■駆け足『仮面ライダーフォーゼ』感想まとめ4■


“More than best 見上げる空は
もうすぐ 届く 距離なんだ
Cosmic Cosmic Cosmic Mind
無数の星 集める引力”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーフォーゼ』感想の、 まとめ4(39話〜48話)です。配信の関係で週12話ずつの視聴だった為、駆け足気味。 文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕



◆第39話「学・園・法・度」◆ (監督:諸田敏 脚本:長谷川圭一)
「真面目に生きるのも、いいもんスねー!!」 (ジェイク)
 生徒会長の入院により会長代行になった杉浦雄太が突然、多数の禁止事項で生徒達の自由を奪う天ノ川学園法度を発布。 「法度は絶対だ。従わない者は誰であろうと処罰する」と高圧的な姿勢で学園の浄化を進めていく杉浦に当然反発する弦太朗だが、 杉浦との得意技勝負に負けてしまい、杉浦が変身したタウラスゾディアーツの能力により、法度の内容に逆らえない体にされてしまう。
 この勝負で突然披露されるダブルダッチは、役者さんの特技パターンでしょうか。
 一方、前回の話を拾い、宇宙特待生授業を受ける事になる、賢吾、ユウキ、そしてエリーヌの辞退で繰り上がった次点の友子 (試験の性質を考えると、繰り上がり合格って非常におかしいですが(^^;)。賢吾はそこで特別講師として招かれた江本教授 (京都編で登場)と再会し、友子は理事長を太陽、賢吾父を地球、自らを月に例える江本に不思議な親近感を覚える。
 「歌星の横で、我望の光を浴びて、薄ぼんやり輝く、月」
 法度と契約書によりリーゼントセンサーが機能停止し天高の制服姿になった弦太朗は、 同じく勝負に負けて髪を染めアクセサリーを全て外す羽目になったジェイクと共に生徒会に潜入 (なお流星は他校の生徒なので法度は適用されないとの事)。そこで杉浦の変貌の原因が、 入院中の生徒会長・壬生彩加にあるという情報を手に入れる。
 弦太朗とユウキは病院へと向かい、タウラスと交戦したメテオは、成り行きから杉浦の特技であるゴルフで対決する事に……。

◆第40話「理・念・情・念」◆ (監督:諸田敏 脚本:長谷川圭一)
「誰であろうと、僕の正義に背く者は許さない」 (杉浦雄太)
 見所は、「ここからは、俺のやり方で自由に戦う」と、相手が見ていない森の中なのをいい事に違反クラブ(メテオ棒) でショットしてゴルフ対決に勝利を収める仮面ライダーメテオ。
 率直に、前回の妙に薄暗い病院のギャグ描写とか、今回のトンデモゴルフ対決とか、ゴルフに負けたタウラスによるメテオ洗脳とか、 本筋にさして影響しない枝葉の部分で凄く小手先のネタに走っている感が強いのですが、少なくともライダーに変身しているにも関わらず、 あっさり魂を奪われて洗脳されてしまうメテオ、というのはやってはいけないネタだったのではないでしょうか。
 (※なおこのゴルフ対決は、第39話と第40話の間にゴルフ中継が入って一週お休みになる事を意識したメタネタだったそうで、 ますます酷い)
 前半の猥雑路線の反動なのか、『フォーゼ』全体として、より児童層を意識した演出ラインのオーダーが出ていた可能性はありそうですが、 ここに来て、凄く演出と脚本の不調和を感じます(^^;
 「月が……好きなんですね?」
 「月は、僕の青春だった。でも今は……月は嫌いだ。親友を亡くした場所だから」
 「先生が、近くて、遠い理由、わかった気がします」
 友子は生徒会に追われていた所を江本に助けられ、相変わらずおいしい位置づけ。
 月面に出た友子は月の石を拾い、江本にプレゼントしようとするが、そこでバルゴゾディアーツが江本に変身する光景を目にし、 慌てて逃げるも廊下に石を落としてしまう。
 とうとうバルゴの正体が判明しましたが、江本(EMOTO)=OTOME、と物凄く直球だった事には、前回の再登場でやっと気付きました(笑)
 サソリの例があったので性別ひっくり返しまでは想定していましたが、如何にも人の良さそうな中年男性、 というのは好キャスティング。それにしても、声が田中理恵になるスイッチとは一体どんな気分なのか、少々気になります。
 入院中の壬生、そして杉浦に処刑されそうになっていた生徒会の沖荘子から話を聞いた弦太朗は、 杉浦の暴走の背景が正義の理念ではなく、壬生に怪我をさせたヤンキー4人組を懲らしめたいという個人的な恋愛感情に基づいていた事を知る。
 「おまえの行動が本当に正義なら、迷わず出来るはずだ。おまえの好きな彼女を処刑してみろ!」
 「彼女を傷つけるなんて、僕に出来る筈がない……!」
