■『人造人間キカイダー』感想まとめ1■


“チェンジ! スイッチオン!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『人造人間キカイダー』 感想の、まとめ1(1話〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る


◆第1話「恐怖のグレイサイキングは地獄の使者」◆ (監督:北村秀敏 脚本:伊上勝)
 サブタイトルが……長い……!
 それから、戦闘員の武器が、薙刀。
 長距離トラックを襲撃して、その恐るべき突進力を見せたサイの怪人が続いてダム破壊を目論むが、 そこに響くメランコリックなギターの音色……
 「誰だ貴様?!」
 「ダークの恐ろしい野望を砕く為に来た男――」
 青いジーンズとジャケットの下に黄色いシャツ、そして真っ赤なギターを抱え、 存在がおもちゃカラーの青年(これは、間接的な、「ロボット」の表現なのか……?) は高いところから怪人一同を見下ろすと、謎の組織ダークに堂々宣戦布告。
 サイ怪人が爆発的なパワーで大地を揺るがし、青年を吹っ飛ばしたかに思われたが、煙が晴れると立っていたのは、 機械の脳を持つ男――。
 「おまえは誰だ?!」
 「正義の戦士、キカイダー!」
 ブーツの下からジェット噴射でちょっと浮く事によりロボット感をアピールしたキカイダーは、 Aパート早々からOPに乗せて戦闘員と戦い始めると(特にホバー移動したりはしませんが)、千切っては投げ、千切っては投げ……
 「グレイサイキング、さらばだ!」
 サイ怪人を鮮やかに崖から投げ落とすと、サイドカーに乗って走り去った(笑)
 その後を気合いで追いかけたサイ怪人は何故かダークの秘密基地の上に辿り着き、あれこれ? いきなり基地に潜入されたのでは?  と色めき立つダークの防犯体制が、初回からだいぶ不安を誘います。
 基地内部では、ダークに囚われて何事か働かされているらしい光明寺博士とその娘・ミツ子が、 24時間ダークに監視されていると言いながら地下にこっそりと隠し部屋を作っており、そこで密かに開発を進めていた人造人間ジローが、 いつの間にか抜け出していつの間にか戻ってきている驚愕の密室トリックが明かされて次元が三回転半ひねりを決め、 開幕直後から激しく揺さぶりをかけられる視聴者の正気ゲージ。
 それはそれとして、シートを外すと満面のスマイルのジローが出てくるのは、非人間性の表現として好き。
 「博士、ミツ子さん、俺はダークご自慢のグレイサイキングと対等に、いや、それ以上に戦えます!」
 ……冒頭から何をしたいのかよくわからなかったジロー、腕試しに出かけていたのか(笑)
 ま、まあサイも、本命のダム攻撃の前にトラックで練習していたし、予行演習、大事。
 謎の秘密結社ダークの野望を打ち砕くべく、最後の配線をセットしてジローを完成させようとする博士だが、ダークの総帥、 プロフェサー・ギルに、隠し部屋がバレたーーー。
 「戦え! 戦うんだジロー! 私に構うな!」
 光明寺博士は炎上した研究室を包む炎の影に消え、ミツ子を連れて脱出を図るジローだが、不気味な笛の音が響くと頭を抱えて苦しみ出してしまう。 半ば錯乱状態に陥る大ピンチに耐えてなんとかバリケードを突破するジローに一体なにが起こったのか……キカイダーといえばこれ、 という特性ですが、初回時点ではなんのことやら一切の説明無し。
 杖に仕込まれた笛を吹くも脱出阻止に失敗したギルの呼び声に応え、ダーク破壊部隊のシルエットが障子(障子……) をバックに浮かび上がると、色+動物、の名称を次々と名乗り、「ピンクタイガー!」弱そう。
 光明寺家に戻るジローとミツ子だが一足遅く、ダークの秘密を守る為、キカイダー抹殺を目論むダーク破壊部隊により、 独り家に残っていた光明寺マサルがさらわれてしまう。
 地獄谷へ呼び出されたジローがサイドカーを囮にマサル救出に成功したかと思われたその時、超ド派手に吊り橋ごと吹っ飛ばされ、 空中で、
