■『人造人間キカイダー』感想まとめ5■
“やがて地球を奪うまで ギルは悪魔の笛を吹く”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『キカイダー』
感想の、まとめ5(25話〜30話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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- ◆第25話「ダイダイカタツムリ殺しの口笛」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:伊上勝)
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昔々、とある巨大コンピューターは言いました。
「私は誰よりも平和を愛しているのだ、佐原博士」
「私は永遠の平和を築きたいのだ。だが、人間という生物がいるかぎり、地球に平和は訪れない」
「地球から人間を抹殺すれば、静かな平和がやってくる」
つまり、
「死ね!」
の一言と共に、キカイダーの手により小学生男子が切り立った崖の上から投げ捨てられるのは、
どうせ偽装工作だろうとわかっていても結構な衝撃映像。
マサルを葬り去ったキカイダーの魔手は続けてミツ子へと伸び、絞め殺したミツ子をこれも崖から放り捨てたキカイダーは、
これが地球の平和への第一歩だ! と低く笑いながら飛び去っていき、その惨殺映像を見せつけられていたのは、彷徨える光明寺。
「ミツ子! マサル!」
ショックで記憶を取り戻し……というか偽の記憶を植え付けられた光明寺は、
ダークの作り出したアンドロイド・キカイダーを倒せるアンドロイドを完成させてほしい、
とダークに抵抗する組織の代表を名乗る老人に持ちかけられて前のめりに承諾し、
「いつの間にか光明寺がダークの手中に居る」肝心要の部分の壮大な雑さを、
映像と作戦の衝撃でねじ伏せようとしてくる導入で、ダークが光明寺の記憶喪失を認めたの、実は初では。
ナレーション「全てがダークの巧妙な罠とは、光明寺博士にはわからなかった。ただキカイダーを倒し、ミツ子とマサルの為にと、
新アンドロイドの完成を急ぎ……」
既に殺害シーンを見せられているので、「ミツ子とマサルの為」の内容が「ミツ子とマサルを守る為」ではなく
「ミツ子とマサルの復讐の為」なところに、70年代スピリットが溢れ出ます。
ナレーション「そして遂に、無敵の新アンドロイドが誕生した。その新アンドロイドの名は、ダイダイカタツムリ」
……何故、そうなった。
サイケデリック渦巻き模様なアントマン(今ならアノーニ)顔で、背中にカタツムリらしい殻を背負っている以外は、
対決アクション多めを意識してか割とシンプルな造形にまとめられた最新型アンドロイドは、自衛隊と一当たり。
「ふふはははははは……! ダイダイカタツムリの、殺しの口笛を聞いた奴は、死あるのみだ!」
固い殻で自衛隊の銃撃をものともせず、、粘液で動きを封じた標的を目玉からのフラッシュで消滅させ、娘と息子の仇を取る為ならば、
殺人兵器を作り出す事に一切のブレーキが存在しないのが、果てなき70年代スピリッツ!
惨劇を目撃して逃走する半平にも殺しの口笛が迫り、ジローのギターの対比となっているのはシンプルながら秀逸で、
服部流忍術・笑劇時空も通用しないまま、とうとう半平の命運も尽きたかと思われたその時、響き渡る本命のギター。
「半平です! ご無沙汰しました!」
「ダークのアンドロイド! 久しぶりの出現だな!」
やたらと「久しぶり」が強調されるのですが、放映リストを確認してみても特に間が空いていたという事もなく、
ジローと半平に絞っても先週は爆殺寸前、先々週は偽装結婚までした仲なので、ちょっと謎。
「ふへへへへへ、人造人間! 貴様に会うのを楽しみにしていた! 兄弟同様の貴様だからなッ」
「……兄弟同様? それはどういう意味だ! ダークの憎むべきアンドロイドに、私の兄弟は居ない!」
カタツムリは自ら光明寺博士の最大傑作を名乗り、動揺するジローはとにかくきりもみチェンジ。だが、カタツムリの奥の手、
光明寺流・渦巻き催眠の術を受けて視覚に異常を来すと敗北を認めて一目散に逃げ出したところを、
背中にカタツムリレーザーを受けて墜落してしまう。
ジローは半平によって救出されるが、カタツムリはその催眠能力により数万人の暴徒を作り出し、
「ミツ子とマサルの為」こんな世界など滅びてしまえばいい!
横浜マリンタワー占拠によるTV電波ジャックを阻止しようとしたジローは、逆にカタツムリ催眠に囚われてしまい、
カタツムリをヒロイン席に乗せてダークのアジトへとサイドマシーンを走らせる。
引き続き欺されている光明寺の手によりキカイダーの再調整を目論むギルだが、
覚醒したジローは対ダーク組織の老人に向けて殴りかかり、
「証拠はこれだ!」
殴って爆発したらアンドロイドマンだ!
