■『仮面ライダーブレイド』感想まとめ2■
“未知の強さ 走りながら探し当てる 最後の切り札”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーブレイド』
感想の、まとめ2(6〜10話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
なお、サブタイトルが存在しない為、全て筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい。
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- ◆第6話「エスケープ・フロム・農場」◆ (監督:長石多可男 脚本:今井詔二)
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カリスさんは抗体袋を発見(結局、触角みたいな所でした)・入手すると用済みとばかりにばっさりアンデッドを始末して封印し、
殴り合っている剣崎とか放置して病院へ。届けられた抗体により天音は無事に助かり、一安心。
剣崎は状況証拠としては真っ黒な始を問い詰める。
「言ってくれ、君なんだろ、さっきのライダー」
「知りません、なんの話です」
「じゃあ言うぞ! 天音ちゃんにおまえがライダーだって! そして何度も俺と戦っていると!」
どこまで性格悪いのか、剣崎。
さいてー、剣崎、さいてー。
後むしろ最後のは、「じゃあ悪いのは剣崎」という事になると思うのですが。
「そんな事を言ってみろ……俺は貴様をぶっ殺す!」
恫喝、そして、笑顔。
「嫌われるよ。お喋りすぎる奴は。誰にだって触れられたくない事がある。忘れるんだな」
……ごめんなさい、その男は、もう充分に嫌われ者なんです。
(なぜだ……なぜ俺は、この子の事になると冷静さを失う。人間のような感情、わからない)
病室で天音を見つめて独白する始/カリスは、これまでの諸々の台詞や緑の体液など、完全に“人間ではない”という事でいい模様。
そして彼が雪山で最期を看取ったとおぼしき天音父との関係やいかに。
天音が持ち直して一安心で農場へ戻った野郎二人だったが、今度は父親の事をメモに書き残して、広瀬が家出。
二人は広瀬を探して街へと向かい、その広瀬は京浜東北線に乗って大船の方へ去って行く烏丸所長を発見する。
その烏丸は橘さん懇意の女医さんに接触し、伝言を託す。
「ライダーシステムに不備はない」
システムが適合者の肉体にダメージを与える事はない。だが、着用者の恐怖心が適合レベルによっては破滅のイメージを植え付けてしまう事はあり、
それが臓器に精神的影響を与える可能性は存在する。
…………それは、不備というのでは。
破滅のイメージを乗り越えるには恐怖心を取り除くしかない……そう告げる烏丸だったが、突如、
謎のジープとトラックに追われて逃走する。
一方、剣崎と虎太郎は港で広瀬を発見。自分の父が解放したアンデッドが次々と人を殺しているのかもしれない……
いじけて埠頭で座り込んでいた広瀬に、またなんか、訥々と演説を始める剣崎さん。えーと、
アンデッドが悪い事をしたら痛みに変えろとか、バネにしろとか、だから一緒にアンデッドを倒そうぜ、とか、そんな感じで。
そこへ着信する、烏丸からのメール。
「逃げろ。危険が迫っている」
直後、烏丸を追っていたのと同様とおぼしきジープとトラックが3人を取り囲み、謎の部隊が姿を見せる。
問答無用で襲いかかってくる覆面部隊を迎撃する剣崎達だったが、広瀬と虎太郎を逃がして剣崎は捕まってしまう。
ここで逃げ惑っているだけだと本格的に役に立たなくなる事を危惧されたか、アクションを見せる広瀬さんですが……
広瀬さんが強いというより、覆面部隊の練度低すぎに見えるのが何とも。というか、
どうして特殊警棒持って銃も構えているのに、素手で剣崎に襲いかかって殴り飛ばされているのか(笑)
バランス的にアクションシーンを入れたい、剣崎は捕まえたいけど二人は逃がしたい、故にいきなり本気で襲えない、と、
色々なしわ寄せが来た感じに。
「ライダーシステム2号、ブレイドを確保しました」
覆面部隊は拘束した剣崎を連れ去り、始に精神的接触を行っていたり、橘と女医さんを覗いたりしていた、
謎めいたサングラスの男に連絡を取る。そして烏丸から間接的に「この臆病者の、×××××野郎、
そんなにライダーシステムが怖いなら、家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな、HAHAHA!」的な罵倒を受けた橘は、
夜の街をフラフラしていた所、そのサングラスの男に出会う。
浮いた!
