■『キカイダー01』感想まとめ2■


“見える 見える
光り輝く太陽電池の 01ボディ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『キカイダー01』 感想の、まとめ2(7話〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕 ・  〔まとめ5〕
〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕


◆第7話「落雷!機能低下のゼロワン直撃」◆ (監督:永野靖忠 脚本:長坂秀佳)
 幹線道路沿いにある食堂の蛇口から炎が噴き出し、姿を見せる金色の龍の怪人。
 「俺は地獄の王者。この店は俺が貰った」
 うん、凄く、駄目そうだ!
 黒い胸甲部分がハカイダーと重なり、右手が龍の頭になっている黄金龍の怪人、というデザイン自体は悪くないブラックドラゴン、 予告で少しは見せてくれた夢を開始1分でダムの底に葬り去り、ハカイダー部隊は今週も最初から最後までクライマックス!
 日没の迫る中、アキラの食欲に振り回されたイチローは、食堂で待ち構えていたハカイダー部隊の罠にはまって大ピンチ。
 ステータス変動が激しすぎて夜間はもはやヒロイン化するイチロー・危機感の薄いアキラ・ 謎の変装にこだわり状況を引っかき回すだけのリエコ・合間合間にテンポ悪く挿入されるコメディシーン担当のカメラマン・ 揃いも揃って役立たずぶりを強調されるハカイダートライアングル・引き伸ばされ続ける空中追いかけっこ……と、本編の7割方、 いつも以上に雑でぐだぐだな展開が続く中で見所は、口笛の音色と共に、なんだかライバルっぽく登場する黒タロス(あれ?)
 「なかなか見事だったゼロワン。だが、俺に勝てるか?!」
 支離滅裂な供述をしながら再びサタンダークネスを放った黒タロスはブラックドラゴンへと変身し、 戦闘力10分の1と化したイチローを必殺の落雷召喚で追い詰める。
 「ん?! あの黒雲は……またか。チェンジ!」
 ナレーション「雷と雲の発生装置、サタンサンダーメカは、キカイダーに爆破された」
 血も涙も無い。
 ナレーション「イチローの太陽電池は、回転を始め、10倍のパワーが戻った」
 「チェンジ・キカイダーーーー、ゼロワン!」
 変身と共に音楽が変わってゼロワンのターンとなり、必死に抵抗するブラックドラゴンへ向け、 銃弾完全無効のヒーローウォークを悠然と決めて迫るゼロワンが、超無慈悲。
 「さすがゼロワンめ〜〜〜、ぬぉぉぉぉ、覚えとれぃ!」
 逃・げ・た? と一瞬思ったのですが、自暴自棄になったブラックドラゴンは「ゆくぞーー!」と掛け声も高らかに突撃を仕掛け、 ハカイダー黒の悲壮感がクライマックス。
 連続カッターからドライバーを浴びたブラックドラゴンはよろめきながらも立ち上がるが、無慈悲なブラストエンドの直撃を受け、 哀れ大爆発。
 崖下に転がる半死半生の黒タロスの周囲を囲み、「どうしよう、こいつ……」と顔を見合わせる赤青銀のトライアングルだが、 声をかけて息があるのを確認すると助け起こすも、黒タロスは配下へ当たり散らし、いつもの遠吠え。
 「俺の事より、自分たち力の及ばなかった事を恥じるがいい…………! おのれゼロワン! このまま済むと思うなよ!  ハカイダー部隊には、まだ死神ミサイル・原爆砲があるのだ!」
 不穏すぎる名称が飛び出す一方、ジローと別れたイチローはアキラ少年とともにサイドカーを走らせ、
 ナレーション「(いつもの)」
 そして、崖の上に並んでその背に憎しみの視線を向けるハカイダー四人衆。
 「死ぬがいいゼロワン……我がハカイダーには、まだガッタイダーがあるぞ!」(いつもの)
 ……かと思いきや、スクラムを組んだ四人衆はその場でグルグルと回り始め――

アカ、アオ、 ギン、クロ―― CLIMAXフォーム」

 時間の波を掴まえて一つになったカルテットは、4つの脳を意識したと思われる巨大な頭部と、 ビッグワンばりに派手なマントが特徴的な「四人衆合体ロボ・ガッタイダー」へと変じると、 誰より高く昨日より高くサイドカーへと絨毯爆撃を仕掛け、イチローとアキラはその爆炎に飲み込まれるのであった!
 走り去るキカイダー兄弟→遠吠えするハカイダー四人衆、 というここまで積み重ねてきた定番のオチを自ら破壊する不可能超えて掴み取った驚愕のクライマックスで、つづく。
 ……いや、あの、本当に、まさか合体してCLIMAXフォームになるとは思いもしませんでした(笑)
 ラストのセオリー破りによる衝撃の展開以外は、雑な編集(居ない筈の黒タロスがバンク映像で攻撃に参加していたり) とテンポの悪い引き延ばしの目立つ内容でしたが、アキラ少年を確保しようとするハカイダートライアングルの
 「俺とブルーは左右から行く。レッド、おまえは」
 「言われなくても後ろだ」
 というやり取りは、性格が出ていて面白かったです。
 …………というかあれ?! アキラくんも木っ葉微塵にした?!

