■『牙狼』感想まとめ1■


“おうぉー おおおおおー
おおおーおー おーおーおーーー!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『牙狼』 感想の、まとめ1(1話〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第1話「絵本」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:梶研吾/小林雄次)

−−−
光ありところに、漆黒の闇ありき。
古の時代より、人類は闇を恐れた。
しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、
人類は希望の光を得たのだ。
−−−

 シリーズ開始15周年記念無料配信〔GARO PROJECT/公式〕で見た、 はじめての『牙狼<GARO>』です。
 放映当時の2005年というと、私生活がバタバタしていた&HDレコーダー導入前夜で、これまでの人生で二番目ぐらいに特撮から離れていた時期なので、 作品(シリーズ)について知っている事は「京本政樹の出演で話題になっていた気がする」と 「気がつくと随分大きなシリーズになっていた」と「金ピカの印象」ぐらい。
 その京本政樹は、ヨーロッパ風民家のやたらだだっぴろい部屋で椅子に足を組んでふんぞり返りながら登場して、凄いインパクトでした(笑)
 ヒロインの相談に乗っている様子からすると心理学者か何かと思われるのですが、なんか、机の上に、自著がこれ見よがしに置いてある?!
 画家を目指すヒロインは初めての個展を控えていたが、その画廊のオーナーは、怪しげな絵の中に潜んでいた怪物に乗っ取られており…… 昭和のいやらしい成金を演じさせたら日本一の峰岸徹さんが女好きの魔物に食われる女好きの画廊の主でゲスト出演し、 絵の中から飛び出す半裸の女や、怪物が人体に入り込んでくる表現などは、既存ヒーロー作品との差別化を強く意識したと思われるアダルト&グロテスク。
 シャドー剣舞に打ち込んでいた謎の青年がその調査に乗り出し、送られてきた封書を緑の炎で燃やすと宙に指令の文字が浮かび上がるのは、 格好いいギミック。
 純白のロングコートに漆黒のレザースーツ(アーマー風味)という、 明らかにカタギじゃない見た目の青年は画廊を訪れ、率直に導入はスローテンポで引き込まれる要素が弱かったのですが、 ここで異能の人が日常に介入してきたところでグッと面白くなってきました。
 ヒロインの格好は真夏! 画廊のオーナーは秋口! 青年は真冬!
 と、季節感が混沌としてくる中、青年はオーナーの正体を暴こうとするもトラップに阻まれて閉鎖空間で生身バトルに突入し、 菊池秀行ワールドを感じさせる伝奇アクションを、TVシリーズで真っ向からやってくるのは成る程これは、盛り上がります。
 トラップをくぐり抜けた青年は再びオーナーと対峙し、突き飛ばされたヒロインを抱き止めた、 と思ったらノータイムで無造作に突き倒した!(笑)
 オーナーの肉体が弾け飛ぶようにして、中からガーゴイルめいた黒い怪物が出現し、それは更に額縁ホラーへと変貌。 対する青年は刀を振り上げて頭上の空間を切り裂くと、そこからこぼれる光に包まれて、狼顔の黄金の鎧の騎士へと姿を変える!
 毒液をものともしない狼の騎士は額縁ホラーを切り裂き、再びガーゴイル的な怪物に変貌するとこれを両断して調伏するが、 柱の陰で立ちすくんでいたヒロインが、その返り血を浴びてしまう。
 「なぜ逃げなかった?」
 逃げられるようにしてから言って下さい!
 物語としては、ヒロインが我が身を守る事よりも床に落ちた絵を守る事を優先した為に……というニュアンスなのでしょうが、 最初は素直に逃げようとしていただけに、ヒーローとしてケアが不足していると思います!
 「ホラーの返り血を浴びたものは斬る。それが掟だ」
 剣を突きつけて振り上げる黄金騎士だが、気絶した女を結局は斬らず、 血の臭いで他のホラーを引き寄せる生き餌にしようと喋る指輪に提案。女を家まで送り届けると、 皮肉を応酬する程度の人間味は見せ、「絵を気に入ったのは本当だ」と約束通りに絵を買っ…… 金を払わずに小脇に抱えて去って行くのであった。
 お巡りさんを呼ぶべきなのか、後でわざとらしく「そういえばあの時の代金を払うのを忘れていたな」 と連絡してくる高等テクニックなのか悩ましいところです。
 ナレーション「思い出の絵本に描かれた黄金騎士が、私の目の前に現れた。しかしそれは、これから始まる新たな騎士伝説の、 ほんの幕開けに過ぎなかった」
 ……劇中ではそうでもないのに、ナレーションだとヒロインの棒読みぶりが凶器に近いのですが、 本編は同時録音だったりしたのでしょうか。
 果たして、黄金の狼騎士と、ヒロイン父が描いた(と思われる)絵本『黒い炎と黄金の風』には如何なる関係があるのか?  様々な謎を孕みつつ、伝説が今…………あ、あれ? もしかして、牙狼<GARO>だけに、画廊<GARO>から始まったの?!

