■『仮面ライダーブレイド』感想まとめ4■


“立ち止まれば 消えてしまう
光だけを 追いかけたいのさ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーブレイド』 感想の、まとめ4(16〜20話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
 なお、サブタイトルが存在しない為、全て筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい。

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◆第16話「そうよ私はどこでもアンデッドサーチャーを持ち歩く女」◆ (監督:諸田敏 脚本:今井詔二)
 伊坂が倒れた事で洗脳されていた人達が正気に戻り、剣崎達は蜘蛛のエースカードとクローバーのベルトを回収するが、 一方で橘がベルトとカードを烏丸に返して退職、自分探しの旅に出てしまう。
 「剣崎、おまえと一緒に働けて楽しかったよ、ありがとう」
 引き留める剣崎をきっぱり拒絶する橘であったが、とにかく全ての前提である“仮面ライダーという仕事”をしっかり描けていないので、 この手の台詞は全て滑りっぱなし。
 ぽんこつトリオと合流した烏丸によると、クローバーのベルトはマインドコントロールされている間に烏丸が作ったものらしい。しかし、 蜘蛛のアンデッドの邪悪な意思の働きにより、ブレイドとギャレンのベルトとは、なにか違うものを感じる、との事。
 所長も科学者にしてはあやふやな物言いだし、オカルティストなのかなんなのか、どうにも腰が据わりません。暗躍便利キャラ、 と言ってしまえばそれまでですが。……そして伊坂さんは散々偉そうだったのに、結局、 所長なしだとベルト一つ作れなかったのか(^^;
 栗原家が改めて始を受け入れる宣言をする一方、蜘蛛のカードに操られた虎太郎がベルトとカードを持ち出して装着しようとするが、 すんでの所を剣崎にかばわれる。しかしその際の衝撃で、どこかへ飛んでいってしまうベルト(意味はよくわからない)。
 慌てて、ベルトを探すんだ! の次のシーンで何故か、事態の全貌を解明する手がかりを得る為にもう一度人類基盤史を見直すと、 全ての始まり、ボードストーンの発見された場所であるチベットへと飛んでしまう所長。
 ……いやとりあえず、ベルト見つけてからにして下さい(笑)
 幾ら雲を掴むような話にしても、目の前の最重要課題をぽんこつトリオに丸投げして、海外逃亡とか、所長、酷すぎる。
 その頃、自分探しに出発した愛戦士は、お洒落なカフェテラスで小夜子との思い出に浸ったりなんかしていた。
 「卒業祝いに貰ったパズルのお礼」…………て、橘、あのパズル(小夜子と橘の写真パズル)、卒業祝いで送ったのか?! いや、 小夜子さんの趣味がパズルだったりして他のパズルかもしれませんが、この筋立てで他のパズルとは考えにくいし、橘さん、 へたれすぎて、だいぶ変。
 ……この「変」は、あと少しの経験値で「変態」 にクラスチェンジする、「変」です。
 そんな橘は、デートをすっぽかした事を彼女に平謝りする青年を目撃する。その青年こそ、 蜘蛛アンデッドと遭遇し「レンゲル」と呼びかけられたバスケットマンであり、 伊坂にライダーの被験体として拉致されるも適合レベルが足りずに放置された、上城睦月。まるで呼び合ったかのように、 植え込みに転がっていたベルトを拾ってしまう睦月、そしてそれを確証が無いまでも目撃する橘――。
 一方、烏丸を見送ったぽんこつトリオは、少しでも情報を入手しようと、嫌がる虎太郎を引きずって、喫茶店の始の元へ。
 凄く普通に接客される。
 (小声で)「あいつに言っといてくれ。余計な事を言ったら許さないと」
 普通じゃなかった!
 更に情報交換も拒否されるが、トンボアンデッドの気配を感じて始は飛び出していき、遅れてアンデッドサーチャーの反応に、 出撃する剣崎。
 トンボアンデッド戦は、トンボの飛行能力を見せて、ちょっと面白い戦闘。トンボと一緒に空を飛んだカリスは、 もろともに街の喫茶店に墜落。周囲の状況に全く構わず店内で戦闘を続行するカリスを止めようとするブレイドだが邪険に振り払われ、 カリスの攻撃の流れ弾から客をガード。改めてカリスが、周囲の人間を一切気にしない、という事を身をもって知る。
 「やっぱり……あいつは人間じゃない! 獣だ!」
 カリスは竜巻キック(格好悪い)でトンボを封印。そのカリスに、厳しいまなざしを向けるブレイド。
 「なんだ?」
 「俺には君がわからない。ひょっとしたら、と思った。君と、一緒に戦えるかと」
 「俺は誰とも組まない」
 「でも、天音ちゃん達を守るために!」
 「それでも俺は組まない! …………俺は……俺のやり方しか知らない」
 「そうだな、無理なんだな……」
 カリスは最初は孤高の誇りで誰とも組まないのかと思われていたのですが、気がつくとすっかり、 自分の好きなように戦いたい戦鬼系なので誰とも組めない、という困ったさんに。
 不穏な気配で対峙するブレイドとカリスだったが、その時、変なエフェクトがかかり、新たなライダーが姿を見せる。
 「貴様か……とうとう現れたってわけだ」
 問答無用でカリスを殴り、ブレイドを蹴り飛ばす第四のライダー。果たしてその正体は?! そして橘は、 ベルトを拾ったかもしれない睦月の行方を捜していた……。
 小夜子さん死んだ後に、入れ替わるように睦月の彼女が登場、というのはちょっと萎える。まあ今後、どう使っていくかは知りませんが。 ここ数回少しずつ顔を出して、いよいよ本格参戦の睦月は、宿無し路線だったこれまでの3人と打って変わって、お金持ってる気配。
 金だ、金は力だ!(待て)
 順調に苦行状態になっているので、そろそろテンション上がる展開にならないかなぁかなぁかなぁ……(虚ろな目)。

