■『人造人間キカイダー』感想まとめ7■
“どこへゆくのか ジロー ジロー
旅へゆくのか
ギターかかえて ひとりゆく”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『キカイダー』
感想の、まとめ7(37話〜43話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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- ◆第37話「ジローの弟 強敵ハカイダー!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
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前回までのあらすじ紹介シーンにおいて、笛を構えるギルの左右に並ぶ○▲○顔の秘書ロボットの全身が映り……迸る、
圧倒的可愛い。
プロフェッサー・ギル、これを両サイドに従えて椅子にふんぞりかえっているのかと思うとシリアス感ゼロなのですが、年に何人か、
思わず吹き出して処刑場送りになっていそう。
だが多分、光明寺だけは、このセンスをわかってくれた……! わかってくれたのだ……!!
そんなギルの情念が宿ったのか、いつにない効果を発揮した悪魔の笛の響きに屈し、これはミツ子さんの分! これはマサルくんの分!
と内なる暴力衝動に任せて光明寺に制裁を加えている内に、良心回路との衝突により機能停止してしまったジロー。
ヒトデ部隊がその腕を力づくで引きはがす一幕を挟み、高笑いするヒトデは、転がるジローを足蹴にすると、余計な事すんなよ!
とギルに念を押された命令に従い、光明寺の身柄だけを確保してジローは放置。
前回登場した女記者からの情報で警察と共に現場へ向かったミツ子たちは、うんともすんとも言わずに地面に転がるジローを発見するが、
女記者の証言によりジローが光明寺誘拐(殺害)の重要参考人とされてしまった事から、ジローを連れて逃走し……今回通して、
ジローを巡る警察とのトラブルは、面白く感じられず。
放映当時は「生みの親の殺害容疑をかけられた上に、留置所にぶちこまれてしまうヒーロー」のみで充分なインパクトが生じ、
ミツ子さん側に感情移入しつつ、話のわからない警察め! とやきもきできたのかもですが……そもそも、
人間と区別のつかない高性能な人造人間に関するリアクションがまちまちな今作、
「人造人間ジローの存在を認めた上で官憲がどう対応するのか」に絞られていればまだスッキリしたのですが、
「明らかに非人間的な動作停止をしているのに、警察がジローを人間だと思ったまましばらく話が進む」のが、最初のボタンの掛け違いに。
また、担当刑事について半端にコミカルな芝居を挟むので、真っ当な対応をしているのか、頭が固いのか、
へっぽことして描きたいのかがハッキリせず……「人造人間に対する世間の認知」を統一して設定するような劇中世界ではないのですが、
その為にジローの身柄を巡る国家権力とのトラブルを描くにあたっての「基準」が無いので、
警察側の対応が「ズレているのかズレていないのかさえわからない」
状況が延々と続いてしまったのは辛かったところ。
根本的なところでは、「悪魔の笛でいつ暴走するかわからない人造人間」とか、まともに考えれば反社会的存在でしかなく、
しかしそうやって“共同体のルールの外側”に居るからこそジローは「漂泊の英雄」となり得る上で、
ジローが抱え持つ「他者を傷つける悪鬼の一面」とはすなわち、“我々人間そのものではないか”というのが今作の妙味であるので、
「国家権力から“鬼”認定を受けるジロー」(いってみればスタートライン)というのが状況設定としてあまり面白くならなかったなと。
……という話はまあ、多分に2022年からの視点ゆえでありますが。
光明寺を車に乗せて逃走中、飛び出してきた少女を前に咄嗟にブレーキを踏んだアンドロイドマン運転手は後部座席からヒトデムラサキに怒られ(笑)、
検問所から追いかけてきた白バイ警官二人は、「毛布の下は手術用の機械」と言われているのに雑に棒で叩いてみるぽんこつぶりを見せると、
目撃者の少女について「おばけ? ビックリして頭でもおかしくなったのかな?」で済ませ、そのまま連れ去られてしまう少女。
逃走中にミツ子から修理を受けて動けるようになったジローは、精神的ショックから良心回路に不具合が発生した事で声を出せなくなってしまうが、
少女がダークに追われているのに気付くと指笛でサイドカーを召喚して駆けつけ、
「チェンジ! スイッチオン! 1・2・3!」
…………あ、あれ?
「キカイダー、パトカーが来た。勝負は預けておくぅ……!」
そしてヒトデは、警察から逃亡(笑)
少女を助けるも警察に囲まれたジローは投降しようとするが、再び悪魔の笛が響き渡ると、遂に少女の首を絞めてしまい、
ミツ子の呼びかけに正気を取り戻すも、今度こそ、完全に、逮捕。
女記者は騒ぎを大きくしただけで以後登場しないし、少女は首を絞められて以降はフェードアウトするし、
次回に改めて拾われる可能性はありますが、今回単位でいうと、どうにも横糸がノイズかつ消化不良。
「面白い、これはますます面白い!」
謎カメラでジローの置かれた状況を確認したギルの台詞回しがちょっと面白く、周到に用意されていた光明寺の偽死体と、
ようやく人造人間だと確認された事で牢屋に放り込まれたジローには、分解の危機が迫る!
一方、ヒトデのアジトに運び込まれた光明寺は、薬によって朦朧としながら自らの手で悪魔回路の最終調整を行わされるのが、
とてもダークで光明寺。
そして遂に、手術台に横たわる光明寺にダーク医療スタッフによる術式が施されて悪魔回路サイボーグ手術が完了!
「出ろ…………出てこいハカイダー!!」
鬼気迫るギルの絶叫に合わせ、棺の中から立ち上がったのは、漆黒のボディに稲妻の走る悪魔の戦士!
「悪の戦士、ダークの誇る改造人間、ハカイダー! おまえの敵ははこの世の中にたった一人、
キカイダーあるのみだ! ゆけ……ゆけハカイダー。その体内に組み込まれた、悪魔回路を存分に使え! どこまでもキカイダーを追い詰めろ。
そして……そして、そして殺せぇぇぇ!」
ラストの「そして」三連発がギルらしい言い回しで、テーマソングによる次回予告ジャックから3話をかけて、遂に登場ハカイダー!!
だが、この世にたった一人の宿命の敵は現在、解体30秒前だ!!
果たして、ジローはこの窮地を脱する事ができるのか? そして、ハカイダーのレゾンデートルは守られるのか?!
……あ、後、しれっと生き残ったヒトデムラサキの始末はどうなる?!
- ◆第38話「ハカイダーがジローを殺す!」◆ (監督:永野靖忠 脚本:長坂秀佳)
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光明寺博士殺害の容疑をかけられた人造人間ジローに迫る、城東大学の教授による分解手術。
「ものを言えないジローは、これに抗議するすべがない。どうするジロー?!」
答は、腕力に訴える。
前回ラスト、罪のない大学教授を傷つけるわけにはいかない、
と触れられていた煩悶など分解の危機の前にはあっさり放り棄てたジローは国家権力の壁をぶちやぶり、大脱獄。
だが、逃亡者となったジローの足下に銃弾が突き刺さり、テーマソングと共にジローより高いところから現れたのは、
ガンマンスタイルの黒い戦士ハカイダー!
「驚いたかキカイダー。これはほんの名刺代わりの挨拶だ。俺はダークの悪の戦士、ハカイダーだ。この俺の居る限り、
どんな事をしてもおまえは逃げられない。おまえの命は俺がもらう!」
低い声で悠揚と迫るのが、従来のダークロボットと一閃を画していきなり格好良く、潰せ壊せ破壊せよ、と左手の銃が火を噴き、
ジローはチェンジ。
ここに宿命の兄弟機が激突すると、ハカイダーは回転アタックと大車輪投げを防ぎ、放たれる高周波弾ハカイダーショット!
「動けないのかキカイダー? 俺は弱いヤツを見るのは嫌いだ! 死ね!!」
突きつけられた銃口を前に、キカイダー、無言で、逃・げ・た。
「それでこそキカイダー。俺も殺しがいがある」
基本、逃走に躊躇のないキカイダーはフライングするが、その後をこれも飛行して追うハカイダー!
