■『人造人間キカイダー』感想まとめ3■


“ギターのジロー 僕らの仲間
やさしく強いロボットだ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『キカイダー』 感想の、まとめ3(13話〜18話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第13話「ピンクタイガーの遊園地襲撃」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:島津昇弌)
 闇夜に光るつぶらな瞳!
 小脇に時限爆弾?抱えたピンクタイガーが可愛すぎてなんかもう色々、駄目だ!
 「ば、化け物!!」
 でも意外と、警備員が真っ当な反応をしてくれました(笑)
 まあ体がピンクというより黒混じりのマーブル模様なので、闇夜で出会うと怖いのは確かなのですが、それにしても、 完全に、キモかわというかゆるかわというか、3〜40年早いデザイン(笑)
 多分、口が常に開き加減なのも、良くない。
 光明寺博士が過去に作ったロボットピエロのジンベイ(演じるは多々良純)に、博士が人造人間に関する秘密を隠しているに違いない、 と目をつけたギルは、ジンベイの捕獲と横浜ドリームランドの爆破を命令。
 声は機械音声で動きこそぎこちないものの、見た目はまるっきり人間と変わらない人造人間がダークメイド以外で登場し、 光明寺テクノロジーに対してわき上がる、あれ、ちょっとヤバい……? 感。
 これまでは、光明寺+ダークの 呪術 技術と資金で言い訳出来ていたものがだいぶ出来なくなってきたというか、 光明寺博士もなんとなく、倫理的な問題は「作った後で考える。何故なら、作れるから作るのだ」の人っぽいので。
 そんな、さまよえる光明寺がジンベイに接触し、あまりよくは覚えていないが
 「私は君に大事なものを預けた気がする」
 「なんことやら、わからない」
 「さあ、返してもらおうか!」
 やたら高圧的だった。
 光明寺の身柄を確保しようとするピンクタイガーだが、ジローが登場。 遊園地内部を飛び回るタイアップバトルの末に逃走したタイガーは秘密を入手しようとジンベイを捕らえ、 光明寺メイドのロボット同士(ジロー・ジンベイ)が電子信号で通信するアイデアは面白かったですが、 ジンベイを人間的に見せ共感させる仕掛けがほとんど無いにも拘わらず(最低限、遊園地で子供たちに好かれているようなシーンさえない)、 ジンベイの拷問シーンを延々と描かれても、単調で退屈なだけに。
 「そもそもロボットに対する肉体的拷問に効果はあるのか?」に始まって、「自意識の発達により解体の恐怖に怯える」わけでもなければ 「何らかの理由で拷問に耐える意志」も「遊園地との心の繋がり」も劇中における描写皆無なので、 ただただプログラム通りに動くロボットの解体シーンが執拗に繰り返されるばかりでは、 「ジンベイの体内に隠された秘密」も「遊園地爆破のタイムリミット」も、いずれもサスペンスとしての盛り上がりようがありません。
 例えばそこで、「遊園地を守るか」「秘密を守るか」の選択と葛藤がジンベイに発生するとか、 「自分の事はいいから爆破を止めてくれ」と信号を送るなりとかあればサスペンスも生まれようがあるのですが…… 逆にジンベイにそこまでの「心」が無いのならば、そうではないジローとの対比が描かれる、というわけでもなく、 「何故ここでサスペンスが発生しないのか?」の反面教師的な出来。
 ピンクタイガーはこれといった見せ場もないままデンジエンドであっさり吹き飛び、ジローは爆弾本体の解除に成功。 ジンベイの体内からは、光明寺の隠した設計書のフィルムが発見され、その内容はジローの電子回路に記憶されると (今後の布石にはなるのか……?)、フィルムは焼き払われて、つづく。

◆第14話「大魔神ギンガメが三怪物を呼ぶ」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 見所は、2分30秒で4回のデンジエンド!
 バカな……4体のダークロボットが、3分もかからずに全滅だと……?!
