■『人造人間キカイダー』感想まとめ6■


“俺の名は 俺の名は ハカイダー
つぶせ こわせ 破壊せよ!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『キカイダー』 感想の、まとめ6(31話〜36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第31話「ジローの死を呼ぶタコヤマブキ」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 見所は、驚きのベストマッチを見せる、光明寺×漁師。
 さまえる光明寺の扮装に関しては、如何にも紳士然としてロボット工学の第一人者というインテリでもある光明寺が、 いわゆるブルカラーとして姿を見せるギャップの面白さを出す趣向も感じられますが、あまりのはまりっぷりに、 光明寺の旅がここで終わりそうな勢い。
 物語の舞台は東京から約束の地かもしれない・鳥取へと飛び、浜で猟師が地引き網を引く映像から始まると、 網に引っかかって海から現れたのは、ダーク破壊部隊のタコヤマブキ!
 凄くタコそのものなデザインのタコヤマブキは、頭をぱかっと開くとタコ墨を放って数人の漁師を抹殺し、その目的は、 山陰地方における秘密実験場の建設にあった。
 だが、その作業は遅々として進んでおらず、観光客が多すぎてこっそりやっているので進まないんスよ……と弁解するタコに対し、 やり方が手ぬるい! 見られたらデストロイ! と世界征服を企む悪の秘密結社としての矜持を取り戻すべく、プロフェッサー・ギルは、 エールを送る。
 「殺せ殺せ殺せぃ! 殺すのだ!」
 一方、ミツ子とマサルは光明寺の行方を追って米子に到着すると、皆生(かいけ)温泉の皆生グランドホテルをアピールし、 何故か半平は、三度笠被った渡世人コスプレで海に向けて釣り糸を垂らしていた (1973年なのでドラマ化した『木枯らし紋次郎』が大ヒットしていた時期でしょうか)。
 ミツ子たちが旅の道中で知り合った父娘の危機にジローが現れるが、アンドロイドマンから逃げようとした父は海に転落。 慌てるジローはタコに飛びつくもそのまま抱えて振り回されるちょっと謎アクションからきりもみチェンジ。
 オクトパス金縛りで触手にからみつかれるキカイダーが触手を切断するとタコは飛行して逃走するも、旅先で父親がいきなり海に転落!  の悲劇にゲスト少女が見舞われる一方、光明寺は、カニ漁船に馴染んでいた。
 「そげん上達ば早かとこ見ると、あんたやっぱり浜育ちだ。ちげぇねぇ」
 忍者の里(伊香保)育ちです!
 前半に比べると専門家に相談しようとするわけでもなければ記憶を辿ろうとするわけでもなく、 半年以上も漂泊している内に行く先々で環境に馴染みすぎて、本当に記憶を取り戻す気があるのか不安だった光明寺ですが (取り戻す事への恐怖感、というのも理解できますが)、内心では放浪の身の上に忸怩たる思いを抱えている事がナレーションで補強され、 そんな光明寺の乗り込んだ漁船からカメラを上へ引いていくと、 それと知らずに通り過ぎていく漁船を橋から見つめるミツ子とマサルの姿があるのは、寂寥感が出ていい演出。
 ミツ子とマサルはそこで、妄想新婚旅行の予行演習(三度笠で)にやってきた半平と出会い……え、 昨日の新聞に載った「米子空港から降りた観光客」の写真に写っていたのに、もう今日は漁船に馴染んでいるの光明寺?!
 ニンジャの遺伝子のもたらす潜入能力に戦慄していると、
 「名探偵・服部半平様が、この一枚の写真から、なんか手がかりを掴んでみようぞ」
 と写真に虫眼鏡を向ける半平、久々に探偵らしいスキルを発揮するのかと思いきや、直後に接待を要求(酷い)。
 半平を連れて皆生グランドホテルに戻ると、少女を連れ帰ったジローと出会い、ジローが写真を精密分析した結果、 光明寺は作業着姿であり、観光客ではなく空港で働いていたのではないか?  といきなり漁船に馴染んでいる引っかかりが鮮やかに解消される名推理。
 ゲスト少女を鳥取空港へ向かうミツ子たちに預けたジローは、少女の父親を探す為に海中へと飛び込んでいくが、 ゲスト父はその間に光明寺の乗っていたカニ漁船に助けられて一命を取り留める。
 空港へ向かったミツ子達は、光明寺は2日前に辞めたと無駄足を踏む事になり……結局、光明寺のカニ漁船への異常な馴染みっぷり (今までのどんな職業よりもはまりきっているのですが、それこそ、役者さんは浜育ちだったのでしょうか、というぐらい)は、 一日二日の誤差レベルだった事になり、恐るべし、光明寺流ニンジャの遺伝子……!
