■『キカイダー01』感想まとめ8■
“夕陽が 沈む地平線
手を振りながら 今日もまた
悪を倒して 颯爽とゆく”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『キカイダー01』
感想の、まとめ8(42話〜46話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕
- ◆第42話「同志討ち 火を噴く影法師銃」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
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シャドウ組織が7年の歳月を費やして作り出した影法師製造機は、光線を照射したあらゆる影に命を与えて実体化し、
それを3分間だけ影法師ロボットにする事が可能であり、なんでも「ロボット」と言えばいいと思っているのが、
実にシャドウ。
そして、全身黒ずくめ+大きく「影」と書かれた黒覆面、を「影法師ロボット」と言い切る姿勢が、実に『01』。
「oh、ワンダフル……」
何故か前回から英語路線になったビッグ社長へのプレゼンは続き、影法師ロボットの戦闘力は、影を作り出した本体の2倍の強さ!
そしてその心は、本体とは正反対。
つまり、仮にゼロワンから影法師ロボットを作り出す事が出来れば、3分間限定ながら完全邪悪の最強ロボットを生み出せる(筈)なのだ!!
この作戦を聞きつけたワルダーは、殺し屋と武人のプライドにかけて中止を要請するが、だったら先にゼロワン倒せばいいじゃん、
と社長に冷たくあしらわれ(ここまでのところ完全に給料泥棒なので致し方ござらぬ)、
一方のイチローはシャドウマン&影法師ロボとの連戦を繰り広げていた。
本日も軽快に悪を滅殺していくイチローだが、チェンジしたその瞬間にゼロワン・カゲを作られてしまい、
胸の太陽電池プロテクター部が真っ黒になった自らの影が最強の敵に! 基本はオーソドックスなコピーアイデアなのですが、
これまでのゼロワンがゼロワンだけに、脅威感は物凄い事に(笑)
ゼロワンが自らの影と取っ組み合いの死闘を演じている頃、影法師ロボに襲われるも命からがら逃げ延び、
その後にミサオらと知り合いになった少年の家にどういうわけか影法師製造機が送り込まれ、
少年の母親から誕生した影法師が少年をさらい、ゼロワン影との戦闘がスキップされたイチローが駆け付けて「遅かったか……」と呟く、
前後の話が全く繋がらない『01』超編集が久々に炸裂。
何が凄いって、主人公ヒーローとコピーヒーローの激突! という一大スペクタクルが、
次元の狭間で消化されてしまうのが、凄まじい(笑)
その頃、マリもまたシャドウマン&影法師ロボットの部隊に執拗な襲撃を受けており、長めの尺を採った生身アクションで大暴れ。
マリの疲弊を見計らってハカイダーが現れ、チェンジビジンダーした所に影法師光線を浴びせようとするが、
笛の音と共にワルダーがその間に割って入る。
「邪魔をする気かワルダー!?」
「邪魔はいたさぬ。拙者そういうやり方を好まぬ」
ハカイダーを挑発したワルダーは自ら影法師光線を浴び、誕生する首から下が黒塗りのワルダー・カゲ。
「見よ、正義のワルダー・カゲが誕生したぞ」
「くそぉ……くたばれぃ!」
ワルダー影に殴りかかるハカイダーだが相手になるわけがなく叩きのめされ、
ワルダー二倍パンチを受けて命乞いポーズを取ったところを投げ飛ばされて、無様に退場。
その間に疲弊したビジンダーを逃がそうとするワルダーだったが、それを止めたワルダー影が照射した影法師光線により、
手袋が黒に染まったビジンダー・カゲが誕生してしまう。
「ワルダー・カゲ! おまえは善の心の持ち主ではないのか?!」
「ふふ、俺には何が善で何が悪なのかわからん。勝手気ままにやりたい事をやるまでのことだ。ふふふふふふふふ……」
光と影のビジンダー対決が始まり困惑するワルダーだが、善も悪もない虚ろな心の鏡像は、
己の生き様に対する矜持を失った怪物でしかなく、ワルダーが、善も悪もわからない殺し屋ロボであるならばせめて
「悪」でありたい己自身と、一方でその鏡写しとなる「善のワルダー」を見てみたい、
という二つの望みを同時に打ち砕かれるのが、実に痛切。
「……何が悪で、何が善なのかわからぬ。影までが、拙者の影までが中途半端な心を持つとは……ええぃ……拙者、
せめて犬ほどの善悪を見分ける心が欲しいんじゃ」
ワルダーは拳を震わせ嘆き、コピーロボットアイデアの最大の焦点がゼロワンでもビジンダーでもなく、
虚ろな人形に善と悪の心とは宿りうるのか? というワルダーの葛藤に繋げられる一ひねりで、
ワルダーを描く長坂さんの筆は本当に活き活きと加速しています。
純粋正義としての主人公ヒーロー像はそのままに、ライバルロボットを用いて内面との対話を描くアプローチが、
見事にはまる事に(80年代曽田戦隊の作劇に繋がっていくともいえるのか……?)。
アキラとヒロシは、ビジンダー影との戦いの末に気絶したとおぼしきマリを発見し、イチローはマリを修復。
ミサオがそんな二人の姿に嫉妬の炎を燃やす要素は継続して拾われるのですが、毎度アキラとヒロシに混ぜっ返されて終わるに留まり、
この3人を絡めて話がとっちらかるよりも、人造人間コミュニティ中心に描いていた方が構成がすっきりまとまるのは相変わらずなのですが、