 と、ギルが言ったか言わないか、物語は、空飛ぶ巨大なカメの甲羅が、機動隊を蹴散らしていく場面でスタート。
 「ははははは、このギンガメ様に、そんな子供欺しはきかん!」
 サブタイトルに仰々しくも“大魔神”と謳われた銀亀が機動隊を蹂躙し、前後の繋がりは全くなく、銀亀スゴいぜ!  を示すだけのシーンにしては人数と火薬が投入されていて、けっこう贅沢。
 一方、ガソリンスタンドみたいな巨大な看板が立つダークの敷地では、破壊部隊の合同慰霊祭が行われ、十三の棺が並べられていた。
 「目覚めよ。勇士たちよ。おまえたちは以前の3倍の力を持って、生まれ変わるのだ」
 ギルの言葉と共にキカイダーに木っ端微塵にされたダークロボット達が棺桶の中から次々と甦り、 まあロボットなので部品を揃えれば再生可能なのは理屈に叶っているのですが、 妙に大げさな儀式仕立てにはどうにもうこにも“呪術”の香りが漂って仕方ありません(笑)
 プロフェッサー・ギルは、再び立ち上がる破壊部隊の勇士の姿に一つ一つ頷き、基本は尺埋めなのでしょうが、 空気はどんどん父兄参観に。
 そして13体の再生ダークロボットが出そろった時、新・破壊部隊を名乗るギンガメ(でべそ)が降り立ち、 始まるダークゆるキャラグランプリ。
 「ギンガメか! 先輩に対して礼儀を知らねぇ奴だ!」
 「俺様がこやつを懲らしめてやる!」
 誰が一番KAWAIIか、決めようじゃないか!!
 「はははははは……戦え! 戦えぃ! 死ぬまで戦ってみせるのだ! 戦えぃ!」
 かくして新旧ダークロボットの壮絶な死闘が始まり、14人のダーク破壊部隊、最後に生き残るのはただ1人。
 可愛くなければ生き残れない!
 半平がこの戦いを目撃する中、復活怪人たちは次々と銀カメの餌食となっていき、ギルは能力テストにご満悦。 生き残ったグリーンマンティス・オレンジアント・ブラックホースの3体はアイメイクの濃い偽光明寺一家へと変身し、 ギンガメの指揮の元、キカイダー抹殺計画へと出撃する。
 そうとは知らないジローは、幼稚園児の一団を襲う銀カメを阻むと、 逃げたカメを追ってサイドマシーンを走らせている途中に光明寺博士と遭遇。だがそれはカマキリの変身した偽光明寺であり、 ようやく助けたと思った光明寺の襲撃を受けたところに響き渡る笛の音。
 (苦しめ……苦しむがいいジロー。貴様はなまじ、人間の心を持ったばかりに、苦しまなければならん。ダークの人造人間に戻れ。 ダークで生まれたものは、ダークに帰るのだ!)