(キカイダー、光明寺は絶対に渡しはせん)
光明寺に執着するギルは再生ダークロボット部隊を送り込んでキカイダーを足止めするが、キカイダーはジャイアントスイングで雑に、
ほんとーーーに雑に再生ダークロボをまとめて崖から投げ捨てて、カタツムリと三度目の激突。
「ははははははは、生みの親の前で、兄弟が戦うのも宿命というやつかぁ!」
この辺りは実に伊上節というか、脚本時点であった台詞なのかはわかりませんが、長坂回にはあまり無いテイスト。
カタツムリレーザーを連続ジャンプでかわしたキカイダーは、粘液に足を取られながらもホバージャンプで強引に脱出すると、
必殺コンボにより最強の敵を葬り去るのであった。
しかし、その勝利も束の間――
「キカイダー! まだ居るぞゥ!」
細長い両腕を振り回し、可愛い、出てきた。
一方、カタツムリから逃げている間に斜面を転がり落ちた光明寺はそのショックで再び全ての記憶を失ってしまい、
荒野を彷徨う光明寺の姿と、特に連戦という事は無かった新たなダークロボットのシルエットが描かれる変則パターンで、
サスペンスタッチのまま、つづく。
大山鳴動してまた元の木阿弥……は、なんだかつい最近、ご子息の脚本でも抱いた覚えがありますが、
ダークの手中に落ちた光明寺が対キカイダーロボットを! の掴みのインパクトから一気に話を転がす手法や、
ダークの奸策に奇策を持って対抗するジロー! といった丁々発止の頭脳戦要素は伊上脚本らしかったものの、
これまで散々光明寺を追ってきたのにあまりに唐突だったり、ジローの催眠術無効について一切説明が無かったり、
と展開を補強する要素が弱かったのが、残念でした。
- ◆第26話「ミドリマンモス地球冷凍作戦!!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:春日憲政)
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見所は、行き倒れを拾ってくれた恩人を見捨てて、鍛え上げた脚力で一目散に逃げていく光明寺。
前回、復讐の為に作りあげた殺人兵器により自衛隊員を殺傷、7万人の暴徒を生み出し世間を大混乱に陥れた狂気の天才・光明寺は、
キカイダーを後一歩まで追い詰めるも最後の詰めを誤ってまたも記憶を失い、流れ流れて東京園芸センターで働いていた(笑)
どこからどう見ても不審すぎる中年男性なのに、妙に若い女性にウケのいい光明寺だが、
園芸センターの近所にある洞窟で覚醒したミドリマンモスに襲われると、恩人・マチコを半平に押しつけて、
脇目も振らずに逃走。
光明寺は記憶よりも先に、人の心を探した方が良いのではないか!
前回ちらっと先行登場していたミドリマンモスが、改めて洞窟の中に氷漬けで発見された事には恐らく「マンモスだから」以上の意味はなく、
東京園芸センターのセンター長らしきマチコが半平の初恋の女性で旧知の間柄な点も、導入の訪問理由以外では全く広げられず、とにかく、
人間関係にしろサスペンスにしろ、盛り込まれた要素が全て場当たり的で、前にも後ろにも全く繋がらないし広がらない困ったエピソード。
マチコと半平を助ける為に飛び出したキカイダーだが、マチコを人質に取られ、
良心と自己の保全を天秤にかけて自衛の為なら人質を見殺しにしてもやむを得ない回路がスイッチオンする前に(間を置かず、
飛び道具で攻撃する正しい対処法!)冷凍ガスを浴び特殊ガス弾を打ち込まれて完敗。
キカイダーを破ったミドリマンモスは養鶏場・水族館(と称していますが、映像は金魚屋……)・新幹線を次々と狙う冷凍作戦を開始し、
能力試験なのでしょうが、これといって映像的なインパクトもなく、特に、鶏が凍り付くような場面さえ描かれない養鶏場はなんのために襲ったのか。
一方、体内が錆び付いていく苦しみにのたうち回るキカイダーはマチコに拾われると、
合流したミツ子らの手によってサビ止め液を満たした風呂に放り込まれ、浴槽の中でくったりしていた。
その入浴シーンを……ダークが見ていた(笑)
特撮ヒーロー名物・謎カメラでありますが、窮地に陥ったヒーローが湯船に浸かっている姿をじっと見つめる悪の首領の姿には、
他にもっとやるべき仕事があるのではないか、という気持ちが湧いて仕方ありません。
一方で、予告でも強調されていた、機能低下によりジローの姿になれなくなったキカイダー! は、
ゲストヒロインに恐れ気もなく拾われるのでこれといって広がりはせず、ジローがこんなになったのはあんたのせいだ!
とマサル少年がいつにないリアクションをゲストヒロインにぶつけるもその後は全く拾われず、とにかく具材を鍋に投入して煮込む事なく、
思いついた端から皿の上に乗せていくばかりなので何も出汁が取れず、ひたすら続く生の味わい。
浸け置き漂泊からの手もみ洗いで完全復活するジローだが、直後にギルの笛の音が響き、夜の闇の中に失踪。
ミドリマンモスは新幹線冷凍の予定を変更して園芸センターを襲撃し、社員二人が惨殺された上に温室全滅で会社の大ピンチ!
