■『キカイダー01』感想まとめ3■


“聞こえてくる 戦士の歌声
トランペットの 風切るメロディ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『キカイダー01』 感想の、まとめ3(13話〜18話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第13話「怪談 妖怪ロクロ首の挑戦!!」◆ (監督:今村農夫也 脚本:押川国秋)
 もはやいったい、何と戦っているのか(笑)
 シャドウは、人工地震を引き起こす事で無人とした東京を占拠して巨大な基地とし、 そのどさくさに紛れてアキラをさらおうという東京奪取作戦を計画し、もはやいったい、何が真の目的なのか。
 計画の一環としてTV局の女性アナウンサーが奇天烈な赤青化粧の怪女・シャドウロクロに襲われ、なんだか段々、 アングラ演劇のような世界に突入していますが、気絶させたアナウンサーに化身の術でなりかわったロクロは、 パニックを煽るようなニュースを読み上げ、全都民を避難させようとする。
 「東京は全滅するのです。一人の生存も許されないのです」
 ストレートなホラー演出が続く怪談シリーズですが、映像のスリラーに加えて、 子供向きの科学スリラー(「人類は○○によって滅びる?!」的なやつ)の要素が入ってきたのは、少し面白いアプローチ。 ……まあ、アキラ少年には鼻で笑われますし、後半になると劇中から消滅するのですが。
 作戦は着々と進行中……とシャドウナイトは主張し、世界犯罪組織シャドウが本気を見せた大変規模の大きい作戦が展開している筈なのですが、 これまでの実績と、予算の都合か致命的な映像のハッタリ不足が響き、地震も噴火も、 全てシャドウナイトと黒タロスの脳内妄想なのではないか。
 イチローはアキラを伊東のホテルえびなに預けて地震研究所へ向かい、ナイトと黒タロスはどちらがアキラをさらいに行くかで揉め…… 復讐の為ならアキラなど二の次だ! という兄弟達への誓いはどこへ消えたハカイダー。
 仇役が高らかに宣言した新たな行動理念が根こそぎ次元の狭間に消滅する事態にさすがに動揺が隠せないのですが、 イチローはイチローで地震研究所で待ち構えていたリエコと出会い、ストーカーの方も自分を見失っていた。
 アキラの投宿中のホテルをリエコに紹介したイチローは、研究所に入るや伸びる首に襲われ、首が飛んだり腕が飛んだり、 シャドウロクロの奇抜な攻撃に苦戦するも、チェンジ01。東京を襲う地震の背後にシャドウの存在を確信したゼロワンは、 ろくろ首を捨て置いて東京へ急ぐが、伊東のホテルえびなには、結局、ナイトと黒タロスが二人一緒に現れてアキラをさらってしまう。
 「待てハカイダー! 今同士討ちをしている場合じゃない」
 首尾良く任務達成、かと思いきや、案の定アキラの身柄を巡って醜い内輪もめにもつれ込んだ両者は、しばらくへっぴり腰 (ナイトがどうにも動きにくそう)で剣を打ち合わせた末に不意に正気に戻るが、その間にモーターボートで近づいていたリエコが、 ダイナマイトを投擲し、《投石》は地球人の基本スキルです。
 知力1と1を掛け合わせても1、の二人はまんまとリエコの挑発に乗ってアキラの元を離れ、その隙にアキラを救出するリエコ。 慌てて戻ってきたナイト&黒タロスと戦闘員に囲まれ、(たぶん東京の変事を既に解決した) イチローがトランペットを吹き鳴らして助けに入る乱戦の中、乱入したシャドウロクロがアキラを拉致し、 幹部クラス二人よりよほど有能。
 イチローは逃げるシャドウ一味をサイドカーで追跡し、後部座席にシャドウナイトがでんと座り、 助手席では奇っ怪な衣装と化粧の鬼女が髪を振り乱すオープンカーの横を、オートバイにまたがったハカイダーが並走するのは、 世にも奇抜な絵面で、色々、どうして、こうなったのか!
 イチローの妨害を買って出たロクロは、両手を飛ばすリモコンアームでサイドカーの運転を妨げるという知略を発揮すると、 首を伸ばしてイチローに絡みつき、崖下へ落下させようと目論むが……
 ナレーション「負けるなゼロワン! 力を奮い起こせ! 地球を狙う悪の組織・シャドウに立ち向かう者は、お前だけなのだ!」
 不在のジローに代わって突如ナレーションさんから贈られたエールを受けて、 イチローはチェンジ01するとロクロを振りほどいて苦境を脱し、あわや解体の危機にあったアキラを救出。……今回、 アキラに隠された秘密の設計図を見つけ出す手段が、「腹をかっさばいて取り出す」になっているのですが、 本当にそれで大丈夫なのかハカイダー。もう少し落ち着いて考えてみた方がいいのではないかシャドウナイト。
 迷走を続けるナイトとハカイダーを軽く蹴散らすも、圧倒的知謀と有能さを見せるシャドウロクロ(今作ここまで比) にまたもアキラを奪われ、身動き不能に陥るゼロワンだが、絡みつく首に至近距離で殴打を繰り返すと、 その度にアップで怪女が悲鳴をあげ、幾ら何でも色々とやりすぎ感が溢れます。
 シャドウナイトはゼロワンに壊されるよりも先に自ら基地を自爆させてゼロワンを始末しようとするが、 基地破壊の使徒たるゼロワンが基地破壊に巻き込まれて死亡する筈がなかった!
