■『仮面ライダーブレイド』感想まとめ7■


“心に剣 かがやく勇気
確かに閉じこめて
奇跡 切り札は自分だけ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーブレイド』 感想の、まとめ7(31〜35話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
 なお、サブタイトルが存在しない為、全て筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい。

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◆第31話「ダークストーカー」◆ (監督:長石多可男 脚本:會川昇)
 改めて後半戦という事で、OPチェンジ。過去の《平成ライダー》シリーズでも映像の大幅変更はありますが、 主題歌ごと変わったのは初?? 新主題歌のイントロが格好いい事もあり、 各ライダーの頭部アップから打ち合わせた4つの拳にタイトルが重なる導入部はかなり格好いい。 全体的に曲・詞とストレートに合わせた作りですが、広瀬さんが一応メイン扱いでビックリです(おぃ)
 後ある程度前期OPの雰囲気を残したかったのかもしれませんが、どうしても、“踏ん張って武器を振る” というのはやりたかったのか(笑) さすがにどうにも、格好良くならないゾ。
 タイ焼き伝説の最中、基本存在をスルーされていた睦月は、夜の街で補導されそうになった所で、いきなり変身。 警察官を叩きのめすが、その姿を携帯電話で写真に収めて笑う、少年の姿をした上級アンデッドと遭遇する。一方剣崎は橘の元を訪れ、 睦月を探すのに始の手を借りよう、と持ちかけていた。
 「上城睦月を見つけるのに手を貸せ?」
 ばっかじゃないの、みたいな顔で2人を出迎える始さん(笑)
 剣崎は始の協力を得る事に乗り気だが、不審顔の橘。
 「おまえの戦う目的はなんだ?」
 31話にしてようやく、そこを問う人、登場。
 「全てのアンデッドを封印しておまえはどうする? 何が起こる?」
 始の脳裏に浮かぶのは、凄惨な廃墟のイメージ……そしてその中に倒れる、栗原母子。口をつぐむ始を信用できないと切って捨てる橘さん、 やたらに始さんには攻撃的。……まあ前回の接触の時にバトル寸前だったのではありますが、 基本的に登場人物がそういう因縁を次に会った時には忘れている作品だったので、えらく橘さんだけが性格悪く見えます(笑)
 小夜子さんの件があるのでアンデッド全体に攻撃的……というには、嶋さんはすんなり受け入れていたし、正直、その辺りはちぐはぐ。 つまる所結局、手土産か、手土産持ってこいやという事なのか!!
 橘はその場を去るが、あくなき始ルート攻略を目指す剣崎。「そろそろ秘密を教えてくれよー」と迫るが、 「誰にだって秘密の一つや二つあるだろう」と当然のごとく拒否される。
 「でも俺こういう性格だから、秘密ねぇ……」
 一瞬、動きを止める剣崎、は伏線か。
 1階に上がった橘は、喫茶店で睦月彼女と遭遇。そこへ広瀬から、急報が入る。虎太郎のPCに差出人不明のメールで、 “仮面ライダーレンゲルの写真”が送られてきたのだ! ぽんこつトリオ+橘は写真のアップロード元であるネットカフェを探しに都内に散らばり、 よりにもよって広瀬&虎太郎コンビが、写真のアップロード主である少年アンデッドと遭遇する。
 携帯電話とインターネット……かつてなく現代文明に興じる謎の少年は金色のアンデッド(スカラベアンデッドらしい)を呼び出し、 連絡を受けて駆けつけた剣崎が目にしたのは、まるで彫刻のように固まる広瀬と虎太郎の姿だった。2人は、 範囲指定の時間停止という出鱈目な能力を持つスカラベにより、一時的に時間を凍結させられていたのである。
 キングを名乗る少年に対して変身しようとする剣崎だったが、キングの「ストップ!」の声に応えてスカラベが姿を見せると、 一時停止。その間にベルトとカードを奪われてしまう……!
 一方、橘は街でナチュラルを発見。何かに導くように飛ぶカナリアについていくと、変な建物の中で強面の男達を従えた睦月と再会する。
 黒いジャケットを羽織ってシルクハットを被り、耳にピアスをつけて怪しげな建物に居座る…… と立派な変態紳士への道を歩み始めた睦月は、トランプを広げる。
 「七並べしませんか?」
 ベルトを持ち逃げしたキングを追う剣崎だが、そこに通りすがりの始が参戦。
 「これはこれは、ジョーカー」
 「俺をその名で呼ぶな」
 ダイビング変身する始だったが、時間を止められてカウンターパンチを浴びると、そのままスカラベに捕まってしまう。
 剣崎はキングから、橘は睦月から、いよいよここで、ジョーカーについての説明を受ける。
 「ジョーカーがどんなカードの代わりにでもなるように、どんなアンデッドの姿にでもなれるアンデッドがいます」
 あらゆるアンデッドの能力を身につけられる存在、そして冷酷な殺戮者――それが、JOKER。
 アンデッド大戦そのものに興味は無く、ただこの戦いをメチャメチャにしたい、というキングの挑発に乗り、 投げ捨てられたベルトで変身したブレイドだが、その攻撃はキングが生み出す謎シールドに全て弾かれてしまう。
 「僕を傷つけられるものはいない」
 ブレイドを嘲弄し、瞬間退場するキング。
 時間停止に完全防御と、トンデモバトル化が一気に進行。前半戦のアンデッドが地味だったといえば地味だったので、 差別化を図る意図もあるのか。……それにしても、最強系の能力が一気に出てきましたが(^^;
 後半戦、怒濤の開幕スタートダッシュで、まさかのヒロインレース参戦 を果たした始を探す剣崎は農場へ帰ってアンデッドサーチャーを起動してみるが、反応はない。――だがその時、 何故かサーチャーに反応しないアンデッドが、剣崎を急襲する。
 「けんざきかずま……」
 (なぜ俺の名前を)
 ブレイドはスーパー稲妻キックで謎アンデッドを倒すが、封印カードが何故か効果を示さずに吸い込まれ、アンデッド復活。
 「おまえは……ゆるされない……」
 「許されない?」
 果たして、この謎のアンデッドは何者なのか。そして、そのアンデッドを操っているとおぼしき男が闇の底で蠢いていた……。
 後半戦のスタートは、新キャラに新情報の大盤振る舞いで情報量が多く、ちょっとごちゃあっとした展開に。 画面の明度が全体的に低いのも、印象として輪を掛けています(^^; 今作、謎施設が出てくる度に画面が暗くなるのですが、 経済的な問題なのか。
 そして、ヒロインレースが急変。
 剣崎がいきなり始ルートに入り、これまでヒロインレース参戦をそれとなく回避していた始さんが、一気にオッズ急浮上。 現時点でのオッズは、以下。
栗原天音 5.5倍
嶋昇 8.9倍
相川始 12.7倍
虎太郎 13.2倍
睦月彼女 18.6倍
栗原母 24.3倍
橘朔也 31.1倍
烏丸所長 58.5倍
広瀬栞 272.1倍