◆第2話「陰我」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:梶研吾/小林雄次)
 「くれぐれも、父親のような死に方をしないよう」
 「……あんたらに何がわかる」
 魔界騎士ギルドでコートの青年が狼の像に愛刀を突き刺すと短剣が生じ、謎めいた3人の少女たちがそれを回収。 見た目通りの年齢とは思えない少女たちからヒロインと過去の件をチクリとやられて凄んでみせた青年は、 ギルドからの帰り道にヒロインとバッタリ出会う事に。
 「丁度良かった。俺もおまえに用事があったんだ」
 懐から取り出したのは絵画代の札束……ではなく、謎の指輪(抜けない)。
 巷には投資詐欺の顧客を襲う鎖ホラーが出現し、人間の体が鎖化しながら分解されてホラーに吸い込まれていくのは、 人体損壊のゴア表現を工夫で見せる面白い映像です。
 鎖ホラーを追うも逃亡を許した青年は、地面にばらまかれた万札を拾……わなかった。
 「夢を踏みにじった貴様の運命、俺が断ち切る」
 ヒロインを捕食の危機から救った青年は黄金騎士へと変身し……投資詐欺に引っかかるヒロインは、 なかなか珍しいような。結婚詐欺師に引っかかったヒーローは、5年ほど前の戦隊に居ましたが。
 「残念だが、あの女にはホラーが取り憑いていた」
 「ホラー?」
 「人間を食らう魔獣だ。そいつらを狩るのが、俺の仕事だ」
 「でもなんでそんな怪物が居るの?」
 「太古の昔から、人間の邪心、愚かな心に付け込んで奴らは現れる」
 第2話で基本設定の説明、は定番ではあるのですが、聞いたら割と素直に教えてくれたコートの青年――冴島鋼牙は、 ホラー詐欺師から取り返してきたヒロインの5万円は、純粋な夢の為だったから汚い心ではない、とフォローまで入れ、 鉄仮面系のヒーローがなんやかやと理由を付けながらヒロインにほだされていきそうな流れは見えるものの、 最後のやり取りを自然に見せようとするあまりか、ホラー相手に「彼女のお金は大事なお金だ!」と急に言い出すのはやや強引になってしまった印象。
 それはそれとして、生き餌の件については伏せたまま、「お守り代わりだ。大事にとっとっけ」 と押しつけた指輪はどう考えても探知機代わりで、とりあえず、絵の代金、払ってやってくれ、鋼牙。
 ……この見せ方だと、毎度あれこれあっては、「金払えー」「またな」を終盤まで引っ張るのかもですが。
 3−4話の配信リミットが迫っているので駆け足の感想になりましたが、 2005年当時の映像技術を活かし生身バトルをごりごり押して伝奇アクションを真っ正面からやるぞ! という切り口はなかなか面白く、 引き続き見ていきたいと思います。
 ところで本編とは関係ない話ですが、EDにおけるスタッフクレジットのスクロールがやたら早くて難儀(早すぎて、 一時停止しても文字がブレて判読しづらいレベル)。