両者が空中で激しく殴り合いに突入するのが割と面白い絵で(水中での取っ組み合いみたいな映像を空中でやっている感じ)、
続けてキカイダーがサイドマシーンに乗って地上を逃げると、今度はそれをバイクで追うハカイダー、
とキカイダーに比肩するハカイダーの能力を激しいアクションで畳みかけるように見せていき、悪のライバル出現を盛り上げます。
激闘は地上での格闘戦にもつれ込み、左腕を損傷し、ハカイダーの放つ低い体勢からの連続回し蹴りを浴びていよいよ追い詰められるキカイダーだが、
悪魔の銃口が火を噴く寸前、突如として激しい頭痛をハカイダーが訴えると、
「キカイダー、今度会った時は、必ずおまえの命をもらうぞ」
と言い残して早退し……凄く、東映悪のライバルです。
光明寺博士への暴力行為、音声回路の故障、逮捕と分解の危機、そして突然現れた粘着系ライバル!
と立て続けてのトラブルに見舞われながら辛うじて命を拾ったキカイダーだが、今度はパトカーのサイレンの接近に逃走を余儀なくされ、
基地に戻ったハカイダーの方は医療班によりなにやら調整中。
「これだけがハカイダーの唯一のウィークポイントだ。一定時間内に光明寺の脳の血と交換しないと、ハカイダーは死んでしまう」
ギルが凄い事を言い出し、早退の理由・強さのリスク・光明寺への執着、が手早く一つに繋げられると、
ヒトデムラサキを呼び出したギルは、ハカイダーの充電中にミツ子たちを人質に取ってキカイダーにトドメを刺すように命令。
そのミツ子たちは、ジローが腕力により大脱走した事実に衝撃を受け、もはやジローは良心回路の機能不全により、
暴力への歯止めを失った荒ぶる鬼神と化してしまったのではないか……と落ち込んでいたが、そこに口笛を吹きながらビル壁を垂直に降り、
謎の青年が姿を見せる。
「やあ、ミツ子さん……マサルくん、君が半平か」
黒革ずくめに黄色のスカーフを巻き、人間離れした動きで現れた青年は、宮内洋系の端正な二枚目で、その名は――
「俺はジローの弟、サブローだ」
立ち上がりの今作が『仮面ライダー』との差別化を意識して見えたのと比べると、派手なスカーフは逆に意識も感じられますが、
光明寺との再会・ジローびりびり・光明寺への右ストレート・ダークによる光明寺捕獲・ハカイダー誕生・ジロー逮捕・サブロー登場、
と物凄い勢い(前回時点だとハカイダーに「ジローの弟」感は全く無いので、サブタイトルに若干の気負いすぎは見られますが)
で新展開が加速。
「ジローの体が壊れた時、俺の体は長い眠りから覚めるように設計されていた。自動的にな」
OPクレジットバレはともかく、ハカイダーのガンアクションと共通するナイフアクションなど視聴者には特に隠す気のないサブロー/ハカイダー、
ミツ子らから見ると胡散臭い事はだいぶ胡散臭いものの、光明寺ならやりかねないのが、
実の家族からしても判断の難しいところです。
示し合わせたかのような(※偶然)ヒトデムラサキの襲撃を、投げナイフであっさり撃退したサブローは、先回りすると
「俺はただ、人質作戦などという汚い手が嫌いなだけだ」
と警告を発し、登場間もなく《悪の美学》を発動する芸術点の高さを見せつけて、凄く、東映悪のライバルです。
一方、警察に追われるジローは修理の為に自ら電気店に向かうと部品を買い求め……日本円は所持しているのジロー?!
暴力は支払いには使えないのよジロー?!
見えないところで罪状が増えていないか心配が増える中、警察に呼び出されたミツ子たちは再登場した女記者マリが現像した写真を見せられ、
ジロー(信頼する仲間)が光明寺(実の父親)を襲うシーンを嬉々として見せつける女記者、立場からすると悪意は無いのですが、
人の心が、無い。
「きちがいになったのよ、ジローは」
言い逃れの出来ない証拠写真に打ちひしがれる一同に追い打ちを掛け、人の心が、全く、無い。
通算3話目の登場となった女記者(見習い)、現状トラブルに灯油をかけて火勢を強めるばかりの役回りで、
その行動と物言いにはマスコミ風刺も入っていそうですが、このままちょくちょく登場する扱いになったりするのやら……
前回の反動もあるかもですが、マリとのバランスを取る為なのか、今回は半平がだいぶまともで、
ドタバタ要素が部分的にマリにスライドしている感じの作り。
……まあ、半平とマリが下手に化学反応を起こすと、マサルくんが鈍器を半平の後頭部に振り下ろすような事態が起きそうではありますし。
廊下に飛び出したマサルは、良心回路の制御を失い、悪魔の笛に操られるジローが可哀想だと涙を流すと共に、
そんなジローに父の仇として引導を渡すのは僕の役目だと70年代スピリッツに燃え、ここでマサルくんがジローをどう捉えており、
自分がどうあろうとするのか、その心情に焦点を当てたのは良かったところ。
果たしてジローが持つのは本当の正義の心なのか?
それとも結局は、神ならぬ人の手によって造られた脆く不完全で、外部からの干渉プログラム、
回路の故障一つでひっくり返ってしまうものに過ぎないのか?
そこには当然、では、そういう人間の“心”とは何か、という不滅の問いかけを孕みつつ、半平もまた、マサルの覚悟に賛同。
唯一ジローを信じようとするミツ子さんが、マサルくんどころか半平にまで、私情だけで物を言う人扱いされて、
もはや全く聞く耳を持たれていないのがちょっと可哀想ですが、まあ実際のところミツ子さん、
ジローの為なら半平の愛車やマサルくん思い出のミニカーの一つや二つ、カジュアルに分解してみせるダークの女ですしね!
普段は忍法・笑劇時空の展開に消費しているニンジャエナジーを全力投入(つまり、今ダークに襲われたら、多分死ぬ)した半平は、
鎖分銅を用いてジローを捕らえる事に成功し、物凄く格好良く解釈すると、
いざという時に命がけでミスター・ジローを止めるのが吾輩の役目、と任じていたのかもしれず、
普段おちゃらけている日常ギャグ要員だと思われていた友人キャラが、最終決戦を前に秘密を明かし「今まで黙っていてすまなかった。
実は俺は、この封印の為に全ての力を回していたのだ!」みたいな感じですが、半平なので多分まったく、そんな事は、ない。
一度はサブローに退けられるも、ギルの命令によりミツ子を追っていたヒトデは、ジローが運び込まれた半平の事務所を襲撃。
半平&マサルの背後に浮かぶ星型の影に気付き、必死に危険を知らせようとするジローの、
他者を守ろうとする強い意志が音声回路を復帰させ、拘束を自力で解いたジロー復活。
ビルの屋上に立つサブローに気付いたヒトデがアジトに撤収すると、後を追ってアジトに侵入したキカイダーはそこで、
カプセルの中に懇々と眠り続ける光明寺の姿を発見し、またも爆発的に増大する光明寺のヒロイン力。
「あなたに造っていただいたジローが、今お救い致します!」
もはや扱いが、姫。
だがそこに響く、プロフェッサー・ギルの不気味な笑い声。
「キカイダー、おまえは光明寺を殺しに来たのか?」
「なんだと?!」
「聞けぃ、キカイダー! そこにあるのは光明寺の体。だが、その体には脳が無い」
ダーク本拠のモニター映像のズームアップからジローの居る現場へと同じカメラ位置でそのまま場面を切り替えるちょっと珍しい演出と共に明かされる、恐るべき真実!
「脳は?! 博士の脳はどこにあるんだ?!」
「……おまえはもう、光明寺の脳を見ている筈だ」
そう、それは……
「――ハカイダーの中」
「その通り! 光明寺の脳は、ハカイダーの頭の中に組み込んである。ハカイダーは、光明寺の天才的頭脳を持った、ダーク戦闘用の、
サイボーグなのだ!」
物語の開始当初から光明寺に執着し続けていたプロフェッサー・ギルが、光明寺が作り出したキカイダーに心を折られかけた末に、
可愛さ余って憎さ1000%、光明寺自身をもってその子供ともいえるキカイダーと戦わせる強烈な悪意を見せつけ、
カメラ目線の一人芝居が実に迫力満点。
非常に有名な設定なのでさすがに知っていましたが、脳の強調された頭部デザインと、定期的に血液交換を必要とする(今更ですが、
『仮面ライダー THE FIRST』のショッカー怪人の設定はこのオマージュでしょうか)理由が、
ハカイダーの特性をこれ以上なく示すものとして明らかになり、遂に、
「カプセルの中に囚われながら最強兵器のエネルギー源となる」を実績解除する光明寺姫。
東映ヒーロー史上に伝説として名を刻むライバルキャラ誕生と同時に、東映ヒーロー史上最強クラスのヒロイン力の持ち主が、
生まれていた!!