 相変わらず決定打に欠ける乱立状態でオッズが割れてますが、烏丸所長がだいぶ後退。
 睦月彼女は、なんとなーくオチが読めるんだよなぁ……。

◆第32話「バトルそしてファイト」◆ (監督:長石多可男 脚本:會川昇)
 ああ、キャストのクレジット見てわかったのですが、前回登場の剣崎のストーカーは、広瀬父(春田純一!)か。 暗くてよくわからなかった……(^^;
 謎アンデッドに殴られまくれるブレイドだったが、ギャレンが駆けつけ、謎アンデッドはゲル状のスライム化して消滅。 割れたガラスを片付けながら、それぞれが聞いたジョーカーについての情報交換中、 ネットカフェの件で警察に拘束されていた虎太郎と広瀬が帰還する。
 「奴は人間の味方じゃない。自分が最強の存在になる為に、アンデッドを封印しているだけだ」
 他のアンデッドを封印してその姿と力を得るジョーカー……ならば始の今の姿は、人間を倒して得たものではないのか?  前回から目が据わりっぱなしの橘は、剣崎に始を助けに行くなど考えるな、と釘を差す。
 「僕は見たいんだよ、君の本来の姿を。ジョーカーの姿を」
 一方、タイムベントによるイジメを受けていた囚われの始は、全てのカードをキングに奪い取られていた。 アンデッドの精神を支配する力を持つキングの目的は一つ――
 「滅茶苦茶にしたいんだよ、この戦いを」
 アンデッド同士が覇権をかけて殺し合い、そこに加わった仮面ライダーがアンデッドを封印する……そんな人知れぬ闇の中の戦いではなく、 人間社会を大々的に巻き込んで世界を滅茶苦茶にしたい。その為にキングは、相川始――ジョーカーを支配して手駒に加えようとしていた。 始の変身途中の写真を喫茶店にEメールしようとするキングに、怒れる始は遂に真の姿を発動する。
 ここは始の叫びから遠景のエフェクトにしてジョーカーの姿は見せないのですが、やたら大がかりなエフェクトで、 思ったより凄い存在らしいジョーカー。
 「ジョーカーにまで辿り着いたようだね。橘くん」
 殺風景な部屋に帰宅した橘は、広瀬父と遭遇。どう考えても家宅不法侵入されているのですが、 ビックリした為か割とすんなり受け入れる(笑) 相手は忍者だから仕方ない。
 「橘くん、ジョーカーは危険だ。そして剣崎くんは、それに飲み込まれる運命にある」
 娘設定で死んだ事になっていた広瀬父、その目的はあくまでも、アンデッドの不死の秘密を解くこと。 その為に今は娘と会う気は無いという忍者は、橘にあるキーワードを伝える。それは、「black&white」。 そのキーワードで言われた通りにボードの機密情報にアクセスした橘は、隠された所長の秘密日記に辿り着く……。
 「運命と闘え」という言葉を残して橘部屋を去った忍者は、変な施設に戻る。そこでは、 スライム化したアンデッド?が箱の中に戻ってきていた。サーチャーに反応しなかった事や封印できなかった事などから、 忍者の研究成果である疑似アンデッドとかっぽいですが、剣崎を狙う理由は不明。忍者が「お帰り」とか態度が柔らかいのですが、 生死について言及されていない広瀬母との関係や如何に。
 その頃、剣崎はいじけ中。
 「君らしくないなぁ、こうしてじっとしてるなんて」
 「え?」
 「うじうじするのは、僕の専売特許。今はっきりしている事は、相川始が敵に捕まってる、それだけじゃない?」
 虎太郎の言葉に自分を取り戻した剣崎は、へたれ野郎が何を言おうが構わねえぜ! と出撃。 広瀬に伝えられた微弱なアンデッド反応の元へとバイクを走らせる。
 「たとえ相手が何でも……誰かを助ける為に走る。それが仮面ライダーよね」
 なんか毎度毎度、再構築が大変そうだなぁ(^^;
 一方、ジョーカーの力によりキングの元から脱出に成功した始は、人間の姿でぼろぼろの体を引きずりながら歩いていた。
 「二度とあの姿に……なるな……」
 鏡を見つめて自らに強く告げる始の前に、変態紳士見習いにクラスチェンジした睦月が現れる。
 「完全にカテゴリーエースに取り込まれたか」
 「ああ、俺は闇の中にいる。いい気分だよ。そして……闇の支配者は、1人でいい」
 以前に少し触れましたが、睦月(レンゲル)は中途半端な状態でうろちょろしているぐらいなら、 きっぱり悪役にしてしまった方がわかりやすくて面白いと思っているので、こうなってむしろスッキリ。 要するに今井さんが睦月に何かこだわりがあったのだろうなぁ……今井脚本の時に比べて、會川脚本におけるこの睦月のバッサリぶりよ(^^;
 レンゲルは変身して始に襲いかかるが、そこへ走ってきた剣崎、躊躇無くレンゲルを轢く。
 以前にもギャレンをバイクの前輪ではたいていましたが、剣崎はバイクに跨がるとちょっと性格変わるタイプなのか。 仮面ライダーは少しぐらいバイクでぶつかっても大丈夫だろ♪ぐらいのノリなのか。
 「知ってるのか、そいつの正体を。最後の一匹まで、アンデッドを追い求めるだけの、冷酷な殺戮マシンだぞ」
 「今は君がそう見える!」
 ここは決して剣崎が一方的な友情に暴走しているだけではなく、その存在の本質を見ようとしている、という表現にもなっており、 良いやり取り。
 剣崎は始をバイクに乗せて逃走し……
 「あのさ……えーと……しばのゆうこ!」
 「なんだ」
 「俺が小一の時に好きだった子の名前。色々考えたんだけど、俺の秘密ってこれぐらいしか思いつかなかった」
 前回の話を持ち出し、そんなどうでもいい情報と、始の重大な秘密の等価交換を迫る。
 「おまえの正体なんてどうでもいい。俺にとっておまえは、相川始だ」
 人間を害して得たかもしれないカード、ハートの2の秘密だけ知りたい……と重ねる剣崎に、 存在の揺れるアイデンティティを認められた始は、遂にその重い口を開く。
 「あのカードに封印されているのは、一万年前の……バトルファイトの勝利者だ」
 「俺たち人類の始祖たる、ヒューマンアンデッド……?」
 ……て、今は亡き伊坂さんが口走っていた「バトルファイト」公式採用なのか。
 なんか色々おかしい気がするんデスガ。
 「奴を封印して以来、俺はジョーカーに戻る事が、忌まわしく感じるようになってしまった。そして、何故か人間を……」
 3年前、カードの封印が解かれた事で現在に解放された始は、その本能の赴くままに次々とアンデッドを狩り、その身に封印していた。 そして戦いの中でヒューマンアンデッドと遭遇し、何故か一切の抵抗をしなかったヒューマンアンデッド(見た目、 相川始)を封印して以来、その性質に変化が生じていたのだ……て、なんか悪性のウィルスでも仕込まれていたのでは。
 遂に始の秘密が解き明かされ、この後、キングとお伴と戦う2人。スカラベによる時間停止状態の中でもなぜキングは動けるのか…… 戦闘を監察した始は、キングがわざとらしく右手に巻いていた布きれが、スカラベの身につけているものと同じである事に気付く。 恐らくそれが鍵、とスカラベにダイブした始は布を奪い取ってブレイドへと渡し、それを身につけたブレイドは時の止まった世界へと入り込む。
 「おまえに俺の時間は、止められない!」
 理屈はよくわからないけど台詞は格好いいけと理屈はよくわからないのですが、スカラベの体の一部を共有しているとか、 そういうニュアンスなのか。ブレイドはスーパー稲妻キックでスカラベを撃破・封印するが、始のカードを手にしたまま、 キングは姿を消す……。
 一瞬ちらっと、キングがアンデッドの姿を見せるのですが、コーカサスオオカブトアンデッドとかそんな感じか。
 ダメージの大きい始はまずは回復が必要。始のカードは自分が取り戻す、と約束する剣崎。
 「俺たち仲間じゃないか」
 「そんなこと言っていいのか。俺の実体は……」
 「相川、始だろ」
 …………うーん……剣崎が始を信頼するに至る流れは、充分に描かれているような描かれていないような、微妙なところ。 “わかり合えるアンデッドも居る”という決定打として、嶋さん回が作品全体のスプリングボードという流れだったのでしょうが、 その嶋さん回の出来がアレで……アレだったので……表現不足の感はぬぐえません。
 この流れなら各キャラクターと嶋さんの関わり方はかなり重要だったわけで、描いておくべき要素はもっと色々あったし、 28話はあんな空虚な内容にしている場合では無かった筈。また逆に橘さんに関しては、嶋さんと馴染ませてはいけなかったような(^^;
 「剣崎、俺の敵はまだそこにいる。そいつは――ジョーカーだ」
 そんな橘が、そこへ据わった目でやってくる。
 背景に飛行機飛ばすのは、きっと監督の趣味。
 烏丸日記に辿り着いた橘は、ライダーシステムがジョーカーの能力分析から開発されていた事、そしてアンデッド大戦にジョーカーが勝利した場合、 世界はあらゆる生命の失われた不毛の荒野になるという結末を知ったのだった。そう、 53枚目のイレギュラーであるジョーカーはいかなる生物種の繁栄にも関係しない、ただ死を呼ぶだけの存在……。
 弱り気味の始を封印しようとする橘だが、始を「ジョーカー」ではなく「相川始」と捉える剣崎は、その前に立ちはだかる。 誰も犠牲にしない戦いの為に、もはや剣崎にとって、相川始は守るべき仲間なのだ。
 ブレイドとギャレン、互いの信念を懸けて対峙した2人の仮面ライダーは、いきなり本気のジャックフォームで、ぶつかり合う……!
 そろそろ剣崎が、アンデッド大戦というシステムそのものに疑義を挟む展開になるのかなぁ。 剣崎の「人間」の捉え方がちょっと踏み外し気味なので、「人間/ヒューマン」の定義付けも作品の中で行わないといけなくなっている気もしますが……この辺り、 會川昇が前年にアニメ版『鋼の錬金術師』にメインライターとして関わっていた影響はあったのかなかったのか。