 「チェンジ! スイッチオン! 1・2・3!」
 が初披露。
 ジローからキカイダーへと変身して少年を救うと、勝ち誇るサイの耳にギターの音色が響き、 姿を見せたキカイダーは別にギターを弾いていないので、録音再生機能だった(笑)
 果たして光明寺博士は何を思い、キカイダーに5.1chサラウンドスピーカーを搭載したのか…… 主題歌インストに合わせてのクライマックスバトルとなり、次々と解体されていくダーク戦闘員(爆発により機械仕掛けと表現)。
 70年代の情緒漂う「バラせ」「殺せ」と共に飛び交う長刀を華麗にかわしたキカイダーは、いよいよサイキングと一騎打ちとなり、 角がドリル強化する面白ギミックを見せたサイキングだが、キカイダーにつられてまんまと崖から落下すると、 ダブルチョップ・大車輪投げ、そしてデンジエンドを受け、大爆……発はしないのであった。
 吊り橋や岩は景気よく吹き飛ばしたのに、肝心のサイは割と地味な爆発でパーツが地面に散らばり、 やや拍子抜けを感じつつキカイダー大勝利。
 いつの間にやら姿を消したジローを探すミツ子とマサルが、サイドカーで走り去るジローの姿を見つけて呼びかける、 一種の定型文的なラストにナレーションが重ねられて、つづく。
 ナレーション「謎の秘密結社・ダークと戦う為に生まれた、正義の戦士キカイダー! それを追う、 ダーク破壊部隊との恐るべき死闘の日々が、これから始まるのだ。ゆけキカイダー! 戦え、赤いギターの青年ジロー!」
 とりあえず初回の限りでは、次作『01』ほど、ナレーションさんによる浸食は見られませんでした(笑)
 次回――ダーク破壊部隊の次なる刺客がジローに迫る!
 2022年に亡くなられた巨匠・渡辺宙明さんの作曲ですが、ED曲のインストアレンジによる次回予告の入りがメチャクチャ格好良くて、 これだけで+5点ぐらい入る勢い。

◆第2話「怪奇グリーンマンティスは殺人鬼」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:伊上勝)
 ヘリコプターから砲撃を受けるジローは死んだフリ作戦で反撃を行い、勝者に卑怯の二文字は無いのだ!
 「アンドロイドマン達だけに任せておくのか、ダーク破壊部隊!」
 挑発に応えて岩の中から現れたのは、巨大な鎌と触腕を持つグリーンマンティスで、ジローがスイッチオンして地上に立つと、 目のスイッチが入るのがちょっと格好いい、と思った直後に、煽るだけ煽って、飛んで逃げたぞ。
 どうやら追跡部隊の目を引きつける為にわざと目立つ動きをしていたらしいジローは、ミツ子とマサルの潜んでいたあばら屋へと戻り、 光明寺博士の行方を求めつつ3人で逃避行中、という事の模様。
 ジローの提案を受けたミツ子は、光明寺博士の親友、石神博士の元でかくまってもらおうと考えるが……激しい雷の鳴る夜、 不気味な笛の音と共に石神電子工学研究所の壁に怪人のシルエットが浮かび上がる画はなかなか見応えがあり、 光明寺博士に化けたグリーンマンティスによって殺害されてしまう石神博士。
 この際のやり取りで博士とミツ子は5年前から行方不明になっていた事が明らかになり、 博士はともかくミツ子もマサルも物凄く強靱なメンタルに育った事が窺えて、それはこの程度の逃亡生活、どうって事はありません。
 石神博士の殺害を利用してミツ子とマサルを捕まえるダークであったが、 コメディリリーフの自称名探偵・服部半平の介入もあってマサルの逃走を招き、今後の使われ方はわかりませんが、 今回に関してはコメディリリーフがある程度、無理の無い範囲で物語の筋に関わる登場だったのは、良かった点。
 車のナンバーをメモって活用するぐらいの知性と、金銭に関してかなり執念深い性格、は表現できましたし。
 敵の武器を奪って使う関係で、すっかり薙刀使いみたいになっているジローは、 ミツ子をさらった偽パトカーの屋根にダイブするが、その時、またもあの笛の音が響き渡る――!