 杉浦は自らタウラスの杖を折り、解除される生徒達の洗脳……という、正義だと思ったら恋心でした、 というのは一ひねりのつもりだったのかもしれませんが、不在の生徒会長・暴走する杉浦・妙に可愛く描かれる腹心の沖、 と配役の時点で三角関係待ったなしだった為に、あまりひねりとして機能せず(^^;
 また、弦太朗が当初対決していたのは「杉浦の振りかざす正義の内容」だった筈なのに、 「おまえのは正義ではなくて私怨だ!」と解決してしまうので、勝利の為のトンチとしてはありですが、 弦太朗自身が「杉浦の掲げた規律」を自分の言葉で打ち破っていないというのは凄く引っかかる部分です。 まあ『フォーゼ』世界では、「自由の敵」=「悪」という事なのかもしれませんが、 そこは弦太朗の言葉を組み込んで欲しかったなぁとは思う所。
 杉浦と友情タッチをかわす弦太朗だがそこにバルゴが出現。タウラスに変身した杉浦はホロスコープスを裏切ってバルゴに突撃するが、 哀れシベリア送りにされてしまう。
 「杉浦をどこへやった?!」
 「この先はダークネビュラ。ゾディアーツが生まれた時に放出される、負のコズミックエナジーを吸収して成長する、永遠の牢獄だ」
 フォーゼ:コズミックとメテオストームはバルゴ(さすがにパーツが重くて動きにくそう)に立ち向かうが軽くあしらわれ、 計画が最終段階に進んでいる事を告げて姿を消したバルゴは、理事長にタウラススイッチを届けると、江本の姿に。
 「バルゴよ、私の前に立ちはだかるものは、容赦なく排除しろ」
 理事長は瞳を輝かせ、それに呼応するかのよるに、江本の瞳も紅く染まる。
 「わかっています。歌星を手にかけたあの時から、私は誓った。月ではなく……私が地球になる」
 第1話のアバンタイトルは何らかのミスディレクション狙いだろうとは思っていましたが、賢吾父と揉めていた宇宙服の中身は、 江本であったと判明。そして江本は、自分の正体に気付いた友子を、冷徹にダークネビュラに送り込む……!
 ヒロイン度が上がりすぎたぁぁぁぁぁぁ!!
 友子、衝撃のシベリア送りという激震に続き、次回、まさかのタチバナ降臨。
 心理的には一番きっついキャラが真っ先にダークネビュラ行きにされてしまったのですが、残り話数1桁になっての急展開で、 果たしてどうなる?!

◆第41話「部・活・崩・壊」◆ (監督:山口恭平 脚本:中島かずき)
「おまえらが何をしようと俺は知らん! ……ただし、絶対に死ぬなよ。それは校則違反だ」 (大杉宙太)
 大杉先生、唐突に格好いい台詞を貰うの巻。舞台メインでやってきたという事もあってか、 こういった瞬発的な台詞の格好良さは中島脚本の長所でさすがだなと思うのですが、一方で長期的な細かい積み重ねと関係ない飛躍がしばしば見られてしまうのが、 今作の良し悪し(^^;
 バルゴは12使徒会議で江本の正体を明かし、シルエットで理事長変身。
 「覚醒の日は近い。邪魔者は全て排除する。わかっているね」
 これを受け、バルゴの正体を知らなかった校長が、相変わらず私の扱いが軽い……と“覚醒の日”について立神に絡んで軽く絞められ、
 「ちっぽけなで疑念で心のバランスを崩す。だから天秤野郎は駄目なんだよ」
 「単細胞の忠犬獅子公め!」
 という台詞も秀逸でした。
 リブラが進化したラプラスの瞳で12使徒スイッチの反応をサーチできるようになっており、他の12使徒の動向をねちねち探っているというのは、 今回クライマックス〜次回の重要なキーポイントになっており、それを見せておく布石なのですが、 やり取りの面白さと横山一敏の生アクションが、一見ただのサービスシーンとして上手いカモフラージュにもなっています。
 その頃、行方不明の友子を探す仮面ライダー部に対し、ライダー2人と賢吾以外は、本格的に命を狙われる前に手を引くべきだ、 とタチバナから警告がもたらされる。
 「君達に忠告しておこう。友情は――危険だ」
 「友情が、危険?」
 「ああ。友情はその甘さ故に、道を見誤る。全員死にたくなければ、よく考えたまえ」
 「友情が危険だ? 冗談じゃねぇ。俺がダチになって、タチバナさんにも友情の絆を教えてやる」
 だがタチバナの警告通りに部員達は次々とバルゴから脅迫を受け、いちいち個別に脅かしては去っていくバルゴは、 本当に律儀でちょっぴり暇人です。脅迫を受けた部員達はそれぞれの事情からやむなく退部を余儀なくされ、 弦太朗・賢吾・流星の3人だけが残ったラビットハッチに、突如乗り込んでくるタチバナ。
 「そんな指さし確認の必要は無いよ、如月くん」
 タチバナは「今の君に必要なのは、友情ではなく、非情だ」と、絆エネルギー無しでコズミックを発動可能にする為の特訓フェーズへ。 タチバナの特訓に苦戦しながらもスーパーロケットを発動して食らいつくフォーゼだったが、 賢吾がタチバナの右手に残ったエネルギー反応から、その正体を見抜く。 謎の支援者タチバナの正体……それはバルゴゾディアーツだった!