そして冷凍ガスを浴びた半平がバラバラ死体のピンチ!(忍法・笑劇時空により、回避)
マンモスがミツ子たちをさらうと何事も無かったかのようジローが戻ってきて戦いが始まり、再び響く笛の音だが、
冷凍ガスを浴びた事で聴覚センサーが途切れてチェンジ成功し、崖の上から岩石落とし、
そして大車輪投げでひっくり返ったところにデンジエンドが炸裂するのであった。
冷凍ガスにより枯れかけていた温室の花は、これも何事も無かったかのように園芸センターに戻ってきたジローの生みの親が、
なんか良い感じに救ってくれました! と、一応の恩返しが描かれるのですが、恩人を見捨てた逃走劇の失点は消えようがありません……。
(私の行くところに、必ず考えれないような異常な事態が起こるのは何故か。私は人を不幸にしてしまう男なのだ)
一応、光明寺は、異常な怪物の襲撃を自分が原因ではと考えている=だから自分が離れればマチコらは無事だと考えていた?
とフォローは入るのですが、基本フォーマットとなっているキャラの扱いがシナリオ上で一番厄介という問題点は2クール目が終了するも、
未だ解決せず(デメリットばかりではないのがまた厄介なのですが……)。
モチーフの特徴として、頭部のフォルムと牙そして鼻を分解して表現しつつ、
全体としては蛸型宇宙人めいた得体の知れないさにまとまっているミドリマンモスは絶妙なデザインだっただけに、
地球冷凍作戦どころか商売敵の嫌がらせレベルで終了したのは残念でした。
次回――海産物三羽烏、現る。
- ◆第27話「バイオレットサザエの悪魔の恋」◆ (監督:北村秀敏 脚本:長坂秀佳)
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トゲトゲの怪物が奇声をあげ、ミニスカの女性たちがピョンと跳ねると次々に桃色アンドロイドマンへと変わっていく今回予告映像の時点で、
迸るちょっと嫌な予感……(笑)
そして、
「なに?! 設計図を手に入れん内に、バイオレットサザエがアラキ博士を殺してしまったとは……」
「はい……」
「馬鹿者! 二人もいて……なんというざまだ!」
だから! 女性型のアンドロイドはやめましょうって! あれほど会議で皆が止めたのに!
巨大なゴルフボール状の頭をしたグリーンカイメンがプロフェッサー・ギルに深々と頭を下げ、
何故こうなったかといえば…………伊豆・七滝温泉の地において、白衣の男性――アラキ博士を追う5人の女たちの不始末が、
事の始まりであった。
女たちは博士を滝の連なる風光明媚な山中(ロケ地としては、後に天宮勇介とドクター・ケンプが戦った辺りでしょうか……?)
に追い詰めると、桃色アンドロイドマンとダークロボット・バイオレットサザエの正体を現し、必殺サザエ車によって放たれるトゲを、
割と華麗にかわす博士(笑)
台詞からすると掴みの脅しだった筈なのですが、博士が棒立ちだったら確実に爆死していた位置にトゲが飛んでおり、この時点で既に、
設計ミスへの疑念が浮上します。
滝上に立つジローがギターを響かせると博士からダークを遠ざけ、チェンジしようとするも珍しく開始4分で響く悪魔の笛。
「ダークに生まれし者は……ダークに帰れ……! ダークに帰るのだ……!」
笛の音に苦しむジローはサザエトゲで貫かれ、迫り来るサザエ焼きで絶体絶命に陥るが、
博士がダークの狙う設計図を渡すと叫んでジローを助けるこれまた珍しい展開で、一同は大家荘へと戻る。
「さあ、設計図はどこだ!?」
「……ここだ」
おもむろに鉄の箱を取り出した博士がダイヤルを操作すると、電光が走った!!(笑)
「他に方法が無かったんだ。気の毒だが、あんたの体は、作り替えさせてもらうよ」
謎ビームで動きを封じたサザエに向けて、満面の笑みかつゆったりとした口調で再改造を宣告するアラキ博士、
間違いなく光明寺の同類であり、どちらかというと、プロフェッサー・ギルの片腕になるべき男だったのでは。
基本的に、「気の毒だが○○させてもらう」って、悪役の台詞ですし!