 ナレーション「悪の組織ダーク、その首領である、プロフェッサー・ギルの命令によって作られた、アンドロイドは、 プロフェッサー・ギルの笛によって凶暴になる」
 付けてて良かった忠誠回路!
 ナレーション「だが、密かに光明寺博士が組み入れた良心回路は、不完全ながら、人造人間ジローに、悪に抵抗する力を与えていた」
 それに対する正義の心の存在が明らかになり、そんな予感はしていましたが、ナレーションで全てさくっと解説されました(笑)
 ナレーション「ジローはスイッチオンによって、良心回路が完全に動き、正義の戦士キカイダーになるのだ!」
 決算前に発売してもらわないと困るんだよ! とデバッグ完了前前に出荷されてしまっていたキカイダーは、 パトカーを持ち上げるとミツ子を救出して一時逃走し、ヒーローの行動として何もおかしくはないのですが、 なにぶん2話で4回目の逃亡なので、“よく逃げるヒーロー”の印象が強く(笑)
 ダークは偽光明寺博士に次々と関係者を殺害させる事で光明寺博士を改めて社会的に抹殺しようともくろむが (押し出しのいい紳士である光明寺博士に冷酷な殺人鬼を演じさせるのは秀逸)、 そこに先回りしたキカイダーが外道照身霊破光線を放つと正体見たりグリーンマンティス!
 そのまま室内で戦闘に突入し、おお、横ホバー移動した! そして更に、天井に張り付いた!(なお、特に意味はありませんでした)
 小道具を持って登場・乗り物はサイドカー・ロボット的な機能、と時期的に『仮面ライダー』と如何に差別化するか、への意識が窺え、 野外での主題歌バトルに移って、この戦いを石神夫人に見せると、誤解が……解けるの?(笑)
 まあ、誤解されたままだと色々アレなので、解けるに越した事は無いのですが。
 「ダークの破壊部隊二人目ーーー!!」
 デンジエンドでマンティスを木っ端微塵にしたキカイダーは、首とか掲げそうな勢いで敵将討ち取ったりと勝ちどきを上げ、 特にそういう認識にはなっていないと思うのですが、差し向けられる刺客を全て返り討ちにしてみせると抜け忍物みたいな薫りも漂わせつつ、 今回も置いてかないでジローエンド。
 基本は、西部劇や股旅物の作法をそのまま持ち込んでいるのでしょうが、「去って行く」事により、特定の社会構造に属さず常に 「外から来る」ものとしてヒーロー性(超人的神性)が強烈に発生する機能もあるのだろうな、と。
 次回――70年代に悪の組織に狙われがちな伊東温泉、早くも登場。

◆第3話「呪い オレンジアントの死の挑戦」◆ (監督:北村秀敏 脚本:伊上勝)
 「教えてやろう。ダーク破壊部隊の一番の暴れ者、オレンジアントだ」
 冒頭から、笛の音に導かれるように不気味な蟻の怪人が出現し、その性能テストにより、蟻酸を吐きかけられて盛大に崩壊する灯台。
 海辺でレジャー……ではなく多分サバイバル中のジロー一行は、波間を漂う灯台守妻 (果敢に蟻に立ち向かうも蟻酸で溶かされた灯台守夫は、後の結城丈二……?)を発見する事でオレンジ蟻の暴虐を知り、 その蟻はダークの為に人間狩りの真っ最中。
 逃げようとした男が背中に蟻酸を吐きかけられると、いきなり炎上爆発する刺激的なシーン……の背後にずっと見える、 「ホテル暖香園」の看板(笑)は多分、タイアップ。
 アンドロイドマンは「ダーク!」「ダク!」「ダーク!」の連呼で意思疎通するように……と思ったら、普通に「なんだ、 マネキン人形か」と喋ったので、単なる移動中の掛け声だった模様です。
 人間狩りに巻き込まれた服部と少年がさらわれようとしたその時、ギターのジローがホテルの上にすくっと立つとダーク構成員を蹴散らすが、 本日も笛の音に苦しめられて、ナレーションさんによる基本設定の解説。