 タチバナ=バルゴ=江本という真実が明かされ、京都・学園・マジカル衛星をワープ能力で行き来していたのかと思うと、 物凄い暇人……じゃなかった、仕事熱心。そして、声が田中理恵になるスイッチだけでは飽き足らず、 声が檜山修之になる鉄仮面を作ってしまったのは、趣味なのか、暴走なのか。
 激昂してタチバナ/バルゴに襲いかかる流星だったが、ヘリウムより軽いメテオストームは、 とうとうあっさりダークネビュラに送られてしまい……つづく。

◆第42話「射・手・君・臨」◆ (監督:山口恭平 脚本:中島かずき)
「私は矢だ。常に真実を射貫く矢だ。今も的は見据えているよバルゴ。いや、江本」 (我望光昭)
 メテオをシベリア送りにしたバルゴは闖入してきたリブラと共に姿を消すが、 メテオ独楽が回り続けている事から流星の生存を確信した弦太朗は、タチバナとの特訓を続行してダチになると宣言。 バルゴへと姿を変えたタチバナとの激闘の中でコズミックを発動するフォーゼだが、それはタチバナの求めた非情ではなく、 弦太朗の信じ続けた友情によるものだった。
 「みんなが一緒に居なくてもいい。それぞれがそれぞれの道を信じて進んでいれば、俺は絆を信じられる」
 そしてそこに駆けつける、仮面ライダー部員。
 「死ぬのは怖いけど…………逃げるのはもっと嫌だ! ライダー部もやる、宇宙飛行士にもなる、それが私の一直線、だよ」
 「友情は危険なんかじゃねえ。友情は――ダチだ」
 「負けたよ、如月くん。君達の言う友情を、もう一度信じてみてもいいのかもしれない」
 今回の厳しい所は、あれだけ絆エネルギーを強調したコズミックが、 タチバナの言う非情で発動可能になる根拠がさっぱりわからない事と、タチバナの特訓の何が非情に繋がるのかが、 全くわからない事(^^; 恐らくは理事長と近い形でのコズミックエナジーの制御法を指しているのでしょうが、 その部分が江本脳内でだけ処理されている為、タチバナの示した方法とは別の道を選ぶという弦太朗の「選択」と、 それにともなうタチバナの「翻心」の劇的さが大きく薄れてしまいました。
 タチバナはシベリア送りにしていた流星と友子を呼び戻し、友子、メテオストームにお姫様だっこされて帰還!
 よくやった江本!
 ユウキがポンコツになっていくのと反比例するかのように、友子のヒロイン度の上昇が留まる所を知りません。
 これまでダークネビュラ送りにした面々も実はマジカル衛星内部で眠りにつかせていただけだと説明するとタチバナの仮面を外し、 素顔をさらす江本教授。
 「如月くん、何があっても、君の友達の事は守ってやってくれ。どんな事になってもだ」
 一度は強大な力に屈して従ったものの、江本はホロスコープスの裏切り者としてフォーゼやメテオに影で力を与えていた事を明かし、 12使徒スイッチのみならず本体も回収していたのは、「馬っ鹿おまえ、宇宙で12使徒斬るなよ!!」 という本気のフォローであった事が判明。多分、校長の時はどうしようか、ちょっと考えた。
 弦太朗と友情タッチをかわす江本だが、その為に重要な説明の途中で背後から光の矢に貫かれる事に。
 「残念だよ……バルゴ。私が宇宙の真理に到達するパートナーは、君だと思っていたが。だが、君が私を裏切る事も、 星の定めだったのだな」
 自ら江本を誅殺しに初お目見えするサジタリウスゾディアーツ! 変身するもバルゴは全身に射手座アローを浴び、 代わりに立ち向かうダブルライダー。部員達をワープ能力で逃し、賢吾とだけ別の場所に転移したバルゴは賢吾父を殺した罪を告白するが、 またも重要な説明の途中でレオとリブラに襲撃を受け、12使徒スイッチを集めるというホロスコープスの目的を言い残すと、 賢吾を残して転移。
 一方、ダブルライダーはサジタリウスに圧倒的実力差を見せつけられ、今日も片手で弾かれるメテオ独楽。
 「若者よ、わかったかね。それが諸君らの力だ。いや、力といえるほどのものでもないか。ふふははははははは」
 射手座は余裕綽々でその場を立ち去り、これで、レオにもバルゴにもサジタリウスにも完敗で、まともに倒せる相手はリブラだけ。 ここ4話でまがりなりにもライダー側が勝利を収めたのは、ゴルフ対決(反則勝ち)だけな気がするのですが、よくこの作劇、 許されたなぁ(^^;
 いや、負けるべき時に負けるのは必要だと思うのですが(むしろ近年は、負けさせてはいけない縛りがあって厳しかったりするらしいですし)、 さすがに、勝てない相手に見逃されるパターンが続きすぎの感。
 「結局生き残ったのは、私でしたね……バルゴ」
 「いいんだ、最後にまた、友達がで――」
 レオの爪にかかり、江本/バルゴ/タチバナ、絶命――そしていつもの部屋に戻って変身を解いた我望光昭は、 どこか哀しげな表情でその名を呟くのであった。
 「…………江本」
 ここの表情は良く、理事長は最初凄くふわふわしていたのが、少ない出番で着実に物語の中に入り込んできたのは、作品を助けている所。
 仮面ライダー部は月面にタチバナの鉄仮面と江本のメガネを葬り、何だかいい人だった扱いでまとめられていますが、 今回もコズミック発動できないならフォーゼ切り捨てよう発言があったし、 その場その場の都合で自分の目的の為に若者達を利用しまくってきた割と駄目な人だった気がするのですが、 物語をまとめる為に全責任を負わされた感もあり。

◆第43話「双・子・明・暗」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸)
「弦太朗さんは友情の鬼の癖に、妙な所で鈍いから」 (野座間友子)
 ユウキが突然、子供の頃に宇宙からの声を聞いたと、電波発言。それに興味を持った理事長が校長にラプラスの瞳を発動させると、 ユウキに重なる双子座の輝き……。校内各所でユウキとしか思えない生徒による悪戯事件が相次ぎ、 それを追っていた弦太朗達の前に現れるピエロじみた双子座のゾディアーツ――果たしてその正体は、ユウキなのか?!
