■『仮面ライダーブレイド』感想まとめ5■


“take it a try 逃げ出さないのなら
ここにあるすべて
ずっと 抱えたまま走るだけ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーブレイド』 感想の、まとめ5(21〜25話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
 なお、サブタイトルが存在しない為、全て筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい。

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◆第21話「初恋はアンデッドのかおり」◆ (監督:長石多可男 脚本:今井詔二)
 なまじ17〜19話の桐生編で盛り上げてしまった為、反動も手伝って面白くなさが臨界点突破。 しかも台詞が頭悪いとか、構成が酷いとかいう話を超えて、ただただ純粋につまらなくて、見ていて心が折れそうになった。
 ろくな個性も面白みもない山羊男、なんの魅力も無い悪女キャラ、ここに来てえらく綺麗事のヒーロー願望を語り出す睦月、 おざなりな虎太郎引っかけ展開、全く琴線に触れない剣崎と虎太郎の友情……全要素が100%面白くなくて、どうにもならない。
 見え見えの展開でも面白ければいいわけですが、見え見えの上に全く面白くないので、ホントきつい。
 山羊男が重要と見せかけて実は女の方でしたー、というのも全く効果的になっていないし、 そもそも山羊男が冒頭から小物丸出しな上にキャラクターとして面白くなさすぎるし。 その展開なら重要である筈の虎太郎が女に引っかかる過程が飛び飛びすぎるので、虎太郎がちょろすぎる、以外の感想がなく、 なんの盛り上がりもないし。こんな大雑把な人質展開と剣崎と虎太郎の友情とか、21話まで来てやるようなネタでもないし。 虎太郎引っかけ展開自体が見え見えなのだから、せめて引っかけた後になにか一ひねりするとか頭使って欲しいものですが、 何にも頭使わないし。複数の上級アンデッドが動きだす新展開に際し、上級アンデッドが人間の姿になれるから出来るエピソード、 の最初がこれとか、壊滅的。
 以前から何度か指摘している、劇的な盛り上がりの頂点に「変身」を重ねる構成、にはようやくなっているのですが、なった結果、 そこまでの話の質と盛り上げ方が下手すぎてどうしようもないという見えてはいけない真実が見えてしまいました。
 これが偶数話(次回が次週待ち)だったら、ここまで来て遂にリタイアしていたかもしれない、脳にダメージが来るレベルの面白くなさ。
 というわけで今回は、起こった出来事をざっくり気味に。
 先日の借りを返そうとギャレンに殴りかかるカリス。その戦いを見て高揚したレンゲルは半ば自動的に変身するが、またも腹痛で早退。 ……なんか段々、某伝説の鎧みたいになってきた。(※『爆竜戦隊アバレンジャー』)
 橘さんがレンゲル/睦月の事情を説明すると「真の力を手に入れたらぶちのめしてやる」と話聞いてない感じであおって、始さん帰宅。
 「その辺のアンデッドとはひと味違う」発言の直後に、タマネギにぶった切られて逃げ出す山羊男。
 「でも良かった……君がアンデッドじゃなくて」と女に対し、疑っていた事を直球で口にする剣崎。 不器用というか……馬鹿。
 遅い春に盛り上がる虎太郎を「初恋?」と茶化しながらニヤニヤする剣崎と広瀬……という相変わらずの中学生ワールド。 20代の男女がやると、単に気持ち悪いだけです。
 「ベルトを奪う事が出来ないなら、睦月が強くなってエースアンデッドの邪悪な力を押さえ込むしかない」と、睦月を弟子に取る橘、 コインロッカーの記憶に関する事情を聞き出す。
 「動体視力……ギャレンになる時の基礎訓練の一つだ」と、バッティングセンターで、まさかの特訓展開(笑) というかそれ、 根性でなんとかなるのか。
 「すぐ諦めてしまう。その弱い精神力が、カテゴリーエースに取り憑かれるんだ」
 自分よりへたれを発見して、凄く楽しそうな橘さん。
 乗り越えた男が反省を踏まえて言っているというより、自分の事は棚に上げて忘れているっぽく聞こえて困る。
 コインロッカーの記憶と繋がる闇、そこから解放された時に感じた光と祝福、その光を守りたい……とか、いきなり、 綺麗事のヒーロー願望を語り出す睦月。別にそれ自体は構わないのですが、何話も引っ張るネタではなく、 散々うだうだ引っ張った末にそんなオチなら1話か2話でまとめてほしい、という毎度の展開。
 『ブレイド』って書いている人は群像劇のつもりなのでしょうが、集中すれば1話か2話でまとまる話を、 単に薄めて分散して引き延ばしているだけで、群像劇の捉え方そのものが間違っているのだと思う。
 広瀬、PC修復。結局、女が何かしたのかは言及なし……というか蓋開いていたけど、システム的にではなく、物理的に修理したのか、 広瀬さん。
 山羊男を追った剣崎、虎太郎がデート中の植物園に誘い込まれる。虎太郎を人質に取り、お花アンデッドの正体を現す女。 ベルトを置いた生身の剣崎に襲いかかる山羊男……て単に戦闘力奪いたかっただけなのか!
 カリスが飛んできて虎太郎を助け、相変わらずよくわからない心境の変化で「おまえを助けたわけじゃない! 何度も言わせるな!」 とテンプレのあれな感じの台詞を口にしてしまうも、お花は花びら隠れで退却し、無駄働き。 あと、サーチャーの反応を見て走ってくる途中の橘さんも、無駄働き。
 虎太郎からベルトを受け取った剣崎は、ブレイドに変身して山羊を滅多切り、 マッハタックルからスーパー稲妻キックのコンボで山羊を瞬殺封印し、いじける虎太郎を慰める。
 「ブレイドにカリス、楽しみが増えたわね。もっと愉しませてもらうわ」
 そして逃げ去った女は、バッティングセンターで動体視力の特訓に励む睦月を見つめるのであった……。

◆第22話「始、就職活動をする」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇)
 変わった。
 冒頭から急に作品のテンポが変わったなぁ……と思ったら、會川昇が参戦。脚本ベースだけでなく、 作品全体の間合いが急にがらりと変わったのですが、穏便な軌道修正を諦めて、大幅な変更に踏み切った?
