■『仮面ライダーブレイド』感想まとめ9■


“見えない力 導くよBLADE
眠り目覚めるとき
未来 悲しみが終わる場所”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーブレイド』 感想の、まとめ9(41〜45話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
 なお、サブタイトルが存在しない為、全て筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい。

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◆第41話「少年よこれが修羅場というものだ」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:會川昇)
 今回は、アンデッド大戦からスタート。て、凄い無造作な集団殴り合い(笑)
 その後、いつの間にやらタイガーアンデッドとなんかアンデッドの一対一に移行しているので、女王様のイメージ映像という感じか。
 「私は必ず、勝ち残る……!」
 タイガーアンデッドは敵対するアンデッドを倒すと、虚空へ向けて叫ぶ。
 「我が勝利の証として、敗者を、封印せよ、マスター!」
 その呼び声に応えて空に浮かび上がったのは、ねじれた状態から、直方体へと姿を変える、黒いモノリス。 モノリスはタイガーの求めに応じ、負けたアンデッドをカードの姿へと変える……と、存在してもおかしくなかった、 アンデッド大戦の審判的存在が、遂に登場。
 「あれは……一万年前の……」
 そして、虎の女王様の記憶に浮かび上がったねじれたモノリス、それは現在、ボードの秘密施設で研究されていた。
 「広瀬くん、君の実験は無駄にはならない。神にも造れぬものを、我らが誕生させる」
 謎が謎呼ぶ天王路の言葉とともに、いよいよ、最終章スタート。
 まずは改めて、残りのアンデッドを確認。封印されていないアンデッドは……あと4体。
 そして、ジョーカー。
 アンデッドとの戦いの終わりが近づく中、睦月に会いに行く事にするぼんくらコンビ(剣崎&橘)。噂の天王路理事長は、 アンデッド解放の責任を取って剣崎の入社前に辞任していたなど、設定の確認。
 だから剣崎と睦月の事は知らない筈……って、3年前に死んだ事になっていた筈の広瀬父がばっちり全状況を把握していたわけですが、 その辺り全く無頓着で、事ここに至っても、どこまでもぼんくらです。 もはやぼんくらが設定になっているので、違和感ないのが困る。
 その頃、女王様は紳士屋敷を離れようとしていた。上城睦月が果たして人間かエースアンデッドか。 それを観察していた女王様の結論は、
 「おまえは、甘すぎる。不安定すぎる。おまえなど、アンデッドではない」
 「俺はカテゴリーエースと一体化している」
 「今の君は私が倒す価値もない」
 またも生身でのされるM月。そこへやってきたのは、天音ちゃんから話を聞いた睦月彼女。なんか凄くいどうでもいい愁嘆場が始まり、 紳士屋敷を立ち去った女王様は別のアンデッドの気配に気付く。ところが睦月のもとへ向かっていたぼんくらコンビがたまたまそれを目撃し、戦闘に。
 「貴様らと戦うのは後だ!」
 女王様はタイガーアンデッドの姿となり、役立たずさんを軽く粉砕すると、ブレイド@ジャックフォームの攻撃すらしのぎ、 高速機動を逆に利用して、ビルに叩きつけて変身解除にまで追い込む。
 「強い……俺はあいつの本当の強さを……」
 そこへやってきた睦月はタイガーアンデッドの強さに驚愕し、変身して後を追おうとするが、その前に現れる彼女。 行方不明だった彼氏と、年上の女の痴話喧嘩を目撃するも再アタックを仕掛ける彼女、なんという心の強さ。
 彼女の前で変身をためらった睦月の姿を見て、おまえは完全にカテゴリエースに飲み込まれているわけではないだろう、 と説得を試みるぼんくらコンビ。彼女の前で、思春期真っ盛りの男の子にそこはかとなく恥ずかしい単語を投げつけるの止めてあげてくださいよ?!
 案の定、睦月はレンゲルへと変身してしまい、その姿に、彼女は悲鳴をあげて逃げ出す。駄目師匠は変身してレンゲルを抑えようとし、 剣崎は走り去った女王様を追う。
 「俺は……俺は負けない!」
 「睦月……強くなったな」
 相変わらず、自分よりへたれな相手には上から目線です駄目師匠(笑)
 ギャレンはジャックフォームから急降下ファイアーキックを放ってレンゲルにダメージを与えるも、反撃を受けて吹き飛んでいる内に、 レンゲルは忽然と姿を消してしまう。
 今回も安定の、役・立・た・ず。じゃなかった、橘ぶり。 ん? あれ?
 役立たずと橘が混沌と混ざり合ってゲシュタルト崩壊しかけている頃、虎太郎は一応、持ち込みとかしていた。だが虎太郎の原稿は、 編集長にすげなく突き返される。どうやら、「仮面ライダー」に関してはどんなに噂になっても記事にするな……と、 業界にそれとない箝口令が敷かれているらしい。
 虎太郎がなにげなく「天王路」の名前を出した瞬間、編集部に走る動揺。
 「もし生きていたかったらな、その名前、二度と口にするんじゃない。そいつに興味を持った奴が、昔から何人も、消えてるんだ」
 元ボード理事長・天王路博史とは、何者なのか。けっこうオープンに戦ってきた「仮面ライダー」が報道されない理由や、 ボードの資金力の秘密などを、なんか物凄い人がバックについていた、と全ての黒幕的存在と繋げてきました。まあ、 個人的にはその辺りは、それが作品のテーマと密接に関わっていない限りは、約束事で済ませてもいい派ではありますが。
 設定として面白ければいいですが、闇の超大物、というのは今のところ、それほど面白くないですし。あとタイミング的に(前年放映)、 表向きはカレーハウス恐竜やの主人にして、「TV局や新聞社に“お願い”して、怪しい絵馬に願いをかけないよう、手配しました」など、 数々の謎のコネクションを振るい、闇のフィクサー疑惑の濃かった介さん(『爆竜戦隊アバレンジャー』)を思い出してしまう(笑)
 一方、アンデッドの気配を追っていた女王様は、眼鏡の青年に襲いかかる。遂に登場した眼鏡の二枚目、その正体は、 ハサミとトゲトゲの特徴的なアンデッド。残りアンデッドと強さを合わせて考えると、ダイヤのキングの可能性が高そうで、 凄いクワガタなのかと思われますが、デザインとしてはハサミムシとかアリジゴクを思わせます。とりあえず仮称、 役立つクワガタアンデッドで(おぃ)
 激突する、タイガーと役立つクワガタ。バトルファイトにふさわしい戦いに盛り上がるタイガーだが、 役立つクワガタの方は戦闘しながらも理性的。
 「アンデッド同士が戦う必要は無い。俺と手を組め」
 「手を組めだと?! アンデッドは自分が最後の一匹になるまで戦う。そう定められているのだ!」
 「誰が定めた?」
 「我々を造ったこの戦いの統制者だ。彼が敗者を排除し、最後に地球の支配者を決める」
 「正しいバトルファイトならな。……このバトルファイルは偽物だ」
 「なにぃ……?」
 長台詞のやり取りを、激しいバトルシーンに被せる、というのは着ぐるみアクションならではで、ちょっと面白い演出。 タイガーと激闘を繰り広げながらもどこか余裕のある、役立つクワガタの強さも印象強くなりました。
 女王様を追いかけてきて、両者の戦いを目撃した剣崎は突っ込んでいって変身……しようとするが、役立つクワガタ、 二刀流の斬撃で変身コールマークを破壊して変身を強制キャンセルするという、掟破りの攻撃アクション。剣崎はこれで吹っ飛び、 返す刀から放たれた衝撃波がタイガーを叩き伏せる。
 溜めに溜めての登場という事もあり、役立つクワガタ、デザインもアクションも非常に格好いい。
 「私の、負けだ……」
 タイガーのベルトのバックルが開く、が……。
 「おまえも気付いていた筈だ。……何も起こらない。おまえは既に何体ものアンデッドと、戦っている筈。だが、 かつてのような封印の石は現れたか?」
 1万年前のバトルファイトなら、ベルトのバックルが開くのが「勝負あり」のサインであり、 勝者の呼びかけに応じて封印の石が現れ敗者を戦いから排除する筈であった(この流れは、冒頭の女王様の回想で描写)。しかし……
 「この現代のバトルファイトで、封印できるのはライダー達とジョーカーだけだ。俺たちがいくら戦っても、決着はつかない」
 そう、封印の石が現れなければ、不死のアンデッド同士の戦いは、永劫終わる事がない。
 「このバトルファイトを仕組んだ人間がいる。おまえも知っている男だ」
 役立つクワガタは人間の姿へと戻って立ち去り、屋根裏侵入中に目撃した天王路を思い出す女王様。 がっくり落ち込む女王様……のもとにやってきたのは、役に立たないクワガタを振り払ったM月。
 「剣崎! こいつに手を出すな」
 「アンデッドをかばうというのか」
 「こいつを、封印するのは俺だ」
 その姿と言葉に、ジョーカー/始を守ろうとした自分の姿を重ねたのか、剣崎は機能停止し、場面変わって、 何故か海辺で黄昏れている、女王様とM月。
 「なぜ私を封印しない?」
 「俺は……俺はおまえの言う通り、弱いのか」
 「おまえの中には、光がある。あの女の子を近づけまいとしたのも、その光だ」
 真っ正面から敗戦したショックか、いきなりファンタジーな事を語り出す女王様。
 「そんなものがあったら、強くなんてなれない……」
 「フン……なんだそれは?」
 「思わず持ってきちまった」
 M月が手にしていたのは、彼女が落としたハンドバッグ。その中に入っていたおにぎりを2人でほおばる、変な絵。
 「おいしい」
 「ああ……なんか知らないけど、あいつの……美味いんだ」
 その姿を見る女王様、いきなり睦月を殴ると姿を消す。その向かった先は、先頃侵入したボード秘密施設。 職員を殴り倒して侵入した女王様の前に、透明化能力を持つ粘液質なアンデッド?が姿を現す。
 「なんだ……このアンデッドは?」
 交戦状態の構えを獲る両者だが、それを止めたのは、天王路博史。
 「ティターン、おまえの目的は、ライダー達を滅ぼす事だ」
 それは、新たな人造アンデッド・ティターン。ティターンの目的は、アンデッドを活性化する作用を持つアンデッドポイズンをライダーに打ち込み、 ライダーの中のアンデッドの影響を強くする事で、ライダーの意志をアンデッドに支配させ、ライダー達を同士討ちさせる事。
 「貴様たちがライダーシステムを作ったのではないのか」
 「そうだ。アンデッドを封印する為に。そして今……彼等の役目は終わったのだ。来たまえ。君の見たいものは、ここにある」
 天王路に案内された女王様は、研究所の奥に鎮座するねじれたモノリスを目にする。
 そう、それこそが……
 「これは……封印の石……バトルファイトのマスター……」
 そして女王様を探す睦月は、ティターンの襲撃を受けていた――!
 後半戦本格スタートの31話もでしたが、情報量が多すぎるのと、いかにも説明の為の説明シーンが多くなってしまい、テンポ悪し。 役立つクワガタが出てきてからは少し流れがよくなりましたが、ぼんくらコンビのぼんくらぶりに磨きがかかっていたり、 やや不安な最終章立ち上がり。そんな中、虎太郎に独自に動く要素が出てきたのが、注目か。