 一方、実の父親が海中へと転落して生死不明の状況で何故か他人の父親探しに付き合わされるゲスト娘、 はるばる米子までやって来て父親探しに行き詰まりやさぐれるマサル、この時期に海に落ちて生きているわけがないでしょ面倒くさいを隠しもしない半平、 が寄り集まるミツ子サイドの空気は、地獄絵図と化していた。
 恐らくタイアップ特権と思われる、ホテルの娘がたどたどしく登場する一幕を挟み、少年少女に舟盛りを勧める半平渾身の河童踊り (一応、暗い空気を吹き飛ばそうとする意志はあるようですが、全く空気が読めていないので地獄濃度が高まるばかり) も不発に終わった一夜が明け、意識を取り戻したゲスト父を狙い、漁港を襲うタコヤマブキ。
 逃げる光明寺とゲスト父めがけてタコの攻撃が放たれる寸前、光明寺博士のヒロインスキル《天の助け》が発動し、 横から炸裂するジローの跳び蹴り。だが、直後に響いた悪魔の笛に苦しむジローを、兄弟たちの恨み、とタコヤマブキは執拗に痛めつけ、 ジローはくったり人形と化してしまう。
 「カイメングリーンの仇だ!」
 伊豆編に続いて今回も1エピソードに複数のダークロボットが登場するのも手伝ってか、今作としては珍しい同僚意識が描かれると、 力強く投げ飛ばされたジローは漁船に衝突! の際に爆発音で笛の音がカットされたから事からスイッチオンに成功し……あ、久々に、逃げた。
 一方、通りすがりの観光バスに逃げ込んでいた光明寺とゲスト父だが、セスナ機による追跡に気がつくと、 他の客に迷惑はかけられないと途中下車を要求し、強引に乗り込んだと思ったら今度は降りようとする、完全なる無法者(笑)
 露骨な観光タイアップの都合により、ゲスト少女が父と行く筈だった鳥取砂丘に向かっていたミツ子一行の背後には謎めいた青い靴の男が迫り、 砂丘を逃げ惑う中年男性2人がセスナから銃撃される派手なスペクタクルが展開すると、 続けてキカイダーのサイドマシーンが標的にされて、爆発! 爆発! 爆発! と、今作にしては派手なカットを連発。
 セスナからの攻撃はキカイダーが引きつけたものの、追撃してきたタコの触手に鉄棒ぬらぬらされそうになる中年男性2人だが、 キカイダーの救援が間に合って逃走すると、キカイダーとタコが砂丘で戦闘開始。
 50年前なのでなんともですが、鳥取砂丘は景観保全の為に色々ルールがあると聞くので、 戦闘シーンは砂丘に見立てた別の場所で撮影した可能性もありそうですが(怒られ案件になっていない事を祈る)。
 タコヤマブキはデンジエンドで爆死するが、ミツ子らを追っていた男がタコヤマブキのSOS信号を感知して、 ダークロボット・アオデンキウナギの正体を現し、ウナギ百万ボルトががキカイダーに炸裂!
 そしてゲスト少女が砂丘で拾ったのは、キカイダーの腕?! と衝撃のつづく。
 何が衝撃って、サブタイトルが回収された……!
 次回――
 「ジローは、光明寺が知らずに付けた、アオデンキウナギの手に苦しむ!」
 光明寺ーーー?!
 「だが、うまくダーク地下室に潜入する! 同時に地下室は大爆発を起こした!」
 本編の内容が内容な事もあり、物凄い勢いでまくし立てては、右から左に抜けていく事には安定感のある『キカイダー』次回予告ですが、 今回はいつも以上にハイテンションで、面白かったです(笑)

◆第32話「アオデンキウナギ魔の腕が光る」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 前回衝撃のラストから、落ちていたキカイダーの左腕を抱え、ジローを必死に探すミツ子たち。
 ナレーション「鳥取砂丘はあくまでも広く、ただ一陣の風が吹き荒れるだけであった」
 からの、
 ナレーション「ジローはどこか、そして光明寺博士は。キカイダーは死んでしまったのであろうか」
 と、いつものフレーズを用いるのが、洒落た導入。
 ナレーション「――その頃、左腕を失ったキカイダーは、アオデンキウナギの追跡を逃れてサイドマシーンを飛ばしていた!」
 ハイ早かった!!
 一話だけでは勿体ない! と前回の砲撃映像が再活用され(深く納得)、山陰道をひた走るキカイダーだが、 セスナからの攻撃を受けている内にデンキウナギに追いつかれてしまい、隻腕のキカイダー、史上最大のピンチ!
 セスナは光明寺らの追跡に向かい、さすがにこれで殺すと酷すぎるとはいえ、ゲスト父のサバイバル力が凄い。
 この男性もまた、忍者の末裔なのかもしれません。
 デンキウナギのウナギハンドに絡みつかれたキカイダーは、ウナギハンドをホバーで強引に引きちぎって逃走し、ウナギは修理の為に撤収。
 「どいつもこいつもうつけ者めが!」
 我が身可愛さにアンドロイドマンにSOS信号を送ったデンキウナギの弱腰ぶりに青筋を立てるギルの一人芝居は、今見ると、 『特捜ロボ ジャンパーソン』における麗子様の一人芝居に通じるものも感じます。
 独り砂丘を彷徨っていた光明寺は、ダーク製アンドロイドの左腕を握りしめたまま倒れ伏す片腕のジローを発見。 行き倒れの人造人間の存在を平然と受け止めると本能の赴くままに修理を始める一方、ジロー・光明寺・ゲスト父、 3人の行方不明者をまとめて見つける一挙解決の名案を思いついたと言い出した半平は出雲大社に向かい、神頼み。
 4人はそのまま観光フェーズに突入し、さらっと隣県に入っていますが調べてみたところ、 2022年現在〔皆生温泉→出雲大社〕は車で1時間20分ほど。〔皆生温泉→鳥取砂丘〕も同様で、道路の距離だけでいえば、 出雲大社の方がむしろ近いぐらいでした。
 米子空港の場所を全く把握していなかったのですが、島根県との県境に位置しており、鳥取よりもむしろ松江に近く、 車で30分ほど北へ向かうと水木しげるゆかりで知られる境港。島根と鳥取が領土紛争を始めたら、絶対激戦地だ、この辺り。
 メーカー違うけどひとまずくっつけておけ、と光明寺がジローを魔改造している頃、ホテルに戻ったミツ子らの前には、 ゲスト娘を狙うアオデンキウナギがゲスト父に化けて姿を見せ一悶着。
 「よし! 試してやる!」
 殴って倒れたら人間だ!