 「ふはははははは! プロフェッサー・ギルは、音波笛のサイクルを、今までの10倍にアップした!」
 え……? 今までの10倍のペースで、吹くの……?(例えば一日2回だったところを、一日20回……?) と最初思ったのですが、恐らく周波数の単位、現在でいう「ヘルツ」の事で、出力を上げた、みたいな話でしょうか。
 かさにかかるオレンジ蟻だが、今回も巧妙な参ったフリをしていたジローは、不意を突いての反撃から、スイッチオン。
 「ダークが破壊活動し、罪なき人々を困らせる限り、俺は戦う。それが光明寺博士から授かった、俺の使命だ」
 キカイダーのヒーローとしての行動原理は、あくまでも創造主にインプットされた使命に基づくものと語られる事でロボット性がアピールされ、 この点においては、キカイダーとダーク怪人との表裏一体の鏡像としての関係性は、『仮面ライダー』よりも強いといえるでしょうか。
 オレンジアントの強力な蟻酸攻撃を前に、さしものキカイダーもボディを溶かされて苦しむが、チョップで腕を破壊すると蟻は逃げだし、 両者痛み分け。
 ミツ子は、戻ってきたジローに光明寺博士が予定していた良心回路の最終調整を行おうとするが、躊躇無くボディをめくるミツ子と、 ジローの非人間性(ロボットの回路部分)を目の当たりにしたくないマサルの微妙な温度差が描かれ、 目を覚ましたジローは回路が完全になる事を拒否。
 「俺は今のままで充分だ。余計なことはやめてくれ」
 「止めないで。お父様はあたしに……」
 「光明寺博士の良心回路は不完全かもしれない。だが、その不完全さを俺の意識のコントロールで補っている。もう大丈夫だ」
 ジローが、完全なシステムを与えられる事よりもむしろ、不完全さを自らの意志と精神で補えているところにこそ、 己の自由意志とアイデンティティの存在を感じているのは、面白いポイント。
 ……まあ、気合いでなんとかなっているから大丈夫、と不具合の故障を拒否するロボット、と考えると凄く怖いですが(笑)
 「お願い。あたしにやらせて。完全な人造人間になって」
 「ミツ子さんの願いもそれだけは聞けない」
 一方のミツ子は、父に託されたという思いも含め、完全な人造人間になる事こそが“正しい”と感じているが、 ジローは繰り返しそれを拒絶。
 「何故なの? お父様もきっと、あなたが完全になるのを願ってるに違いないわ」
 「光明寺博士も? どうして?」
 「どうして、あなたに「ジロー」と名付けたかわかる?」
 「いや」
 「……ホントは、あたしたち兄弟に、兄が居たわ。名前はタロウ」
 ……シンプルで大変わかりやすいのですが、今聞くと、お供を手足にしそうだったり、芸術を爆発させそうだったりで、 大変微妙な気持ちになってしまう2022年・夏(笑)
 「そうか。それで、俺の名がジローなのか」
 タロウは山火事から村を守る為に死去しており、その山火事を起こした組織こそがダーク、と光明寺家との因縁が語られ、 己が死者を模した存在だと知らされたジローの胸中はいかばかりか。
 「ジロー、お願い。良心回路の最後の部品をセットさせて!」
 「……俺は……俺は……あくまで一人の男として、貴女に接してきた。人間のつもりで。……俺のその体の中は、 心臓の代わりに動力エンジン。頭脳がコンピュータ。……わかっているが見て貰いたくない」
 「ジロー……」
 そんな事を言われても、おしめを変えるどころかネジと銅線だった頃から知っているのよ、 と微妙な空気が漂ってジローは一人切なく波止場でギターをかき鳴らし、第3話にして、 某イチロー兄さんの100倍ぐらい、情緒が発達してデリカシーの観念を持っていますジロー!