 演出に関して言えば、もうこれまでの事は忘れましょうレベルでテンポ変えているのですが、 ここまで変えてきたという事は全体方針かと思われますが、さて。
 女性アンデッドに転がされていたショックを引きずる虎太郎は、取り柄だった料理の味付けが傷心の異次元空間へ突入するが、 それを平然とたいらげる橘さん(いつの間にかたかり)。睦月を鍛えてみようと思う……と報告に来た橘さんがやたらに明るいのですが、 橘さんはもしかして、身近に自分より立場の低い人間が居ると輝くタイプなのであろうか。
 弱者にはひたすら上から目線で、竹藪で睦月に格闘訓練を付ける駄目人間。最初は手も足も出なかった睦月だが、 動体視力の訓練を思い出して橘の攻撃を見切るなど、その資質を見せる。というかなんだろう、この、特訓展開をはしょった感じ。
 地下鉄の駅やライブハウスなどで続発する謎の失踪事件の背後に、地下で蠢くアンデッドの存在を感じた橘と睦月は、 地下の発電施設で人を襲うモグライマジンと戦闘。先日修行を始めたばかりなのに、ギャレンと一緒に変身してしまうレンゲル。 案の定、頭が光って不調に陥り、変身が解けた所を地下へと引きずり込まれてしまう。
 明らかに免許皆伝があまりに早すぎる橘さんのミスですが、所詮、駄目人間には人を導けないという事なのか……。
 地下空間に引きずり込まれた睦月は、行方不明になった人々の死体を発見し、 闇の底で目を覚ます恐怖の記憶……ギャレンが突入してきて事なきを得るが、 半ば錯乱状態で光を求めて地上へ逃げ出した事を橘に責められる。
 「橘さんはいいですよね。死んだ彼女を守れなかった、て理由がある。俺にはない。戦う理由なんてないんです」
 突然、仮面ライダーの志望動機を投げ捨てる睦月(^^;
 ……あれ、前回言っていた「光を守りたい」というのは、“戦う理由”ではないのか。結局それは、 覚悟も自覚もないまま口にしていた綺麗事という扱いなのか。
 思うようにならない自分自身をいじけた流れとはいえ、他人の傷を抉るような事を平気で口にしたり、正直、 睦月のキャラクターがかなりブレているのですが、どうもこう、ブレを承知で、強引に修正してきている感じ。
 いじけモードの睦月はバイクで走り去り、それを見つめる駄目師匠……。
 一方、始は奥さんから仕事を紹介されていた。
 今、無職から大脱出の時!
 かつて栗原父の助手をしていた女流カメラマン・神丘(演じるは『アギト』の小沢さんこと藤田瞳子) の臨時アシスタントを務める事になり、始さんの周囲に出現した若い女の存在に、ふてくされる天音ちゃん。
 同じく、ひとり無職から脱出しようとする始の動きに警戒を強めた剣崎は、その邪魔をしに仕事先へと向かう。 仕事先……東武動物公園で撮影アシスタントを務めていた始は、昼間っから動物園を1人でうろついている100%怪しげなメガネの男に、 アンデッド大戦を示唆すると思われる内容で、思わせぶりに話しかけられる。そして、 機材と一緒に持ち歩いていた栗原家の写真――栗原父がお守り代わりに持ち歩き、 かつてあの雪山で託されたそれ――を持っているのを神丘に見られてしまう、とトラブル続き。 更に神丘に問い詰められた所にお花アンデッドが現れると、踏んだり蹴ったり。
 やはり、働いたら負けなのか。
 お花アンデッドに思いっきり吹っ飛ばされた神丘を助けつつ、さくっと近くの物置に閉じ込めた始はカリスに変身。 しかし相性が悪いのか、またもお花ハリケーンに苦戦するが、突然、空飛ぶカラスアンデッドがお花アンデッドを強襲する、 という思わぬ展開。
 「ようやく会えた、カリス」
 「おまえは」
 「1万年前の約束、今こそ果たそう」
 「……約束?」
 カラスの攻撃を受けてお花は逃げ、仕事の邪魔をしにやってきた剣崎の姿を見て、カラスも飛び去る。
 始いわく上級アンデッドだというカラスの正体は何者なのか、そしてカリスとの「約束」とは――と、 どうせ上級アンデッドが複数出てくるなら、これぐらい興味を引く展開にしないと、といきなり見本みたいに入れてきました。
 その頃、最近学校にも行かずに無職の駄目人間とつるんで生傷を作る生活をしていたらしい睦月は、「ここに居たら俺は、 強くなんかなれない……」と心配する両親に黙って、農場へと家出。ぽんこつトリオに向けて、 「誰かの為に戦う事ができないんです」と愚痴り出す。
 剣崎の両親の死や橘にとっての小夜子の死を取り上げ、まるでそういったトラウマ案件が戦う原動力のように語る睦月に対し、
 「それじゃまるで、不幸な方がいいみたいね!」
 とぶったぎる広瀬さんが、22話にして初めて爽快。
 「そんなにやなら、辞めちゃえば?」
 虎太郎もだいぶ立ち直ってきた様子……というか冒頭のシーンは、作品の空気を変えるにあたって、一応前回までも踏まえています、 というポーズを見せる意味合いが強かった気はします。