◆第8話「イチロー危機!四人衆合体!!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 「あの小僧さえ手に入れば、我らハカイダー部隊は、既に全世界を征服したも同然」
 ゼロワンのダブルマシーンは死神ミサイルの直撃を受けて吹き飛び、 幸い木に引っかかって無事だったアキラ少年を発見するハカイタロス四人衆。
 「む?! キカイダーが戻ってくるとは!」
 だがそこに、またかよ兄さん! と飛んできたキカイダーがアキラ少年をかっさらっていき、 四人衆は再びスクラム組んでクライマックスジャンプ!
 ハカイダーCLIMAXフォームは、破壊衝動の赴くままサイドマシーンを空爆し、笑ってしまうレベルの大爆発で映像は大変派手なのですが、 四人衆の目的の見失い具合も大爆発。
 君たち、アキラ少年を、何だと思っているのだ。
 「貴様の思い通りにはさせんぞキカイダー。たとえ地の果てまで逃げようと、アキラの体は、必ず我がハカイダー部隊が、貰い受ける」
 四人衆はクライマックスジャンプの勢いで山口県・下関市へと到達し、ジローとアキラがマリンホテルへ投宿する姿を、 今日もリエコが、石の後ろから見ていた。
 ロードムービー形式、というほど訪れた土地の人々と接触するわけでもない為、 ふんわりと日本各地を彷徨しているイメージの今作ですが、地方ロケ回に接続される中でこのぐらいばっさりとお約束を盛り込んでくると、 かえって面白い事に(笑)
 「どうだアキラくん、綺麗なホテルだろ」
 「お兄ちゃんは?」
 「ははは、イチロー兄さんの事なら心配しなくてもいい。あんな事でやられるような男じゃない」
 兄への信頼、というより判定基準の雑さを感じさせるジローだが、談笑する二人を、シルクハットを被った怪しすぎる男が見つめていた……。
 定期的に少年を半裸にしなくてはならない設定ってどうなのだろう、というかこれが少女だったらもっと問題だったか、 というよりは要するに忍法帖フォーマットであり、いっそ時代劇なら入浴はいつも必然になったのでしょうが、 大浴場に出現した合体ダーにアキラが襲われ、それを阻まんとするジロー。目を覚ましたイチローもアキラ少年の危機に駆けつけ、 クジラの上に再び書き割りで登場!
 「悪のあるところ必ず現れ、悪が行われるところ必ずゆく、正義の戦士・キカイダー01!」
 右手にトランペットを持ち、背中を向けたまま口上を述べるのがお約束のイチロー兄さんですが、最後に名乗りを決める際、 右手側から半回転して正面を向くのではなく、背中を向けたまま左手側から半身で顔を出す、というのが格好良くて好き。
 ハカイダーCLIMAXは、ボウガン・鞭・棒、と各タロスの得意武器を扱う、合体フォームらしい戦いぶりを見せ、 それに対して巨大なタコの遊具の上でイチローがチェンジするのは名シーン(笑)
 70年代特撮の醍醐味は、色々と変な所に立つヒーローです!
 変身したゼロワンは、タイアップ回らしく遊園地にゼロワンドライバーで鉄くずの山を築き、
 「ゼロワン! 俺が相手だ!」
 と叫ぶや横から飛び道具を投げつけるもあっさりと弾き返されて背中を見せるボスキャラは、初めて見たような気がします。
 いよいよ運命の灯火がCLIMAXになってきた合体ダーだが、そこに黒のシルクハット+サングラス+マスク+赤いスカーフ+上下白のスーツ、 という怪しすぎる扮装の男が乱入すると凄まじい勢いでアンドロボット軍団を蹴散らし、人間離れした大ジャンプで状況を攪乱。 合体ダーはどさくさに紛れて逃走し、ひとまずアキラ少年を連れてホテルに戻ったイチローの元を、リエコが訪れる。
 今更ながら、イチローにアキラを預けている方がかえって危険度が高いので、アキラの身柄を渡してほしいと申し出るリエコに対し、 まずはアキラの抱える秘密を教えてくれない事には、トラックに乗って一人で逃げ出すような女の言う事は信用できない、 と問い返すイチロー。
 「知っています。でも言えません! 言ったら……アキラちゃんが可哀想です」
 「……可哀想?」
 互いの主張は平行線を辿り、まだ見ぬアキラ父の外道の予感ゲージがまたも上昇する中、アキラに迫るシルクハットの男!
 「貴様、何者だ?!」
 「そうか。自己紹介がまだだったね。名乗りだけはしておこう。世界大犯罪組織シャドー大幹部。影の騎士――シャドーナイト!」
 男が名乗って腕を組むと、変装用の帽子・サングラス・マスクが次々と飛んで外れる演出が洒落ているのですが、しかし、 その辺りの薬局で慌てて買ってきたようなマスクは、変装に本当に必要だったのか。露骨な不審者の装いでアキラ少年を監視し、 自ら部屋に侵入するもイチローに見つかると即座に少年を投げ捨てる雑な仕事ぶりは、本当に世界大犯罪組織の大幹部なのか?!
 男は、一つ目タイタン+甲冑+タコ、みたいな怪人に変身すると瞬間退場し、ホテルを離れたイチローとアキラは、秋芳洞へ。 洞窟の入り口にアキラを残したイチローは、カルスト台地でアンドロボット軍団を待ち受けると千切っては投げ千切っては投げのデストロイモードに入るが、 その隙にリエコがアキラへと近づいていた。
 強引な理屈でアキラをイチローから引き離そうとするリエコに対し、イチローを慕うアキラが男を見せる成り行きなのですが、 イチローとアキラの信頼関係を上手く積み重ねてきたとはとても言いがたいので、二人の絆の強調としては、 完全に空回り。
 「大丈夫だ! お兄ちゃんは、僕が守ってやる!」
 リエコに煽られ、一人で鍾乳洞に踏み入るアキラはハカイダー部隊の追撃を受け、秋芳洞へ戻ってきたイチローは、 太陽光線の届かない鍾乳洞の奥で、アキラとリエコを守りながら合体ダーに追い詰められてしまう。
 「無茶よ! 太陽電池が止まってるのに、ガッタイダーと戦えるわけがないじゃない!」
 昼夜問わず、ちょっと暗がりに入るだけで戦闘力が激減してしまうゼロワンですが、段々とわかってきたのは、恐らく、 蓄電システムを持たないのではなく電力の消耗が激しすぎるのであり、普段がオーバースペックすぎるという事。
 なにも常に全力を発揮しなくとも、最大出力でも通常の半分のパワーになる代わりに、 太陽電池が止まった状態でも三分の一程度のパワーを発揮できる省エネモードなどあれば、 チェンジ無しでハカイダー部隊ぐらい完全破壊できる気はします。
 「善良な市民を守る――それがキカイダー01の使命なのだ」
 ヒーロー宣言に合わせてここで流れ出すBGMGが格好良く、アキラとリエコを逃がす為に打って出るイチロー。
 「たとえゼロワンにチェンジできなくてとも、俺は貴様なんかに、負けはしないぞ!」
 と言いつつ、及び腰(笑)
 「口だけは立派だが、おまえのパワーは十分の一だ。俺はハカイダーよりも4倍の力にパワーアップされている。 念仏でも唱えろゼロワン! ふふははははははは!」

その時、突然太陽が射した!