「ハカイダーを殺せば、光明寺の脳も死ぬ。脳の無い光明寺の体を助け出しても、同様に死ぬのだ」
手詰まりの二択を突きつけられて狼狽するジローを悪魔の笛が襲うと、そこに宇宙生物っぽく降りてくるヒトデムラサキ。
「キカイダーーー、この部屋は俺とおまえのデスマッチリングだ」
(その部屋はデスマッチリングであると同時に、おまえの墓場だ。死ね、キカイダー)
ダークロボットの台詞を拾うプロフェッサー・ギルだったが、調子に乗りすぎたヒトデが基地のコンソールにジローを叩きつけてしまい、
その爆発音が笛の音をカットした隙にジローはチェンジ。
「くそ! キカイダーめその方が俺も、やりがいがあるわ!」」
「勝負したければついていこい!
キカイダーはアジトの外に飛び出してアンドロイドマン部隊を交えた主題歌バトルとなり、
前回今回と劣勢の多かったキカイダーのターン!
特撮界には、ヒトデを宇宙生物(UFO)ぽく扱う派閥、が存在する印象なのですが、
ひゅんひゅん飛び回りながら銃撃してくるヒトデに向けてキカイダーも空中戦を挑み、ダブルチョップ!
そして、膝が思い切り入った!
対クロガラス辺りから、ミニチュアや吊りを駆使した空中戦の描写が増えているのですが、
Aパートのvsハカイダーと同じような構図の空中での打撃から、トドメのフライングデンジエンドでヒトデムラサキは空中で木っ葉微塵に弾け飛び、
しかし勝利の余韻に浸る間もなく、ハカイダーショットがキカイダーを襲う。
「なかなかやるなキカイダー。おまえの力は充分に見せて貰った。だが、おまえより強い改造人間も居るぞ」
どうやらハカイダー、生体部品(光明寺の脳と血液)を使っているので、ダークロボット(アンドロイド)との区別としてサイボーグ
(改造人間)を用いているようで、人造人間キカイダーvs改造人間ハカイダーの戦いは、ラウンド2へ。
ナレーション「だが、キカイダーはハカイダーを倒すことは出来ない。ハカイダーを傷つけたら、光明寺博士の脳は死んでしまうのだ。
どうするキカイダー?!」
腕力で解決?
後の東映ヒーロー作品における悪のライバルキャラに多大な影響を与えているとおぼしきハカイダーが鮮烈なデビュー戦を飾り、
〔黒くて・強くて・ちょっと芝居がかっていて・独自の美学を振り回し・早退する〕
とこの時点で主要なエッセンスがほぼ出そろっていて衝撃(勿論、更にその背後には、時代劇や西部劇、講談などの文脈があるのでしょうが)。
光明寺の脳を内蔵して動く悪夢のような設定もインパクトがある一方、
「キカイダーが本気で戦えない理由」にもなっているのがちょっと不安点ですが、ライバルキャラの戦闘力をアピールしつつ、
ヒーローが正面から力負けするのを防ぎたい、という事情も絡んでいそうでしょうか。
トリックスター的な要素を持つサブローの配置に加え、これまで固い絆で結ばれていた…………
と思うミツ子たちとのすれ違いを引っ張るのも面白い展開で、前回はどうも中途半端だった「官憲との対立(社会規範からの逸脱の明示)」も、
なんとなくで解決してしまうのではなく、連続した要素としてエスカレートさせていく事により面白みを増しそうで、
力の入った新展開にようやくスピードが乗って参りました。
次回――父の仇と誤解したジローに代わり、サブローに懐くマサルは、サブローから腹にダイナマイトを巻く方法を教わる。
「ジロー! オヤジの仇じゃぁ!!」
危ない! マサルの導火線に火が付いた!
果たしてジローは、この窮地を乗り越えてマサルを救う事が出来るのか。どうするジロー?!
- ◆第39話「父の仇ジロー 全国指名手配」◆ (監督:永野靖忠 脚本:長坂秀佳)
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OP直後、画面半分を埋める全国指名手配の6文字がなかなか強烈で、
ハカイダーが光明寺の脳を内蔵した人造人間と知り、問答無用のデンジエンドを放てなくなったキカイダーに向け、
背中を向ける臆病者は撃つが、そうでないなら殴り合いだぁ! と《悪の美学》を発揮しながら迫るハカイダー。
月面飛行蹴り・地獄五段返し・ギロチン落とし! と光明寺の血に宿る光明寺流忍術の奥義が次々と繰り出され、
これまで物語の各所において発揮されていた光明寺の高い身体能力が、研究室に籠もりきりだった中年男性の肉体、という器を棄てた今、
機械のボディを得て全力で解放される!!
「そうだキカイダー、死ぬなよ、簡単に死んでは楽しみがない!」
「くそぅ、行くぞ!」
光明寺の殺意を受け闘争回路に火がついたキカイダーは、ハカイダーの周囲をグルグル飛び回りながら顔面に連続でパンチを叩き込み、
何故、大事な脳に近いところを狙うのか(笑)
(良かった、怪我はしてないようだ)
早くも手加減攻撃を宣言したキカイダーは(なので念入りに、ハカイダー側に銃を使わない宣言を先にさせたのでしょうが)、
ハカイダーがふらついている内にその場を飛び去っていき……なまじ人間の脳を使ってしまったが為に、脳しんとう起こしてる……?
一方、ミツ子らは交番でジローの指名手配書を目に留め、人間じゃないので、
見つけ次第誰でもぶっ殺していいと条件がついているのが、とってもバイオレンスなこの顔、ロックオン。
「ねえマサル、あたし達とジローとの繋がりはそんなもんじゃないわ。せめてジローの口からはっきり聞くまでは、
あたし達ジローを信じていてあげなきゃいけないわ」
あ、ミツ子さんが、珍しくちょっとまともだ。
「僕は姉さんと別に探す」
だがマサル少年は、「ジローを見つけたらこの手でお父さんの仇を討ってやるんだ」と半平の助手となって、
自活しながら復讐を果たしてやると宣言し、まさかマサル少年に、70年代リベンジャー魂が宿る事になろうとは。
その頃、胴体=顔タイプで、ユーモラスなデザインのアンコウブラウンが、
光の明滅によりおびき寄せた子供たちをアジトにさらって洗脳改造する計画を進行しており、
半平(ここ数話は探偵コスプレのインバネスコート固定)とマサルはその光を目撃。
光を追いかけるも逆にアンコウに襲われそうになった二人はジローに助けられるが、背後から突き落として抹殺する気だった、
と誤解が広がり、マサルは落ちていた鉄パイプを装備した!
横浜異人町ばりに治安の悪くなってきた『キカイダー』世界で、マサルはジローに鉄パイプを叩きつけ、そこに口笛の音が響くと、
霧の中からサブローが姿を見せ、ジローを挑発。
一触即発となる二人だが、ミツ子が止めに入るとジローは走り去り、サブローはマサルに、腹巻きとダイナマイトのセット、
じゃなかった、あらゆる機械の動きを止める特殊な光線発射装置・デスホイッスルを渡す。
「そのホイッスルを聞いたら、俺はどこに居ても君の前に現れる」
指名手配を受けるヒーロー!
親しかった少年から鉄パイプで殴打されるヒーロー!
そして、
マグマ大使みたいな事を言い出す悪の戦士!
と逆転の構図が積み重ねられていくのが凝っていますが、子供の助けで動きの止まったジローを倒すのは、
美学としてOKなのかハカイダー(笑)
アンコウのアジトから逃げ出した少年を助けたジローは警察に追われながらサイドカーで爆走し、
ジローの方はジローの方で「警察に追われるヒーロー」と「子供を助けるヒーロー」を重ねているのが巧妙で、
パトカーを振り切ったところに立ちはだかるアンコウ部隊。
(苦しめキカイダー、お前もハカイダーのように、ダークの手先になるのだ)
悪魔の笛が鳴り響き、アンドロイドマンに囲まれるキカイダーだが、
ダンプの荷台から土砂がこぼれ落ちた音で笛の音が遮られてチェンジ・スイッチオン!
