣崎ただ1人。
 始側の理屈としては、戦闘するほど勝手に強くなるので、睦月は余計な事するな、という事だった模様。
 本音はやっぱり「剣崎ならいいけど、おまえに封印される気はない」としか思えませんが(笑)
 事ここに至って、あれほど高いヒロイン力を発揮していた天音ちゃんへの愛情よりも、封印されるなら剣崎以外は不許可、 というのが勝っている感じなのが凄い。
 「始…………。アンデッドは全て封印した。おまえが最後だ。ジョーカー!」
 「俺とおまえは、戦う事でしかわかりあえない!」
 思えば出会い頭の挨拶は、いきなりのパンチでした。
 始はジョーカーの姿へと変わり、影から湧き出すG軍団。
 「変身!!」
 剣崎はブレイドへと変身し、ダークローチを蹴散らしながら、ジョーカーへと迫る。そして今度こそ、 獣となって友へと向かうジョーカー!
 「始、それでいい。本気で来い。ジョーカーの力を全て、俺にぶつけろ!」
 敢えて封印を望む始ではなく、本気のジョーカーと戦おうとする剣崎、その真意とは――。
 「剣崎がアンデッドになる?!」
 「剣崎は自分から、ジョーカー、アンデッドになるつもりだ」
 13体のアンデッドの過剰な融合――キングフォームの致命的な副作用を故意に起こす事で、一度はなりかけたジョーカーに、 自らの意志で変貌する。既に封印されたアンデッドはこのバトルファイトではもはや解放する事は出来ないが、 新たなアンデッドを誕生させる事は出来る。
 自らをジョーカーにする事でアンデッドが二体になれば、バトルファイトの勝者は居なくなり滅びの運命は回避される……これが、 剣崎の辿り着いた結論であり、敢えてキングフォームでの戦闘を繰り返していた目的であった。
 「剣崎が……人間でなくなる」
 飛び出していく橘。
 「神様……」
 思わず祈る広瀬。
 「神などいない。……このバトルファイトも、元はといえば地球に住む生物たちが望んだものだ。己が進化だけを望む闘争本能。 それら全てが融合して、バトルファイトというシステムを生み出したのではないだろうか」
 急に語り出す所長。
 あなた、チベットで調べた結論がそれなのか(笑)
 ただ、どうしてバトルファイトにバッドエンドであるジョーカーが存在しているのか、という点については、 万能の力を得るバトルファイトが生物種のエゴから生じたものならば、その舞台における一つのデメリット、 統制者の用意したリスクなのではないか、という推測は立つようになりました。
 居ても立っても居られず飛び出した橘の前には、大地を埋め尽くすG軍団が立ちふさがる(いい絵)。 剣崎の真似をしてG軍団を轢き殺していく橘だが、こけて、囲まれる。
 一方、痛む体を引きずって病室を出た睦月もまた、G軍団の襲撃を受けていた。望美ちゃんも襲われ、 最終回にちょっとヒロイン力を発揮してみる。
 「人間はアンデッド達と戦い、封印するしかない。私もそう思っていた。だが剣崎は、別の道を選ぼうとしている」
 ひたすら格好良く語る所長だったが、その時、遂に農場の中にまで飛び込んでくるG軍団。
 所長、見せ場ですよ!
 …………一緒に壁に張り付いていて、駄目っぽい。
 叔父さん…………も駄目っぽい。
 共に戦ってきた仲間達に危機が迫る中、キングブレイドとジョーカーの凄絶な戦いは続いていた。 ロイヤルストレートフラッシュとジョーカースラッシュがぶつかり合い、吹き飛ぶ両者。素手での殴り合いの果て、 クロスカウンター気味にお互いのパンチが入り、足が止まる2人。そして――ブレイドの体に異変が起こる。
 「俺は……」
 キングブレイドに融合した全身のアンデッドの紋章が淡い光を放ち、キングカブトが脈打ったその時、各地で、 Gの軍団が次々とかき消えていく。橘、睦月、望美、農場の面々……命の危機を脱する仲間達だが、その異変の正体を悟り、 崩れ落ちる所長。
 「剣崎……」
 サーチャーを確認した広瀬と虎太郎も、何が起きたかを知る。
 「あれだけあった反応が消えてる。一体も居ない。いいえ……ジョーカーの反応が……二体」
 「今だ剣崎、俺を封印しろ」
 限界に達し、封印を望む始/ジョーカーの前で、変身を解除する剣崎。
 その口元に乾いた血は赤い。
 だが、指先から滴り落ちた血の色は……緑。
 「剣崎!」
 スペードベルトが落ちると、その下には、ジョーカーのベルト。
 今遂に、剣崎一真は人間から、アンデッドと化した。