 今作における長坂脚本回の特徴の一つとして、笛を吹くギルに結構語らせるという点があるのですが、これによって、 笛を吹くギルの姿の映像的インパクトに加え、ギルのキカイダーに対するこだわり、その邪悪な思考のありようを補強しているのは、 筆の冴え。
 また、今回ナレーションが「プロフェッサー・ギルの吹き鳴らす悪魔の呼び声」と称するように、ギルの語りを補う事により、 ギルの笛の音とは外部からの呪詛であると同時に、ジローの内心の悪魔でもある事が強調されて、ただの約束事のピンチ演出、 以上の意味を与える事に成功しているのは巧いポイントになっています。
 笛に苦しむジローは偽物トライアングルに追い詰められ、BGMが軽快で、ちょっと、楽しそう……(笑)
 「最後の仕上げだぁ。必殺・蟻地獄ーー!!」
 それぞれ新技を見せるカマキリ・ホース・アリ、の攻撃を次々と受けたジローは遂に地中へと埋められてしまう。
 ナレーション「だがジローの体を覆った砂は、同時にギルの笛の音をもカットした!」
 ……これは、プロフェッサー大激怒案件では。
 「来いダーク破壊部隊! まとめて面倒を見るぞ!」
 起死回生のチェンジに成功したキカイダーは、光明寺一家の姿を真似た卑劣きわまりないダーク破壊部隊に怒りの反撃開始。 銀亀も飛来して4対1の戦いとなるがものともせず、再生ダークロボトリオは、1分の間に3回のデンジエンド!(笑)
 「残るはギンガメ、貴様が相手だ!」
 「俺はそいつらとは貫禄が違うぞ!」
 ちょっと台詞の面白いカメのクロー攻撃に苦しむが宙返りで脱出したキカイダーは、甲羅アタックも全方位バルカンも回避すると、 懐に入っての大車輪投げで起き上がれなくなった所に本日4回目のデンジエンドを叩きこみ、大魔神ギンガメは木っ端微塵に吹き飛ぶのであった。
 2クール目に入って従来の5倍のパワーを持つ(と主張する)新破壊部隊が登場し、 旧破壊部隊を惜しげも無く踏み台に使っての本格的キカイダー抹殺作戦だったのですが、 立ち回り次第でいくらでもジローを精神的に追い込む事が出来そうな偽光明寺一家は物量作戦の前振りにしかならず、 その数の優位はキカイダーに通用しないまま、特に新技も出ずに〔いつもの×4〕で片付けてしまったのは竜頭蛇尾で残念。
 悪魔の笛に苦悩するキカイダーの姿こそ、時に親しい存在にさえ刃を向ける、人間の抱える善悪の二面性そのものである、 といった見せ方は面白かっただけに、そこがピークになって後は消化試合になってしまったのが惜しい一篇でした。
 次回――今度こそ本当の精神攻撃?!

◆第15話「キンイロコウモリ呪いの陰」◆ (監督:北村秀敏 脚本:伊上勝)
 冒頭から山岳地帯でアンドロイドマンと戦うキカイダーに襲いかかる、ダークロボット・金色コウモリ!
 地獄大使みたいな頭部をした金色コウモリにより、 空中高くから崖下に突き落とされたキカイダーがバラバラに四散したところで性能テストと判明し、いつにない戦闘からの導入、 背後に響く不気味なギルの笛の音、は面白い掴みとなりました。
 そして、テスト終了と共にすくっと立ち上がるアンドロイドマン部隊(笑)
 雰囲気出しの為にテスト用キカイダーに倒されたフリをしていただけだったアンドロイドマンが後片付けをしていると 、墓参りに向かうのに何故かチャップリンコスプレの半平(出番ここだけ)が近隣を通りすがり、今日も今日とて車の故障で立ち往生。
 半平のキャラクター性も含めて、この“お約束”が“許せる”ものになっているのは今作の強みといえますが、 ダークのアジトから作戦ファイルを盗み出した謎の男が、半平がキカイダー(テスト用)の生首にビックリ仰天している内にその車を盗んで走り出し、 アンドロイドマンに前後を囲まれたところに響くギターの音色。
 男を助けて戦うジローの立ち回りにナレーションを重ねて、ここまでの『キカイダー』、の基本事項をおさらいする趣向で、 「世界征服の野望に燃える秘密結社ダーク」は「世界各国の優秀な科学者を集めて、恐るべき、無敵のアンドロイドを次々と作らせていた」と、 オーソドックスもオーソドックスですが、ダークの活動目的と行動指針について、劇中で初めて明言。
 ナレーション「ギルの電子音から逃れた時、ジローは、いまひとつの姿になれる。それは正義の戦士・人造人間キカイダーだ!」
 結構な勢いで斜面を転がり落ちたジローは、チェンジ・スイッチオン! 1・2・3!