 瓦礫の中から雄々しく立ち上がったゼロワンは戦闘員軍団を蹴散らすとロクロのリモコンアームを打ち破り、 頭部を直接ぶつけてくる必殺ハンマーロクロをかわしてブラストエンドを叩き込み、本当に、 派手な化粧の女性が木っ葉微塵に吹き飛ぶという、やけっぱちのような結末を迎えるのであった。
 シャドウナイトと黒タロスは二人並んで遠吠えタイムを仲良く担当し、 幹部クラスの頭脳が摩耗していくのに反比例して怪人ポジションの頭脳が優秀になるという変化球で、シャドウロクロ、 実に惜しい怪人を失いました……。
 「我々は必ず勝つ! あのアキラの体内に秘められた、無敵の力を手に収め、最後には必ず、この地球を制服してみせるのだぁ、 ぬはははははは!!」
 気がつけばすっかりアキラの秘密頼りとなり、 単勝万馬券を当てて人生一発逆転だ!みたいな調子になってきた世界犯罪組織シャドウの明日はどっちだ……!
 次回――プロフェッサー・ギル、復活?!

◆第14話「怪談 ギルの亡霊が地獄で呪う」◆ (監督:永野靖忠 脚本:長坂秀佳)
 「アキラ……アキラは、儂の実の息子だ……!」
 ビッグシャドウは謎の装置でハカイダーの頭脳からプロフェッサー・ギルの亡霊を呼び出し、その口から明かされる衝撃の事実!
 ギルは世界最強巨大人造人間・ジャイアントデビルの設計図を、特殊インクを用いて自らの二人の子供の背中に隠したのであった。 果たして、特殊インクを読み取る方法は? ギルのもう一人の子供とは?
 「そいつは言えんなぁ……シャドウナイト! ふふふふはははは、ぎゃはははははは!」
 いやらしい高笑いを残してギルの魂は冥界へ戻ってゆき、シャドウナイトがブラックサタンにギルの子供を検索させると、 マユミという10歳の少女が90%以上の確率でギルの子であるとして浮上する。
 シャドウは、白髪を振り乱し巨大な一つ目という見るからにグロテスクな怪ロボットをマユミ(斎藤浩子さんというと、 『超人バロム・1』で港南小のマドンナを演じていた方でしょうか)の元に送り込み、その催眠ガスを浴びせられたマユミは、 自分の顔が醜く崩れ落ちる恐怖に苛まれる事に。
 怪人に「美しい顔」と言われ、その虚栄心を心の隙間として突かれるマユミですが、実際に自分を美しいと思っている様子なのが、 大変、須崎くん(『超人バロム・1』)を思い出させます!
 怪談シリーズとしては『四谷怪談』を下敷きにしているようで、醜くただれた特殊メイクの女性が繰り返し登場してマユミを責め立てる、 容赦のないエスカレートぶり。
 その頃、マユミを助け、怪人を追っていたイチローは、シャドウ戦闘員にまんまと一杯食わされていた。
 「しまった! ぬいぐるみだったか!」
 戦闘員が怪人の被り物を被って偽装する囮作戦は、多分初めて見ましたよ……!
 一方、謎の装置の上でジタバタして出番終了かと思われたハカイダーは、本日もしぶとくアキラとリエコを狙い…………なんだか、 今日のハカイダーは、マスク部分に、大変、違和感があるのですが……。……台無し系の話になりますが、 中の人の頭部のシルエットが露骨に浮き上がってしまっている上に、ハカイダーの顔部分も少しずれている気がするのですが、 急遽代役が入ったらマスクが合わなくてとかなんかあったのでしょうか。
 アキラ少年の事は心配だが、それはそれとして聞こえてくる誰かの叫びを無視できない体質なので、 しばしばアキラを無防備にしがちなイチロー兄さんが何とか駆け付け、更にジローも参戦。
 「一対一では俺に勝てんと見たなぁ」
 未だにその認識を維持できるのが、一周回って尊敬に値するよ!
 「馬鹿め! 今兄さんには助けに行かなければならない人がいる」
 イチローをマユミ母子の元に向かわせ、アキラとリエコを逃がしたジローは黒タロスと激突するが、 「チェンジ!」でいつものようにきりもみジャンプで瞬間変身したキカイダーに、空中で炸裂するまさかのクライマックスジャンプカニばさみ!
 変身シークエンスが完了していない無防備な時間を狙って放たれた掟破りの悪の一撃がキカイダーに命中し…………いつ以来でしょう、 黒タロスがちょっとでも格好良かったのは。今日から君は、カニタロスだ!
