■『人造人間キカイダー』感想まとめ4■


“一つとせ
ひとりでダークに 立ち向かう
正義のロボット キカイダー”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『キカイダー』 感想の、まとめ4(19話〜24話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第19話「死神獣カブトガニエンジ参上!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 見所は、伊香保の地でチャージしたニンジャエナジーを消費し、ダークロボットに不意打ちのパンチ、 更に正面からの脳天チョップを決める服部半平。
 ダークロボット・カブトガニエンジが巨大なエメラルドを求めて宝石店を訪れるが、探知機に反応していたのは売り物ではなく、 店員の女性が身につけていた母の形見の指輪! 一応、人間の紳士に変装していたので売り物だったら正規ルートで購入する気もあったのかもしれないカブトガニだが、 求めるエメラルドが売り物ではないと知ると問答無用で女性に襲いかかり、助けに入った男性店員を無残にも殺害してしまう。
 その隙に逃げ出した女性が通りすがりの半平に助けを求めると、 必死に逃げようとする女性とダークロボットに気付かない半平のやり取りがBGMも合わせて完全にコメディとして展開し、 1分ほど前に惨殺された男性店員がちょっと浮かばれませんが、これはもはや、 半平の魔界忍法・笑劇時空――この空間が発生している限り、拙者は至近距離でダイナマイトが爆発しても、 髪がちりちりになるだけで済むのでござる。
 これまた通りすがりのミツ子とマサルが巻き込まれてアンドロイドマンが繰り出されるとそこに響くギターの音色……の前に、 カブトガニの吐き出した麻酔泡を浴び、ぐったりする一同。
 ちょっと遅れて現れたジローが高いところから、とうッと飛び降りて戦闘開始となり、アンドロイドマンを叩きのめしたジローは気付いた。
 ゲスト女性を「頼む」と託した半平が車で首尾良く逃げおおせたのはいいが、ミツ子さんとマサルくんが泡の中に放置されていることを!
 口を開けて(ええ?!)みたいな顔になったジローはカブトガニアタックを受けて吹き飛ばされると、きりもみジャンプ変身し、 その背後では、通りすがりの中年紳士が地面に倒れるミツ子とマサルを助け起こし……
 「……お父様……」
 「お父さん? 可哀想に……姉弟で家出でもしてきたのか。……よっぽど疲れて倒れてしまったのか」
 ミツ子の譫言を聞いて、真逆の解釈に辿り着いていた。
 ダークロボットにしては比較的真っ当に怪人らしいデザインといえる一方、 ボディの臙脂色よりも下半身の黄色が目立つカブトガニエンジは、キカイダーと空中で交錯するとその両足を吹っ飛ばされ、 上半身がどさっと地面に投げ出されると、這いずりながら逃げていくのがなかなかなショッキング映像。
 闘争本能の赴くまま、ミツ子とマサルを捨て置いてサイドマシーンを走らせるキカイダーの猛追をなんとか逃れたカブトガニは基地に戻って修理を受け、 振り返ったキカイダーがミツ子とマサルの姿が消えているのに気付く、みたいなシーンは無い割に、カブトガニの足の接続シーンに尺が割かれるのは、 この時代の見せ方でありましょうか。
 お陰で何を求めてどこへ向けて爆走しているのかよくわからなくなったキカイダーですが、 カブトガニが巨大なエメラルドを求めていたのは、そんな正義の戦士、対キカイダー用の死神光線銃を完成させる為であり、 レンズ部分に理想のエメラルドを用いる事により、光線銃はただの破壊光線を越え、 照射した対象を爆弾に変える呪術兵器へと進化するのだ!!
 カブトガニはエメラルドを求めて出撃し、指輪のガードを請け負い、シャワーを浴びる半平の背後にダークロボが迫る『サイコ』展開(笑)
 ニンジャエナジーが全身を駆け巡っている半平は、シャワーそして女装、とサービスシーンを連発した末、 預かり物の指輪を投げ捨てる暴挙に出るも失敗すると、 再会したミツ子に指輪を押しつけるフォロー不能の腐れ外道ぶりを見せつけ、 卑劣に徹してこそ忍びよ!
 どうにか指輪の処理に成功した半平はカブトガニに脅されると、現在の持ち主はミツ子、 とよく回る舌で簡単に明かす最低ぶりを見せつけ、指輪を返そうと女性の家を訪れた姉弟に迫るダークの魔手。
 「うまく逃げてくれよ……しばしの我慢だ。必ず、必ずお助け申すぞ! ミスター・ジローが」
 本当に最低だった。
 「ああ危ない! ミスター・ジロー! 貴公は何をしてるのだ本当に! 危ない! 右だ、右だ! 右へ逃げろ! 危ない!」
 物陰に隠れながら、追われるミツ子たちに身勝手なエールを送る半平、果てしなく最低なのですが、なんとなく、 台詞回しに『ドンブラ』風味を感じます。
 追い詰められたミツ子たちにカブトガニの毒針が迫ったその時、風を切る真っ赤なギター!
 握りしめて標的の後頭部に叩きつけるも良し、いざとなったら投げても良し、一家に一台アコースティックギターがあれば、 急にダークロボットに襲われても大・丈・夫!