キカイダーが少年を乗せたままアンコウアジトへとサイドマシーンを走らせると、
その後をハカイダーがバイクで追うチェイスシーンは格好良く、アンコウの洗脳を無効化してアジトから逃げ出したり、
キカイダー決死の突破行に付き合ったり、アジトでの子供の救出を手伝ったり、異常にスペックの高いゲスト少年は、多分ニンジャ。
2話前にはゲスト少女の首とか締めていたジローが、キカイダーとして子供たちを守る姿が強調され、
アンコウ火炎にあぶられて苦しむも子供たちの声援で大逆転……かと思ったら突然、
消防士コスプレの半平が忍法・火の用心の術で助けに来るの、どうしてそうなった?!
感は物凄かったですが、そろそろ半平をフォローする必要も感じていたのでしょうか。
……まあ、全く腰が据わらないので、フォローも何もな感じもありますが、この鉄面皮ぶりが凄い。
アンコウ火炎を破られ、短い手をジタバタするアンコウブラウン(可愛い)は、
捨て身の体当たり(可愛い)を仕掛けるとキカイダーに噛みつき飲み込まんとするが、脱出したキカイダーの空中回転攻撃に翻弄され、
最近トランポリン路線から吊り路線になっているキカイダーに軽く小突かれたら、あ、死んだ(笑)
少々呆気に取られる最期を遂げたアンコウですが……もしかすると、
冒頭の決闘で同じ攻撃を受けたハカイダーがだいぶ腰に来ていたので、ダークロボットなら弾け飛ぶぐらいでないと帳尻が合わない、
という事だったのでしょうか……?
マサルの手引きで駆けつけた警官隊から、「ぼくらのキカイダー」の挿入歌をバックに逃げ出したジローの背には、
その正義の心を知る子供達から感謝の声援が送られ、嵐の中もなんのそのぼくらのキカイダーは今日もゆく。
それを余裕で見送るハカイダーが、遠吠え……はしないで、つづく。
今回の次回予告もハカイダーのテーマ曲にジャックされ、あ、ダークロボットが、トロッコに轢かれた。
- ◆第40話「危うしジロー! 機能完全停止!!」◆ (監督:北村秀敏 脚本:長坂秀佳)
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ここ数話、シリアス度を増すサブタイトルと、ダークロボの奇声による読み上げがあまり噛み合っていなかったのですが、
今回は渋めの声での読み上げ(ナレーターさん?)となり、いや増す緊迫感……と思ったら草むらから響く、
「チョンギリース」
の奇怪な鳴き声と共に、石ノ森章太郎めかした少年画家の首を背後からちょんぎろうと迫るダークロボットに困惑していると、
今回は中華コスプレの半平が通りすがり、姿を見せるダークロボット・キリギリスグレイ(だいたいカマキリ)。
前回の宣言通り、半平と行動を共にしていたマサルくんがデスホイッスルを浴びせてキリギリスの動きを止めるとホイッスルを吹き、
便利屋扱いに文句を言いつつ現れたサブローは、マサルらの逃走を手助け。3人の逃亡後、
ナイフの刃を顔の前に立てると劇中初のハカイダーへのチェンジ(特に台詞やアクションは無し)を見せ、マサル達に手を出すな、
とキリギリスと対立する。
「俺はおまえ達のように、命令通り動く低脳ロボットではない」
「馬鹿め。プロフェッサー・ギルなど、怖くは無いわ」
駄目な悪役語録を華麗に埋めていき、実に恐るべき、東映ヒーロー悪のライバル……!
アジトにすごすご逃げ帰ったキリギリスは、「日本中の市民をキチガイ(台詞ママ)」にする為、
その用いるマッドサイクルを増幅するアンテナを建設していたが、そのアンテナを少年画家に写生されてしまった事で抹殺を目論んでおり、
少年の家ではマサルが放浪の身の上の事情を説明していた。
「君、本当はジローが好きなんだね」
ジローについて語るマサルが涙を流す姿を見て同世代の少年がその心情に寄り添うのは面白いアプローチで、
マサルには「父を殺したジローへの憎しみ」と同時に「壊れた(と思っている)ジローを見ていられない悲しみ」
と「ジローとの暖かい思い出」がある事が掘り下げられて、ここに来て長坂さんの筆が冴えてきます。
一方、ハカイダーの野郎が調子に乗ってるんですよ! とギルに告げ口したキリギリスは再び少年画家を襲撃すると、
バッタの改造人間のようなポーズで腕を回しながら
「キリギリスマッドサイクル!」
を放ち、ハカイダー編に入って以降、バイクにスカーフに改造人間にと、同期『仮面ライダー』を彷彿とさせる要素が盛り込まれている今作、
今回のこれは完全にパロディと思われますが、ダークロボットとしては、今までにない芸風の扉を開いていて、ちょっと面白い(笑)
助けに現れたキカイダーが羽ブーメランを弾き返してキリギリスを追い詰めていくが、マサルがデスホイッスルを向けると、
ジローの姿に戻って機能を停止。
またも、くったり人形と化してしまったジローはキリギリスの猛反撃を受け、とどめのサブローを召喚するマサルだったが、
痛めつけられるジローの姿に思わず目を閉じている内に光線の照射口がズレてしまい、サブローが現れた時にはジローの姿はなく、
硬直していたのはキリギリス。
光線を照射していると身動きが取れない、その状態でうまく吹かなくてはならない、
と効果が絶大な代わりに使用条件の厳しいデスホイッスルですが、序盤でジローに対するマサルの心情にスポットを当てていた事で、
マサルの複雑な気持ちを示す小道具として機能したのは、良かったところ。
ジローはホイッスルの効果が外れた隙に斜面を転がり落ちて難を逃れていたが……ギ、ギタァぁぁぁッ?!
(首の骨が折れる音)
大事なギターのネックが無残に折れ曲がり、盾を落としたキャプテン・アメリカばりに容態の不安になるジローがミツ子さんに拾われる一方、
ほとんどコントのようなノリで、ハカイダーはギルの部屋の扉を蹴破っていた(笑)
「なんの真似だハカイダー?!」
「俺を呼んでいると、聞いたんだがな」
「……おまえは、キリギリスグレイの邪魔をしたそうだな」
「……そんな話か。そんな話なら聞く必要はない。とぉ!!」
ギルの詰問を鼻で笑ったハカイダーは、わざわざ天井を突き破って飛び去っていき、プロフェッサー・ギル大ショック。
付けよう、礼儀正しく入退場する回路!
その頃、問題の絵をコンクールに出したいのだが、東京に郵送すると途中でダークに奪われるに違いない、
と心配する画家少年に輸送役を買って出たマサル達はキリギリス部隊に狙われており、標準的といえば標準的ですが、
いつの間にかキリギリスの狙いが判明していたり、それでもコンクールに出したいと強行したり、ミツ子さんが合流していたり、
なんの劇的さもなくハカイダーと光明寺脳の関係についてジローから聞いて情報が共有されたり、ジローは既に修理完了していたり、
と万事が急に荒っぽくなってしまったのは少々残念。
それでも、マサルくんの心情の掘り下げに尺を割いてくれたのが今回の良かったところですが、
落石や橋の爆破で半平の車を狙うキリギリス部隊の破壊工作はジローによって阻止され、
背中にダイナマイトを貼り付けられて弾け飛ぶアンドロイドマンの描写がバイオレンス。
だが、キリギリスのキチガイ音波が半平の車を破壊すると、徒歩となったミツ子とマサルが襲撃を受け、
大事なホイッスルを落としたマサルの危機を救ったジローが、拾ったホイッスルを敢えてマサルへと手渡すのが、大変格好いいシーン。
「君が本当に僕を信じられず、お父さんの仇を討ちたいんなら、好きなようにしたまえ」
「ジロー!」
「僕は随分考えた。だが君にまで疑われて、生きていたくない。バラバラにされた方が良い」
キリギリスが背後に迫る中、裁きをマサルに委ねるジローの姿には、若干以上に
「浩司くん、ジーザス・エンドを完成させてくれ」
「ジャンパーソン……」
「そして君の手で、ネオギルドを潰すんだ!」
(『特捜ロボ ジャンパーソン』第30話「爆裂!!最期の魂」)
がちらついて大変困りますが、改めて、それまで縁もゆかりもなかった少年に向けて、
自身の抱える人間愛信仰と破滅願望を昇華させる為に、ジェノサイドによる真の革命家への脱皮を迫っていたJPさん、オカシイ。
ジローはジローで、ここでは「公の正義」よりも「個人の信義」を重要視しているのですが、機械仕掛けの英雄が、考えに考えた末に、
肉親ともいえる相手との個の関係性に身を委ねるのは実に“人間らしい”選択であり、不完全な良心回路にとっての、
一つの到達点であるのかもしれません。
ここでジローが死ねば、誰が光明寺博士を救い、誰がダークを止めるのか……の問題が発生するわけですが、今この時は、
それよりもジローくんとの関係の方が大事なのだ、と大義を脇に追いやったジローは、
マサルの為なら死ねると極めて私的な関係性の中に己の存在意義を委ね、
こう見ると後の『ジャンパーソン』における大問題作《ジーザス・エンド》編はオマージュの意識があったのかもと思わされますが、
“間違った世界”に対する自己認識と自殺願望を日本中のロボットに適用し、
その瓦礫と炎の中からでも人間は立ち上がって真の理想社会を築き上げられる筈……つまりこれは、世界に対する殉教である!