 今まで外からベルトを巻いていた主人公の体に、ベルトが生えている(象徴としてはつまり、“真の改造人間になった”)というのは、 かなりインパクトのある映像。人で無くなったものが人の為に戦うのが原典『仮面ライダー』のテーゼだとすると、 人の為に戦っていたものがその果てに人で無くなる、という逆をついた本歌取り。
 カメラが顔に戻ると、口元の血も緑に。
 「剣崎……おまえ……おまえは…………アンデッドになってしまったというのか」
 封印の石による呪縛が弱まった始は、人間の姿へと戻る。
 「最初から、そのつもりで」
 前半から始さんの緑の血の表現はありましたが、前々回の橘、前回の睦月と来て、諸田監督からのバトンを引き継ぐ形で、 血の色の演出が綺麗に繋がりました。前半は、このコンセプトと脚本でどう撮ればいいんだーー−、 と演出陣が発狂寸前な感じもありましたが、このラスト5話は、年間通して関わってきた諸田監督と長石監督が、非常にいい演出。
 仮面ライダーとして戦い続けた剣崎一真は二体目のジョーカーとなり、2人の前に出現する、封印の石。
 「……統制者が言っている。アンデッドを二体確認。バトルファイトを、再開しろと」
 「最後の一体になるまで、か――」
 拳を固めた剣崎は――
 「俺は、戦わない」
 封印の石を殴る!
 石はバラバラに砕け散るが、すぐに再出現し、いずこかへと飛び去っていく。
 残り時間と戦闘のカタルシス的に、ラスボス化した石と2人のジョーカーでもうワンバトルあるのかと思いましたが、 砕けるも復活を描写して消失。それは神かもしれないし神でないかもしれないが、生物のより強く生きるというエゴから生まれた、 永遠の宿命として存在し続ける……(最後の飛行描写のせいで、ちょっと宇宙からの何かっぽくなりましたが!)。
 「剣崎……」
 「来るな!」
 近づいてくる始に対し、森の方へと後ずさる剣崎。
 「剣崎……」
 「俺とおまえは……アンデッドだ。俺たちがどちらかを封印しない限り、バトルファイトは決着せず、滅びの日は来ない。だから、 俺たちは戦ってはいけない。近くに居ては…………いけない」

 なんだこのラブ

 「いくら離れたところで、統制者は俺たちに戦いを求める。本能に従い戦う。それが、アンデッドの運命だ」
 「俺は運命と戦う。そして勝ってみせる!」
 口元の緑の血をぬぐった剣崎は、力強く応える。
 「それが……おまえの答か」
 「おまえは、人間達の中で生き続けろ」
 「どこへ行く」
 「俺たちは二度と会う事もない。触れあう事もない。……それでいいんだ」
 「剣崎……」

 なんだこのラブ

 剣崎はいい笑顔で鬱蒼と茂る山林の中に姿を消し、それを追った始だが、その行方を見失ってしまう。橘と睦月がやってくるが、 剣崎の姿はない。どこにもない。
 「剣崎……剣崎ぃぃぃ!!」
 橘の絶叫は、打ち寄せる波に吸い込まれていき、応える者は居ない――。
 ・
 ・
 ・
 かくてバトルファイトの決着は引き延ばされ、世界の滅亡は寸前で回避された。
 烏丸所長はハートの2以外のカードを全て回収し、鞄に収める。
 毎度の事ですが、アンデッドカードの扱いは割とぞんざい(笑) 収めた鞄の仕切りとか、超そんざい。
 後、その人にカード預けていいのか。
 黒く見たらとても問題だし、白く見ても、その人、電車の網棚とかに鞄ごと忘れそう。
 途中でチベットに高飛び後、小包とかメールとかだけの登場になっていた烏丸所長ですが、何となく最後にまとめる役に。一応、 色々と問題だらけだけど正義と人類の平和を愛する人だった、という事になりました。あのままフェードアウトするとあんまりだったので、 最終回に出せたのは良かったと思います。それほど破綻しない役回りでしたし。 惜しむらくはやっぱり剣崎との上司と部下との関係とか前半戦があれだった為に特に描かれていないので、 その辺りの盛り上がりは出しようが無かった事ですが(無理矢理、役者さんにその気になって出してもらってはいますが)。
 ここから、音楽が流れ出してEDクレジット。
 剣崎が居た場所を見つめる、広瀬、虎太郎、橘――。
 「剣崎がどこに行ったのか、それはわからない。奴は人である事を捨てる事により、人を、世界を守った。……だが、 彼は今も戦い続けている。どこかで、運命と」
 ポジション的には、ラストのナレーションは観測者である虎太郎になるかと思ったのですが、橘さんがゲット。
 愛され度の差か(笑)