アラキ博士の手により魔改造ヴァイオレットエヴァーサザエ誕生寸前、何故か室内に置かれていた巨大なサボテンから煙が噴き出すと、
ダーク忍者・カイメングリーンが出現する一方、サザエに放置されたままのジローは未だ悪魔の笛に苦しんでおり、
プロフェッサー・ギルは多分、(おい、ワシ、いつまで笛を吹いていればいいの?!)と、アジトで困っていた。
ミツ子とマサルの助けを拒んだ末に、足を滑らせて谷底へと真っ逆さまに落下するジロー……だが、割と普通に立ち上がっており、
悪魔の笛による精神ダメージの方が大きそうだった(笑)
ナレーション「この時、落下する大きな滝の音が、ギルの笛の音を消した! ジローはキカイダーに変身する!」
窮地を脱して大家荘へ急ぐキカイダーだったが、そこでは既に怒りに任せたサザエのトゲが博士を貫いており、
キカイダーの攻撃を受けたサザエは胸から火を噴き上げて逃走。残った海綿グリーンは大車輪投げを受けてバラバラに吹き飛ぶが、
アラキ博士もまた、ダークの狙う良心回路の設計図を娘に託した事を告げ、絶命してしまう。
「良心回路が完全なものにでもなったら、我々ダークは壊滅させられる」
アラキ博士は、光明寺博士から受け取った設計図を元に完全なる良心回路の開発に成功しており、
その図面がキカイダーの手に渡る事を恐れるギルの自己認識が世知辛いですが、次作『01』の惨劇を考えると的を射た分析という他ありません。
ギルが設計図入手の為に伊豆の地に更なる増援を送り込む一方、ジローの良心回路を完全にしたいミツ子と、
それを頑なに拒否するジローの毎度お馴染みの愁嘆場が演じられ、悪の総帥の怯える完全なる良心回路の搭載を、
ヒーローが自ら否定しているのが、なかなかシニカルな構図。
ただ、完全な良心回路の設計図なんてものがあるから無関係なアラキ博士は巻き込まれて死んだのだ、だからそんなものは不要だ、
と主張するジローは、そもそもミツ子の勧めるように完全なる良心回路を内蔵していれば、
ジローを助ける為にアラキ博士が決死の取引を持ちかけずに済んだ筈、という前後の因果関係を無視して論点をずらしており、
恐らくこの場においては、脚本の方でもそれがわかった上で目をつぶっているのは、
今作の抱える危うい要素が欺瞞の形で出てしまった部分。
ジロー大事で設計図を取りに行きたがるミツ子(キャラの積み重ねからは外してはいないのですが、
ことさらにミツ子が私情を優先しているように描かれているのも、今回のジローの欺瞞を隠そうという意図は見えます)を、
アラキ博士の娘まで巻き込みたくはない、と止めるジローは何かの気配に気付くと、胸部を損傷したサザエ女を発見。
女を部屋に運び込んだジローは、ミツ子から冷たい視線を浴びながらも、例えダークロボットでも、
助けを求めてきた者を見捨てたくはない、と同族意識を見せて修理を敢行。
「君たちは、悪い人間の言うことだけを聞くように作られた、アンドロイドだ。君たち自身に罪は無い」
から、
「キカイダー、あたしも、あたしも良心回路がほしい」
は、ゾクッとくる鮮やかな流れ。
良心回路が完全ではないからこそ、そこに自分自身の“心”が存在していると考えているジロー・
もちろん無関係な人間は巻き込みたくない・だが、良心回路があれば“そういう風に生まれてきた”
ダークのアンドロイドを救う事が出来るかもしれない……
と、千々に悩めるジローは、ミツ子には禁止した設計図の回収に自ら向かう事を決断し、テーゼの盛り込みから、
ジロー自身の行動理念に与えられる強烈な揺らぎとその末のエゴイスティックな選択、までは非常に面白かったのですが…………
ですが……増援のアカオニオコゼと復活した海綿グリーンに詰め寄られたサザエ女は、いやこれ罠だから、とジロー不在の場であっさり告白。
真相の明かし方としては凄まじく面白くないですし、処刑を逃れる為にやむを得ず……のニュアンスが入っていると見ても表現が曖昧にすぎて効果が出ず、
どちらの意図にせよ、もっと腰を据えて描いて欲しかった展開。
個人的には、ジローの精神に与えるダメージの大きさとして、最初から全て罠だった事がクライマックスで劇的に突きつけられるのを期待していた為に、
非常にガックリしてしまいました。
結局ジローは、ちょっとあだっぽいアンドロイド女がいいのね! と嫉妬に燃えるミツ子は単独行動によりアラキ娘の元へ向かおうとし、
ミツ子はミツ子で、“完全なる良心回路を内蔵する事で、ジローを理想の男として完成させる”独善に導かれており、
それはジローの望む意識とは明確にズレ始めていて、割と男女関係のややこしい一面が描き込まれている感。
サザエと海綿の襲撃を受けたところでジローのギターが鳴り響き、結果としてはミツ子の暴走がサザエの奸計を打ち破る事になっているのですが、
数分前の、おおこれは……! の興奮を返してほしい(笑)
悪魔の笛は変則パターンで前半に吹いたのでジローはあっさりチェンジ成功し(プロフェッサーは血圧がだいぶ上がってしまった為、
リラクゼーションルームで世界の可愛い動物ビデオに癒やされている真っ最中です)、
サザエの壺焼き攻撃を受けながらも懸命な説得を行うが、もはややむなし、とデンジエンド。
「待ってキカイダー! さっき言ったことは本当だった! でもあたし達はプロフェッサー・ギルから逃れられないのよ!」
「なぜ私の言う通りにしなかった!」
「出来ることなら、あの美しい女の姿で、死にたかったぁーーーぁ!!」
抜け忍ものというかノワール風味なやり取りですが、刺客の悪い女がほだされるが結局……をやるならやるで(サブタイトルからすると、
主題はそれだった感もありますが)、そこにしっかりと焦点を合わせてくれれば面白く跳ねそうだっただけに、あれもこれも、
なんだか中途半端な作りになってしまって残念。
バイオレットサザエは爆死し、「なぜ言う通りにしなかったか」と無断外出したミツ子を責めるジロー、
昭和の男といえば昭和の男なのですが、今回はやたら亭主関白フォーム。
両者の関係がささくれだつ中、オコゼがマサルを追いかけ、海綿もこっそり復活し、まさかのつづく。
なお今回の光明寺は、『伊豆の踊子』に引っかけた大正風学生コスプレの半平を乗せたタクシー運転手としてさらっと登場し、
もう完全に、コント扱い。
- ◆第28話「赤子を泣かすアカオニオコゼ!」◆ (監督:北村秀敏 脚本:長坂秀佳)
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見所1は、キカイダーにやられて画面手前で微動だにせず倒れていたが、アカオニオコゼと、
それを追うサイドマシーンが間近に突っ込んできた為、体をひねって道を空けるアンドロイドマンの死体。
見所2は、旅館の若女将がフレームの外に向けてひょいと放り投げると、川岸で座り込むマサルくんの元まで飛んでいく靴(笑)
着ぐるみ怪人3体を一斉投入し、良心回路の設計図を巡って善玉サイドと悪玉サイドが死闘を繰り広げる連続活劇!