と位置づけられるJPさん、オカシイ。
JPさんの狂気はさておき、これは、相手の握っている銃を自ら眉間に押し当てて、オヤジのケジメ取ってみせろ、
と迫るやつだな……と緊張感が高まったその時、ジローの背後に近づいていていたキリギリスの足下に投げナイフが突き刺さり、
紆余曲折の末、サブローが立会人を務める中、キカイダーとキリギリスが激突。
いつものアレは? と思っていると、キリギリスの懇願に応えて、あ、ごめん、ちょっとメールチェックしてた、
と遅れてギルが悪魔の笛を吹き鳴らし、キリギリスは、ギルの吹く悪魔の笛を自らの能力で3000倍に増幅する頭脳プレー。
悪魔の笛に対して、
「そんな笛はキカイダーになった俺には効かない! 今の俺はジローじゃないんだぞ!」
と叫ぶのが、ジローがこの上なく“人間らしさ”を見せた直後だけに強い印象を残しますが、まんまと策にはまり、
地面をのたうち回るキカイダーが見事に屈服すると、ギルの命令でサブローに襲いかかるのは面白い流れ。
対するサブローがハカイダーに変身すると、バイクとサイドマシーンが激しく交錯し、
これは勢いで光明寺脳がぐちゃあっとなってしまうのでは(多分ギルは、ぐちゃあっとなった後で問題に気付くタイプ)
と慌てたミツ子さんは音波増幅中のキリギリスの背後に近づき、トロッコを、ぶつけた(笑)
高笑いしていたら背中に思い切りトロッコをぶつけられ、のけぞり倒れる悪の怪人が誕生し、笛の呪縛から解放されるキカイダー。
結果としてキリギリスとハカイダーに挟まれる形になるものの、ハカイダーは偏頭痛で早退し、
残ったキリギリスはキカイダーを持ち上げる怪力ぶりで健闘を見せるが、必殺キカイダーハリケーンに翻弄されると、
連続パンチからの膝蹴りによって崖下に叩き落とされ、秘密のアンテナと共に大爆死を遂げるのだった。
やたらスッキリしたフォルム、『仮面ライダー』パロディめいたポーズ、だいたい通用しない羽ブーメラン、
と不安しかない戦力でしたが、クライマックスではまさかの頭脳プレーによってキカイダーを追い詰め、そこからの転落も含めて、
なかなか面白いダークロボットでありました。
ジローはなおもマサルによる断罪を求めるが、マサルは遂にホイッスルを投げ捨ててジローの胸に飛び込み、
そのぬくもりを感じながらも振り払ったジローは、光明寺救出の為に果てしない戦いの道を走って、つづく!
次回――これはまた、女性型ダークロボットが出てきてしまうのか。そして、折れ曲がったギターはやはり不吉の暗示だったのか?!
- ◆第41話「壮絶ジロー空中分解!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
-
「俺はダーク破壊部隊・アカ地雷ガマ! このダーク道路を見た者は、生かしてはおかん」
道路建設の工事中、地図に無い道を発見してしまう作業員。地中から出現した巨大ガマ(可愛い)に襲われ、
70年代スピリットを発揮してスコップを振り上げる作業員だったが、ガマの腹からばらまかれた地雷と打撃のコンボにより、
次々と爆殺!
仲間の仇だ! と70年代スピリットを高ぶらせた最後の一人がブルドーザーで突っ込んでいくが、ガマに触れた途端に大爆発!
「へへへへへ、驚いたか。このアカ地雷ガマの体は、体全体が巨大地雷になっているのだ。俺にぶつかってくるものは、
バラバラになるのだ」
…………その場合、ガマ自体も、バラバラになるのでは……?(笑)
どうやら自身にも理屈のよくわかっていない忍術によってブルドーザーと作業員を消し飛ばしたガマが、
プロフェッサー・ギルよりキカイダー抹殺を命じられる一方、ミツ子とマサルには光明寺姫のブロマイドが送りつけられ、
罠と承知でジローが地図の場所に向かう事に。
その直後、口笛を吹き成らすサブローが樹上に現れると、ハカイダーである事を改めて見せつけてからバイクでジローを追いかけ、
個人の目的意識が強すぎて、組織の思惑や、周辺関係者にどう見られているかがさっぱり消え失せるのがホント、
東映悪のライバル……!(笑)
しばし、チェンジしたキカイダーとそれを追うハカイダーの空中チェイスが展開し、
(よし……まいてしまえ!)
徹底的につれないキカイダーはきりもみ急降下で離脱を図るが、ハカイダーに時間を取られている間に、
サブローに焚き付けられたミツ子らは問題の場所へと向かってしまい、更にハカイダーがその眼前に立ちはだかる。
「いつまでこそこそ逃げ隠れする気だキカイダー。どこか行きたければ、俺と勝負を済ませてからにしろ」
まあハカイダーからすると、自分なりに正面から戦いを挑んでいるのに運命のライバルは全く振り向いてくれず、
粘着質になる気持ちもわからないではありません(笑)
ミツ子とマサルはあっさりとガマ部隊に捕まり、基本前のめりに生きているダークの女とはいえ、
罠の危険性は重々承知していた筈が全くの無策で正面から乗り込んで、「わー、まさかだーくがまちぶせしてるなんてー」
みたいになってしまったのは幾らなんでも雑に過ぎましたが……ヒロイン力か!
捨て身でヒロイン力を高めるつもりなのか!
ミツ子が決死の大逆転を狙う一方、二人をあっさり見捨てた半平は、今日も清々しいまでに勢いよく、
屑鉄鉄置き場にヘッドスライディングでダイブを決め、生き残る為なら試合放棄になんの躊躇もなかった。
「冷たいようだけど、吾輩、一度しか無い青春、もっと楽しみたいもんね!」
道ばたに止められていた車のトランクに身を隠す半平だが、その車はダークが誘拐に使う為に用意していたものであり、
まんまとダークのアジトに向かって運ばれていく形に笑劇時空が作用した事で因果の輪に半平が囚われていた頃、
ハカイダーと殴り合いを続けていたキカイダーは光明寺流忍術の奥義を次々と受けるが、
咄嗟の反撃が綺麗に入ったハカイダーが斜面を延々と転がり落ちてしまい……
「あ……」
大爆発。
「しまった……。秘密を守る為に自爆してしまったんだ」
と、某後輩みたいな反応をしながら、幸い火花と塵に還らなかったハカイダーの安否確認よりもミツ子らの後を追う事を優先し…………結局、
割と短いハカイダー天下でありました。
ミツ子らを乗せた車は偽装された行き止まりの先に伸びるダーク道路へ入るとアジトへと向かい、
ここで出てくる穴ぼこだらけの岩壁では、同期のバロム・1がアンドマンと戦っていたような覚え。
ジローはあっさりとダーク道路の偽装を見破り、行き止まりをこじあけると先に道が伸びているシーンの映像が、
なかなか良く出来ています。
ダークのアジトに運び込まれたミツ子とマサルは牢屋に閉じ込められ……これよ、今まで私に足りなかったのはこれなんだわ!
と内心固く拳を握り、白馬のジローを待つ構えに入ろうとするミツ子だったが、ギルの不気味な笑い声が響くと、
壁の中から牢屋に滑り込んできたのは、脳を奪われ、懇々と眠り続ける光明寺姫。
お父様ぁぁぁ?! お父様は、そこまでして、私の真ヒロインへの道の前に立ちふさがるのぉぉぉ?!
ミツ子の瞳に憎しみに炎が宿る!
今だミツ子さん! 光明寺の首をへし折るんだ!