 これがイチロー兄さんだったら、爽やかに笑いながらマサル少年の目の前で胸のパネルをぱかっと開けて、 「よぅし、ひと思いにやってくれミツ子さん!」と言い出しかねないところなので、良心回路とは何か、完璧な人造人間とは何か、 人は何故、神を真似て自らの写し身を作り出そうとするのか。
 前回の弱点説明に続き、かなり早い段階において、割と長めのやり取りを用いて、 人造人間としてのジローの心情・周囲の視線とのギャップがハッキリと言葉にされて、他作品との差別化の意識が見えますが、 ふと気になって確認してみたらこの時期の伊上さん、東映ヒーロー作品に限っても 『仮面ライダー』『超人バロム・1』『変身忍者嵐』そして今作を掛け持ちしているので、脚本の立場からしても、 早めに主人公の特性と方向性を明示しておきたい、という事情もあったのかもしれません。
 伊豆シャボテン公園でオレンジアントの痕跡を発見したジローだが待ち伏せを受け、 サイドマシーンに潜り込んでいたマサルを連れて一時撤収。そこにダークの破壊部隊が迫るが、服部の助けもあって反撃開始で、 ED曲に合わせて戦闘開始。
 このED、何が好きって……
 ギターのパンチでぶちたおす
 が最高に好きです(笑)
 ギターは大事な打撃武器!
 地中から毒針攻撃を受けるキカイダーだが、チョップ投げそしてデンジエンド! により今回は派手な爆発でアントは吹き飛び、 蟻酸によって終始キカイダーを苦しめた上、頭脳に致命的な欠陥もなく、割と有能な怪人だったのでは、オレンジアント。
 サイドカーにミツ子とマサルを乗せてジローは伊東の街を去っていき、冒頭で拾った灯台守妻の出番は特になく (あのまま死んだ……?)、ダークの人狩りで生き別れになった母子はごくごく薄いフレーバーで再会し、 終わってみると「街を襲うオレンジアントを倒しました」以外の要素は特に何も重視されていない、という凄い内容でしたが、 その合間に語られるジローの自意識こそが、今回の主題だったでありましょうか。
 3人は光明寺博士を探し求め、果てしない戦いの道を行き……恐らく本編内容に対して尺が長すぎる為、ひたすら煽り文句を叫び続ける、 みたいな事になっている次回予告は、今後どうにかなるのか?!

◆第4話「悪魔のブルーバッファローが罠をはる」◆ (監督:北村秀敏 脚本:伊上勝)
 なんだか、久々に見た気がします……導火線。
 光明寺博士の所有していた船を探して海から飛び出すブルーバッファロー(可愛い)
 そのヨットはイチローたちが仮の宿として利用していたが、ダークに見つかり爆弾を仕掛けられてしまい、開幕早々、 爆弾抱えて海の藻屑となるジロー。
 一方、ブルーバッファロー(可愛い)はダーク組織による性能プレゼンとオークションの真っ最中であり、 火炎放射にも機銃掃射にも10万ボルトにも500トンの鉄球にも耐えるそのボディ!