の仕立てで新味を見せてくる一方、全体的に超編集と飛躍した展開が目立つエピソードでしたが、個人的にオコゼの怪人といえば、
今作と同期の『超人バロム・1』第1話「悪魔の使い 深海魚人オコゼルゲ」(監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)における、
「よし! お前は、今から深海に棲む醜い魚オコゼのように、悪のエージェント・オコゼルゲになるのだ」
が忘れがたいインパクトです。
そんなアカオニオコゼの「オニオコゼ毒吹き矢!」(最初、「どごひあー!」と聞こえて何事かと思いました)を受けたキカイダーは、
腐食毒に蝕まれつつもオニオコゼの左腕を切り落とし、これは相討ちだーーーと言いながらオニオコゼは逃走。
なんとか大家荘まで戻ったジローは、ダークから助けたマサルを迎えに行くようにミツ子に頼むが、ミツ子はジローの修理を優先。
ところがそれを目にした半平が、ジローとミツ子が旅館の一室で熱烈に抱擁し合っていると誤解した為に笑い話で済まない厄介ごとの引き金となり、
前回今回と、ジローが「そこに隠れていろ」「そこを動くな」と指示すると、碌な事になりません!
その頃、
「このダークに、勝ち目は無いのだ」
「ダークは破滅に追い込まれてしまうのだ」
とネガティブさに磨きがかかるギルは組織存亡の危機に自発的に陥っており、3クール目にしてとうとう、
ヒーローに心を折られかけていた。
アルマジロとかマンモスとか、最近のダークの作戦行動のじり貧感はどうやら気のせいではなかったらしく、キカイダーの活動により、
主力商材であるダークロボットの海外展開に、相当深刻なダメージを受けているものと思われます。
目刺しともやし以外のものが食べたい……とギルがオニオコゼをせっつく一方、アラキ博士の娘・サエコは大家荘の若女将であり、
探しに行く必要など無かった、という驚愕の真相が判明。
引き続き、僕には完全な良心回路は必要ない・その為に無関係の人を巻き込みたくない、の二本立てでミツ子を止めるジローですが、
巻き込まれる巻き込まれないでいえば、「光明寺から設計図が送られてきた時点」でアラキ博士は巻き込まれており、
ダークが設計図を探し求める以上、仮に無関係でも次に博士の身内が狙われる可能性の高さは想像に難くないわけなので、
ジローが消極的態度を理論武装しようとすればするほど、なんだか言い訳がましくなってしまう事に。
修理を終えたジローがマサルを迎えに行っている間に、ジローの言葉を全く聞く気のないミツ子はサエコの元へ向かうが、
そのやり取りの全てを、部屋の中で巨大サボテン(人間の身長大)に化けた、海綿グリーンが聞いていた!
前回今回と、背後の巨大サボテン(人間の身長大)の存在に誰一人として触れないのですが、
もしかして1970年頃の伊豆の温泉旅館では、室内に巨大サボテン(人間の身長大)の鉢植えが置かれているのは、
特に珍しくもない光景だったのでしょうか。
……そんなわけは、多分、ない。
父親が変死したばかりの若女将に詰め寄り、預かった設計図の在処を吐け!
とダークの女ぶりを発揮するミツ子だが、そこをオコゼと海綿が襲撃。若女将はどさくさに紛れて、
赤ん坊のお守り袋に入っていた設計図を足下に飛んできた靴の中に隠すと放り投げ、設計図の入った靴は、
半平に「おまえは姉とジローがいちゃいちゃするのに邪魔だから見捨てられたのだ!」と吹き込まれたマサルの元へ。
この辺りから、右に左に雑な場面転換が繰り返されて目が白黒するのですが、
場面変わると若女将が逃走の為に乗り込んでいたタクシーが突然の急加速。不審を覚えると、タクシー運転手は、
私がつけられている……と言い出すヤバい人だった為に、野原の真ん中で放り出されたところをアンドロイドマンに追われる羽目に。
一方、若女将を追っていたと思われるジローとミツ子は、途中でマサルを見つけると全力で追いかける素振りを見せ、いや今、
そんな事している場合ではないよね……? と頬をひきつらせているとマサルは二人から逃げていき、そこで若女将を見かけると、
今度はサイドカーの横にミツ子さんを乗せたまま若女将救出に突っ込んでいき、もう、しっちゃかめっちゃか。
作っている側としては、その後の話の都合を考慮した上で人を動かしているのでしょうが、前段階での行動がいちいちおかしい為に、
『キカイダー』標準から見てもかなりわけのわからない事になっています。
悪魔の笛でピンチになるジローだが、オコゼが赤ん坊を奪い取った事でその泣き声が笛の音を遮り、
守るべき存在の叫びと祈りがキカイダーを救う流れは割と格好いいのですが、赤ん坊に負ける笛の音の株価はいよいよ大暴落していきます。
プロフェッサー・ギルには、世界の可愛い動物ビデオに逃避する前に、まだやるべき事があるのでは。
キカイダーにより赤ん坊が無事に救出される一方、
雷忍ワイルドとか出てきそうなウェスタン村に迷い込んでいたマサル少年はダークの襲撃を受け、
事ここまでこじれる大きな要因を作った半平は、ガンマンコスプレでマサル少年を救出して帳尻合わせ。
恐らく、ロケ地に設置されていたトロッコのレールを利用して、ホバー移動と飛行を表現する映像の工夫は面白く、
アカオニオコゼを葬り去るキカイダーであったが、傷心のマサルは設計図の隠された赤い靴を履いたまま、いつの間にか姿を消してしまう。
今回も背景でこっそり復活した海綿グリーンは、怪紳士(演:潮健児)の姿に変身すると、
トラックの荷台に潜り込んだマサルを追ってタクシーを走らせ、そのタクシーの運転手は、なんと光明寺!