◆第33話「青春にブレーキはいらない」◆ (監督:息邦夫 脚本:會川昇)
 ぶつかり合う、ジャックフォームとジャックフォーム。
 これまで発動するとすぐに必殺技だったので、本格的な立ち回りは初ですが、翼が軟質パーツで、 マントみたいにはためくという造形は面白い。
 「剣崎! おまえは相川始に取り込まれかけているんだ。目を覚ませ!」
 成る程、駄目師匠的には今回は、洗脳されそうになっている後輩を助けるという、 かつての自分と逆の立場で重ね合わせて盛り上がっているわけですね。さすがにいきなり、 本気(ジャックフォーム)の殴り合いを始めるには根拠薄弱かと思っていたのですが、これで納得。
 ちなみに、もし剣崎が本当に取り込まれそうになっているとしたら、 原因は人類の始祖たるヒューマンアンデッド洗脳ウィルスの可能性が高いわけですが(笑)
 ギャレンは必殺の空中火炎弾を放つが、それを防ぎきるブレイド。
 「しのいだ?! 俺の攻撃を」
 橘さん、格好良く舞い上がったのに大ショック(笑)
 そして、左の頬をはたかれたら、右の拳で思い切り殴り返すのが、剣崎クオリティ。
 ブレイドはフライング電光斬りを発動し、研究所でそれをモニターする忍者。
 「五体を超えるアンデッドのパワーを一気にぶつける。――それがジャックフォーム」
 「違う! これはただのジャックフォームじゃない」
 自分に言い訳しながら、さくっと撃墜されるギャレン。落ちていくギャレンを見下ろすブレイドの顔カットが笑えます(笑)