……という事態にはなりませんでしたが、ちょっと捕まったぐらいでは小揺るぎもしない光明寺姫の牙城にミツ子さんが拳をわなわな振るわせていた頃、
アジトに潜入したジローは、アカ地雷ガマの襲撃を受けていた。
「かかったなキカイダー。そのおまえの無様な姿を、俺たちの仲間に見せてやろう」
と言って出てきたのがアンドロイドマンなので、ガマは、アンドロイドマンに仲間意識を持つ、いい上官なのではもしかして(笑)
ガマの舌に締め上げられたジローはダークで流行中の火炎放射であぶられ、眼前の炎、足下の地雷、響き渡る悪魔の笛、
と三重の殺意に追い詰められる。
そういえば今回はギターを弾いていないので、これはもしかして、口笛吹きながらサブローが出てきしまう流れ?!
と思ったのも束の間、僕にヒロイン力は必要ない!
とジローは自ら火炎放射の中に頭を突っ込む事で笛の音をカットし、捨て身のスイッチオン!
ダブルマシンが地雷を踏み、アンドロイドマンも地雷を踏み、ギルがその瞬間を今か今かと待ち受ける中、
ダークのテーマで迫り来る地雷ガマに向けてキカイダーが回転アタックを放ってしまった刹那、予告詐欺でも性能テストでもなく、
ガマ忍法・人間地雷の術により、本当の本当に五体が弾け飛ぶキカイダー。
「ミスター・ジロー……!」
吹き飛んできたキカイダーのバラバラ死体は毎度お馴染み笑劇時空に引き寄せられて半平の上に降り注ぎ、これまで幾度となく、
バラバラになったアンドロイドマンの首などに遭遇している半平、全てはこの時の為の伏線だったのか……(笑)
キカイダーの生首をかき抱く半平、の笑劇を越えた衝撃映像で次回に続き、自らの体を地雷とする事でキカイダーを吹っ飛ばした上で、
別に自爆忍法ではないので平然と行動している地雷ガマが強すぎるのですが、次回――完璧に存在意義を失った悪のライバルは、
勝利の雄叫びをあげる事が出来るのか。
……いつもは中身がほとんど無いので油断していたら、予告でほぼ全部見せたのでは、これ(笑)
- ◆第42話「変身不能!? ハカイダー大反逆!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
-
「服部半平、頑張るのだ。頑張れ……」
五体バラバラに吹き飛んだキカイダーを一つにまとめて背中にくくりつけた半平は、
ビクビクしながらもダークの回収部隊から逃げ回る大活躍を見せ、ここだけ見ると信義に篤く友情で結ばれた主人公の相棒キャラを思わせますが、
前回は、
「冷たいようだけど、吾輩、一度しか無い青春、もっと楽しみたいもんね!」
とミツ子とマサルを見捨て、
今回は今回で、回収部隊に追いつかれるとキカイダーの腕を放り捨てて助かろうとし、半平は、どこまでも半平です(笑)
まあそれでも常人レベルで考えれば、さまよえる光明寺よりはよほど勇敢で義理堅いとはいえるのですが、
場の雰囲気に流されやすくて欲望に弱い一方で、関わった人間を見捨てきれない、のもまた、
この物語において半平が示す“人の心の弱さ”といえるのかもしれません。
だがその半平の命もいよいよ風前の灯火のその時、土壇場で発動した禁術、
忍法・ヒロイン覚醒の術により口笛の音色と共にナイフがガマに突き刺さり、黄色いマフラーをなびかせたサブローが姿を見せる。
「キカイダーはこの世で俺のただ一人の強敵だった。キカイダーとの勝負だけが俺の生きがいだった」
「ええぃ、それがどうした。貴様なにが言いたいのだ?」
「その、キカイダーを倒したアカ地雷ガマ。俺はおまえと勝負しなければならん」
つまり、〔キカイダー < アカ地雷ガマ < ハカイダー〕が証明されるのだ!
とチェンジしたハカイダーはアンドロイドマン軍団を次々に餌食としていき、その間に逃げ出した半平は、
地下牢と繋がった通気口の中へバラバラのキカイダーを降下させていく。
「アカ地雷ガマ、俺はキカイダーよりずっと強いぞ!」
投げナイフの一撃により体内の電源回路を破壊され、地雷使用不能のガマを一方的に嬲ったハカイダーは、
トドメは振り向きざまのハカイダーショットで木っ葉微塵。
(……俺は……仲間を殺ってしまった……)
地面に転がるアカ地雷ガマの部品を見つめ、「仲○くんには、悪い事したかも」みたいな事を言い出す言動と行動のねじれは、
後のゼネラル・シャドウなども思い浮かぶところですが、まさに東映ヒーロー悪のライバルの結晶ハカイダー!
一方、バラバラになったキカイダーは半平の手を介してミツ子らが囚われた地下牢の中へと運び込まれるが、
ミツ子の技術ではその修理は不可能に近い。
地下牢の中にあるのは、物言わぬパーツと化したキカイダーの体と、物言わぬ抜け殻と化した光明寺の体…………つまり、もう、
残ったパーツとパーツを組み合わせるしかないのでは?!
ミツ子さんが禁断の選択に迫られていた頃、地上ではアカ地雷ガマを葬り去ったハカイダーが、己のレゾンデートルに直面し、
悪魔回路に異常を来し始めていた。
「俺は……俺はなんだ?!」
「え?」
「俺は、なんの為に生まれてきた? アカ地雷ガマは倒し、キカイダーは死んだ! これからは、俺はなんの為に生きていくんだ?」
キカイダーを倒す為に生み出されたハカイダーは、造られた存在としてその意義を見失い、新しい命令の入力を待つ事なく、
自我の崩壊から錯乱状態に陥ってしまう。
「憎い! 俺を造り出した、プロフェッサー・ギルが憎い!」
その怒りと憎しみは造物主たるギルへと向かい、ギルにとってハカイダーがまさしく「悪魔」と化すのが皮肉でありますが、
だから付けよう忠誠回路!
「ギルを、殺す……!」
破壊の拳で岩石を砕いたハカイダーは、隠し通路からダークの本拠へと入り込むと、椅子の後ろから、出てきた(笑)
「ん?! は、ハカイダー! 何事だ?!」
「プロフェッサー・ギル、おまえを殺す」
怒れるハカイダーの出現に周章狼狽したギルは、悪の総帥としての威厳が霧消し、
圧倒的暴力に怯える哀れな老人としての醜態をさらして逃げ惑い、ここまで40数話、指揮能力への疑問は大いにありますが、
凶暴な表情と言動で一応の格はキープしていたボスキャラの扱いとしては、かなり容赦の無い描写。
「なぜ、なぜ俺を作り出したんだ?!」
尊大な仮面を剥ぎ取られ、ハカイダーに首を締め上げられたギルは光明寺に責任をなすりつけ……ま、まあ、
完全に濡れ衣とは言い切れないのが困ったところですが、ギルを放り捨てたハカイダーは、地下牢へ。
「殺すがいい! ……殺すがいい…………光明寺をなぁ!! 光明寺を殺せば、おまえの脳も死ぬんだ! 同時におまえの能力は、
アンドロイドマン以下にになってしまうのだ……はは……はハ……はぁーはははハははハは……あーぁぁぁぁっ!!」
呆けたように大口を開けて笑い続けた末、絶叫したギルは闇に包まれた居室で床に倒れ、地下牢ではミツ子さんが、
キカイダーを部分的に甦らせる事で説明書代わりに使う空中殺法で修理を進め、色々とありましたが、
なんだかんだ最後の最後まで、ミツ子さんがキーパーソンとして劇中でならではの役割を持っているのは、今作の良かったところ。
そして、ハカイダーは、地下牢の扉が頑丈すぎて足止めを受けていた(笑)
てれってててー♪
ハカイダーは、パッシブスキル《残念》をてにいれた!
「開けろ……あけろぉ……あけるんだ!」
役割を見失った者と役割を果たさんとする者の運命が残酷に交錯し、ようやく扉をぶち破ったハカイダーの前に立ちはだかったのは、
辛うじて上半身だけが繋がったキカイダー!