◆第17話「逮捕」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹)
 レンゲル登場で、OPにライダー増量。
 そして前作『555』で全力機動だった井上敏樹が参戦。脚本家の技術と経験値に加え、監督も呼吸がわかって映像化しやすかったのか、 これまでにないテンポの良さで展開。
 カリスを凌ぐ強さを見せるレンゲルは、ブレイドとカリスが使おうとしたカードから、アンデッドを解放。 逃げたアンデッドを攻撃して封印し、自分のものとするという新展開。
 この際、蜘蛛の糸っぽい演出なのが、以前の蜘蛛アンデッドの、カード使用妨害の発展版といった感じで演出が繋がっていて秀逸。
 新たなライダーの登場に、ベルトが誰かの手に渡ってしまった事を知った剣崎達は、 「睦月」という名の高校生がベルトを拾った可能性が高い、と橘さんと情報交換。橘は「睦月」を一緒に探す事には同意するが、 ベルトの返却は拒否し、あちこちの高校前などで、「睦月」について聞いて回る無職の二人。

 おまわりさん、こっちです。

 橘の見立て通り、レンゲルに変身していた睦月だったが、変身時の記憶は無し。しかし傍らのベルトからおぼろげに 「自分が仮面ライダーになった」事を理解し、その力に救いを求める。
 「助けてくれ……お前の力で……俺を」
 コインロッカーと、赤ん坊の泣き声、果たして、睦月の見る夢の意味は何なのか?
 ストレートに考えると、捨て子、といったところですが、前回、話の進行にあまり関係しないのに、 睦月の家と母親が明確に描かれていたのは、その辺りの布石か。
 ライダー化の影響か部活のバスケットでスーパープレイを連発する睦月だが、目立ちすぎで先輩に因縁をつけられ、 素直に謝って引き下がる。他人と揉めるのが嫌で自分が頭を下げて済むならその方がいい、という睦月だが、 強気な彼女はそんな睦月の弱腰の態度が不満。
 たまたま剣崎と出くわした睦月は、自分が剣崎の探している「睦月」である事を隠しつつ、 先日レオアンデッドに助けられたお礼として食事をおごりながら、仮面ライダーについて、うまく剣崎から聞き出そうとする。
 剣崎いわく「給料も安いし残業代も出ない」という事なのですが……そもそも今、給料、出てないのでは。というか現状で、 毎月給料だけ振り込まれていたら、その方がホラー。
 ホント今作は、最初に“仕事”部分をしっかり描いていない為、本来なら面白くなる筈のこの手のネタが、全て活きずに勿体ない。
 一方、橘は街中で、刑事を襲った犯罪者を「貴様に生きている資格はない!」といきなり電ショックで抹殺しているヒゲの男を目撃。 その男の名は、桐生。かつてギャレンの適合者だった男。桐生を追う橘だったが、その姿を見失ってしまう……。
 新キャラの桐生は、電ショックのスイッチが、腰のベルトについているというのが、おいしい。上着のまくり方とか、 意図的なライダーとの被せ、というのがインパクトを強くしています。
 橘が当初の目的を忘れて桐生を探し回っている頃、剣崎は万引きの罪を着せられていた。
 たまたまそのスーパーでバイトをしていた睦月から、憐れみの視線を向けられる低所得仮面ライダー。
 ここは剣崎と睦月の関連を強める為のコミカル要素の強いシーンなのですが、主人公が犯罪の濡れ衣を着せられなくても良かったな、 とは。しかも謝って勘弁してもらっただけで、実質犯罪者扱いのままというのは、どうもいただけない。 別に剣崎が追いかけてきた睦月と一緒に万引き犯を捕まえる、という展開でも良かったと思いますし。
 エンストしたバイクを押しながら「仮面ライダー」を気にする睦月につきまとわれる剣崎。
 「仮面ライダーである事は遊びじゃない。下手に首を突っ込むと、大怪我するぞ」
 「俺だって、俺だって遊びじゃない」
 そこへアンデッド出現の連絡が入り、現場へ急行。レンゲルによって再解放された猪っぽいアンデッドと戦うブレイドだったが、 その光景を見た睦月は、自らのベルトを取り出して装着する。
 「俺も戦いますよ、仮面ライダーとして」
 紫の紋章をくぐり抜け、睦月から変身したレンゲルは猪アンデッドを軽く蹴り飛ばす。
 「そんな……それじゃおまえが、おまえが睦月ってやつだったのか!」
 「違う。俺の名はレンゲル。――最強の仮面ライダー」
 変身した途端に睦月は主導権を乗っ取られ、レンゲルはブレイドを攻撃。反撃しようとするブレイドだったが、 またもカードの封印を解かれてしまい、更に3体のアンデッドが野に放たれる事となる――。
 割と怪人の消費が激しかった今作ですが、ここで再利用展開。
 そして橘の元には、ある“事故”以来、ボードから姿を消していたという桐生からの電話がかかってきていた……。
 桐生とは果たして何者なのか、“事故”とは何か、睦月が執拗に「仮面ライダー」にこだわる理由は……?  テンポ良く謎を畳みかけてくる展開は、井上敏樹、さすがの持ち味。役者さんの都合などもあったのかもしれませんが、 ばっさり始さん不在にして、睦月に物語の焦点を集中する事で、今作のここまでの欠点である散漫さも減じ、すっきりとまとまりました。
 また全体としての改善傾向になると思われますが、引っ張る新キャラ出すなら、いきなり腰の変なスイッチ押した!  ぐらいのインパクトがやはり必要であるな、と。
 ただ、テンポは良いものの布石回に終始しており、エピソードとしての面白さはまだ、いまひとつ。