 ナレーション「人造人間キカイダーの目的は、ダークと戦う事。そして、いまひとつ、彼の生みの親ともいうべき、 光明寺博士の行方を探すことなのだ。その光明寺博士は――」
 光明寺家の門前をうろついていた。
 どころか、室内に入り込んでいた(笑)
 ナチュラルに《鍵開け》スキルを発揮している光明寺ですが、家の中を見て「長い間人が住んでいない様子だが……」とあるので、 1クール目後半ぐらいからミツ子とマサルが暮らしているのは、都心の別邸か何かでありましょうか(光明寺が電話番号を記憶していたし)。
 ミツ子とマサルの逃走劇要素を光明寺博士の捜索要素にすり替えた点については、 その場その場の成り行きに都合のいい描写を優先している事もあってか設定の混乱が見受けられますが、 家に近づく気配に気付いた光明寺が姿をくらませた事で、親子はまたもニアミス。
 若干、被害妄想の傾向もある(ダークに追われているのは確かなのですが……)光明寺とすれ違いになったミツ子&マサルは、 土足の足跡がクッキリと残るほど床にほこりが積もり、何年放置されているのかわからない布団を前に、 平然と今夜はここで休もうとのたまい出し、相変わらずヒロイン力を生け贄に捧げてサバイバー力がグングンと上昇していきますが、 段々、その皮膚の下で動いているのは、茶色いオイルと鉄の歯車なのではないかと心配になって参りました。
 そしてその夜、光明寺邸に潜り込んできたいまひとりの男――それはジローが助けたダークからの逃亡者にして……
 「タロウ兄さん!」
 森林を防衛する巨人、タローマンである。
 …………じゃなかった。
 山火事に見せかけたダークの陰謀で殺された筈の光明寺家の長男・タロウであった!
 俺の中の内なる声がおまえを邪悪だと言っている、と突然のタロウの訪問を警戒するジローだが、 兄との再会を喜ぶミツ子とマサルは、その生還をすっかり信じ切ってしまう。
 光明寺博士に対する人質としてダークに囚われていたと語るタロウの、ジローの顔も立てる大人な対応もあり、 タロウが盗み出した計画書を元に新型アンドロイドの破壊工作に同行する事になったジローは、タロウと別行動中に、 既に起動していた新型ダークロボットと激突。
 「ダーク破壊部隊、名付けて金色コウモリ!」
 力強い主張の一方、見れば見るほど、アリジゴクなのでは……?と思えて仕方ないのですが(まあ、 角か鋏に見える部分を耳だと思えば、顔はコウモリと捉えられなくもないですが)、 唯一コウモリ感を出すマントを広げてジローを宙づりにするのは、真下から映すカメラワークもあって、面白いカット。
 チェンジで脱出しようとするジローだが本日2回目のギルの笛が鳴り響き、金色コウモリの殺人テクニックが風を切って唸る! だが――
 ナレーション「勝ちを焦った金色コウモリは、冒してはならないミスをした」
 その風切り音が笛の音をかき消すと、チェンジ成功したジローは宙づりを脱出。 自ら囮となってアンドロイドマンを引きつけていたタロウを助けて光明寺邸へと戻るが、その結果、 タロウの負傷はジローの不審が原因ではないか、と光明寺姉弟からの信頼を失ってしまう。
 へへっ、しょせん機械への信頼など、肉親の情に比べれば紙っぺらみたいなもんなのさ……と待機状態に入るジローだが、勿論、 タロウすなわち金色コウモリの変装であり、二段構えの謀略によりミツ子とマサルの信頼を勝ち得た偽タロウは、 ギターの中に隠されたジローの設計図を手にすると、スリープ中のジローから取り出した良心回路をミツ子の前で破壊。