◆第3話「時計」◆ (監督:横山誠 脚本:梶研吾/小林雄次)
 日没と共に行動を開始する新たなホラーは、人間に憑依して内部から食らうのではなく、 時計に憑依する事で人から人に渡り歩く厄介な性質を持っており、ホラー時計をはめた人間の胴体がねじ切れて砂(食べ滓、との事) と化す、ホラー寄りの演出。
 ホラーの血を浴びたヒロイン・カオルには100日のタイムリミットが示唆され、世間離れの挙げ句、 傲岸王子様キャラと化す鋼牙は少女マンガの世界を一直線に目指すが、あっさりと正体の明かされる指輪探知機。
 「何それ気色悪い」
 真っ逆さまに悪質なストーカーへと転落した鋼牙は続けて女子校へと突入し、やはり、お巡りさんを呼ぶべきだったのか。
 一方、少女マンガの世界なら、僕が負けるわけにはいかないな! と京本先生 (やはり机の上には顔写真入り帯付きの自著が転がっているのですが、いったい誰に何をアピールしているのですか)が、 物凄い開襟シャツ姿で登場し、イタリア?! 時空がねじれて、ここだけイタリアなの?!
 時計ホラーを追う鋼牙は、憑依された女子高生を助けようとした結果、今度はマダムに憑依されて水中へと逃亡を許し、 巡り巡ってカオルに近付く時計ホラー、自転車の後輪に負ける(笑)
 クライマックスの舞台が教会の大時計の機械室というのは大変盛り上がるシチュエーションで、 既に同化していた巨大時計ホラーの繰り出す歯車との戦いは、非常に格好良かったです。
 「たとえ! 残された時間が僅かでも! 人には、その時間を最後まで生き抜く権利がある! 貴様にその女は渡さない!」
 鋼牙がカオルを殺さず、気に懸ける理由が明らかになり(更にその背景がありそうですが)、歯車攻撃を防ぎつつ、黄金騎士へと変身。
 「な、何故だ……何故そこまで人間に荷担する」
 「それでも守るに値する。俺は信じる!」
 このやり取りはなにやら、魔戒騎士そのものの出自に関わっていそうですが、 黄金騎士必殺《おうぉー おおおおおー おおおーおー おーおーおーーー!》が炸裂し、 時計ホラーを調伏。
 同じ「時計」を素体としながら、昆虫のような形状から、体内に魔戒騎士を取り込む巨大な存在にまで姿を変え、 「怪人」にこだわらなないデザインが独自の面白さを引き出して、秀逸なホラーでした。
 鋼牙は崩壊する教会からヒロインを救出し、ナチュラルなお姫様抱っこからのナチュラルな投げ捨て。
 「いちいちうるさい女だな」
 抗議するヒロインに時計を返却し、冒頭では「みんな何をそんなに急いでいるんだ」と呟いていた鋼牙がヒロインに告げる、 「時間は大切にしろよ」が効くのは、上手い構成。
 そして今回は、夜の街を自転車で彷徨い続けるヒロインの背中でオチとなり、果たして、京本先生の原稿は間に合ったのか?!