 本日も兄のヒロイン体質を見越した弟の助けにより、鍾乳洞の天井から射し込んだ陽光を浴びたイチローはチェンジゼロワンRX!
 二人揃った基地破壊ブラザーズは合体ダー率いる自爆アンドロボット軍団(と言及されるが、これといった特別な攻撃はしてこない) とクライマックスバトルに突入し、地方ロケ回だけに、晴れて良かったとしみじみ思うところです。
 ここで青空でないと、01のヒーロー性的にも、いまいち格好が付かないですし。
 キカイダーがアンドロボット軍団を引き受けている間に01はハカイダーCLIMAXと激闘を繰り広げ、脳と配線の化け物、 という合体ダーのデザイン自体は割と面白いのですが、やはり、科学者の頭脳よりも一流の武術家などをさらってきた方が良かったのでは…… と運用方法に疑問符が付くまま、空中ブラストエンドの直撃を受け、無惨に吹き飛ぶのであった。
 「三人とも、見事に合体回路をやられている。もう四人衆合体はできん! おのれキカイダー01!  このままでは済まさんぞ……必ず貴様達を殺す! 八つ裂きにしてやる!」
 本日も見事なCLIMAXジャンプを決めてひくひくしている赤青銀のトライアングルの容態を確認した黒タロスは懲りずに怒りを燃やし、 ハカイダー部隊のクライマックスはまだまだ止まらない?!
 一方、無事にアキラと再会するイチローとジローだったが、一瞬の油断を突かれ、 不審者もといシャドーナイトにアキラをさらわれてしまう。
 次回――
 「世界大犯罪組織・シャドー大幹部、シャドーナイトにさらわれたアキラは、01、キカイダーの活躍によって救い出された」
 予告の1行目でアキラを奪い返されているシャドーは、本当に世界大犯罪組織なのか?!
 大幹部とまとめて「自称」の不安が急速に高まり、シャドー……シャドウ……ぜ、ゼネラル……ううっ、動悸が………… いったい何が信じるべき現実なのかわからなってきましたが、立て板に水のナレーションも映像も、物凄い情報量の詰め込まれた予告で、 物語は風雲急を告げる!
 登場人物の心理描写が薄いままの目まぐるしいドタバタ劇、は相変わらずですが、 地方ロケ名物の観光地バトルによる映像の多彩さが今作らしいハイテンポ・ハイテンションの進行と噛み合うという思わぬ副産物を生み、 前回よりはだいぶ面白かったです。
 しぶとく生き延びたハカイダー部隊の賞味期限はいよいよ限界を感じさせますが、 虎の子のCLIMAXフォームを破られた四人衆に起死回生の手立てはあるのか?! 新たな悪の組織の影に飲み込まれ、 下関の地で人生のCLIMAXを迎えてしまうのか?! 次回も、ハカイダー四人衆のCLIMAXジャンプにご期待下さい。