 ……まあその後、軽々と投げ飛ばされて斜面を派手に転がり地面に這いつくばって痙攣していたところを、 シャドウナイトに「ふん、負け犬め」と蔑まれるのですが!(笑)
 「今頃来るなら、何故……」
 そして、先程までの威勢はどこへやら、ナチュラルに逆恨みを口にし、凄い、凄いよハカイダー……。
 命令無視の単独先行をなじられたハカイダーはシャドウ基地に連れ帰られ、ビッグシャドウの前で粋がるも精神攻撃を受けて藻掻き苦しみ、 屈服。
 アキラ達の秘密を聞き出す為にリエコを確保するのが仕事であり、命令以外の行動は許されない、と行動理念を再上書きされる事に (まあ、記憶回路に問題がある上に面の皮が栃尾の油揚げなみに分厚いので、またすぐに忘れそうですが)。
 マユミ母子がグロテスクなメイクの幽霊に執拗に追い立てられる中で、母子の絆という要素がしっかり盛り込まれたのは、 今作ここまで欠けがちな部分だったので良かったです。逃げ惑う母子はリエコとアキラと遭遇するが、 まとめて追い詰められた所にトランペットの音色が響き渡り、待ってましたのヒーロー登場。
 幻影で母子を脅かしていたシャドウロボット・ナンバーセブンティーワン(大変言いづらそう) が正体を現すとジローも駆け付けて兄弟はダブルチェンジを決め、本日も戦闘員が次々と爆発四散し首が飛ぶゴア表現のカーニバル。 ……基本的に戦闘員の破壊描写にこだわる今作ですが、兄弟が色々と技名を叫ぶのも加えて、今回は特に派手な印象。
 シャドウ戦闘員を壊滅させ、ナンバー71を挟み込んだ兄弟は、ゼロワンカット → (無言で踏む) → ゼロワンドライバー →  大車輪投げ → ブラストエンドと左右から怒濤のコンビネーション攻撃を浴びせ、一方的に虐殺。
 …………いや、あの、さすがにちょっと、鬼か。
 そして冒頭のギルの言葉を裏付ける形で、「アキラ=ギルの息子」であると語ったリエコは 、そのアキラの教育係であったという正体を明かす。(迫り来る正義の鉄拳によって壊滅の危ぶまれる悪の組織に居てはいけない、 と)アキラの将来を危惧したリエコはアキラを連れてダーク基地を逃げ出した身であり、 イチローらに正体を明かす事を頑なに拒む・各種の謎スキル・キカイダー兄弟についてある程度知っている、というリエコの秘密とは、 元ダークの関係者だった、というのは納得の行く種明かし。
 シャドウの探すアキラの兄弟――もう一人のギルの子供とは、アキラの二つ上で名前をヒロシ。だがリエコはその顔を知らず、 もう一人の教育係であるミサオと現在行動を共にしているかも、わからないのであった。
 「ジャイアントデビルとは、この世に誕生させてはならない、悪魔のロボットなんです。ジャイアントデビルは、 地球を破滅させる力を持っているんです」
 ダーク破壊部隊が次々とキカイダーに始末される中で、焦り追い詰められたプロフェッサー・ギルが設計した狂気の巨大ロボ、 ジャイアントデビル(シルエットは土偶)。果たしてその設計図を、そしてその身に設計図を背負わされてしまった哀しき兄弟を、 キカイダー兄弟は守り救う事が出来るのか。――アキラの兄ヒロシはどこに。イチローは征く、果てしなき戦いの道を。
 そしてハカイダーは今日も遠吠えする、果てしなき負け犬の道を。
 今回わかった事:シャドウの誇る巨大電子頭脳ブラックサタンも、 ぽんこつ率90%。
 名前か、名前が悪いのか……因果を書き換え、裏目エネルギーをこの時空に呼び込んでいるのか……。
 シャドウの先行きに対する不安はまあさておき、“謎の美女”と言っておけば何でも許されるのもさすがに限度を遙かに越えていたリエコの秘密が、 まさかの相応に納得が行くというミラクルな着地を見せ、 そこから繋がる新たな謎が新展開の推進力となる豪腕は、さすがの長坂秀佳。
 終わりよければ全て良しな部分はあり、今後このテンションが維持されるかも怪しいですが、 今作の物語部分への印象が大きく好転する一撃となりました。
 主にハカイダー関係を中心に今作的な見所も数多く、なかなか楽しめた一本。
 次回――「爆発」シリーズ、スタート?!

◆第15話「爆発 ジャイアントデビルの秘密」◆ (監督:永野靖忠 脚本:島田真之)
 付近の海中にウラン鉱脈があったりキャプテン・クックの財宝があったりする事で有名な行川アイランドで僕と握手!
 ナレーション「ギルの亡霊は言った。アキラに兄弟が居る、アキラに兄弟が居ると。だが、ビッグシャドウでさえ、その人間の、 性別・年齢・顔かたちまでは、暴く事は出来なかったのだ」
 繰り返しが秀逸な『01』名物ナレーションの名調子に乗せて、ブラックサタンがポンコツなのではなく、 多分ギルの偽装工作がなんか凄いのだ! と華麗なスライドからスタート(笑)
 アキラ兄弟の秘密を知ろうとするシャドウは、かつてギルと研究活動を共にしていた日本有数の電子物理学者・山形博士を標的に定め、 房総の海岸で密猟をしていたイチローと、リゾートプールを覗きに行っていたアキラは、 これに巻き込まれる事に。
 誠意もなければ反省もなく、そもそも記憶容量が256KBしかないハカイダーは、シャドウを出し抜こうと山形博士の娘を狙い、 笑いながら水着の女性達を砂浜で追いかけるという最低な感じの絵になったハカイダーに炸裂する、謎の少年の投石!
 ナレーション「この少年こそ、ジャイアントデビルの秘密を握る、アキラの兄・ヒロシであった」
 黒タロスを挑発して身を隠したヒロシ少年は、あくまで偶然、危険な目に遭っている人々を助けようとした正義感の持ち主、 とナレーションで紹介され、ムキになって追いかけるもまんまと逃げられてしまったハカイダーは、山形娘らを再び襲撃。
 そこに基地破壊ブラザーズが駆け付け、チェンジするだけエネルギーの無駄とばかり、 人間体のままの兄弟に顔面を殴られ、蹴り飛ばされたハカイダー、地面を無様に転がり、撤収(笑)
 本人はずる賢く立ち回っているつもりだが浅はかな思考!
 真っ正面からヒーローに殴り負けて連戦連敗の戦闘力!
 足があると引っ張らずにはいられない短絡的で狭い視野!