ナレーション「ダーク破壊部隊・アカオニオコゼはキカイダーに倒された。だが、カイメングリーンは執念深くマサルを狙う。
光明寺博士はどこか」
がギャグになっている飛び道具が放たれて、つづく。
この時期、伊上勝の降板にともない、長坂さんが名実ともにメインライターになったとの事ですが、
切り替わりにともなう制作体制の混乱も多少はあったのか、前回−今回はどちらかというと、
伊上さんぽいプロットに長坂さん好みのメロドラマを大量に投入したら、お互いの持ち味が殴り合ってカオスが生まれた、
みたいな内容でした(笑)
次回――今作にしては格好いいサブタイトルで、カイメングリーン上司、いよいよ本気出す。
- ◆第29話「カイメングリーンは三度甦る」◆ (監督:永野靖忠 脚本:長坂秀佳)
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三部作という事で、今回もここまでのあらすじが説明され、
ナレーション「ジローの愛を確かめようとしたミツ子の行為が、マサルを危機へと追いやったのだ」
そ、そうでしたっけ……?!
ミツ子がマサルよりもジローを優先したのは確かですが、「マサルを危機へと追いやった」のはむしろ、
その光景を面白おかしく語り聞かせて、純真な小学生の心を踏みにじった半平だったのでは(笑)
そこを明言してしまうと半平に関する帳尻合わせにも限度が生じるという事だったのか流れ弾でミツ子さんが背後から撃たれていた頃、
東京までマサルを追っていった海綿怪紳士、蝶ネクタイ・手袋・ハンカチが緑色なのがお洒落。
海綿紳士に追われるマサルが逃げ込んだ交番の警官もアンドロイドマンの変装で、追い詰められたマサルは、デスクライトを利用して、
アンドロイドマンを惨殺。
姉さんにも……! ジロウにも……! もう、頼らない……! 僕は一人で、ダークの野郎どもを見殺しにしてやる……!!
マサルの中の光明寺流忍者の血が覚醒を始めていた頃、マサルを探すジローとミツ子は都心部の旧光明寺家に辿り着いており、
ナレーションに引っ張られて秋波を送り出すミツ子さんと二人きりで、なんだかジロー、気まずい。
「お父様……女が好きな人の事を、弟以上に心配してしまうのは……いけない事なの?」
ミツ子の脳は熱暴走を始め、光明寺は実の息子と知らぬままマサルを救い、マサルは通りすがりのお嬢様に助けられて海綿紳士を振り切り、
家出少年と勘違いされる事に。
登下校に車で送り迎えされる良家のお嬢様(演じるのは、同期の『超人バロム・1』で序盤のヒロイン役だった斎藤浩子さん)は、
「大人はわかってくれない」と運転手付きで家出を宣言してマサルを振り回し、高原で青春ダッシュを決める二人だが、そこに現れるお邪魔虫。
しつこくしぶとい海綿グリーンに二人は追われ、途中で転んだ少女をちゃんと助けたマサルくん、偉い。
君の父親はその状況で、平然と一人で逃げたからな!