◆第42話「女王様、最後の躾」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:會川昇)
 「なぜだ……なぜ私が戦っている時現れなかった!」
 「それは、現代の戦いが、私の物だからだ」
 「貴様の物だと?」
 人間によるアンデッドカードの封印解放……不慮の事故により偶発的に起きてしまったこの戦いには、 本来のバトルファイトを審判する“神”の意志が介在していない。つまり、公式戦ではなく、草試合に過ぎなかった。 ゆえに、幾ら戦おうとも最終的な勝者になることは出来ない、と告げられる女王様。
 「おまえの真の目的はなんだ!」
 全てのアンデッドはライダーによって封印され、そのライダーはティターンに始末され――戦いは終わる。 そう言って嗤う天王路に掴みかかる女王様だが、その表情が恐怖に歪む。
 「これが怖いのかね……?」
 懐から1枚のカードを取り出す天王路。
 「なんだ、それは……」
 視聴者には裏しか見えないカードを見た女王様は、愕然とした表情でその場を逃走。
 冒頭から、ここまでの設定と展開を踏まえつつ、ちゃぶ台返し。
 今作の全ての前提であった「現代に甦ったバトルファイト」という支柱を、「フライングだから、 幾ら頑張っても公式記録になりません」と思いっきり、へし折ってきました。
 一つ巧いのはこれ、ここまで今作の大きな欠点であった、アンデッドがただ闇雲に人を襲っていた事、 の理由が「他にやる事ないから」だと説明がついた事。説明がつけば前半の欠点が許されるというわけではないですが、 「俺たち同士で殴り合ってても決着つかないし疲れるだけだから、人間でも襲っとくか」という行動原理には、 納得いくようになりました。
 ついでに上級の皆さんが、ネトゲとかエンジョイしたくなる気持ちもわかった(笑)
 ティターンとレンゲルの戦いには、サーチャー反応で駆けつけたブレイドが参戦するが、 冷凍ガスが通用せず透明化による攪乱攻撃に翻弄されたレンゲルは、アンデッドポイズンを打ち込まれてしまう。 とりあえずレンゲルに毒を注入して満足したのかティターンは退却し、倒れた睦月を拾って剣崎は農場へ。
 トライアルシリーズがアンデッドサーチャーに反応しなかったのに対し、ティターンが反応したのは、同じ人造アンデッドでも、 “より本物のアンデッドに近い要素を持っている”という伏線かと思われます。
 睦月が農場に運び込まれた事など知らず、昨日の事を謝ろうと、紳士屋敷を訪れた睦月彼女は、そこに身を潜めていた虎の女王様と遭遇。
 「何故だ。何故おまえ達だけが繁栄を謳歌する。我が種族は世界の片隅で生きていかなければならない。出て行け……出て行かなければ、 食い殺す!」
 当初からそこまで見越した仕込みかはわかりませんが、トラはリアルに生息数激減している動物なので(一部亜種は絶滅危惧種指定)、 女王様の性格と合わせて重みのある台詞となりました。
 「怖くありません! 怖く……ありません。貴女も、睦月も、怖くない!」
 変身した女王様に組み付かれながらも、声を張る彼女。
 レンゲルに変身した睦月から逃げ出してしまった後悔を胸に、二度とそんな事はしないと、女の強さを見せる。
 また、ここまでそういう描写が無かったので若干苦しいですが、部外者から見ると、 外面的にはライダーもアンデッドも大きな違いはない、という要素も含んでいると思われます。だから彼女は、 タイガーを人に害をなすアンデッドというよりも、“よくわからないが変貌した睦月と同様の存在らしい”と認識し、 受け止めようとしている。
 今作は後半戦に入ってから、今作の設定に合わせた上で、けっこうストレートな改造人間テーマを仕込んでいる節は見え隠れします。
 「望美ちゃん!」
 彼女に組み付くも牙を振るう事をせず、動揺を見せる女王様だが、いい所で飛び込んできた役立たず、女王様に体当たり。
 いい話クラッシャーとしての力を存分に発揮。
 橘は睦月が病気で苦しんでいると彼女を農場に向かわせ、自らはタイガーと対峙。しかしタイガーは、 彼女が落としたおにぎりを見つめると人間の姿に戻り、おにぎりを拾う。
 「これ……おいしかった」
 その頃、農場では虎太郎が階段落ちを披露していた。ポイズンの影響により、ランニング姿で大暴れする睦月。その姿に、 エースの蜘蛛の姿が重なる。
 「怪物と化したライダー達は、同士討ちを始める。そして――最後には、誰も居なくなる。ふふ、ふふはははは」
 未だ真の目的を見せぬまま、闇の底で嗤う天王路。
 すっかりラスボスっぽくなってきましたが、さてこうなると、高飛び中の烏丸所長は、黒なのか白なのか。 私の中では登場当初からずっと黒なんですが(笑)
 一方始は、役立つクワガタアンデッドことイケメン眼鏡と接触していた。
 「取引をしようかと思ってね」
 「アンデッドと、取引はしない――変身」
 ヒューマン分が上がっても、始めさんに相変わらず人の話を聞く気はなかった。
 イケメン眼鏡は素手でカリスの攻撃を受け止めてから変身するなど、いちいちアクションが格好いい見せ方。
 「俺と戦うのは無意味だ。おまえ達は互いに殺し合い、滅ぶ事になる」
 どういうわけか事情通の役立つクワガタさん、天王路の陰謀をほのめかすが、話聞かないカリスは猛攻を仕掛ける。 タイガーを一蹴してみせた役立つクワガタに対し、カリスはエボリューション。 ビューティーセレインアローとスーパークワガタビームがぶつかり合い、アローが打ち勝つが、役立つクワガタは爆風に紛れて撤退。
 前回今回の見せ方から、さしものワイルドカリスも苦戦するのかと思われましたが、 むしろワイルドカリスがやたらめったら強いという描写に。スペードキングが特殊能力持ちだったので、何か、隠し球もあるかもですが。
 農場を飛び出したダーク睦月は、彼女と接触。
 「どんな姿になっても、逃げないよ睦月」
 蜘蛛の姿に変貌した睦月に対し、彼女が抱き付きを敢行して人間の姿に戻るが、睦月はそんな彼女を殴り飛ばして、山の中へ。 そしてそこで出会った女王様から、自分の体に打ち込まれたアンデッドポイズンについて聞く。
 「おまえはやがて、戦う事しか考えられなくなり、そして……他のライダー達に倒される。……その前に、私が倒す!」
 ぶつかり合う、タイガーアンデッドとレンゲル。
 「今の私は、おまえと同じだ!」
 種族の為に誇りを持ってバトルファイトに望んでいたタイガーアンデッド。だが、現代のバトルファイトは偽りであり、 神ならぬ人間の意志に操られる茶番に過ぎなかった。
 「私にも戦う理由などなかった……貴様と同じ、ただの獣だ!!」
 恐らく、前回役立つクワガタに「既に何体ものアンデッドと戦って、何も起こらないのを知っている筈」 と指摘を受けて状況を理解したように、女王様はバトルファイトがどこかおかしいのをわかっていて、わかっていたからこそ、 自分の誇りを懸けるにふさわしい戦いを求めて睦月/レンゲルを見定めようとしたり、役立つクワガタの登場に喜んでいた……と、 一応、女王様のこれまでの行動に筋は通りました。
 時々、やけっぱちみたいな行動を取っていたのも、実際、少しやけっぱちだったから、と。で、 作品全体のちゃぶ台返しと繋がっているので、確かにこれは先に説明できない。とはいえ流れとして女王様の行動は違和感強すぎたので、 当座のそれっぽい理由を提示して誤魔化しておく、とかそういう作業はあった方が良かったかとは思われます。
 獣と獣、闇と闇、激しい戦いの末、遂にマジカルステッキが腹部を貫き、レンゲルに倒される虎。 女王様は自ら封印カードを手にするという奇妙な行動を取ると、クイーンのカードと……何故か、アブソーバーになった??  (※女王様が所持していたアブソーバーが落ちた物、と後で判明しますが、説明が後回しになる上で映像的にわかりくすぎました(^^;)
 始は手分けをして睦月を捜索中の戦闘力無い組(虎太郎、広瀬さん、望美)と出会い、剣崎は合流した役立たずから、 「睦月はもうすぐ俺達の前に現れる。カテゴリークイーンを封印し……より強くなって」と、いきなりの吹っ飛んだ発言を聞かされる。
 ……うーん、貴方また、女性に余計な気を遣ったな?(笑)
 「その時が、決戦だ」
 まるでその言葉が呼び水になったかのように、剣崎と橘は、川岸に仁王立ちする睦月を発見。
 「剣崎。橘。くたばれ」
 「橘さん、俺、やります。このままじゃ……「「変身!!」」
 剣崎と橘は変身し、レンゲルとぶつかり合う。
 「睦月、駄目だったのか……?!」
 レンゲルにしばかれながら、何かを確かめようとするギャレン。始センサーの誘導でか、戦いの場へやってくる、戦闘力無い組と始。 3人のライダーが殴り合う光景を見つめながら、始は役立つクワガタの言葉を思い出す。
 (ライダーが滅ぼし合う。あいつが言っていたのは、この事か)
 色々面倒くさくなってきている剣崎は、容赦なくキングフォームを発動。

