■『キカイダー01』感想まとめ6■
“ふるえ 正義の鋼鉄の腕”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『キカイダー01』
感想の、まとめ6(31話〜36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕 ・
〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕
- ◆第31話「哀れ人造人間ビジンダー爆死」◆ (監督:永野靖忠 脚本:長坂秀佳)
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「「そうだ、ボタンを外すのだゼロワン」」
その瞬間に、我々が通報しておいた警察官が到着するぞ!
ナレーション「なにも知らぬイチローは、一つずつボタンを外していく。離れろゼロワン! その女を放り出せ!」
ナレーションさんから、かつてなく自由度の高いド直球が投げ込まれましたが、年末ギリギリに、こんな面白い台詞が、
ナレーションから聞けるとは(笑)
イチロー兄さん社会的抹殺寸前、激痛回路の痛みを押さえ込んだマリは立ち上がるとその場を走り去っていき、
シャドウ基地で作戦を遂行できなかった制裁を受ける事に。マリからビジンダーへのチェンジが初披露され、
変身すると女王様気質になるビジンダーは、激痛回路の仕返しにとザダムを蹴り飛ばし、調子に乗っていたハカイダーは殴り飛ばし、
ビッグシャドウに改めて忠誠を誓う。
「私はゼロワンを殺す為にのみ、この世に生を受けた、悪の天使。ゼロワンの命は、この私が、必ず」
おまわりさんこの人です作戦の失敗したシャドウはゼロワン抹殺の為の人質として久々にミサオ一行を標的とする事を思い出し、
山道をゆく3人がかぶりつこうとしたリンゴが竪琴ボウガンにより次々と壁に突き刺さっていく、というのは面白い演出。
「ほほほほほほ、ミサオ、その体で、私に楯突こうというのかい?」
「俺が代わりに楯突いてやろう」
負傷してなおビジンダーからアキラ達をかばおうとするミサオだが、そこに乱入してきたのはザンネンダー。
「俺は貴様が気に食わん。ビッグシャドウもザダムも、貴様だけを頼りにしているようだが、ゼロワンを殺すのは、この俺だけだ」
「ほほほほほ、私とやるというのね、ハカイダー。ビジンダー・キック!」
「ぬぉぉぉ?!」
お・ま・え。
ザンネンダーはどこかで見たような映像で思い切り斜面を転がり落ちていき、その間に一味の手から逃れたかと思われたミサオ達だが、
気に入らない奴の作戦の邪魔をすれば組織としては失敗するが気分がよく気に入らない奴の評価が下がれば自分の評価が上がる筈理論を唱えるザンネンダーに銃を向けられ、
本格的に執念深さと生命力だけが取り柄になってきたハカイダー、何このまごうことなき三下ムーヴ。
宿命のライバルの座も悪の最高幹部の座も転げ落ちた先で、すっかり、毎度主人公(達)の邪魔をしては追い払われて
「覚えてろよー」と捨て台詞を残し続けている内に、ちょっとやそっとの爆発や墜落では死なない体質になっていき、
最終的には変な人気が出るやつだこれ……と化してきたザンネンダーは駆け付けたイチローに殴り飛ばされ、
やはりどこかで見たような映像で顔面から地面にダイブし、やられ素材に事欠きません。
だが、イチローがザンネンダーの相手をしている内にミサオらはビジンダーに追い詰められてしまい、
アキラとヒロシを逃がした「ミサオは子供をかばって吊り橋から真っ逆さまに転落」!
「可哀想に……ミサオ姉ちゃんは、必ず僕が見つけだしてくるからな」
アキラとヒロシを別荘(ギルの……?)に落ち着かせたイチローはミサオの行方を探して渓谷を彷徨い、
その帰りを待って寄り添うように眠る兄弟の悲しみがリエコ退場の時よりしっかり描かれているなと思ったら、
アキラがリエコの写真を持ち出したのは、後付けながら補強として良かったです。
「リエコ姉ちゃんも、シャドウに殺された。今度は、ミサオ姉ちゃんまで。それでも兄ちゃんは、泣くなっていうのかよ」
「ばかやろぉ! ……たった一人のお姉ちゃんだった。口は悪いが、あんなにいいお姉ちゃんは居なかったんだ」
アキラとヒロシは滂沱と涙を流し……振り返れば自分が何者かという記憶を失いながらさまよい歩き、無気力・無感動だったアキラが、
イチローの背中に守られ、己の立場を怒り嘆き、やがてリエコという庇護者を失い、生き別れの兄との再会、
あっけらかんとしたミサオとの同行に至る、という旅路を通して、遂に人間らしい情動を取り戻した姿と思えばなかなかに劇的ではあるのですが、
途中の段取りがすっ飛ばし気味だった事と、アキラ少年の位置づけが基本的に忍法帖ギミックであり、
キャラクターとして丁寧に扱われていたとは言いがたいのが、惜しまれるところです。
ただまあ、それでもそれなりに、一応の着地点を設定した、というのは良かったところ
(これでリエコダーも完全な無駄死にとはなりませんでしたし)。
イチローが捜索を続ける中、泣き疲れて眠ってしまう兄弟「だがその後に意外な事が起こる」。なんと吊り橋から落下後、
崖から突き出した木の枝に引っかかっていたミサオは、マリによって助けられて手当を受けていたのだ。
イチローと再会を果たすミサオだが、そんな事を知らぬ兄弟は、ビッグシャドウのタマぁ取って姐さん達のケジメをつけるんじゃ!
と丸太を手に取り二人だけで出入りに向かってしまう。
気持ちで勝てるならスペシャルポリスなんていらないですよね、とシャドウマンに捕まりかけていた二人はマリによって助けられ、
一足遅れでやってきたイチローは、マリ=ビジンダーである事を指摘。
「君が人造人間だというのは、最初からわかっていた」
あ、あれ?! 明らかに、今なにか、サーチして確認していましたよね?!