なんだかんだと40話台まで顔を出し続ける事に。
「行こう。……たとえ勝てぬとわかっていても、行かなければならないんだ。……それが使命なんだ」
子供をさらわれ悲しむ母親にも、「全力は尽くします」と勝利を確約できないまま、イチローとマリは、少年を救うべく、
影法師製造機を構えて待ち受けるハカイダーの元へ。少年を人質にされ、再び影法師と戦う事を余儀なくされそうになった時、
義によってワルダーが助太刀に入るが、ハカイダーは数話かけて手なずけていたらしいシェパードを口笛により召喚し、
ワルダーは敢えなくフリーズ。
ところが、ハカイダーの発射した影法師光線はゼロワンとビジンダーにかわされてワルダー影を生んでしまい、
ワルダーと正反対のワルダー影は、犬には超強気だった、という犬に酷い展開。
ハカイダーは、7年の歳月を費やして作り出した兵器を放置してとんずらし、発生機は無慈悲にブラストエンド。
……ええとなんか、発生機の爆発時に「うわぁ!」と絶叫が聞こえたのですが、画面の外でハカイダーが消し飛んだのか、
実は影法師製造機ロボだったのか、世界的オカルト結社シャドウの謎は深い。
ワルダーは前回会得した奥義を応用し、空中二回転からの飛び道具で自らの影を撃破。果たして、“生きている”とはなんなのか、
自らと影の違いに何かを見出したのか否か、ワルダーは何も言わぬまま、ゼロワンとビジンダーに背を向け、去って行くのであった……。
お互いを思いやりながらも擦れ違ってしまったゲスト母子の仲は無事に修復され、マリとイチローの、戦いの旅路は続く。
ナレーション「だが、マリの心は寂しい。マリは知っている。人間でない我が身の哀しさを。微笑んでくれマリ、
見せてくれビジンダー、あの太陽にも負けない、輝くような笑顔を」
ビジンダー登場後のナレーションさんは、基本的に二次創作が入り気味で、ちょっぴり心が不安定。
ナレーション「いつの日か、きっといつの日か心から笑える日が来る。走れイチロー、行けゼロワン。シャドウとの、
遠く長い戦いの道を」
ですが、そこから流れるようにまとめてくる名調子は相変わらずで、嫌いになれません(笑)
次回――そこはかとなく見覚えのある顔の人が大暴れしている影響か、かつてなく、予告のイチロー兄さんの出番が少ない!
- ◆第43話「ビジンダーに恋した若者」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
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「なに? 我がシャドウの石油タンクが底をついてきただと」
円盤兵器だの空中戦艦だの、大盤振る舞いを続けてきたシャドウの家計が大ピンチだ!
「「残念ながら、この石油危機は世界的なもの。シャドウだけが例外というわけには参りません」」
いやいや計算ミスではないのです、と責任を世相になすりつけるザダムですが、オイルショックを影で操っているのでもなければ、
それを利用して一山当てるわけでもなく、その影響の直撃を受けて戦略に致命的な支障を来すのが、さすがシャドウ。
キカイダー兄弟の脅威が間近に迫る今、新戦力投入不能というこの組織存亡の危機に、しかしザダムはいちはやく手を打っていた。
・ロボットにとっての石油とは、人間における血液のようなもの(喩えとしてはまあわかる)
・石油に代わる無尽蔵のエネルギー源を見出せばいい……それはすなわち海水!(みんな一度は考える)
・そして海水には塩分が含まれている(……何やら雲行きが怪しい)
・人間の血液にも塩分が含まれている(……大変雲行きが怪しい)
・つまり、海水を血液代わりにするロボットを作ればいいのだ!(どうしてそうなった)
石油=血液=海水、という二重の見立てが行われており、発想が完全に呪術なのですが、
今回登場するアクアラングマン(ダイバースーツ+フルフェイスを、ロボットと主張)の見た目といい、
死体を動かしているものを「ロボット」と呼称しているのではないか、シャドウ組織……。
父を殺したロボットに強い憎悪を抱く少年と出会ったマリは、アクアラングマンに襲われたところを通りすがりの青年・英介
(演じるのは、千葉真一の弟にして、『仮面ライダー』の滝をはじめ当時の諸作でサイドキック的な役柄を務める千葉治郎)
に助けられるが、その英介もまた、ロボットに父を殺された過去と、ロボットへの強い憎しみを抱えていた。
「俺はな、ロボットが許せねぇんだ!」
「何故だ!? 理由を言え!」
「理由? それはおまえがロボットだからだ!」
自分を助けたゼロワンにさえ背後から襲いかかる英介の近視眼的で激しい憎しみは、子供番組としての単純化が、
かえってストレートに様々な事物を代入可能にしており、時代を超えて突き刺さるやりとり。
……まあ、『01』世界におけるロボットの許容のされ方が全くわからない事もあり、風刺としては粗削りには過ぎますが。
英介が好意を向ける“人間としての”マリの虚像を守ろうとするビジンダーだが、英介はマリが海底基地にさらわれたと早合点。
アクアラングマンの魔術回路が上手く働かないのは人体の構造把握が不十分だからだ、と解剖サンプルとして少年がさらわれ、
二人を助けようと海底基地に乗り込んだ英介は、そこで父を殺したハカイダーの姿を見る。
「この野郎……!」