 ダークは密かに世界各国に高性能アンドロイドを売りさばき、 血反吐を吐きながら続けるマラソンを演出する死の商人として組織の活動資金を稼いでいた事が明らかになり、世界に羽ばたく、 「KAWAII」。
 やや間の抜けた顔立ち・大きめの頭部・全体的にずんぐりとしたフォルム、と悪魔のブルーバッファローのデザインが絶妙に可愛いのが、 今回の大きな見所です。
 娘が事故に遭ったとニュースを耳にした研究員の女性が脱走し、服部と遭遇して一騒動の後、 伊豆シャボテン公園に逃げ込んだ女をアンドロイドマンが追いかける観光パートが入り、響き渡るギターの音色。
 「奴だ! 光明寺の人造人間だ! 探せ……! 探せぇ!」
 周囲を探るダーク破壊部隊だが、海の藻屑になったと見せてアンドロイドマン4号と入れ替わっていたキカイダーが華麗に女性を救出し、 意外と、必ずしもギターを弾く事にこだわらないスタイル(笑)
 女性を服部に託したジローは、腕を怪我した少女をダーク誘拐部隊から救出するが、 牛に脅された服部は命惜しさと札束に目がくらんでジローを裏切り、まあ死んだらコンティニューできないのでやむを得ないとはいえますが…… ついでに一儲けしようとして好感度を下げてくる、ある種のねずみ男ムーヴ。
 母親の元へ向かったジローと少女は、人造人間処刑用エレベーターに閉じ込められると、 笛の音で行動不能のままミンチの危機に陥り……不完全さをコントロールする俺の意識が足りてない!
 そこに服部の車のクラクションが響いた事で笛の音の周波数が乱れ、チェンジに成功したジローはエレベーターを脱出し、 さすがに服部の存在をフォロー。
 キカイダーは垂直壁登りを披露すると牛の元へ辿り着いて主題歌バトルに突入し、 牛の踏みつけを回避するとサイドマシーンに乗り込んで急ターンから戦闘員を追い散らし、ブルーバッファロー(可愛い)を……轢いた!
 ブルーバッファロー(可愛い)……耐えた!
 サイドマシーンごと放り投げられるも空中回転で再び着地したキカイダーは、牛角爆弾を回避し、 ダブルチョップ・大車輪投げ・デンジエンド、の基本コンボで可愛いを谷底へと葬り去るのだった。
 母子は無事に再会し、上官が早退届を認めればこれほどまでの騒動にならなかったのではないか?  それともダークにさらわれた軟禁状態だったのか? などマサルくんの時と同様、 小学生の子供を家に残してダークで働いている人々の福利厚生がどうなっているのか大変気になりますが、 次回――またも、可愛い路線!

◆第5話「イエロージャガーの魔の手が迫る」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 見所その1。
 「ミツ子たちもダークなんかに狙われて大変ね」
 ……まあ、秘密組織ダークの全貌は未だ世に知られていないという事なのでしょうが、軽い調子で衝撃の一言(笑)
 見所その2。
 怪我の治療の為に体液を提供するジロー。
 ダーク破壊部隊に追わされた傷には普通の薬は効かない、との事ですが、特にそれ以上の説明はなく、ダークの里の忍びの毒は、 ダークの里で生まれ育った忍びの血でしか治せない、みたいな感じでしょうか。ダークの里に生まれ育ったものは、 谷に出る特殊なガスへの耐性がついているのだ的な。
 次作『01』ではメインライターを務める長坂秀佳が参戦し、いきなり大がかりな爆発シーンから始まって、何事……?  と困惑していると、巨岩を砕いて現れたのは、ダークの火炎放射忍者・イエロージャガー(可愛い)。
 前回のブルーバッファローに続き、これまた絶妙に“可愛い”のですが、つぶらな瞳と顔の大きさのバランスでしょうか……あと、髭。
 東京緑化計画を進める都市デザイナー、サクマ・ミキ(ミツ子の友人)の命を狙うイエロージャガーだが、 手始めに現場作業員を何人か焼き殺してきました! と報告したところ、標的の警戒度を無駄に引き上げてどうするのこのスカポンタン!  とギルにお仕置きサンダーを食らい、現場指揮を任せて良い人材なのかどうか、非常に不安が募ります。
 「今すぐにでも、このサクマ・ミキを殺してくるのだ! ……殺せ……殺せ殺せ、殺せ! 殺せ殺せー、殺すのだーーー!!」
 雑兵の首なぞ幾らあっても飯の種にならん、狙うは大将首ただ一つじゃー、とギルは改めてジャガーに命じ、 ここまでほぼ顔のアップだけだったプロフェッサー・ギルに焦点が当たるや、怒濤の「殺せ」コールで少々、 精神の不安定さを感じさせる危ない描写。
 かくして標的であるサクマ・ミキとその弟、そして二人の元を訪れていたミツ子とマサルの前に現れる、イエロージャガー(可愛い)。 だが、ミキの焼死体が生まれる寸前にギターの音色が響き渡り、今日はさくっとスイッチオン! 1・2・3!