イチロー兄さんのスペック的には気付いていた方が自然なのですが、話の筋としては気付いていなかった方が自然なので、
大変ややこしい事態になっています(笑)
「ビジンダーで居る時は、冷酷で残忍な悪のロボット。このマリの姿で居る時は、どうしても悪い事のできないかたわもの」
「いや、今の君が、本当の君の筈だ! ビジンダー、君を僕の力で、直させてくれ」
「いいえ、できないわゼロワン! 私は、シャドウで産まれたロボット。そして私の使命は、ゼロワン、あなたを殺す事。
チェンジ・ビジンダー」
マリは周囲にハートマークの舞うバック宙からビジンダーにチェンジするが、ビジンダービームをかわしたゼロワンは、
いきなりのゼロワンカット、続けてドライバーでビジンダーを気絶させると上半身を裸に剥き、
冒頭では、あんなにドキドキしていたのに兄さん! 見損なったよ兄さん!(byジロー)
「俺の腕じゃ、完全な良心回路にはならないだろうが。せめて、せめてイチローぐらいの良心を、持たせてやりたいんだよ」
ビジンダー内部に良心回路を勝手に組み込むイチローだが、ザンネンダーの介入によりビジンダーの身柄は奪われてしまい、
再び敵として姿を見せたビジンダーと「遂に宿命の対決となる」。
「俺は君を殺したくない。俺の腕じゃ、不完全な良心回路だが、俺なりに精一杯やったんだ。君の体は、
もう良心回路がついているんだ。……ビジンダー、後は君の意志次第だ。僕は君を敵に回したくない! ……ビジンダー!」
「……ゼロワン、あなたがどんな事をしても、しょせん私はシャドウで産まれた悪のロボット。私は、
あなたを殺す為に造られたロボットなのです」
「おまえは正義に生きることを望まれて生まれてきた。俺は、破壊する事だけを望まれて生まれた」
「裏切ればいい」
「おまえは自分を裏切れるか? 正義を捨てられるか? 誰も背負って生まれた運命には、逆らえないんだ」
「どう生きるかを決めるのは、自分自身だ!」
「運命が全てだ!」
(『特捜ロボジャンパーソン』第15話「翼をすてた天使」)
20年の間隔があるので、果たして意識があったのかどうかはわかりませんが、
『ジャンパーソン』ファンとしては傑作第15話を思い出さずにはいられないやり取り
(ビジンダーが「悪の天使」を名乗っているのも繋がりますが、果たして下敷きであったのか)。
イチロー兄さんが“正義のロボット”に生まれてきた事に対して迷いも悩みも無いのに対して、
JPさんは自分が“正義のロボット”として生まれてきた事そのものに対して深い屈折を抱いているのですが、
良心回路を取り付ける=正義のロボットになる、のではなく、「良心回路」はあくまで“きっかけ”(のシンボル)であり、
「後は君の意志次第だ」(「どう生きるかを決めるのは、自分自身だ!」)というのが、
時代を超えた普遍的なテーゼとも繋がって、格好いいところ。
(※また、視聴時は前作『キカイダー』を未見だったのですが、『キカイダー』後に見ると、ここでマリ/ビジンダーに、
良心回路とともに前作ジローの持っていたテーゼが組み込まれている事も窺えます。)
ビジンダーは運命に従う事を選び、説得を諦めるイチローだが、その戦いにアキラとヒロシが割って入り、ビジンダーをかばう。
「おどき……」
「二人は君をかばっているんだぞ!」
「二人ともそこをおどき! どかないと、ビジンダーレーザーで黒焦げになるよ!」
冷酷非情な悪のロボットとしてた戦いを続けようとするビジンダーだが「その時、不思議な事が起こる」。
「嘘をつくな、ビジンダー! 今君の目から流れているものは、それはいったいなんだ!」
イチローの同情を惹くためのザダムの設計により、マリとビジンダー、二つの人格の間を揺れ動くビジンダーの目からは涙がこぼれ落ち、
テーマ曲をバックに、マリの涙とビジンダーの涙が重ねられるのは、アップを多用した力強いやり取りもあってなかなかいいシーンでした。
長坂さんの脚本も、ようやくギアが上がってきた感じ。
「君は、涙を流す事のできる、唯一のロボットだ。君さえその気になれば、シャドウを抜け出す事もできるんだ!」
「おだまり!」
己の中の良心を振り払うかのようにビジンダーはレーザーを放ち、アキラとヒロシを守ったイチローは、チェンジ01。
説得虚しくいよいよ激突するかと思われた両雄だが、そこへ乱入したお邪魔虫ダーがミサオ達へと銃を向け、ゼロワンは足にダメージを受けてしまう。
度重なる身勝手な乱入の末、人質を取っての嬲り殺しを宣言するザンネンダーのあまりにも醜い所業に、
こんな奴と同じ組織に居るとか耐えられない、とビジンダーはザンネンダーへと躍りかかり、変身して一当たりが小刻みに入るも、
長尺のクライマックスバトルに相当するのはビジンダーvsハカイダー、というちょっとした変化球。
「「馬鹿者どもめが」」
その戦闘を確認したザダムはビジンダー(ハカイダー?)を自爆させ、「哀れ人造人間ビジンダー爆死」!! そして、
一緒に木っ葉微塵になるハカイダー(笑)
ナレーション「ビジンダーは、悪魔の戦士ザダムの超能力によって、摩訶不思議な爆発を遂げる」
遂にナレーションから「摩訶不思議」扱いを受ける、シャドウ絡みの出来事。
ナレーション「ハカイダーは、そしてビジンダーの生死は如何に。イチローは征く、果てしないシャドウとの戦いの道を」
ゼロワンが関与しないまま戦闘が終わる思い切った決着となり、サイドカーで走り去るイチローを見送るという形で、
アキラ達からはとうとう「さよなら」宣言。この数話、物語的な意味を失ってコメディリリーフの座に落ち着いていましたが、
これにてお役御免……?