 剣崎一真、どこまでもライダーに容赦のない男。

 「これが剣崎の潜在能力」
 「だがワタシは、ブレイドに、負けない」
 闇の中でそれを見つめる、忍者と忍者アンデッド。すっかりヒロインモードで戦闘の趨勢を見つめていた始が苦しみだして倒れ、 その間にすごすご撤退したへたれは忍者からの電話を受ける。そして、農場でジョーカーについて意見を交換する剣崎。 ジョーカーは確かに世界を滅ぼす存在なのかもしれない、だが――
 「でもあいつは、ジョーカーである自分を、忌まわしく感じている。あいつはジョーカーに戻りたくない。だから人類を滅ぼす事もない。 俺はそう信じている」
 ここに来て「悪に生まれた存在は悪なのか」的なテーマが顔を出し、これは前半戦から會川脚本で散りばめられていた「運命」 というキーワードとクロスしそう。
 物語を通してキャラクターを描くというのは、一つには「選択」と「変化」を描く事だと思っているのですが、 “変わらないもの”が多いアンデッドにおいて、お花アンデッドに虎太郎との関係を通じて一つの「変化」 が描かれたのは會川脚本の25話でしたし、その辺り、意識して織り込んでいるのだと思われます。
 忍者研究所に呼び出された橘は、忍者が剣崎をストーキングしていた事実を知るとともに、忍者アンデッドとご対面。
 「私が作った」
 剣崎を襲い、ライダーシステムでは封印不能な謎のアンデッドの正体……それは広瀬父が不死の秘密を研究する過程で、 アンデッドの細胞と人間のデータから生み出した人造アンデッド、トライアルDであった。
 忍者は橘に、現状、ジョーカーよりも剣崎の方が危険であると説明。剣崎を救う為には力尽くでもライダーシステムから切り離して保護しなくてはいけない、 とトライアルDと協力して“剣崎を救う”ように剣崎の秘密について語る――。
 「ジョーカーとブレイド……さーて、どうやって滅茶苦茶にしてやろうかな」
 喫茶店を遠目にほくそ笑むキングは、チンピラにからまれていた睦月彼女を面白半分に助け、チンピラをいたぶっていた所を、 彼女から事情を聞いた剣崎と遭遇。
 キングは役回りは非常に面白いのですが、どうにも演技がなぁ……若いキャストだから仕方のない面はあるのですが、どうも、 劇中における重要性に対して役者が噛み合っておらず、勿体ない。
 始が苦しんでいるのは怪我や病気ではなく、今までアンデッドカードの力で押さえ込んでいたジョーカーの本性を強引に押さえつけている為だ、 とキングから聞かされた剣崎は、ブレイドに変身。始のカードを取り返そうとキングに戦いを挑むが、やはりその攻撃はキングに届かない。
 「人類の敵であるジョーカーを救う為に、僕を倒そうなんて。正義の味方としちゃあ、矛盾だな」
 ブレイドはジャックフォームを発動するが、カブトムシの角が剣に変わるという格好いい演出でアンデッドの姿へ変わったキングに、 フライング電光斬りをカウンターで破られ、変身解除。戦闘の反応をサーチした農場の2人は、ブレイドの反応が消失した事に気付く。
 「まさか、剣崎くん……」
 「橘さんは、頼りにならないし」
 遂に
 「橘さんは、頼りにならないし」
 広瀬さんが

 「橘さんは、頼りにならないし」

 断定した!!!
 虎太郎と広瀬は剣崎を探しに飛び出し、ダメージを負って転がっていた剣崎は、川岸で目を覚ます。
 始を救うのは間違っているのか? 自分の中の迷いが力を鈍らせているのか? キングに一方的に叩きのめされた剣崎は惑いを見せるが、 まあ、言っている事が正しい方が必ず勝つ、みたいなそんな世界はそれはそれで困るので、そういう事ではないと思います。
 そこへ突然の爆発。
 「剣崎、おまえは許されない」
 再び現れたトライアルDに対し変身したブレイドは、バイクで轢いてみる。

 アンデッドだし、まぁいいか

 思い切り吹っ飛ぶトライアルDだったが、またも封印カードは効果を発揮せず、再起動。 トライアルDのビーム攻撃を受けてバイクが吹き飛び、変身の解けた剣崎はやってきた広瀬と虎太郎に回収されるが、 トライアルDが走行中の車を攻撃。数台の車が巻き込まれ……と、火薬からカースタントと、今作では珍しいアクション。
 虎太郎達や一般人を巻き込まない為に車から離れた剣崎は、橘と遭遇。
 「橘さん。ヤツです! あの封印できないアンデッドが!」
 「ヤツの名はトライアルD。おまえを追うために生まれた」
 忍者の言葉に従い、トライアルDと協働する橘。果たして、剣崎の秘密とは何なのか……?
 そして、ジョーカーに戻る事を拒否し、「戻らない……二度と……あの姿には……」とうなされる始は、 見舞いに来た剣崎が枕元に置いていった一枚のアンデッドカードを目に留める――。