「バカめ……俺は人間にやられるほど弱くはないわ!」
切れ味最高潮、ハカイダー捨て身のギャグが炸裂し、しばらく空手タイムの後、いよいよ真打ち登場。
「アクアラングマン! お前達はこの海底工場と一緒に死んで貰うぞ!」
ゼロワンとビジンダーがアクアラングマンと海中戦を少々行い、海底基地は尺が埋まったので的に謎のビームでいきなり爆発(笑)
命を助けられた英介と少年は、良いロボットも居るんだな、と宗旨替えをするが、英介の想うマリを、そして、
英介に想われるマリを壊したくないマリは、正体を秘密にしたまま頑なな態度で去って行くのであった……。
ナレーション「アクアラングマンは倒した。それを作り出す海底ロボット工場も爆破した。だが、マリの心は何故か寂しかった。
自分が人間ではないせいだ。負けるなマリ、おまえほど素晴らしい人造人間はいないのだから。――そしてイチローはゆく。
どこまでも果てしない、シャドウとの戦いの道を」
ナレーションさん、温度差ありすぎ(笑)
「……ゼロワン殿、御貴殿との果たし合いの日はちこうござる。見ていてくだされビジンダー殿、拙者必ず、ゼロワンに勝ち申す」
嫉妬のあまりビジンダーへの刃傷沙汰に及んでいたワルダーは、気がつけば「ゼロワンを倒す事で、
自身のアイデンティティを取り戻してビジンダーにそれを認めさせる」事へ目的が移行しているのですが、基本的にワルダー、
バグを発生してしまったロボットなので、バグの作用が(不完全な)良心回路の存在に似ている →
完全な良心回路を持つゼロワンの撃破=バグの除去(及び、“同じバグを抱えた”ビジンダーの救済)、というすり替わりと思い込みは、
納得のできる範囲。
次回――
「次々と、運送用蜜柑を襲うシャドウ」
「名付けて、シャドウの買い占め」
「だがこれは、底知れぬ悪の才能を持つ、ハカイダーの計算通りであった」
あくまでシリアスな次回予告が圧倒的に一番面白かった案件になってしまいましたが、
単発ゲストとばかり思ったら連続出演となった英介については、次回まとめて。
- ◆第44話「ビジンダーの美しく悲しき別れ」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳)
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運送トラックを襲撃する、ハカイダー一味!
「はっはっはははは、トラックに積んである全ての果物は、このハカイダー様が買い占める」
え?! この対応でお金払うの?! と思ったら勿論そんな筈はなく、運転手等を撲殺。
「見るがいい! これが俺の買い占めだ!」
無辜の一般市民を相手に武装強盗を成功させると、洒落た事を言ってやった風情で虚空に向かって勝ち誇り、
久しぶりに冒頭から登場したハカイダーの頭の配線の具合が絶好調でクライマックス。
だがそれは、日本全国の果物を品不足に陥らせる、シャドウの遠大なる買い占め大作戦の始まりに過ぎないのであった!
「ははは、これで子供たちは友達を憎み、他人を信用せず、自分の事しか考えない子供になる。これこそシャドウが期待する人間像だ。
この子供たちが成人すれば、必ずこの国を、いや、全世界を滅ぼしてくれる」
やたら長期計画、割と他力本願、と2クール目の半ばぐらいにありそうな作戦の順調な進行にビッグ社長は大喜びし、醜く、
というか、笑みを浮かべて楽しそうに果物を奪い合う子供たち(笑)
もしかしたら事務所に所属している子役というわけでなくスタッフの身内だったりする可能性もありますが、
没入感も切迫感も皆無の映像になってしまい、幾ら何でもという出来。
そして、前回あれだけ念押しして別れたマリと英介は開始5分で道でばったり出会ってしまい(特に劇的な演出なし)、
その英介はAパートでハカイダーに投げ殺され、ダッシュがマッハでアクセル全開。
ビジンダーはエネルギーのほとんどを消費する事で、心停止した英介の蘇生を試み、成功。
それを知ったワルダーは嫉妬に猛り狂って勝手に失恋し、果物を巡って争っていた子供たちは、誠意を込めた説得により仲直り。
シャドウの作戦が、未来を担う子供たちを標的としている事で、子供たちの仲違いと仲直りに焦点が当てられるのですが、
「昨日まで親友だったのに、たかが蜜柑を巡って争うなんてそれが悲しい」
みたいなやけに説教くさい言い草を少年がたどたどしく口にする場面が単純に面白くない上で、
そこに主人公が介入して説得力を補強するわけでもなんでもないまま妙に大人びた理屈に子供達が頷いてしまう目が白黒する成り行きで、
宇宙人ロボ回とは正反対の有様に。
ハカイダーが、少年が信じる父親(青果店主)の倉庫にこっそり大量の果物を運び込んで親子の間に不和を引き起こす、
というのも全く意味不明で(マクロな作戦をミクロな親子の間で行っているといえば行っているのですが、リスクがあまりにも大きすぎて……)、
イチローの機転により大安売りされる事になったそれらの果物が爆弾や劇物にすり替えれているような事もないまま、
イチロー&マリ&英介は、ハカイダーとの決戦に臨む。
イチロー&マリは、ハカイダーの相手を敢えて英介に任せ、ハカイダーのクイックドロウをキック一閃で阻む英介はつまりアクアラングマン、
もとい、一度死んだ体にビジンダーエネルギーを注ぎ込まれて生まれ変わった乙女の体、英介ダーがやらねば誰がやる!!