 見所は、火星ナックルの一発ぐらいぶちこみそうな勢いでユウキを疑っていた姿を本人から直接指摘され、「え? 俺、 そこまで残虐非道なイメージだったの……?」と落ち込み、背景で友子に慰められる流星。
 最初にユウキを疑った事をなじられる弦太朗は髪の毛ゾディアーツ回に続いてのやらかしですが、 弦太朗の友情の形は「俺は最後までダチを疑わねぇ!」ではなく「どんなにやらかしても俺はおまえのダチだ!」なので、 一貫しているものの一方通行の厚意を責められるのは、今作の陥った迷い道を図らずも炙り出されているように見えなくもありません。
 奇矯な両親(父親役は『オーズ』のラスボスだったドクターですが、化粧と扮装の関係で全く同一人物には見えず……見えても困りますが) の歌い狂う家に戻ったユウキは、そこで白い仮面を被った自分自身と遭遇。双子座のゾディアーツの正体は、 強制的にスイッチを押させられたユウキから、双子座の特性によって誕生した闇のユウキだった!
 「偽物じゃないよ〜、私も城島ユウキ。私は影、あなたは光。でも、元は同じ」
 白い仮面を被った闇のユウキは、欲望の赴くままに行動する事で徐々に存在を濃くし、ユウキの顔を手に入れていく。闇と光、 二つに分かれたユウキは、いずれ存在のより薄い方が消え去り、片方だけが残るのであった。
 「もうすぐあなたのもの、ぜーんぶ貰うよ! 宇宙への夢も、友達も、癖も、思い出も、未来も」
 ラバーマスク的な白い仮面を被り、高い声ではしゃぐ闇ユウキの気持ち悪さはなかなか秀逸で、 後半〜次回の立場逆転の悲惨さでも効いてきます。
 校内の監視カメラで仮面ユウキの存在を知った弦太朗達は、城島家に乗り込んで闇ユウキがジェミニゾディアーツに変身する姿を目撃。 トランプ爆弾に苦戦するも、ミサイルネットで捕獲に成功するが、そこにサジタリウスゾディアーツが姿を見せる!
 「ジェミニは私のものだ。私は彼女と共に、宇宙へ旅立つ」
 「宇宙へ?」
 「そう、ジェミニはやっと見つけた私の宝だ。同じ星からの声を聞いた者同士だ」
 理事長、声は田中理恵だけど中身はおっさんを捨て、女子高生と宇宙蜜月旅行に行く事を宣言。
 ジェミニは超新星を発動すると分身し、片方がど派手に自爆するという荒技からコズミックをかばったメテオ、とうとう大爆死。
 狼狽するユウキの顔は仮面へと変わり、どちらのユウキが残るのか、タイムリミットは残り12時間…… 果たして弦太朗はユウキを取り戻せるのか?! 忘れてしまったチケットの事を思い出せるのか?! 今、友情の真価が問われる――!  ……メテオは、まあいいや(おぃ)

◆第44話「星・運・儀・式」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸)
「俺はいつだってユウキの事を信じてる。友達だもん」 (如月弦太朗)
 「あと12時間。止められるものなら、止めてみたまえ。私とジェミニが、プレゼンターに会いに行く事を」
 プレゼンター……それは、江本教授が命名した、宇宙に存在する何らかの意思。
 「星からの声に魅入られた人間……それがゾディアーツ」
 容貌を失ったユウキは街を彷徨い、存在を濃くしていく闇ユウキはその間に城島家へと上がり込む。 中華フェアの城島家で闇ユウキが身につけているチャイナ服は、去年、比奈ちゃんが着ていたものでは(笑)
 仲間達の記憶さえ奪われて追い詰められたユウキは、闇ユウキの誘導でジェミニゾディアーツに変身してしまい、 一方的にフォーゼの攻撃を受ける事に。だがその最中、賢吾が違和感に気付き……なんだかとても久々に、 賢吾が存在意義を発揮したような。
 代わりに流星の存在感が成層圏に到達する勢いで軽くなっているので、 この両者の間で激しい相棒エネルギーの争奪戦が行われている模様です。