◆第9話「大犯罪組織シャドウ出現の怪!!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 見所は、リエコの旧知の博士に変装して身辺に近付き、アキラ少年をさらおうとするもなかなか隙がなく、 仕方がないので延々と遊園地できゃっきゃうふふする羽目に陥る赤タロス。
 ……まさかそれが、思い出のCLIMAXになるなんて。
 イチローとジローはシャドウナイトにさらわれたアキラ少年を追い、70年代特撮名物モーターボート! を追って水面を走る、 ちょっと雑な二台のサイドカーのミニチュア!!
 だがアキラを抱えて小島に上陸したシャドウナイトには青タロスと銀タロスが襲いかかり、 その間に逃げ出したアキラはキカイダーに救われてロープウェーに逃げ込むが、山の上ではハカイダー黒青銀が待ち受けていた!
 という、時制や場面移動の異次元具合が激しすぎて、一周回って面白い事に。
 そして、ロープウェーの到着をじっと駅で待つ悪役、の間抜けさ加減がクライマックスを突破しようとする中、 今日もイチロー兄さんがロープウェーの上に書き割りで現れる!(写真に絵を書き足している?)
 「チェンジ・キカイダーーー、ゼロ・ワン!」
 イチローはゼロワンへと変身し、あらゆる基地と切り札を破壊しつくされ心身共に摩耗しきったハカイダー四人衆は、 もはや正常な判断能力を失ったまま基地破壊ブラザーズに正面から挑もうとするが、乱入した何者かの攻撃を見るや、即座に逃走。 そしてキカイダー兄弟の前に、新たな敵が姿を見せる。
 「俺はシャドウロボット、アカメンガメ。俺と戦うのはよせゼロワン。おまえに勝ち目は無い。アキラを渡し、 ハカイダーのように逃げ去るのが賢明だ」
 「間違えるなアカメンガメ! キカイダー01は正義の戦士だ!」
 「いひひひひひひ、それほど死にたいのかゼロワン。行くぞゼロワン……アーカメンブーメラン!」
 (かきーん)×2
 「う、ぐぁ?!」
 物々しく登場したシャドウ亀の放った飛び道具はキカイダー兄弟にあっさりと弾き返され、 その直撃を受けて亀は無様にひっくり返り……笑っていい場面なのかどうか真剣に考え込む羽目に。
 「今日のところはお前達と戦う意志はない! アカメンガメは俺が引き取る!」
 シャドウ上司が適当にその場を誤魔化して亀の身柄を拾って逃げ帰っていたその頃、 アキラくんは展望レストランでリエコと豪華な舟盛りを楽しんでいた(笑)
 「お兄ちゃん達も食べられればいいのに」
 「そうね。でもあの人達は機械だもの」
 「違う!」
 「え?」
 「お兄ちゃんは機械なんかじゃない。お兄ちゃんはお兄ちゃんだ!」
 「……ごめんなさいね」
 ところどころに挿入される観光要素はだいぶ無茶なのですが、悪玉サイドではないが心を寄せているわけでもないメインキャラから、 「ロボットである主人公」にドライな視点から冷水が浴びせられる、というのは印象的となり、 それを否定するアキラくんの言葉も劇的になりました……残念なのは、そこに至るアキラくんの心情の積み重ねが弱い点ですが。
 食事でアキラを懐柔しようとするリエコであったが、偶然にも同じレストランに居た元上司のなにがし博士に声をかけられ、 3年前までその博士の下で働いていたという事が判明。
 にこやかな中年の紳士である博士、全く悪気のない様子の堂々かつ執拗なボディタッチが今見ると100%セクハラな事に、 時代の流れを感じます。
 リエコにもリエコなりに、大型トラックで一人で逃げ出すに至る過去の片鱗が見え始めた頃、イチローはジロー(妙に詳しい)から、 シャドウの脅威について説明を受けていた。
 「シャドウの一番目の目的は、一千万人殺人計画なんだ」
 巨大コンピューター・ブラックサタン(とても駄目そうな名称)が抽出した、全日本人の10分の1の無目的な殺害…… そんな暴挙を許してはならない、と正義の怒りを燃やす兄弟は、それはそれとしてアキラくんを見失っていた事に気付き、周囲を捜索。 博士に変装した赤タロスはリエコ・アキラと遊園地を満喫するが、シャドウの視線に気付くと色々と面倒くさくなり、 二人まとめて砂浜に引きずって本隊と合流した所で響き渡るギター、そしてトランペットの音色。
 何かと飛躍の多い今作ですが、イチローとジローがホテルの屋上に2人並んで正義のメロディを奏でる姿は、 なんだかんだと格好いい(これもまた、一つの飛躍ではあり)。
 「揃っているな、ハカイダー四人衆!」
 「今日こそ貴様達の息の根を止めてやるぞ!」
 もはや屋根を持たない貴様等の、命の器を完全破壊だ! と地上に降り立った兄弟はシンクロアクションでアンドロボット部隊を薙ぎ払い、 遊園地とマリンホテル周辺で、たっぷりと尺を採った激しい集団戦。

 この世に悪のある限り この世に敵のある限り

 ここで流れる、児童合唱団コーラスの挿入歌が、割とお気に入り。
 激闘、というか死闘、というか、もはや一方的な虐殺は砂浜へともつれこみ、無慈悲な鋼鉄の腕によってアンドロボット軍団が壊滅すると、 慌てて海へ逃げ込もうとした赤タロスと青タロスはかえって動きが鈍くなり、 各々の得意の武器も取り出せぬままにゼロワンの殴打を浴びると、二体まとめてブラストエンドでジ・エンド。
 ナレーション「恐るべき、ハカイダー四人衆の内、レッドハカイダー、ブルーハカイダーは、キカイダー01によって倒された」
 海中にパーツが散らばる映像が描かれるとナレーションさんによって後腐れ無くトドメを刺され、 瀬戸内の海でそのCLIMAXを迎えるのであった。
 ナレーション「今や、復讐の鬼と化したハカイダーは、呪いを込めて01の破壊を誓う。――だが、 動き始めた大犯罪組織シャドウの新しい魔の手とは。シャドウの首領、ビッグシャドウの正体はなにか。イチローはゆく、果てしなき、 巨大な悪の組織との、戦いの道を」
 「01め! キカイダーめ! 貴様達の体は、この俺の手で、必ず八つ裂きにしてくれるわ!」
 残る黒タロスと銀タロスは海岸線でありったけの憎悪を込めて遠吠えし、 最後の最後まで彼我の戦力差を全く計算できないまま赤タロスと青タロスが、とうとうリタイア。 ムカデとワニに変身して最後の抵抗を見せるでもなし、実にあっけなく閉店間際に半額シール貼られて二体まとめて海の藻屑と化しましたが、 初登場からこの方、脅威感ほぼ皆無という極めて残念な悪役としての生涯を全うし、今となっては、 第1話で関東原子力研究所が破壊されたのは集団幻覚だったのではないかとさえ思えてきます。
 次回――無慈悲なる鉄拳キカイダー兄弟に対して悪の同盟はなるのか?! 風前の灯火のシャドウ基地の運命にご期待下さい。