◆第4話「晩餐」◆ (監督:横山誠 脚本:梶研吾/小林雄次)
 「逃げ出してきたのですか?」
 「尻尾を巻いて」
 「情けない」
 原因に心当たりはあるけれど、上司からの風当たりがきつい!
 魔戒騎士・冴島鋼牙の次なる標的は、天才外科医・立神。自らの手術によって命を救った患者の、 生の喜びに満ち溢れた状態を美味しくいただくのが至高の食事、と美食家を語る悪質な性格を全面に押し出し、ゲストの加勢大周の、 (人間視点では)淡々と狂気に満ちた表情がインパクト大。
 お礼に訪れた元患者を後頭部から無数に生やした手術用具で切り刻み、 横山監督の嗜好なのかパイロット版に比べるとゴア表現がちょっと強め。舞台が病院という事もあって血の表現も生々しく、 ここまで来ると描写としてはちょっと苦手になります。
 ただ、犠牲者を切り刻むのに使った手術用具を一人オペにも用いているのは面白く、 毎回こういったギミック面で面白がらせてくれるのは、今作の長所。
 「病院内での喫煙、鎧の召喚は厳禁だ。それが、エチケットだ」
 立神病院に乗り込んだ鋼牙だが、強力な結界の作用により魔界騎士の力を思うように振るえず、やむなく一時撤収。
 鋼牙の黄金騎士モードは、内部的な「変身」なのか、外部的な「装着」なのか悩んでいたのですが、 医師ホラーいわく「鎧の召喚」という事で……イメージとして近いのは「蒸着」でしょうか。
 一方、家賃の滞納で部屋を追い出されたカオルは、出版社勤めの友人(第2話で登場)宅にあがりこむと、 渋る友人に殺人料理を振る舞って病院送りとし、計・画・通・り(違う)。
 一日中、油絵を描いている同居人とか迷惑以外のなにものでもないので、冴島邸で同居生活へのフラグの香りが漂いますが、 それはそれとして、友人の入院先が立神病院だった事から、ホラー医師、そして鋼牙とご対面。
 「あの男はホラーだ。おまえを食らおうとしている。あいつを野放しにしておけば、沢山の人が犠牲になるんだ。――俺を信じろ!」
 鋼牙の言葉がカオルを動かす事で、感情表現が薄く、口数と説明が少ないが、どんなに傷つき、 他者に理解されなくても怯まない鋼牙の行動理念が強く打ち出され――何かと説明が少ないのは恐らく、 誰かに理解される事を求めていないからなのだろうな、と――被害者遺族の少年に「強く生きろ」と告げるなど、 鋼牙のヒーロー性を早めに明示してくれたのは、良かったところ。
 ロングコート好きとしては、季節感無視で白いロングコートをばっさばさと翻しながら跳んだり跳ねたり歩いているだけで+30点なので、 今後の活躍にも期待です(同居の暁?には是非、カオルの殺人料理を無表情で食べきってほしい)。
 鋼牙の頼みを聞いたカオルは、ホラー看護士に追われながら病院の屋根に登るホラーゲーム展開で結界の札を引きはがし……鋼牙、 なまじ自分が超人的な身体能力を持っているばかりに、三角屋根に登るぐらい誰でも出来ると思っているのでは(笑) 第1話の際も、 「結界ぐらいパンチ一つで破壊できるだろう」と考えていた疑惑が浮上してきました。
 ホラー医師により、鋼牙の父も黄金騎士でありホラーに食い殺されて死亡した事が明らかにされ、結界の解除により、 満を持して鎧召喚した黄金騎士は、看護士ホラーをさくっと成敗。
 「殺されて幸せなものなどいない! ……いや、俺は認めない!」
 少年期の回想が差し挟まれ、ベタなところでは、鋼牙の父が愛した女(鋼牙母?)が、 ホラーだった/ホラーに憑依された/ホラーの血を浴びた、末に、父がその手にかかるなどして満足げに(?) 死亡した事を鋼牙は肯定しがたいトラウマとして抱えている……などと推測されますが、 出し惜しみしすぎずに主人公の過去をあれこれ予想させる要素を散りばめてくれるのは、良い具合に先に興味を引きます。
 黄金騎士は剣をライターの炎であぶる新モードで、クロスに放った衝撃波を自らの鎧に纏い、地を疾る斬撃で医師ホラーを両断。 ホラーを貫いた剣風が、背後の病院の看板を縦に灼き消すのが大変格好いい。
 「頼む。最後の晩餐に、その女の肉を……」
 「ふざけるな!」
 何やら魔界語?で妄執を呟くホラーにトドメの横薙ぎを浴びせ、今度は横に飛んだ剣風が看板を切り裂くと、 十字が完成して看板が消滅する、のは極めて格好いい締めでした。
 鎧を解除した鋼牙は汗だくで膝を付き、無愛想で説明不足でデリカシー皆無だが、 人を守るために戦う心は真実だと感じるカオルであった、でつづく。