(軽い、今日の俺は体が軽い! ハカイダーのパンチが止まって見えるぜ! 食らえ必殺、カラテダイナミック!!)
ハカイダーと互角の戦いを演じる英介ダーは、はたき落としたハカイダーショットをマリからトスされるとそれをぶっ放し、
直撃を受けたハカイダーは空中クライマックスジャンプで大爆死(13話ぶり4度目)。
「英介さん……あなたはこれでも私が好きですか?」
マリは追いすがる英介の前でチェンジビジンダーして正体を明かし、愕然とした英介は、姿を消したマリの、
そしてビジンダーの名を呼び続けるのであった……。
ナレーション「心を静かに耳をすましてみるがいい。すぐそこまで来ている春の足音が、確実に聞こえる。ゆけイチロー、
進めゼロワン、その道をどこまでも」
だいぶ詩情の入ったナレーションさんがメタ的には改編期の到来を告げ、いよいよクライマックスが近付いているように思われますが、
「マリに恋する青年」という抑えておきたいアイデアはわかるものの、
なまじ千葉治郎をキャスティングしてしまったが為にゲスト青年のウェイトが上がりすぎてしまい、
色恋を軸にマリ/ビジンダーの対比存在に置かれた事で、
これまでは主要キャラの相克的存在として重要な位置づけを担っていたワルダーがあぶれてしまうという大変残念な事態が発生。
いっそ、英介の父の仇がワルダーなら、より劇的になったとは思うのですが、そうなるとハカイダーが余ってしまう事になり、
まあ、ハカイダーなら余ってもげふんげふん、といった感じでハカイダーを取った結果、
嫉妬に狂ったワルダーが自暴自棄の末に独りよがりの失恋をしてしまう羽目になりました。
“人造人間コミュニティの物語”が確立したところで、ロボットに一方的な憎悪を向ける人間がそこに波紋を投じる、
という要素そのものは面白かったのですが、全体のクライマックスを間近の一石としては持て余す事になり、あちら立てればこちら立たず、
となってしまったのは非常に残念。
また、シャドウ組織の作戦に関して、同様の食糧危機により日本国民を追い詰めていく「日本餓死作戦」
を現実のカリカチュアとして大真面目に展開し、数話をかけて追い込まれていく人々とその中で剥き出しになる人の欲望、
を丹念かつ壮絶に描いていった『正義のシンボル コンドールマン』(1975)を見た事があった為、
インパクトを感じないかつ滑稽さばかりが気になる事になってしまったのは、個人的な後先の不運。
次回――剣豪ワルダーは、最後の一花を咲かせる事が出来るのか?!
- ◆第45話「サムライワルダー暁に死す」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳)
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「「入れ、浪人武士ロボット」」
黒い着流しで顔色の悪い男達がずらりと並び(やはり、死体を動かしているのではないか……)、
もはや積極的に着ぐるみ怪人の必然性を否定していくスタイルが確立しつつある『キカイダー01』も残り2話!
そもそも、特撮ヒーロー物における「怪人」とはいったい何を意味しているのか、哲学的考察にふけりたくなってきます
(実際のところ、少年冒険物であったりモンスタームービーにおける、ある種の“奇形”としての怪人像、
というのは一考すべき源流なのでありましょうが、それが“着ぐるみ怪人”として変異を遂げた後に、
もう一度“人間に近い何か”に戻る事で、源流の時点では存在していた意味性がほとんど失われている、というのは面白いところであり)。
シャドウの開発した特殊なインクに反応し、地の果てまでも追いかけ続ける魔剣・暗殺血風刀を携えた5体の刺客がゼロワンに迫り、
必殺の暗闇斬りによって切り落とされるゼロワンの左腕!