 もはや、換気扇の油汚ればりにしつこい以外いいところ全く無しなのですが、お互いに一軍を率いさせてメギド王子 (『科学戦隊ダイナマン』)と戦わせてみたい(笑)
 ハワイアンショーの魅力に取り憑かれてしまったアキラは「逃げんのやだ!」と言い出し、 ここのところスポットが外れ加減だったアキラの口から、逃亡生活への不満が飛び出す、新しいアプローチ。
 「……アキラくん、逃げ回らなくてもいい日が、必ず来る。いや、僕がきっと、そうしてみせる」
 「いつ?! その日はいつ?!」
 「……僕を信じてくれ。近い日に必ず、必ずだ」
 アキラの感情を理解しつつ、軽々しく断言しきれないイチローの苦しい胸の内が窺えますが、果たしてこの口約束、 後々の地雷になる事はあるのか否か……非常に情動が薄かったアキラくんが、遅まきながら当たり前の自己主張を始めましたが、 この要素が巧く収まっていくのかどうかは興味深いポイントです。
 少年少女を苦しめるシャドウに対し、新たな怒りを燃やすキカイダー兄弟は山形博士の行方を探すが、それを阻もうとする黒タロス。 一方、別荘に篭もり、開発してしまった恐怖の新エネルギーに関する資料を全て処分しようとしていた山形博士は、 シャドウの死神ロボットナンバー42・タコバズーカに襲撃され、ごく自然に猟銃を手に取っていた。
 投石と猟銃は、70年代日本人の基本装備です。
 「すまない兄さん。僕が居ながら、山形博士を連れ去られてしまったとは」
 「新エネルギーの秘密を燃やしてしまおうとした、山形博士の事だ。シャドウの恐怖の拷問にも、口は割らんだろう」
 繰り返し笑ってしまう、個人的な今回の大ヒット台詞なのですが、イチロー兄さんは時々、 思考法が某ロボット刑事や某正義のエージェントに限りなく近づく時があって、怖い(笑)
 そんなイチローの予測通り、体から白煙があがるレベルの電流を流されても耐え抜く山形博士の意志と口が硬いと見たシャドウは、 娘を人質に取る作戦に変更。
 洞穴に逃げ込んだアキラ・リエコ・山形娘はタコバズーカに追い詰められるが、 ゼロワンドライバーで岩盤をくりぬいたゼロワンが裏側から3人を助け、 正面に躍り出るといきなりのヤクザキックをタコの顔面に叩き込み、博士を救出。 ゼロワンカットからのブラストエンドでタコはあっさりと爆死し、ハカイダーは捨て台詞を残して逃亡するのであった。
 怪談シリーズが終了し、正攻法の怪ロボットとして登場したタコバズーカですが、終始雑な扱いのまま、 これといった見せ場もなく吹き飛び、通常の怪人ポジションの仕事を半分以上ハカイダーがこなす作劇の結果、 ハカイダーの株取引停止と怪人の魅力の低下が同時に進行する、という困った状況になってしまっています。
 ハカイダー、2週ぐらいお休みを取った方があらゆる意味で良いような気がするのですが、そういうわけにもいかないのか……。
 山形博士を狙うシャドウの陰謀は阻止され、仲良くなった山形娘とボール遊びをするアキラだが、 ボールを追いかけて車に轢かれそうになった山形娘を、中性的な風貌と衣装の謎の人物が助けると無言のままヒロシの手を引いて去って行き、 OPクレジットからは「ミサオ」だと思われる人物が、ミステリアスに顔見せ。
 「ああ、我がジャイアントディビルよ。必ずこの手で完成させてみせよう。そして世界を征服するのだ。世界を我が手に握るのだ」
 運命の兄弟がそれと知らずに交錯する一方、ビッグシャドウはジャイアントデビルへの執着を強めていき……話の理屈はともかく、 なんだか少々、プロフェッサー・ギルを思わせる言い回しに感じましたが、果たして、蠢く影の真の姿や如何に。
 次回――「アキラの行く手を阻み、非情冷酷極まるシャドウ組織の攻撃を、ダイナミックに映し出す、 「恐怖! ミイラ男のニトロ爆弾」にご期待下さい」。
 なんて力強いメタ予告だ……(笑)

◆第16話「恐怖! ミイラ男のニトロ爆弾」◆ (監督:永野靖忠 脚本:押川国秋)
 「落ちるのは水爆じゃなくてお前達だ!」
 長い逃亡生活のストレスを訴えるようになったアキラ少年の為、砂浜で野球をして戯れようとする健気なイチロー兄さんだが、 何かに気付いてバットを振らず、受けたボールをそのまま投げ返すと、アキラくんが爆発!
 見たかこれが殺人K字投法!! ……じゃなかった、いつの間にかアキラは、イチロー抹殺を目論むシャドウミイラに入れ替わっていたのだ!
 「シャドウミイラか。それにしては迂闊だったな。アキラくんは左利きでボールを投げるんだ!」
 ニヤリと笑ってびしっと突きつけるイチローですが……ええとその前に、アキラくんの心配をしていただきたい(笑)
 強力なニトロ弾を放つシャドウミイラは、ゼロワンカットを受けてバラバラになりながらも、首だけが浮遊。
 「ふふふふふふふ、いくらでも暴れるといい。アキラとヒロシの秘密は、もうすぐシャドウ組織の手に移るのだ」
 「なんだって?! くそぅ、罠だったか」
 イチローの気付かない間にアキラが誘拐されているどころか、何故かシャドウ怪人が「ヒロシ」の名前を把握しており、 なにかと飛躍しがちな今作標準からしても戸惑う時空の歪みが発生中。
 アキラを誘拐した車はなんとかジローが食い止めるが、悪の組織に追いかけ続けられるアキラの心の傷は深い。 自らの抱えてしまった秘密を憎み、背中を地面に擦りつける自傷行為がアキラの心境を劇的に抉るのですが、 前回から急に情緒不安定になってきたのは、第1話時点で記憶を封じていた催眠(?)が解けてきたのか……?
 年相応の小学生らしくはなってきたのですが、やはりもう少し、 イチロー&ジローとアキラ少年の“心の交流”の段取りが丁寧に組まれていれば、というのは惜しまれるところです (そういう構造になっていれば、イチローらとの旅路の中でアキラが失った感受性を取り戻していく的な流れとして納得度が高まりますし)。
 「……わかったよアキラくん。……でも、この地球上に、ビッグシャドウから逃れる場所はないんだ。戦って奴らを倒すより方法が無いんだ。 ……だからもう少し待ってくれ。きっとシャドウ組織を倒してやる」
 前回−今回と、キカイダー兄弟が「ヒーロー」として「子供」と「約束」を交わし、その瞳に高まる、破壊の殺意!