リエコ退場後、3人組でコメディリリーフになってから予想外に機能していた部分はあったのですが、
今作前半戦の迷走を象徴する存在になってしまい、イチローとの関係性を上手く使い切れなかったのが、惜しまれます。
喋りすぎの予告からどうなる事かと思われましたが、次回予告の内容通りに本当に最後まで展開しつつも、
個々のシーンがしっかりと肉付けされており、とっちらかりはしながらも見応えのあるエピソードでした。
ビジンダー(マリ)が子供を守り、子供から認められる事で“正義のロボット”に近付いていく、
というのもアキラ&ヒロシの使い方として悪くなかったところ。
次回――「この作戦の指揮者、強敵・インクスミイカ」。
物凄くつぶらな瞳なのですが、強敵、なのか……。
- ◆第32話「地獄に呼ばれるビジンダー」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
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OPがマイナーチェンジ。キカイダーの代わりにマリ&ビジンダーが加わり、ザンネンダーは相変わらず殴りまくられていた。
その映像を差し替えないのは、明確な意図があると捉えて良いのでしょうか(笑)
アバンタイトル的に前回のあれやこれやが振り返られ、不完全な良心回路が取り付けられたたマリ/ビジンダーは、
本当に女体化ジローの道を歩む事に。
ナレーション「この時から、ビジンダーは、悩める人造人間としての道を、辿らねばならぬ宿命を、背負わされたのであった」
煩悶の末にゼロワンをかばうも、シャドウマジック・摩訶不思議大爆発によりハカイダーと共に回収されたビジンダーは、
良心回路を破壊した上で再改造されそうになる寸前に抵抗。
「「手術台に戻るのだビジンダー。おまえをもっと強力な、悪魔のロボットにしてやるぞ。どうしたビジンダー、
良心回路を取ってしまわなければ、おまえは一生出来損ないのロボットになってしまうのだぞ」」
「出来損ないでもいい! ザダム! 私はもうシャドウではない!」
悪のロボットに生まれた宿命を乗り越え、「完全」である事より「ビジンダー」である事を貫く事を決めたビジンダーは、
ザダムの強制をはね除けてシャドウ基地を脱出。露骨に『仮面ライダー』の引き写しにはなりましたが自らの旅路を歩み始める事になり、
前作主人公×仮面ライダー、の合わせ技で、一気にヒロイックな存在へと昇格。OPのマイナーチェンジと合わせて、
ジローの後釜に座る事に。
まんまとビジンダーに逃げられてしまったシャドウでは、すっかり作戦参謀に収まっている(まあ、
念動力もうゼロワンに通用しないですしね……)ザダムが、字を書いた瞬間に爆発する特殊な万年筆インク爆弾を用いた、
大量殺人計画をプレゼン。
「このインク爆弾を日本中の文房具屋にばらまけば、小学生中学生が何万人も死ぬというわけか」
え、万年筆で……?
1973年だと、小中学生でもカジュアルに万年筆を使っていたのだろうか? とつい素に戻って首をひねったのですが、
軽く調べてみたところ、公文書への使用が可能になるなど1970年代にはボールペンの一般的な普及がだいぶ進んでおり、
ちょうど筆記具の代表格の座が交代しつつある頃だった模様。……まあどちらにせよ、小中学生がノート取るのは鉛筆ではと思いますが、
『01』世界ではワンダースワンが覇権ハード、じゃなかった、シャドウ組織の陰謀によりボールペンは発明されませんでした。
ペン先とイカの意匠を組み合わせたデザインがなかなか秀逸なインクスミイカは、インク爆弾を正規流通品とすり替える事に成功し、
そのインクを使った小中学生と周囲の大人達が次々と爆死していく! まさかまさかの壮絶な展開。
「待て! このインクは危険だ」
これに気付いたイチローは各地でインクを回収していき、かつてアキラくんの座っていたサイドカーが、
「さよなら」直後にインクの詰まった段ボール箱に取って代わられるという、無慈悲なる思い出ブレーンバスター。
ゼロワンが新技ゼロワンファイヤー(空中からの射撃攻撃?)で爆弾インクを焼却処分していた頃、
通りすがりにいじめられっ子を助けたミサオは少年が父の形見の万年筆を大事にしている事を知り、
前回で綺麗に退場したかと思われたミサオが、単独で登場してしまう場当たり感が大変『01』です(笑)
イカとゼロワンの戦いに、冒頭で「そいつはそこに放っておけ」扱いを受けて今回出てこないかと思ってドキドキしていたハカイダーが乱入するが、
そこにビジンダーが参戦。ゼロワンを援護するビジンダーだが、シャドウ組織の命令に逆らえずにゼロワンを攻撃してしまい、
悪のロボットに生まれた呪縛に心を沈ませる。
「やっぱり、私は中途半端なロボットなんです」
「いや、そんなことはない。ただ君は、心の隙を突かれただけなんだ」
他意はないのでしょうが、マリには妙に親身なイチロー兄さん、もういっそ、ハカイダーも気絶させて良心回路を組み込んであげればいいのに!
それはそれとして前半、思い出したように差し挟まれるも重視されてはいなかった「ロボット(人造人間)とは何か」というテーマが、
“不完全なヒーロー”=ビジンダーの登場により改めて浮上し、“完全なヒーロー”=イチローが、
ジローと共に悪を蹂躙して基地を破壊していくという従来の構造から、大きな転換の気配を漂わせます。
イカはゼロワンの襲来から辛くも焼け残ったインクを回収し、それがミサオと仲良くなった少年の手に渡ってしまうが、
マリが寸前で爆発を阻止。だが結果として万年筆は砕け散ってしまい、事情を知らないミサオに責められたマリは、
池の中に入って万年筆の破片を拾い集め……マリの衣装が衣装なので忘れそうになりますが、エピソードの放映が12月なので、恐らく、
そろそろ秋から冬へと移り変わる時期の撮影なのでは。
拾い集めた万年筆をテープで補習して少年に渡すマリだが、ビッグシャドウに見つかってしまい激痛回路がスイッチON。
苦しむマリを助けようとミサオがボタンを外して核爆発寸前となり、もしかして、毎回これをお約束にするのか……?