シャドウロボがいきなりゼロワンに有効な必殺攻撃を繰り出すのが物凄い違和感ですが、発動するとゼロワンが苦しみだすので、
名称からすると、太陽電池のエネルギーを弱めるとかそういう効果でありましょうか。
ゼロワンを助けたマリは、呪いのインクを消す効力を持った初恋花を採りに向かう途中で激痛回路に倒れ、
介抱するワルダーごとまとめて吹き飛ばしてしまえ、とエキサイトする覗き魔達。
「そら、もう一つだ。ワルダー! 早く第三ボタンを外せぇ」
だがその時、ワルダーがとうとうマリの体に仕掛けられた水爆の秘密に気付き、マリを一度気絶させると、
自らのエネルギー回路を取り付ける事で、水爆を無効化。中盤のお色気路線の影響で設定されたと思われるものの、
後半に入ってお色気路線が消滅した事もあってか持て余していた感のある体内水爆がようやく落着し、だがその代償として、
ワルダーの余命は残り一週間となってしまう(ニュアンス的には、陰腹を斬った、という感じでしょうか)。
ワルダーは暗殺血風刀への対抗手段として、ワルダー家に先祖代々伝わる二振りの刀、雷神村正と風神村雨の内、
村雨をマリへと託し、もしかしてワルダー、亡き息子に瓜二つに作られたが大戦の終結と共に封印とかされていたのか。
「もし、差し支えござらぬならば、その……」
「これから私、行くところがあるの」
酷いなマリ(笑)
口ごもるワルダーをバッサリと袈裟懸けにしたマリは笑顔で歩み出し、当初は、
“表情筋の働いていない人造人間”という役作りもあったのでしょうが、化粧を変えたのか、カメラ慣れなのか、
演じる志穂美悦子さんの表情が回が進むごとに美しくなっているのは、マリというキャラクターとの良いシンクロになっています。
「拙者の身勝手、許して下され……」
自らのタイムリミットを語らぬまま、マリの行方を気にしていたワルダーは結局ストーキングしていたようで、
マリに代わって初恋花を採りに行く事を買って出ると、シャドウの罠に次々とダメージを受けながらも崖の上で高々と花を掲げ、しかし、
最後のトラップによって崖から大転落。
「ワルダー、大丈夫?」
「はは、拙者生涯の内で、今日ほど幸せな日はござらぬ」
ワルダーはマリに初恋の名を付けられた花を託し、残り少ない命で、マリ/ビジンダーの役に立ち、
マリ/ビジンダーに笑顔を向けられた事に、殺し屋ロボットとしては決して得られなかった充足を得る。
だが一方、殺し屋ロボットとしての本能を抑えきれないワルダーは握手を求めるゼロワンへと切りかかり、
互いの生死の決着をもまた望む。
「何をするんだワルダー!?」
「うるさい! 拙者の……拙者の心は誰にもわからぬ!」
日本刀を手に狂人度の上がるワルダーだが、ビジンダーにいさめられると戦闘を続行する事が出来ず、
がっくりと膝をつくと己の内に抱えた暴力衝動と戦うように刀を振り回しながら去って行き、
しかしゼロワンとビジンダーが再び浪人ロボに襲われるとシャドウ側に助勢。
段々と錯乱ぶりがハカイダーに近付いていくワルダーですが、展開の都合の消化を含め、
その錯乱状態を“存在の苦悩”と繋げる事でキャラクター化したのがワルダーともいえるでしょうか。
そういう点では、ここに来て「もう一人のハカイダー」という側面が強くなるのですが、
「もう一人のゼロワン」であり「もう一人のビジンダー」であり「もう一人のハカイダー」である、
という位置づけが物語の中で奇跡的にはまったのがワルダーであり、『01』後半戦のドラマ性を加速させてくれる得がたい存在でした。
……裏を返すと、ハカイダーは公式に狂っているという事になりますが、まあもはや、
その方がハカイダーにとっては救いではあるのかも。
再び放たれる暗闇斬りだが、ビジンダーから村雨を受け取ったゼロワンはそれを打ち破り、
攻撃力は高いが防御力は低かった浪人ロボを撃破。そして残るは、ワルダーのみ……
ビジンダーの制止の叫びも虚しく、やたら格好いいウェスタン調のBGM(これも前作ハカイダー用でしょうか)が流れる中、
睨み合うゼロワンとワルダー。
「その刀は貴様にやった刀ではない!」
「……ワルダー、おまえとの勝負、刀はいらん!」
BGMの効果もプラスしつつ、村正を構えるワルダーに対し、村雨を地面に突き立てるゼロワンの姿も決まり、
登場当初はなんて奇天烈なデザインなのかと思ったワルダーがすっかり格好良く見えるので物語の積み重ねって恐ろしい。
熾烈な戦闘になるかと思われた両者の交錯は一瞬、宙に飛んだゼロワンの左足をワルダーの一刀が切り裂くが、
ゼロワンの右足が蹴り飛ばした刀が、ワルダーの背に深々と突き刺さる。
「……俺の命はどうせあと、一週間だったが……同じ殺されるのなら、貴様の他に、殺されたい人が居たぞ」
ビジンダーへの執着を視線で示したワルダーは地面に倒れて爆発し…………あ、もしかしてワルダー、エネルギー回路を移植した事で、
ビジンダーの中で(一方的に)永遠になってる……?!
最期ちょっと、高潔で不器用な武人の伝えきれない想いを通り越して、
人造人間ならではの手段で死が二人を分かつまで密かに一体化を果たしたサイコな愛情、みたいになってしまいましたが、
サムライワルダー暁に死す……!