 一方、観光気分にひたっていたリエコはシャドウミイラに捕まり、アキラ兄弟の秘密を喋れと、シャドウ基地に吊されて折檻を受ける。
 「よぅし、知っているかいないか、コンピューターにギルの霊を呼び出させ、この女と話をさせるぞ!」
 だいぶ軽い扱いになってきたな、霊。
 「プロフェッサー・ギル! スクリーンに姿を現すんだ!」
 「うるさいロボットどもめ。また儂の知恵を借りたいというのか」
 そして、もはやハカイダーが変な機械に入るまでもなく姿を見せる亡霊ギルは、霊界アドバイザーに就任していた(笑)
 ……強引に理屈をひねりだすなら、ブラックサタンが前回ハカイダー(プロフェッサー・ギルの脳)を必要としたのは、 霊界における亡霊ギルの居場所をキャッチする為であり、一度キャッチした亡霊とは、電話番号を知っているような感覚で、 いつでも通信可能、といった感じでしょうか…………?
 亡霊ギルは会話の弾みでヒロシの名を洩らし、シャドウナイトが「ヒロシ! ヒロシというのか!」と興奮するので、 本来はここでシャドウ組織がヒロシの名前を知るという段取りだったのでしょうが、事象変換系必殺技ブラストエンドの連続使用により、 世界に時空の歪みが発生している模様です。なお、ぱっと見で性別のわかりくかったミサオは、女性と言及。
 ブラックサタンは亡霊ギルの記憶細胞の中からヒロシとミサオの映像記憶を抽出し、『01』世界における「霊魂」とは何か?  に関しては専門家の研究を待ちたいと思いますが、ところどころ話の辻褄が合わないのは、 既に半ば壊れているハカイダーの目にする現実と妄想(願望)が混ざり合っているからで、本当のハカイダーは、 ブラストエンドによって爆ぜ散ったあの時からずっと、ビッグシャドウに回収された頭部だけがブラックサタンに接続されているのでは。
 そう考えると、コンピューターが気軽にギルを呼び出せる事に納得が行くような(笑)
 どこまでが現実で、どこまでが妄想なのか、今回は冴えている黒タロス&シャドウナイトは、 もはやリエコの存在と全く関係ないところでミサオとヒロシの情報を手に入れるが、出社したビッグシャドウは突然、 某国が水爆を輸送中の爆撃機を奪い、東京上空で水爆を落とせ、と新たなプロジェクトを指示。
 あ、あの、今、現行プロジェクトが良い感じに進行しているんですが……と当然の反論を試みるシャドウ部長だが、 東京に水爆を落とせば世界が大混乱に陥り全面核戦争に発展して人類絶滅するんじゃねぇの? と、ビッグ社長は思いつきを譲らない。
 「そうすればこの地球は、簡単に我々のものになるというわけですね」
 最近ヘッドハントされてきたハカイ課長が、へっへっへと胡麻をすり、本日は大変三下属性です。
 「その通りだ。世界最強のロボットを作るよりその方が早道かもしれん」
 放映当時の世相としては、キューバ危機より約10年、米ソが全面核戦争の危険性を意識して緊張緩和に向けて進みつつも冷戦構造は未だ続き、 今日よりなお「全面核戦争」という言葉が身近であった時代であり、今作のスリラー路線としては納得なのですが、 「人間の愚かさを寓意的に煽る」などの要素が欠けている為、率直すぎて元も子もなくなってしまうのが今作らしいというか何というか。
 かくして、ビッグ社長の突発的な命令を受けたシャドウナイトと黒タロスは水爆の奪取へ向かい、 シャドウミイラとシャドウゴーレムがアキラ&ヒロシの確保を任される事に。
 ところが、元ダーク関係者の意地を見せたリエコが、運搬中のニトロ弾を奪って逃走。 鍛え抜いた投石スキルで次々とニトロ弾を放り投げ、揃って脅える怪人コンビ(笑) 爆発に怯みながらもじわじわとリエコを追い詰めた末、 ニトロ弾が尽きたところで一斉に走って追いかけるのが(ミイラ、先程までゴーレムを先に行かせてゆっくり歩いていたミイラ……)、 前回のハカイダーと同じ具合に最低の絵面になった時、波を蹴立てて疾走してきたのはイチローのダブルマシーン!
 ジローも駆け付けて兄弟の変身バンクを交互に映して混ぜ合わせたダブルチェンジから怪人コンビを撃退し、二人はリエコからの情報で、 シャドウの狙いを知る。ジローは爆撃機へ、イチローはヒロシ達が宿泊している筈のホテルへと急ぎ、 兄弟が二手に分かれて悪の組織に立ち向かう分割展開なのですが、どういうわけかジロー(前作主人公) の方が一応格上の敵とマッチアップし、冒頭に掲げた格好いい台詞を決め、ここまでの助っ人ポジションを越えて目立った扱いになるのは、 そろそろ作品フォーマットが変わったりするのでしょうか。
 ミイラとゴーレムの二体を相手取った01は、何度バラバラにしても甦るミイラに苦戦するが、 まずはブラストエンドでゴーレムを始末し、物凄い勢いで吹っ飛んでいくゴーレムの着ぐるみ(人形?)(笑)  ミイラにも怒濤の連続攻撃からブラストエンドが炸裂し、事象の変換と決定により復活を阻止されたミイラは、 五体バラバラとなって消し飛ぶのであった。
 一方、爆撃機のハッチから飛び込んだキカイダーは、狭い機内における二対一の戦いで苦しむが、 突き落とされそうになったところを逆転し、宣言通りにハカイダーとナイトを上空から叩き落とし、水爆投下の阻止に成功するのだった!