◆第18話「俺たちが守るべきは法律じゃない」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹)
 各ライダーの人間時のイメージカットも入って、ようやくOPがそれらしくなってきたけど、だからいいのか、というと、 やはり良くはない。
 クローバーという事でか棍棒もとい見た目魔法のステッキを振り回すレンゲルはブレイドを滅多打ちにするが、 戦闘中に苦しみだし、睦月の姿へと戻る。
 そんな睦月の胸ぐら掴んで締め上げる剣崎さん、安定の不器用。
 剣崎は変身してからの記憶が無いという睦月を農場に連れ込み、「もうちょっとしたら、 慣れてきてちゃんとしたライダーになれると思う……」という睦月から、ベルトを取り上げて回収する。
 「忘れろよ、ライダーの事なんか。普通の生活に戻るんだ。それが、おまえの為なんだから……」
 一方、電話で呼び出しを受けた橘はかつてボードに所属していた男、桐生豪と接触する。桐生は、 チベットに高飛びする前の烏丸所長から連絡を受け、愛戦士としてバーニングしたのも束の間、 いい年して自分探しを初めてしまった橘へたれの力になるように頼まれていたのだった。
 「情けない奴だ……! やはりギャレンには、俺がなるべきだったな」
 当然、リングアウトした橘に、パイプ椅子を投げつける……!
 「ついてこい、今の俺の仕事を見せてやる」
 どうやら警察無線を違法に傍受しているらしい桐生はバイクで走り出すと、幼女を人質にとった逃亡犯の前にいち早く先回り。 右手から放つ高圧電流で、犯罪者を抹殺する。

 ジャン○ーソン・フォー・ジャスティス!