◆第34話「ブレイド、誰が為の拳」◆ (監督:息邦夫 脚本:會川昇)
 「剣崎! おまえはもう戦ってはならない」
 剣崎が変身する→トライアルDが問答無用で攻撃してくる→周囲が巻き込まれる、となんかテロリスト的な理屈で、 剣崎を止めようとする役立たず。
 「なぜ俺が危険なんですか?!」
 「おまえは……ライダーになってはいけない人間だったんだよ」
 説明の為に剣崎を忍者研究所に連れていこうとする橘だったが、逆に腕を取られて襟首掴まれて足払いで地面に叩きつけられる。
  せんぱーい、へたれが感染するんで、底辺が気安く触らないで貰えます?
 苦しむ始を救う為には、キングを倒してカードを取り戻すしかない。その為には、ブレイドに変身しないわけにはいかない……!
 「剣崎! このままではおまえは!!」
 橘の叫びも耳に届かず、農場へ戻った剣崎はアンデッドサーチャーを自前のノートPCにコピー。 トライアルDの襲撃に巻き込まないように、とわざと憎まれ口を叩いて、ひとり農場を飛び出していく。
 その頃、喫茶店にやってくる睦月。最近は喫茶店で張っていたらしい彼女は睦月が自分に会いにきてくれたと喜ぶが、 すげない態度に平手打ち。そんな彼女を叩こうとする睦月を始が止め、2人は外へ……彼女からすると、 行方不明の彼氏と再会したら目的が自分ではなくランニングシャツの男だったという、超ハードプレイ。
 毒蜘蛛さんには乙女日記公開みたいな羞恥プレイは受けるし、段々、 純粋に可哀想な娘になってきました。
 「楽しみだなぁ。ジョーカーのカードを封印したらどんなカードになるんだろうな。最後の切り札なんだろ?」
 「俺をカード呼ばわりするな」
 この台詞も前回、そしてここまでの流れと呼応しているのでしょうが、ジョーカーとして生まれ、本能の命ずるままに戦い、 ジョーカー(切り札)である事、以外に意味を持たなかった存在が、相川始としてのアイデンティティを得ていく…… という流れがうまく出てきました。ここに来てようやく、始さんの闘争本能の赴くままに戦うバトルジャンキー的性格が、 物語と噛み合って活きる形に。
 巧くまとめているのは會川昇のテクニックなのですが、設定関係はしっかり前半から拾っているわけですし、 基本のストーリーラインはプロデューサー始めスタッフ全体で色々と絡みながら作っている筈ですし、こうなると逆に、 最初から真っ当な脚本陣を揃えて書いていたらどうなっていたのだろう、と思ってしまいます(笑)
 「俺は、最強のライダーだ。いつまでそんな口を叩いている」
 人間の姿のまま抵抗する始を、レンゲルに変身して吹き飛ばす睦月。
 「こんなものは、本当の強さじゃない」
 叩き伏せられた始は、一瞬ジョーカーの姿になるが(道化師モチーフのデザインと思われますが、そこはかとなく、 後のアントホッパーイマジン似)、栗原母子や剣崎、人間との触れ合いが、その解放を押しとどめる。
 「俺は、ジョーカーには戻らない……」
 立ち直った始は剣崎が置いていった 要らない 友情のカードを手にし、ベルトへ通すと、 その力で狼アンデッドに変身し、反撃開始。
 「本当に強いのは!」
 死の間際に愛する家族を想ったもの――。
 「強いのは!」
 己の命を懸けて、他人を守ろうと戦うもの――。
 「人の思いだ!!」
 狼ラッシュによりレンゲルを変身解除に追い込んだ始だったが、苦しみだしてその場に倒れる。そして睦月の耳に届く、 「助けて、睦月!」という彼女の声。始を置いて声の方向へと向かった睦月が目にしたのは気絶して倒れた彼女と、 それを見下ろすキングの姿。
 「なーんだ、つまんない。やっぱりその子の事、心配なんだ。でも、人間の心を残してちゃ、ジョーカーには勝てないよ」
 睦月を嘲弄したキングは、カリスのカードを睦月へ向けて投げ捨てると姿を消す……。
 道に倒れた彼女を上からロングで撮ってカメラ引いていったり、逆に青空を背景にキングを下から撮ったり、 高低差を活かした面白いカットが続くシーンなのですが、ばらまかれたカードを睦月が拾う姿が、どうしても間抜け(笑)
 一方、久々に宿無しになった剣崎は、街をフラフラしていた。
 (みんな……俺に近づかないでくれ……俺の側は、危険なんだ……)
 アンデッドが基本通り魔的であり、ヒーローの周辺人物が狙われる、という構図が存在しなかった為(まあ実際には、 虎太郎と栗原母子は狙われていますが)、剣崎が自分の戦いに周囲が巻き込まれる可能性に強いショックを受ける、というのは、 今作の構造を逆手に取った所。
 剣崎には何か事情があったに違いない、と考える虎太郎と広瀬は、キングに対するある仕掛けを終えると、 虎太郎はタマネギバイクを修理し、広瀬は剣崎を探しに行こうとする。そこで役立たずがやってきてトライアルDの危険性を説明するが、
 「剣崎くんが危険なら、側にいてあげるのが仲間でしょ!」
 と振り切って出て行く広瀬。
 えー前回と今回で、めでたく広瀬さんの「仲間」カテゴリから、橘さんが外れました。
 そして広瀬は、長石階段で転がっていた剣崎を発見する。
 「来ないでくれ!」
 「バカにしないでよ!」
 1人で全てを背負い込もうとする剣崎に、自分達では役に立たないのか、と詰め寄る広瀬。
 「仮面ライダーはみんなを守らなくちゃいけないのに、俺が居るから、被害が広がるなんて、それじゃライダー失格だ!」
 剣崎が「仮面ライダーであろうとする事」にこだわるあまり、自らのヒーロー像に縛られる、というのはキャラクターの特性を生かし、 無神経で不器用な剣崎の思わぬ一番弱い所を突いた、面白い展開。
 「キングだって強い。勝てるかどうかわからないし……」
 状況に追い詰められ、弱音を吐く剣崎に、広瀬は平手打ち。
 「剣崎くん、あなたの仕事は?」
 「……仮面ライダー」
 「仮面ライダーの目的は?」
 「アンデッドを封印する事」
 「剣崎くん、貴方は自分1人で戦ってるんじゃない。戦えないあたし達の代わりに、戦ってくれてる」
 広瀬さんの説得に、農場でバイクを修理する虎太郎の姿がオーバーラップ。
 「あたし達は、ずっと貴方を見てきた。どんなに苦しんで戦ってきたかも知ってる。だから、他の誰かが否定しても、 あたし達だけは言える。
 ――貴方は仮面ライダーだって」
 橘さん大好きだけど基本片思い、“守りたい”という想いが強すぎるゆえに独り相撲に陥りがちだった暴走系主人公・剣崎一真が、 改めて身近な仲間達(ぽんこつトリオ)の存在を認識し、自分が1人で……いや、仮面ライダーだけが戦っているわけではない事を知る。
 確かに、アンデッドと向き合って戦うのは仮面ライダーの仕事だ。
 だが、志を一つに、それを支えてくれる者達が居る。
 そして、支えてくれる者が居るからこそ、守る者は、より強い力を得る。
 26話(ジャックフォーム誕生回)において、《平成ライダー》テーゼに乗っ取り、 古典的な英雄的正義(大義)と現代的な個人的正義の摺り合わせを行った結果、剣崎の個人的正義がまんま英雄的正義なので、 そこを再確認する必要はあったのだろうか、みたいな展開になってしまった今作ですが、 ここでその剣崎の英雄的正義を支える名分を周辺人物の個人的なものとするという、 凄い荒技を繰り出してきました。
 剣崎一真はもしかしたらライダー失格なのかもしれない。しかしそんな剣崎を、仲間達は信じている。
 正義の背景を自分自身の中にしか持たなかった剣崎が、そんな自分の正義を支えてくれる人達の存在に気付く事で、 ヒーローとして一つ脱皮する。まあ、非常にパーソナルな支点ではあるのですが、ここで改めて、 仮面ライダーブレイドというヒーローが、立脚。
 恐らく当初、外から見ていてあれがこれが……というのもあったのかもとは思うのですが、 そういった岡目八目的な部分を感じさせつつも、虎太郎と広瀬の意義を、しっかりと劇的に盛り込んできたのはお見事。
 剣崎が「仮面ライダー」としての自分の戦いを再認識した頃、今日もネットサーフィンを満喫中のキングは、 周囲の視線に居心地の悪さを感じていた。キングに携帯電話を向けながら、後をついてぞろぞろと移動する人々により、 キングは自分が、「悪い人に襲われていた広瀬さんを助けて名前も言わずに去って行った男の子」 としてネットで話題になっている事を知る。
 「やっほー、あたしのヒーロー。――貴方のやり方、真似させてもらったわけ」
 広瀬は虎太郎の描いた似顔絵と一緒に、その男の子を探している、という偽情報をネットにばらまき、 キングの行方を追っていたのである。
 虎太郎の似顔絵技能が久々に役に立ち、前回キングが面白半分に睦月彼女を助けたのも取り込みつつ、 広瀬さんの台詞にも皮肉の効いた、見事な展開。
 広瀬と共にやってきた剣崎は、衆人環視の中で躊躇いなくベルトを装着。
 「いいの? みんな見てるよ?」
 「俺は仮面ライダーだ。――変身」
 開き直ったバカは手に負えない(笑)
 まあ、つい先程まで周辺の被害を凄く気にしていたのに、急に割り切り過ぎな気はしますが(^^; ただ同時にこれは、 改めて仮面ライダーとして人々を守る、という剣崎の決意表明と見えます。
 キングもアンデッドの本性を見せて人々は逃げだし、戦闘開始。開始早々、 コーカサスアンデッドの特殊攻撃により全てのカードを奪われたブレイドは、しかしそれでも素手で突撃する。
 「君はアンデッドの力を借りていただけ。今は無力だ」
 「たとえカードが一枚も無くても! おまえを封印できる筈だ! 俺に……ライダーの資格があるなら!」
 絶対防御を誇るコーカサスアンデッドに、想いを込めた拳をひたすら叩きつけるブレイド。
 微妙に橘さんの台詞を間違えて受け止めている気がするのですが、この齟齬は故意か。
 「戦えない、全ての人の為に! ――俺が戦う!!」
 心に剣、輝く勇気――たとえ戦う拳を持たなくとも、人の心には、闇に負けない輝く思いの力がある。そのBRAVEを支えとし、 影を切り裂くBLADEとなる。
 それが、それこそが、仮面ライダー。
 遂にブレイドの連打がコーカサスを後ずさりさせ、一撃が顔面を捉える。コーカサスの剣を奪ったブレイドは一気に反撃へ転じ、 砕け散る黄金盾。ここで、落ちた自分の剣を拾っての、二刀流の構えは非常に格好良かった。ブレイドは斬撃ラッシュでコーカサスを撃破、 飛び散るカードは広瀬さんが回収し、「気を付けなよ。レンゲルのように、封印したつもりで、僕に支配されないようにね」と、 最後まで性格の悪い台詞を残したスペードのキングの封印に成功する。
 「13枚のカードを手にしたか……」
 戦いの様子をモニターする忍者と役立たず。そしてブレイドに襲いかかるトライアルD。
 「キング、俺に力を貸してもらうぞ」
 ブレイドは、封印したばかりのキングのカードをスロットイン。反発を抑え込み、新たな姿へと変貌する――。