 塵に返す気満々

 というか先程の「やります」は、

 殺ります

 の意味か。
 対して、レンゲルもラウズアブソーバーを手にする。
 虎太郎「あれは、橘さんの……なんで?」
 女王様が封印された後で地面に落ちていたアブソーバーは、橘さんが渡したものでした。やっぱり、なんか余計な気遣ってた……!
 「ブレイド。俺のキングフォームを見ろ」
 クイーンとキングのカードをスロットインし、エボリューションするレンゲル。――その結果、 カテゴリーエースが睦月から抜け出して実体化する。
 「やっと私の力を使いこなしてくれた。彼女のお陰だ」
 心象風景の中で、嶋と出会う睦月。封印されたクイーンの助力により、ベルトを通して睦月の中に存在していたキングの力が増幅され、 カテゴリーエースをたたき出す事に成功したのだった。
 「君を、カテゴリーエースの呪縛から解放する」
 「睦月、カテゴリーエースを封印しろ」
 急に流れ出すロマンチックな音楽をバックに、睦月に語りかける女王様。
 「光と闇に、操られるな」
 えーーーーー。
 「自分の中に両方を抱えて、戦い抜け。自分との戦いに、終わりは無い」
 いきなり、リリカルな方向でまとめられました(笑)
 一応、睦月のキーワードな「光と闇」ですが、後半戦入ってから完全スルーされていた上に本人がうだうだ言っているだけだったので、 前回もそうでしたが、女王様がそれを拾って語り出すと、違和感が激しすぎます(^^;
 「睦月が、嶋さんの力を使っている……」
 「貴様を封印する!」
 目覚めた睦月に重なり合う、タランチュラアンデッドの姿。殴り合う、クローバーのエースとキング。 最後はキングブレイドが大剣を放り投げて睦月がそれで一刀両断。スパイダーアンデッドは大爆発して封印され、 その邪悪な意志はキングの力で今度こそ完全に封じられ、カードの色も塗り変わるのであった。
 ……でもそもそも、ベルトが不良品だったよーな……。
 「睦月……おまえは本当の仮面ライダーになったんだ」
 「橘さん、あの人は……わざと俺に封印されるつもりで」
 「アブソーバーを貸してくれと言ったのも、あの女だ」
 キャストクレジット上は設定されてるのに、誰も人間名を知らない(笑)
 というか、出会って一瞬で女王様の言う事を素直に聞いているとか、橘さんのM属性、筋金入りすぎる……!
 「不思議なアンデッドだったな……」
 「俺が……もっと……強ければ……」
 闇雲にただ光を求めて闇から逃げるのではなく、その双方を自分の内に抱えながら、乗り越えてゆく事。 遅まきながら本当の強さの一端を得た睦月は、今遂に、本当の「仮面ライダーレンゲル」となったのだった。
 キングフォームの解釈としては成る程、という展開だったのですが、これってつまり、
 彼女の告白暴露より、女王様の躾の方が効果的だった。
 という事になるのか(笑)
 望美ちゃんの明日以降の道のりが、大変だッ!!
 己の種族の繁栄を果たせない事を知った誇り高きアンデッドが、自分に新しい感情を教えてくれた“人間”の為にその存在を懸ける、 という筋自体は悪くないし、なんだかんだで女王様は良いキャラクターだったのですが、睦月メインだとどうにも盛り上がりません(^^;  私個人として、あまりにどうでも良い存在になりすぎて……さすがに色々、紆余曲折が長すぎましたし。後まあ、 睦月は変態紳士見習いだった頃のあれやこれやの負債が合わせ技一本ぐらいは貯まっていると思うのですが、さてどう始末をつけるのか。
 特筆すべき点としては、橘さんの気遣いが裏目に出なかったという奇跡的快挙ですが、 これも女王様パワーのなせる技でしょうか。
 にしてもまた橘さんが何となくアンデッドを受け入れているのですが、ここまで、「不器用」「信じやすい」「正体がアンデッド」 「無愛想」「いい人」「騙されやすい」「犠牲を出さない戦い」「人間を守る」、と各人それぞれ、色々な建前がありましたが、 そういう背景とか理屈と関係なく、要するに
 剣崎は睦月が嫌い
 橘さんは始が嫌い
 始は虎太郎が嫌い
 という事なのか(笑)
 まあ、橘さんはジョーカーENDのシミュレーション映像を見ているので、ジョーカーを特別危険視している、 という事情は一応あるにしても。
 で次回やっぱり、
 「橘さんはどうせ役に立たな、キングになれないし、いらないんじゃないですか?」
 「橘さん、ジャックになっても役に立たな、いや、俺のキングの方が強いですし」
 みたいな感じで、橘さんのラウズアブソーバーは取り上げられてしまうのか。烏丸所長からしれっと3つ目が送られてきたら、 それはそれで嫌だけど(笑)
 全体としては、ちゃぶ台返しをしたけど、そのネタが今のところ微妙。私が睦月どうでもいいという事もあり、 最終章のスタートとしては、今ひとつの盛り上がりになりました。ライダー同士の殴り合いは、 これまで散々やっているので新味が無いですし。理事長がそれとなく匂わせている“神”の存在とか、真の目的、 役立つクワガタさんの行動で改めて盛り上げてくれる事に期待。