 そっちがギターならこっちは超兵器だ! と死神光線銃が火を噴き、更に響き渡る悪魔の笛の音。
 (負けるものか……!)
 「ふふふふ、苦しむがいい、人造人間。それが良心回路を持って生まれた貴様の宿命だ。俺が今その宿命を終わらせてやるぞ!」
 ジロー危うしのその時、身を潜めていたミツ子たちが飛び出すと、地面に落ちていたマンホール……じゃなかった、 光線銃が吹き飛ばしたカーブミラーをジローに向けて転がし、その鏡面で破壊光線を反射したジローは、 爆発音で笛の音から逃れるとスイッチオン!
 一騎打ちはさっくり片付いてカブトガニはデンジエンドの藻屑となり、エメラルドの指輪は無事に回収。母の形見の指輪と、 父を探すミツ子たちの要素が重ねられて、幸せを掴むのはいつの日か……。
 久々に序盤の下衆っぷりを剥き出しにした半平が、最近上昇気配だった株価を自ら崖下に落として靴の踵で踏みにじる大暴れで、 帳尻合わせの機会も与えられないままフェードアウトするのはなかなかビックリでありました(笑)
 途中、謎の家出紳士(光明寺)により病院に運び込まれたミツ子とマサルをジローが見舞うシーンが挟まれ、二人の無事を確認するや、 指輪の件が心配だ、とささっと別の女の元へ向かうジロー。
 「ジローったら!」
 「ジロー、姉さんの気持ちわかってんのかなぁ」
 「なま言うんじゃないの」
 と、ミツ子×ジローのロマンス要素が長坂さんの手によってじわじわ盛り込まれていきますが、果たしてミツ子さんは、 光明寺博士のヒロイン力を打ち破る事は出来るのか。果てしなき、ヒロイン争いの道はつづく――。

◆第20話「冷酷アオタガメのドクロ計画!!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 貯水場に現れるダークロボット・アオタガメ、サブタイトルでは冷酷と謳われていますが、 頭部だけ緑色で絶妙にコミカルなカラーリングといい、吸血器官の解釈が針ではなくひょっとこ口だったりで、 既にどう見ても可愛くて困ります。
 「なんだアレは?!」
 「俺だ。ダーク破壊部隊・アオタガメ」
 久々に会った高校の同級生、みたいな様子で近づいてきたアオタガメは、貯水池の占領を宣言すると、2本の角を飛ばして職員を殺害。
 足を潰された所長は用水路に転落した事で難を逃れるとジローに助けられ、流れてくる水を分析したジローは、 僅かな毒の成分を検出する。
 「僕はもう少し辺りを調べてみます。あなたはうちへ帰って、この毒の解毒剤を研究してください」
 脂汗を流しながら地面に倒れている男性に向けて、「まず自力で家まで帰れ」「それから解毒剤を研究しろ」と笑顔でのたまうジロー!  良心回路のメンテナンスが必要なのではジロー?! 悪魔の笛は聞こえていないのよジロー?!
 そろそろジローが、お荷物はみんな処刑したいと思います! と言い出さないか不安になってきた頃、 家出博士と光明寺姉弟は至近距離でニアミスし、甲斐甲斐しくおにぎりを差し出して前回の失点を挽回しようとする半平。 水を求めている内に所長親子と知り合いとなり、解毒剤の原料になる草を採りに向かう途中で一同タガメ部隊に追われていると、 一本杉のてっぺんにジロー参上。
 次作『01』で何度か使われた書き割り登場……かと思ったら、ギターを弾く指がちゃんと動いており……カット割ってません、 と証明するようにカメラがゆっくり寄っていくのですが、どうやって撮影したのでしょうか、これ。
 一本杉から飛び降りたジローは、投げ槍アンドロイドマン軍団を相手にスピーディなバトルに突入し、飛び交う槍! 折れる槍!  突き刺さる槍!
 ひょっとこ顔のタガメクローに首を挟まれるも脱出したジローは、空中きりもみチェンジするが角による突撃でダメージを負い、 今回のダークロボは、とにかくやかましく喋り続け自己主張の激しい、クマバチやカメレオンに似た路線。
 チェーン付きの角を飛ばす必殺技、アオタガメ鎖鎌ァ! をキカイダーに跳ね返されたタガメは、角を失い、 顔面に鎖の巻き付いた間抜けな姿になると這々の体で逃げ出し……もうこれは完全に、可愛い。
 前回と同じく本部のギルが作戦の進捗を問うシーンを描かれ、 人間の思考力を奪いダークの命令に従うだけの人形とする毒液を貯水池にばらまいた事を自信満々に報告するタガメだったが……
 「思いのままに操れるだと? ふん、聞いて呆れるわ! 水道の水を飲んだ人間どもがどうなってるか、自分で確かめてこい!」
 「はは?!」
 貯水池への毒物投入ミッションを果たしたかと思っていたタガメだが、 肝心の毒の成分が薄すぎて腹痛を起こす程度の効果しか発揮していない大失態。 ギルが用意していた追加の毒液をえっちらおっちら貯水池まで運ぶと再び流し込む羽目になり、 ジローはジローで特にこれと出会って阻むわけでもない、なんとも間の抜けた展開に。
 一応それで稼がれた時間に、所長が懸命に解毒剤を完成させたのだ、と持っていくのですが、 サスペンスの都合が乱反射した末に、自宅に割と本格的な研究施設を持つ貯水施設の所長が解毒の為に山で薬草を煎じ詰める (なお右足を骨折している……筈)という、〔重要施設の責任者・キーアイテムの研究者・地元の言い伝えに詳しい医者(など)〕 諸々の役割が悪魔合体した、得体のしれない存在が錬成される事に。
 施設では、水道被害を訴える住人が所長息子を責め立てており、少年をかばったミツ子がそれに巻き込まれた時、響き渡るギターの音色。
 「やはり人類は、滅ぼすべき存在だな。とうッ!」
 感じの悪い主婦たちめがけて放たれるデンジエンド!