 「光明寺博士が苦心して組み込んだこの良心回路が無くなれば、ダークに生まれし者は、ダークに帰る!」
 実際どこまでが脚本ベースかはわかりませんが、ここでこのフレーズが組み込まれるのは如何にも伊上脚本らしい切れ味で、 宙返りから正体を現す金色コウモリだが、そこに響くギターの音色。
 なんとジローは万が一に備えてギターの中に偽の設計図を仕込む罠を張っており、 偽タロウが取り外したのはスペアの部品に過ぎなかった、と丁々発止の頭脳戦から、両者は改めて激突。
 目つぶし攻撃に苦しむキカイダーだったが、逆転の投げ技から必殺コンボを決め、 光明寺一家の絆を利用した卑劣な金色コウモリを葬り去るのであった。
 「卑怯な奴め! ふさわしい最期だ!」
 ジローを傷つけた事を謝罪しようとするミツ子&マサルと、そんな二人もまた傷ついたのだ、と黙って走り去っていくジローの姿が、 〔いつもの〕を格好良く活用して、つづく。

◆第16話「女ベニクラゲが三途の川へ招く」◆ (監督:北村秀敏 脚本:長坂秀佳)
 「ダーク破壊部隊の女ベニクラゲ! 私は幸せそうなアベックを見ると、我慢できないのよぉ!!」
 ……なんか、凄く駄目そうだぞ。
 劇中初の明確な女性型ダークロボットが出現すると、ジェラシー溶解液を吐き出し、夜景を楽しんでいたカップルを殺戮。
 傘を頭部、触手を首から下に見立て、クラゲモチーフ怪人としてはオーソドックスなデザインですが、 傘の模様がダーク怪人名物のつぶらな瞳に見えて仕方ない為にまごう事なきKAWAIIを生み出しており、 アンドロイドを世界中に売りさばいた末、最終的にダークがもたらすものは、KAWAIIによる世界平和なのではっ?!
 まあ、声と演技は魔女系なので、総合的には可愛くない、という新機軸を生み出してもいるのですが。
 蛍光灯などの光に反応して凶暴化すると、人間を襲って溶かすミニドククラゲを開発したベニクラゲは、 諸外国の軍隊に売りつける為の宣伝活動として、都内のアベックが集まりそうな公園にクラゲを放ち、 夜になればアベックは皆殺し! の作戦を立案し、 好きにやらせていて本当に大丈夫なのでしょーかプロフェッサー・ギル。
 ところが作戦を前にミニクラゲが外部に流出してしまい、その回収の為に水中から飛び出す、網タイツ姿の女性アンドロイドマン軍団。
 以前に、衣装は通常通りながら胸だけ膨らんでいるのがちょっと不気味な女性型アンドロイドマンが登場していましたが、 今回は本格的な女性型アンドロイドマンとなり(ちなみに『仮面ライダー』第1話に登場した女性ショッカー戦闘員も網タイツ履いていたので、 コスト控えめかつわかりやすいアイコンであったのでしょうか)、声も女性……なのですが、 「ギル! ギル!」は録音を使っているらしく明らかに男声なので、凄い違和感(笑)
 一方、死んだ弟の遺志を継いで川の美化運動に励む女性と知り合いになった光明寺は川の汚染源が上流の建物にあると気付くが、 それこそがミニドククラゲの生産工場であり、アンドロイドマンに囲まれる危機に、地面に突き刺さる真紅のギター!
 「光明寺博士、おわかりですか?! ジローです! あなたに作っていただいた、ジローです!」
 迫り来る暑苦しい男の意味不明な発言に、光明寺はそそくさとにげだした!!