 戦う理由はない、しかし仮面ライダーをやめられるわけはない……何故ならそれはエースに選ばれた自分の運命だから、 と酔っ払いだす睦月はだいぶブレましたが、まあなんというか、これまでが面白かったわけでもなんでもないというか鬱陶しいだけだったので、 もうこれで、いいと思います。
 まだ油断なりませんが、今回どう見ても荒療治でこれまでのガンを切除しにきているようにしか見えない。
 「運命ねぇ……そんな事、考えた事もないな」
 「じゃあ、剣崎さんは?」
 「これ、仕事だから」
 「仕事……?」
 「誰から押しつけられたわけでもない、俺が選んだ、命をかける価値のある仕事だ」
 一応の今作のコンセプトを踏まえつつまとめた格好いい所ではあるのですが、だから、今現在も給料は出ているのか…… という疑問がどうしても付きまとう所。
 仮にボードの母体組織があるにしても、機材持ち逃げした上に勤務実態不明の2人に給料払う酔狂な会社があると思えませんし、 接触方法不明で向こうからも接触はしてこず、ただライダー活動をこっそり査定して給料を払っている闇の組織とかあったら、 凄い狂っているのですが。
 いっそ、剣崎と広瀬を哀れんだ虎太郎が、こっそりボード名義でお金を入れているのではないか疑惑。
 まあ勿論、給料出なくなって実質無職でも、剣崎は今更それを捨てられない、というキャラクターであり、例え会社が夜逃げしても、 アンデッド退治という「仕事」を「自分が選んだ責務」として全うしよう、というのはそれはそれで格好いいと思うのですが、 無理な設定を誤魔化しながら貫くよりも、そこもいっそ解体してしまっていいと思うのですが、そこはどうしても譲れないのか、 なにか重大な伏線なのか。
 「……給料、安いって言ってましたよね」
 若者の容赦ないツッコミに、がくっと机に突っ伏す剣崎。
 これまでなら、この一連を延々と恥ずかしい語りにしてしまう所を、短い台詞に意味を込め、ユーモアを交えてテンポ良く展開したのは、 純粋に脚本の腕の差。
 「あんたねぇ……剣崎くんがめっずらしくいい事言ってたのに」
 「まあ……確かにここの大家には、世話になりっぱなしだけどさ」
 「その割には扱いぞんざいだけどね」
 この流れで、剣崎の虎太郎への適当な態度にまでフォローを挟むという、見事な仕事。
 「でも、給料以上のものを貰ってるよ、この仕事で」
 「わかりません……」
 「あのさぁ。もし運命なんてあるとして、でも、運命と、戦う事も出来るんじゃないかな?」
 思い悩む睦月に、笑顔を向ける皆。
 本物の思春期真っ盛りの悩める少年を置いて人生の先輩達の軽妙な会話を展開する事で、ぽんこつ20代トリオに、 中学生日記モードから脱却をはからせており、この先この路線に完全に切り替わるのかはわかりませんが、 この一連の会話シーンはこれまでの今作の病巣を勢い良くぶった切っていくという、物凄いオペ。
 そう簡単にはすっきりできない睦月だったが、そのタイミングで、アンデッドサーチャーが反応を捉える。橘が地下街でモグラと接触し、 剣崎は出撃。戦う理由に惑う睦月は出て行こうとしないが、逃げ遅れた人々をかばった橘が危機に陥った事を知り、 たまらず飛び出していく。
 前半のギャレン&レンゲルvsモグラのシーンもですが、人を守るシーンもかなり意図的に入れていると思われます。 半壊した地下街に駆けつけるがモグラの穴掘り攻撃に苦戦するブレイド、と、戦闘のシチュエーション、 怪人の攻撃方法にも変化を付けるなど、とにかくここまでの欠点を端から補強・改修。
 遅れてやってきた睦月が目にしたのは、逃げ遅れた人々と、瓦礫の下敷きになって重傷を負った橘。 「みんなを連れ出すんだ」という橘の言葉に、闇に怯えながらも睦月は勇気をふるい、人々を地上への出口――光――まで案内する。
 人々を守り、お礼を言われる事で、闇の中に一つの救いを見つける睦月。
 ついでに、「お名前は?」と聞かれて無言で立ち去る剣崎の真似。
 そこは、影響受けなくていい。
 「アンデッドは奥だ、行けぇ!」
 「はい!」
 橘の檄を受けた睦月は走り出し、地下空洞でのブレイドとモグラとの戦いへ飛び込む。
 「剣崎さん!」
 「見つけたみたいだな! おまえの給料の代わり!」
 「はい!」
 光を守る――とは何か、口先だけではなく、心の底からその意味を手にした睦月は、変身の構えを取る。
 (ありがとうございます。お名前は……)
 「俺は……俺は……仮面ライダー。仮面ライダーレンゲルだ!」
 その頃、自宅に戻った神丘は、栗原父が遺した形見のフィルムに、不自然な影が写っていたのを思い出す。PCを使って拡大していくと、 そこに写っていたのは、真冬の山中だというのにワイシャツ姿の――相川始! 果たして相川始は何者なのか、そしてなぜ、 遺品の中に見つからなかったお守りの写真を手にしていたのか?
 疑惑を抱く神丘、謎のカラスアンデッド、暗躍する上級アンデッド達、相川始とは、そしてそもそも、カリスとは何者なのか。 今、物語が大きく動きだす――!