火を噴いた!
思わず橘はギャレンに変身して銃撃戦を開始するが、そんな二人の戦いを物陰から始が見つめていた……。
果たして戦いの行方は、そして囚われの剣崎の運命や如何に?!
……まあ正直、剣崎は割とどうでもいいけど。
薄々感じていた事をこの5−6話で何となく確信を得たのですが、今作の大きな問題点の一つは、
脚本家に着ぐるみへの愛がない。
怪人(アンデッド)がただのストーリー上の障害物であって、キャラクターになっていない。
これは別に声をつけて個性を出せ、というわけではなく、あまりにも劇中の扱いが悪い。なんか出てくる→人間を何人か殺す→
ライダーにやられる、というだけで、存在感があまりに薄く、怪人を活かした展開が全くない。そして、敵役の存在感が薄いという事は、
必然、それを倒すヒーローの戦いも盛り上がらないのです。
ヒーローと怪人は作劇上はあくまで補完関係にあって、怪人の存在感があるからこそヒーローの存在感も増すのであり、
怪人の扱いがあまりに雑だと、ヒーローも光を放てません。
実際、ギャレンさんなど実にリアル時間で一ヶ月以上、何の役にも立ってないわけであり、これ一つとっても、
作品の構成として大きな問題と言えます。
多数の伏線と登場人物が入り乱れての連続ドラマ、長編サスペンス志向の試みはわかるのですが、
パターン破りの意欲だけが先行して本分が置き去りになっており、視聴者にじっくり(しばらく我慢して)見て欲しいという構造なのに、
じっくり見て貰う努力をしていない。
同時にキャラクターが、「ストーリーを進行させる為の台詞」と「自分の背景設定に合わせた台詞」を別々に語るので、
揃って分裂気味。
とにかく、全てがちぐはぐ。
何度か書いている事を改めてまとめますが、今作のキーワードは、「ちぐはぐ」、「置いてきぼり」、
「どうしてこうなった」
さて、長石監督参戦で、海が綺麗。
や、海が綺麗なのは監督の力ではないですが、綺麗な海を印象的に入れられるのは監督の力。風車と月のカットなども美しく、
繋ぎのカットの綺麗さはさすが。個人的贔屓もありますが、安定の演出力。
- ◆第7話「中学生日記」◆ (監督:諸田敏 脚本:今井詔二)
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全編通して異常なまでに画面にエフェクトかけたり、照明でトばしたりしていますが、えー…………セットが安いの?
それとも、脚本があまりに酷くて演出に困っているのか。
多少シナリオがあれでも(今作は多少ではないけど)演出良ければ割と見られる派なのですが、逆に演出悪いと本気で辛い。
ギャレンさん、火を噴く謎の男・伊坂にやられ……そうになったところを通りすがりのタンクローリーに捕まって大脱出。
伊坂は戦闘の様子を見ていた始と知り合いらしく、「手を組まないか?」と持ちかけるが、さっくり断られるも、
結局二人で伊坂の秘密施設へ。そこでは捕らえられた剣崎が、CTスキャンの中で大暴れしていた。
広瀬と虎太郎は港で体育座り中に橘から電話を受け、お互い情報交換する事に。
剣崎救出への協力を拒否する橘を、広瀬は「この臆病者、××ついてんの?!」と罵り、虎太郎は囚われの剣崎に替わって、
毎度お馴染み恥ずかしい語りを始める。
なんというかこう……思春期。
二人を振り切り、 盗んだバイク 元職場のバイクで走り出した橘だったが、虎太郎の言葉を反芻した結果
「その組織が烏丸を拉致した可能性もある」と取って付けた言い訳をしながら、改めて合流。虎太郎に向けて、
「でもな、おまえの言葉に打たれたわけじゃないから。誤解するなよ」
甘酸っぺえ。
……んー、こう、んー、百歩譲って虎太郎ひとりはキャラクターの個性として中学生ワールドでも良いかとは思いますが、
どうしてこう、メインキャラが揃って言動といい感情表現といい思春期真っ盛りなのか。
幾つなんだ橘。
20代男子の発言としては、全員、後で自殺もので、どんな顔をして見ていればいいのか、本当にわかりません。
脚本家がこれしか書けないのか、特撮ヒーロー世界に頑張って合わせようとした結果こうなってしまったのか、
いったい全体どの時点からボタンをかけ違っていたのか、それが一番この世界のミステリー。
一方、囚われの剣崎はアンデッドとご対面。伊坂と始の観覧する中、戦闘する事に。テロメアがどうとか、融合係数がどうとか、
設定っぽい話が色々。最初は盛り上がらない剣崎だったが、始の姿を見てヒートアップ。なんか数値が上がる。
「あいつは怒りを力にする」
…………あれ? 愛、じゃありませんでしたっけ?