 ……ええ、うん、まあ、嘘は一つも言っていないのですが……これは、まあ、逃げても仕方ないですかね……後、ジローの顔を見ると、 ハッキリしないが第1話における炎上爆発の記憶が刺激されて本能的に危険を感じてしまう、などあるのかもしれません。
 ジローが助けた少年が懐に回収していたミニドククラゲは、蛍光灯を当てると空を飛ぶクラゲ、ぐらいの凄く雑な扱いを受け、 ジローの腕の損傷を修理する為、後で謝るから、と少年のラジオを勝手に分解するミツ子さん(笑)
 ジローとミツ子の心の交流がしっとりめに描かれる一方で、少年の心が踵でグリグリと踏みにじられていますが、 正義の為なら、ラジオの一つぐらい安い犠牲です。
 その少年は姉(光明寺と知り合った女性)と共に、汚染源に文句を言ってやる!  と上流に向かったところをクラゲ一味に襲われるがジローに助けられ、咄嗟のクラゲ耳栓でギルの笛の音を封じるファインプレー。
 ゲストキャラがジローを助ける今作ではちょっと珍しい展開となり、サイドマシーンで河川敷を疾走するキカイダーは、 クラゲと水中戦に。煙幕や腕グルグルや触手攻撃などがあった末に、最後はいつものコンボからデンジエンドが炸裂し、 ベニクラゲは水中に散るのであった。
 女ベニクラゲは水質汚染が生み出した怪物として処理され、これからは川を綺麗しよう!  とゲストキャラの持ち込んだ要素に先行きが示されるのも珍しく、光明寺とゲスト女性の交流も含めて、 この後に続くかはわかりませんが、アプローチに変化の見られるエピソードとなりました。
 余談として今回、水兵コスプレで登場した半平の帽子に思い切り「大日本帝国海軍」と書いてあるのが、時代を感じるところ (旧日本軍やナチスがらみのネタは、明らかに70年代の方が緩い)。

◆第17話「アカクマバチ恐怖の人質計画」◆ (監督:永野靖忠 脚本:島津昇弌)
 ダークロボット・アカクマバチ率いる、小型アカクマバチ部隊(アンドロイドマンが変身) が環境破壊の為にガスをばらまくと世間では公害によるものと認識され、対策委員の記者会見が描かれる社会派路線……なのですが、 この後ジローはもとより、ミツ子やマサルの口からも公害の「こ」の字さえ出ないまま終了。
 自らの部隊を「ダーク特攻隊」と称して部下を鼓舞し、「行きの分はあっても帰りの分は無いと思え」 と配下のアンドロイドマンにエネルギーを注入するかなりストレートななぞらえも、 それ以降は特に活用されないまま終了し、社会問題も戦争風刺も、見事に宙ぶらりん。
 また、〔ぽっちゃりボディ・大口開けたところにウニを詰めたような顔・頭のタケコプター〕と、 どちらかといえば笑いを誘うデザインのアカクマバチを更にミニチュア化すると、もはやそこには“KAWAII”しかなく、 映像がどうにも深刻になってくれません(その「可愛い」が「不気味な恐怖」に転化されるホラー系のシナリオだったらまた違ったかもですが……)。
 ダークの魔の手が、公害対策を進めようとする政治家の娘に向けて迫る一方、光明寺は生まれ故郷である伊香保の地に辿り着いていた。
 ミツ子とマサルもまた、父の手がかりを求めて伊香保を訪れており、光明寺の親友が支配人を務める伊香保グランドホテルへと向かう道すがら、 光明寺の乗る路線バスと、ミツ子らを乗せた半平の車が張り合って、公道で蛇行を繰り返しながら抜き津抜かれつのデットヒートを繰り広げる 無駄カーチェイスが展開され、こんな路線バスは凄く嫌なのですが、伊香保観光協会としては、これで良かったのでしょうか!!
 ミツ子・ホテル支配人娘・政治家娘はそれぞれ知己で、この後、ホテル支配人娘がやたら活躍するのも謎なら、 半平とペアルックのような衣装を着ているのも謎で、細かい謎が乱れ飛ぶ中、タイアップ先の玄関屋根の上で戦っている内に、 むざむざ女性陣をさらわれてしまうキカイダー。
 アカクマバチは娘を人質に政治家を脅迫し、キチガイ毒針を打ち込まれたマサルは虚ろな表情で笑い続け、 ジロー&支配人娘と共にアジトに乗り込んでいった半平は3体のアンドロイドマンを退ける活躍を見せ、全体的に、 ジロー以外のキャラが活躍、というかジローの出番が少なめなのですが、スケジュールの関係で何かあったのか、 この辺りでゲスト含めてサブキャラを少し活躍させたい、みたいな意図だったのか。
 ジローが赤クマバチと戦っている間にモーターボートを奪って逃げだそうとするミツ子達だが、船体にロープを引っかけると、 背中に気嚢を広げて追いかけてくるアンドロイドマン!