◆第10話「大首領ビッグシャドウの怪奇!?」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
 ハカイダー部隊が教えてくれた事。
1,悪の組織たるもの、トップが軽々しく最前線に出てはならない。
2,悪の組織たるもの、組織の階層構造を意識し、ヒーローに倒されても虚勢を張れるだけの怪人ポジションを相当数配備すべし。
3,同様に、トップが頻繁に部下と横並びになってはいけない。
4,やむを得ず3の条件が満たせない場合、組織上層部の人間関係の険悪さをアピールし、足の引っ張り合いが不覚の原因である、 という言い訳を用意しておこう。
5,自爆装置のセキュリティは最低限2段階認証で。
 「儂の名は大犯罪組織シャドウの代表、ビッグシャドウ」
 形を変え続ける黒い影、で表現されるビッグシャドウは組織存亡の崖っぷちに立つ黒タロスをスカウトするが、 現状認識の甘さとプライドの高さには定評のある黒タロスはこれを拒絶。遠隔攻撃で黒タロスを謎の空間に引きずり込み、 床をのたうつ苦しみを与えるビッグシャドウの正体不明の脅威が強調される一方、黒タロスの株価下落は留まるところを知らず、 もはや取引停止状態。
 上場廃止の危機が迫る中、銀タロスはイチローを襲撃し、黒タロスはシャドウナイトとシャドウ亀に一時共闘を持ちかける。 日曜大工でこつこつ修理していたサタンダークネス発生装置が火を噴いて変身不能に陥るイチローだが、 そろそろ余裕が出てきたのか慌てず騒がず敵襲に対応している内に銀タロスの振り回した電磁棒が装置を壊してしまい、 チェンジ・ゼロワン。
 シャドウコンビは黒タロスと銀タロスが慌てている内にサイドカーに駆け寄り、 毛布に包まれたアキラをさらうせせこましい手段で漁夫の利を得ようとするが、それは囮のぬいぐるみだった!
 と物凄い勢いで悪役の間が抜けていく『01』マジック!
 いちはやくリエコと逃走していたアキラの前には銀タロスが立ちはだかるもゼロワンがそれを阻み、 今日もゴルフ場に築かれていく鉄くずの山。ところがその隙にシャドウコンビがアキラとリエコをさら…… おうとしてゼロワンと睨み合いになっている間に、背後でアンドロボット軍団が二人の身柄を掠め取り、 新たな悪の組織の登場で三つ巴の戦局の中、ヒーローがかつてない危機に陥る、のではなく…… 二つの組織が競い合うように小物路線を加速させていくという悪夢のごとき『01』マジック!
 まあ、結果的にアキラとリエコはかつてない危機に陥っているので、ヒーローにとってもかつてない危機といえるのかもしれませんが、 イチロー兄さんのリアクション薄めなので、あまり切迫感がありません(笑)
 アンドロボットを止めたいが、背中を向けるとゼロワンに殴り殺される、 と微妙な立場に追い込まれて右往左往するシャドウコンビはビッグシャドウによって回収され、 両者を正面衝突させようというビッグシャドウの思惑通りにハカイダー基地へと急ぐゼロワン。
 そこではアキラ少年がパンツ一丁で水責めを受けており、小学生でも容赦なく吊すのが、大変70年代です。
 アキラの体に特殊インクで隠された、世界最強のロボットを作り出す為の設計図についてリエコは必死に口を噤み、 拷問に耐えている間にゼロワンが登場。
 「ゼロワンは、俺の電子棒にやられて身動きが出来んぞ、かかれ!」
 ラッキーヒットが鳩尾に入り、腹痛を訴えてうずくまるゼロワンを取り囲んで気勢を上げる銀タロスだが、そんなわけないだろう、 と思い切り顔面に拳を叩き込まれ、アキラ達を逃がす為のゼロワンの陽動にまんまと引っかかってしまう。
 銀タロス軍団を殴り飛ばしたゼロワンはハカイダー基地に取って返すと、崩壊の叫びに飢えた基地破壊センサーの導きにより、 全国ハカイダー基地MAPと、その下に設置された〔非常用 押す〕のボタンを発見。
 「ハカイダー基地の自爆装置か。このボタンを押せば、全国のハカイダー基地が木っ葉微塵だ」
 基本的に〔押してはいけない〕ボタンに、力強く〔押す〕と書かれているのが変なツボに突き刺さったのですが、 世界征服に乗り出すにあたって必要な組織体制を全く構築できていないのに、どうして、 万が一の非常事態にあらゆる証拠をまとめて隠滅する準備だけは整えてあるのハカイダーーーーー?!
 普段全く戦力差を計算できないのに、どうして、そこだけ、凄く弱気なの?!  それとも最後の最後、ヒーローに追い詰められた時に「おのれキカイダー……だが、貴様もただでは帰さん!」 と断末魔を残すや基地もろとも道連れ自爆を敢行する時が楽しみで仕方なかったの?!