 荒療治。
 だと思われます。
 まだ油断できませんが、これだけ全体のテンポを変え、ここまでの駄目な所をぶった切って改善してきたので、そういう事なのかな、と。
 うだうだ引っ張ってきた睦月を、物凄い勢いで綺麗にまとめた力技でヒーローとして立ち上がらせ、 まだ「面白くなった」わけではないですが、凄く、「すっきりしました」。 さすがに睦月のキャラクターが多少ブレましたが、これはもう、代償として仕方がない。
 このまま、まともになってくれる事に期待。

◆第23話「誰がカリスを封じたか」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇)
 エースアンデッドの邪悪な意志を乗り越え、仮面ライダーとして立ち上がったレンゲル、冷凍ガスキックでモグラを封印。
 超嬉しそうに手に入れたモグラのカード見ているけど、今のところそれを加えて想定される必殺技は、 冷凍ドリルキックだけど、思春期の高校生的にはそれでいいのか。
 ここで各ライダーがそれぞれの必殺キックを見せ、属性の担当が、電撃・炎・風・氷、とハッキリしました。
 核に電気に重力磁力でなくて良かった!
 前回動物園で登場した思わせぶりメガネはカラスじゃなくてワシだったアンデッドの人間体であり、 お花アンデッド女と繋がっていた事が判明。2人の会話でカリスはマンティスアンデッドと言う事もわかりましたが、 カリスという名前で区別して呼ばれているのは強くて伝説だからなのか、 実はみんな○○アンデッドとは別の名前持っているけど劇中で明かされていないからだけなのか。
 後言われてみると確かにカマキリっぽいデザインですが、始さんのライダーグローブのデザインなどから、 カリスはずっと蜂だと思っていました(^^;
 そんな始は写真の件で神丘に迫られ、その修羅場を目撃してしまう剣崎。
 男はなぜ、死の瞬間にまで自分ではなく家族を優先したのか――? それを知りたいという始に「人間なら当たり前の事だ」 と剣崎は告げる……。
 その頃、睦月は駄目師匠からアンデッドカードに関する説明を受けていた。
 ここで劇中初、アンデッド(カード)にそれぞれ、スートと数字が割り振られている事が表現されました。まあ、 エースと絵札はともかく、数字に関してはギミック的な意味は薄いですが。
 初期に素直に説明しておけばよかったものをここで持ってきて、急にカードコレクト要素を出してきたり、 改めてのギミック見せを盛り込む作業が大変そう……て、それ、リアルカード広げているのか(笑)
 割と扱い軽いゾ、アンデッドカード。
 俺もキラカード欲しい、みたいな調子で上級アンデッド封印したいなーという睦月に対し、上級アンデッドは剣崎に任せろ、 と止める橘。エースの意志に翻弄されていた睦月、チキンハートで拒絶反応を起こしていた橘と違い、 剣崎だけが最初から完全にエースと融合しており一段上の強さを持っている………………無神経だから?
 橘さんが剣崎の強さを認める発言をするのは多分初ですが、思わせぶりなので、先への伏線か。あと、前々回、 山羊男をざっくりとぶった切っていましたし、最近、ブレイドが強い理由付けもそれとなく。
 ワシメガネが神丘を攫った事に気付いた始はメガネの元へ向かい、神丘を始末するのではなく、ワシメガネと戦う事を選ぶ。 その手にしたカードを不意打ちで奪い取ったワシは、それが間違いなくハートのーエース――マンティスアンデッドのカードである事を知る。
 すなわち、相川始は“カリスに変身していた”のではなく、“カリスのカードを使って変身していた”のだ!
 「カリスはこの中に封印されている。――ではおまえは誰だ?」
 カリスのカードを懐に収めたメガネに対し、トンボのカードで変身する始。
 トンボアンデッドがやたらにライダー顔だったのは、この伏線だったのか?!
 そこへブレイドが乱入し、ワシは大好きなカリスカードを懐に収めたまま逃走。始はそれを追って走り去り、 剣崎は神丘にからまれるが、始の事をかばう。
 初期の全方位悪態キャラからさすがに少しずつ性格改善していた剣崎ですが、ここ数話で急速に、全方位いい人化。 口は悪いが心は熱い、憎みきれないロクデナシ、みたいに。
 剣崎は、神丘に見せられた栗原一家の写真をごく自然にポケットに収めると始を追いかけ、 どことも知れぬ海岸線に放置プレイを受ける神丘さん。
 始に追いついた剣崎は写真を渡し、カリスのカードを取り返す事を宣言。
 「俺のエースを取り返し、おまえになんの得がある」
 「知って欲しいのさ。人間がなぜ、他人を助けようとするのか」
 だがそこへ、空中からワシが2人を強襲する!
 逃げたと思ったらまた襲ってきたワシは、何をしたいのかいまいち不明。空中戦可能な自分に有利な戦場を選んだという事かもしれませんが、 場面転換とか会話の都合優先といった具合で、今回は全体的に構成がやや強引。 とりあえず始末しないといけない要素を全て詰め込んだ為かもしれませんが(^^;
 空中から攻撃してくるワシに対し、始はブレイドにトンボカードを貸し与え、まさかのビックリ空中戦。 浮揚ブレイドはワシの翼を切り落とし、墜落したワシからカリスのカードを奪還。それを受け取り変身しようとする始だが、 その耳にシャッター音が響く――。神丘の向けるカメラのレンズ……それに気付いて変身をためらう始だったが、結局は変身し、 ワシの流れ弾から神丘を助ける。
 「私をかばったの……?」
 「ここは危険だ。行け!」
 ブレイドとカリスは連携攻撃でワシを撃破、ワシとカリスの「約束」について聞き出す。それは、アンデッド大戦の最後に、 決勝戦で雌雄を決する事。
 「貴方達も同じでしょう。人間とアンデッド……今は手を取り合っていても、いつかは戦う運命」
 「運命……?」
 「貴方達も、内心それを望んでいるんです」
 ブレイドは倒れたワシを封印し、これで空も飛べる筈?