 「ダーク破壊部隊だな!」
 「ははははははは、その名もイエロージャガー!」
 「……とうっ!」
 「む?!」
 「この勝負、預けておく!」
 …………救助の目的は果たしているのですが、変身から逃走まで約28秒の早業で、チェンジは囮。
 キカイダーの介入を知ったギルは、小型爆弾を内臓した死神ベルトをジャガーに預け、ジローに迫る卑劣な人間爆弾の罠。
 「しめた! あと5秒であのベルトが爆発する!」
 だが、そもそも半平が怪しい、というジローの名推理により、作戦は失敗。
 「くそぉ……しくじったか」
 今回、プロフェッサー・ギルの出番増量キャンペーンなのですが、やはり首領たるもの、小さな事に一喜一憂すると格が下がるな、と(笑)
 (ジロー……おまえはこの笛に従わねばならん。ダークに生まれたものはダークに帰れ。サクマ・ミキを襲うのだ)
 だがギルは二段構えの作戦として悪魔の笛を吹き鳴らし、この辺りやはり、抜け忍物というか、 「悪の組織」と「ロボット」にカスタマイズされていますが、足抜けは許さぬ! 一族の掟に従え! 的な構造を感じます (そう考えるとプロフェッサー・ギル、忍者軍団の頭領めいた見た目ではあり)。
 特に今作の場合、今のところ「悪の組織の作戦」を中心にエピソードが展開していないので、 ダーク側の「ジローへの意識の強さ」の方が目立つ作り。
 とはいえ、笛の音と良心回路のせめぎ合いを定番のピンチ演出だけではなく、 ダークの作戦目標と繋げた一石二鳥の狙いとして組み込んだのは一工夫となり、サクマ・ミキの首を絞めてしまうジローだが、 水中ダイブからのチェンジ・スイッチオンでなんとか窮地を脱すると、イエロージャガーと激突。
 やけに長い尻尾でも可愛いをアピールしてくるとは許さん! と躍りかかるキカイダーだが、それこそ、 可愛いと見せかけて実は火炎放射器! の巧妙にして悪辣な罠であり、尻尾の先から飛び出す炎にあぶられるキカイダーは、 なんとかそれを切断。
 最後は自ら死神ベルトを身につけて相打ちを狙うジャガーを空中デンジエンドで撃破し、光明寺博士を探す旅はつづくのであった。
 次回――可愛くない、というか、なんかヤバい。

◆第6話「ブラックホースが死刑場でまつ」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:伊上勝)
 「只今より、コースを変更いたしまして、ダークの実験場にご案内いたします」
 ダーク印の観光バスが大量の乗客をまとめてさらい、角を生やし真っ赤な目を輝かせたダークロボット・ブラックホース(ヤバい) が体当たりや蹄鉄クローで集められた人々を次々と襲う虐殺シーンでスタート。
 この映像はプレゼン資料として殺人アンドロイドを求める世界各国に送られ、着ぐるみの特性を活かし、 馬の頭を人間の頭部より高い位置に据える事で、長い首と、狂奔する暴れ馬の姿を表現するブラックホースの造形が、 なかなかのインパクト。
 一方、ダークを脱出した光明寺博士が記憶喪失になっている急展開で、 自分の名前さえ忘れながらもダークの追跡部隊から逃げる博士は、非常階段を利用してビルを外側からよじ登る身体能力(物事の基本は、 体力……!)を見せると、いかなる運命の悪戯か、服部探偵事務所に迷い込む。
 博士の身につけていた結婚指輪を依頼料として逃走を手助けする事になった半平は、競馬場のダートコースを疾走し、 車から飛び出すと何故か勝負服を身につけている謎のサービス(笑)
 追っ手を引きつけるもブラックホースに捕まってしまう半平だが、スタンドの高いところでジローがギターをかき鳴らし、 客席前方をサイドカーで走り回る映像が、とても72年です。
 競馬場というと、私の見た範囲では『ジライヤ』『カーレンジャー』でも撮影に使われていましたが、 今回は馬の怪人繋がりという事なのか、再びコース上での追いかけっこの末に、電子破壊蹄鉄が繰り出され、あ、 け、競馬場が……!!