よくわからないけど興奮してカリスも変身し、戦闘に乱入。それを見ながらほくそ笑む伊坂。
「この世にライダーはいらない。私が作る、究極の一体だけでいいんだ」
橘の指示で広範囲に最大出力でアンデッドサーチをかけた広瀬が、この戦闘の反応をキャッチ。
連絡を受けたチキン橘はギャレンに変身して突撃し、ここに2対2の戦闘が展開。それを見て伊坂は吠える。
「これがバトルファイトだよ、一万年前の再現だ!」
…………………………「バトル」「ファイト」。
…………………………「戦い」「戦い」?
「俺には恐怖心などない!」と張り切るへたれだったが、戦闘中にみるみる融合数値が下がっていく。どうやらライダーシステムは、
人間とエースアンデッドとやらを融合させる事でアンデッドと戦える力を与えているようで、
そのシンクロ具合が戦闘力に影響を与える模様。
ブレイドがカリスとぶつかり合う中、アンデッドに一方的にしばき倒されて、へたれ、とうとう変身解除。
剣崎「橘さん! (おまえ何しにきたんだよ!)」
へたれが本格的にへたれる中、外部では烏丸所長が施設への潜入をはかっていた……。
- ◆第8話「へたれには向かない職業」◆ (監督:諸田敏 脚本:今井詔二)
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烏丸所長とイチャイチャするヒロイン扱いのエピソードなのに、どうして広瀬さんは青緑のパーカーなのか。
もはやスタッフの嫌がらせを感じるレベル。
頑張れ広瀬さん。私は応援しないけど(待て)
施設に潜入した烏丸が電気設備をショートさせ、混乱する伊坂軍団。その間に、新必殺技・スーパー稲妻キックでアンデッドを葬るブレイド。
なんかまた、引っ張った次の回の冒頭に凄い適当に倒されてしまいました。
そもそもブレイド、カリスと戦っていた筈なのに、このシーンの間、カリスの存在が消えているのですが、どこ行ったのかカリス。
これは着ぐるみに愛が無いのと同じ流れで、番組当初からなのですが、
ブレイドが封印したアンデッドカードの特殊能力で技を使っているっぽいのはわかるのですが、
その辺りの描き方も雑(要するのにどうでもよさそう)なので、全く面白くありません。今回だったら、普通のキックが通用しないから、
電撃属性(トナカイさん?)を乗せるとか、ギミックを活用して戦闘を面白くする組み立て方は幾らでもある筈なのに、あまりに酷い。
しかも剣崎がおしなべて無言でいきなり必殺技使うので、何をどう考えてカードをチョイスしているのかとか、
剣崎の戦術が全く見えない為、いつまで経ってもブレイドが魅力的なヒーローになりません。
これでストーリー部分が面白ければ許される部分もあるでしょうが、ストーリー部分面白くないのに、戦闘を適当に処理されるので、
二重三重四重五重に酷いという、真っ黒な負のスパイラル。
「俺は今、むしょうに腹が立っている! あんたに裏切られた気分だ!」
何故か背景で新必殺技を見守ってくれていたカリスに、怒りをぶつけるブレイド。……というかいつ、二人の間に「裏切る」
「裏切らない」というレベルの信頼関係があったのか。
剣崎、2話で「人を信じては裏切られちゃうんだ、俺〜」とか言っていましたが、真相は、
そもそも信頼関係とか0なのに勝手に裏切られたと思い込んで逆ギレするという、
物凄い迷惑な男なのではないか、剣崎。