 正体を見せた闇ユウキは12使徒スイッチを手に姿を消し、本物のユウキは生け贄としてレオ達の手で拉致。 弦太朗は子供の頃にユウキとした約束を思い出すと、転校する時に貰った小箱を見つけだし、タイムリミット寸前、 ユウキの元へと駆けつける。
 「弦太朗……弦ちゃん、弦ちゃんって、誰?!」
 「おまえのダチだ!」
 幼い頃、ユウキが聞いた宇宙からの声について、ただ一人信じてくれた友達……それが、如月弦太朗。 二人は「近くに行けば声はよく聞こえる」という子供らしい純粋で単純な発想から、いつか一緒に宇宙の声を聞く為に、 ユウキが弦太朗を宇宙へ連れて行く、と約束したのだった。
 「最初に私を信じてくれた仲間……それは……弦ちゃん!」
 弦太朗は小箱から子供ユウキお手製の宇宙行きチケットを取り出し、記憶と顔を完全に取り戻すユウキ。
 水瓶座回で単なるハイテンションな宇宙マニアに格下げされ、更に前回、宇宙に行きたい理由は子供の頃に電波を浴びて何となく、 とされる酷い扱いを受けていたユウキですが、ここで、本当に宇宙に行きたかった理由――夢の原点が掘り起こされ、 印象的にはほどほど修正。
 「そんな、馬鹿なぁっ!!」
 「誰の心にだって、そりゃ黒い部分はある。でもな、それをお互い乗り越え合う為にダチはいるんだ。ぶち砕いてやるぜジェミニ、 ダチの力で!」
 今作、作品を貫く筈だった弦太朗的倫理観がどうも各脚本・演出間で統一しきれず、 それが「友情」にまつわるブレにも繋がっていたのですが、極端な話「ダチだったら黒い部分も受け入れる!」 という面を持っていた弦太朗的倫理観を、三条さんが出来る限り中島脚本に寄せた上でより馴染みやすく噛み砕いた着地点が、 この台詞に集約されているように感じます。
 たぶん中島さんはもっとそこを突き抜けて、弦太朗に触れた黒が、あまりに弦太朗が馬鹿すぎて白になってしまう、 みたいな物語をやりたかったのかな、とは思うのですが。
 力を失った闇ユウキはジェミニゾディアーツに変身し、戦いに巻き込まれたユウキ達がピンチになった時、賢吾が謎のバリアーを発動。 それを目にした射手座達は引き下がり、フォーゼは病院から駆けつけた流星より受け取ったメテオストームスイッチの力で双子座の分身爆弾エネルギーを吸収すると、 ざっくり宇宙斬りで撃破。
 かくして存在の保たれたユウキは夢へ向かう気持ちを新たにすると、宇宙行きチケットを部員達にも配り、 友子は流星とのペアチケットを貰うのだった……と公式から更なる燃料が投下されつつ、朗らかに和を取り戻す仮面ライダー部。
 一方、女子高生とのウハウハ宇宙旅行がキャンセルの憂き目にあった理事長は、レオが回収した双子座のスイッチを手にしていた。
 「結局私一人か。先駆者は孤独だ。人類代表たりえるのは私のみという事なんだろうね。ははははは」
 江本を失った影響が多少はあるのか、傲岸な態度を隠さなくなってきた理事長の言葉を聞きながら、 本当にこのまま魚座を見つけていいのか? と悩み始める校長。
 次回――「私は我が身を守る為なら何だってする!」
 ……なんだかこの予告だけで、何かの元が取れた気分(笑)

◆第45話「天・秤・離・反」◆ (監督:諸田敏 脚本:中島かずき)
「私は我が身を守る為なら何だってする」 (速水公平)
 20年前、月面――
 「これが、プレゼンターからの……」
 「そうだ。人類を外宇宙に導くコアスイッチだ」
 歌星緑郎と我望光昭は、そこで鈍く輝く外宇宙からの贈り物を発見する。それこそが、いずれ多くの若者を戦いの渦に巻き込む、 運命のスイッチであった……。
 現在、天ノ川学園、季節は夏――なのですが、シャツ姿だと映像的に面白くないという判断だったのか、 セミまで映しておいて学生組が揃って長袖完全装備の為、季節感は皆無、というか亜空間(そろそろ撮影時期的に割と暑かったのでは……)。 ……そういえば期末試験が第41話でしたが、今、劇中では夏休み……?