 ギャレンの適合者として選ばれるも実験時の事故で変身に失敗、右手を失った桐生は鋼鉄の義手を改造し、 犯罪者をデリートする必殺!仕事人に転職していたのであった。
 回想見る限り、変身時に出てくる四角い光にぶつかって腕が吹っ飛んだ、というのを「事故」と称していいのか、 物凄く疑問ですが。後どうもこの事実、剣崎には隠蔽されていたみたい。
 そして本人は「仕事」と主張していますが、裏に闇の組織があるといった雰囲気はなく、どうも私的に犯罪者を掃除して回っている、 自称ハイパーメディアパニッシャー、みたいな感じっぽい(^^;
 つまり、新 た な る 無 職 !
 「俺の心には、行き場の無い正義への憧れが残っちまった」
 仮面ライダーになれなかった男・桐生豪……法の壁をぶち破り、私的に犯罪者にジャスティスを執行するその姿を、 比較的常識人のぽんこつは批難する。しかし……
 「おまえにわかるか? ギャレンである事を捨てた腰抜けのおまえに、この俺のどうしようもない気持ちが」
 この時の橘さんが、実にいい苦悶の表情。
 近づいてくるパトカーのサイレンに桐生は走り去り、取り残される橘。
 ……早く逃げないと、逮捕されるぞ!
 「現場に居た不審な男は、俺は仮面ライダーだ! などと意味不明の譫言を発しており、正常な判断力があった状態か……」とか、 (2×歳・無職)の肩書きで報道されるぞ!
 どうやら幸い官憲の手を逃れたぽんこつは、農場へ。いちいち「桐生さんと会った」とお喋りに来たり、 「桐生さんに腰抜け呼ばわりされた!」と愚痴りに来たり、橘さんは本当に、友達居ないな!
 前回ちらりと登場した桐生豪は、金の為でもなく、誰かを守る為でもなく、 「正義」という名をつけた己のエゴを満たす為だけに犯罪者を抹殺して回るという、物凄くタチの悪いシリアルキラー。
 正義のヒーローになり損ねた結果、歪んでしまった男の登場により、正義のヒーローの持つ暗黒面「だけ」を抽出し、 正義の持つ暴力性と狂気を瞬間的に抉りだしてみせたのは、さすがの手腕。完全に一線を踏み越えた人の登場で、 なかなか刺激的な展開になって参りました。
 剣崎達がぽんこつの愚痴に付き合っている中、再び姿を消すレンゲルのベルト。それは一体どうしたわけか、 傷心で家に戻った睦月の部屋に姿を現す……と、すっかり呪いのアイテムに。
 「おまえ……帰ってきてくれたんだ、俺のところへ。わかったよ、俺、頑張るから。頑張って、おまえの力、俺の物にしてみせる。 もっともっと強くなって、そしたら、あの暗闇の中から、抜け出せる事が出来るんだ」
 再びベルトを手にする睦月だったが、邪悪な意志の影響か、その性格に少しずつ変化が生じていく。 バスケットの試合で荒れたプレイをし、先輩達を突き飛ばすなど、これまでになく乱暴な言動と行動を見せる睦月を心配する彼女。 睦月を探してそんな彼女と接触した剣崎は、睦月が以前に、「俺は、暗闇の名から生まれた、とか……」と口にしていた事を聞く。 そんな睦月が、犯罪者?の腕を捻り上げるのを目に留める桐生……。
 ほぼ前振りなく、前を行くバイク(恐らくは犯罪者)をあおって交通事故を起こしかける桐生、というのは、 身勝手な正義を振りかざす桐生がそれしか見えていない、という事の表現を含んでいたのだとは思いますが (この前の橘にジャスティス執行を見せつけるシーンでもあまり人質を気にしていませんでしたし)、やや強引にはなったか。あと、 追う方も逃げる方もフルフェイスなので、単純に分かりづらかった。
 その頃、自分探し1万年の始さんは、天音ちゃんからお試しメニューを振る舞われていた。
 (暖かい……だがこの温もりは、俺にとって何を意味するんだ)
 レンゲルにあしらわれた自分は、弱くなっているのではないか……?
 人間との交流で得た暖かさには、意味があるのか、無いのか……。
 一方、自分探し一年生の橘さんは、 元はと言えば俺がへたれでぽんこつで薬に逃げてテンション上がって蜘蛛のエースアンデッドの封印なんかしたからだ…… と最近の自分の所行について反省していた。
 歪んだ正義に囚われて暴走する元先輩の姿に、さすがに落ち込む橘……またここは、橘の先輩である桐生は、剣崎の先輩である橘、 の投影であり、橘さんにどれぐらいの自覚があるのかはさておき、 電ショック桐生と打ち上げ花火橘の重ね合わせという意図も込められているのかと思われます(あくまで立ち位置の重ね合わせであり、 内面は異なりますが)。
 「何もそうやって、橘さんが全て背負い込む事、ないじゃないですか」
 「そうだよな、俺は弱い男だからな」
 面倒くさい受け止め方された!
 或いは、透けて見える本音を読み取られた。
 「そんな事は!」
 「……いや。ギャレンのベルトを捨て、格好つけて飛び出していったくせに、 俺はなんだかんだ言い訳つけながらお前らの周りをうろついている。一人になるのが怖いんだ」

 自覚あった!!

 くっ……ここ数話の橘さんの、最低のへたれ→愛バーニング→自分探し→完全なるぽんこつ化→自虐モード突入、 という立ち位置のジェットコースターぶりは、面白すぎて目眩が……!
 結局友達少ない同士、仲良くベルトもとい睦月を探しに行く事になる二人。一方、徐々に悪意に冒されていき、 衝動的に彼女の首を絞めてしまった睦月は、ギリギリで正気を取り戻して走り去る。そんな睦月の姿を見つめる桐生、 そこへやってくる無職ーず。彼女に襲いかかってしまった事にショックを受けた睦月はダムにベルトを投げ捨てるが、 呪いのアイテムなので捨てる事ができない。
 「俺を受け入れろ……俺の力を……」
 とうとうストレートに喋りだしたベルト(CV:害地大臣)は、睦月の腰に勝手にはまると勝手に変身。 追いついた無職ーずをあっさりと無視して、いつの間にか現れたバイクで走り出すレンゲル――その向かった先では、 再利用アンデッドカルテットが「俺たち一緒にのし上がろうぜ!」と意気投合でもしたのか、みんなで仲良く人間を襲っていた。
 そこへ飛び込むレンゲル、追いかけてくる剣崎と橘、駆けつける始。
 人々を守る為、レンゲルを止める為、3人は変身する!