 突然のパラセーリング追撃が始まるのですが、水面を走るモーターボートの起こす風圧によって宙に浮いているアンドロイドマンは、 当然、前方のモーターボートには追いつけず、走るボート・浮かぶアンドロイドマン・きゃーきゃー騒ぐ女性陣 (女性3人がボート上で悲鳴をあげて騒いでいると、もはや遊んでいるようにしか見えず)、となんだこのシーン(笑)
 ヒーローが湖岸でじたばたしている間に、レギュラー一般人がモーターボートアクションを担当するのも珍しい気はしますが、 どうするんだこれ……と思っていたら、アンドロイドマンが上から撃ってきた!
 湖面に水柱が立ち、ようやく緊迫感が出たところで半平がロープを切り離すと哀れアンドロイドマンは水上に落下していき、 アクションとしてはかなり力が入っているように思われるのですが、劇的な効果のほどは正直ちょっと微妙。
 追っ手を振り切ったミツ子は、笛の音に苦しみもがくジローの姿に気付くと、スイッチ・オン!
 「ボートを岸に向けて! ジローめがけて突っ込むの!」
 ミツ子さぁぁぁぁぁん?!
 「OK!」
 ホテルの娘ぇぇぇぇぇ?!
 躊躇なく湖岸にボートを突っ込ませるミツ子さん、躊躇なくその指示を実行に移すホテルの娘、 そして伊香保は光明寺博士の生まれ故郷……この3つの点を繋げると、浮かび上がる真実は一つしかありません。
 そう、伊香保は忍者の里だったのです。
 「半平! あなたの腕のみせどころよ!」
 ミツ子の指示を受けた半平は爆走するボートの上からジローめがけてロープを投げつけ、 それに引きずられて水中に飛び込んだジローは笛の音から逃れると、怪人から「卑怯者」呼ばわりを受けながらも、チェンジ成功。
 今日はあまり活躍していない分のパワーを込める……! と主題歌をバックの打撃戦に突入するや、 必殺コンボでさっくり木っ葉微塵にするのであった。
 怪人を倒したからという事なのか、マサルくんは適当に治り、観光タイアップ回にしても最初から最後まであまりにも取り留めが無いのですが、 当初はもっと社会問題に踏み込むプロットで進めていたが、急遽、伊香保回が入る事になって中盤以降の展開を魔改造された、 とかだったのではと考えた方が納得のいくレベル。
 次回――「互いに秘術を尽くす恐怖の戦い」と予告が発言して、基本はやはり、忍法帖。

◆第18話「クロカメレオン幻の大強奪作戦」◆ (監督:永野靖忠 脚本:渡辺亮徳/島田真之)
 新開発の核物質を奪取しようとするも機動隊に阻止され、 お仕置きとしてスクラップにされるアンドロイドマンたちの姿を尺を採って描く、ちょっと変わった導入でサブタイトル。
 「愚か者たちの死刑は終わった。だが、我々は原子ウラトニウムを諦めたわけではない」
 ギルはダーク新破壊部隊クロカメレオンに新たな命令を下すが、
 「任せてちょーだいっ!」
 ……なんかちょっと、不安なノリだった。
 ホテル支配人の娘が連続出演して前回に続いて伊香保で光明寺を探すミツ子達だが、 その地は原子ウラトニウム強奪をもくろむダークの魔の手がひしめいており、輸送トラックを襲う派手な銃撃!
 銃火器所持のアンドロイドマンが待ち伏せを仕掛けると更にヘリによる空中からの砲撃まで投入され、熱戦を繰り広げる、 群馬県警vsダーク!!