◆第43話「足りないものは信頼とカリスマ」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹)
 睦月の改めてぽんこつ軍団加入祝いで、河川敷でバーベキューを楽しむ剣崎達。
 まさかの始さん参加!(天音ちゃんと)
 なのに何故か、望美ちゃん不在。
 どうして。
 「頼むぞ、睦月。真の仮面ライダーとなった今、おまえの力が大きな戦力となる。…………どうした?」
 「いえ、俺、本当に仮面ライダーになれたのかな、って……」
 駄目師匠に保証されても信用できないし。
 これまでの紆余曲折から弱気を見せる睦月だが、残すアンデッドはあと3体、と何となく盛り上がる面々。 だが問題は……と、ジョーカー/始を気にする橘さん。少し離れた場所で天音ちゃんとデート状態の始さんは、 集まる視線を華麗にスルーしつつ、森の中の不思議な気配を感じていた。
 「もうすぐだ。全てのライダーが倒れ、アンデッドが滅んだ時、神の声が私に届く」
 封印の石を背に、ひそやかに嗤う天王路博史。
 ボードのデータベースにもその名前を見つける事は出来ず、その存在に関する謎は深まるばかりの天王路。 何度かボード時代に会った事のある橘も、「凄い金持ちらしい」というぐらいしか知らず、当然、役に立たない。
 というか、今頃になってやっと橘さんに聞くとか、遂に虎太郎まで「どーせ橘さんじゃ何も知らないんだろうな」という態度なんですが。
 そんな微妙な空気の中、アンデッドサーチャーが戦闘を感知し、飛び出していくぼんくらコンビ。そこで戦っていたのは、 キリンさんこと役立つクワガタアンデッドとティターンであった。
 「アンデッドの心を奪われ、天王路のために働いているとは、哀れだ。そんなおまえに生きている資格などはない!」
 ティターンを叩きのめす役立つクワガタだったが、そこへやってくるぼんくらコンビ。
 「仮面ライダーか。今はおまえらと戦う時ではない。だがせいぜい、そいつには気をつけろよ」
 キリンさんは退散し、変身するぼんくライダーズ。
 「気を付けて下さい、奴の鞭には毒が!」
 遅れて睦月がやってくるが、2人はしばかれて変身解除。ティターンは透明化して退散し、剣崎はバイクでその後を追う……。
 ここで睦月が変身をためらう、というのはこれまでの流れから納得できるところ。
 「こんな茶番をいつまで続ける、天王路」
 戦いを観察していたイケメン眼鏡は、そう呟いて姿を消す、とやる気が有るのか無いのか、未だその考えは読めず。
 その頃、喫茶店ですっかり家族の一員状態の始さんは、天音ちゃんが描いた家族の絵を見せられていた。それは、 真ん中に大きく始が描かれているというものだったが、そこへ、そこはかとなく目つきの悪い剣崎が来店する。
 「おい、手伝え」

 なんで(笑)

 何故か剣崎に接客を要求する始さんだったが、剣崎は渡されたグラスを床にぶちまけると、お盆を貫くパンチを始に放って逃走。 そして机の上には、天音の描いた絵が始の顔の部分にフォークが突き立てられた状態で残されていた……。
 役立たず化した睦月は、彼女とデート中。
 「私、決めたんだ。睦月の、応援団長になっちゃうからさ。……どうしたの、元気ないじゃん?」
 「俺、自信ないんだ。今までの俺は、強さに憧れてた。でも、強さに憧れる弱さに、気付いたっていうか」
 そこにも迫る、剣崎の影。
 背後の変なオブジェの間から顔出していて、怖いよ。
 剣崎は指先一つでいちゃつく2人の方にオブジェを倒すと、姿を消す。
 こういう演出は真骨頂で、監督が楽しそう。無言で目つきの悪い剣崎、というのも、初期の喧嘩上等バージョンとはまた違って、面白い。
 「剣崎さん……まさか……」
 剣崎も自分と同じようにアンデッドポイズンに冒されたのかもしれない……睦月が農場へ向かうと、 そこではにこやかな剣崎がカレーを食べていた。ちょうど出会った橘に睦月は事情を相談し、頼られて張り切る駄目師匠。
 「俺に任せてくれ。奴の事は俺が一番知ってるつもりだ」
 えーーーーーーーーーー。
 それ多分、剣崎的にもダウトですよ橘さん(笑)
 中へ入ってカレーを頬張る剣崎をじっと見つめる橘は、なんか、いつもと同じ気がした。
 「本当ですか?!」
 「ああ、普段通りの剣崎のままだ」
 ところがそこへ、始さん登場。
 「俺も見たんだ。奴は明らかに普通じゃなかった」
 「だが今の奴は全く普段通りだ」
 「どうかな。さっきの剣崎からは、アンデッドの気配が感じられた。俺の目で確かめてみる」
 中へ入ろうとする始を、やたら力一杯制止する橘さん。
 「おい! 俺を信じないのか?!」
 ……やっぱり、仲悪い(笑)
 あと、全く信用できません。
 揉めた勢いで誰が一番最初に確認するかレースみたいな調子で農場に飛び込む3人だったが、 いつの間にやら剣崎は腹ごしらえを終えてティターン捜索に再出発してしまっていた。それをバイクで追った3人は、 道中でひっくり返された車を目撃。運転手によると、仮面ライダーにいきなり襲われたのだという。
 「なに?!」
 「やはり……剣崎の奴は」
 「馬鹿な!」
 本日も絶好調の裏目ぶり。
 3人は人々を襲うブレイドを目撃し、橘さん、ブレイドをバイクで轢こうとして……かわされる(笑)
 果たしてブレイドは、ポイズンの効果によりアンデッドに心を支配されてしまったのか?!
 (信じられない……剣崎が一番強い心を持った仮面ライダーだ。そんなあいつが)
 三方に別れてブレイドを探す中、橘はトンネルで剣崎と遭遇。(あれ? いつもと同じじゃん)と笑顔を交わし合った直後、 轢かれそうになる(笑)