 一方、橘と別れた睦月は、アンデッドカードの封印を解くレンゲルの特殊カードを狙うお花アンデッドに襲われていた。 「カテゴリー10が欲しい」と数字分けの設定を、今更ながら強調。同じく数字を口にしながら技を放とうとするレンゲルだったが、 駄目師匠に適当な組み合わせでカードを使うなと止められた隙に、花に逃げられてしまう。
 すっかり、最初にスーパーレアカード手に入れたせいで、強いカードオンリーでデッキ組む事しか頭にない小学生みたいになった睦月は、 上級アンデッドを封印し損ねた、と不満たらたら。
 「金にあかせてレアカードを集めるんじゃない! 今あるカードの組み合わせで戦うのがカードバトルの醍醐味なんだ!」と口うるさい、 そもそもカードゲームを教えてくれた近所の無職のお兄さんに思いっきり舌打ち。
 やはり、駄目人間には人を導く事など出来ないのか……!
 うじうじ鬱陶しい→ヒーローへ、と思ったら、あっという間に嫌なガキ化してしまった睦月(^^; 一応、 「強さを求める」という根本は繋がってはいるものの、作品大手術のあおりを一身に受けた上に、 剣崎から抜き取られた嫌な奴成分まで注入された感じに。カードコレクト要素を強調する為には「強いカードを欲しがる」というのは、 凄くわかりやすくはあるのですが。
 そもそも、剣崎と橘は「仕事」の延長線上として「人々に被害を及ぼすアンデッドを封印する」という目的意識がありますが、 始がアンデッドの封印にこだわる理由は未だ不明ですし、実はその辺りの目的意識もハッキリせずにいた作品だったり。 橘も現時点はともかく、途中では散々ぶれまくりだったので、睦月のそれをわかりやすくするのは致し方ないところか。
 ところで、なぜか笑顔で全力で「お友達」を確認し合った睦月彼女がここ3回ほど全く出てこないのですが、 時空間から消滅した……? まあ、立ち位置と作風考えると、二度と出てこない方がむしろ幸せになれそうな気しかしないのですが。
 そして――
 「仮面ライダー……カリス……」
 神丘は、始の変身シーンを撮影したフィルムを感光させ、闇へと葬る……アンデッドと戦うあの2人の男を、もう少し信じてみようと……。
 “人を守ったカリス”が、(知らない所で)“仮面ライダー扱いされる”という、象徴的なシーン。
 ……まあ、神丘さん、ちょっと、ちょろい気がするけど(^^;
 途中でも少し触れましたが、今回はいつにも増して場面転換も多く、片付けておかないといけない事をとにかく詰め込んだ、 という作りで全体としてはかなり雑。
 後半に向けてざくざく転がしていく事に関しては予定通りなのかもしれませんが、山羊に引き続き、 上級アンデッドの扱いが使い捨てカイロみたいですし。単体の使い方が悪いというよりは、伊坂とのバランスが悪く、 どうしても肩すかし感を受けてしまいます。
 で、唯一引っ張っているのが、どうも面白くないお花の女(^^;
 悪女系キャラってどうしても見た目の説得力が必要になるので、キャスティングが難しい。
 手術後の期待感で引っ張れる時間には限度がありますが……と思ったら次回、割と新展開?

◆第24話「アンデッドを倒せ! スーパーマシン開発に懸けた男達の熱い24時間」◆ (監督:佐藤健光 脚本:會川昇)
 睦月彼女、復活。
 めでたいのかどうかは、判断に悩む。
 とりあえずこれで、毎回無駄に全サブキャラを出そうとする路線とも訣別した事がハッキリしました。前回今回と、 栗原母娘もばっさりカットしたし。
 どだい、約20分のドラマに強引にキャラクター出し過ぎて話が散漫になっていたので、これも前向きな改善。
 エースの力を御した自信の現れか、ちょっと男らしくなったと彼女に誉められる睦月だったが、 そんな2人のストロベリータイムを引き裂く人々の悲鳴。遊園地を襲う獣人の姿に彼女を逃がし、睦月はレンゲルへと変身、 正直、若干以上に東急ハ○ズで用意したコスプレ臭の強い獣人を蹴散らすが、何故かカードで封印する事ができない。
 そこへ姿を見せるお花アンデッドの女、そして謎の特殊部隊風な男達。男達はアンデッドの存在を知っており、獣人を銃撃すると、 更にお花の女にも銃弾を浴びせる……。
 その頃、剣崎は橘に始の事情について説明をしていた。
 「あいつは、人間の愛情に、興味を持っています」
 そして栗原親子以外に興味のない筈だった態度にも、少しずつ変化が現れている……。
 思いっきり殺しかけ、現在進行形で復讐対象の駄目先輩は、当然「いつ俺たちの敵になるかわからん」と警戒を解こうとはしないが、 「でも、俺は信じたいんです」と剣崎は始に歩み寄りの姿勢を見せる。そしてそんな剣崎の言葉を耳にする虎太郎……。
 『ブレイド』は、基本構造の問題なのでもはや仕方ないのですが、下手にキャラクターを分散してしまった為に、 情報共有の度にシーンが切り替わるのが、非常に困った所。シーンが無いのにいつの間にか情報共有した事になっている、 よりはマシですが、毎度いちいち情報共有の為だけのシーンが入って流れが切れるのが、 大手術によって全体のテンポが良くなった為に、悪目立ちするようになってしまいました。
 早い内に、物語の流れの中で情報共有できる構造になってほしいところ……というかとりあえず、 へたれは諦めて同居すればいいと思うのですが。
 潤いのない男子寮生活みたいな感じで、同居したくない気持ちはわからないでもないけど。
 特殊部隊の車を弾き飛ばすも、アンデッドの動きを封じるという、なんとか細胞活性弾(T? D?)を向けられ、 逃げ出した女の前に現れる、狼アンデッド。両者の戦闘が始まるが、その光景にプールサイドで拍手する、謎の中年。