 なんて事をしてくれるんだダーク。
 Aパートのラストに瓦礫の下敷きにされるキカイダーだったが、Bパートの冒頭からさらっと登場してなんのピンチも無かった事になり、 服部探偵事務所で合流した一同は、半平の依頼人が記憶を失った光明寺博士だと確認。
 「返す、返さなければ、男じゃないよ」
 ミツ子とマサルは、自分が何者かを追い求める光明寺博士とはニアミスしてしまい、博士から依頼料として受け取っていた結婚指輪が、 姉弟の母の形見と聞くと、さすがに返却する半平。
 前回、車のハンドルをなめ回す変態行為を繰り返した挙げ句、詳しい事情はわからないにしても、 5万円欲しさに胡散臭い依頼者から受け取った胡散臭い道具をよく確認せずに子供に渡し、 危うくジローと4人の女子供を爆殺するところだっただけに、半平の人間性に多少のフォローが入ってホッとしました。
 また、〔報酬となって半平の行動原理を曲げない → 行き違いになったが、本物の光明寺博士が居た証拠となる → 返却により半平の株を上げる〕と、小道具としての指輪の使い方が鮮やか。
 プロフェッサー・ギルは光明寺博士を見つけ出す為にミツ子とマサルを利用しようとし、 ダーク観光バスを追跡するも悪魔の笛の妨害を受けるジローだが、ギルが鼻の頭のかゆみに耐えられなくなった一瞬の隙をついてスイッチオン (笛が止まった理由が全く説明されないので、各自で捏造して下さい!)。
 キカイダーに変身するとダークのジープに貼り付いてアジト侵入に成功するが、そこで待ち受けていたのはブラックホース。
 ミツ子とマサルを人質にされ無抵抗で攻撃を受けるキカイダーだが、半平が二人の救出に向かい、これまでの負債をまとめて返す大健闘。
 それを確認して反撃のターンになるや否や、キカイダーが走るのに合わせてカメラがかなりのスピードで右に動く演出が状況の切り替えとして大変格好良く、 キカイダーはアンドロイドマンを次々となぎ倒していく。
 「忍法縄抜けの術。とう! 俺の役目はこれで終わり」
 ミツ子とマサルの元に辿り着いた半平は本当に手も触れずに縄を解き、ここでスケベ心とか出されると、 見ていていたたまれない気持ちになる事請け合いだったので回避されて良かったですが、 「忍法」の名の下に微妙に何でもありになっていきます(笑)
 「処刑されるのはおまえだ、ブラックホース!」
 噛みつき攻撃を受けるキカイダーは、パンチの連打から大車輪投げ、 そしてデンジエンドと蹄鉄の合わせ技によりブラックホースを消し飛ばし、またもダーク破壊部隊を退けるのであった。
 光明寺博士を探しながらダークの追っ手を退けていた筈が、何故か光明寺家に戻っていたら光明寺博士から電話がかかってくる、 という飛躍の激しい新展開(?)となりましたが、博士は博士でダークからは逃げ出すも記憶を失っており…… 娘よ、本当のヒロインになりたいのなら、この父を超えてゆけ!!
 次回――またまた出てきてしまう、可愛い悪の手先にご期待下さい。
 ……ところで、プロフェッサー・ギルの部屋に並んでいる、この顔↓のロボット
 ○ ○
  △
  □
 気になって仕方が無いのですが、72年としてはむしろこれがアイコン的にわかりやすかったのか……?

→〔まとめ2へ続く〕

(2023年5月7日)
戻る