 むしろ剣崎だ、かなりの確率で本物だ(笑)

 「剣崎おまえ、まさか本当に……」
 前回、予告を見てちょっと触れましたが、今更、ライダー同士がただ殴り合っても面白くない所で、 本当にポイズンの影響を受けたのか? 或いはそもそも本物なのか? というサスペンス要素を持ち込み、状況を錯綜させながら、 それぞれの心理に焦点をあてる、というのは、井上敏樹の持ち味が発揮され、実に面白い展開。 ここに来ての参加で39−40話の宮下さんの時のように、展開がスムーズに繋がるか不安がありましたが、 こういうシナリオ書かせると、本当に巧い。
 場面変わって、剣崎を追っていた睦月は、橘と遭遇。ところがその橘の目つきも、ちょっとおかしい。
 「でも信じられませんよ。剣崎さんみたいな人が、アンデッドの心に負けるなんて。俺みたいな弱い心の人間なら、ともかく」
 2人並んで給油しながら、愚痴りだす睦月。復帰後の睦月を、力について悩めるポジションに持っていったのも良かったと思います。 これで割り切っていたら、ただでさえマイナスな好感度が、ますます下がるし(笑)
 しかし青少年の愚痴がなんかイラッと来たのか、給油ポンプで睦月の首を絞め、走り去る橘。
 「まさか……そんな、橘さんまで」
 まあ、心、超弱いしな!
 そして橘と遭遇した始さんは、いきなり変身したギャレンに撃たれる。

 殺意3倍(当社比)

 適当に撃ちまくってギャレンは姿を消し、そこに睦月がやってきて、役立たずの様子までおかしいという情報を共有する2人。 しかし役立たずがおかしいのはもはや体質みたいなものであり、何ともいえない空気も漂う。
 ここで、倒れた自転車と傷つく人々、そこを歩むギャレン、の映像が挿入され、本物感を色濃くします。
 いよいよアンデッドポイズンの影響に違いない……と確信を強くした始と睦月は、まともそうな剣崎と遭遇。
 始さん、とりあえず殴ってみる。
 ほら、叩くと直るかもしれないし。
 「剣崎、俺がジョーカーになった時、おまえは俺を助ける為に戦った。今度は俺の番だ」
 「なに言ってんだおまえ」
 そこへやってくる橘、の前に、立ちはだかる睦月。
 「橘さん、あなたは何度も俺を助けてくれました」

 え?

 「だから……だから今度は俺の番です!」
 「なにを言ってるんだ、どけ!」
 「駄目です橘さん! 貴方はアンデッドに支配されている。剣崎さんと同じように」
 「俺がアンデッドに?」
 「とぼけるな!」
 始さん、もう一度殴ってみる。
 「待て始、よせ!」
 「おまえを今のままにしておくわけにはいかない。――変身」
 始はカリスに変身して剣崎に掴みかかり、睦月も駄目師匠を殴ってみる。
 「睦月!」
 「許して下さい……橘さん。変身!」
 ここでレンゲルが変身の後、ちょっと拳を見るのがいい。
 しかし2人とも、変身したけど、どうやって治すつもりなのでしょうか。やはり、 古いTVみたいに叩けば直ると思っているのか。とりあえず、気絶させて対処法は後で考えようぐらいのつもりなのか。 よくよく考えると(考えなくても)、『ブレイド』って、頭脳労働担当が居ないまま最終章まで来てしまったという、恐ろしい作品だ。
 或いは、頭脳労働担当が役に立たないという、斬新な作品だ。
 「どういうつもりだ始?!」
 「馬鹿な、よせ睦月!」
 やむなく、ぼんくライダーズも変身し、殴り合うライダー達。
 「なぜだ、なぜ俺たちが戦わなくちゃならないんだ!」
 それを物陰から見つめるティターン――そして理事長。
 「仮面ライダーの最期だ。ははははははは」
 あー、これは巧い。
 若干の事実の捏造もありますが、剣崎を助けたい始、と、橘さんを助けたい睦月、という感情の背景を重ね合わせる事で、 それぞれの意志を補強。状況の錯綜の中、前回の今回で、睦月の居る意味を与えている、というのは非常に素晴らしい。 睦月に特急で必要なのは、視聴者が感情移入する余地なのですが、強引ではあるものの、改めて橘さんとの繋がりを強調する事で、 その余地を作成。天王路の暗躍とティターンとの戦いを軸に、アンデッドポイズンに関わるサスペンス要素で転がしながら睦月を補強する、 と多重の要素の詰め方が、実にテクニカル。
 その結果、解決方法も特にないまま殴り合いに突入してしまいましたが、 剣崎も始さんもエキサイト体質だからシカタナイ。睦月は未熟者というポジションに落ち着き、そして、 本来ストッパー担当の筈の人には、信頼感とカリスマ性が無い(笑)
 誰だこの、ナイト−バーサーカー−赤魔道士−ものまね士、みたいなパーティ組んだの。
 「いい加減にしろ、始!」
 殴りかかられている内に火がついてきた剣崎さん、思いっきり上段蹴り。
 むっとした始さん、エボリューション。

 駄目だこの2人。

 ワイルドカリスに斬り飛ばされたブレイドも対抗するべくエボリューションし、今遂に、 キングとワイルドが互いの武器を向けて対峙する。
 「やめろ……なんでだ。何の為の戦いなんだ!」
 アローを受けて吹っ飛ぶブレイド、果たして、剣崎と橘は本当にアンデッドポイズンに毒されているのか。それとも――?!