 …………じゃなかった、約一名、役に立たないの居たわーーー。

 一瞬凄く普通に、お、ここでいよいよライダー揃い踏み来るのか、というぐらい盛り上がった流れだっただけに、 一人脇に突っ立っているだけ、という事実に気付いた時のがっくり感がひとしおで、実に素晴らしい構成(笑)
 人々の危機に駆けつけたヒーローが揃って変身する、という約束事の流れ、視聴者の感じる条件反射、を逆手に取っている辺り、 実に上手い。またここに持ってくる為に始さんのほのぼのシーンを挟んでおいたり、群像劇の流れの巧さはさすが。 クライマックスに盛り上がりのピークを持ってくる為のシナリオの逆算、というのが(当然)しっかり出来ています。 メインライターの方は、とにかくこれが出来ていない。出来ていない、というかそもそも、そういう計算してないっぽいというか。
 ブレイド・カリス・レンゲル・再利用アンデッド4体・ぽんこつ(がや)
 という、7人大乱戦。誰が敵で誰が味方かもよくわからない状況の中、どさくさに紛れてタマネギを殴る魔法戦士レンゲルさん。 ブレイドを締め上げるレンゲルだったが、その光景に彼女の首を絞めた光景のフラッシュバックした睦月がそれを強引に押さえ込み、 動きの止まったレンゲルにブレイドは渾身のパンチを炸裂させる。
 ブレイドパンチで吹き飛んだレンゲルは変身が解除され、気絶する睦月。そこへ歩み寄る白いスーツの影が、 睦月の腰から外れたベルトへと手を伸ばす――。睦月の体に群がっていた蜘蛛が白いスーツの足下へと移動していき、人影は、 手にしたベルトを腰にはめる。その男は……
 「桐生さん!」
 「変身!」
 橘の見る前でレンゲルへと変身した桐生は、4体のアンデッドをさくっと従える――!
 ……おおおおおおおお、18話にして! 初めて! 今作を少し面白いと思った!!
 キャラクター一人(桐生)でここまで劇的に面白くできるのか! という凄いエピソード。勿論、 駄目なりにここまでの積み重ねがあった上で、ではありますが、井上敏樹の凄味と底力を見せつけられました。
 何事も単純化できればいい、というわけではありませんが、
 仮面ライダーを捨てた男・橘朔也
 仮面ライダーになりたい男・上城睦月
 仮面ライダーになれなかった男・桐生豪
 という対比構造を明確にし、物語の軸がしっかりと定まる事で、キャラクターに感情移入しやすくなったのが非常に大きい。
 『ブレイド』の大きな欠点である、焦点の合わない物語の散漫さ、キャラクターへ感情移入する余地の少なさ、 という部分に一気に風穴を開けてきました。
 一つ一つは目新しいわけではないけれど、要素を組み合わせる事で化学変化を起こさせる、これが調理というものです。
 またこの対比構造が明確になる事で、ひたすら真っ直ぐな男(多分)である剣崎が活きる………… ところまではまだ手が回っていませんが、縦糸としてはそういう事になるのかな、と。
 上の表現を使うならば、
 仮面ライダーであろうとする男・剣崎一真
 といったところか。
 とすると始はどうなのか、という事になりますが……今の流れだと、
 仮面ライダーになるかもしれない男・相川始
 なのかなぁ。
 或いは、順序考えるとカリスのベルトの方がライダーシステムのオリジンないしそれに近い位置にある筈なので、 「仮面ライダーだった男」という可能性もありますが。
 個人的に好きなテーマ性が入ってきた、というのもあり、この盛り上がりを維持してくれるのを期待したい所ですが、 次回……果たしてぽんこつは最底辺から脱出する事が出来るのか?!

◆第19話「腑抜けども、哀しみの正義を叫べ」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹)
 桐生が変身したレンゲルはカリスを圧倒し、橘さんに浴びせたくなるような「この××野郎!」的な罵詈雑言と共に、 魔法のステッキで顔面をつつきまくる。
 「やめろ! 桐生さん、やめてくれ」
 「ならばお前が戦え、橘! ギャレンとして、おまえがな」
 カリスを虚仮にして満足した桐生レンゲルは気分良く去って行き、その指示で撤退する仲良しアンデッド四天王。 ベルトを手にした桐生は、自らが辿り着いた力にほくそ笑む。
 「遂に俺は手に入れた……最高の力を。俺は最強の仮面ライダーだ」
 一方、ベルトを失った睦月は圧迫面接を受けていた。
 「君みたいな愚図がライダーになれるとか、夢見るのやめよーよ」
 「24時間戦える?」
 「まずはここにある牛乳30本を全て飲み干して下さい」
 「彼女居るの? その顔で?」
 ガラの悪い無職4人に半円で囲まれてすごすごと帰宅した睦月は日常に戻り、元の睦月に戻った事を喜ぶ彼女。 バスケットの試合で精細を欠く睦月の姿に、「よっし可愛いぞ! やっぱ睦月はああでなくっちゃ!」と喜ぶ姿には、 入れ替わりの登場はもとよりポジション的にも小夜子さんの後継者となる素質を感じます。
 レンゲルに滅多打ちにされた始はぼろぼろの状態で喫茶店へと帰り着くが、腑抜け呼ばわりにいたくプライドを傷つけられたらしく、 屈辱にうなされる。そして思い悩むもう一人の腑抜けは、意を決して桐生の元へと向かう。 邪悪な意志の宿るレンゲルのベルトを手放すようにストレートな説得を試みる橘であったが、桐生はそれを拒否し、 橘にギャレンとして自分と戦うように求める。
 「今の俺に悩みはない。俺の意志とベルトの意志は完全に一つだ。俺は全てのものを倒す。俺以外のライダーもな。 それが俺とおまえが戦う理由だ」
 「あなたの……あなたの正義はどうなったんです」
 「そんなものどうでも良かったのさ。レンゲルの力を手に入れて、俺は初めて気がついた。正義なんてなぁ、 ただの言い訳に過ぎない。俺はただ、力が振るいたかっただけなんだ」
 エクスキューズを取っ払った「正義」の暗黒面を、これでもかと台詞にし続けるデンジャーな桐生さん。
 ここでの橘と桐生の会話は、超至近距離で舐めるように睨み合っているようにカット割りで見せていて、熱い。
 桐生はあくまでギャレンとの戦いを要求して去って行き、二人のやり取りを見ていた剣崎は、桐生は橘に助けてほしいのではないか、 とドリームを語り出す。
 「よせ……何ができる……何ができる」
 しかし、腑抜けはただひたすらに腑抜けであった。
 我腑抜け、故に我あり。
 一方、平和な日常に戻ったかと思われた睦月からはまだ、ベルトの影響が消えてはいなかった。 室内をひっくり返しベルトを探し求める睦月は、「俺を暗闇の中に閉じ込めておきたいんだ! 俺は出たいんだよ、暗闇の中から!」 と両親に掴みかかると家を飛び出し、農場に忍び込んでギャレンのベルトを盗み出す(前回、伏線あり)。
 立派な窃盗犯となった睦月は、レンゲルと接触してベルトの交換を求めるが、仲良しアンデッド四天王を率いる桐生レンゲルは、 それに応えようとはしない。
 「無駄だ。ギャレンのベルトを持つ資格のある者はこの世でたった一人。……それは、俺ではない」
 “仮面ライダーになれなかった男”が、正義の力を渇望しながらも、一方で橘ギャレンを認めている、という姿に漂う、 桐生の破滅的な自棄は、何とも物悲しさを感じます。
 睦月を追ってきた無職ーずはこの局面に遭遇し、ブレイド変身。ブレイドとレンゲルの戦いを見つめる腑抜けの脳裏に、 あの事故後、病室の桐生から託された言葉が甦る……
 「頼む……俺のかわりに戦ってくれ。ギャレンとして。おまえなら出来る」
 なれなかった者から、なるべき者への言葉。
 (おまえなら出来る……)
 なすべき事は何か。
 それは、歪んでしまった志をただす事。
 橘の背後に迫るアンデッド、ここでバトルテーマが入り、一転、 振り返った腑抜けは駆け出してアンデッドをかわすと睦月の取り落としたベルトを手にし、ブレイドとレンゲルの戦う眼下へと飛び降りる。
 「変身!」
 「待っていたぞ、ギャレン!」
 ぶつかり合う、ギャレンとレンゲル。ギャレン、容赦なく銃を乱射。