 学園の食堂で賢吾18歳の誕生パーティを開いていた仮面ライダー部は、厨房で自らスープを仕込んでいた理事長から、 新作スープをご馳走に。
 「この学園は私の宇宙だ。それを構成する君達の可能性を限界まで伸ばす。その為には、どんな苦労もいとわないよ」
 ……別作品の話になりますが、改めて、某ウェルズ博士の気持ち悪さって凄いなぁ、と思ってしまったシーン(笑)
 「何でも一人でやらないと気が済まないんだ。どうしても人に任せられなくてね」
 「寂しい! 一人でやるより、みんなでやろうよ。今日から俺がダチだ。これからは何でも手伝う」
 「君が友達? 私の?」
 「ああ、俺は如月弦太朗! 天ノ川学園の全員と友達になる男だ!」
 弦太朗は毎度のポーズで理事長に向かって指を突きつけ、個人的には最後の最後までこの、 弦太朗の不作法さを破天荒なキャラクターの面白さとして受け止める、という事が出来ませんでした(^^;
 これは個々人の感覚でだいぶ変わる所かとは思いますが、それがそのまま、作品としての“癖の強さ”に直結してしまっているのが、 今作の難しい所。
 今作の基本的な作劇パターン、劇場版『MEGAMAX』のなでしこ、前回今回で大体想定の付いててきた賢吾の正体、 などを考えると作品全体として「大切なのは形(見た目)ではない」というテーマ性も窺えてはくるのですが、 その「大切なのは形(見た目)ではない」象徴の筈の弦太朗が、実は「型どおりの不良キャラ」に引きずられた描写になってしまっているのは、 少々皮肉。
 「若いという事は素晴らしい。自分の価値観だけが絶対だと思い込める。人間には、友達を必要としない人種もいる」
 理事長は怒るでも笑うでもなく、ただ淡々と弦太朗の肩を叩いていさめ、その感触に奇妙な表情になる弦太朗……。
 一方、校長は遂に最後の12使徒を発見していた。その候補者は、かつてハエ座のゾディアーツになったもじゃもじゃ頭の友人、 黒木蘭。校長はどう聞いても出鱈目な理由で蘭を車に乗せて走り去るが、その前に立ちふさがるレオゾディアーツ。
 「仕方がない……如月弦太朗! その子を守りたかったら、私と共に戦え!」
 最終回目前にしてフォーゼとリブラがまさかの共闘で、レオをなんとか引き下がらせる事に成功。
 「私はなんとしても、君を守る。12個のスイッチが揃うと、私の命も危ないのだから」
 「自分の命を守る為に、仲間を裏切ったって事か」
 「その通りだ。私は我が身を守る為なら何だってする」
 潔さが一周回って格好良いです、校長。
 校長は土下座する勢いで仮面ライダー部(私服はさすがに夏仕様)に自分の知る全てを語り、 理事長=サジタリウスゾディアーツが皆の知る所に。我望光昭は10年前、 12使徒を生み出す為にコズミックエナジーの特異点である<ザ・ホール>の直下に天ノ川学園を創設。 生徒達をゾディアーツとして進化させる為に闇で蠢き続けていた。そしてその最終目的は、 12使徒スイッチによりコズミックエナジーを制御し、ダークネビュラ経由でプレゼンターの元へとワープする事。
 だがそれが実行されれば、ワープ実行時に生じたエネルギーの反動は、軽く日本を壊滅させてしまう……!
 しおらしい態度で反省している校長ですが、急に「これまでは我望に心酔していたが目が覚めた」と言い出した事で、 結局これまで校長個人としては何を望んでいたのかわからなかったのは、残念だった部分。 単純に盲目的に従っていたという事かもしれませんが、そうすると時折見せていた悪い表情の意味が全て吹き飛んでしまいました(^^;  ……やはり、崇敬する上司のパートナーが声が田中理恵なのに中身は中年のおっさんだった事や、 おっさんがリタイアしたと思ったら即座に女子高生に走った姿を見て、何か心の大事な部分に亀裂が走ってしまったのか。
 ホロスコープスを裏切っていた筈の江本が何故12使徒スイッチを集めようとしていたのか…… そこに射手座攻略の鍵があるのではないかと考えた賢吾達は江本の部屋を探り、隠されたUSBメモリを発見。 蘭は風城家に匿われる事になるが既にそこにもレオの手が伸びており、フォーゼとメテオは強力なレオ忍者に足止めを受けてしまう。 蘭が強制的にスイッチを押しつけられたその時――
 「へやっ!!」
 校長まさかのダイビングアタック。
 「速水……! 貴様」
 「立神……私の生徒に手は出させない」
 どうした校長、格好いいぞ校長。
 つい先刻、「私は我が身を守る為なら何だってする」と述べていた校長ですが、 「何だってするから12使徒を揃えさせない為には命がけで生徒を守る」辺り、 「一度殺されたけど本気で心が通じ合えたからいい奴だ」という弦太朗に近い物があり、案外、 この二人は良いダチになれてしまいそうな気がしてしきました。
 命欲しさに鞍替えしたと思ったら、今度は急に教師魂と生徒愛に目覚めたり、校長の天秤のブレ具合はかなり強引なのですが、もう、 校長が格好いいと許せるので困ります(笑)
 生身で懸命に戦う校長だが当然レオに砂にされ、その姿に校長の本気を見た蘭は、戦う力を得ようと自らスイッチをONし、 いきなり魚座ゾディアーツへと進化する。
 「使徒じゃない! 姿が変わっても、私は仮面ライダー部だ!」
 最終回直前、ここでヒーローと怪人が同根であるという改造人間テーゼが織り込まれ、 ゾディアーツに変貌した蘭が仮面ライダー部を名乗る事で仮面ライダーとは力を振るう器ではなくそこに宿る「守る魂」なんだ と叫ぶというのは今作らしい形。また、劇中最後?の仮面ライダーが、見習い部員の1年生、 というのも今作の位置づけが「未来」である事と巧く繋がりました。
 ピスケス蘭は、修練を重ねた合気道と、地面の中も自由に動く魚座の能力でレオを相手に大健闘し、 ようやくレオ忍者を倒した落第ライダーズも駆けつけるが、そこに、理事長が自ら姿を現す。
 「人類の進化は常に犠牲を強いてきた。今回も同様だ。残された者達に災厄が訪れようと、必ず再び立ち上がり、 私の後を追ってきてくれる事を信じているよ」
 「なんて自分勝手な」
 「自分勝手? 君の貧しい価値観では、そういう言葉になるのかな。だが違う。君の価値観だけが絶対ではないのだよ」
 圧倒的余裕を見せる、宇宙の深淵に向けられた一本の矢――我望光昭。果たして仮面ライダー部の若き絆は、 この巨人を食い止める事が出来るのか?!