 ……の代わりに、工事現場で見るようなヘルメットを被り、しごく真剣な表情の半平が、コード進行のちょっと怪しいギターの音色を響かせる 、のは大変面白かったです(笑)
 「お待ちなさい奥様方。義によって服部半平、ミツ子殿の助太刀をいたす!」
 ジローばりのジャンプを決めようとする半平だが着地に失敗し、先に放り投げたギターで追撃の自爆ダメージを受け、なんかもう、 前回の最低な所業の数々は、このシーンで許せるような気がしてきました(笑)
 一方、解毒剤を一杯に詰めたドラム缶を貯水池まで運ぼうと山道を転がしていた所長は、山中をフラフラしていた光明寺と遭遇。
 冒頭のジローの無茶ぶりに始まり、計算ミスで毒液を再投入しにいく悪の組織、山で薬草を煎じている所長、 その所長の自己申告だけなので盛り上がりのないタイムリミットサスペンス、と出来が良いとは言いがたい筋の中に、 突然凄く面白いシーンが飛び込んできて困ります。
 父を探して山中に入り込んだ少年は解毒剤投入を阻止しようとするタガメに追われ、 ジローは無害を主張しようとして毒水をたらふく飲んで正気を失った半平とすれ違い(そして、まあいいやと放置し)、 光明寺はアンドロイドマンを見ると一目散に逃げ出すザ・光明寺で、所長親子が追い詰められたその時、 タガメの後頭部に叩きつけられる真っ赤なギター。
 弦の響きも高らかに、ギターが今作史上最大の高低差を飛びましたが、大事な設計図が入っているんじゃないのか、その中。
 崖の上から投げつけたギターの打撃音をゴング代わりにアンドロイドマンを蹴散らしていくジローは悪魔の笛に苦しめられるが、 薙刀持って突撃してきたアンドロイドマンを鉢合わせさせることにより爆発音で笛の音をかき消すと、スイッチオン。
 キカイダーがサイドマシーンでアンドロイドマンを蹴散らしていく一方、 気絶した所長と逃げ出した光明寺に代わり貯水池までドラム缶を転がしていった少年の前には、 毒水の影響でダークの意思に従う半平が立ちはだかり、ダークに生まれし者は、ダークに帰れ。
 キカイダーはアオタガメとの一騎打ちに突入し、とにかくタガメが色々喋りちらかしているのですが、 バックで主題歌(歌詞入り)が流れている事もあり、残念ながら半分ぐらいは何を言っているのやら聞き取れず。
 水門開放のタイムリミットが迫る中、貯水池では少年に襲いかかる半平をミツ子とマサルが必死に押しとどめ、その背後で、 光明寺がドラム缶を押しているミラクル(笑)
 成り行きは強引極まりないのですが、フラッと出てきては途中でフェードアウトするのが定番だった光明寺が、 最後まで問題解決に関わるセオリー破りが完全な盲点となって、これはしてやられました。
 誰も気付かぬ内に光明寺が解毒剤を貯水池に流し入れる大活躍を見せると、ミツ子さんは拾った棍棒を迷走する半平の後頭部に叩きつけ、 ダークに生まれし者は、ダークに帰れ!(打撃武器が、半平が持ち込んだギターだったら最高だったのですが、惜しい)
 キカイダーがダークロボと戦っている間に、ゲストと仲間たちがバイオテロを未然に防ぐ変化球で、 ダブルチョップを受けながらも粘っていたタガメは、大車輪投げで角を折られるとデンジエンドの直撃を受け、 最後までやかましいまま大爆死。
 ミツ子の一撃を受けて貯水池に落下した半平(ここまでやる事で、さすがに前回の悪行の禊ぎは済ませたといった感)は、 解毒剤入りの水を飲んだ事で正気に戻り、生死不明になっていた所長も無事に合流して、ゲスト父が放り投げられなかったのはホッとしました(笑)
 「父さんがやったの?!」
 「いや。多分、あの人だろう……」
 「あの人?」
 でミツ子の視点の動きに合わせて、ぽつんと転がるドラム缶が映し出されるのは、格好いい演出。
 「うん。優しそうな人だった。ちょっと……学者タイプのな」
 あ、今、オブラートに包む言葉を選んだ。
 「学者タイプ……まさか」
 「父さんだよ、きっと俺たちの、父さんだよ」