 殴って無事だったらアンドロイドだ!
 ジロー仕込みの判別法で、マサルがゲスト父の背後から棒きれを叩きつけるとアオデンキウナギが正体を現し、 皆生グランドホテルの庭に血の雨が降ろうとしたその時、タイアップ先の評判を守る為、響き渡るギターの音色。
 光明寺の不正改造による復活ジローがチェンジすると、左腕がウナギの腕になるのは面白い趣向で、 今更ながらにダークロボットのやたら高度な変身能力と、ジローのチェンジは同系統のメカニズムなのだな、と。
 宿敵の左腕が切り落とされた自分の左腕になっている、割とちんぷんかんぷんな状況を何故か平然と受け入れたウナギは、 キカイダーの左腕をコントロール。
 「左手が……」
 「左手がどうしたのよ?!」
 「抑えていないと勝手に動き出そうとするんだ!」
 し、鎮まれ、俺の左腕……!
 文字通りに悪魔の左腕を宿したジローは、ミツ子たちを遠ざけようとするが、近づいてきた半平をぽかり。
 「吾輩だけが、なぜ殴られるの?」
 ……前回の態度が色々と悪かったからでは(笑)
 そこで本物の左腕を取り出したミツ子は、その場で緊急オペを開始すると、主人公の左腕を引っこ抜いて投げ捨て、 凄いぜダークの女!
 開始当初は、実の父親である光明寺博士の圧倒的ヒロイン力の前に押される一方のミツ子でしたが、中盤以降、恋慕の情、 という言葉一つでは片付けきれない思い切りの良さで独自の存在感を確立。同時に、 ジローにとってはどんどん“重い女”となっていくのが運命の皮肉ですが、話が進むほどにミツ子さんは後の三枝かおる (『特捜ロボ ジャンパーソン』最大の狂気)のプロトタイプに見えてきますし、ミツ子さんの存在を下敷きにしたからこそ、 かおるはあそこまで狂気のステージを引き上げられたのかもしれない、と思えてきます。
 ようやく父親と再会したゲスト少女だが、観光バスに助けを求めたところで捕まってしまい、伊香保温泉といい皆生温泉といい、 『キカイダー』世界の観光バス業界は、色々と大変。
 父娘が執拗に狙われている理由に思い当たったジローは、最初に出会った灯台近くの海中に潜ってダークの秘密基地を発見すると、 内部に爆弾を仕掛ける珍しい搦め手を見せ、秘密処刑場に運び込まれそうになった父娘を救出。
 「灯台から海底へ繋がっているおまえ達の秘密実験場は、あと1分で爆発する!」
 「なんだと?!」
 「アオデンキウナギ! 今度こそ許さない!」
 無慈悲なる基地爆破宣言から地上に降り立ち、呪われた左腕を克服したジローはフルパワー。
 だがそこに、前世からの宿業を呼び覚ます悪魔の笛が鳴り響き、やめろ! 俺はもう、黒い翼の天使には戻らない!
 ナレーション「その時、海底秘密実験場にジローがセットした爆破装置が作動した!」
 と、『キカイダー』には珍しい、事前の工作活動が鮮やかに繋がって、おお成る程(普段、 偶然や敵のミスに助けられるパターンが多いので、結果的なものとはいえ、主人公自らの行動によるものだったのも良かったところ)。
 スイッチオン! 1・2・3!
 今度こそ、暗黒戦士としての前世を断ち切ったジローはチェンジに成功し、回転アタック、大車輪投げ、 そしてトドメのデンジエンドを浴びせ、黄昏が迫りつつある海岸で、アオデンキウナギはネジと歯車に還るのであった。
 父娘の再会は果たされ、ミツ子たち一同は皆生グランドホテルを去っていき、前回予告の「だが、うまくダーク地下室に潜入する!  同時に地下室は大爆発を起こした!」は、クライマックスだった事が判明(笑)
 『キカイダー』次回予告は、次のエピソードを見始める頃にはもう忘れているというぐらい、普段全く頭に入ってこないのですが、 入ってきたら入ってきたで、やはりほとんど喋っているのではないか疑惑。
 ナレーション「それでは、次回の、「凶悪キメンガニレッド呪いの掟」をどうぞお楽しみに」
 そして急にフレンドリーになったのですが、ナレーションさんの身に、いったい何が。

◆第33話「凶悪キメンガニレッド呪いの掟」◆ (監督:永野靖忠 脚本:多村映美)
 キメンガニレッドの操る破壊音波によって夜の街で男女が爆死し、どアップから入ったギルをあおりの角度で撮ると、 斜め下のカメラに向けてギルがVサイン(ハサミの見立て)を突き出す、これまでにないタッチの見せ方。
 「地球侵略も……そのハサミ一つで充分だ」
 10万人を殺せると豪語する破壊音波のテスト成功にご満悦のギルは邪魔者キカイダーの始末を命じるが、キメンガニのアジトでは、 第19話で登場したカブトガニエンジの復刻版が暴れ回っており、ダークロボットとダークロボットがそれなりの会話をかわす、 今作これまでなかった怪人ドラマ。
 「俺はおまえを消したくない。愚か者とはいえ、兄貴だ」
 カブトガニエンジの構造を元に改良を加えられ、モデルチェンジしたその強さは5倍!  と自称するキメンガニはカブトガニの動きを封じると牢屋に念入りに拘束し、 設計のベースにするのになぜ復刻までする必要があったのか疑問は募りますが、カブトガニは通風口からあっさり逃亡(笑)
 キカイダーに復讐の念を燃やすカブトガニエンジはひとまず近所の工事現場で無差別殺人を行い、そこには偶然にも、 さまよえる光明寺が働いていた。半平情報で工事現場に向かっていたミツ子一行がカブトガニの襲撃を受け、 助けに入ったジローだが悪魔の笛の音が鳴り響き、笛を口にあてながらカメラをねめつけるギルの視線が、いつも以上に怖い。
 笛の音に苦しむジローを見たら慌てて攻撃しない事を学習していたカブトガニは、遠間から破壊光線を放つが、 結局はカブトガニバブルにより耳を塞いでしまった事でチェンジされ、必要なのは、判・断・力……!