地面から上半身だけが起き上がったキカイダーがハカイダーを押しとどめる強烈な画で、
このままアクションに突入したら凄かったですがさすがにそこまではやらず、下半身を繋ぐ猶予を与えたハカイダーは、
復活直後では全力を出せまい、と自らサブローの姿になると、ジローとの最終決戦を開始。
神になる事を拒む半神半機の英雄と、神を追い落とさんとする悪魔の申し子が激しく激突し、互角の攻防の末に、サブローのパンチが、
ジローの急所にクリティカルヒット!(いや、本当に……)
波に乗るサブローは、そろそろエンジンが暖まってきただろう、と変身するが、ジローは何故かチェンジ失敗。
「変身回路はまだ壊れたままか……死ねキカイダー!」
あ、遂に美学を投げ捨てた(笑)
そこへアンドロイドマン部隊が突入してきて、ハカイダーとジローは成り行きでアンドロイドマンを共に蹴散らしていき、
その間に秘蔵の癒やし動物写真集により忘我の淵から立ち直ったプロフェッサー・ギルは、ダーク破壊部隊最後の戦士を、
キカイダー・ハカイダー両者抹殺の為に出撃させる!
ギルが腕を振り上げると、両脇の秘書ロボットがぱかーんと割れて中からダークの切り札が飛び出してくるの期待していたのですが、
残念ながらそんな事はなく、謎のロボットの襲撃を受け、シルエットで倒されるハカイダー(笑)
……いや、なんか、凄くさっくりやられるらしい、みたいな話は聞き知っていたのですが、まさか、
敗北の瞬間を映してさえもらえないとは思いませんでした。
ある種の反転効果、みたいなインパクトを狙っていた可能性もありますが、直前のシーンが、どこだ!? どこに居る?!
と周囲をキョロキョロする姿だった為に、急転直下衝撃の敗北というより、映す価値もない間の抜けた惨敗、になってしまった感。
「ハカイダー!」
「つ、強い……! 奴は、俺より、強い……」
「ハカイダーより強い……どんな奴だ?!」
「どうせやられるなら……俺はおまえに、おまえにやられたかったぜキカイダー……」
やられた(笑)
キカイダーの永遠になる事もできず、がっくり事切れたハカイダーを「ハカイダー! ハカイダー! まだ大丈夫だぞ!」
とジローは担ぎ起こし、ここだけ見ると、敵味方を越えて戦いの中で芽生えた心の繋がりとかありそうですがそんなものは一切なく、
目当ては、そこに入っている脳だけです。
〔首領への反逆〕で悪のライバルキャラ満漢全席を達成するも、最後は〔己の美学〕を放り捨てた事で完全にその存在意義を失い、
〔真の最強の敵の踏み台〕をタッパに詰めてお土産に付けてくれたハカイダー、
この後の諸作に与えたと思われる影響を考えると東映ヒーロー史に残る偉大な悪役といえますが、同時に、
その出自ゆえに「決してヒーローにまともに取り合ってもらえない」非業の運命を背負っていたのは、驚きでした。
後、前振りを除くと、登場から6話で退場し、そのまま物語が最終回へ突入するのも、驚き。
ある意味では、“悪役の賞味期限”問題に対して、いきなりこれ以上ない満点解答を叩き出しているとはいえ、変身ブーム最初期にして、
実に恐るべき芸術点の悪のライバルぶりでありました。
光明寺を手術室に運び込んだミツ子らは、マニュアルを手に脳の再移植手術を行おうとするが、
そこに降り立つダーク破壊部隊・白骨ムササビ!
最後の最後で、KAWAIIとは正反対のグロテスクなダークロボットが出現し、ここでその姿にインパクトを出す為に、
ギルとのやり取りも、ハカイダーへの攻撃もシルエットで処理されたのでしょうが、
冒頭の今回予告でバッチリ見せていたので台無しだ!
次回――果たして、光明寺姫は脳を取り戻す事が出来るのか? チェンジ不能のジローは白骨ムササビを倒す事が出来るのか?
そして、半平は今までのツケに埋もれずに生き残る事が出来るのか?! いよいよダーク最後の時に、スイッチオン!
- ◆第43話「ジローの最期か ダーク全滅か?!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
-
ナレーションさん曰く「あれほどの強敵ハカイダーを、一瞬の内に倒した白骨ムササビ」が襲来すると、
チェンジ不能のジローは眠れる光明寺姫からムササビを引きはがして屋外へと飛び、
ここに来てジロー大事で父の手術を後回しにしようとするミツ子さんには、とうとうマサルくんの平手打ちが炸裂!
目を覚ましたミツ子は手術の開始を決断し、光明寺一家の抹殺を指示するギルの背中の壁には……
穴が開きっぱなしであった。
(俺は多分あいつには勝てない。どうせ奴に殺されるのなら、少しでも遠いところへ行って殺されよう)
上空からムササビの追撃を受けるジローは、手術の時間を稼ぐ為にアクセルをふかし、
「光明寺家を守る」という使命感の元ひたすら逃げるヒーローの姿を、音楽と台詞回しでヒロイックに見せていくのが巧妙。
「いえひひへひ! これはいい! チェンジできないキカイダーとは面白いぞ。ゆっくりと遊び相手になってもらおう〜!」
チェンジを試みるも失敗したジローに白骨ムササビが迫る一方、
決死の囮となった半平がアンドロイドマン部隊を引きつけている間に光明寺の脳移植手術は完了し、物語中における全ての役目を果たし、
空っぽの器として画面手前に横たわるハカイダーの姿には悲哀を感じずにはいられません。
前回今回で、脳の配線が焼き切れそうなレベルの大仕事を成し遂げたミツ子さんだったが、光明寺は目を覚まさず……
「まだわからないよ姉さん! なにか、なにかやってみることがある筈だよ!」
王子様のキス……?
「ないのよ! すべてやってみたのよ……!」
だがこの場にジローの姿はなく、代わりといってはなんだがミツ子のこぼした涙に反応して光明寺姫は目を覚まし、
苦節四十数話……洞窟で湧き水を啜ったり、カビとホコリだらけのあばら屋を宿にしたり、トロッコで怪人を轢いたり、
恩人を見捨てて逃げ出したり、盗んだマイクロフィルムを燃やしたり……色々ありましたが、遂に本当の再会を果たす光明寺一家。
「そうか……ここはダークの……わかった、わかったよミツ子。泣くなマサル! 私はもう大丈夫だ!」
よーし、お父さん、内部からこの基地を木っ葉微塵にしてやるぞ!
ぐらいの勢いで元気を取り戻す光明寺だが、そこにアンドロイドマンを引き連れて乗り込んでくるプロフェッサー・ギル。
「今までおまえ達を殺さないでおいた、儂が馬鹿だったのだ! 今日こそは……おまえ達を皆殺しにしてやる!」
脳移植手術のついでに光明寺液でも注射されてしまったのか、とんずら決めずにダーク基地に戻ってきた半平は、
真紅のギターを響かせ場を撹乱すると、逃げる光明寺一家を追うアンドロイドマンを車で蹴散らす獅子奮迅の活躍を見せ、
「服部半平、ここに眠る」(東映名物:勝手にお墓)建立の日は近い。
白骨ムササビの噛みつき攻撃を受け、崖から蹴り落とされたジローは、激しく損傷しながらもサイドカーを召喚したところで気を失うが、
逃走中の光明寺一家に発見されると緊急修理を受け、変身回路が復活。
だがその為に光明寺一家はダークに捕まって処刑場で縛り上げられ、半平は死んだフリでムササビを誤魔化して勝手にお墓を回避し、
目まぐるしく場面を動かして疾走感による盛り上がりを出そうとしているのですが、そもそも事のきっかけが、
光明寺を餌にして捕らえたミツ子とマサルを何故か本拠地に移送したらキカイダーの侵入を招いた、なので、
最終決戦としての盛り上がりはどうにも不足。
せめてダークに、世界征服に向けた一大作戦を展開するだけの余力があれば良かったのですが、
怨敵キカイダーを抹殺する為にハカイダーを作るので精一杯、そのハカイダーの手綱を握り損ねると、
アカ地雷ガマにしろ白骨ムササビにしろ、本拠地防衛の為に温存されていたと思われる手札を切る他なく、栄光の日は遙か遠く、
ズルズルと寝たきりから瀕死に陥ってしまったのは、ヒーローを輝かせるべき「悪」としては残念でした。
……作劇としては、そこに「ハカイダー」を当てはめているわけですが、
結果としてハカイダーが倒れると「ダーク」が空っぽになってしまったのは、最終回にしても極端になりすぎたかなと。
ギルもとうとう、「今までおまえ達を殺さないでおいた、儂が馬鹿だったのだ!」と過ちを認めましたが、
ミツ子とマサルについてはこれまでも難度も抹殺を試みているので、光明寺への執着、
そしてヒーローの戦闘力を引き上げる光明寺のヒロイン力を甘く見ていたのが、つくづく敗因であったなと。
つまるところ、光明寺のヒロイン力がギルの精神にも深い影響を与えていた事が窺えますが……この未練を断ち切ってこそ勝利の栄光はある!