 そんな悪の組織の浪漫をあっさり踏みにじろうとするゼロワンに立ち向かう銀と黒だがざっくりと殴り倒され、 コンマ1秒も躊躇なくボタンを押したゼロワンは脱出。
 「おお?! くそぅ、またしてもゼロワンめ! おおー?! く、くそぉー! ば、爆発するぞ! のわ! ぐぉ、ぬぁ、逃げるんだー!」
 カウントダウンもなく潔い爆発に巻き込まれた黒と銀は這々の体でその場を逃げ出し、 意外と残っていた全国のハカイダー基地は次々と炎に沈み、地上ではハカイダー基地完全破壊クエストを成し遂げた鋼鉄の腕が、 もはや戦力の99%を失ったハカイダーを待ち受ける。
 「待っていたぞハカイダー! 今日こそおまえ達と決着をつけてやるぞ!」
 「望むところだゼロワン。貴様の為に、ハカイダー基地は爆破された! 3年がかりで築き上げた、ハカイダー基地をだ!」
 切ない。
 「何年がかりで築こうと、悪は悪だ!」
 「おのれ〜、おのれゼロワン! その口、二度と聞けなくしてやるぞ!」
 とうとう身一つでキカイダーに立ち向かう黒タロスと銀タロスだが、まずは銀タロスがブラストエンドの直撃を受け、 呆気なくクライマックスジャンプ。
 「おのれゼロワン!」
 この期に及んで正面から素手で殴り合いを挑み、誇り高いライバルというより頭脳回路の配線ミスが深刻に疑われる黒タロスは、 膝蹴りの連打を浴びて地面に叩きつけられるとすかさず銃火器を取り出し、照準をゼロワンへと定める。
 「最後だゼロワン」
 今更この程度で優位に立ったと信じて疑わない頭脳回路の(以下略)は、低く嗤いながら引き金を引くが、 ジャンプでそれをかわしたゼロワンはチョップで銃をはたき落とすと一方的なパンチの嵐を浴びせ、弱った黒タロスにブラストエンド!
 ここまでの事例を見るに恐らく、ブラストエンドは特定の手順を踏む事で時空をねじ曲げ「○○は破壊された」 という結果をもたらす事象変換系の必殺技(その為たとえば、「ガッタイダー」を破壊できたが、 「ハカイダー四人衆」は破壊しきれなかった)なので、不自然にクライマックスジャンプした黒タロスは抵抗不能のまま空中で完全破壊される…… と思われたその時、何者かが更にその事象を上書きする事で爆発が収まると黒タロスの姿はかき消え、後には不気味な笑い声が響くのであった。
 さすがに黒タロスは在庫一掃処分でポイ捨てされずリサイクルに回されたので、再登場に一応期待したいです。 脳の配線を繋ぎ直して幾つか部品を交換すれば、口笛の吹き方ぐらい思い出せるのではないか。
 一方、謎の女リエコはアキラと合流したイチローの前から早々に姿を消し、西の京・山口は湯田温泉に辿り着くと、独り呟く。
 (……私、やはりアキラちゃんの側に居てはいけないんだわ)
 今回、ハカイダー部隊の激しい折檻を受けながらもアキラの秘密を守り通そうとし、 体を張ってアキラへ対する真摯さをアピールしたリエコが、新展開のどさくさに紛れて退場? と焦りましたが、 予告に登場していて一安心。リエコは言行と扱いがあまりに遠回しすぎて、好感を持ちづらいストーカーになっていたので、もう少し早く、 アキラへの真心を明示して視点の変わる感情移入のフックを作っておければ良かったな、と思うところ。
 「いくら逃げても無駄だ。アキラはシャドウが手に入れる。全世界を征服できるのは、このビッグシャドウしか居ないのだ。ゼロワン、 貴様の命、そう長くは無いぞ。ふふはははははははは!! あはははははは……」
 一つの邪悪を打ち破ったキカイダー01だが、千変万化する巨大な影は闇に蠢き、次回――トーンの変わった予告で、怪談シリーズ開幕?!
 子供向けスリラーとしての怪談シリーズもよくある展開ですが、既に下落傾向の見えるシャドウの株価は、 世界大犯罪組織の面目を見せつけ、相場を盛り返す事が出来るのか、大変不安になってきます。
 賞味期限切れの深刻だったハカイダー部隊に取って代わる新たな悪の組織が登場するも、 燃えない生ゴミの片付けを優先して直接対決は控え目となり、作品にようやく登場した一般怪人ポジションも2週に渡って顔見せの一当たりに終わる、 という勿体ぶった展開ながら、それによって未知の敵の脅威が膨らむのではなく、新たな敵の小物感が増していくという、 ある意味、斬新な作劇。
 今回ジローが登場しなかったので、前回の兄弟合奏を最後の見せ場にお役御免かと思ったら次回予告で登場していましたし、 全国のキカイダー基地を生け贄に捧げる事で難を逃れたシャドウ基地は、果たして、基地破壊ブラザーズの猛威に抗う事が出来るのか?!
 もはや「アキラくんの抱えた秘密」が、「全世界の悪の組織への壮大なトラップ」になりつつある今日この頃、イチローは征く、 果てしなき戦いの道を!