 ゲスト父子の再会から光明寺博士の痕跡に繋げ、それを聞いていつの間にか姿を消すジロー、と今作の定石を活用しながら、 今作にしては綺麗にまとめたオチで、大枠はぐちゃんぐちゃんながら、ところどころいつにない面白さが光るエピソードでありました。

◆第21話「残虐! ムラサキネズミの毒牙」◆ (監督:北村秀敏 脚本:長坂秀佳)
 久々にスリラー調の演出で、夜の闇の中、街を彷徨う光明寺が目にしたのは、 奇声をあげながらコンクリートブロックを削り続ける謎の影。
 外壁を破壊して伝染病研究所に侵入したダークロボット・ムラサキネズミは暗闇の中に赤い瞳を不気味に輝かせ、 髭のイメージと思われる突起物が顔中にまち針を突き刺しているように見える 狂気により、ダークロボットに特徴的な頭部の巨大さと目立つ瞳部分に基づくコミカルな造作を持ちながら、 KAWAIIの向こう側に到達しているのが、非常に秀逸なデザイン。
 必殺技を繰り出して警備員を殺害したネズミは、暗がりの為なのかデータ入力のミスなのか、 後を追いかけてきた光明寺をただの不幸な中年男性と認識したままダーク新型ペストの実験台としてガスを浴びせると姿を消し、 翌日――探偵として現場に呼ばれたのは、何故かアイパッチをつけた服部半平。
 例の如く誰にも触れられない半平の扮装・物凄くぼんやりとした研究所の看護師により隠密裡に処理されようとする事件・ 巻き込まれた第三者扱いで治療を受けている謎の中年男性(光明寺)、と全てがざっくりと処理されていき、 良くも悪くも大抵の異常事態が路傍の小石レベルで片付けられていく謎の疾走感が発生しています(笑)
 現場に残された足跡を見つけて巨大ねずみ取りを仕掛けようとする半平だが、ギルに怒られたムラサキネズミが早くも再来し、 ミツ子とマサルの危機に病院の屋上に経つジロー!
 「ムラサキネズミ! 新型伝染病をばらまこうとしているおまえを、許すわけにはいかない!」
 「許せなければどうする?!」
 「チェンジ!」
 キカイダーとネズミ部隊の戦端が開かれる一方、一晩ベッドで寝ていたら回復している光明寺は、 体に流れる忍者の血による超人的な回復力の賜物なのか、或いはその正体はやはり人造人間コゴローなのか。
 というか普通にペスト菌をばらまいた方が重大な事態を引き起こせるのでは?!
 狙われている気がするので逃げます! と種類の違う病院に搬送されそうな事を言い出した光明寺は今回も颯爽と逃げ出し、 その姿に気付く半平、そしてプロフェッサー・ギル。
 ギルはネズミに、光明寺捕獲を優先せよと命令を下し、首筋から生えてくるパラボラアンテナがお茶目。 またそれがコミック的なネズミの耳を表現しているのも秀逸なデザイン。
 ネズミがキカイダーとの戦いを途中放棄した一方、逃げる光明寺を懸命に追うミツ子だが……
 「……罠だ。奴らの罠に違いない」
 光明寺は加速した上、光明寺を追うネズミの放ったダーク新型ペストガスを浴びて倒れてしまう。
 そのネズミを追いかけてきたジローは、さらわれる光明寺の姿を目にするも、苦しむミツ子を放っておく事もできず、 ミツ子の為に体内の熱エネルギー電池を取り外して置いていくと、追跡を再開。
 半平とマサルによって運ばれた伝染病研究所(劇中では実質病院扱い)で目を覚ましたミツ子は、 体内電池が無いとジローはパワーも出せず変身も出来ないと悲嘆に暮れ……人間の体から電池が出てきたとか、 その熱エネルギーで助かったとか、電池が無いと死ぬとか、理解不能なやり取りをベッド脇で聞かされる看護師さん、 朝から奇人変人の相手ばかりで大変なお仕事です。
 ジロー電池により悪寒が収まったからもう大丈夫、と起き上がったミツ子はジローの追跡を半平に懇願し、 体に流れる忍者の血による超人的な回復力の賜物なのか、或いは一皮剥くとその下は黒いオイルと歯車で出てきているのか。
 というか普通にペスト菌をばらまいた方が重大な事態を引き起こせるのでは?!