 所詮は再生怪人よ、とキカイダーに痛めつけられ、投げ飛ばされたカブトガニは、 キカイダー憎しの執念でなおも立ち上がると最後の花火を打ち上げようとするが、 気絶から目を覚ましたミツ子さんが突然カブトガニをかばい……???
 初見の脚本家により、再生怪人の執念(と今回怪人との衝突)にスポットを当てていくのは割と面白いアプローチだったのですが、 このままだとダークに始末されるからとダークロボットに情けをかけるミツ子の姿は、今までの物語に影も形も無い要素すぎて、 目測を誤ったアプローチがフェアウェイの遙か彼方に消えていく、完全なOB。
 「窮屈だけど少しの辛抱よ。お父様が帰ってらしたら、すぐにこの体を治療して元通りに」
 キカイダーを説得したミツ子は、激しい損傷を抱えたカブトガニエンジを光明寺のロボット管理室へと運び込み、 いつ帰ってくるのか全くアテの無い光明寺を引き合いに出し、鉄格子の檻に放り込んで拘束具をはめるのを、 専門用語では監禁といいます。
 ――そうよ、あなたはこれから私の理想のアンドロイド、 第二のジローに生まれ変わるのよと悪魔のメスがカブトガニエンジの頭脳回路を切り刻む寸前、 アンドロイドマンによる救出部隊が突入してくるとミツ子はさらわれ、半平は今日も、 殺す価値も無い存在としてジョージ真壁ばりの放置を受ける。
 工事現場付近に落ちていたヘルメットを発見したジローはミツ子がさらわれた事を知り、 アンドロイドマン部隊の後を追っていたマサルはダークのアジトに近づくと囮として泳がされ、カブトガニとミツ子は、 雑に一緒の牢屋に放り込まれていた(笑)
 「殺す前に、おまえの探していた親父に会わせてやる」
 既に囚われの身となっていた光明寺は、ボウケン学校の入学試験に落ちた某レッドのように体育座りしながらぼんやりと壁を見つめていてミツ子の声は届かず、 いよいよミツ子が処刑されようとしたその時、突然ミツ子をかばったカブトガニがキメンガニの攻撃を受けて消し飛び、 その間に牢屋を抜け出したミツ子を助けに響くギターの音色。
 キカイダー襲来の混乱により、牢屋の扉が壊されるや光明寺は脇目も振らずに逃走し、無駄な体力を使わずにじっと温存から、 ここぞという瞬間に爆発させる姿に、逃走のプロフェッショナルとニンジャの魂を見ます。
 ミツ子とマサルは合流に成功して光明寺の後を追い、キカイダーには恐怖の破壊音波が迫り木っ葉微塵の危機に陥るが、 たまたま車で走ってきた半平の助けにより、破壊音波を強化しすぎたキメンガニは自爆。
 全身にダメージを追ったキメンガニレッドは、待ち受けていたキカイダーに余裕たっぷりでトドメを刺され、 ダークロボットに慈悲など無用!!