◆第46話「孤・高・射・手」◆ (監督:諸田敏 脚本:中島かずき)
「私に友が居た事は一度もない。過去も未来も含めて一度もね」 (我望光昭)
 自らを人類の進化の頂点に立つ存在と嘯く理事長は、フォーゼとメテオを一撃で粉砕すると余裕綽々で退却。 ラビットハッチで治療を受けた校長の提案で我望の隠し部屋から12使徒スイッチ盗み出そうとする弦太朗達だが、 爆弾トラップと待ち伏せに引っかかってしまう。一方、レオは病院のもじゃもじゃを人質に取り、 呼び出しを受けた蘭は再びピスケスに変身。そこへフォーゼもやってくるが、 それはジェミニ爆弾で吹っ飛んだ筈の校長が変身した幻影であった。偽フォーゼはピスケスを不意打ちし、 色が青から赤に変わった魚座のスイッチを奪い取る。全ては、蘭に自らの意思で12使徒スイッチを覚醒させる為の、 校長の周到な策略だったのだ。
 「全部芝居だったって事か!」
 「当然だ。私があの方を裏切るわけがないだろう」
 獅子忍者を合体マグネットアタックで撃破し、遅れて現れた弦太朗と流星の前で、目がイっちゃった凄く悪い顔になる校長、素敵。 最初は正直、スかした橘さんに見えて仕方が無かった速水校長ですが、自己顕示欲と猜疑心の強い小物から、 実は筋金入りの狂信者だった、というのは最後に演技力でねじ伏せる感じで収まりました。確かにこれなら、背景も不要。
 「おまえが言う友情の絆なんて、我望様の力の前では何の意味もない」
 「サジタリウスが理事長で、リブラが校長で、ゾディアーツを作るための学校が天高なら、そこに通う俺達の青春はなんだったんだよ!」
 「決まってる。おまえ達も我望様のコマだ」
 ただここで、波打ち際で生身で殴り合う弦太朗と校長の図は、諸田監督の悪ふざけというかセルフパロディの度が過ぎた気はします。
 「俺達の青春は! ……俺達のものだ。それを汚す奴は、俺は絶対に許さない!」
 「速水! おまえは俺が会った中で、一番最低な男だ――変身!」
 フォーゼとメテオは続けて変身し、リブラ&レオと戦うが、そこにサジタリウスが降臨し、今日もざっくりやられる落第ライダーズ。 滅茶苦茶強いラスボスの表現としてはわかるのですが、正直今作、12使徒相手にライダーが苦戦しすぎて、 サジタリウスが際立って強いという表現としては物足りないものになってしまっています。
 「12個のスイッチが揃った今、私を阻む物は何もないのだ」
 ゾディアーツとは、生体ワープの為の超進化生命体だと語った理事長は遂にダークネビュラ経由のワープゲートを開くが、そこへ、 ユウキに看病されて途中から忘れられていた半年分の青春を1分程度にまとめられた賢吾が駆けつける。 江本の残したデータを調べていた賢吾は、江本/バルゴの狙いが、今この瞬間にあった事を解明していた。 ゲートを開いてワープ準備中のこの時、無敵のサジタリウスが無防備になるのだ!
 メテオがレオの足を止め、射手座へ宇宙斬りを放つフォーゼだが、リブラ校長が決死のカバーリング!  会心の一撃を受けながらもフォーゼを押し返したリブラは、その衝撃でダークネビュラに吸い込まれていき……
 「我望様、見ていただけましたか。私の存在の重さを」
 空に顔が浮かんだーーー(笑)
 そして、大爆死。

 校長ーーーーーーーーーー(笑)

 前回今回と、速水校長が目眩のする面白さ。
 まさか自分でモノローグつけるとは。
 にしても、半ば事故とはいえ、これ、弦太朗に立派なキルマークがついた気がするのですが(^^;
 「友達は居ないと言ったな……だけど速水は、身を挺しておまえを守ったぞ! ダチに助けられたんじゃねぇのか!」
 「彼は私という太陽を回る衛星だ。私を守るのは当然の事だ。友達などでは、ない」
 正直ここ、理事長の言う事の方が正しい気がします(笑)
 いや勿論、速水を道具としてしか扱っていない理事長の性根は間違ってはいるのですが、なんでもかんでも「友情」にくくろうとして、 「信頼しあう上司と部下」とか、そういった別の良い関係を放り捨てすぎでは(^^; 幾ら作品のメインテーマとはいえ、 理事長と速水の関係がもし理想的だったとしても、それは「友達」とは別の関係だったと思うのですが。
 「友達を……友達を何だと思ってるんだぁ!!」
 なので、凄い勢いで激怒する賢吾の台詞も、ピントがズレた感じに。
 後それこそ、12使徒の中で理事長が少しでも友情を感じていたとすれば、江本になるわけですが、つい最近、 10年単位で思いっきり裏切られていた事を知ったわけで。むしろ今「友達」という言葉は、 理事長が心を閉ざして女子高生と宇宙へ旅立とうとしても陪審員が許しそうなレベルのトラウマスイッチ。
 賢吾の全身がいきなり青白く発光すると12使徒スイッチが力を失い、閉じてしまうダークネビュラ。 狼狽しながらも何かを察知した射手座は獅子座と共に引き下がり、次回――明かされる賢吾の真実。

◆第47話「親・友・別・離」◆ (監督:坂本浩一 脚本:中島かずき)