 「さあ遠慮しないで、続けて続けて」
 「待ってくれ」
 「あなたのテリトリーを、冒すつもりはなかったの」
 軽い調子の中年に対し、どこか怯えた様子になる、2体の上級アンデッド(狼は実はよくわからないけど、 とりあえず面倒くさいのでそういう事にしておく)。逃げた女を追いかけてきた睦月は、その光景を目撃する。
 「おまえも、アンデッドなのか?」
 「勝手にやってくれ。戦いは、嫌いなんだ」
 更にそこへ無職ーずが現れ、3人並んで変身。ブレイドは虎太郎の仇、レンゲルは狼に相対し、余ってしまったギャレンは、 アンデッドかどうか確認もしないまま、とりあえず中年男に殴りかかる(待て)
 狼とお花はさくっと逃げだし、残された中年は「めんどくせーなぁ……」の台詞とともにアンデッドに変身、 水しぶきでめくらましすると逃走……と、これまでとは少々、毛色の違う性格。
 中年ニート生活を堪能していたとおぼしき新上級アンデッドは、タコかイカっぽいデザインですが、花と狼の態度を見るに、 キングだけにダイオウイカとか、そういう感じでしょうか。とりあえず仮称、大王イカアンデッドで。……アンデッド大戦に優勝した場合、 栄える種族が凄くニッチだ。
 「いい事思いついた……あいつとカリスを噛み合わせれば、カリスの正体を知る事が出来る……ふふ」
 お花アンデッドはすっかり、引っかき回す→逃げる→引っかき回す、のコンボだけを繰り返す存在になってきましたが、 アフレコがもうちょっと馴染んでいればなぁ……アフレコ微妙。展開が展開なので、継続して出てくる上級アンデッドも必要、 というのはわかるのですが。
 睦月は封印できない獣人と謎の特殊部隊について説明し、姿を消したアンデッドを探す剣崎達。 狼アンデッドが人を襲っている所に遭遇した剣崎は、被害者が獣人へと変異するのを目撃する。そう、 睦月が遊園地で倒して封印できなかった獣人は、アンデッドの特殊能力により、アンデッドの仲間と化して操られていた人間の死体だったのだ。
 驚く剣崎の前に現れた特殊部隊が、容赦なく獣人を銃殺。そーいえば昔、この流れで拘束されて、 全身スキャンとか受けた事あったな俺……と思い出したか思い出さないか、身構える剣崎の前で、彼等は名乗る。
 「アンデッド・ハンター」――と。
 部隊を率いる男の名は、新名。橘も広瀬もボードでは聞き覚えのない名前だったが、剣崎と橘はその新名からサーキットへ招かれる。
 凄い唐突にバイクレースのシーンが入るのですが、仮面ライダーでチーム作って、バイクレースに出場していた頃 (今どうなのかは知らない)の、協賛企画でしょうか。
 そこで2人が目にしたのは、かつてボードで開発中だった新バイク、ブラックファング(見た目邪悪)。 新名たちアンデッド・ハンターは、ライダーシステムとは別のアンデッド封印方法を研究していたチームであり、 夜逃げ倒産したボードに代わり、アンデッドへの対抗方法を研究し続けるとともに、このブラックファングを完成・量産化しようとしていたのだった。
 新名の誘いに乗り、自分の歌をBGMに、ブラックファングのテスト走行をする橘。
 なんか物凄く恥ずかしいシーンになったけど、今回に限っては橘さんは悪くないよ!
 ブレイドバイクをぶっちぎるブラックファング……だがそのポテンシャルはもっともっと高く、 実戦で蓄積されたブレイドとギャレンのバイクのデータを提供されれば、より高度なマシンとして完成する筈。 一緒にブラックファングを完成させ、そして共にアンデッドと戦おう、という新名たちの申し出に、脳天気に喜ぶ剣崎と、 どこか疑わしげな表情になる橘。だが結局は協力する事になり、妙に尺を取ったバイク開発シーンに突入……
 「なんか、わくわくしますよね、最強のマシンか……」
 「ああ……!」
 訝しんでいた用心はどこへやら、機械いじり始めた途端にノリノリになってしまう橘、これが駄目人間の限界。
 でもきっと、小夜子さんはこんな駄目な橘さんが好きだった、と思うと改めてへたれ需要の精妙さを感じます。
 剣崎達がバイク制作に勤しむ頃、お花アンデッドの気配に飛び出した始は、例のプールサイドへと誘い込まれていた。 喧嘩する気は無いというダイオウイカに対し、「自分で呼び出しておいて、それはないだろ」と話を聞かないというか喧嘩大好きな始さん、変身。
 両者が疲弊した所で漁夫の利を狙う女だったが、「俺をここまで呼び出した仲間はどうした?」というカリスの発言で、 あっさりバレる。
 えー……この女の人はもしかして、「自称エリート」みたいな感じで、自分では策士のつもりだけど全然駄目な人、 という路線に行くのか。
 前回も睦月を騙して転がせば良かったのに、さくっと正体見せちゃうし。たぶん睦月は、虎太郎よりも更に転がしやすかったと思う。
 ダイオウイカは適当にカリスを蹴散らすと女を追う……そして夜明けのサーキットでは、へとへとになった剣崎と橘が目を覚ますと、 ブラックファングの最終調整をしていた筈のハンター達が死屍累々の有様になっていた。新名たちを探す2人の前に姿を見せたのは、 ブラックファングにまたがった、狼アンデッド。そしてバイクは、アンデッドの力を得てより邪悪な姿へと変化する……。
 今回も新たな上級アンデッドが更に登場。そして1人は次回には片付けられそうな気配。これまで延々、 ネタを分散してダラダラと進めてきた今作ですが、いきなり、出したネタをマッハで転がしていく展開となり、 手術後しばらくはそういう方向性で行くという事なのか。邪悪バイクといいアンデッドハンターといい、 食いつきの良さそうなネタを次々と出してはてきぱきと片付け、主要キャラクターに関する思わせぶりな伏線を少しずつ張っていく、 という、のはまあ、正統派の構造であります。