◆第11話「怪談 地下秘密基地の幽霊女」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳)
 「ビッグシャドウ様、ハカイダーめは、ビッグシャドウ様にお助けいただいた事に感謝し、シャドウに忠誠を誓うと申しております」
 い、言ってない……。
 前回、無惨に焼却されそうになったハカイダーはビッグシャドウにより回収された事が早々に明かされ、 ビッグシャドウが気配を現すや反射的に膝を屈するハカイダーも、上司に媚びへつらう中間管理職モードを発動するシャドウナイトも、 どちらも先行きが心配です。
 一方、都内ではシャドウの怪ロボットが暗躍し、夜の闇に紛れ宙を舞う白装束の女が市民を襲う、割と本格的な幽霊描写。 足下の暗がりに浮かんだ人の顔がニタリと笑みを浮かべるシーンは、普通に怖い。
 「一千万人殺人計画……この計画を完遂させる為、我々は既に5368人の人間を殺してきた」
 死者の数としてはとても無視できないが、進捗率としては0.05%という微妙な数字が明かされ、 巨大コンピューター・ブラックサタンは次なる生け贄として10歳の少年を選出。
 「シャドウの掟に従って殺すのだ」
 ビッグシャドウの言葉の間、モニターに次々と年端もいかない少年少女の顔が映し出される(無作為抽出中なのか、 既に処分済みなのか……)のがシャドウの邪悪さをいや増すのですが、大規模ながらもう一つ目的の見えない計画や、 ビッグシャドウの言葉遣いからは、何やら宗教的秘密結社の雰囲気も漂わせます。
 なおシャドウ戦闘員はアンドロボットといまいち区別がつかず、今回の組織も駄目そう感を地味に後押しするのですが、体半分、 黒にリペイントされたのか……?
 転がり込んでいた空き家で、狙われた少年の悲鳴を聞きつけたイチローはアキラ少年を放置して飛び出していき、 少年に襲いかかる幽霊の顔アップの背後で、暗闇の中にトランペットを吹くイチローの姿が浮かび上がる、 というのはやたら格好いいカット。
 「おまえは誰だ?! 聞こえないのか!」
 振り向くかと思いきや、ワンフレーズ追・加(笑)
 「ええーい、何者だ?! 名を名乗れ!」
 「悪のあるところ必ず現れる、悪の行われるところ必ずゆく。正義の戦士、キカイダー01!」
 「私の名は、シャドウ殺人部隊ナンバーセブン! 幽霊女ぞ!」
 怪人の名称にこだわる作品ではありませんが、もはや色名も捨てたそのものズバリな幽霊女との戦いが始まり、 いきなり火を噴く幽霊バルカン(笑) 炎に巻かれたイチローはチェンジゼロワンし、呻き声をあげて姿を消す幽霊だが、 そこに1ミクロンの溜めもなく出現するライバル気取り。
 ……もう少し、もう少しだけでいいので、引っ張って欲しかったな復活!
 救出した少年を抱えたまま、黒タロスと幽霊女と戦闘員に囲まれる01だが、そこにギターの音色が響き渡り、寺のお堂の屋根の上に、 ジローが、兄さん直伝の書き割りで立った!
 「チェンジ! スイッチON! ワン・ツー・スリー!」
 が今作では初披露され、一週間ぶりの兄弟共闘によりシャドウ部隊を撃退。 命令無視の独断専行だったハカイダーはナイトとカメに回収されていき、アキラの元に戻った兄弟は、 シャドウ戦闘員に狙われるアキラをこっそりと連れ出していた女性がリエコの変装と看破する。
 「なんの為に変装したりするんですか」
 「……私がアキラちゃんの側に居ては、余計、シャドウに狙われます。でも、心配で……」
 イチロー兄さん、アキラくんの扱いがところどころ雑ですからね!
 新展開になっても、どうにも使いどころの難しい謎の女・リエコですが、敵組織に狙われるアキラくんを守りつつ、 そのエピソードの事件を解決する、という今作のフォーマットの難しさも感じます。
 不完全な良心回路により空気の悪さを察知したジローがひとまず話題を変え、都内で頻発する行方不明事件を調べる兄弟は、 広大な地下通路を発見。
 「東京の地下にこれだけの通路を作れるとは、シャドウ組織も、思ったより遙かに大きいぞ」
 イチロー兄さんは(くくく……こいつは基地の壊しがいがありそうだぜ)みたいな悪い笑みを浮かべ、 戦闘員に追われたリエコ達が、幽霊女に襲われ地下で労働力として働かされていた人々ともども始末されそうになった時、 地下空洞に木霊するトランペット。
 「どうするというのさ。ここでは太陽電池は効かない」
 「太陽は俺が連れてきてやる!」
 毎度恒例の身も蓋も無さを台詞の格好良さで誤魔化し、キカイダードライバーが岩盤をくりぬく事で射し込んだ陽光を浴び、 イチローはチェンジ・01。ジローが囚われの人々を救出している間に、ゼロワンドライバーと幽霊ドライバーでそれぞれ上昇すると、 地上で激突。
 幽霊女が繰り出してきた、分身攻撃によるピンクのタイツ姿の幽霊戦闘員を蹴散らすと助っ人に亀が乱入するが、 これといって何をする時間も与えられないまま、必殺の事象変換攻撃・ブラストエンドにより、幽霊女と亀は諸共に爆死…………て、 え?
 幽霊女が後方ジャンプで姿を消した後に亀が出てくるので、正体は亀だったの? と思いきや、 ブラストエンド後に幽霊と亀が一緒に爆発しており、情報が整理しきれずに戸惑っていると、 この後ナレーションさんに「大犯罪組織シャドウの殺人部隊、幽霊女とアカメンガメはゼロワンに倒された」ときっぱり断定されました!
 ……何しにきたんだ、亀。
 てっきり怪人(着ぐるみ)の正体を現すのかと思っていた幽霊女が最後まで幽霊女のまま、というのもそれはそれで凄かったのですが、 そのついでに3話引っ張ったカメ怪人が呆気なく始末されるという 想像の斜め上を越えて大気圏外へ飛び出していく展開で、凄い! 凄いよ『01』!
 作品に向き合う際の適切な周波数が、未だ全く掴めません(笑)  第4話ぐらいの時に「なんとなく見方がわかってきた」気がしたのですが、幻想でした。
 キカイダー兄弟は地下通路に爆弾を仕掛けて大々的に吹き飛ばし、いいかシャドウ、これが、貴様等の基地破壊のプレリュードだ!
 シャドウの本当の秘密基地は東京都心の地下にあるに違いない、とイチローはその調査を請け負い、基地破壊ブラザーズは、 いつか来るシャドウ基地大爆破の日への高鳴る期待感に、胸躍らせるのであった。
 「俺が居る事を忘れるなよ、ゼロワン。たとえ、アキラはシャドウに譲ってでも、俺は貴様に殺された、 ハカイダー3兄弟の仇を……ビッグシャドウ様の命令がどうあろうと、何よりも先に、貴様を殺す。覚えておくがいいゼロワン、 貴様の体は、俺が八つ裂きにしてやるのだ!」
 意外と身内への情に厚かったハカイダーは去りゆくキカイダーに怨嗟の叫びを向け、遠吠えタイムのパターンは守られて、つづく。