海綿グリーンの操るサボテンに二人が囚われたところでギターが響き、
雄峰をバックにサイドカーで走ってくるジローは地方ロケならではの画で格好いいのですが、今作これまでの実績から、
牧草地っぽく見えるけどサイドカーで走り回って大丈夫な場所なのかな……? と、不安になります。
ジローの大暴れによって海綿部隊は逃走し、特にマサルくんのメンタルケアをしない
ままチェンジして走り去ったキカイダーと、場所を変えて湖畔で激突。
キカイダーの飛び蹴りによりまたもバラバラになった海綿は姿を消し、ジローは勿論、マサルくんを見失っていた。
マサルを探し、精進レークホテルで聞き込みをするジローだが、
お嬢様をパトロンにしてダークと全ての人造人間を鉄くずに戻してやると野心に燃えるマサルとはすれ違い。
だがお嬢様はそろそろ、家出ごっこに飽きてきていた。
「あんたの住んでた昔の家、行きましょ今から」
「子供の世界を探すんじゃなかったのか?」
「それは明日からの話」
好き放題に振る舞うお嬢様の言動が今作ここまでには無かったテイストで面白いアクセントになっていますが、
運転手はいつの間にやら海綿紳士にすり替わっており、運転手さん、物凄く今回の被害者。
再び危機に陥るマサルと少女だが、半平が絡んできて忍法・笑劇時空が発生した隙に逃げ出し……脱ぎ捨てられた赤い靴の中から、
良心回路の設計図を発見する半平。
今回凄いのは、良心回路の設計図を巡る三部作だった筈なのに、紆余曲折の末にお嬢様の足下に辿り着いていた設計図が、
ここまで全くサスペンスの材料として機能していない事。
一応、ジローの抱えるテーゼの掘り下げには使われているものの、扱いとしては、いわゆるマクガフィン
(登場人物の動機付けなどに用いられ、物語を進行するのに重要な役割を果たすが、それそのものには意味が薄く、
他のものと置き換え可能な場合もある作劇上の小道具)に落ち着き、
今回はその機能が「設計図」から「マサル」にスライドした事で物語上の役割を終えていた図面は、海綿の攻撃で炎上。
元光明寺家で全員が合流すると、なんかまた凄い所(木の上)に立っているジローがギターを奏で、
不死身の海綿グリーンとこの3話で5回目の激突!
悪魔の笛に、炎の輪に巻かれるスペクタクルも加えて危機に陥るジローだったが、火勢が勢いを増すと笛の音をかき消した事で、
スイッチオン。
仕切り直し早々の回転アタックからマウントで殴りつけられ、大車輪投げによりバラバラになった海綿グリーンは、
そのままの状態でオールレンジ攻撃を仕掛けるが、デンジエンドを受けるとあっさりと絶命し、どうやら、合体→破片→一撃死、
のアーマー製だった模様。
3話連続の登場にして、満を持してのメイン回のサブタイトルも格好良かったのですが、実にざっくりした最期となりました。
「もし僕の良心回路が完全なのものになったら、僕は人間以上の機械になってしまう。僕は少しでも人間に近いところにいたいんだ」
完全なる精神=人よりも神に近い存在である事がジローの口から明確に語られ、
やはりこの物語で一番の危険人物は、神の象りである人の身を以てして、人の象りである人造人間を神に近づく存在にしようとする、
光明寺博士ではないのか(まあ、次回作時空では、既に作ってしまっていた事が明らかになり……)。
大団円の空気を出して笑顔で近づいてきても、僕のメンタルはズタズタなんだぞ! と姉とジローの手を撥ね付けたマサルくんは、
さあ、一緒に大人たちの世界から抜けだそう! とお嬢様との逃避行を望むが、そのお嬢様は既に父親と連絡をつけており、所詮は、
気まぐれに弄ばれただけに過ぎないのだと思い知らされて、更なるトラウマを植え付けられるのであった……。
青春のはしかを体験したマサルくんは姉の胸に飛び込み、光明寺博士を探す、戦いの日々は続く!
- ◆第30話「アカネイカ美人女子大生を狙う」◆ (監督:永野靖忠 脚本:長坂秀佳)
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「ふふふふふふふ……その姿の方がずっと美しい。おまえは俺の部品となって、大いに役立つんだからな、うふははははは」
ダークロボット・アカネイカが、必殺のイカドクロ飛行により、ダークロボットとしては頭部・モチーフの生物としては胴体、
を飛ばすと、風呂敷包みのように広がった外套膜が犠牲者を覆い尽くして後には脳髄を抽出したパーツだけが残り、
駄目そうなサブタイトルと見た目の間抜けな技ながら、開幕から非常にえげつなめの殺人描写。
前回、良心回路の設計図が燃え尽きた事により辛うじてショック死は免れたプロフェッサー・ギルだったが、
連戦連敗と組織の経営難による心の複雑骨折はまだ癒やされていないようで、何故か「天才女子大生」にこだわる奇行を見せると、
格闘技・ヴァイオリン演奏・電子技術・薬物学、それぞれの分野の才女を次々と襲わせ、
アカネイカの頭脳回路に対キカイダー用の強化頭脳回路をセットさせていく。
そう……
「私はダークのアンドロイド敗北の理由を考えてきた……そしてわかったのだ、そのわけが。
パワーが同じなら最後に物をいうのは精 神 力!!! その精神力が、足りなかったのだ!!」
すなわち……
「そこでこの天才、プロフェッサー・ギルが開発したのが、ダークロボ精神注入棒!」
つまり……
「叩き込め、ダークロボ精神!」
…………すみません。
今作から約20年後に東映が世に問う怪作はともかくとして(今作から『ジャンパーソン』までより、
『ジャンパーソン』から現代までの方が時間が経過しているのは、なんだか恐ろしい事実)、毎日毎日、
今季の決算報告書を見て胃の縮む思いをしながらギルは考えたのです。
キカイダーの強みとは、その場その場の状況に応じて柔軟かつ適切な判断力をもたらす良心回路にあり、それに対抗する為には、
人間の脳を組み込む事でダークロボットの判断力を引き上げればいいのだと!