◆第44話「殴り合い浸り隊」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹)
 少し前から気になっているのですが、ここ数回、アバンタイトルにおける前回のおさらいが長い(2分近い)のは、 撮影スケジュールが厳しいとかあったのでしょうか(^^;
 4人のライダーによる殴り合いを見つめるティターン……を更に背後から見るイケメン。
 「読めたぞ。おまえの狙いが。――いや、天王路の狙いがな。だが……果たして」
 そのままタマの取り合いに発展するかと思われた殴り合いだが、カリスに剣を突き付けたブレイドは、自ら変身を解く。
 「もうよそう。俺には今、おまえを傷つける理由はない」
 その言葉を受けてカリスも変身を解き、ギャレンの銃撃ダメージで変身が解けた睦月の前で、橘も変身解除。
 「よせ睦月。これは何かの誤解だ」
 「誤解……じゃあ貴方達は、なぜ俺を襲ったりしたんですか?」
 たぶん……彼女持ちだから。
 睦月と始の言い分にさっぱり覚えのない剣崎と橘。
 「俺は俺だ。橘朔也のままだ」
 えー……それが一番、信用できません(笑)
 「俺だって」
 確かに今の2人からはおかしな様子はない。だが、打ち込まれたアンデッドポイズンが少量であった為に一時的に回復しているだけかもしれない。 そしてもし剣崎も橘もまともなのだとしたら、始と睦月を襲ったのは何者なのか? 始はしばらく、剣崎を見張る事にする。
 実のところ前回、橘さんも剣崎に轢かれそうになっている筈なのですが、もう忘れているのか。まあ、 俺はそれでも剣崎を信じている的アピールをしても、単なる騙されやすい人にしか見えないわけですが。
 橘さんはもはや、橘視点そのものが全く信用できないという、存在が叙述トリックの領域に達していて凄い(笑)
 「だいたいおまえ、どこに目をつけてんだ。俺たちけっこう濃い付き合いしてきたのに、寂しいじゃないか」
 「気色悪い事言うな」
 農場に居座り、買い出しをストーキングする始だったが、さすがに居心地が悪くなった剣崎、始の目にレモン果汁を浴びせ、逃走。 追いかけた始は公園で剣崎を発見するが、買い物袋から取り出した雪平鍋で自分の頭を叩き始めた剣崎が、突如豹変。
 ここの意味不明アクションと、剣崎の表情の変え方は良かった。中盤に始さんの一人二役がありましたが、 こういうギャップ芝居は役者さんがついてきてくれると実に面白くなり、1年物の楽しさであります。
 やはり剣崎はアンデッドポイズンの影響を受けているのか?! だがその時、組み付いてきた剣崎の腕に、 傷を手当てした包帯が巻かれていない事に気付く始。
 「おまえは剣崎じゃない。何者だ貴様?!」
 投げ飛ばされた剣崎は、アンデッドの姿に変貌。始や睦月を襲い、戦いをあおっていた剣崎は、ティターンの変身した姿だったのである。
 日本語こそ喋らないものの、割と知性が高いのか、周到な上にお茶目だティターン(笑)
 始の前から逃げ出したティターンはその始の姿に変身すると、ちゃっかり再合流していた剣崎と虎太郎の前に現れ、メリケンサックで剣崎にパンチ。
 ティターン始が姿を消した後に本物始が追いついてきて喧嘩になりそうになるが、今度は始が喧嘩を止めて事情を説明し、 ここで前回からの陰謀劇の真相が明らかに。
 真実がわかってみると、実はカレー剣崎を本物だとした橘さんの判断は正しかったという事になるのですが、 その後トンネルで遭遇した偽物も本物だと思っていたので、結局、橘視点は何も信用できない。
 逃げたティターンは睦月の姿になると、レンゲルに変身した上で橘を殴って逃走。しつこく状況の混乱を招こうとするが、 そこで橘と睦月の元に携帯メールが届き、4人は農場へ集合する。
 「毒の力と、自在に姿を変える力。恐らく、二体のアンデッドが、人工的に合成されている」
 以前に天王路が「神にも造れぬものを、我らが誕生させる」と言いながら二枚のカードを見ていたのは、この前振りだった模様。
 透明化は変化能力の1パターンという事で、一種の擬態のイメージ、カメレオンアンデッドとかでしょうか。で、 毒はスコーピオンとか? 毒がメインを強調しておいて、実はそれだけではなかった、とうまく繋げてきました。
 全員揃って情報は共有したものの、もしかしたら既にこの中にティターンが混ざっているかもしれない…… 始は「気配を感じない」と請け合うが、剣崎の音頭で本物証明アピールタイムがスタート。
 「どうせ俺は彼女いるけどみんなに迷惑ばかりかけて彼女いるけど役に立たない駄目野郎だ……彼女いるけど」と落ち込む睦月の発言に、 「うん、本物の睦月だ」といい笑顔を浮かべる剣崎(おぃ)
 それを受けて、浸り出す役立たず。
 「睦月、おまえだけじゃない。俺だって同じだ。伊坂に騙され、トライアルBに騙され、こんな情けない俺のせいで、 大切な人を失った事もある」
 「橘さんも本物だ」
 「間違いないわね」

 ひ・ど・い

 「後は、広瀬さんと虎太郎」
 疑われて怒りの広瀬は椅子を持ち上げてアピールし、後からやってきた虎太郎は牛乳で無実を証明。
 「うん、本物だ、おまえも。残るは……」
 「俺を疑うのか?」
 「何言ってんだ。おまえだって思いっきり、俺の事を疑ってたじゃないか」
 ところがその時、いきなり苦しみだした始は飛び出していく。もしや、この局面でジョーカーが暴走したのか?  慌てて追いかける3人。始は途中で喫茶店に立ち寄って水をがぶ飲みし、天音ちゃんに目撃されつつ再び外へ。 始に重なるジョーカーの姿、それを見つめるティターン、更にその後ろでストーカー状態のイケメン眼鏡。
 「これは……予想外の展開だな」
 この人も、思わせぶりな事を言うだけの係と化していてちょっと困りますが、格好いいので許す(おぃ)
 演じている方は、前年に同じ東映の実写版『美少女戦士セーラームーン』でレギュラー出演していたそうですが、 正直ゲスト上級アンデッドのキャスティングの微妙さが目立った今作において、最終盤にふさわしい、 落ち着いた存在感を出してくれている有り難い存在。