 こうして、キカイダー兄弟の奮闘によりシャドウの計画は阻止されるが、ミサオとヒロシは、既にホテルから姿を消していた。そして、 シャドウにとっては幸い(?)にも、海に落下していたらしいナイトと黒タロスは疲労困憊のていで海岸線から地上に上陸し 、怪人ポジションの雑な扱いには定評のある今作ですが、体力の限界まで遠泳してヨロヨロしている悪の組織の幹部二人というのは、 なかなか衝撃のシーン(笑)
 「まだ、勝ち誇るのは早いぞゼロワン」
 「最後の勝利は、必ず、我々の手に輝くのだ!」
 だが、遠吠えタイムに入るとしゃっきりする二人は、去りゆく二台のサイドカーへ向けて、雄々しく負け惜しみを口にするのであった!
 次回――東映名物・虚無僧軍団襲来! そしてそろそろ、設計図を巡る攻防戦が限界になってきたのか?! 続ければ続けるほど、 イチロー兄さんのボディガードとしての雑さが目立つ事になっていたので、作品コンセプトを切り替えるのは有りかなとは思いますが、 急展開の予感。

◆第17話「大巨篇!! 恐怖の巨人デビル始動」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 一般市民を尺八ロケットで吹き飛ばす虚無僧軍団!
 ブラウン管の中から出現するシャドウナイト!
 冒頭一分で、視聴者の正気のハードルを粉々に打ち砕く大巨篇!!
 ……サブタイトルで自ら「大巨篇」と銘打つ作品は、さすがに始めて見たような気がします、はい。
 シャドウナイトは、ジャイアントデビルの動力として、ウランの10倍のパワーを持つという新エネルギー・ハイセリウムを狙い、 開発会社の社長を脅迫。ハイセリウムの危険性を恐れ、重役会議にかけた上で闇に葬り去るつもりだった社長がそれを拒否すると、 虚無僧軍団による社員の殺害映像を見せつけようとするが、そこにゼロワンが姿を見せる。
 「我こそはシャドウロボット背番号3、虚無僧ドクロ!」
 虚無僧の一人が怪ロボットの正体を見せ……本当に背番号だったのか。
 全身赤のカラーリングで虚無僧感もドクロ感も薄い虚無僧ドクロ、 先日シャドウゴーレムが所持していたのと同じような装置を首からぶら下げているのも気になりますが(なお、劇中で全く活用されず)、 一応、右手にくっついた武器が尺八モチーフなのか……?
 ゼロワンに作戦を妨害されたナイトは社長に実力行使を試みるがキカイダーに阻まれ、撤収。社長はジローからの護衛の申し出を断り、 ハイセリウムの製造方程式を収めた鞄に、時限爆弾を仕掛けてある事を告げる。
 「私は奴らが現れたら、わざとこれを奪い取らせます。そこで奴らは終わりです」
 この社長、殺された社員の報復として、シャドウを壊滅させるつもりだ。
 ところが、会社に向かう途上で道に倒れた女性を介抱した社長は、その女性――ミサオに財布を擦り取られ、 その成果を共に喜ぶヒロシくんの正義感は、ど・こ・へ(笑)
 ヒロシの教育係だったミサオは、生きる為ならダーティーな手段も辞さないはすっぱなアウトローとして登場し、もしかしなくても今作、 長坂さんが本編に書くまでキャラの設定が共有されないのでは。
 この運命の悪戯により、社長が財布の中に隠していたハイセリウムの方程式はミサオ&ヒロシの手に転がり込み、 会社の前で首尾良く奪われた鞄の時限爆弾も、虚無僧ドクロによって見破られてしまう。金目の物を探すミサオ&ヒロシは、 虚無僧が捨て置いた爆弾鞄を頂戴しようとするが、イチローに声をかけられるとバスに乗り込み慌てて逃走。一息つく二人だが、 いつの間にやら草津温泉に辿り着いたバスの乗員乗客は、全てシャドウマン!
 一方、さっぱりした髪型に変わったリエコと散歩していたアキラ少年が、ミサオ&ヒロシの投げ捨てた鞄を拾う形で運命の交錯は続き、 それぞれ手持ちの情報が限られた登場人物達のすれ違いが群像ドラマを生む、というのは後年において井上敏樹の得意技ですが、 今作では肝心のアキラとヒロシの心情にあまり焦点が当たらないので、もう一つ劇的な広がりは発生せず (この当時の時制や距離移動の大雑把さも大きいですが)。
 ミサオ&ヒロシを追おうとしていたイチローは黒タロスの襲撃を受け、工場地帯で両者は対峙。
 「ハカイダー! もう逃げられんぞ」
 口の端を軽く持ち上げる表情が残酷すぎて、怖い、怖いよイチロー兄さん!
 一方の黒タロスは、復讐の為に誘き寄せたのだと主張。
 「相手になろう。貴様が生きていては、世の中の為に良くない!」
 「よくぞ言った。行くぞ!」
 敵認識してもらえてちょっと嬉しいハカイダーの突撃をかわしてチェンジしたゼロワンは、 工場の屋根の上からダイビングゼロワンドライバーを放ち、あっという間に劣勢に陥るのがさすがハカイダーさすが。
 苦し紛れにドラム缶を投げつけるも有効打には至らず、逆にゼロワンカットの直撃を受けたハカイダーは、爆発で目くらましをして撤収。 折角、主題歌流して盛り上げようとしてくれたのに、「轟く爆音」のところで終わったぞ、戦闘!(笑)
 無様に逃げ帰ってきたハカイダーを先程キカイダーに叩きのめされたばかりのナイトが嘲笑い、 東映ヒーロー物においても史上屈指に低レベルと思われる内輪もめが発生するが、その間に別働隊はヒロシとミサオの身柄を確保しており、 幹部不足に悩んでいたらしいビッグシャドウは、外部からのスカウトよりも、内部からの昇格を優先するべきだったのでは。
 この一週間の間に、霊界アドバイザーのプロフェッサー・ギルを巧くおだてて話を聞き出していたのか、特殊インクはどこへやら、 ヒロシの背中の図面はあっさりと読み取られ、更にミサオが所持していたハイセリウムの製造方程式も、シャドウ組織の手に落ちてしまう。
 ミサオとヒロシがもはや用済みと処刑場に引き立てられていた頃、困った鞄を交番に届けたリエコとアキラは何故かパトカーに乗せられて、 そのまま草津温泉に!