◆第5話「月光」◆ (監督:梶研吾 脚本:梶研吾/小林雄次)
 ニューナンブよりも、劇毒よりも、コンクリートブロックによる打撃だ!
 レッド○ン先輩が教えてくれました。
 どんな生き物でも、脳を殴り続ければだいたい動かなくなるのだと。
 前回、家賃未払いでアパートを追い出されたカオルは、やはり友人にも嫌がられたようで、家主に無許可で早くも冴島邸にお引っ越し。
 「だってあなたが言ったんでしょ。俺の側に居ろって」
 …………言ってたーーー。
 過去の言動の責任を取り、不承不承カオルの居候を認めた鋼牙は、悔し紛れにそれ相応の仕事をしろとカオルに告げ、ハイ、殺人料理、 出てくるの早かった!
 「……まずい」
 そしてリアクションも早かった!
 「母親の顔が見たい」
 トドメに、デリカシーが無かった!
 カオルが両親を早くに亡くしている事がモノローグで語られる中、ギルドからの指令を受けてホラー退治に向かう鋼牙だが、 ホラーは既に人間に取り憑いており、鋼牙は憑依された女の残留思念を追う。
 その頃、恋人殺しの罪で指名手配中の薬剤師・それを追う旧知の刑事・薬剤師に人質にされた女子高生、 がホラーによって工場の中に閉じ込められており、脱出の為に呉越同舟する……といった辺りは、あまり嗜まないので (単純に苦手なので)推測ですが、ホラー作品の文法でありましょうか。
 鋼牙の動きと並行して描かれる、冤罪を主張して追い詰められている薬剤師・やたら気取った仕草で自分に酔っている刑事・ 完全に巻き込まれた不幸の末にキレちらかす女子高生、のやり取りが全く肌に合わなかったのですが、 恐怖映像とドタバタ喜劇めいたキャラの組み合わせ、というのもホラー作品の文法……?
 今回、「自殺の名所で現世に出現したホラーが自殺を考えていた(と思われる)女に憑依した」&「薬剤師の殺された恋人に、 どうやら刑事が岡惚れしていた事から薬剤師が犯人と決めつけて追いかけている」と二つのバックストーリー (劇中では台詞で表現されるだけ)が存在し、鋼牙とカオルの今後を匂わせながら、「げに男女の問題は複雑」と指輪が語るのですが、 それらのバックストーリーが劇中のリアリティラインを上げている(上げる事を要求している)にも関わらず、 主に刑事がリアリティラインを下げまくっている為に、1エピソードにおけるリアリティのバランスが致命傷に近いレベルで噛み合わず。
 大雑把かつ極端に例えると、冒頭で爆弾テロによる死亡事件が発生しているのに、 それを追うゲスト刑事(一般人)が至近距離で爆破に巻き込まれても顔が煤だらけになるだけで無事、みたいな事になっていて、 薬剤師と女子高生はともかく、刑事のキャラ付けをやり過ぎたように思います。
 また、最終的に薬剤師彼女を殺したのは押し込み強盗と判明し、指名手配が解除された事がニュースの形で語られるのですが、 恋人を強盗に殺された薬剤師に取ってみれば大きな悲劇の筈なのに、恐怖体験から揃って逃げ延びたし冤罪も晴れたから解決、 みたいなふわっとした形で片付けられてしまい、悪夢からの生還直後という事ではあるかもしれませんが、 物語の都合で間接的に死人を出した上でのオチとしては、個人的に大変いただけませんでした。
 満月の光を浴びて覚醒した毒蛾ホラーが3人を襲うが、すんでのところで飛び込んだ鋼牙は謎の御札で三人を眠らせ、戦闘開始。 鎧装着後に表示される砂時計の数字が初めて戦闘中に減るものの特に言及やそれ以上の減少はなく、 黄金騎士は指輪のアドバイスを受けてホラーの本体を貫く。
 「女を斬るの?」
 「どうしても女心ってやつが、わからない男でな」
 自・己・申・告(笑)からの、《おうぉー おおおおおー おおおーおー おーおーおーーー!》で、 ホラー調伏!
 「あの人、いつもあんなに無愛想なの?」
 「どうかクールと、言ってあげてください」
 屋敷では、鋼牙の態度に不満たらたらのカオルに対し、両親を早くに亡くし、他人とあまり触れ合わずに生きてきた複雑な人なので察してあげて、 と執事のフォローが入り、エピソードの出来はよろしくありませんでしたが、カオルが鋼牙のテリトリーに入っていく事で生じる面白さに関しては良かったです。
 次回――ライバル登場?!