第37話で初登場以来、出てくる悪役が片っ端から株価を暴落させていく『01』の伝統を打ち破り、
堂々たる正統派ライバルとして後半戦を盛り上げてくれたワルダーが退場。第43−44話で脇に追いやられた事も響き、
最終的に「人造人間のレゾンデートル」テーマの掘り下げよりも、「恋愛バグの悪化」の方がウェイトが大きくなってしまったのは残念でしたが、
『01』の物語に一つの軸を生んだ、良いキャラでした。
(初恋花を取ってくれた、ワルダーが死んだ。あんなに優しかったワルダーが、死んでしまった……)
ナレーション「それもこれも、ロボットの宿命なのだろうか」
ナレーションさーーーーーーん!!
登場以来、8話ほどに及ぶワルダーの苦悩を、「それもこれも」にざっくりまとめてしまうナレーションさんが、
マリの周囲に群がる男達に厳しい。
ナレーション「マリはゆく。ワルダーのような可哀想なロボットをつくりだす悪者を、二度と許さない為に、ビジンダーは戦う。
笑ってくれマリ、微笑んでくれビジンダー。おまえのその明るい笑顔だけが、ワルダーに対する、唯一の餞なのだから」
マリがあくまでワルダーの感情と擦れ違っている一方で、そこをナレーションが掬い取る、この締めの方は、綺麗で良かったですが。
ナレーション「――そしてイチローよ、シャドウの作り出すロボットの悲劇を許すな。ゆけイチロー!
シャドウが地球上から姿を消す日の来るまで」
「そうはいかんぞゼロワン。シャドウはおまえを必ず殺す」
何やらメタ風味な調子で遂に社長自ら遠吠えタイムに登場し、次回――危うし光明寺博士で最終決戦!
けっこう片付けないといけない要素が多いけど、大丈夫かシャドウ! 大丈夫かゼロワン!
頼れるジローが復帰して真の基地破壊パワーが解放されるその時、ザダム、ハカイダー、ビッグシャドウ、
一番雑に倒されるのは果たして誰だ?!
- ◆第46話「よいこの友達 人造人間万才!」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳)
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色々と振り切ったパンチ力の高いサブタイトルですが、そんな最終話で爆死3回を披露するハカイダー。
謎の手紙に呼び出されたイチローは、光明寺家の前で同じく手紙を受け取ったミサオ・アキラ・ヒロシ(出番が……!)と再会。
そこにギターを響かせて高いところからジローが現れ、一瞬、ジローの出番だけバンクで構成されているのかと思ったのですが、その後、
普通に登場するので、単なる、人造人間の宿命の模様。
イチローはジローから、ロボット再生装置を発明して帰国した光明寺博士が行方不明になった事を聞かされ、
ジローの推測通りにシャドウに捕まっていた博士は、ハカイダーの拷問に屈してシャドウの為にロボット再生装置を完成させてしまう。
「もはやシャドウは滅びる事はない。シャドウ帝国が世界を征服するのだ」
先日、エネルギー問題から組織存亡の危機だったので、待望のエコシステム完成への喜びが真に迫ります。
博士を助けるべく基地に潜入したマリには罠が迫るがイチローによって救出され、用済みとなり囮に使われる筈の博士は、
割と自由に機械を調整していた(笑)
「なにをした貴様?! まさかこのロボット再生装置に、仕掛けでもしたんじゃあるまいな」
「何もしていない! 疑うんなら、調べてみたらどうだ」
後半戦に度々試みられた目論み通り、外部から優秀な人材を連れてきてシャドウ組織の為に働かせてみたはいいものの、
ハイテクに対応できずに誰も問題点を確認できないという恐るべき罠!
ひとまず手近のシャドウマンを射殺→再生して装置の動作を確認したハカイダーは博士を処刑場へと移送し、哀れ光明寺博士は、
ハムスターが小箱の中の餌を食べ終えると錘が外れて刃が落ちる、という時限式の仕掛けが施されたギロチン台に乗せられてしまう。
「ハムスターの餌が無くなった時が光明寺の首が飛ぶ時だ」
悪の組織のぶっ飛んだ狂気が生むホラーとスリル、というよりは、
テクノロジーよりオカルト寄りな組織のスタイルが偶発的に生み出したシニカルなユーモアといった感がありますが、
帰国早々ハカイダーに捕まる → 痛々しい負傷メイクで登場 → ひたすら張り倒される → ギロチン台にくくりつけられる →
ハムスターに命運を握られる、と光明寺博士の扱いが大変悲惨。
最終回にして、望遠機能で目が飛び出す、という隠しギミックを披露したゼロワンとビジンダーは、
シャドウ組織の大軍勢が待ち受ける罠とわかっていても、博士を助けるべく突撃を決意し、そこにジローが参戦。
「光明寺博士は僕たちの生みの親だ! 兄さん達にだけ任しておくことは出来ない」
「うん。三人の内二人が殺されても、一人が生き残れば、なんとかなる」
「ええ」
正義の人造人間達は、一人より二人で悪をデストロイ、二人より三人ならもっと悪をデストロイ、
たとえ一人になってもやっぱり悪をデストロイ、の精神を確認し合うと、ジローがチェンジ・スイッチON・1・2・3! を決め、
流れ出す、
この世に悪のある限り〜 この世に敵のある限り〜
前奏からの流れが演出として確立しているというのもありますが、やはりこの挿入歌が一番盛り上がり、最終回で使ってくれて嬉しかったです。
……タイムリミットサスペンスの鍵を握っているのは、リンゴを囓るハムスターですが!