〔自称「不器用」な剣崎、態度の悪さで相手を不愉快にさせる→そのくせ勝手に、「あいつとは仲良くなれそう」
みたいな脳内設定を展開する→相手はそんな事を夢にも思っていないので冷たくする→「裏切られた気分だ!」→
俺に友達が居ないのは不器用でお人好しだからで俺はあくまで被害者→……以下デフレスパイラル〕
わかりやすく嫌な奴、というわけではないのに、これだけ好感度の上げようがない主人公を造形できる、というのは、才能かもしれない。
なんだろうこの、剣崎の奇跡のコンボ。
カリスはそんなブレイドを無視して、伊坂の手先が下宿先に仕掛けた爆弾を解除する為に走り去る。
伊坂は自爆装置を発動してアジトを放棄し、抜け殻の橘を回収して脱出する剣崎と烏丸。始もぎりぎりで爆弾の回収に成功するが、
何がどうなっているのか、天音の詰問に返す言葉を見つけられないのであった……。
この後、「近所で爆発音騒ぎがあったのですが何か知りませんか?」と警官が店を訪れて、
奥さんが特に何もないと返して引き上げていくというシーンが入るのですが、店内中にガラス散乱しているのに、黙って帰るな警察(笑)
変にリアリティを付加しようとしてむしろ大惨事、という失敗の良い例。
一方、剣崎達は農場へと帰還。
後輩達の前で烏丸所長から、
「こいつの不調はシステムの不備などではなく、
いい感じの元同級生の所に都合良くダラダラ居座っているけど告白もできないへたれ野郎のチキンハートが見せるイメージに過ぎないし、
そこからの立ち直り方なんて他人に聞くなこの腐れ××××野郎、思春期の××××は家に帰ってミルクでも飲んでな、HAHAHA!」(意訳)
と公開処刑された橘さん、男のプライドを八つ折りにされて、戦線離脱。
所長、女の次は後輩の前でとか、エグいわー。
たぶん、脱出時に殴られた事を根に持っている。
それから、改めて所長による解説タイム。
1万年前、地球の支配権を手に入れる為、人類を含む53種のアンデッドによるバトルロワイヤルが行われた。
人類の祖はそれに勝利して地球の支配権を手に入れ、敗北したアンデッド達はカードに封印される……だが、
アンデッドはカードの中で生き続けてきた。人類基盤史研究所はそのカードを研究する事で不死の生命エネルギーの秘密を解き明かそうとするが、
一部研究者達の早まった行動でカードの封印が解かれ、アンデッド達が解き放たれてしまう。……それから3年、
烏丸達はアンデッドに対抗する為に作り上げたライダーシステムにより、アンデッド封印の為に戦っていたのだった。
色々引っ張っていた広瀬父が開封の主導的役割だったのかという件については、あっさり肯定(^^; 引っ張る必要あったのか。
まあ、あくまで烏丸の話、なので、ここで語られている事全てが真実なのかどうかは現時点では不明ですが。
アンデッドサーチャーの反応によれば、あの時、ブレイドを囲んでいたのは3体のアンデッド。倒したアンデッド、伊坂、
そして……始の正体はアンデッドなのか?! 疑念を募らす剣崎。
「人間の姿形、そして言葉を話す上級のアンデッドが居るに違いない」
現在に残るトランプは、人類の持つアンデッドバトルロワイヤルの記憶から作られている……とすればその絵札が示すのは、
人の姿をした上級アンデッドに違いない、という超オカルト展開は嫌いではありません(笑)