――エボリューション・キング――

 13枚のカードがブレイドの全身に融合し、今、黄金の光を纏い、正義の剣は王の力を手に入れる!
 「これが、キングフォーム……」
 「いや。彼は13体のアンデッドと同時に融合している」
 「そんな事が」
 「普通ならありえない。だが彼は……」
 迫り来るトライアルDに対し、これも大剣へと姿を変えた武器に次々と5枚のカードをセットするキングブレイド。 10・J・Q・K――そしてA。解き放たれるは「ロイヤルストレートフラッシュ」の力や如何に? という所で、続く。
 先週配信の2話分は情報量が一気に多すぎてごちゃごちゃしてしまいましたが、それを踏まえての怒濤の展開で、面白かったです。
 やはりヒーロー物は、「ヒーローとは如何なる存在か」を描いてこそだな、と。それは特に台詞で語るものとは限らず、 「ドルフィーーーン!」みたいなアプローチなど、やり方は色々あるわけですが、後半戦早々、 今作の致命的欠損であり舌足らずに過ぎた部分をしっかり埋めてきました。
 何よりこう、降って湧いた?メインライターとしての立場への迸る気合いか、會川昇の「ヒーロー」への愛が滲み出ているのが良い。
 まだ1クール以上残しているのに、スペードのカードが全部揃ってしまったり、 ブレイドが考え得る最強フォームになってしまいましたが、ここからどう物語を転がしていくのか、お手並み拝見です。
 ここに来て、結構な重要回を全く初見の監督でしたが、ロングのカット、カメラの斜め置きを多用しつつ、悪くない演出。 ちょっと調べたら『ブレイド』自体には助監督でずっと参加していたという事で、納得。
 次回、剣崎、ついにモテ?!