 「おまえどうしたんだよ。ジョーカーの力は、完全に封印したんじゃなかったのかよ?!」
 「うぁぁぁぉぉぁぁぉぉぉぉうぇぇぉぉぉ!!!」
 咆吼する始はジョーカーの姿と化し、3人に襲いかかる。
 「始! 頼む、やめてくれ!」
 「無駄だ! ヤツはもはや人間じゃない!」
 やっぱり橘さんが真っ先に変身し、睦月も変身。
 「やるしか……やるしかないのか」
 悩む剣崎も覚悟を決めてブレイドとなり、ギャレンとレンゲルが暴れ回るジョーカーに組み付いて動きを封じた所へ剣を振り下ろす……が、 その一撃はジョーカーの脳天直前で止まる。
 「駄目だ……俺には出来ない……」
 そこへ、業を煮やして飛び込んでくるティターン。
 「引っかかったな」
 いきなりジョーカーを解放、ティターンを捕まえるギャレンとレンゲル。そしてジョーカーの姿からあっさり人間に戻る始。
 「芝居だったんだよ、おまえを誘き出す為のな」
 「ジョーカーが生き残れば、世界は滅びる。ならばおまえもジョーカーを倒したい筈だからな」
 何らかの力で4人の動きを把握しているティターンを罠にはめる為、4人は携帯メールで芝居を打ち合わせし、 ジョーカーの暴走を餌にしたのであった。
 「俺たちの芝居も、おまえの芝居もここまでだ。――変身」
 カリスの攻撃が炸裂し、吹っ飛んで逃げるティターン、一致団結して追う4人のライダー。
 「嫌がっていた筈のジョーカーの姿を囮に使うとは。だが、ヤツの持つ力は、死んだわけではなかった」
 始の中にまだジョーカーの力がある事を知り、姿を消す金居。
 ティターンを追う4人は、泣きじゃくる天音ちゃんと遭遇。
 「始さん、また出て行っちゃって。追いかけてきたら、また化け物が出てきて」
 天音の指さした方向へ向かう4人だが、不意に足を止めたカリスが、天音ちゃんに攻撃。
 「無駄だ。天音ちゃんの姿を借りても、おまえの気配を消す事はできない!」
 それは本物の天音ちゃんではなく、ティターンの変装であった。正体を見せたティターンに次々と攻撃をしかけ、 皆それぞれの武器を使う中、何故か素手で殴るギャレン(笑)
 そしてエボリューションしたブレイドに、3人がそれぞれのカードをレンタルする。
 各スートから4枚の「6」と、スペードの「K」によって放たれるのは、四属性攻撃・フォーカード!
 核に電気に重力磁力……じゃなかった、風と炎と電気と冷気の力をまとったブレイドの突撃斬りにより、ティターン、一刀両断。 ベルトの二つのバックルが開き、ギャレンとレンゲルがそれぞれ封印を果たす。
 「2体封印。これで、残るアンデッドは、あと1体。……いや」
 勝利のポーズもなく、いちはやく剣崎と並んで帰って行く始の背に、橘は厳しいまなざしを向けるのだった――。
 これは全員共通ではあるのですが、橘さんが「偽りのバトルファイトである事を知らない」というのは、実に橘さんにふさわしい、 酷い仕込みだなー(笑) まあこの辺りの核心部分は未だにハッキリしていない点が多いので、本当に偽りなのか、 という所からして色々とひっくり返せてしまう部分ではありますが。
 前回、剣崎/橘と、始/睦月、という組み合わせで展開していましたが、このラストシーンが、去って行く剣崎/始、 それを見つめる橘/睦月、という構図になっているのは、クライマックスへ向けた意識的なものかと思われます。
 睦月は今回の展開で一気に、「仮面ライダーとしての自信と自覚」を持たせる所まで描くのかと思っていたのですが、 そこまでは至らず。残り話数からすると時間なさそうだし、駄目師匠についていく形になるのか。男の絆は多分、Mの絆。
 ティターン戦のクライマックスは、それぞれのカードを使っての必殺攻撃フォーカードで、4人の共闘が格好良く描かれました。 今更ながら、基準の各属性カードだったら「7」でいいようなとも思ったのですが、「7」は「7」でまた何かあるのかしら。 今回は綺麗に決めてきましたが、やはりもう少し、カードの要素は物語に取り込みたかった所であります(^^;
 始さん大暴れはあまりに突然だったのでブラフなのは見え見えでしたが、全て芝居だったという前提で、 本物証明アピールタイムを振り返ると、色々と趣深い。たぶん、広瀬さんは素だし。
 で、ブラフ見え見えでも敢えてジョーカーという札を使ったのは、「嫌がっていた筈のジョーカーの姿を囮に使うとは」 という金居の台詞で、始さんの「変化」を明快にするという意図なのでありましょう。
 一つ残念だったのは、一連の芝居を、ティターンに見られている可能性がある、という意識のもと行っていたとすると、 芝居中の行動には全て意味がある筈であり、喫茶店に寄った意図がある筈なのですが、そこが描かれなかった事。 これだけ練った構成の脚本でそこだけ抜け落ちているとは考えにくいので、あえて喫茶店に寄った(ティターンに天音ちゃんの姿を見せた、 のかと思われる)のはティターンに関する何らかのトラップ要素だったと思うのですが、 尺の都合なりで視聴者へのミスディレクション部分だけ残されたのか? 前回今回と面白かっただけに、 そこがミスディレクションの為のミスディレクションになってしまったのは勿体なかった部分。
 闇の底――研究員から報告を受ける天王路(研究員の出てき方が思わせぶりだったので、一瞬、ここで烏丸所長か?! と期待したけど、 違った)。
 「ティターンが倒されました」
 「かまわんさ別に。いずれにせよ、アンデッドは全て、滅びなければならない。生き残るのは、 究極のアンデッドただ一人。そして私は、神の声を聞くのだ」
 悠然と構える天王路は、懐から一枚のカードを取り出す。そこに描かれていたのは、三頭の犬……ケルベロス?
 喫茶店では、やってきた剣崎にレモン果汁をかけてお返しする始さん、と始さんに愛嬌と遊び心が出てきた描写。果たして、 始はジョーカーなのか、ヒューマンなのか。無駄に責任感に燃える橘さん、 着々と真の目的に向けて進んでいく天王路……偽りのバトルファイトの、行き着く先はどこなのか。
 次回、遂に、物語は全ての謎の核心――「給料」に触れる!!!