また惜しむらくは、処刑場を確認する時点でゼロワンとビジンダーは変身済みであり、最終回に「チェンジ!」無し。
イチロー兄さんのトランペットも無し。ギターも「チェンジ!」もジローに割り当てられており、結局最後の最後まで、
キャラクターの格としては〔ジロー>イチロー〕のままであり、前作主人公の発揮するスターシステムが現役主人公を一段下の扱いにしてしまう、
という今作の抱える歪みが、そのまま通されてしまった事。
とはいえ、ゼロワン・キカイダー・ビジンダーが、挿入歌に乗せてそれぞれのマシンで突撃していく展開は格好良く、
待ち受ける銃弾の嵐の中もなんのその、悪魔の技もなんのその、3人は次々とシャドウマンを蹴散らしていき、
バイクを所持していなかった筈のビジンダーマシンは、亡きワルダーマシンの改造だったりするのか、という辺りは妄想も捗ります。
一方、基地のビッグ社長は、3人に倒されたシャドウマンを巨大掃除機で回収しては調子に乗って次々と再生していき、
重要な伏線ではあるのですが、戦闘シーンの盛り上がりのぶった切り方が、最後まで実に『01』(笑) ジローの扱いとか、
敵基地のモニター越しにヒーローの行動を見せる演出へのこだわり(個人的に、効果的な手法とは思えずじまい)とか、この最終回、
良くも悪くも実に『01』らしい集大成になっています。
ちなみに、シャドウ組織最後のハイテクは恐らく、この巨大掃除機。
地下からうにょんと伸びる吸引システムがあまり光明寺博士のセンスに見えないので、ロボット再生装置に備え付けというよりは、
シャドウ組織が付け足したオプションという気がします。
場面が地上に戻ると主題歌インストでの格闘戦に移行して、群がるシャドウマンを、殴っては蹴り、殴っては蹴る赤と青。
そして本日もドサクサ紛れにゼロワンを背後から撃とうとしたハカイダーは、
ビジンダーレーザーの一撃で木っ葉微塵(笑)
祝・最終回で雑に倒されるグランプリ獲得! と思われたが、社長がこれを巨大掃除機で回収していき、
もはや三下中の三下悪役としての地位を確立しているとはいえ、かつてのライバルキャラが、
無惨なバラバラ死体となって巨大掃除機に回収されていくという映像が、悪の末路としてこれ以上ない哀愁を漂わせます
(悪役を格好良く描かない、という点においてはこれ以上なく徹底した演出、という見方も可能ではあり)。
「ハカイダー、安心して戦ってこい」
「今度はゼロワンを倒す」
「ゆけ!」
100回負けても大丈夫、と社長によって再生されたハカイダーは再出撃し、
地上ではザダムの罠によりビジンダーとゼロワンが檻に閉じ込められ、と思ったのも束の間、
キカイダーが初披露の必殺デンジエンドにより一瞬で二人を解放し、この脈絡の無さと無慈悲な解決も実に『01』。
いよいよ博士救出まで後一歩のところまで迫るゼロワンらだが、ギロチン台の周囲には念入りに地雷が仕掛けられており、
大変不自由な姿勢でゼロワンらを押しとどめる光明寺博士は前世でいったいどんな罪を犯したというのでしょうか(※前作を見てわかった事は、
東映ヒーロー作品史上でも屈指のヒロイン力の持ち主でありました)。
「命を粗末にするな! 私は君たちをロボットとは思っていない!」
「でも、それでは博士の命が!」
「私はいい! シャドウを道連れに死ぬなら本望だ!」
拷問に屈して再生装置を作成してしまうなど、ここまで割と大人しかった博士ですが、今、凄く、70年代な事を言い出したぞ(笑)
「シャドウを道連れ?!」
光明寺博士は、ロボット再生装置に破滅的な自爆プログラムを仕込んでいた事を説明。
「あの機械が30体のロボットを再生すると、自動的に地下のシャドウ基地が大爆発を起こすようになってる!」
そう、光明寺博士は基地破壊ブラザーズの生みの親であり、すなわち、基地破壊ファザーなのである!