前回、エースアンデッドとの融合、という台詞がありましたが、つまりエース(ライダー)が4体、絵札(上級アンデッド)が12体、
存在するという事でしょうか。ブレイドは見るからにスペードのエース、カリスは顔がハートのエース、
ギャレンは微妙だけどクラブというより角張っているからダイヤのエースか。
「あいつだけは許せない!」と怒りの剣崎は始の元へと急ぎ、所長は伊坂の組織を追うと単独行へ。
「みんな、居なくなっちゃうんだね……広瀬さんは、居てくれるよね?」
思春期ワールドを展開する虎太郎だが、いや、住所不定の剣崎は帰ってくると思うし、
橘はそもそもこんなむさ苦しくないレモンの香りがするスイートルームあるから。
しかし心が弱っているのか、なぜか笑顔で肯定する広瀬さん。
その頃、下宿先に迷惑をかけられないと書き置きを残して出て行った始は、バイクを走らせていた道の途中でタマネギとばったり遭遇し、
問答無用で喧嘩スタート。
一方、チキン野郎は女医さんとイチャイチャしていた。
「なんだか……普通の生き方がしたくなった。それだけさ」
……なんだか、今、監督の心が折れた音が聞こえた気がした。
んーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、別にこの台詞が単体で悪いわけではなくて、
しかし、この台詞を活かす為には橘の戦いの背景が描かれていなければいけないわけなのです。
そもそも橘がどうして命がけで戦ってきたのかさっぱり描いていないので、この台詞だけ置かれても、
“それ”を捨てて日常を選ぼうとする事の重さが全くありません。
いや全くもって、ピッチャーびびっているだけで軽い衝動なのかもしれませんが、逆にそれを軽くしてしまったら、
『仮面ライダー』という物語の意味が無いわけです。
どちらにせよ駄目。
橘の理由自体は特に大した事である必要もなく、別に成り行きと給料に目がくらんででも構わないのですが、それはそれで、
そこを描いておかないと、橘にとって「仮面ライダー」というのが何の意味を持つのかが、さっぱりわからない。
その部分はこの後、へたれ立ち直り編で描かれるのかもしれませんが、しかし、この台詞を活かすには、
それは先に描かれていなければならないわけです。
橘が「仮面ライダー」として戦う理由→しかし恐怖心を克服できないでへたれる→だがやっぱり「仮面ライダー」を捨てられない
という波があってこそ物語は劇的になるわけですが、そういった積み重ね方の、基本のド基本があまりに抜け落ちすぎ。
これだけ劇作のセオリーが崩壊していると、なんかもう、演出で修正するのも限界があって、前回今回の諸田監督の演出が、
もはや無言の抗議に見えてくるレベル。
まあ、橘さん一生懸命ネクタイ選んでいるので、「普通の生き方」=「まともな企業に再就職」という、
本当に軽い意思表明だったのかもしれませんが。
「以前のお仕事は何を?」
「かめ……あ、バイクと銃を使う肉体労働に従事していました」
「……どうしてお辞めになったのですか?」
「バッタの怪物に……いや、えー、会社が夜逃げして倒産しまして」
「特技は?」
「変身です!」
だがそんなデート中、夜の街に響き渡る悲鳴。シマウマアンデッドが出現し、思わずベルトを手にする橘だったが……
そしてブレイドとカリスは、ひたすら互いの怒りをぶつけ合っていた――。
次回、橘はカタギの仕事に再就職できるのか?!