 ――橘朔也は、へたれで腑抜けでぽんこつである。だが、彼のへたれゲージがマックスまで溜まった時、 蓄積されたマイナスのエネルギーが反転し、全身を駆け巡る反へたれ粒子の影響により、愛と哀しみの鬼畜戦士へと転身するのだ!

 未だかつてアンデッドにすら見せた事のなかった、遠距離から手数で制するというえぐい戦法でレンゲルを押さえ込んだギャレンは、 I Love You「さよこぉぉぉぉぉ!」キックを炸裂させ、派手に吹き飛ぶレンゲル。
 大ダメージを負ったレンゲルの変身は解除され、桐生から外れたベルトを手にするのは熱にうかされたような足取りで現れた睦月、 桐生の体から睦月への体へと移動していく蜘蛛の群れ……。
 デザインの良かったスパイダーアンデッドですが、一貫して、小蜘蛛の演出はいい感じ。
 睦月はどう考えても制作サイドの嫌がらせを感じるちょっと恥ずかしいポーズで、レンゲルへと変身。 その変身を呆然と見つめた桐生は、アンデッド四天王に襲われる……。
 危うくI Love You「さよこぉぉぉぉぉ!」キックが桐生さんの死因になって橘さんにキルマークがついてしまう所でしたが、 桐生の始末はアンデッドが付ける事に。
 とは言っても、半死半生にしたの橘さんだし、指示出すないし傍観していたのは睦月レンゲルではありますが。
 桐生さんは因果応報的に処理しないといけないキャラクターだったので、責任の所在は分散してうまく誤魔化しつつ、 睦月はどうも本格的に、救われないルートへ入った感も。
 駆けつけたブレイドとギャレンがアンデッドを撃破し、四天王はブレイドが再封印。……どさくさで、カリスの微妙に取られた?
 瀕死の桐生はその光景――仮面ライダーの戦い――を目に焼き付け、駆け寄る橘に最期の言葉を遺す。
 「ふっ、なんてツラしてんだ……情けねえ。……俺はな、昔からおまえに言いたい事があった」
 「はい……」
 「もっとバカになれ。真面目すぎるんだよ、おまえは。詰まらねえやつだ。これで良かったんだ……結局、 おまえには勝てなかったって事さ。なりたかったよ、俺も……仮面ライダーに。ライダーに……」
 正義に憧れ、正義を求め、正義に狂った男、桐生豪、死す。
 その光景を見つめ、無言で去って行くレンゲル。そのまま無音で予告前のカットに入る、という演出が格好いい。
 橘さんは、見せ場の度に周辺人物が死ぬ、という凄いキャラクターになってきているな!
 小夜子さん変死の第一発見者の時点からだと思いますが、間違いなく、警察のマーク対象。
 3エピソードで退場するも印象深かった桐生ですが、彼が終始、「仮面ライダー」という役割を求めていた、というのは面白い点。 彼にとって「仮面ライダー」は力を振るい、正義を満たす為の器であり、逆に言えば、役割無き正義は満たされず、 やがて外へ向けて振るわれる「力」になるしかない。
 「正義とは何か」よりも「正義が満たされるとは何か」という所に踏み込んでいるのは、 桐生編の大事なテーマだったのかな、と。
 この辺り、一応のコンセプトである、職業としての仮面ライダー(重ねて書きますが劇中表現としてほぼ成立してないけど)、 と絡めているのも巧みな部分でした。