◆第45話「見て下さい、俺の残高!」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇)
 冒頭、1話の映像? と思ったらナレーションが被さり、「全てはあの日から始まった――」から名場面集。
 ここに来るまで見ていて心の折れそうになる展開が色々とありましたが、
 「数々の運命のカードが彼等に配られた」
 ってまとめられると、何となく格好いい。
 ここで年末進行の総集編なのかと思ったら、途中から回想シーンを飛び越えて、この先の展開と思える新映像も入ったのですが、 いったいぜんたい、なんでこうなったのか。前回のおさらいが長すぎるより、これまでのまとめとクライマックス予告編の方が良いという事になったのか、 TV放映時の映像が使えない事情でも出来て、潮健児が石橋雅史に変わった修正版みたいな感じなのか。
 色々と困惑させつつ、本編普通にスタート。
 「神よ、あなたは53体のアンデッドをお造りになられた。しかし、私はここに、新たなアンデッドの誕生を宣言する。 ――5枚目のエース」
 制御実験中のカードを封印の石めがけて投げつける天王路。
 「どうだ神よ! おまえの造ったものでないアンデッドは。おまえはその存在を認めるのか!」
 石に吸い込まれたカードは、三頭の魔犬をモチーフとしたアンデッドとして実体化。その場に居た研究員達を皆殺しにするが、 天王路はその惨劇に眉一つ動かさず、ただ嗤う。
 「ふふふふふふははは、ご苦労様、仮面ライダー諸君。そして……さようなら」
 剣崎から、先にブレイドが封印していた最後のクローバーのカードを渡された睦月は、望美と待ち合わせしていた喫茶店で、 始に話しかけてみる。
 「話があるなら早く言え」
 面倒くさそう。
 「残ったアンデッドを封印せずに、そのままにしておく事は出来ないんでしょうか?」
 誰かがそこに辿り着く(視聴者の意識と感情をそこに持っていった上での代弁でもある)のは自然であり、 睦月にその役回りが回ってきました。剣崎と橘さんは「仕事」テーゼを置いているので持って行きにくいし、 広瀬さんはそういう事に興味ないし(そういうテーマ性を担う立ち位置でもない)、 後は虎太郎なのですけど虎太郎だと発言権が弱すぎるし。
 で勿論、互いに戦い合うアンデッドの戦闘本能を知る始さんは、ばっさり否定。
 「でも! 人間を襲わないアンデッドだって居ます。あなたや……嶋さんや……彼女のように」
 ここで手元のカードを見るのは良かったところ。
 「俺は、俺が仮面ライダーでいいのかって、ずっと考えてました。そして思ったんです。俺は……アンデッドの気持ちがわかる。 だから、アンデッドと手を取り合って生きていこう、って」
 博愛主義……かと思ったら、共感ごっこの方へ踏み出してしまう睦月。
 どう転んでも鉄板で駄目な方向へ行く辺り、役立たずさんと魂レベルの繋がりを感じる次第です。
 「甘いな。アンデッドは、人間との共存なんて望んでいない」
 睦月の視点は、あくまで“人間”の視点。アンデッドの抱える敗者の鬱屈と繁栄への渇望を知らない。
 睦月は彼女とデートへ出発し、アンデッドの気配を感じた始は、山中でケルベロスと接触。 エボリューションしようとするがなんとキングカードを吸われ、他のカードも奪われてしまう。
 その頃剣崎は、キャッシュカードが使えずに大ピンチに陥っていた。
 「給料が入ってない?」
 「見てくれよ銀行の残高……27円」
 …………剣崎、家賃かかってない筈なのに(下手すると食費も)、毎月の給料、全部使っているのか。
 給料日に全部おろして財布に入れて、あるだけ使うタイプなのか。
 ……イメージ通りではあるけど。
 さて最終回目前にして、今作最大の謎であった「給料」が、 会社が吹っ飛んで農場で下宿しながら会社の設備を横領してきて地下活動している間も、 ボード名義で毎月振り込まれていた事が判明。
 広瀬さん曰く、「ボードの上部組織が処理していると思っていた」そうですが、いやえーとあなた方、 会社夜逃げしたけど給料が振り込まれているという事は、 自分達の辻アンデッド狩りをどこかもっと上層部の偉い人達が確認してくれているんだ、というそんな適当な認識だったのか。
 今井脚本時代のガンは色々あったけど、この最終盤で、わかりきった物凄い悪性の腫瘍が、もうどうにもならなかったので、 腕ごと切り落として切除されました。
 何度も触れているので今更細かく突っ込む気も起きないのですが、本当にこの設定は、 根本的に何がしたかったのでしょうか?
 「仮面ライダーという仕事」というのを物語の軸にしたかったというのはわかるのですが、 その上で1話で職場壊滅して地下活動になってしまう、というのは企画会議の段階で、 いやそれは駄目だろう……とわかると思うのですけど、どうしてこうなった。
 出社も報告もしていないけどとりあえず給料支払われているから問題なし、とか、 髪の毛先から爪先まで100%頭おかしすぎます(^^;
 広瀬さん達がボードに上部組織が存在する事を知っていたとしても行動は不自然だし、 視聴者にはそんな物が存在しているという情報は与えられていないに等しいし、キャラ主観でも視聴者目線でもおかしくて、 本当に本当に何がしたっかのか。
 中盤から数々のオペを執刀してきた會川昇ですが、こればっかりは、どうにもなりませんでした。
 参加した時点で既に致命的な病巣だったので、仕方がない。
 剣崎が絶望的な状況に陥っている頃、始もまた追い詰められていた。全てのカードを失い、とうとうジョーカーの姿に戻ってしまう始。 一時逃走するも、追撃を受けて川に落下。そしてジョーカーの影響を受け、農場では剣崎が苦しみ出す。
 「全てのアンデッドを、封印・吸収するケルベロスの力。ジョーカーも逃げるしかないとはな」
 ケルベロスの戦いを観察していた天王路は、新たなアンデッドの気配に動くケルベロスの後を追う……。
 両者の戦いはサーチャーに反応しており、河原を調べていた橘は、ジョーカーと遭遇。 全てのカードを奪われ暴走寸前のジョーカーだったが、「俺は、相川、始だ」と暴走を押さえ込む事に成功するもその場に倒れてしまう。
 「もしもこいつが勝ち残ったら、世界は…………今ならこいつを封印できる」
 意識を失ったジョーカーを前に心乱れる橘だったが、結局はジョーカーを付近の山小屋に運んで保護。 仮面ライダーの採用試験には山小屋の利用法という項目があるので、ライダーは山小屋を発見して活用するのが得意なのだ!  そこへ同じく反応を追い、体の不調に苦しむ剣崎を連れたぽんこつトリオがやってきて、 ジョーカーへ変貌した始の姿を目の当たりにする……。
 一方、睦月は金居と遭遇していた。
 「俺を封印したいのか? あの女のように」
 「俺は、君と話したい」
 「話すだと?」
 「もう戦うのはやめないか」
 「はははっ、情けをかけてくれるってか?」
 「違う! 俺は最近、封印したアンデッド達の声が聞こえてくるんです。戦いをやめろ……アンデッドもジョーカーも、 封印される事がなければ、もう何も起こらないって」
 突然、「アンデッドの気持ちがわかる」とか言い出した睦月ですが、 蜘蛛のエースと精神が同居していた事や女王様と同棲していた事による思い込みかと思ったら、一応、根拠があった様子。
 まあこの、「アンデッド達の声が聞こえてくる」自体が、思い込みないし妄想ないし 電波という可能性もありますが(それこそ、蜘蛛エースによるレンゲルの能力的影響かもしれませんが)。
 「戦いをやめて……それでどうする? 仲間のクワガタムシ達と森に暮らせっていうのかい?」
 改めて、アイデンティティはクワガタである事が判明。イケメンだけどクワガタ。クワガタ界の王子。
 「人間と共存すれば」
 「俺は、俺たちの世界を造る。人間など1人も居ない、素晴らしい世界だ。くくっ、共存だと?」
 金居は“人間の理屈”を否定して話し合いはそもそも成立せず、立ち去ろうとするがそこにケルベロスが現れる。
 「人造アンデッドだ……」
 「そんな、馬鹿な……」
 「こいつも説得してみるか?」
 レンゲルは変身して戦いを挑み、その戦いを見ながら、(複数のアンデッドの細胞を合成している)と、 ケルベロスを分析する出来るクワガタ。
 「俺に新しいフォームはない……だけど、強い仲間がいる!」
 戦場は例の船の底に移り、レンゲルは、剣崎に託されたカードのアンデッドをリモート能力で解放。
 「一緒に戦ってくれ!」
 出現した象さんがその声に応え、ケルベロスめがけてハンマーを振るう! と、 アンデッドとしてはその強さもあって印象深かった象さんが、面白い再利用をされました。 そして睦月の「アンデッド達の声が聞こえてくる」があながち妄想でもなかった事がわかりましたが、ただこれ、 レンゲルの特殊能力によるものと思われるので、表向き青春スマイルで「俺たちは共に戦う仲間じゃないか!」と言っているけど、 実態は「俺の為に四の五の言わずにキリキリ働けや、クズが!」という、凄くタチの悪い状態なのではなかろうか。
 象とレンゲルは共闘して攻撃を見舞うが、ケルベロスに吸い込まれてしまう象さん。
 「あいつ、アンデッドを取り込んでしまえるのか」
 今日も星明子状態で、それを見つめるクワガタプリンス。
 続けてレンゲルも全てのカードを強制的に奪われて変身が解けてしまい、ケルベロスに吹き飛ばされる睦月。 そこへやってくるぼんくらコンビ。そして――黒塗りの高級車から降り立つ、天王路博史。
 「無駄な事はやめたほうがいい」
 遂に接触する、理事長とライダー達。
 「全ては計画通りだよ。トライアルシリーズも、ティターンも、ケルベロスを生み出す為の実験に過ぎなかったのだ」
 全てのアンデッドを、封印・吸収するケルベロスアンデッドの作成、それこそが、天王路博史の目的。
 「ケルベロスは誰にも止められない」
 ボンクライダーズは変身してケルベロスに挑みかかり、睦月を救出。これまでこのロケ地では、船底部が用いられていましたが、 サイドの高い所を使い、狭い足場で入れ替わり立ち替わる、というなかなか面白い戦闘。さすがにすぐ、下に降りましたが。
 ギャレンもカードを吸われ、変身解除。ブレイドはエボリューションしようとするが、今キングフォームになればジョーカー化しかねない、 と橘に止められる。
 「――俺は!」
 だが、このままではケルベロスの暴虐を止める事は出来ない。睦月に対して明確な殺意を見せていたケルベロスを食い止め、 ジョーカーと化した始を救うべく、剣崎は覚悟を決めてキングフォームにエボリューション。
 「始の、睦月のカードを返してもらう!」
 ロイヤルストレートフラッシュで一気に勝負をつけようとするキングブレイドだったが、 ケルベロスに必殺技準備状態のカードをかき消され、発動失敗。アンデッドカードを吸収するごとに強くなっていくケルベロスの猛攻を受け、 膝をつく。
 とここまで出れば圧倒的だったキングブレイド、まさかの窮地。
 だが、理事長の「ジョーカーもすぐに封印してやろう」という言葉が、剣崎の胸のエンジンに火を点ける。
 「始を! 睦月を! 橘さんを! これ以上、誰も傷つけさせはしない!」
 どうして始さんは剣崎に対して、こんなにヒロイン力が高いのか。
 ブレイドは二刀流で猛然と反撃に転じ、怒濤のラッシュでケルベロスを後ずさりさせると、長剣を投擲。 胸に剣が突き刺さってひるんでいる内に再びロイヤルストレートフラッシュを展開し、ロイヤルビームでケルベロスを爆散させる。
 ……あ、あれ?
 約1年かけて完成させたケルベロス、まさかの1話で退場。今回はかなり大暴れしましたが、 準備期間を考えると、瞬殺、といっていいレベル。
 「まさか……」
 驚愕する天王路へ向けて悪鬼のごとき形相で振り返るブレイド。

 給 料 払 え

 理事長ぴーんち。

→〔その10へ続く〕

(2015年5月17日)
(2017年3月19日 改訂)
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