◆第35話「お父さんは同棲なんて許さない」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇)
 トライアルDのビームを弾くキングフォームは、右腕にガントレットを追加装着。
 割と重装甲デザイン好きなので、キングフォームはかなりいい。
 なおOP映像の踏ん張りがキングフォームに。役立たずもいつの間にか、射撃シーンがジャックフォームに。
 「力が……力がみなぎる……!」
 ブレイドはキングパンチでトライアルDを壁に叩きつけ、追い打ちで炸裂する、超必殺技・ロイヤルストレートフラッシュ。 5枚のアンデッドカードの力によって増幅された剣撃は黄金の閃光となり、トライアルDをベルトごと消滅させる。
 観戦していた一般人(広瀬さん)が風圧で倒れて気絶したり、消滅したトライアルDの足跡の形に灰が残っていたりと、 かなり派手な大技という演出。
 無限に近い生命力を持ちながら封印不能、という難敵トライアルDを王者の剣により打ち破ったブレイドだが、変身が自動解除され、 倒れ込んでしまう。そんな剣崎を見つめる謎の少女……。
 一方、レンゲルを退けるも、ジョーカーとヒューマンの間を行き来しながら苦しんでいた始も、キングフォームの気配に気付いていた。
 「剣崎なのか……やめろ…………。おまえはその力を使うな……っ」
 そして闇の底では――
 「幾ら融合係数が高くても、13体のアンデッドと同時に融合できるものなど居ない。居るとすれば彼は……」
 何としてでも剣崎一真をライダーシステムから切り離さなくてはならない。役立たずを取り込んだ忍者は、次の改造実験体が必要だと、 暗闇の中で囁くのであった……。
 広瀬父はじわじわと、怪しげかつマッドな雰囲気が作品世界に馴染んで面白いキャラになって参りました。
 訥々とした語りがなんとも不気味で、伊坂さんとか烏丸所長とは違った暗躍キャラとなっています。
 広瀬が目を覚ました時には姿を消していた剣崎は、謎の少女に廃ビルの一室みたいな部屋に連れ込まれていた。
 「あたし、生原羽美。あなたは、仮面ライダーでしょ」
 「おまえアンデッド?!」
 いつものノリで即座に戦闘態勢に入る剣崎。
 「あなた、自分で言ってたよ、俺は仮面ライダーだーって」
 ハイ、言ってました、すみません。
 「ねえ、なんでライダーなんてやってるわけ?」
 「まあ、仕事だから」
 「仕事?! あんなモンスター達と戦うのが?」
 「いや。あいつらから、人を守るのが」
 「ヒーローってやつだ。人類の自由の為に戦うとか?」
 これは初代『仮面ライダー』のネタで、セルフオマージュという所か。
 また、剣崎が「戦う」のではなく「守る」に力点を置いているというのは、今作らしさを出した部分です。
 「明日一日だけ、あたしのヒーローになってくんない?」
 帰る場所がないという家出少女・羽美に、拾った恩を売りつけられる剣崎。却下しようとするが、カードを取られていた。
 「じゃあこれ、捨てちゃう?」
 更に広瀬からの電話に勝手に応答され、バックアップに見捨てられた剣崎は、やむなく少女の頼みを聞き入れる事に…… とここはコミカルに展開し、一休み。ゲストの役者さんも、、軽いノリの我が儘少女を好演。
 その頃、街にクラゲアンデッドが出現するが、そこへジョーカーがやってきてクラゲは逃亡。喫茶店では、 始さんが変態紳士と外へ行ったまま行方不明、というこれまでにない深刻な事態に、天音ちゃんがその帰還を待っていた……。
 翌日、携帯電話と大事なカードを人質に取られた剣崎は一日ヒーローで羽美と遊園地へ。 羽美の無茶に振り回されながらぐったりしていると、アンデッドサーチャーに反応ありとの連絡が入る。
 「今日はあたしだけのヒーローって約束でしょ」
 「遊びじゃないんだ。返してくれ」
 というやり取りでなんだかんだでカードは返してもらい、羽美は相手の真剣さは推し量れるという、嫌すぎないキャラに収まりました。
 現場に向かう剣崎の背に、「ヒーローなんていない」と呟く羽美……そんな感じで剣崎がイチャイチャしている頃、 退職して自分探しをしていた筈がいつの間にかまた上司のおっさんに振り回される生活になっている橘ギャレンは、 謎施設でトライアルEと対峙し、その攻撃の癖が自分に似ている事に気付く。新たに生み出された実験体――トライアルEは、 橘のデータからこっそり作成された疑似アンデッドだったのだ。
 軽く戦っただけで相手の癖が自分と同じだと見抜く、と橘さんのそれとない優秀さをアピールしているのですが、 割とどうでもいい自分の癖を把握してとくとくと語る辺りに、何とも言えないへたれ臭も漂います。橘さんって、 「そこが俺の欠点だというのはわかっている……だが、それを直すと、俺が俺でなくなるような気がして怖いんだ…… 」みたいな事を真顔で語ってしまうタイプ。まあ、そういうのが好きな女の人も居たわけですが。 それで甘えさせている内にますますタチが悪くなった気がする。
 アンデッドとの合成に不可欠な二つの要素――それは、融合係数の高い人間の遺伝子データと、剣崎一真に対する強い憎悪。
 「俺が剣崎に憎悪を? そんなわけがない」
 「君は心の底で、剣崎に嫉妬している」
 ライダーとしての高い資質を持ち、全ての点でギャレンを凌駕するブレイドの存在……へたれの内角にえぐいボールを放り込んでくる忍者。 ここで、トライアルEに触れる広瀬父の結婚指輪?に橘が目を留める、というのが演出で強調。あと忍者の言動が本当だとすると、 トライアルDにも融合係数の高い人間の遺伝子データが用いられていた事になりますが、さて。
 というか、数字上のデータだけならボードの資料にありそうなのに、“寝ている間にこっそり”を強調した所を見るに、 寝入った橘さんから髪の毛なり血液なり皮膚の一部なりを入手したという事で、ごくナチュラルに家宅不法侵入していただけでは飽き足らず、 広瀬父はますます忍者。