だがそこへイカが襲ってくるという大変ややこしい状態になり、サイドマシーンでイチロー参上。
立ち直ったマリも生身バトルからマリーフラッシュしてゼロワンとビジンダーが共闘を展開し、
インク攻撃をかわしたゼロワンのブラストエンドにより、予告で言うほど強敵ではなかったイカ、大爆死。
万年筆の少年はマリの姿から勇気を貰い、いつの間にか交流相手がミサオからマリにスライドしているのですが、ぶ、
ブラストエンドの副作用……?
イチロー兄さんは「いじめっ子も悪いが、いじめられっ子も、メソメソしているから、いけないんだよ」
と実に70年代らしい理屈で少年を励ますと、マリと笑顔をかわして走り去っていき、果たして、
両者の戦いの道が再び交わる時は来るのか……シャドウ組織との、果てしない戦いはつづく!
ED映像もマイナーチェンジし、シャドウナイトがようやく引退。諸々の点で新体制が確立(恐らく)し、ここから本格的な後半戦、
ということになりそうですが、次回、大変混沌の雰囲気。
- ◆第33話「非情 子連れゴリラの涙・涙」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:曽田博久)
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見所は、
「ゼロワンキック!」
「500トンの力ガアルゾ」
「なに? 500トン?!」
ゼロワンの戦闘能力を最新型電子計算機で分析していたら、想像以上にとんでもない数値が出てしまい、幹部2人と見つめ合い、
真顔になるビッグシャドウ(笑)
ビジンダー編に入った辺りから、色々どうしようもないビッグシャドウを何とかしようと、
敢えて狭い空間に収めて至近距離のカメラで映したり、部下をねぎらうシーンにやたら角度をつけたりなど、
ビッグシャドウの撮り方に工夫が凝らされているのですが、虫歯菌マスク越しにも見て取れる真顔、
というのがぶっちぎりで面白くなってしまいました(笑)
「「な、なんと……」」
続けて放たれたゼロワンドライバーでは、対に計測不能で計算機が壊れてしまい、
ヒーローの戦闘能力にここまで真顔で脅える悪の大首領を見たのは、
ジョージ真壁(『特捜ロボジャンパーソン』)以来かもしれません!
ビッグゴリラとミニゴリラ、シャドウ組織がゼロワンの戦闘能力を把握する為に送り込んできた二体のゴリラロボを相手に戦うゼロワンは、
母ゴリラを倒した後の子ゴリラの養育問題について気にするが、度重なる攻撃を受けてやむなくブラストエンド。各種攻撃技の分析を終え、
計画通りに事象変換系必殺攻撃ブラストエンドの詳細データを電子頭脳に収めたビッグゴリラは木っ葉微塵に弾け飛び、
残されたミニゴリラの憎悪の視線を受けたゼロワンは、「俺に、おまえを育てていく金は、ない……!」と背を向けて走り去る。
根本的なところで、ロボットの親子(設定)とはいったい……? というエピソードではあるのですが、
“このエピソード内部では成立させる為の仕掛け”が施されており、それについては後述。
ゼロワンが走り去った後、砕け散ったビッグゴリラの破片を拾い集めるミニゴリラをビジンダーが手伝い、
更にそれをモニターするシャドウ上層部。
「ビッグゴリラは最初から殺される事になっていたのだ」
「ん?! なんだと?! いったい、何故だ」
そしてザンネンダーは、またも作戦の説明を受けていなかった。
改めて説明されるシャドウ組織の恐るべき計画、それは文字通りに命を懸けて得られたブラストエンドのデータを受け継いだ、
ゼロワン抹殺の為の最強ゴリラロボの完成にあった。
「ビジンダーはミニゴリラ可愛さのあまり、やがてはビッグゴリラ二世に育て上げるに違いない」
「強敵」と書いて「説明され役」と読むのが俺の使命、俺の宿命なハカイダーは、
子供ゴリラの前で親ゴリラを殺すとかお前って最低な奴だよな、とイチローを煽り、
思わず話を聞いてしまったイチローを崖の上に連れ出すと、ミニゴリラとビジンダーが親ゴリラの死を悼む光景を見せつけ、
動揺している隙に足を払って崖から落とす最低の三下ムーヴ(笑)
「よくやったハカイダー。ゼロワンはこれでビッグゴリラを殺した事を、ますます悩み苦しむだろう」
上司からはその健闘を褒め称えられ(なにしろ、一歩間違えると500トンのキックが飛んできます)、劇中でほぼ始めて、
イチロー相手に収めた判定勝ちの内容が、会心の小悪党ムーヴなのですが、それでいいのかセコイダー。
「ふふふふふふ、ミニゴリラが復讐する時が楽しみだ。ふっふふふふ」
もはや、唯一のよりどころであったキカイダー抹殺への執着さえゴリラに託してしまい、
気がつくと脳が壊死していそうで心配になってきます。
一方、ゼロワンとミニゴリラの間の因縁を知らないビジンダーはミニゴリラに特訓をつけており、成る程この辺りでわかってくるのは、
今回が、「人造人間コミュニティの物語」である事。
ゴリラロボット親子も、イチローがそこに情を見てしまうのも、ハカイダーがイチローのロボット殺しを責めるのも、
イチローが思わずハカイダーの話に耳を傾けるのも、ビジンダーがミニゴリラに母性を発揮するのも、
シャドウがそれを前提として作戦を立てるのも、ビジンダーが特訓モードに入るのも、
基本的に人造人間/ロボットしか登場せずに物語が進行する(「人間」の存在と視点が排除されている)仕掛け
によって成立しており、例えるなら1話限定、動物アニメみたいなアプローチ。
冒頭のゼロワンvsゴリラ親子の戦闘シーンにおいて、物凄く強引に、ミサオ・アキラ・ヒロシが、
あんパンを賭けてプロレスごっこをしている非常にどうでもいいシーンが挿入されるのですが、想像としては、
脚本時点では人間が一切登場しなかったが、さすがに全く出てこないのはまずいという事になって人間の登場するシーンを付け足したのでそんな事になったのかな、
と(ビッグシャドウは、「正体不明」という事で)。
中盤以降はミサオらが全く出てこなくなるので、「人造人間/ロボットの世界」という仕掛けが明確になるのですが、