 いつもなら、滞在先はいずことも知れぬ地方都市として処理できるのですが、今回に限って、 虚無僧や鞄を拾得する場面の映像が都心部(銀座か大手町の辺りか?)に見える為、気がつけば草津温泉、が物凄く狂気を孕む事に(笑)
 「あの……」
 「なんですか?」
 「随分遠いんですね。いったいどこへ?」
 「どこへ? はっはははははははは……地獄」
 邪悪な容貌に変わる警察官だが、ダークの女・リエコは、走行中のパトカーの扉を開けると、アキラくんと共に脱出。 その前に立ちふさがった警察官はハカイダーの正体を現し、女子供には強気のハカイダーは二人を追い詰めるが、 そこに炸裂するジローキック!
 ジローに助けられたリエコはエンジンのかかりっぱなしだったパトカーに乗ってすかさず逃走し、 ご都合主義を煮詰めたレベルが半端ではない存在のリエコさんですが、この思い切りの良さに関しては、嫌いではありません(笑)
 危ない鞄に気付いたジローは慌ててその後を追い、時限爆弾を抱えたリエコ&アキラ←ハカイダー←ジローのチェイスシーンは、 なかなかのサスペンス。……主に、ハカイダーが時限爆弾で吹き飛ばないかの不安で。
 と固唾を呑んでいたら、転んだリエコが咄嗟に投げつけた鞄がハカイダーの鳩尾にクリーンヒットした瞬間に、爆・発。
 「キカイダー……ここで俺と勝負を……つけろ……」
 もんどり打って地面に倒れ、普通に死にかけているハカイダーはチェンジもしないジローに殴り飛ばされて絶体絶命クライマックスジャンプの危機を迎えるが、 ビッグ社長によって回収され、もはや某電波人間を彷彿とさせる存在感になって参りました。
 一方、処刑の迫るミサオ&ヒロシを救出するイチローだが、罠を主張するナイトの命令により、虚無僧軍団の火炎放射に囲まれてしまう。
 (くそぅ……奴らを倒すのは容易い。だが、俺がこの場を離れたら、二人は、焼き殺されてしまう!)
 しかしその時、キカイダーが助っ人に駆け付けると、「我らのキカイダーが窮地を救った」と問答無用のナレーションが久々に炸裂し、 イチロー兄さんはチェンジ・ゼロワン。

この世に悪のある限りー この世に敵のある限りー

 変身したゼロワンが着地するところに綺麗にリズムを合わせて挿入歌が流れ出し、明らかに、 主題歌よりこの挿入歌の方が扱いがいいのは何故なのか!(妙に好きではありますが)
 ゼロワンと虚無僧軍団の死闘が、火山湖をバックに繰り広げられ、草津ロケという事は、後に正義のシンボルも修行した白根山でありましょうか。
 ゼロワンカットで火炎放射尺八を切り落としたゼロワンは、虚無僧ドクロが頭から飛ばしてきた輪っか攻撃を軽々とかわすと、 ドロップキック後に腕をクロスさせると光が放たれ、硝子の砕け散るようなカットが追加された新演出のブラストエンドを放ち、 斜面を転がり落ちた虚無僧ドクロは大爆発。
 ハイセリウムの資料は、責任を感じて取り戻したミサオから返却され、社長が自ら焼却。ミサオ&ヒロシは再び姿を消してしまうが、 リエコとアキラの無事を確認したキカイダー兄弟は、悪魔の兵器ジャイアントデビルの完成阻止を力強く誓う。
 だが……ヒロシの背中の図面を元にジャイアントデビルの開発は大きく進行し、残すは既に心臓部のみとなっていた。
 「ジャイアントデビルよ……ジャイアントディビルよ……おまえが存分に暴れられる日は近いぞ。おまえは全世界を征服できる。 ゼロワンやキカイダーなど、おまえの小指でひねりつぶす事ができるのだ」
 「殺す……ゼロワンとキカイダーを、俺が殺してやる」
 果たして、キカイダー兄弟は残されたアキラの背の図面を守り抜き、ジャイアントデビルの完成を阻止する事が出来るのか?!  次回――「アキラを助けようとしたゼロワンは、アキラに触れた途端、大爆発した」。
 今回、刺激の強い展開の釣瓶打ちはともかく、急に在庫整理を始めたような畳みかけ飛躍が激しすぎて、 話の内容は今ひとつに感じていたのですが、次回予告があまりに面白すぎて、大幅加点(笑)

◆第18話「史上空前絶後!! 人造人間大爆発」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 サブタイトルの書き文字の背後が、完成迫るジャイアントデビル、という大変不吉な画面でスタート。
 社長命令により出撃したデビル頭部は、工場地帯を爆撃して派手な爆発を引き起こす、 今作にしては大変気合いの入った上々のデビュー戦を飾り、早速、虎の威を狩る気満々のシャドウナイトとハカイダー。そして、 帰還したデビル頭部に一斉に拍手と歓声を送るシャドウ組織は、笑顔と触れ合いを大切にするアットホームな職場環境です。
 「この背中さえ、この背中さえ……」
 一方、アキラは背中の図面を消そうと洗車機に飛び込もうとしており、 15−16話で描かれるも前回は完全に無視されていたアキラの哀しみが、長坂脚本でも拾われたのは良かった。
 「アキラくん、心配しなくていい。ジャイアントデビルは必ずぶっ壊してやる!」
 ジャイアントデビルの引き起こす災禍を目にして苦悩の深まるアキラと、それを見守るリエコの悲哀が掘り下げられ、 誓いを新たにするジローだが、シャドウの用意した偽アキラロボットの罠にはまり、海中で大爆発!