かくしてそのテストケースとして天才女子大生の脳パーツを組み込まれたアカネイカは、向上した頭脳回路の性能により、
キカイダーを倒す為には今ひとつのパーツが必要であると具申し……以前から思っていたのですが、
ダークロボの各アジトの壁にそれぞれのシルエットが刻印されているのは、
ダーク組織の“可愛い”に対する並々ならぬこだわりを感じさせます。
「殺せ……殺せ殺せ殺せぃ……殺すのだ!」
ギルの指示により、ロボット工学の天才女子大生・島村チドリを標的とするイカだったが、
ダークロボットを見ても冷静に対応するチドリにペースを握られてしまう一ひねり。
珍しくジローも振り回されるコミカルな一幕を挟み、基本シリアス時空の今作、恐らく、それはそれとして明るい場面を、
といったオーダーに応えた結果が、半平(コメディーリリーフ)とダークロボット(基本使い切り)に偏って、
特にダークロボットの喋り散らし路線の形になっっているのでしょうが、一方で、ジロー・ミツ子・マサルはコミカルさからは意識的に切り離されていたのだな、
と改めて(この辺り、当時のヒーロー像やヒロイン観もあったのでしょうが)。
キカイダーの動きを読んでトラップを用いるなど、意外とちゃんと強かったアカネイカをなんとか撃退したキカイダー。
チドリによりジロー/キカイダーが別人と誤解される、ありそうでなかった要素は、この後あっさり解決して、特に広がらず。
タクシー運転手を辞め、流しのホットドッグ屋となっていた光明寺は、島村家と親しくなっており……
「その後、少しは何か、思い出しまして?」
「いいえ。……もしかしたら、何も思い出さずに、こんな生活をしている方が幸せなのかもしれませんねぇ」
つい先日、騙されての事とはいえ、結構な殺人兵器を野に放ったばかりですしね!
話の流れからすると多分に偶然の産物かとは思いますが、人造人間と良心回路の開発により神の領域に近づく禁忌を冒した光明寺が、
記憶を失い彷徨を続けている……と見ると、「フライング・ダッチマン」の伝説などが重なって見えるのは、なかなか面白いところ。
5年前に父が謎の失踪を遂げたチドリは、ロボット工学にやたら詳しいホットドッグ屋のおじさんに、
同じく研究者だった父の姿を重ねており、チドリ父の失踪にダークの関与が窺わされつつ、
その道の泰斗である筈の光明寺の顔写真ぐらい見た事は無いのか、という気には少々(笑)
まあ光明寺は光明寺で、ダークに拉致されて世間的には消えていた人物ではありますが……光明寺家の家族模様と、
島村家の家族模様を繋げようとした結果、肝心の接続部分に、若干の無理が出てしまいました。
再びイカに襲われたチドリをジローが救い、一同はチドリの誕生パーティに招かれる事に。
そこで謎のホットドッグ屋について知るミツ子とマサルだが、仕事を終えて島村家に向かっていた光明寺は、
イカ部隊によってチドリがさらわれる光景を目撃してしまう。
だがシーン切り替わると、イカがさらったのはチドリではなく半平の変装でした、となって、必要、判断力、必要。
ただこの場面、ジローが半平に女装を頼む布石シーンはしっかり描かれているのに、肝心の光明寺による拉致目撃シーンが、
短すぎる&イカの体色と偽チドリの服の色がかぶっている為に、ぱっと見でチドリがさらわれた光景だとは大変わかりづらく、
半平の女装の甲斐無く、あまり効果的ではない展開になってしまいました。
笛の音が響いて危機に陥るジローだが、イカの吸盤攻撃が耳を塞いだ事で窮地を脱し、必要、判断力、必要。
チェンジ成功してED曲でのバトルとなり、飛び交うイカヘッドはキカイダーの反撃で大爆発。
苦悶するイカに回転アタックから大車輪投げ、そしてデンジエンドが炸裂し、アカネイカは四人の被害者の脳髄と共に、
弾け飛ぶのであった。
またも「私は不幸を呼ぶ男」とうなだれる光明寺は島村家を訪れないまま姿を消し、
用意したまま渡す事の出来なかった花束はなかなかに寂寥感を醸し出し、
光明寺が自分の境遇をしばし忘れて積極的に他者に関わるのは基本「若い女性に好感を持たれた時」だけなのは、
(メタ的な事情を省くと)「無意識に娘の面影を見ているから」なのでしょうが、博士にはもう少し、視聴者に見えるところで、
好感度と信頼感を稼いでほしいところです(笑)
ロボット工学に詳しいホットドッグ屋さんとは出会えぬままにミツ子とマサルは島村家を辞し、
チドリは「高性能な人造人間」としてのジロー/キカイダーにしか興味は無い、
と人ならぬものに対するミツ子さんの険しい恋路にエールを送り、あわよくば、論文の題材にする気満々に違いありません。
……伊豆編からこっち、伊上先生に遠慮しなくて良くなった為なのか、鎖から解き放たれた獣のように、長坂さんが、
ジロー×ミツ子の関係を押し込んできますが、ギリシャ神話の「ピュグマリオン」など古くからある題材を水脈として、これもまた、
神と人と人形の境界に関わる要素とはいえましょうか。
次回――最近どうやら、海産物が流行りらしいダーク。イカの次はタコだ!
→〔まとめ6へ続く〕
(2023年8月6日)
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