◆第20話「剣崎、居候を自覚する」◆ (監督:長石多可男 脚本:今井詔二)
 せっかくの長石回なのに、脚本家、戻ってこなくていいのに……(ぼそっ)。
 コインロッカーの記憶に悩まされる睦月を待ち伏せ、ベルトを回収しようとする昼間っからぶらぶらしている剣崎 (無職・22歳)だったが、レンゲルが解放したムカデアンデッドの相手をしている内にまんまと逃げられてしまう。
 してやったりでテンション高い睦月に迫る新たなる無職、橘へたれ。
 ベルトが欲しいなら力尽くで奪ってみろ、と、恥ずかしいポーズを決めて変身する睦月だが、戦闘中に苦しみだし、強制的に変身解除。
 「どうやら君は、力を自由に操れないようだな」
 ベルトは睦月を弄んでいるだけだ、と説得を試みる橘だったが、「俺は強く、強くなりたいんだ!」と睦月は話を聞かず、 ベルトを握ったまま走り去って行く。
 そろそろこの、仮面ライダーになりたい睦月→やめろよそんなのー→ベルトが消えたり現れたりレンゲルが偏頭痛だったり→ 俺は強くなりたいんだ! も飽きてきたというか、あまり延々と引っ張るネタでも無いと思うのですが、いつまでこの流れ、続けるのか。 いっそ桐生編のようにベルトが色々な適合者の所を転々として騒動を起こす、とかの方がまだ話を面白く作れそうな気もするのですが。
 あと、今は亡き伊坂さん、自信満々だったのに全然ベルトがエースアンデッド制御出来てませんよ!  或いは、烏丸所長のライダーシステムが不備だらけというか。
 カテゴリーエースは睦月を弄んでいるが、強引に奪い取ってもベルトが自ら戻っていくだけ、 そして睦月はどうしてあそこまで力にこだわるのか……根本的に解決する方法を思案する橘は、 睦月のストーキングを開始。そこに剣崎も合流し、二人の無職に家を突き止められた睦月、 社会的に大ピンチ!
 ……いや待て、逆に考えるんだ、これはチャンスだ、これは付きまとわれて自分の世間体が大ピンチ、ではない、 むしろ通報して奴等を社会的に抹殺するチャンス!
 …………と思ったけど、睦月も不法侵入と窃盗やってたーーーーーー!!
 指紋ベタベタだし、失う者がない二人に対して、睦月の方がダメージが大きそう……という事で、 お互いの世間体を人質に睨み合いに入る無職ーずと睦月。ここで橘と睦月が絡むのは、お薬最高時代の橘と、 ベルト大好き睦月を重ねている、という所でしょうか。桐生の死によりへたれモードからやや脱却した橘さんに、 周囲の人物を心配する心の余裕が出来ている、という表現にもなっています。
 一方、すっかり喧嘩屋キャラが定着した始さんは、
 (二度とあんな事は言わせない……今度こそ奴を)
 と、しつこく腑抜け事件を根に持っていた。
 そんな始に、そもそもどうしてここへ来たのか、を問う虎太郎だが、始はそれに言葉を濁す。しつこく始に迫る虎太郎だったが、 天音から「始さんを責める人は、私の敵よ!」宣言を受け、叔父さん、リタイア。
 傷心の虎太郎は農場への帰り道、エンストで困っていた女性と接近遭遇。謎の成り行きで女性を家に招く事になるが、 その光景を背後から、派手な柄シャツの新たな上級アンデッドが見つめていた……。
 「この二人は剣崎くんと広瀬さん。この家の居候なんだ」
 「居候?!」
 「……だって家賃払ってないじゃん」
 「納得」
 20話にして、剣崎がやたらに虎太郎(家主)に対して態度が大きいのは、 そもそも居候の自覚が無かったからという事が発覚。もう剣崎は、先日の廃屋で暮らしていればいいと思う。
 突然の春に浮かれる虎太郎は、自分の文章を女性に見せたいと、応接間のパソコンを触らせる…… そのPCにはアンデッドサーチャーが入っている、と抗議する広瀬だが……広瀬さん貴女、家主(20代男子)のPCにサーチャー入れて、 好き放題に使っていたのか。
 酷い! 酷すぎるよ二人とも!
 人間としての底辺すぎる扱いに、哀れな虎太郎に代わって強く抗議したいと思います。
 虎太郎が女性と車で出ていった後、広瀬のもとへ「俺のアンデッドサーチャーが反応している」と橘から連絡が入る。 へたれが単独であまりに役に立たないので、携帯電話に仕込んで貰った模様。だが、何故か反応しない広瀬のサーチャー。 サーチャー壊れていると、広瀬さんの存在意義ガガガ。なんとか橘のサーチャーで場所を確定して、 橘と剣崎は現場へと向かい、橘の姿を見た睦月はそれに同行しようとする。レンゲルの力は危険すぎると拒否する橘だが、 強引にバイクで追いついてきた睦月と共に現場へと向かう事に。
 「いいか、君は決して手を出すな! 俺の戦い方を見ているだけだ」
 へたれから、何を学べと。
 一方、剣崎の前には始が現れ、付近に現れては消える上級アンデッドの気配から、 どうやら虎太郎がアンデッドに狙われているようだと忠告。剣崎は虎太郎の後を追い、ムカデアンデッドの元へは始が向かう。