 海面に浮かび上がった赤いギターに目を瞠るリエコだが、続けてイチローも同じ罠にはまり、偽アキラロボットと共に大爆発!  リエコは爆心地で、バラバラに散らばった機械部品と、白いトランペットを発見する……。
 ナレーション「イチローのトランペットだ! 卑劣極まりないシャドウの罠に落ちたゼロワンは、果たして死んでしまったのだろうか?」
 シャドウ基地では、いつの間にやら捕まっていたアキラの背中の図面が遂に解読され、 「出たぞーー」と皆で喜ぶシャドウ組織は仲間と共に成長していけるアットホームな職場環境です。
 遂に完成に大きく近付くジャイアントデビルだが、果たしてキカイダー兄弟は本当に木っ葉微塵に吹き飛んだのか……?  疑問を呈すビッグ社長に対し、万全のセキュリティ体制をプレゼンするシャドウナイト(声変わった……?)だが、 対キカイダー用トラップとして人造人間のマシンボディへの反応をやたら強調したので当然、イチローに変装したリエコによって突破されてしまう。
 だが、リエコの変装はハカイダーに看破され、アキラとまとめて白根山処刑場で刑場の露となりかけたその時、 山麓に木霊するトランペットの音色。それを吹き鳴らすのは――
 「キカイダー?! 貴様生きていたのか?!」
 「ハカイダー! あのアキラくんが偽ロボットだという事は、進み方の早さで見破った!  貴様等の罠に落ちるようなキカイダーではない! だが、このペットは兄さんのペットだ! 兄さんはどうした?! 俺は貴様達を許せん!」
 俺は罠に引っかからないが、もしかしたら兄さんは引っかかるかもしれない、と本音が顔を覗かせるジローだが、 続けてジローのギターを弾くイチローが登場する、わかっていても粋な仕掛け。
 「貴様も生きていたのか?!」
 「はははははははは! あんな子供騙しでは死にはせん。ハカイダー! 爆発速度よりも早く、俺が空を飛べる事を忘れていたのか!」
 貴様等の罠などまるっとお見通しだ! と嘲笑うキカイダー兄弟ですが、君たち2人とも、後で真剣にリエコさんに謝れ(笑)
 「ジロー!」
 「兄さん!」
 2人は互いの獲物を投げ合って交換すると、宙に飛び上がってチェンジし、そこに重なってボーカルの流れ出す挿入歌の入り方が、 滅茶苦茶格好いい。
 この世に悪のある限りー
 「キカイダー! ジャイアントデビルは俺がやる! 雑魚に構うな! アキラくんとリエコさんを頼むぞ!」
 シャドウナイトとハカイダーを十把一絡げに雑魚扱いしたゼロワンは草津基地の内部へと侵入し、 基地破壊のテーマことED曲にチェンジ。佇むジャイアントデビルを前にゼロワンは次々と戦闘員を薙ぎ払い、 途中からキカイダー達も加わっての大乱戦は力の入った殺陣。
 唐突にタッグ攻撃を繰り出すナイトとハカイダーだが兄弟の前に打ち破られ、深刻なBGMが表現するのは、 明らかにシャドウ組織の大ピンチ(笑)
 基地を枕に最後の意地を見せるかと思われたナイトとハカイダーは始末書覚悟で撤退し、残るジャイアントデビルの砲火が兄弟に迫るが、 兄弟はデビルミサイルを回避すると、兄弟のエネルギーをクロス。
 「「ダブルブラザーパワー!」」
 ナレーション「ゼロワンとキカイダー兄弟の合成エネルギー、ダブルブラザーパワーが遂に出た!」
 合体光線が炸裂するとジャイアンデビルは呆気なく炎上し、その余波で草津基地は大爆発。偽アキラ、ジロー、イチロー、 そして最後にジャイアントデビル、とまさに「人造人間大爆発」のサブタイトルに恥じないエピソードでありました。
 大巨篇が2話で終了した気がしますが、一応、ダブルブラザーパワーは兄弟のシンクロが完璧でないと逆に二人が吹き飛んでしまう一か八かの切り札である、 と後から解説され、久々の爽快な基地破壊に意気揚々と草津を引き上げるブラザーズ。
 この世に悪の基地がある限り、基地破壊ブラザーズの戦闘力は3倍になるのだ!
 かくして、ジャイアントデビルは炎に消え、草津基地と共に設計図も焼失。最強最大の超兵器完成にこだわるビッグシャドウは、 再びアキラとヒロシの兄弟に魔手を向けるのであった…………と、幹部の一人をリタイアさせるでもなく、 ジャイアントデビルの脅威をチラリと見せて、物語の構造はまた元に戻る事に。
 一度、作品コンセプトごと大胆な整理を行って新展開に持ち込むぐらいするのかと思っていたのですが、大山鳴動して元の木阿弥。 ジャイアントデビルの脅威を未完成状態で見せておく、という仕掛けそのものは面白かったので、 蓄積されてきたキャラクターが今後のドラマに生かされる事と、シャドウ組織のテコ入れを切に祈りたいです。
 次回――悪の戦士・キングインディアンと改造アパッチ軍団が襲来し、ハカイダーまさかの強化改造?!
 ……もしかして今作のスピリットを最も継承している作品は『世界忍者戦ジライヤ』なのではないかという気もしてきましたが、 どこへ征くのか『キカイダー01』、果てしなき戦いの道は続く!

→〔その4へ続く〕

(2022年6月19日)
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