参加2本目の曽田さんが、思い切った奇策(初登板も人魚姫で大変頭おかしかったですが)。
また、内容の方向性や主人公の扱い方は違いますが、後の『超人機メタルダー』(1987)において、
徹底して悪の組織サイド主観で進み、主人公は変身後のエネミー扱いでのみ登場するという異色作だった第11話
「勇者の追撃!天空にそそりたつ巨人!!」(扇澤延男デビュー作)を思い出すところ。
世が世なら、○○戦隊を率いていたかもしれない地獄の手榴弾特訓でミニゴリラの心身を鍛え上げたビジンダーは、
今こそ無限の力を引き出す時、とミニゴリラにビッグゴリラの電子頭脳をセットして改造手術を敢行し、
背後で流れる切ないハープのテーマ曲とのギャップが大変酷い事に(笑)
「実験が成功しますように。ミニゴリラは私の子供と同じです。強いロボットにして下さい。…………ふふっ、おかしいわ。
ロボットのくせに、お祈りなんかして」
果たして、その祈りを聞き届けたのは天使か悪魔か――起動したビッグゴリラ二世は、
移植された電子頭脳の影響によりビジンダーの事を忘れており、シャドウの計画通りにゼロワンに勝負を挑む。
復讐ゴリラを相手に躊躇するゼロワンは一方的な殴打を受け、そこに育ての親として乱入するビジンダー。
「おまえのような奴に育てられてたまるか。馬鹿も休み休み言え」
「あなたにはわかる筈よ。ようく見てごらん」
再三のビジンダーの説得に、手榴弾を投げつけられた記憶、じゃなかった、厳しくも暖かい特訓時代を思い出すゴリラだったが、
更にお邪魔虫ダーが乱入。ゴリラ母を爆殺したのはゼロワンである、とビジンダーに告げ、姉と母とどちらがいいか、
改めて悩むビジンダーはゴリラに踏みつけにされてしまう。
これを助けようとゴリラ二世の頭部に500トンキックを叩き込むゼロワンだったが、
ゴリラ五連バズーカを受けて左腕を落とされてしまい、ブラストエンドの発動モーション不能という、驚愕の大ピンチ。
不可解な事象が発生する事でお馴染みブラストエンドですが、世界の法則に介入する為には複雑かつ正確な術式が不可欠なのです!
連続で技を放つも全てゴリラ二世の強化ゴリラ装甲に阻まれ、打つ手無しかと思われたゼロワンだが、
ビジンダーが再び乱入し「何故だ母ちゃん」と本音がぽろりとこぼれたゴリラにビジンダーレーザー!
「何故だぁぁぁぁ!!」
直撃を受けたゴリラは哀れ木っ葉微塵となり、勢い余った容赦のなさが、かえってゴリラ側の悲哀を強める事に。
ハカイダーはすたこらさっさと逃走し、ビジンダーは助けられた借りを返しただけだ、と言い残して01に背を向けて去って行き、
ゼロワンにはただ、その背を見送る事しか出来ないのであった……。
「マリ……負けるな。マリ……おまえは美しい。おまえの顔には笑顔がふさわしい。泣くなビジンダー」
な、ナレーションさん……?
いつもより感情を強く込め、喋りのトーンも違うので一瞬悩みましたが、多分ナレーションさん。
というかもはやこれは謎の第三者視点によるモノローグ(笑)
ナレーション「親子二代、凶悪のロボットは倒れた。人造人間が背負うのは、非情の宿命なのだ。キカイダー兄弟も、その為に苦しみ、
悩んできたのだ。ビジンダー、おまえも自分で悩み、苦しみ、自らの道を切り拓くのだ」
面白い面白くないでいうと、荒っぽい、という感想になるのですが、
終始「人造人間/ロボットのコミュニティ」において物語が展開する奇手が印象的なエピソードとなりました。
次回――ビジンダー、またも核爆発の危機にスイッチON!
- ◆第34話「呪いの大時計 ビジンダー危機」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
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大変ナチュラルに公園で寝泊まりしているミサオ達、イチロー兄さんはもうちょっと、支援の手を差し伸べてあげてもいいと思います。
カメラマンの消滅とリエコダーの爆死退場を経て、「これまでの筋書き上、出さないわけにもいかないのでコメディリリーフ要員に転向」
したのが案外うまく回っていたアキラ達ですが、ビジンダーのレギュラー化にともない
「出来る範囲で持っていたドラマ性を消化して一つの区切りをつけた」結果、特に出なくても良くなってしまったものの、
シャドウ組織から身を隠す流浪の旅はまだ続いている模様。
持っていたドラマ性は既に消化されてしまった為に三人一組という縛りがなくなり、「必然性をどうにか組み込むキャラクター」から、
「都合の良い時に出し入れするギミック」に扱いが変わった事で、かつてのカメラマンと似たような存在になりつつあるのが、
どうにもこうにも、巧く回ってくれません。
出すなら出すで、アキラ&ヒロシがマリと新たな関係性を構築するなどあれば物語上の意味合いも生まれたのですが、
それはゲストキャラに振り分けられる為、持て余し感も悪目立ちする事に。
シャドウ組織は腕時計を触媒にして人間の凶暴な逃走本能をかき立てる儀式魔術を発動し、
腕時計をはめた人間が大暴れする乱闘事件が各地で勃発。死者13人、重軽傷者3万人を超える異常事態となるが、さすがのイチローも、
集団で暴れ回る市民達を前に、ゼロワンドライバーで端から気絶させていくわけにもいかず歯噛みする。
「もう少し見ていよう。この子供達の内何人死ぬか、はははははははは、はははははは!」
その被害は子供達にまで及び、やんやとはしゃぐビッグシャドウが、虫歯菌のコスプレイヤーではなく、
世界的犯罪組織の首領らしい外道悪辣ぶりを発揮。
腕時計を外す事で子供達の乱闘を止めたマリだが、保護者から誤解を受けて警察のお世話になりそうになり、
善意の行動が社会からの罵声に曝されるその姿にビッグシャドウは大喜び。イチロー兄さんには一欠片ほどしか存在しなかった、
世間に受け入れられない異端としてのヒーロー像が盛り込まれ、カーニバルのフィナーレはイカす核爆弾だぜ!