 「ジロー、あたしの為に、あたしなんかの為に……死なないでジロー!」
 ミツ子さんのジローへの想いが強調され、まともにサイドカーの運転もできないほど弱ったジローの後を追う半平一行、 ボロ車の震動を、喋りながら自分が激しく揺れる事で表現する半平、凄い(笑)
 一方、ジローはどうにかネズミに追いつき、先行していたネズミの足がやたらに遅いのは、肩にかつがれた光明寺が無意識に、 光明寺忍法・重力制御の術を用いて、自らの体重を徐々に重くしている為かと思われます。
 「たとえ熱エネルギー電池がなくても、俺は戦うぞ……」
 奮闘虚しく、ネズミとの一騎打ちに臨んだジローは体当たりを受けて敢えなく崖から転落したところをミツ子に発見され、 ツールボックスを片手に歩くヒロイン、ってなかなか珍しいような。
 ミツ子はエネルギーの大半を失い物言わぬ冷たい体となったジローを熱烈にかき抱き、今こそキカイダーにトドメを刺す時、 と新たな命令を受けたネズミは、崖下に無残に転がるジローの姿を発見。
 チャンスとばかりアンドロイドマンをけしかけるが、それは勿論、 光明寺忍法・ここ近道なんだけど右折禁止なんだよなーええい行っちゃえとハンドルを切ったら死角にパトカーが待ち伏せしていたの術であり、 既に回路の修復を終えていたジローは不意打ちを仕掛けると、ムラサキネズミの飛び道具を故意に撃たせる捨て身の挑発で悪魔の笛をかき消し、 逆襲のスイッチオン!
 電流火花が体を奔るキカイダーは、ネズミの繰り出す激しい鞭攻撃とパラボラフラッシュをかわし、回転アタックからの馬乗りパンチ。 チョップで鞭を切断すると大車輪投げそして免許エンドにより、ムラサキネズミは木っ葉微塵に弾け飛ぶが、 その間に光明寺博士は姿を消してしまうのだった……。
 ダーク破壊部隊ムラサキネズミはキカイダーに倒された。
 新型ペスト菌すら通用しないニンジャ細胞の秘密は何か。
 事件を闇に葬ろうとした看護師は何者なのか。
 ジローは征く、果てしない戦いの道を――!
 ……ある伝によれば、後にこのニンジャ細胞に関する研究成果が、あのジャンパーソンと一戦交える事になるとされるが、それはまた、 別の物語である。

◆第22話「シロノコギリザメ悪夢の12時間」◆ (監督:北村秀敏 脚本:島田真之)
 「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 深夜零時の鐘の音と共に、テンション高く絶叫するプロフェッサー・ギル。
 「遂に我ら12時間作戦の実行の時が来た! 北緯35度60分、東経139度56分にあたる、団地を占領するのだ。……占領するのだ!」
 …………お、オカルト?
 「いいか! 12時間後に団地の上空を通過する、特殊液体燃料を搭載した、ジャンボジェット機を、特殊光線レーザー銃によって、 撃ち落とすのだ!」
 と危惧されたのですが、その指定は別に月の満ち欠けや星辰の配置とは関係ない航空路の都合であり、 真夜中の団地にアンドロイドマン工作部隊が入り込み、電話線を切ったり下水道に潜り込んだり電源設備を破壊したりしていくのは、 面白い映像。
 「約10万人の居住者の居る、マンモス団地を火の海にして、居住者全員を焼き払ってしまうのだ。 ははははははは……俺はその恐怖の世界をこの眼で、この眼で見たいのだ!」
 口角泡を飛ばすプロフェッサー・ギルは、少々ストレスでお疲れのようです。
 「……やれぇ……やるのだ! シロノコギリザメ!」
 かくして恐るべき航空機爆破テロ計画が実行に移され、団地の一室に乗り込んでいくシロノコギリザメ。 粘液質の段重ねめいたスライム顔はどちらかといえばノコギリエイですが、頭頂部にわかりやすくついた丸鋸とは別に、左腕が尾びれ、 右腕が特徴的な口吻、と体の左右で横向きにもモチーフを取りこんでいるのは秀逸なデザイン。 鋭利なヒレの飛び出す紡錘形のシルエットも面白いのですが……真横から撮ると、凄く格好悪いのが弱点(笑)
 ノコギリザメ一味は、午後12時丁度にジャンボジェットを撃墜するのに最適な部屋に特殊光線銃を設置し……あれ、この作戦、 決行の暁にはノコギリザメ部隊もまとめて、マンモス団地の火の海に沈むのか……。
 元よりギルの命令には絶対忠実なダークのアンドロイドではありますが、 処刑が見せしめやお仕置きになる程度には死に対する忌避や恐怖があるとは描かれているので、犠牲前提の作戦行動は珍しい印象。
 その調整の影響なのか、深夜に他人の家に入り込み当然のように寝室の母子に目撃されると「死にたいのか!」と凄み、 その母子を放置したまま隣室で作戦内容を確認すると、「貴様たち、今の話を聞いたな!」と怒鳴り込み、 どうも情緒不安定。
 夜が明けて、朝7時――ノコギリザメは少年と母親を拘束しておりダークにしては仕事が異常に手ぬるいのですが…… なにぶん『キカイダー』だけに、和服美人のお母さんを縛りたかっただけなのでは疑惑が持ち上がって困ります。
 なお、この母親役の松木路子さんは、今作ここまででは伊香保編を担当、次作『01』にも参加している永野靖忠監督の奥様との事。
 ダークにより密かに占拠されたマンモス団地! 迫る飛行機爆破のタイムリミット!  果たしてキカイダーはこの危機を知る事が出来るのか?!