◆第6話「美貌」◆ (監督:梶研吾 脚本:梶研吾/林壮太郎)
 冒頭から山中での激しい戦いが描かれ、追い詰めたホラーを仕留める寸前、謎の投げナイフの攻撃を受けて逃がしてしまう鋼牙。
 ホラーを追う鋼牙は、ホスト風の男を石で殴打し、ホステス風の女たちから財布を奪う謎の女性を目撃すると、 状況を完全無視してライターで確認してみるが、反応無かったので興味無し(笑)
 ……と思ったら、鋼牙が立ち去った後に女はホラーに憑依され……これは、やらかし案件に入りますか?!
 「逃げ出してきたのですか?」
 「尻尾を巻いて」
 「情けない」
 ナイフを掴んだ手が割と痛かったらしい鋼牙は、屋敷に戻ってポーション飲んでライターで傷をあぶると回復し、その過程で、 傷の手当てをしようとするも空回りするカオルと一悶着。
 「三匹の番犬のところへ行ってくる」
 ギルドに向かった鋼牙は回収してきたナイフをいきなり上司に向けて投げつけ、それは、魔界騎士専用のサブウェポン・破邪の剣。
 「仲間があなたを狙ったという事?」
 「友達居るの?」
 「おまえらのコレクションに加えるがいいさ」
 痛いところを突かれた鋼牙は身を翻し、上層部との決して和気藹々としていない関係性も積み重ねられていきますが、 今回のやり取りだと、むしろ鋼牙は魔戒騎士の本流から離れて番犬の為に働いている……? みたいな可能性もありそうでしょうか。
 一方、チンピラに車に連れ込まれそうになっていたカオルは、いかにも鋼牙と対を成す漆黒のロングコートの男に助けられ…… 間違いなく知っている顔だけど誰だっけ……?! と俳優さんの名前を検索したところ、ラッキークローバーの北崎さん (『仮面ライダー555』)でした。
 ……え? ちょっと待って、演じる藤田玲さん、北崎の時、15歳だったの?!
 と、衝撃のあまり次々と凄い勢いで吹き飛ばされていくモブのチンピラ達。
 「君らを見てたら思いだしちゃったよ。チワワ。いっつも小刻みに震えてさ」
 身長の高さもあり今作時点の17歳でも十分に驚きなのですが、笑顔は年相応ともいえる青年(劇中の年齢設定はわかりませんが)は、 無邪気な表情とは裏腹の圧倒的な暴力でチンピラを叩きのめすと即座にカオルをナンパし、無愛想王子の次は強引なセクハラ男とか、 カオルの周りは実に少女マンガ的(笑)
 青年はカオルに向けて「悲鳴の方が似合う」とか「今度は夜にデートしよう」とか不穏な言葉をかけて姿を消し、なんだか段々、 変態を呼び寄せる体質になりつつあるのもヒロインの宿命なのか、 どう見ても水商売の店にバイトの面接に向かったカオルは雑に一発採用され、 色々と大丈夫なのか危惧していたらカウンターに入って割とさらっとバーテンこなしており、思わぬスキルを発揮。
 目指せ個展の開催費、家賃はきっと請求されない、と仕事に励むカオルだが、運の悪い事に、ホラーの食餌を目撃。
 後のケガレシア様こと及川奈央に姿を変え、色香に迷った男を食らう墓石ホラー(作風と言えば作風ですが、ちょっと今回、 セクシャルな演出が露骨で、まだ色々と模索中ではありましょうが、前回−今回の限りでは梶監督とはあまり合わず) に追い詰められるカオルだが、指輪の探知能力により駆け付けた鋼牙が抜刀。
 再び墓石ホラーを追い詰める鋼牙だったがまたも破邪の短剣がその身を狙い、カオルを助けた黒コートの青年が姿を見せる。 青年は逆手二刀流でホラーへと斬り掛かり、その正体は――魔戒騎士。
 「駄目よ。今日は見学だけでしょ」
 人間の姿を捨てた墓石ホラーに対して鋼牙が鎧を召喚すると、それに続こうとした青年はどこらともなく響く女の声 (指輪の仲間と思われますが)に召喚を止められ、墓石ミサイルをかわした黄金騎士は、墓石ホラーを一刀両断するのであった。
 ……そして対峙する白と黒、二人の魔戒騎士。
 「俺は涼邑零。またの名を――ゼロ」
 「……ゼロ?」
 「ピンと来ないかなぁ。黄金騎士って割と鈍いんだなぁ」
 否定しづらい!!
 カオルを抱き寄せて鋼牙を挑発し、平手打ちを食らった零は立ち去っていき、OP映像のぶつかり合うシルエットから予想されましたが、 新たな魔戒騎士が現れて、つづく。
 白黒のロングコートの対比は、これしかない、という衣装であり、零の登場がどんな波乱を起こしていくのか、楽しみです。

→〔まとめ2へ続く〕

(2021年4月26日)

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