とビッグシャドウはザダムに命じて激痛回路もといボタンを外して回路をスイッチON。
……ところで、シャドウ組織における「核爆弾」の認識が、マリ周辺の親子をまとめて爆死させる程度、なのですが、
やはり内臓されているのは、「核(熱属性の魔法)爆弾」なのでは。
マリが時計をプレゼントした少年が、激痛にのたうつマリを介抱しようとして核爆発危機一髪のその時、
イチローが駆け付けてそれを阻止。
「くそー、ゼロワンめ。また邪魔をしにきやがって、くそぉ……」
観客席のビッグシャドウは身をよじって大興奮し、スタッフがそろそろラスボス候補らしく押し出していこうとしているのか、
演じる八名信夫さんの自主的なものかはわかりませんが、前回−今回と、だいぶビッグシャドウがテンション高く動き回ります。
……まあ、どちらかというとリアクション芸の方向性なので、やればやるほど、ボスキャラとしての格は下がっていくのですが(笑)
ゼロワンの介入によりザダムは作戦を変更し、今回、
シャドウ組織のシーンに全く登場しないのでそろそろ廊下のゴミを拾う係に降格されたのかとドキドキしていた、毎度お馴染みお邪魔虫、
使いっ走りダー登場。
マリがハカイダーの銃撃から子供達とその親をかばい、ハカイダーを叩きのめしたゼロワンは、
シャドウ組織の呪術を打ち破ろうと調査中、巨大な時計に扮していたシャドウ怪人キチガイバトを発見する。
こうなっては計画の続行は不可能、とビッグシャドウは鳩にビジンダー抹殺を命じるが、そうとは知らぬマリ/ビジンダーは、
思うにならない自らの存在に思い悩んでいた。
「私はシャドウで作られたくせに、不完全な良心回路を持っている、中途半端なロボット。ああ、私も早くゼロワンのように、
強く正しい人造人間になりたい。その為には、どうしたらいいの」
やはりここは、基地破壊では。
「クークル〜〜、居たなビジンダー。ここは貴様にはふさわしい死に場所かもしれん」
曖・昧。
キチガイ電波によりビジンダーを爆死させようとする鳩だったが、そこにトランペットの音色が響き渡り、ゼロワン参上。
火を噴き軽快に飛び回る鳩に対し、カットカットドライバーそしてブラストエンドの連続攻撃で大爆殺するのであった。
「僕、僕も、ビジンダーみたいな、立派な人間になる」
「……あたしみたいな、立派な人間」
少年の感謝の言葉に力づけられたマリは、自らの進む道は間違っていないのだと前を向いて一歩を進み、
困っている子供を助ける→誤解を受ける→それを解消する→子供の抱える問題を心理的解決に導き自らもフィードバックを得る、
とマリと少年の正攻法の交流エピソードの一方で、このところ戦績の微妙だったイチロー兄さんが鬼畜ヒーロー無双を発動し、
キチガイと核爆弾とザンネンダーの扱いはともかく、セオリーでまとめた一本。
そのザンネンダーは久しぶりに遠吠えタイムを取り戻し、ビジンダーを加えた上で今作の約束事を忠実に配置し………………あの、
満足げに走り去っていくイチローのサイドカーに、思い切りアキラくんが乗っているんですが!(笑)
ラストがまるまる使い回しの映像(+新規アフレコ)の為ですが、そういう、
作風の雑さまで忠実に再現しなくてもいいと心から訴えたい。……ところでOP映像に始まり毎度毎度、
サイドカーに乗せられたアキラ少年が振動で物凄く揺れているのがドキドキして仕方ないのですが、
実際の撮影時は人形だったりしたのでしょうか(70年代なのでその辺りが不安を誘うわけですが)……て、待てよ、
アキラくんは俺と一緒に行動しているから狙うなら俺を狙うんだなシャドウ! と、
イチロー兄さんが敢えてデコイのアキラくん人形を乗せて走っている、という解釈はあり、か……? 一歩間違えなくても、
通報案件なのがやはりドキドキしますが。
なお今回、ミサオはともかく、アキラを完全無視してイチローが走り去る、というかなり衝撃的なシーンがありました(笑)
誰よりも、イチロー兄さんの中でアキラくんの問題が終了しているのではないか。
次回――振り袖般若!!