 新名=オオカミなのかは今のところわからないですが、上級アンデッドがそれぞれ、アンデッド大戦を勝ち残る力を得る為に暗躍し、 それに仮面ライダーが絡む、という展開になるのでしょうか。今作に必要なのはそういう、わかりやすいベースラインだとは思いますが。
 何事もわかりやすければいい、というわけではないですが、 最初からハイウェイを外れてフェンスの外へ飛び出してしまった上で全く面白いドライブにならなかった今作としては、 一度ハイウェイに戻っておくのは必要な作業かと思われます。
 にしても前々から感じていたけど、解放されて数年、上級アンデッドの皆さんは結構、人間社会を楽しんでいるとしか思えない。

◆第25話「風はいつも強く吹いてる」◆ (監督:佐藤健光 脚本:會川昇)
 剣崎と橘がアンデッド・ハンターと協力して完成させたブラックファングを奪い取った狼アンデッドは、 邪悪バイクと連動してパワーアップ。「バイクから降りろ」とすごむギャレンだったが、 元アンデッド・ハンターだった獣人軍団がブレイドとギャレンに襲いかかる。
 一方、カリスとイカでもタコでもなく象だったアンデッドをかち合わせようとして失敗したお花は、象と交戦。
 「俺はおまえたちの戦いになど興味は無い。ライダーもアンデッドも勝手に潰し合え。そして全てが死に絶えた後、 俺がこの戦いの覇者となる」
 やる気ない系かと思われた象さんですが、勝つ気は満々でした。
 「そんな事……させるか!」
 「だったら倒してみろ」
 そしてそれは、強者の余裕。
 象の攻撃で大ダメージを受けた花女は人間体となるが、カリスがふらっと現れた隙に逃亡。象も人間の姿になると、 相手の手の内を知らずには戦わない、と帰宅。ブレイドとギャレンが狼の相手で忙しい為、自分にも何か出来る事があるかもしれない、 と象vsお花vsカリスの反応の元へ向かっていた虎太郎は、気絶した花女を見つけて車を止め、思わず駆け寄ってしまう……。
 ところで、ヒーローが大ダメージを受けて変身が解除される、というのは定番のダメージ演出ですが、 アンデッドの場合は“人間の姿”が偽装(変身)なわけで、ダメージを受けて人間体になる、というのは少々おかしい気もするのですが、 わかりやすいので遂やってしまっているのか。或いは、上級アンデッドは“人間の姿になれる”というよりも “アンデッド大戦の勝者である人間の姿に縛られている”状態で、常に真の姿(アンデッド体)を保つ事が出来ず、 普段は人間体を強いられている、とかそんな感じの解釈も出来そうではありますが。
 その頃、狼と戦うブレイドとギャレンは、邪悪バイクと連動した狼に蹴散らされていた。
 「俺の敵はおまえらではない! アンデッドだ! まずは一人残らずアンデッドを倒す!」
 と、狼、花、象、とそれぞれがそれぞれのやり方で、アンデッド大戦の優勝をこそ目的にしている、というのを強調してきました。
 「俺たちの……俺たちのファングを、取り戻す」
 すっかり、思い入れで一杯の無職ーずは走り去った狼を探し求め、その途中、剣崎はファングを引きずってくる新名と遭遇する。 この状況でバイク引きずってくる新名は怪しい通り越して馬鹿っぽいですが、そんな新名に「取り戻してくれたんですね」 と反応を返す剣崎は、馬鹿通り越して脳が不器用だった。
 「新名さん、今度こそ俺たちで新しいボードを作りましょう。人類を助ける、正義の組織を」
 力強く頷く新名だったが、突如、豹変。背後から剣崎を襲おうとするが、割って入った橘に止められる。
 ……いや、狼さん、「俺の敵はおまえらではない」のでは無かったのか……?(^^;
 ブラックファングの出自は、「ボードから盗んだバイク」という、身も蓋もないもの。狼は他のアンデッドを上回る力を得る為、 アンデッド・ハンターを組織して隠れ蓑とすると共にバイクを完成させようとしていたのであった。
 「そして今、おまえらのお陰で俺は最強になった」
 「ふざけんな!」
 裏切られ続けて十数年、遂にキレた剣崎一真、新名を殴り飛ばすと腰に差していたブローソンを奪い取り、 正面から撃ちまくる!
 予想外に全く躊躇せずに引き金引いたよ、剣崎。
 だが、なんとか細胞活性弾も、新名の嘘であり、ただのガラクタに過ぎなかった。
 「全部嘘か……嘘だったのか!」
 全部嘘さ そんなもんさ 夏の恋はまぼろし
 この辺り一応、剣崎の自称「人を信じては裏切られる男」を、新展開の中で復習の為に踏襲しておきたかったのか。
 新名は狼に変身すると剣崎を吹っ飛ばし、「このマシンは俺のためにある」と言い残して走り去るのですが、ホント、 何がしたかったのか。しつこく追いかけてきて面倒くさいし、馬鹿っぽい方は騙し討ちで倒せそうと思ったのか。 実際に倒せそうだったので困るけど……! あと狼は、よく見ると、首から背中に流す感じでマフラーぽいものがついているデザインで、 ライダーを意識している感じ。
 剣崎を助け起こした橘は、まんまとブラックファングを完成させてしまった事について、一緒に反省。当初は怪しんでいた橘だが、 会社のあった頃を思い出して、ちょっと興奮してしまっていたらしい。
 「烏丸所長も俺も、理想に燃えていた。時間を戻す事は出来ない。だが、あの頃の理想が戻ってきた気がした。ファングを見た時」
 「俺も……同じ事を考えていました。ボードに入った時の、夢や希望」

 給料! 給料! ボーナス!