 再生怪人と対比する事によりキメンガニレッドの強敵感を出すのは上手く行ったのですが、 ミツ子さんの突飛な行動から致命的な歯車のズレが発生。
 これがせめてジローだったら、ダークロボットに「心」を見ようとしてもある程度は納得できたのですが、 ミツ子さんのダークロボットへの態度はどちらかというと「殺せ殺せ殺せ……! 殺すのだぁ!」の印象ですし、 そこまでしておきながらカブトガニエンジの掘り下げはどこかに消し飛んで雑に片付けられ、 予告でちょっぴり期待させた光明寺問題はいつも通りにさしたる進展もなく、狂った時計の針が戻る事のないまま終わってしまい、 残念でした。

◆第34話「子連れ怪物ブラックハリモグラ」◆ (監督:永野靖忠 脚本:島田真之)
 営業成績の悪化により、なにかと懐具合の苦しいダークは横浜の金保管所を襲撃するが、 何故かその情報を事前に掴んで警察に持ち込んでいた女が一人。
 続けて原子力研究を爆破しようとするダークだが、今度は女の情報を信じた警察隊が急行してきた事で、 実働部隊のアンドロイドマンが包囲を受けてしまう。
 「まずい。アンドロイドマンの口を封じるのだ。自爆スイッチを入れろ!」
 ギルは遠隔操作でアンドロイドマンを自爆させ、ここからわかるプロフェッサー・ギルのアンドロイドマン観は、
 警官隊に包囲されると負ける・警察に尋問されると口を割る
 の2点。
 期末テストに出るところなので、よく覚えておいて下さい。
 ギルの指令を受けた情報部はあっという間に女の素性を突き止め、女の正体は、 ダークに所属していたが既に裏切り者として処刑されたモモヤマ博士の妻カズコと判明する(福利厚生には自信の無い組織、ダーク!)。
 生前の博士が、ダーク犯罪計画書を妻に流出させていたに違いない、と判断したギルは、 刺客として親子ロボット・ブラックハリモグラを放ち……劇画『子連れ狼』(原作:小池一夫/作画:小島剛夕)が1970年にスタート、 若山富三郎主演の映画シリーズが1972〜74年、萬屋錦之介主演のTVシリーズは1973年4月スタートなので、 流行りに正面から乗りにいった感じでしょうか。
 夫の敵討ちとしてダークの秘密を暴こうとするカズコ夫人の経営するバーでは光明寺がバーテンダーとして働いており、 身の危険を避ける為に育児院に預けた娘に届けてほしい、と夫人に託された雛人形が何か恐ろしい事件を起こしそうな気がする、 と勝手に梱包を開き始める光明寺が、とっても光明寺。
 男雛の中に隠されていたマイクロフィルムが光明寺の手に回収される一方、カズコはブラックハリモグラの襲撃を受け、 もはやお馴染みの増岡弘さんが甲高い声で殺人針を飛ばして警官を殺害する光景を、雛人形を届け終えた光明寺が物陰から見ていた。
 「恐ろしい事だ……だが私には何も出来ない」
 記憶を失い、あくまで無力な一般人のスタンスを貫く光明寺、自然といえば自然ではありますが、善玉サイドのメインキャラとしては、 あまりにも、我が身大事に正直すぎて咀嚼に困ります(笑)
 なにしろほんの数分前には他人の荷物を勝手に開けてマイクロフィルムを懐に収めたばかりなので、急に正気に戻られると、 見ているこちらのチューニングが間に合いません。
 光明寺に見捨てられたカズコの危機にジローが駆けつけ、チェンジすると戦闘開始。
 ダブルチョップを受けたハリモグラが穴を掘って逃走し、パンダの人形を抱えた子ハリモグラの修理を受けると、 橋幸夫による「子連れ狼」(劇画『子連れ狼』イメージソングとして1971年に発表され、後に劇場版とTV版でも使用)が流れだし、 しとしとぴっちゃんしとぴっちゃん、流行りに乗るどころかまさかのタイアップ(笑)
 一方、割と有能なダーク情報局がカズコの娘・マユミの存在をかぎつけると、 ギルは娘が預けられている育児院に少女に変身した子ハリモグラを送り込み、ジローらもまた、マユミを守ろうと育児院に潜入。
 雛人形の情報を得るハリネズミだが、既にマイクロフィルムは光明寺によって持ち去られており、ここまで穏便に事を進めていたダーク、 光明寺が余計な事をしたばかりに、娘を人質に取る強硬手段を発動。
 ところが、マユミをさらおうとした父ハリモグラは、マユミに情が移った子ハリモグラの妨害を受けてしまい、逃げ出す二人の少女。
 裏切り者として子ハリモグラにアンドロイドマンの槍が迫った時、親ハリモグラが必死に命乞いをすると命をかけてキカイダーを倒すと宣言し、 矛先を収める情を見せたアンドロイドマンたちは……この後、キカイダーによって壊滅します。
 「ダークに生まれし者は、ダークに帰るのだ……ダークに帰れ……」
 笛の音に苦しむジロウを前に勝利を確信したハリモグラは、大量の土砂を噴出した生き埋め攻撃により例の如くジローにチェンジの機会を与えてしまうと、 父の危機に正体を現した子ハリモグラと共に逃走。
 だがその背後に、迫り来るドリルマシーン!
 突然、サイドマシーンの助手席からドリルがにゅいーんと突き出して地中を掘り進んでいくのですが、 ドリルのデザインが大変ごつくて、迸る殺意。
 必死に逃げるハリネズミ父子を助けようと駆けつけたアンドロイドマン部隊は鬼畜キカイダーの前に敢えなく壊滅し、 残るはブラックハリモグラ父子のみ。
 ドリルマシーン発動前、「あの子を助けたいんだね」とマユミの頼みを快く聞いていたキカイダー、 どうやって着地させるのかと思っていたら、父ハリモグラはよく回る大車輪投げからさっくりデンジエンドされ、 崖を垂直落下しながら大爆発。
 「あ! 父ちゃーん!」
 それを見た子ハリモグラは崖に近づいた拍子に足を滑らせると誤って転落していき、残されたパンダのぬいぐるみにカメラが寄ると、 画面外で大爆発。
 「……しまった、せめて子供だけでも助けてやりたかった」
 70年代の厳しさが容赦無く炸裂し、ぬいぐるみを拾い上げたキカイダーは、残念だ、遺憾だ、そんなつもりじゃなかった、 と後悔の念を述べるのですが、そもそもマユミの頼みを爽やかに請け負った割には、 なんの算段も見せないまま父ハリネズミを躊躇なく爆殺しており、顔の似た某後輩の、
 「しまった……。秘密を守る為に自爆してしまったんだ」
 を思い起こさせる誠意の薄さ。
 ここで都合良く、子供型とはいえダークロボットを救済するのは相当な無理が出たでしょうから爆死エンドそのものは頷ける成り行きなのですが、 ヒーローが「子供の頼み」を聞いたにも拘わらず、なんの手も打たないまま見殺し同然の展開には、さすがに唖然。
 ブラックハリモグラ父子は冷たく固い土の下で骨となり、キカイダーの征く冥府魔道をただ風が吹き抜ける。
 光明寺は持ち逃げしたマイクロフィルムを焼却し……い、いや、せめて、官憲に……!!