 一応前回、虎太郎の書いているルポ『仮面ライダーという仮面』から一週間を振り返るモノローグに繋げたのですが、 これ自体は最後には使われませんでした。個人的に、最後に虎太郎がこの戦いを振り返る形で締めるのかなーと予想していたのですが、 外れた。
 睦月は望美ちゃんといちゃいちゃしながら、日常へ戻っていく――このカップルは出てきた時は悲惨な展開しか予想できませんでしたが、 まあ、最終的には落ち着いて良かった。睦月は道中、死相80%ぐらい出ていましたが、これも女王様パワーか。 橘さんも海の底から甦りましたが、あまり前半のノリで、如何にもな悲劇展開はやりたくなかったのでしょうか。
 今日も繁盛している喫茶店では、天音ちゃんが笑顔で接客中。
 ここで天音ちゃんに話しかけている男性客は、高岩さん(中の人)? 見た目から何となくで、全く見当外れかもですが。
 それにしても天音ちゃんもまさか、始さんを剣崎に取られるとは夢にも思わなかったに違いない。
 花壇で花の世話をしていた始は、奥さんに買い物を頼まれて、外へ。
 その帰り道、花束を手にした始は黄色い絨毯の敷き詰められた銀杏並木で、ベンチに座る剣崎の姿を目にする――
 「剣崎……」
 「始」
 にかっと笑う剣崎だが、その姿は幻で、始が駆け寄ろうとした途端に、かき消える。
 (おまえは、人間達の中で生き続けろ)
 その言葉を胸に、銀杏並木を歩いて行く始……。
 BGMが終わり、そこにかかるバイクの排気音。
 場面が変わり、砂漠に刻まれた一条のタイヤの跡、響くバイクの音……でEND。
 えー……本当に……ほんとーーーーーに色々ありましたが、このラストカットは、すっごく良かった。
 バイクの排気音と砂漠に残るタイヤの跡、は、正直ぐっと来ました。
 今作の総合的な評価はさておき、後半戦に迸った“ヒーロー愛”は、物凄くツボでした。
 某作品(一応、ネタバレになるので隠す)のクライマックスでも、主人公とラスボスが“同じ存在”になっていく、 という状況設定がありましたが、主人公と敵が同根の改造人間である、という原典のテーゼを同様に取り込んだ上で、今作ではそれを、 似た存在から同じ存在になる事で戦いを止める、という形で本歌取り。
 その上で、同じ存在になった事で、永遠に戦い続ける運命を背負う。
 しかし敢えて剣崎はそれを選び、運命に打ち勝とうとする。
 剣崎一真は戦わない事でエターナルなヒーローとなり、そして、運命と戦い続ける。
 「守る為に戦う」ヒーローである剣崎が、見事にヒーローの物語と融合したラストになりました。
 仮面ライダーは死なず、剣崎一真は今もどこかで戦い続けている。
 それをワンカットと効果音で見せたラストは、珠玉。
 最後の3話でリモートのネタが入りましたが、そういう抜け道がもう少し頭回して皆で協力していたら色々あったかもしれず、 決して合理的に丸く収まったわけではないかもしれないけど、しかし凄く、『ブレイド』らしい結末になったと思います。
 で、『ブレイド』らしさというのがどこにあったのかというと、最後に所長がバトルファイトについて「このバトルファイトも、 元はといえば地球に住む生物たちが望んだものだ。己が進化だけを望む闘争本能」と推測を述べますが、そういったエゴ、望み、 というのが本作を貫く(前半戦の事はさておき)、一つの背骨だったのであろうな、と。
 実は今作では一つ気になっていた事がありまして、 前半にも広瀬さんが父親が行ったと思われるアンデッド解放の被害について思い悩むエピソードがありましたが、 これは拡大解釈にしても、睦月などは(蜘蛛エースの影響下にあったとはいえ)かなり間接的な被害者を世間に出しています。 始もジョーカー暴走時に一般人の殺害を匂わす描写があったりします(その時はどうかと思ったけど、最後まで見た後だと、 どうもかなり意図的な仕込みだったっぽい)。
 この辺りを、フィクションの因果応報として考えた時にどう処理するのかと思ったのですが、ライダー4人は全て生き残り。
 で、この最終回、剣崎は始の為に自身のジョーカー化を行おうとG軍団狩りをしていますが、 これにより最も単純な解決方法と推測されるジョーカー封印が遅れ、G軍団による被害が広がっていると考えるのが妥当です。つまり、 この最終回において、剣崎自身も、そのエゴによって間接的な被害を広げている。
 47話において、橘さんは最終的に友を信じてリモート作戦を行わず、始も穏やかな生活への望みから自ら封印される事を選べない。