儂は今、KAWAIIを捨てる!!
とギルは光明寺親子の処刑を号令し、薙刀の刃が3人に迫ったその時――僕らの仲間、ジローのギターが響き、最後の最後で、
ちょっと無理のある書き割りで登場するジローーーーーーーー!!
どういうわけか、処刑場のシーンで急に屋内セットになっており、恐らくはミニチュアの岩山の上に、
ギターを構えたジローの写真パネルを乗せる、強引極まりない映像になるのですが、
ヒーロー登場における高さへの挑戦にこだわりの見えた作品だけに、最終回で何故こうなってしまったのか。
「ダークの首領プロフェッサー・ギル! いよいよ最後の時が来たようだな!」
「ほざくなキカイダー!」
まあそれはそれとして、ジローが啖呵を切るとEDが流れ出すのは格好良く(近年特に、
定番の演出が思考停止になる事への危機感や疑念もわかる一方で、“ジャンルならでは”の魅力、は大事に使ってほしいと思う次第)、
宙を飛ぶ薙刀を次々とはじき返すジローの反撃により、四十数話に渡ってジローを苦しめてきた悪魔の笛、呆気なくリタイア。
最前線で使うには、発動までのモーションが大きすぎました!
「チェンジ! スイッチオン! 1・2・3!」
半平の囮にまんまと引っかかっていた白骨ムササビが飛来して戦いの舞台は屋外へと移り、アクロバットな格闘戦が展開すると、
クロスカウンター気味に入ったデンジエンドが白骨ムササビの喉をかっさばき、ダーク最強の戦士は木っ葉微塵。
……結局、電気ショックで強化されたライジングキカイダーとは何だったのか。
キカイダーに追われ、司令室に逃げ込んだプロフェッサー・ギルは、こうなったら光明寺と心中だ、
と自爆装置のスイッチを入れると狂気の笑みを浮かべながら玉座に座り込み、次々と発生する爆発によりダーク本拠地が崩壊していく中、
ヒーローによって完全に心を折られ、もはや焦点を失った瞳は闇の中に消えていくのであった――。
ダーク組織の組織感、半分ぐらいはプロフェッサー・ギルの一人芝居で持たせていたところがあるので、
最後の最後までその鬼気迫る表情に焦点を当てての、組織壊滅となりました。組織の首領としては問題が色々ありましたが、
袖を振りながら悪魔の笛を吹き鳴らすシーンは非常に印象的な映像で、個人的には、『キカイダー』といえばこれ、のシーン。
忘れられない名台詞は、
「ええぃ! 専門的な説明はいらん!」
です!
ジローと光明寺一家が脱出に成功した直後、逃げ惑う多数のアンドロイドマンを道連れにしてダーク基地は大爆発し、
ここにダークは壊滅。光明寺の生存によりジローの指名手配が取り消されると、
ジローと刑事が握手をかわす和解シーンが描かれる異例のアフタフォローが入り……さすがに指名手配については、
解決を明言しておいた方がいい、という判断があったのでしょうか。
光明寺は、「いつの日か人間が、私の発明を正しい事のみに使えるようになるその日まで!」(ベ○トさん)みたいな事を言い出すと、
しばらく外国でのんびり暮らそうと思っている事を皆に明かす。
「おまえ達にはまだ言っていなかったが、スイスにうちが買ってあるんだ」
いつ?!
ダークに監禁されたのが5年前だし、逃走中は記憶が無かった筈だし、警察に出向くまでの間に買ったにしても不自然すぎますが、
とはいえ光明寺は自分の研究について一度じっくり考えた方が良かったとは思うので、「私は更に研究を進めて、
遠からずもっと完璧な人造人間を作り出すつもりです」とか言い出さなくてホッとしました(笑)
……なおこの時、光明寺が中断した研究の一部を受け継いだ佐原博士が、愛と平和の為に作り出した完璧な超巨大コンピューター、
その名をブレインと言うトカ、言わないトカ。
これまでの人生が人生なミツ子さんは、ジローとのいちゃいちゃ妄想を胸にスイスへの憧れに目を輝かせ、
ちゃっかり生き延びた半平はしれっと荷造りに加わっていたが、平和を取り戻した光明寺家の団らんを見つめるジローは、一人、
旅立つ事を決めていた。
「博士、ミツ子さん達には、なにも言わずに行きます」
「うん。私も、君の良心回路を、完全にしてやれなかった事だけが心残りだ」
「いえ、僕はこのままがいいんです。欠点の多い人造人間のままで。完全な機械にはなりたくありません」
ジローは、“作り出され、与えられた完全”である事よりも、“不完全ゆえに、苦しみ、痛み、それでも歩み続ける”事こそを、
己自身の個と生の意味だと見出し、テーゼを強調する都合とはいえ、最後の最後まで、
光明寺家の人たちにはジローの言いたい事がいまいち伝わらず仕舞いだったのですが、これはこれで一つの父殺しであり、
ジローの真の旅立ちにとって、必要な通過儀礼であったのかもしれません。
「ではこれからやはり修行に出るのか?」
「はい。全国を回って、不完全な良心回路に負けない、精神力を身につけてきます」
最後にものを言うのは、精・神・力!
「君が来ないと知ったら、ミツ子やマサルがガッカリするだろうが……ま、私からうまく話しておこう」
そして、博士は素も割と適当だな!!
EDパートには結構な尺が採られ、半平に見送られてスイスへと飛び立つ光明寺家の中にジローの姿は無く、
ミツ子さんのラストシーンは、悲痛な表情でジローの名を叫ぶアップ3連発、の悪魔の仕打ち。
終盤割と活躍したのに、どういう事なの?!
その飛行機を地上から見つめるジローに言葉はなく……
機械の器は涙を流すのか?
機械の心に愛は宿るのか?
それとも機械は、人に代わって無謬の神となりえるものなのか。
時計仕掛けの林檎を胸に、今はただ、ジローは征く、不完全な己を律する、心の筋肉を鍛える旅に。
ナレーション「そしてジローは、今日から明日へ、そして未来へ向かって、力強く自分の道を進む。頑張れキカイダー! さようなら、
ジロー!」
地平線へ向けてサイドマシーンを走らせるジローの勇姿で、完。
以前に次作にして直接の続編となる『キカイダー01』を見ていた為に、順序が逆転しての視聴となった『キカイダー』、
どうしても『01』の印象がちらつきながらの視聴になったのがちょっと厄介だったのですが、変身ブーム最初期の作品として、
後の東映ヒーロー作品にも様々な影響を与えていると思われる、主人公の造形、コメディリリーフ服部半平、
そしてダークヒーロー・ハカイダー、といった諸々を見られて良かったです。
特にハカイダーは、長らく『01』ハカイダーの印象だけだったので、原型を確認できて本当に良かったですが、
そのハカイダー登場から7話で終わったのは、『ウルトラマン80』の学校編が1クールで終了、ばりの衝撃でありました。
その後、『01』であんな事になったのに、東映悪のライバルキャラの金字塔としてその名を残したのは、
この圧縮された切れ味によるところもあるでしょうか。そしてとにかく、シニカルな悲哀を背負ったキャラであったな、と。
ただ個人的には、先に見てしまった『01』ハカイダーがある意味好きだった事と、
その継承者ポジションのワルダーが印象深かった事もあり、今作通して最もインパクトのあったキャラクターは、
光明寺博士(笑)
東映ヒーロー作品らしい生粋のマッドサイエンティスト風味を漂わせつつ、
それ以上にパーフェクトヒロインである、というのは度肝を抜かれる存在でした(笑)
それから、中盤以降に戦慄のダークの女ぶりを見せたミツ子さんも、意外性が段々と好きなキャラに。
また、如何にも持てあましそうなポジションだったのに、ジローとサブローの対比を鮮明にする役割も果たし、
終盤に思わぬキーマンとなったマサルくんの使い方は綺麗に収まり、メタ的にはサブライターに致命的に動かしにくい大問題はあったものの、
“撒き散らす災厄”も含めて、光明寺一家が、なかなか面白い存在でした。
だいぶ頭が煮えてきたので、落ち穂拾いも含めて、簡単な構成分析(という程メリハリ無さそうなのが、ある意味、
特徴ですが……)は早めに別項でと思いますが、以上ひとまず、『人造人間キカイダー』感想、お付き合いありがとうございました!
(2024年5月9日)
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