 次回――いつもと違うBGMの予告で烏の大群に襲われる光明寺博士! と思ったらナレーション一切抜き(サブタイトル紹介も無し)で、 ハカイダーのテーマソング(好き)がかかる気合いの入った変則演出で、キカイダーを破壊せよ!

◆第35話「ジロー デンジエンドの最期!」◆ (監督:北村秀敏 脚本:長坂秀佳)
 予告に続き、怪人名の入らないサブタイトルがぐるぐる回りながら表示される変化球で、いやが上にも高まる期待感。
 雇い主であるバーのオーナーを見捨て、密かに盗み出したダーク犯罪計画書を焼き捨てた光明寺は農家として新たな人生を歩んでいたが、 不気味な烏の群れに襲われ、鍬で叩くと、爆発!
 意外と珍しい流血表現も有りで光明寺がメカ烏に追い詰められた時、ジローが駆けつけてなんとか軽トラで逃れるが、 メカ烏軍団はしつこく光明寺を追い続け、ひたすら、烏・烏・烏の姿と鳴き声が響き続け、不気味さを煽る見せ方 (ヒッチコックの『鳥』が1962年公開ですが、未見なのでオマージュがあったりするのかはわからず)。
 光明寺の目撃情報を手にミツ子らと待ち合わせしていた半平が、逃走中の光明寺を見つけてその後を追う一方、ジローの前には、 メカ烏が合体した漆黒の円盤が、立ちはだかる。
 「おまえは誰だ?!」
 その問いかけに応えるように……円盤から足が!(笑)
 そして頭が!
 翼が!
 「俺の名はダーク破壊部隊、クロガラス!」
 銀の嘴と紅い瞳を除くと全身ほぼ黒一色で、伸ばしたピザ生地(或いはナン)から、両足と両翼と頭部だけが突き出したような、 驚くほどシンプルなデザインとそのまんま過ぎる名前だが声だけはやたら格好いい(CV:飯塚昭三……ではなく渡部猛さんでした!) クロガラスを前に、ジローはチェンジスイッチオンするが、いきなり空中ではたき落とされる衝撃の展開。
 「俺の強さは、今までの破壊部隊とは違って桁違いだ。その姿でも俺には勝てんぞキカイダー!」
 「なに?!」
 なんかちょっと1000%社長みたいな事を言い出すクロガラス、 扁平な胴体に付いた翼をパタパタ動かしてKAWAIIをアピールし続けながら渡部猛の声で喋るという、なんと恐ろしい敵……!
 一方、ロボ烏に追われ続ける博士を助けようとした半平は、ハンドルから両手を離す危険運転で路肩に乗り上げてリタイア、 かと思いきや勢いで軽トラの荷台に飛び込むミラクルを発動し、
 「かっこいー! 吾輩なんだか主役みたい!」
 とうとう、笑劇時空の効果が切れて、新展開の生け贄となる日が来たのでしょうか。
 光明寺&半平サイドの前にはアンドロイドマン部隊が現れ、キカイダーは大車輪投げからデンジエンドを放つが、 クロガラスは必殺コンボを受けても平然と起き上がり、翼をパタパタ。
 何か動かしていないと格好がつかないと思ったのでしょうが、結果的に、凄まじいばかりのKAWAIIのオーラを放出しており、 それはデンジエンドも通用しないわけです。
 見たかキカイダー! これが、今までの破壊部隊とは桁違いのKAWAIIだ!