 とプロットは胸躍る大仕掛けなのですが、 現場指揮官の最も高いスキルが《小芝居》な事には定評のあるダーク組織がマンモス団地の封鎖作戦を滞りなく進行できるわけもなく、 少年の家を友人一行が訪れた辺りから、一挙にぐだぐだに。
 作戦の全容を知る少年をものの見事に逃がしてしまうと、大量の子供たちを人質に(公募企画……?) 団地内部に大々的に占拠を宣言する力業を繰り出し、思わず子供を救おうと飛び出した親たちが、 宙を舞うノコギリにより次々と惨殺されていくシーンは、勢いがありました。
 より盛大な地獄絵図を生み出す為の〔ノーキル〕チャレンジに失敗したノコギリザメは、逃げた少年を片付けようとするが、 光明寺の目撃情報を追ってきたミツ子一行まで団地内部に入り込んでしまい、半平の勝負服(競馬の騎手)姿は、 もはやツッコんだ方が負けなのか。
 外部に情報を伝えようと懸命に走る少年と行き会ったミツ子たちがアンドロイドマンに囲まれるとギターが響いてジローまで侵入し、 なんかもう色々駄目な気配がしてきたノコギリザメは、歩道橋から投げ落とされるとそのまま逃走。
 恐怖にうなされる少年をひとまず団地入り口の交番(ダークの手により警察官は既に殺害)に運び込んだジローは、 ミツ子とマサルに少年の家探しを頼み、半平には医者を呼んでくるように命じる二重の罠を仕掛けると、 医者に化けて《小芝居》で近づいてきたノコギリザメの後頭部にチョップをお見舞いし、結果的には半平に方に食いついてきたものの、 明らかにミツ子さんも釣り針の餌に使われているのですが、ジローに内蔵された不完全な良心回路は、 ギリギリのところで戦っていた。人間とやらはそんなに偉いのか。本当に愚かなのはいつまでも地球を汚染し続ける人間の方ではないのか?  ならば今すぐ、全人類に筋肉を授けてみろ我夢ぅ!!
 少なくとも半平に関しては既に守るべき対象から外し気味のジローの策にはまったシロノコギリザメは、 かくなる上はとジローに大量の人質を見せつけると、助けたければ胸部の集積回路を開けと要求し、今ジローの、 人質への雑さが問われる!
 「どうするんだ?!」
 「…………仕方がない」
 さすがのジローも集積回路の蓋を開き……
 「キカイダーの能力の全てが収まっている集積回路。いぃぃー! 俺様がズタズタにしてや」
 「とう!」
 頭突きに来たところに、躊躇ゼロで反撃(笑)
 明らかに人質を救う為の算段はなく、「人質を守る為に相手の要求を飲む判断」と「それはそれとして自分の身を守る為に反撃する判断」 が全く別々に作動しており、良心回路とは何か。人間の価値とは何か。
 人造人間はどこから来てどこへ行くのですか、ファーザー。
 「ダークの裏切り者は、ダークに倒される。それがダークの掟。死ねぃ!」
 真理はただ、ダークの闇の中だけだ! とギルの笛の音が響き、再び迫るノコギリだが、 その回転刃が壁を切り裂く音で起死回生のスイッチオン!
 そうこうしている内に11時55分となり、慌てて光線銃の元へ戻るノコギリザメ。 ゲスト母がその存在をキカイダーに伝えるがタイムリミットは刻一刻と迫り、アンドロイドマンに行く手を阻まれている内に、 ジャンボジェットの機影が照準へと入り……
 「5・4・3・2・1!」
 あわやのその時、キカイダーがジャンボジェットと交差する形で照準の前に飛び込んだ事で、発射の妨害に成功。
 「俺が居る限り、おまえ達の悪の野望は実現させない!」
 光線銃を破壊したキカイダーは、EDテーマをバックに改めて一騎打ちに挑み、回転ドリルを叩き折ると、 逃げるサメを追ってホバージャンプ。そして大車輪投げからデンジエンドが炸裂するとEDテーマがぶちっと途切れて、 斜面を派手に転がったサメはミッション失敗の通知と共に敢えなく爆死するのであった。
 多くの母子らは無事に再会し、ジローたちはその姿を尊いものと見つめ……次なる戦いへと走り去っていくジロー。
 次回――結婚式を中止せよ! 嫉妬の炎を燃やすアリジゴク?!

◆第23話「キイロアリジゴク三兄弟見参!」◆ (監督:永野靖忠 脚本:長坂秀佳)
 ロボット工学の若手研究者の芽を摘むため、結婚式を中止に追い込めと命じるプロフェッサー・ギル、 「五年越しの恋」への言及は必要だったのか甚だ疑問ですが、何か、嫌な思い出でもあるのかもしれません。
 「殺せ……殺せぃ……殺せーーーーー!!」
 歯を剥き出しにして絶叫するギル、もはや大半のダークロボットより怖い。
 かくしてダークの刺客が白昼堂々と婚約者を襲おうとした所を毎度お馴染みトラブル招き寄せ体質のミツ子とマサルが助けるが、 3人まとめて巨大アリジゴクに引きずり込まれたところに響くギターの音色。
 巨大なアンテナ塔のようなところに立ったジローがとうっと飛び降りると、ダークロボット・キイロアリジゴク(エレキングっぽい体表) は捨て台詞を残して撤収し、「結婚式を中止させる為に花嫁を殺す」筈が、「結婚式を中止しないと花嫁を殺す」になって、 作戦が一歩後退しているぞ、アリジゴク。
 まあそもそも今回の作戦、「5年越しの恋を実らせて幸せな結婚生活とか手に入れていちゃいちゃしやがって、 内助の功で研究がますます捗っていちゃいちゃしやがって、将来、光明寺レベルの才覚を現しいちゃいちゃしやがって、 ダークの障害になるに違いないちゃいちゃしやがって!」と多分にプロフェッサーの推測と私怨に基づくものなので、何か、 嫌な思い出でもあるのでしょうか。
 狙われる花嫁は、重病で療養中の父親に花嫁姿を見せたい、と病室の窓から見える丘の上で式を挙げる事情を語り、ミツ子さんぽろっと、 「結婚できる男の人を、好きに(なって羨ましい)」発言。
 「ミツ子さん、結婚できない男の人を好きに?」
 ……たぶん今、壮絶な誤解が発生しています!