- ◆第9話「無職でも君が好き」◆ (監督:石田秀範 脚本:今井詔二)
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小夜子さんはむしろ、無職の橘くんが好き。
ブレイドとカリスの戦闘で、ライダーのバイクにもカードスロットが付いている事が判明。
殴り合いの果てにそれぞれのバイクにパワーを込めてぶつかり合うブレイドとカリスだったが、痛み分け。そこに広瀬から、
アンデッドサーチャーに反応の報が入る。
剣崎「今忙しくてそれどころじゃねーんだよ! ていうか、始がアンデッドなんだよ!」
広瀬「私情でガタガタぬかしてんじゃないわよ! みんなを救いにいくのが仕事でしょ!」
と、相変わらず喧嘩腰のやり取り。聞いていて疲れるので、この人達早く、社会人らしいコミュニケーション取ってくれないものか。
「仕事」をキーワードにしている割には、全然「仕事」になっていないというのも、今作の謎コンセプトの一つです。
「待て! おまえとの決着は必ず付ける。だから時間をくれ」
待ったをかけたブレイド、一発撃たれてお許しをいただき、ゼブラアンデッドの反応のもとへ。
そこでは女医さんの目の前でへたれが変身していたが、へたれはへたれなので、何も役に立たないまま変身解除。
駆けつけたタマネギが頑張るが、シマウマは逃げだし、その反応はサーチ不能となってしまうのであった。
とうとう、恥ずかしい仕事が女医さんにバレてしまった橘さん、ここでの会話シーンが、脳死寸前の出来で、凄い強烈。
たーすけてー。
身悶えするほどつまらない会話のやり取りを、カメラ固定で垂れ流すとか、やーめーてー。
もはや拷問に近いレベルで、私がスパイだったら、あと3分この映像を見る事を強要されたら、
背後関係について全て口を割ります。
始の件について、珍しく剣崎に怒りを見せる虎太郎。
「なんでだよ、なんで、なんで始の正体を知ってて、最初に言わなかったんだよ」
「だから謝ってんだろ!」
剣崎、案の定、逆ギレ。
「いいよ! 君とは話さない!」
家族大時の虎太郎は収まらず、ひとり出て行く。
「まずいよ剣崎くん!」
(相手は家主よ!)
「あたしたちの間では秘密持つのはやめようって、約束したばかりじゃない!」
……したっけ。
「何言ってんだよ、君だって言わなかったろ。封印を解いたのが自分の父親だ――」
途中で、広瀬の表情に気付く剣崎。
女子を傷付けると、一応、反省する事が判明(笑)
「ごめん。なんで俺こんな余計なこと言っちゃうんだろ」
自らいやらしく「不器用」をアピール。
この、展開の妙とか、やむにやまれぬ事情とかではなく、単純に登場人物達に最低限のコミュニケーション能力が無い為に無駄にこじれるのを
“人間ドラマ”だと思っているのって、『新世紀エヴァンゲリオン』以後のアニメーションで増えたパターン(『エヴァ』そのもの、
ではなく)ですが、2004年ぐらいだと、まだそういう名残があった頃か。
というか今作ってもしかして、《仮面ライダー》版『新世紀エヴァンゲリオン』なのか?(^^; 今頃気付いたけど、
そういう志向性があったとすると、色々、腑に落ちないでもない。
ところで虎太郎は、このメンバーの中では演技頑張っている方だと思うのですが、にこやかキャラで通していたせいか、今回、
怒る芝居が全く出来ていません(^^; 本人が出来ていないのか、演技指導が出来ていないのか、微妙な所だけど。
一方、住所不定の仲間入りをした始さんは、成り行きでチンピラから助けた男に「アニキと呼ばせて下さい」と迫られていた。
「お父さん」の次は「アニキ」とか、いったいぜんたい、この運命はどこまで付きまとうのか。
その頃、人類基盤史研究所の跡地で若く輝いていた頃の俺、を回想していた橘の前に、伊坂が姿を見せる。
「うちで治してやろうか?」という伊坂の誘いを断り、ギャレンへ変身する橘。伊坂もアンデッドの正体を現し(クジャク?)