 なお、後の戦隊ロボによく見られる“デカいは強い”理論だったのか、カラスの胸部から喉元あたりに中の人の頭が来て、 その上にカラスの頭部が乗っている設計なのでキカイダーより頭一つ二つほど背が高いのですが、簡素すぎる造形と頭部の前傾の為、 迫力よりも高まるKAWAII。
 「効かない! デンジエンドが効かない!」
 「それで終わりかキカイダー! こちらから行くぞ!」
 サイドマシーンで逃亡するキカイダーにクロガラスが背後から襲いかかり、モニターしていたギルは高笑い。
 「やれぃ! 殺せクロガラス! キカイダーを殺して光明寺を連れてくるのだ! 光明寺には、 是非ともやってもらわねばならん仕事がある」
 今作にしては派手なカラス機関砲を受け、遂に撃墜されたキカイダーは真っ逆さまに転落。鳥型モンスターに空中戦を挑むあたり、 連戦連勝しすぎて少々ダークロボットを甘く見過ぎていた節はありますが、反省したのか今度は地上を逃げるキカイダーを空中からカラスが追いかけ、 鳥取大爆発(3度目)は、シーンの繋ぎが良く、かなりの迫力に。
 その爆炎を利用して、サイドマシーン空蝉の術で窮地を脱出したキカイダーはミツ子とマサルに発見されるが、 迫るアンドロイドマン山狩り部隊により絶体絶命――のその時、何故か響き渡るギターの音色。
 「キカイダーだ!」
 「だが、キカイダーはここに居るぞ?!」
 「じゃあ誰だ?!」「誰だ?!」「誰だ?!」
 「…………あ! あそこだ!」
 「貴様誰だ!」
 赤いギターを弾きながらぼかした映像で近づいてきたのは……半平でした(笑)
 「服部半平――只今参上!」
 わざわざぼかすので、まさかの光明寺?! とちょっぴり思わせたところからのやっぱり半平でしたが、 ヒーロー登場のテーマといえるギターの音色とのアンバランスさは素直に面白く(一度、 アオタガメ回でギャグコピーをやっているのも効果的に)、全能力値+5の赤いギターを振り回した半平は、 アンドロイドマンを蹴散らしてジロー達の死地を救い、ここまで34話分の負債を返す大活躍。
 ……やはり、今回か次回に死ぬのでは。
 一方、棒きれを振り回していた光明寺はとうとうアンドロイドマンに捕まってしまうのだが、父を助けようと、 軽トラで突っ込んでいくミツ子がアンドロイドマンを跳ね飛ばして光明寺を救出し、なんかもう、 段々、好きになってきました。
 ジローを背負った半平も合流に成功し、第34話にして、傷だらけながらも集う一同の図は、なかなか染みるシーン。
 だが光明寺はまたも、若い女の子に頼まれて畑の手伝いをしていた事が発覚し、 染みるシーンでも光明寺でありました。
 デンジエンドの通用しないクロガラスを倒す為、あっちが風力ならこっちは電力だ、とジローは決死の覚悟で高圧電流をチャージ。 半平(と農家の女性)を囮にクロガラスの監視網を逃れたジローたちは廃棄されたバスの中に身を隠すが、 光明寺が目を覚ましたのも束の間、メカ烏に発見されてしまい、響き渡る悪魔の笛。
 (よく聞けキカイダー、おまえはダークの戦士なのだ。おまえはダークの命令に従わねばならない。光明寺を連れてこい)
 光明寺の首は割と本格的に絞めにいくジローだが、マサルがバスのクラクションを鳴らした事で正気に戻り、バスの屋根に飛び乗って、 太陽を背負いながらのチェンジが大変格好良く、ここで流れ出す、

 この世に悪のある限り〜 この世に敵のある限り〜

 が痺れます。

 おおレッドアンドブルー おおレッドアンドブルー
 正義の技の鉄腕振るう

 次作『01』で多用される挿入歌ですが、やはり非常に格好いい。
 勢いよく走って行く光明寺を追うキカイダーの前にはクロガラスが立ちふさがり、翼パタパタからの頭突き、 そしてカラスフライの連続攻撃を受けたキカイダーは崖っぷちに追い詰められ、マサルの声援を受けながらデンジエンドを放つも無効。
 「くそ〜」
 ならば、もう一度だ!
 「デンジエンド!」
 それでもカラスは健在!
 「ジロー、負けないで!」
 「頑張れ〜!」
 珍しくギャラリーの声援を受けるキカイダーであったが、尾羽アックスから嘴ドリルにより、崖から転落。 雄々しい挿入歌を背負いながらもドリルに追い詰められたその時――なにか、電力が、馴染んできた気がする!!
 ドリルの一撃をかわしたキカイダーは、突然の脱出スクリューでチェーンを引きちぎるとライジングキカイダーキックを叩き込み、 新技・キカイダー投げで天高く投げ飛ばすと、空中二回転ひねりからのフライングクロス光線・キカイダースパーク (実際の映像では軒並み聞き取れなかったのですが、ヘイスタックさん、ガチグリーンさん、ありがとうございました)を浴びせ、 強敵クロガラスを打ち破るのであった。
 しかし、光明寺博士はまたも姿をくらませてしまい……
 「クロガラスが破れても、まだまだダークは負けはせん! 光明寺博士! 貴様の手でダークは、恐るべき秘密兵器を作り上げるのだ。 キカイダーよりも強い、悪の戦士をな!」
 障子に浮かぶ、黒い影は何者か……
 「どんな事をしても貴様には、この悪の戦士を、完成させてみせるぞ……光明寺!」
 画面に大写しになったギルは獰猛な表情をカメラに向け……やはりこの人、光明寺とはわかり合える筈、 と一方的な友情を感じていた気がしてなりませんし、光明寺は光明寺で、 ほんのちょっと運命がズレていたらプロフェッサー・ジーとかになっていた気がしてなりません。
 逃げる光明寺の姿にナレーションが重ねられた後、プロフェッサー・ギルの高笑いで、つづき…………

 予 告 詐 欺 だった。

◆第36話「狂ったジローが光明寺をおそう」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 「ダーク破壊部隊にこのクワガタブルーが居る限り、ダークが金に困る事はない」
 主力商品(戦闘用アンドロイド)の販売不振による業績悪化に苦しむダークは、資金調達の為に銀行強盗を繰り返し、 久々に見る輪転機演出。
 「悪魔回路を備えた、悪の改造人間を作るのだ! 悪の戦士、ダークの精鋭サイボーグを」
 プロフェッサー・ギルは光明寺の身柄と莫大な現金を求め、資金は強奪するけど、材料費の支払いは、いつもニコニコ現金払い。
 クワガタ部隊が銀行の壁を突き破って出てくるところを撮影した女記者が命を狙われると、ギターの音色が響き渡って、ジロー参上。
 撮影にこだわる記者を殴って気絶させたジローはチェンジするが、 クワガタブルーの目から放たれるストップ光線を浴びて身動きできなくなる大ピンチに陥り、ジェット飛行で一時撤収しようとするも、 空中でストップ光線を受けて2話連続の墜落の憂き目に遭うと、潤滑油を制御する回路に大きなダメージを負ってしまう。
 一方、銀行の壁に開いた大穴を目にした半平は、千円札の2枚や3枚ぐらいちょろまかせないかと銀行内部に侵入した決定的瞬間を、 目を覚ました女記者に通報され、遂に、自業自得の逮捕の危機。
 前回積み立てた死亡フラグが、「官憲による射殺」の形で発動し、合法的に社会から抹殺される寸前、 マンホールの蓋を持ち上げてえいやっと飛び込んだ半平は力尽きて気を失い……目を覚ますと、見知らぬ部屋でミツ子&マサルと再会する。
 「落ち着いてよ半平! あなたマンホールの中で気絶してたのよ!」
 もはや驚くべき部分では無いのかもしれませんが、 いや、あの、あなた方はどうして、マンホールの中に……?