 ウェディングドレスをあててアピールしてきたミツ子さんをガン無視したジローはキイロアリジゴクに襲われ、 アリジゴクはハネアリのような姿に変身。更に2体のキイロアリジゴクが現れ、〔角あり・角無し羽あり・角あり羽あり目なし〕 の三兄弟が一挙投入されるちょっと豪華な展開で、ロケット角の直撃を受けて不覚を取るキカイダー。
 キカイダー串刺しの衝撃映像から暢気にハイキング中の半平視点に切り替わると、どういうわけか普通に戦っていたキカイダーだが、 周到に準備された対キカイダーのアルファベット作戦(残念ながら、音質の問題で個々に何を言っているのかはよく聞き取れず) により次々と能力を封じられた末にドロドロに溶かされてしまったところで、ハイ、プロフェッサー向けの予行演習でした!
 本物のキカイダーは、体に真っ黄色の角が突き刺さったままミツ子らと合流するこれまた衝撃映像で、あまりに平然と現れるので、 一瞬ミツ子さんがスルーしてしまうのが、妙なリアリティを生んでいます(笑)
 「痛みは?」
 「痛くはないが、気のせいか、動きが少し鈍ってきた気がする」
 万力を使って巨大な角を引き抜くと応急処置を施したミツ子はジローに頬を寄せ、今回はアタックが激しいのですが、 今見ると確かにこれは、三枝かおる系女子……!(笑)
 もっとも、立ち上がりはジローの方がミツ子の方を意識していて、ミツ子の方は「貴男の事は小さな歯車の頃から知っているのに、 急に色気づいちゃってどうしたのよジロー」みたいな感じだったので、多分に過程をすっ飛ばし気味ではありますが、 毎度置いてきぼりにする事でエンカウントと「命を救う」イベントを繰り返して好感度上昇を積み重ねた結果だと思えば、 策士、策士なりジロー……!……?
 今回、ジローが常以上に非人間的な損傷と反応を見せるのはこの抱擁場面の布石であったようですが、 アンドロイドマンの影が病院に近づく中、迎える結婚式当日――飛行機が遅れているのか肝心の新郎が姿を見せない中、 病室から式を楽しみにしている花嫁の父(心臓が弱い)にショックを与えない為に花婿の代役を務める、と言い出すジロー。
 マシンの自分より人間の命が大事だ! と人間を守る為には身代わりを辞さない姿を機械のヒーローらしく示そうとはしているのですが、 その為なら花嫁父を欺く事もいとわない、人の心も見失い加減。
 そこは非人間的でなくてもいいのよジロー!
 式を挙げる丘の上はダークに囲まれている筈、と命の危険を回避する為と言い聞かせて、偽装花婿作戦の理由を補強するも、 いざ式が始まると、介添えの子供が2人ついている、のですが(笑)
 トドメに顔を隠した花嫁の正体は、ここまで散々アピールしてきたミツ子さん……どころかよりにもよって半平で、 カムバック・人の心。
 「では貴様達には死んでもらう!!」
 心配する気にもならなかった立ち合いの神父は勿論アリジゴクの変装なのですが (結婚式を強行しようとした事ですり替わりの為に事前に殺害されたとすると、とんだ巻き添えですが……)、ジローと半平、 双方の顔を確認した上で計画通りとばかりに殺害を決行しようとし、プロフェッサーの私怨の入った説明が長すぎたせいで、 作戦の目的を正確に把握できていないのでは。
 恐らく後々ハニートラップにより心の隙間に忍び込む段取りの花婿は殺さない予定だった筈なのですが、 それさえも混迷の彼方に置き去りにされており、話のつじつまと人の心が錯乱状態。
 実は花嫁の父が病室から見ていたのは正反対にある丘で、そこでは滞りなく結婚式が行われていた!  と驚愕の物理トリックが明かされるような事もないまま戦いに突入したところで吹き鳴らされるギルの笛。
 だがアリジゴク三兄弟の散布した化学物質がジローの機能低下 → 聴覚の遮断を招いた事で、チェンジ成功。
 上司との意思疎通が不十分だったアリジゴクAは雑に大車輪投げで始末され、渾身のアルファベット作戦は、 事前に全てを目撃していた半平にギャグで妨害され、ひ・ど・い。
 アリジゴクBはデンジエンド、アリジゴクCはダブルチョップ・回転アタック・大車輪投げそしてデンジエンドのフルコースで始末され、 悪は滅びた。
 改めて丘の上で結婚式が挙げられると、純粋に飛行機が遅れていた花婿――若く有望なロボット工学者―― の手によりジローの修理とメンテナンスが行われてそんなところはきっちり拾われ、 なんだか面倒くさい女になってきたミツ子さんから逃げるように走り去るジローは征く、果てしない戦いの道を。
 次回――桃色アンドロイドマン出現。

◆第24話「魔性の女??モモイロアルマジロ」◆ (監督:永野靖忠 脚本:島津昇弌)
 峠に仁王立ちする、ピンクのレオタード風の衣装を着た女がくるくるくると腰を振るのを見せつけてくる面妖なシーンから始まり、 女はダークロボット・モモイロアルマジロへと変身。
 球状になったアルマジロが高笑いしながら斜面を転がってトラックにぶつかると、トラックは哀れ崖下へ転落し、 窓から放り出された運転手が、ちょうどアルマジロの足下に転がってくるのが、凄い(笑)
 アジトに運び込まれた運転手は洗脳改造手術を受け、これぞダークの新たなる人間社会支配作戦!