このところ順調にシャドウ怪人が登場していたので完全に油断しており、路線復活のインパクトが、心臓に突き刺さるダメージ(笑)
- ◆第35話「振袖娘 ビジンダー地獄絵巻」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳)
-
「もっと残酷な作戦はないのかぁ……人間どもの血も凍るようなアイデアは」
「「お待ち下さいビッグシャドウ様。ハカイダーが何やら面白いものを開発したようでございます」」
「ハカイダー、さっそく見せてみろ」
「よく見るがいい。これこそ、俺が作った、大傑作だ」
自信満々のハカイダーが披露したのは、しゃれこうべにかかった女物の鬘と一枚の振り袖。拍子抜けして嘲笑うザダムだが、
その首に帯が巻き付き動きを封じ、宙を舞う鬘に繰り返し小突かれるザダム、その光景に喜ぶビッグシャドウ、
自動で動く着物を「大傑作」と称するハカイダー、愉快な顛末で一同揃って株価が下がる、
さすがの『01』マジック。
「はははは、はははは! ハカイダー、この作戦、なんと付ける!」
「大東京襲撃・着物毒蛾作戦!」
力強くガッツポーズを取るハカイダー……思えば過去にハカイダーが主導した作戦といえば、食堂を占拠して「俺は地獄の王者。
この店は俺が貰った」だったので、ハードルは最初から、だいぶ低めの設定です。
ハカイダーの作り出したロボット着物が街に放たれ、それに袖を通した人間が猟銃を発砲したり出刃包丁を振り回す、
リアル通り魔事件が連続。
一方で、姉かおる(演じるのは、後の大演歌歌手・小林幸子)の成人式に綺麗な着物を着せてやりたい少年・サブとマリの出会いが描かれ、
仲むつまじく清貧に暮らす善良な姉弟と、上等な着物に軽々しく操られる鼻持ちならない上流階級、という描写の対比があまりに露骨で、
今見るとさすがにノりにくいドラマ構造。
アルバイトで懸命に稼いだ19800円を持ち込むも呉服屋に邪険に追い払われ、
悲しみにくれて雨の中を濡れながら歩いているサブに着物を譲ったのは、妙齢の和服婦人に変装したハカイダー。
今作における人造人間の変身システムも大概謎ですが、地味に女装好きなハカイダー(いまいち謎の女装(女性への変身)好きというと、
『仮面ライダーフォーゼ』の速水校長を思い出すところですが、「存在の軽さ」繋がりですね……!)。
振袖を手に入れて喜ぶサブだが、風呂敷包みが宙に舞い、それを追いかけている内に池に転がり落ちてミサオとビジンダーに助けられる事に。
2人は熱を出した少年をアパートへと連れて行くが、弟の気持ちが何よりも嬉しいから、と姉かおるが振袖をマリにパスし、
着物を着る為には服を脱がなくてはいけないという、120%予想外の核爆発の危機!!
ハカイダーの作戦が遠い海の彼方に吹き飛ぶあまりにも想像不能の展開で、ここは大変面白かったです(笑)
この光景をモニターしていたシャドウ上層部は思わぬ副産物に大喜びするが、今、君たちがやっている事は、
完全にただの変態盗撮だな……。
お陰で、その流れで飛び込んできたイチロー兄さんもヒーローとして割とギリギリな印象になってしまいましたが、
マリ自身は体内に内蔵された核爆弾の存在も、その起爆システムについても知らない事が、シャドウ側からハッキリと言及。
「その着物を捨てろ! そいつはシャドウのロボットだ!」
イチローは振り袖とカツラのセットを部屋の床にたたきつけ、姉を思う少年の気持ちが無惨に踏みにじられていますが、
それを気にする間もなく浮かび上がった着物は、怪ロボットへと変身。
「俺はシャドウロボット、着物毒蛾」
〔振り袖・女物のカツラ・般若の面・両手には唯一の怪人感を主張する巨大な爪・男の声〕
という色々どう受け止めればいいのかわからないロボットが正体を現し、戦闘員を交えつつイチローと戦闘に突入。久々に流れる、
レッド&ブルー・レッド&ブルーの挿入歌をバックに鬼面軍団が増員され、火の海にまかれるイチローだが、
連続バック転回避からチェンジゼロワンすると問答無用のブラストエンドを放ち、着物毒蛾と鬼面ブラザーズは大爆発。
明らかに全く別の位置で3体まとめて爆発しているのですが、事象変換系必殺技ブラストエンドの前に、
多少の空間的距離は無いも同然なのだ!
最近割とまともに敵怪人が着ぐるみなので油断していたら、不意打ちで出現した限りなく着ぐるみ感の薄い怪ロボットでしたが、
それを補うかのように死亡時の爆発は番組史上最高レベルの派手さで、どうしてこんな怪人の最期にこんなに火薬を投入してしまったのかレベル。
その爆発で残念魂に火が点いたのか、ハカイダーが突然ゼロワンに一対一の勝負を挑み、
映像的には荒野の決闘めかしそれとなく盛り上げてくるのですが、基本的にもはやハカイダーがゼロワンと正面からまともに戦える方が不自然になる為、
宿命の対決といった空気が一切感じられないのがつくづく残念です。
貴重なストロングポイントである飛び道具を初撃で蹴り落とされ、格闘戦に持ち込むも蹴り倒されたところでビジンダーが乱入し、
もはやヒロインがハカイダーになりかけるが、ゼロワンは一片の慈悲もなくブラストエンド。同時にビジンダーもレーザーを放ち、
無惨ハカイダー木っ葉微塵(4話ぶり3回目)になるかと思われたが、爆発の跡には、その残骸は何故か存在しないのであった。
「しまった、ビジンダーのレーザー光線と、僕のブラストエンドが重なって、ハカイダーを打ちのめすチャンスをなくしてしまった」
「残念だわ」
事象変換系の攻撃に、他の条件が介入した為にブラストエンドが正しく発動しなかったようですが、流れからは正直、
ビジンダーが故意に妨害してハカイダーを助けたようにしか見えません(笑)
「ははははははははは! ゼロワンめ! 失敗したな! ははははははは!」
何故、勝ち誇る。
ひたすら迷妄クライマックスの悪化していくハカイダーは高笑いしながら逃走し、ゼロワンとビジンダーは握手をかわし、
それを目にして嫉妬の炎を燃え上がらせるミサオはもう、何をどうしたいのか。かおるとサブの姉弟は、
着物は爆発したけれど互いに思いやる気持ちが通じあって良かったね、とイチローのヒーローパワーによりめでたく大団円を迎え、
ナレーションさんは今日もマリを応援する。
ナレーション「くじけるなマリ、負けるなビジンダー。大きく胸を張り、太陽に向かって進むのだ。――そして、イチローもゆく。
果てしなきシャドウとの戦いの道を」
今、「そして」の所から、明らかにやる気が下がりましたよねナレーションさーーーん!