 「運良く僕たちが見つけたからいいものを、お巡りさんにでも見つかったら刑務所行きだって。マリさんそう言ってたよ」
 「マリさん? 誰?」
 半平を救ったのは、ミツ子達から事情を聞いて半平への誤解(誤解……?)の解けた女記者であり 、一同は農協で守衛として働いていると情報の入った光明寺探しに向かうのだが、その農協の金庫がクワガタブルーに襲われ、 居合わせた光明寺の正体に気付いてしまう……だいぶ、時間をかけて。
 これまでも、光明寺に気付いたり気付かなかったりが不安定だったダークロボットですが、人間の顔は、 インプットされた顔写真のデータに基づいて認識している事がわかり、必要なのは、Google検索とWi-Fiでした。
 マリが襲撃現場の写真を撮影し、半平たちはアンドロイドマンを挑発し、光明寺は今日も凄いスピードで逃走し、 少々コミカルな一幕を挟んだ後、渋い男声コーラスの挿入歌をバックに、ヒトデムラサキに光明寺捕獲を命じるプロフェッサー・ギル。
 「ははは……あの裏切り者の光明寺を、ダークの手先、悪魔の戦士にしてやるぞ!」
 可愛さ余って憎さ100倍にしか見えなくなってきたギルの光明寺への執着、 拉致監禁して働かせていた筈が「裏切り者」呼ばわりなのは、悪の身勝手さ以上に、一方的に友情を感じていた気がしてなりません。
 ジローはマリに拾われてミツ子の修理を受け、光明寺はとうとう警察のご厄介になり、光明寺捕獲作戦に疑義を呈して不興を買い、 プロフェッサー・ギルに馬鹿にされた、という動機でマリの家を襲うクワガタ(笑)
 日に日にオイルの質が下がってでもいるのか、とうとうダークロボットの忠誠度も下がってきました!
 復活したジローが、クワガタに追われるミツ子たちの救出に向かうと主題歌バトルとなり、 回転アタックから新技のウルトラキックで目を潰すと、大車輪投げ、そしてデンジエンドで、さっくり撃破。
 凄く、クワガタ感の薄いクワガタ怪人としては、印象に残りました(笑)
 一方、現金強奪事件の現場で取り調べを受ける光明寺の背後に星型の影が浮かび上がるのは格好良く、 そろそろギルのインスピレーションが枯渇してきたのか、物凄くそのままなデザインのヒトデムラサキが光明寺を襲撃。
 潤滑湯を新品に変えたのが良かったのか、突然、目からSOSを感知したジローは光明寺の救出へ向かい、 レッド&ブルー・レッド&ブルー。
 ヒトデフライング頭突きを受けたジローはチェンジしようとするが悪魔の笛に阻まれ、
 ナレーション「ギルの笛に勝てるかジロー! ギルの笛に負けるなジロー!」
 と、メタ声援を送るナレーションさんのヒートアップや、体内の良心回路の描写などが新機軸。
 ヒトデに壁に叩きつけられた際に、頭を打ったショックで記憶を取り戻した光明寺だが、 悪魔の笛に屈したジローがその前に立ちはだかると、挿入歌をバックに光明寺の顔面に右ストレートを叩き込む!
 身に染みついた忍者の技術でダメージをやわらげる光明寺であったがジローに首を締め上げられ、 光明寺を目にすると明らかに攻撃性を増すジロー・これまでの経緯を全く覚えてない為に、 ジローへの言行が若干身勝手に見えてしまう光明寺・状況に全く噛み合っていない挿入歌と、 盛り上がっていると称するにはどうにも混沌とした状況の中、相反する命令の衝突に耐えかね遂に体内の良心回路がオーバーヒートを起こしたジローは、 配線のショートにより全機能を停止してしまう。
 「よくやったぞキカイダー! これでおまえも立派なダークの戦士だ!」
 そこにヒトデが現れ、光明寺の首を締め上げたまま、まばたき一つせずに硬直したジロー、という衝撃の映像で、つづく。
 ナレーション「動け! 動けジロー! ヒトデムラサキをやっつけろ!」
 前回は予告や冒頭の盛り上げ方からテンションを上げて見ていたら(面白い事は面白かったのですが)酷い予告詐欺だったのに対して、 今回は如何にも繋ぎ回といった内容で、次回いよいよ――逮捕。

(2023年9月8日)
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