二人の戦いがスタート。サーチャーの反応に、虎太郎と仲直りした剣崎は、現場へと急ぐ。
「待っててください、橘さん。必ず、必ず助けに行きます」
橘さんを、みそっかす扱いするのやめてやれよ!(涙)
……勿論まあ、フルボッコなんですが。しかも何か、このへたれ、自分の境遇に浸り始めました。
剣崎が現場に駆けつけた時には既に両者の姿はなく、反応はロスト。そして伊坂に回収された橘は、謎の培養液に漬けられていた。
「これでギャレンは変わる。生まれ変わる」
次回、貧弱な彼氏は超人血清の力で、自由と正義の愛国戦士マッチョマンに生まれ変わる事が出来るのか?!(作品違う)
- ◆第10話「オッサント・テレパシー」◆ (監督:石田秀範 脚本:今井詔二)
-
見所は、
「俺は俺で独自の方法でアンデッドを捜す!」
と啖呵切ったのに、結局は広瀬からの情報に頼る橘さん。
いったいぜんたい、どうやってアンデッドを独自に捜すつもりだったのか、厳しく問いただしたい。
そして唐突にことわざを言いよどんだり、「アンデッド」と書いた藁に竹刀を振るってみたり、
剣崎に可愛げキャンペーン始動。
その後の、虎太郎のミルク中毒への今更なツッコミといい、脚本ベースというより監督のセンス、という感もありますが。
おしなべて、もっと最初から盛り込んでおきましょう的な。
バトルの尺がこれまでになく長かったり(長ければいいというわけではありませんが)、そろそろ、
全体的に方向性への修正が入りだしたのか。
伊坂アンデッドに敗れてモズクの海で謎の“治療”を受けた後、造船所(このロケ地は良かった)で目を覚ました橘は、
なぜか伊坂と心と心で通じ合えるようになっていた。
ラブリー伊坂パワーにより適合レベルの上昇した橘は、伊坂の差し金で出現したゼブラアンデッドと交戦。
へたれはへたれなので結局は逃げられるが、再びライダーとして戦えるという感触を手にすると、再戦時には見事に撃破。
にしても、「アッパー」+「ファイヤー」って銃は使わないのか(笑)
また今回、カード使用時に、消費コストのような描写が入りました。実際になんなのかは不明ですが。
一方、始は自称弟分に喫茶店の様子を客として探らせるが、なんというか、ただの気持ち悪い客であった。この弟分のキャラも、
特徴的なキャラ付けがあるわけでなく、好感が持てるわけでもなく、コミック的に面白いわけでもなく、非常に困ります。
始に「家族」についてまた別のアプローチを伝える役割なのでしょうが、ただそれだけであり、相変わらず、キャラクターと、
シナリオを進める為の台詞が、遊離しています。
だから台詞に重みがなく、キャラクターも薄っぺらくて気持ち悪い。
「あの二人の大事な人は、俺の戦いに巻き込まれて死んだ」
そしていきなり語られる、始がここへやってきた理由。死の間際に托された一枚の写真、
死を前にしてその無念よりも家族を想った人間の感情……それが知りたくて、始/カリスはここへとやってきたのだった。
どうしてこう、引っ張ったネタを、特に劇的な要素もなく、「そろそろ時間だから」みたいな感じで明かすのか(^^;
とにかくこう、全体がダラダラしているだけで、物語に緩急がなさすぎます。
始が様子を見に来た事に喜ぶ天音、そんな姪っ子に、始の正体を伝えるべきかどうか虎太郎が思い悩む中、
家主不在の農場を伊坂が訪れていた。
「今日は君と話したいと思って来たんだ」
「貴様なんかに話はない!」
――伊坂さん、それ、コミュニケーション能力、無いから。
「君、もっと強くなりたいと思わないか?」
再・就・職のお誘い。
だが剣崎はそれをずばっと断り、ファイティングポーズ。
「どうしても君は血気に逸る。人の話を聞こうとしない」
「なにが人だ! 正体を見せろ!」
「……しょうがない。君は痛い目に遭わせないと、人の話を聞かないようだ」
悪役のイヤミが、あまりに的確すぎる(笑)
ブレイドと戦闘を開始した伊坂アンデッドは、朗らかモードで女医さんとデート中だった橘とテレパシー。
デートの邪魔をされる橘だったが、既にその体は、あの溶液が無いと耐えられない体になっているらしく、
伊坂の指示に従うしかなくなっていた。「私の仕事を手伝え」という声に、戦いの現場へと走る橘。
道路に放置プレイを受けた女医さんは、やむなく診療所へ戻ると、橘の髪の毛から回収した、モズクを気にするのであった……。
うーん……溶液が無いと耐えられない、というのも特に前振りなく、
いきなり伊坂が言い出すので説得力が無い上に展開として全く面白くないのですが、これでブレイドvsギャレンとかされてもなぁ。
面白くなさ、の底がどこまでも抜け続けて凄い。
→〔その3へ続く〕
(2014年2月14日)
(2017年3月19日 改訂)
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