 サーチャーが後出しの都合もあって、相変わらず被害現場に間に合わない仮面ライダー達なのですが、 初期はある程度アンデッド被害を描写する意義はあったように思いますが、わざわざ幼稚園バス虐殺とか、さすがにどうなのか。 アンデッドがいつまで立っても通り魔的(人間の殺害そのものに深い意味が無い)な事も含めて、そろそろ、 被害シーンを描写する意味そのものが、作品として薄れている、というかやりすぎるとマイナスにしかなっていない気がします (この辺りは、脚本と演出、どちら主導か何とも言えませんが)。
 橘&睦月ペアより一足先にムカデと接触したカリスは、竜巻キックでムカデを封印。遅れてやってきた橘の顔を見て、 (あれ……? 俺しばらく前に、こいつに殺されそうになったよな)と思い出す……。ストッパー(天音ちゃん)と接触していない橘さん、 大ピーンチ。
 その頃、虎太郎と女を追う剣崎の前には、柄シャツの上級アンデッドが立ちはだかっていた。口から青い衝撃波を放ち、 変貌したアンデッドの正体を見て、怪訝な顔になる剣崎。
 うんなんかこう、「これ何の動物?」という気持ちはわかります(笑)
 果たして女の正体は上級アンデッドなのか、虎太郎の春は淡く儚く消えるのか、サーチャー不調の原因は、 「ライダーを探す」と口にする柄シャツアンデッドの目的は……そして橘は生き残る事が出来るのか?! 次回予告を見る限り、 少なくとも虎太郎は駄目そうだ!
 伊坂デリートの後、桐生編を挟んで、新たな上級アンデッドが登場。とりあえず、演技が微妙(^^;  仮に上級アンデッドがスート×絵柄で12体居るとすると、今後はどんどん消費していく形になるのかもしれませんが。今のところ、 虎太郎に接近した女が上級アンデッドなのかどうかは不明ですが、それぞれキング・クイーン・ジャックに該当するとすれば、 4体の女性型上級アンデッドが居るという事になるのかしら。……まあ大体こういうのは、何体かはそれぞれの争いで敗れていて、 出てこないと相場は決まってますが(笑)
 伊坂・柄シャツ・女? と来て3体で、カリス/始さんは、そもそも封印されていたのか? という所から始まって、 微妙に上級アンデッドとも違うカテゴリぽいのですけど、さて。
 デザインに意匠が含まれていたりするのかはわかりませんが、設定としては各アンデッドの対応するトランプとかも決まっているのでしょうけど、 割と使えない人だった事が判明しつつある伊坂さんがキングだったのかジャックだったのかは、少し気になる所です (※ダイヤのジャック、との事)。
 それにしても本当にこう、今井脚本になると途端に戦闘盛り上がらなくて、もはや凄い。 これだけ流れがそこへ向かっていないと、演出でフォローするにも限度があります。
 一つ興味深いのは、戦闘シーンの扱いが悪いからおざなりにラストにちょっとあるだけ、というわけではなく、むしろ、 無駄な戦闘シーンが多い事。その為に盛り上がりの山が散らばった結果、 結果としてエピソード全体が散漫になってしまう。
 例えば今回で言えば、OPに繋がるブレイドとムカデの戦闘はともかく、ギャレンとレンゲルの戦闘シーンは不要でしたし、 少し前で言えば、ギャレンvs伊坂の決着編はAパート、Bパートで2回戦闘するよりも、 喪服からの戦闘シーンで1発クライマックスにした方が盛り上がったと思います。
 で、段々わかってきた事は、どうもこの脚本家の中では、戦闘シーンも、「物語を進める為のイベントシーン」 として他の会話シーンなどと同列の扱いであって、「物語を積み重ねていって盛り上げた所で戦闘でクライマックス」 という感覚が無さそうな事。
 以前に“着ぐるみに愛がない”という表現を用いましたが、どうも「ギャレンとレンゲルが殴り合う」と「虎太郎が始と話す」 「橘と剣崎が睦月の家を見張って会話する」などが全て、脚本家内部でシーンとして等価なのではないか、と思われます。
 それを一つの作劇法として全否定はしませんが、結果的にここまでの面白くなさを考えると、 それはヒーロー物の作劇法としてやはり面白くない、と言わざるを得ません。
 まあ根本的に、では戦闘以外のシーンで力入れて盛り上げられているのか、というと、そこも別に面白くない、 というのもあるのですが(^^;
 どうも演出陣の困っている感じが画面から伝わってくるのも含め、『ブレイド』が根本的にしっくり来ない一つの要因はそこであろうな、と。

→〔その5へ続く〕

(2014年2月16日)
(2017年3月19日 改訂)
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