 主要人物が誰も彼も、土壇場で“自分のやりたい事”を望んだ結果、最良とは思えない選択肢を選ぶ (睦月はだいぶ昔に踏み外しているので、最後の最後は逆に最も合理的)。
 勿論、人は常に最良の選択肢を選べるわけではないのですが、リアルの反映という以上に、これは物語としては意図的なものを感じます。
 つまり最終的に今作は、“望み”による罪を背負い合う物語なのかな、と。
 剣崎は始と同じ罪を背負う事によりジョーカーとなり、自分の為に罪を背負った者に「おまえは生きろ」と言われたら、 始も生きざるを得ない。
 最終回手前で、始が栗原父の間接的な死因を生んでいる事をわざわざ強調したのもこの為の意図だったと思うのですが、
 「おまえは、人間達の中で生き続けろ」
 という剣崎の言葉は、実は始にとっては罰でもある。
 それが理解できたからこそ始はそれを受け入れ、人の世に生き続け、見守り続ける道を選ぶ。
 そしてこの戦いに関わった者達は、それぞれの罪を背負いながら、生きていく――。
 後、剣崎が結局、睦月の「どうしてジョーカー、相川さんをそんな信じる事が出来るんですか?」 という問いに対して答を口に出していないのですが、そういう「理屈じゃない」ところも、最終的に今作“らしさ”になったな、と。
 また、剣崎の行為は一つの自己犠牲なのだけど、そこで剣崎が永遠に失われてしまうのではなく、 剣崎は戦い続けているというのは、とても好き。多分ここが、一番好きな理由かも。
 基本的にはハッピーエンド好きだし、必ずしもエターナルなヒーローが好きなわけではないのですが、 今作の罪と罰のバランスを考えた時、非常に見事だったと思います。
 当初は、とりあえず名称だけ入れてみた、といった具合でふわふわしていた「仮面ライダー」に原典のテーゼを繋げて劇中での意味を確立し、 「仮面ライダー」であろうとする剣崎一真の物語は、「真の仮面ライダー」になる事で完結する。それは決してハッピーエンドではないが、 剣崎一真はそれを悔いてはおらず、そこには運命と戦い続ける1人の男の姿がある。
 そこに漂う一抹の切なさは、原典における“改造人間の悲しみ”と繋がり、物語として美しくまとめると同時に、 メタ的には作品として(特にラストカットは)《仮面ライダー》へのラブレターになったのだと思います。
 「彼は今も戦い続けている。どこかで、運命と」
 その辺り、思い入れの強い會川昇の脚本を受けて、それこそ初代『仮面ライダー』から助監督として関わり、 『仮面ライダー』のみならず東映ヒーロー約30年の現場に居た長石多可男監督が、メタすぎないバランスでまとめあげた、 という組み合わせも非常に素晴らしかったです。
 ともかく、いい最終回でした。ある程度、長いスパンの伏線の解消は天王路との戦いで済ませていたので、最終回にありがちな、 要素詰めすぎて時間足りない感じ、が無かったのも良かったと思います。
 敢えて言うなら、剣崎の異常な適合力の謎とか、剣崎のやたらに人間を愛している理由とか、何か背景あるのかと思いましたが、 これは特に描かれず。まあこれは、あれば良かった程度で、それほど問題ではなし。個人的に触れて欲しかった、 作品としての「人間が守られるべき理由」も触れられませんでしたが、この点はああいうラストだったので、 そういうのを吹っ飛ばして構わない所に決着した、と思っています。
 あと、今作の音楽って、作品に対して正直壮大すぎた感じがあったのですが、この最終回は、ラストの剣崎と始のやり取りとか、 EDとか、その壮大さが巧くはまり、非常に印象強くなりました。 普段は今回ほど長く音楽を流しっぱなしにしないので印象が変わった所もあるかもしれませんが、劇伴を使い切った見事な演出でした。 特にEDの、睦月のシーンから始さんが花壇をいじっている所でピアノソロに入って切ないラストに繋がり、 最後にもう一つ入った音楽が終わった所でバイクの排気音、あれは本当に素晴らしかった。
 前半戦があまりにアレだったので、作品トータルの評価は悩ましい所ですが、後半戦は非常に面白かったですし、 ラストカットは本当に好きな作品となりました。
 「たとえ今は……君1人守るのがやっとでも、諦めない……運命に負けたくないんだ!」
 個々のキャラクターの事などに関しては、いつものように総括で。

(2015年5月17日)
(2017年3月19日 改訂)
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