 サーチャーの反応へ向かったブレイドはそこでジョーカーと遭遇し、まさか始の本性だとわからずに殴りかかるが打ち払われる。
 (駄目だ、剣崎……)
 わずかに残った理性で何かを剣崎に伝えようとするが、苦しみだしたジョーカーは大暴れ。 ブレイドはこっそり後をついてきた羽美を工場の崩壊から守り、その間にジョーカーは姿を消す。
 剣崎がジョーカーを始だとわからない、という要素は、情報の限定を面白く使いました。
 平成ライダーだと『アギト』(2001)の時に井上敏樹が積極的に用いた手法ですが(井上敏樹の得意技でもある)、 折角の仮面劇という要素も含め、複数主人公の物語は、それぞれの持つ限られた主観的情報が錯綜すると独特の面白みが増します。
 『アギト』の時だと、それぞれ正体を知らないまま痴情のもつれからバトルを始めたアギトとギルスの仲裁に入ってG3刑事・殉職とか、 終盤に来て遂にライダー同士の正体を認識するのかと思ったら氷川くんがアギトの中身を木野さんと勘違いするとか、あの辺りの展開は面白かった。
 力を抑えきれないジョーカーがあちこちで暴れ回っている中、変態紳士見習いは、 通りすがりのベテランプレイヤーから貰ったカリスのカードセットを見ながらにまにましていた。
 さらっとですがここで、クラブが9枚、ハートが10枚集まっている、と残り枚数が明示されました。
 アンデッドの気配を感じた睦月はコンプリート目指して出撃。そこではジョーカーに怯えて逃げ出したクラゲアンデッドと、 その様子を見ていた謎の女が対峙中。睦月は女を押しのけてレンゲルに変身すると、冷凍ビームでクラゲの動きを止めた所を、 カリス愛用の竜巻キックコンボで撃破・封印。
 「これが 課金の力だ 最強のライダーの戦い方だ」
 ちまちまノーマルガチャなど回しはしない。課金は力、力は正義。
 「よし、クラブの7ゲット」と、メインライター交代で、今度こそカードコレクター路線も定着の模様。
 そんな恥ずかしい少年の姿を見つめる、謎の女。
 「最低の戦いだな」
 女は人間の姿のまま、生身の格闘で睦月を圧倒。踏みつける。
 「私は、私の種族をこの地球の支配者とする為、この戦いに命を懸けている! 君はなんのために戦っている?」
 「なんの……ために……」
 「カテゴリーエースに操られているだけか」
 ここで、信念を持ってバトルファイトに臨むアンデッド、が登場。 まあ今までも伊坂や新名のようにバトルファイト勝ち残りの為に様々な工作を行うアンデッドは居たので、 それなりの強い信念はあったのかもしれませんが、「種族」を引き合いに出して、戦う信念を強く打ち出してきたのは初めてとなり、 この一言で強いインパクトを持たせる事に成功しました。
 「ジョーカーが目覚めた。君に構っている暇はない」
 女は睦月をあしらって姿を消し、その言葉に睦月は、始がジョーカーの姿に戻った事を知る。ヒューマンとジョーカーの姿を行き来し、 山中を彷徨う始の前にカリスのカードの誘導で辿り着いた睦月は、レンゲルに変身するとカードをリリース、 ハートのエース――マンティスアンデッドを封印から解放する!
 「見せてくれ。昨日までの自分にやられる姿を」
 一方、羽美の荷物の中から家族の写真を目にした剣崎は、羽美の両親と兄が既に亡くなっている事を聞く。地震で家が潰れた際に、 両親と兄が羽美1人を家の外へと押し出して彼女を救い、3人は崩れた家の下敷きになって死んだのだ……。その後、 親戚の家で居候生活をする羽美は、守られて自分1人だけが生き残った事で、孤独に苛まれていた。
 「だから知ってるんだ。守ってくれるヒーローなんてどこにもいない。誰も助けてくれない。……みんな、 自分が生きる事しか考えてない」
 「そんな事はない」
 「あんただって同じだよ!」
 そこへ現れる、トライアルE。「仮面ライダー」であり続ける為、剣崎は羽美を守って、トライアルEへと立ち向かう。
 「君は俺が守る――変身!」
 ジョーカーvsマンティスアンデッド、ブレイドvsトライアルE、二つの戦いの行方や如何に!
 うんなんか、『ブレイド』普通に面白くなってきて、つくづく、大切なのは素材より調理法だな、と。
 始さんがジョーカーとヒューマンの間で苦しむのは、エースに翻弄される睦月の二番煎じとも言えるのですが、その上で、 “面白くなる状況”を用意すれば、しっかりと物語は面白くなるし、流れを組めば劇的になる。
 ブレイドとの錯綜、マンティスアンデッドの解放……どうすれば面白くなるのか、をしっかりと積み重ねて繋げていっている。
 會川昇が、気合いの入ったいい仕事。
 で、後半戦に入ってパワーアップ展開に絡めて「剣崎のヒーローとしての脱皮」を描くのと並行して、 今作のヒーロー物としての立て直しも行っているのですが、初代『仮面ライダー』オマージュを含め、今回はかなり直球。
 羽美は設定として剣崎の鏡でしょうし、この出会いをどう転がしてくるのか、ここから如何にして『ブレイド』/剣崎一真らしさを出していくのか楽しみです。
 そして、ジョーカー/始は人間の姿を取り戻せるのか、変態紳士睦月はMの喜びに目覚めてしまうのか、 新しいおっさんを相棒にした橘さんは…………え、えーと…………ま、まあ、前向きに生きていけるといい、なぁ……。 申し訳程度にトライアルEとの戦闘シーンがあったのが、むしろ切ない。
 現状のウスラトンカチぶりでも、「橘さんだから仕方ない」で済むあたり、むしろ人徳は感じますが。

→〔その8へ続く〕

(2014年8月6日)
(2017年3月19日 改訂)
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