今回の遠吠えタイム担当になったザダムがシャドウの底力を主張し、
次回――「イチロー達はタイムトンネルで江戸時代へ行ってしまう」。
定番といえば実に定番のアイデアですが、今作だと狂気の匂いしかしなくて不安(笑)
- ◆第36話「四次元の怪 恐怖のタイム旅行」◆ (監督:今村農夫也 脚本:曽田博久)
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「これというのもタイムトンネルで江戸時代にゆき、かの有名な天才的科学者、平賀源内を現代に連れてくるのが目的であったのう」
「「こちらからも、四次元テレビで平賀源内の居所を探してみましょう」」
「ビックリしちゃいけないよ。僕たちはね、シャドウのタイムトンネルで、江戸時代に来てしまったんだ」
ねぐらを探して廃ビルに潜り込んだミサオがシャドウのとんちきな作戦に巻き込まれてしまい、後を追ったイチローとビジンダーは江戸時代へ。
だが辿り着いた江戸は、平賀源内を探して暴れ回るシャドウ忍者軍団の暴虐により、庶民はおろか将軍家や大名家まで逃げ出し、
路傍に誰も片付けない死体の累々と積み重なる、凄惨な死の都と化していた!
平賀源内を連れて来るとか来ないとかいう次元をとうに超えたレベルの話になっていますが、ここは恐らく、
“江戸っぽい異世界”。
そして見所は、無造作に死体の散らばる荒廃した情景を前にして、ここでは正義とか悪とかそんな事に悩む必要はないのだ、
と笑顔を浮かべて自由を謳歌するマリ(笑)
「見て見ないふりはできなかったわ。シャドウの悪があるところ、たとえ地の果てまでも行くのよ。それが、私の宿命なの」
無法の世界に君臨する機械女王の道を歩みかけるマリ/ビジンダーだったが、
シャドウに追われる平賀源内の息子の窮地を黙って見ている事が出来ず、己が魂の炎に従い正義のロボットの茨道へと再び歩み出す。
ゼロワンとビジンダーにシャドウ忍者軍団を殲滅されたハカイダーは元の世界へと逃亡し、江戸っぽい異世界に取り残されてしまうイチロー達だが、
社会への不平不満から酒に溺れていた平賀源内が鍵開け技能でタイムトンネルの扉を開き……
とってつけたような平賀源内の見せ場がサイエンス要素皆無という、これぞ四次元の怪。
元の世界へ戻るとビジンダーがレーザーでタイムトンネルを破壊し、帰還した世界側のシャドウアジトはともかく、
江戸っぽい異世界側でトンネルを隠していた屋敷も派手に吹っ飛んでおり、心配になる映像。
……とにもかくにも、ビジンダーは基地破壊の通過儀礼を果たした!!
ナレーション「シャドウのタイムトンネルは、木っ葉微塵に吹き飛んだ。もう二度と、源内先生に会う事はできない。マリよ、
結局は、誰もおまえの宿命の体を助ける事はできないのだ。マリ、ゆけ。泣くなマリ。おまえの道は自分で切り拓くのだ」
そのままナレーションさんが締めに入ってしまい、忍者軍団との乱戦のみでこれといったクライマックスバトルの無い大胆な変則構成なのですが、
背骨があった上で定石から離れた変化を加えてくるのではなく、そもそも背骨が存在していないので、変則というか、
活劇としてのメリハリがどこにも無いただの無脊椎。
ナレーションだけ聞いていると、まるでマリと源内に交渉があったかのようなのですが、
実際にはなんの接触もないので、度重なるブラストエンドによる事象変換とタイムトンネルの機能が干渉した結果、
本当の第36話は、四次元の渦に飲み込まれていったに違いありません。
着ぐるみどころか「怪人」ポジションさえ登場しない・いつもなら無駄に戦いたがるハカイダーがまともに戦闘しない・
締めのナレーションと本編内容が明らかにズレている・スケジュールの問題でも発生していたのかマリが不自然にビジンダーで登場、
などなど、いつも以上に制作現場で何かトラブルがあったとしか思えない凄惨な内容でしたが、時代劇回として残念だったのは、
イチローもマリも別に江戸時代コスプレするわけでもなんでもない事。
マリは着替えると核爆発するし、イチロー兄さんも設定的に着替えがあり得ないのかもしれませんが、
特にイチロー兄さんは同心コスプレとか似合いそうですし、せめてそれぐらいのサービスは欲しかったところ。
この辺りは純粋に当時と近年におけるエピソードの位置づけの違い、というのもありそうですが、
そういったサービス要素も皆無の結果明らかになったのは、「人造人間が江戸の街並みで忍者軍団と戦う」よりも、
「現代日本に振袖般若が出現!」の方が面白いという残念な事実(笑)
「シャドウは宣言する! 今度こそシャドウ帝国を築きあげるぞ!」」
気がつけば最強の新幹部の席を失って久しいザダムは意味不明の供述を地平線へ向けて繰り返し、次回――ヒロシとアキラが殺された?!
そして、犬が次々と殺された! そこは同列に続けていいのか、というその時、不気味な奴が現れた。
「ハカイダーさえ足下にも及ばない程のその強さ」
……え、ハカイダーが足下に及ぶ強さってどの辺り……と比較対象が最底辺すぎて反応に悩みますが、
見た目の奇天烈ぶりは強烈なので、シャドウ組織のテコ入れ成功に期待したいと思います。
→〔その7へ続く〕
(2022年12月25日)
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