 「ボードはもう無い。だが剣崎、仲間ならいる。俺たちが理想を忘れなければ、いいんだ」
 「全ての人類を、守る為に」
 とにかく立て直す部分が多すぎて大変そうなのですが、長らく今作の大きなガンだった「会社(仕事)」 の部分を何とか収めてきた辺りは、見事なリフォーム。
 夢と理想の「形」は無くなったけど、その「意志」を継げばいい。そしてそれこそが、自分達が選んだ「仕事」である。それは、 「全ての人類を、守る事」と、会社・仕事の流れをうまく盛り込みつつ、主人公達の戦うモチベーションを再確認。
 そして再び立ち上がり、走り出す二人。
 地平線から2台のバイクが走ってきて、「「変身!」」と映像も格好良く収まりました。
 悪女を拾った虎太郎は、なぜ助けたかを問われ、人間ではないとわかっていても見過ごせなかった……と困惑した胸中を述べる。
 始の事もあり、アンデッドをどう捉えればいいのか混乱しだす虎太郎。
 虎太郎のいい人属性も、展開に都合の良いだけの内向きのものから、ようやく外へ向けて生きてきました。 物語当初から「観察者ないし記録者」ポジションだろうとは思われましたが、その視点が、 アンデッドを単純に敵と見られなくなっていく事で、物語に奥行きが生まれ、戦わない者、の存在意義が出てきました。
 もう人間を襲わないと約束してくれれば、それを信じたい。花女にそう告げる虎太郎だったがその時――バックミラーに奴の影。 始に気付いた悪女は虎太郎を気絶させると自ら車外で出てアンデッドの姿へと変わり、始もまた、カリスへと変身する……。
 一方その頃、狼はバイクレースに乱入していた。
 だから、何がしたいんだ!
 映像的にはまあ、面白いのですが。
 狼は邪悪バイクから変な衝撃波を出しながら爆走し、トップに躍り出る。更にそれに追いすがる2人のライダー。 特別出演の山口辰也(2002年全日本ロードレース選手権JSB1000クラスチャンピオン)、ちぎられまくる。 ……と思ったら、同じく衝撃波にあしらわれたブレイドとギャレンを見て、なぜかおもむろに狼を追走。 見事なスリップストリーム走行で狼の衝撃波を無効化するという華麗なドライビングテクニックを見せつけるが、 今度はスモーク焚かれてリタイア。ブレイドとギャレンは、邪悪バイクの衝撃波を封じる手段としてそれを参考に走り出し、 戦いはサーキットから公道へ……。
 映像は格好いいのですが、全員がバイク言語で会話している為、行動が意味不明(笑)
 山口辰也秘伝のスリップストリーム走行により見事に邪悪バイクを追い抜いたブレイドは、 前に回り込んで擦れ違いざまの一閃で狼をバイクから引きずり降ろし、追いついたギャレンは銃でブラックファングを破壊する。
 途中で消えたギャレンは回り込んで連携攻撃でもする作戦なのかと思ったら、カードで加速したブレイドバイクに、 純粋に追いつけなかっただけなのか(^^;
 「どいつもこいつもだらしないなぁ」
 麦わら帽子の象さんがそれを見つめる中、狼を追い詰めた2人の、ダブルライダー雷炎キックが炸裂し、ブレイドが狼を封印する。
 そして――負傷した体で戦いに望んだお花はカリスのソニックパンチを受け、遂に封印される。
 裏目軍師と化していたお花は、だいぶ引っ張りましたが、ここでリタイア。個人的にはあまり面白いキャラと感じていませんでしたし、 これもまた、どたどたっと掃除された感も若干。ただ最後の最後で、負傷して心が弱っていた所を助けられた虎太郎を戦いに巻き込まないという選択をする事で、 まずここを生き延びたらまた人間を襲って悪事を企むのだろうけど、しかし「変化」を見せ、 それを言葉では語らせずにあくまで無言の劇の中に収めた、というのは良かった。
 「本当にアンデッドなんだな、君は」
 「なぜこの女を助けた?」
 「わかってる……馬鹿さ僕は。でも…………でも、信じたかったんだ。……君のせいだ」
 「俺の?」
 「そうすれば、君の事も信じられると思った。アンデッドだけど、姉さんや天音ちゃんを守ってくれる、いい奴だって。 だけど……やっぱり君は、好きになれない」
 なんか酷いぞ虎太郎理論(笑)
 狼を倒し、一瞬だが在りし日のボードの、仕事があった頃の、栄光の給料明細の、 シンボルと化していたブラックファングの残骸を見つめ、物思いにふけっていたブレイドとギャレンの前に姿を見せる麦わら帽子。
 「もっともっとそうやって、アンデッドを倒してくれ。俺は戦いが嫌いだからな」
 立ち去ろうとする麦わら帽子に問答無用で襲いかかる2人だが――果たして?!
 バイクありきの回だとは思いますが、邪悪バイクを手に入れてからの狼の行動は実に意味不明(笑) ただ、 長尺でのバイクアクションは、公道チェイスなどもあり、面白かったです。また、ブラックファングを“俺たちが輝いていた頃” のシンボルとする事で、バイクそのものを物語の中にしっかり取り込み、過去と未来を繋げた、というのはお見事でした。

→〔その6へ続く〕

(2014年2月16日)
(2017年3月19日 改訂)
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