果たして、ハムスターが早いか、再生マシンの自爆が早いか、
足下で破滅へのカウントダウンが刻まれている事など知らずにビッグ社長は景気良く再生を続け、残りはあと5体。
ザダムは奥の手の分離術により赤と青の二体に分離し、最終回にしてアクション可能(?)な姿へと変身。
「死ねぇ、ゼロワン!」
「死ねぇ、キカイダー!」
「死ねぇ、ビジンダー!」
ついでに、もはや宿敵すら見失っておこぼれにあずかろうとするハカイダー、だが……
「ブラストエンド!」
「ぐわぁぁぁぁぁ!」
瞬・殺
「デンジエンド!」
「ぐぉぉぉぉ、うぉぉ?!」
瞬・殺
「ビジンダーレーザー!」
「のぉわ、おぉぉ……!!」
瞬・殺
最終回、一応、前作からの因縁があるハカイダー、一応、かれこれ20話ほどの付き合いになるザダム、一応、
世界的悪の秘密結社の大首領ビッグシャドウ、と片付けるべき敵が多かったので、悪には相応の散り際を与えてほしい派としては、
話の勢いで雑に処理される事を危惧していたのですが、
ヒーローの必殺技三連発により3体揃って何も出来ないまま秒でスクラップにされる桁違いの作劇
により秒速11.2キロで“雑の向こう側”に到達し、さすが『01』、凄いぞ『01』。
『01』ここに極まれり、という変な満足感を得てしまいました(笑)
「いけぃ! いけぃ! またおまえか?! ゆけぃ!!」
ザダム赤青とハカイダーはビッグシャドウによりインスタントに再生されていき、
マシンから出てきたハカイダーの残念具合に腹を立てるビッグシャドウの芝居も良い味を出し、スピード感と馬鹿馬鹿しさが凄い切れ味(笑)
再び地上に繰り出したもはや3バカが、ザダム赤−ハカイダー−ザダム青、と並ぶ事で、悪魔の翼を広げたハカイダー、
という多分に妄想的な幻影を垣間見せるのは出来る範囲でクライマックスらしい演出となり、高笑いと共に放たれる3バカ合体光線!
だが、連戦に次ぐ連戦でいよいよ必殺技を発動できなくなってしまったゼロワンらは、
正義の心を一つに残りのエネルギーを結集する事で合体攻撃を放ち、デビルハカイダー、無慈悲なる瞬・殺。
光明寺博士の首を落とす寸前、ギロチンの刃はすんでのところでゼロワンによって食い止められ、
地下のシャドウ基地では3バカを再生しようとしたマシンが設定された数値を超えた事で煙を噴き上げる。
「ぶほぁっ?! どうした? なぜ止まった?! どうしてザダムとハカイダーは出てこんのだぁぁぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ?!」
混乱するビッグシャドウは再生マシンの爆発に至近距離で巻き込まれて無惨な最期を遂げ、基地破壊ファザー渾身の仕掛けにより、
シャドウ本部も木っ葉微塵に吹き飛ぶのであった……。
正体不明のままだったビッグシャドウですが、見た目は虫歯菌のコスプレした中年男性なのでブラストエンドで抹殺するのも絵的に具合が悪く、
過ぎたテクノロジーに手を出してテンション上がりまくった末に破滅を迎える、というのはなかなからしい最期としてまとまったように思えます。
某ドルゲの「るろ?! るろ、るろろろろろ、ろ?!」を彷彿とさせる、どうしようもない末期の台詞は、ポイント高し(笑)
かくして、世界的オカルト結社シャドウは滅びた。
無事に家に戻った光明寺博士の前でミサオ・アキラ・ヒロシがケーキを頬張る姿から、
一緒に祝杯をあげる事もできないロボットの哀しさが盛り込まれ(ねじ込まれ)、光明寺博士は息子達のこれからに想いを馳せる。
「ロボットは強い。年は取らない。しかしね、だからといって、それが幸せとは限らないんだよ。……イチローだってジローだって、
完全なロボットになるより、不完全でも、本当は人間になりたいんだ」
生みの親の言葉だと思うと、とんだ鬼畜ですが、
無敵のヒーローとしての“神にも近い”ロボット達の姿から、“神になれない”人間賛歌へとスライドし、
紆余曲折はありながらも“人間”としてイチローらと旅路を共にしてきたアキラ達が、その聞き役になる、
というのはまあ納得のできる落としどころ。
亡霊ギルとは何だったのか、ジャイアントデビルとは何だったのか、全ては狂ったハカイダーの見る幻想だったのか、
作品のあれやこれやにあまりにも翻弄された3人(そしてリエコさん)でしたが、
最終回でなんとか出番と役割を作って着地させてくれたのは良かったです。……後はきっと、
特許権収入がうなっていそうな光明寺博士がなんとか支援してくれるに違いありません。
――そして、そんなロボットの宿命を背負いながら、イチロー、ジロー、マリはゆく。
完全と不完全の間で揺れ惑いながら、それでも、人間を守り、正義を成す為に、命尽きるその日まで、果てしなき旅路を彼らはゆく。
ナレーション「平和は来た。しかし、君たちの周りに、何か変わった事は起きていないだろうか。よく注意してみてほしい。それは、
次なる悪の組織の犯罪なのだから。そして、もし変わった事を見つけたら、すぐに知らせてほしい。イチローや、ジローや、マリは、
ほら、君たちのすぐ側にいる!」
手を重ねたイチロー・ジロー・マリが名実ともにエターナルなヒーローへと昇華され、しかしその真に求めるものは、
決して叶わぬ不完全さへの切望なのだ、と一抹の切なさを漂わせながら、歩んでいく3人の姿で、おわり。
正直、そこまで期待しないで見た最終回だったのですが、クライマックスバトルのあまりの『01』感に妙な満足感を得てしまい、
細かいあれやこれやはさておいて、大変清々しい気持ちです(笑) あれやこれやに関しては、
構造を振り返りつつ別項でまとめたい予定で、ひとまず『キカイダー01』感想、お付き合いありがとうございました!
(2023年1月22日)
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