 死屍累々の戦場に、ギターを響かせジローが参上すると輸送部隊の隊長を助けてトラックを先行させるが、クロカメレオン (何故か長い嘴があり、鳥類寄りの顔)の忍法イリュージョンと忍法爪ミサイルに苦戦し、戦いの場は走行中のトラックの上に。
 ……割と普通に走っているトラックの上で(スピードは相当落としているのでしょうが)割と普通に戦っており、 制作会社の安全基準感覚(当時)にいまいち信用が持てないと、迫力、というよりは、ちょっとヒヤヒヤして困ります。
 どうにかカメレオンを投げ捨てるキカイダーだが、トラックのガソリンが心もとなくなり、 凄く普通に群馬県警と状況を相談するキカイダーが、今作これまで無かった状況で妙に面白い(笑)
 既にガソリンスタンドに罠を仕掛けていたカメレオンは、榛名湖のほとりで一休みしていたミツ子とマサルにも魔手を伸ばし、 光明寺と名乗る男性が工事現場で大けがをした、と虚言を用いて誘い出す。
 慌てて走り出すも、光明寺と出会えなかったミツ子とマサルは、懐かしい伊香保の地で思い出の歌を口ずさみ、 「この景色……それにあの歌……覚えがあるような気がするんだが……」と、それが光明寺の耳に届くのはいいシーンなのですが、 なのですが、湖畔の炭焼き小屋(?)で、勝手に火を焚いているのが、ザ・光明寺。
 また、半平たちと切り離したい&ダークの介入を描きたい意図からかクロカメレオンの罠を挟んだ事によって、 父親が大怪我をしたらしいと大慌てで探しに行く → シーン切り替わるとさっくり「会えなかったね」 で済ませている奇妙奇天烈な流れが発生してしまっており、つまり、お父様は事故と怪我を偽装して追っ手の目を眩ませたに違いない!  と捉えるのが、光明寺家では常識に違いありません。
 制作上、観光タイアップの関係により榛名湖で一休みのシーンを入れないといけないとかはあったのかもですが、ダークもダークで、 おびき寄せた筈の工事現場では襲撃しないという謎の行動を取り、歌についてミツ子とマサルに訪ねようと接触する寸前、 アンドロイドマンの姿を目にしてさっと姿を隠す光明寺が酷い(笑)
 さまよえる光明寺縛りは、ストーリーに縦軸を作るメリットの一方で、 ニアミスを描こうとして微妙な状況が出来上がるデメリットが付きまとっていますが、前回は、 ぼんやりと座っている割と近くを娘らが誘拐されていき、今回は、女子供がアンドロイドマンに狙われているのを命欲しさに見過ごし、 前者はそもそも気付いておらず、後者は無力な一般人の対応として自然ではあるものの、 光明寺(ヒーロー側の人物)の好感度には響きます。
 光明寺が積極的にする事といえば、移動と、逃走と、若い女の子を手伝ってのゴミ拾いであり、ミツ子さんは無事再会の暁には、 出会い頭に水平空手チョップからのココナッツクラッシュそしてプランチャ・スイシーダの必殺コンボ を叩き込んでも、マザーは許してくれるに違いありません。
 ミツ子とマサルがダークの手に落ちる一方、ガソリンスタンドで待ち構えていたクロカメレオンは輸送トラックを奪い取り、 ジローを襲う火炎放射。ギルの笛に苦しむジローだが、忍法・爪ミサイルによって起きた落石の下敷きになった事で音が遮られ、 チェンジ成功。
 キカイダーの反撃にコミカルな芝居でもだえていたカメレオンはロケット十字架に人質にしていたミツ子とマサルを見せつけるが、 キカイダーいきなりの回転アタックから大車輪投げ、そしてデンジエンドのコンボであえなく爆死。
 ダークによる原子ウラトニウム強奪作戦を阻止したジローは走り去り、凄く雑に出てきた人質が凄く雑に解決されるのですが、 初参加の脚本家が大体、「え? 光明寺一家は毎回出さないといけないんですか?!」みたいになっているのは、 今作の厄介そうなポイントで(ただし今回の脚本の渡辺亮徳は、自ら名乗りをあげた当時の東映テレビ部部長との事)、 幸せを探す戦いはつづく。

→〔まとめ4へ続く〕

(2023年6月18日)
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