◆第12話「怪談 墓場の化猫呪いの生首」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳)
 前回から、シャドウ編突入という事でOP映像が変わった結果、 OPからめっためたに殴り飛ばされる黒タロスの前振りのないクライマックスぶりに涙を禁じ得ません。
 「我がシャドウの全世界征服の為の、死体改造計画」
 と冒頭からまた強烈な言霊が叩き込まれ、計画の邪魔になる10歳の少年・杉下ゴイチが、シャドウ殺人部隊ナンバー44の標的にされる事に。 学校で襲われた少年を先にジローが助けるという変則パターンで、シャドウ戦闘員もバラバラだ!
 「この怪我は、病院じゃ治せない」
 「え?!」
 「このまま放っておけば、ゴイチくんは、幻にうなされて、狂い死にしてしまいます」
 ゴイチはリエコとアキラの逗留先の知人の息子で、その怪我を目に留め、 タチの悪い霊能者みたいな事を言い出すイチロー兄さんだったが、体内で特効薬を精製し、 腹部をぱかっとあけて薬を取り出すというロボットぶりを発揮。
 イチローの薬により容態の持ち直すゴイチだが、屋敷の周囲に出現した空を飛ぶ黒猫の首をイチローが追っている内に、 いつの間にやらゴイチ母に変化していたナンバー44が正体を現し、襖に映る人猫の怪、という今回も正攻法のホラー演出。
 “主な視聴者層と同じ年頃の子供を怖がらせて共感を強めてもらう”以上の理由はいらない、という事かもしれませんが、 冒頭で示唆された「死体改造計画の邪魔になる」理由が全く説明されないままゴイチ少年が執拗に狙われる展開が続くので、 物語としては入り込みにくいのが惜しい。
 リエコ達も危機に陥り、化け猫女の催眠術でまとめて眠らされてしまうが、そこへ飛び込んでくる邪気祓いの白いトランペット!
 東映ヒーロー的にはだいたい平常運行といえる投げトランペットが額に直撃した化け猫女は男声の黒猫怪人の正体を現し、 怪人自体にギャグ要素は皆無の筈なのに、黒タイツの背中にでかでかと白塗りで44と書いてあるのが 野球選手にしか見えなくて大変困ります。
 「貴様ぁ……名を名乗れ!」
 「俺か。俺は悪を滅ぼす正義の戦士――俺の名は……キカイダー・ゼロワン!」
 新パターンの見返り名乗りから戦闘になり、黒猫ロボは投げ飛ばされた勢いで戦域を脱出。しれっとゴイチ母の姿に戻ると、 それをカメラマンがナンパし、バイクに乗せたカメラマンが振り返ると化け猫の姿になっていて気絶、でカメラマンの出番を確保。
 本物のゴイチ母は、何故か庭にあった石像の中から救出され、一方、化け猫女は墓場から白骨死体を掘り出していた。
 「これが死体改造計画だ。この者達の怨念を、シャドウの作った殺人ロボットの頭脳回路に組み込んで甦らせるのだ。 全部の死体を基地まで運べ。そしてその首を、切り落とすのだ!」
 もともと死体、というエクスキューズがつけられてはいますが、蝋燭の火が照らす薄暗い室内に、 老若男女の生首がずらりと並んでいるという凄い映像。
 「杉下ゴイチ、おまえは殺さねばならん。おまえは俺達の荒らした墓を見た。ゼロワンに知らせようとした。生かしてはおけん!」
 再びの襲撃でゴイチが狙われる理由が語られるのですが、「墓を見てゼロワンに知らせようとした」のはつい数秒前の出来事なので、 深刻な時制の混乱が、理由付けをしようとしておかしくなったのか、理由付けをするつもりがなかったのにたまたま繋がってしまったのか、 悩むレベル。
 番長に見捨てられたゴイチは通りすがりの老婆に助けを求めるが、キャットファイヤーされてまとめて危機に陥ったその時、 響き渡る悪霊退散トランペット!
 駆け付けたイチローも火炎放射に苦戦するが、そこに、ゴイチ達を拘束した黒タロスが姿を見せる。
 「ふふふふふふ、化け猫ロボット、ゼロワンを倒すのは俺だ。おまえは、手を引けぇ!」
 「貴様シャドウを裏切る気か!」
 「慌てるな。おまえには二つの土産をやろう。一つはゴイチだ。ゴイチを殺せば、役目は果たせる」
 「残る一つは?」
 黒タロスが電光石火の早撃ちを見せるとカツラが吹き飛び、実は老婆の連れの少女はアキラだった……! と、 わかった上で見ると格好いい立ち回りなのですが、「黒タロスが撃ったのはカツラ」「女装が解けるとアキラ」 という肝心の2点が映像から大変わかりにくく、初見では内輪もめの間にイチローに変身の隙を与えてしまう安心と信頼の残念ムーヴにしか見えなかったのが、 大変残念(気がつくとアキラくんが居て首をひねったので、少し戻して確認して、気付いた)。
 老婆は勿論リエコの変装であり、3人まとめて連れ去られそうになったところにジローが参上し、この世に悪がある限り、 この世に敵がある限り、レッド&ブルー、レッド&ブルー兄弟が揃い踏み、泡を食って逃げ出すもサイドカーに追いつかれた黒タロスは、 正義の技の鉄腕に投げ飛ばされ、あやうく仕留められそうになった所をシャドウナイトに車で回収されて辛うじて逃亡。
 一方、なかなかの身体能力を見せ、ゼロワン相手に殴り合いで善戦する黒猫ロボであったが、必殺のキャットパンチを弾かれると、 キャットフライングヘッド&ファイヤーで迫るも、ブラストエンドの直撃を受けて木っ葉微塵に吹き飛ぶのであった。
 かくしてシャドウ殺人部隊ナンバー44による死体改造計画は水泡に……帰したかどうかの後処理は一切描かれず、 そもそもイチローはこの計画自体を知らない筈なので、シャドウの怨念殺人ロボは今後出てくるかもしれません。
 ゴイチ少年は、土壇場で自分を見捨てた薄情な番長の子分を辞め、イチローみたいな強い男になる、 とアキラ少年と握手をかわし……折角の、同年代の少年とその母親、というゲストキャラなのに、 アキラの心情が掘り下げられる事もなければゲストキャラとの絡みも実質皆無であり、 これといってイチローがゴイチを諭し導くわけでもない、とゲスト少年の「変化」をイチローらとの関わりの中で描く部分が物語の中で成立していないのが、 引き続き今作の残念な部分です。
 走り去るイチローとアキラに向けてハカイダーは(いつもの)をキめ、復讐の為ならシャドウとの激突も辞さない、 と自らの決意に酔い痴れるのであった!
 懲りない・飽きない・執念深いと3拍子揃ったハカイダーですが、ライバル(?)キャラの側が、 ヒーローの原点的な動機付けの一つである「復讐者」ポジションを強調する、というのは面白いアプローチであったのかもしれません。
 次回、なんか、色々飛ぶ。
 正調ホラー演出で攻める夏の怪談シリーズですが、懐事情が厳しかったという今作の制作体制もあってか、 幽霊女・化け猫女・ろくろ首、とおどろおどろしい扮装の生身女性怪人が登場するのが一つ特徴として続いており、見世物小屋の手法、 と考えると、娯楽としての先祖返りとはいえるのかも。

→〔まとめ3へ続く〕

(2022年5月17日)
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