 アンドロイドの性能実験の為に温泉街一つ丸々で人間狩りを行うダークの姿はどこへ行ってしまったのか?!  新兵器の開発の為に山村を壊滅させるダークの姿は遠い日の幻なのか?!
 実験体の確保手段に疑問は山ほど浮かびますが、ダークは社会構造レベルから、世界征服を真面目に目指しています!
 標的を求めて観光地に繰り出したアルマジロ女は、ミツ子とマサルにバッタリ出会うと、いきなり作戦変更を指示され、 吊り橋で2人をさらおうとするが、そこに現れるジロー。
 桃色タイツのアンドロイドウーマンを蹴散らし、ミツ子らを逃がすジローだが、 吊り橋の上に巨大な桃色の球を転がすというまさかの映像により、アルマジロボールの直撃を受けて盛大に吊り橋から転落し………… 余談ですが、こういった落下シーンに際して、人形などはしっかり回収されているのか、割と気になります(笑)
 逃走中のマサルは高熱を出して倒れたところを通りすがりの医師に助けられ、 キカイダーを葬ったつもりのアルマジロ女は繁華街で獲物を物色し、まんまと引っかかった半平が洗脳改造を受ける一幕から、 アルマジロのアジトでは、アンドロイドウーマンが洗脳した男たちをかしずかせていた。
 「いかん、どうもいかん……」
 あれなんか、予算の割り当て間違えた……? と眉間の皺を深くするギルは、洗脳改造の質を上げる為に八木という医師を狙い、 それこそミツ子とマサルを救った人物であった。
 「私は倒されない。ダークが滅びる日まで」
 八木とミツ子に危機が迫ると、何事も無かったかのようにジローが復活し、随分と奇妙な頭部形状の桃色アルマジロですが……これ、 シミュラクラ的に鼻のように見せているパーツは尻尾モチーフで、つまり……顔=尻……?
 結果的に、他になかなか類例を見そうにないデザインとはなっていますが、どうしてヒーロー作品の怪人に、 飲み屋で接待されている時に思いつきましたみたいな発想を送り込んでくるのか『キカイダー』。
 八木娘を人質に取られたキカイダーは、何かとアピールしてくる“5センチの鉄板を貫く右手”に狙われるが、 ちょっと戦っていると人質を忘れる事には定評があるので強烈なドロップキックを鳩尾に叩き込み、 たまらずアルマジロは崖崩れを起こして逃走(回転能力を活かしつつ追撃を封じる手段として、ここは良かった)。
 改めて八木娘の救出に向かったキカイダーを待ち受ける吊り橋トラップだが、 例の如く例のようにその爆発音がギルの笛の音をかき消した隙にスイッチオン!
 八木娘を取り戻されたアルマジロは切り札として、洗脳人間軍団にミサイルを背負わせた人間ミサイル作戦を決行し、何かの拍子に、 キカイダーの闘争本能がスイッチオン! しそうで凄くドキドキします(笑)
 幸い最後まで理性が保たれ、次々と洗脳人間を気絶させたキカイダーは、いよいよアルマジロと一騎打ち。
 戦いに敗れたアルマジロは、誇り高き女は自ら死を選ぶ、とデンジエンドを拒絶してアジトへ戻り、 最後に自らの美しさを鏡で確認しようするのだが、全身傷だらけで顔も醜く歪んだ己の姿に絶望するとアジトごとド派手な自爆を遂げ、 もう、女性型ダークロボットはやめようかな……と心の底から思うプロフェッサー・ギルであった。
 被害にあった人々は、アジトの崩壊と共に洗脳から解放されてめでたしめでたし、となるのですが、 明らかに体内に何か埋め込まれているので、『キカイダー』世界の倫理観が改めて問われます。

→〔まとめ5へ続く〕

(2023年8月5日)
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