「次の世代に繋ぐ。それも立派な私たちの仕事だ」 (歌星緑郎)
 「俺はコアスイッチから生まれたコアチャイルド」
 賢吾の正体――それは、20年前に月面で発見されたコアスイッチを核に、 コズミックエナジーが地球人の形を取って実体化した存在であった。その役割は、 コアスイッチを発見・解析するだけの知性を持った文明の情報を収集し、それをプレゼンターの元へ届ける事……と、コアスイッチは、 高次知性による試験問題だった、と意味づけはそのままモノリス(『2001年宇宙の旅』)で、それだけだとどうかと思ったのか、 そこから賢吾が誕生、という要素をプラス。
 コズミックエナジーを共同研究していた歌星緑郎と我望光昭だが、 緑郎が提唱したフォーゼシステムでは自分が旅立てない事に我慢ならなかった我望は、 ゾディアーツスイッチによる人類の強制進化の道を選び、緑郎を暗殺。だがその襲撃の前日、 コアスイッチからコアチャイルド=歌星賢吾が誕生しており、緑郎の殺害後に「改心した江本が月面から俺を回収し」……って、 随分また、大雑把な(^^;
 緑郎を殺してから何時間で改心したんだ、江本。
 「今、自分の為に」という我望と、「いずれ、未来の為に」という緑郎の対立は、今作全体の方向性と繋げつつ、 我望はどこまで行っても自分の為にだけ生きており、それ故に驕慢な孤高であろうとする―― 他者を認めてその為に何かをするという事が出来ない――と、弦太朗のアンチテーゼとして巧く補強。
 ただ今作まとめると、緑郎も我望も、失敗したのは、程度の差はあれ江本に友情を感じた事になる気がするのですが。
 賢吾は自らの使命を果たす為、フォーゼドライバーを用いてプレゼンターの元へ旅立つと告げるが、 コアチャイルドとしての覚醒により人間としての感情は無くなった、というのが賢吾の演技であると弦太朗は見抜いていた。
 「俺も……俺もお前達と別れたくない。……でも……これが運命なんだ。逆らえない」
 感情を殺し、サンプルとして立ち去ろうとする賢吾は本音を吐露し、弦太朗はそんな賢吾を固く抱きしめる。
 「行ってこい賢吾」
 「え?」
 「ただし……人間としてだ。…………俺達全てのダチの代表として、胸張って行ってこい! プレゼンターと同じになれ!  そして……待っててくれ。……俺達も自分達の力で、必ずお前に会いに行く。別れは心の骨折だ。今は痛いが、治ればもっと強くなる。 俺達は……俺達はダチだ! ずっと……ずっと……」
 その背後で、「はやぶさくん」の節でずっと友達ソングを歌い出すユウキ、どこまでも、逸材(笑)
 この、「待っててくれ。俺達も自分達の力で、必ずお前に会いに行く」というのは未来志向の 『フォーゼ』の姿勢が綺麗に集約され、好きな台詞。……もう少し色々、丁寧にここまで来られなかったものか、 とは思う所ですが(^^;(それはそれで、今作の特性を失わせたかもしれず、好みの問題となってしまう部分ですが)
 ところが賢吾が友に見送られ、人間として旅立つ事を決意したその頃、ラビットハッチがレオの襲撃を受けていた。
 「俺の命はあの方に捧げている。あの方の願いが叶うのならば、この身がどうなろうが、惜しくはないわ!」
 流星vs立神の生身バトルは見事な迫力で、校長の時は1秒も描かれなかった理事長との出会いまで回想され、今作はどこまでも、 横山一敏に手厚い。
 急ぎ弦太朗達が駆けつけた時には既にラビットハッチは半壊しており、姿を見せる理事長。コアスイッチを渡せという理事長に対し、 賢吾は毅然とそれを撥ね付ける。
 「本当はもう、気付いてるんでしょう? 残念ながら、貴方は選ばれた存在ではない。プレゼンターの元に帰らなければならないのは、 俺だ」
 「言うなーーーーー!!」
 ……んーーーーーーーーー、今作として我望を糾弾するとしたら、“友を切り捨てて道を誤り、 多くの人を踏みにじった事”だと思うのですが、理事長があまりに強靱で揺らがない為、「選ばれた男」が出てきて、 “選ばれてもいないのに分をわきまえないで余計な事をしたのがおまえの罪”と後頭部を殴りつけるというのは、 思いっきり殴る鉄パイプを間違えたような。
 しかも、賢吾の覚醒が、弦太朗達との出会いで加速したというような描写が弱い為、コアチャイルドとしての帰還は「予定調和」であり、 運命に逆らおうとした男(我望)を、運命(賢吾)が思いっきり殴り飛ばしたみたいな構造になっているのは、 私個人の好みとしては、受け入れにくい展開です。
 いやこれ、弦太朗達との交流があった事で、我望の自分本位な野望の達成よりも、賢吾の覚醒が早まった、 という流れならまだわかるのですが、賢吾の台詞にも全くそういうニュアンスが入っておらず、 何故そこに1年間の物語の蓄積を注ぎ込んでこないのか、凄く困惑。
 今更そこは言葉にしなくても伝わる筈、という意識だったのかもしれませんが、巨悪との決定的な対立軸になる部分なので、 そこは明確に描いた方が良かったように思えます。
 覚醒した賢吾は射手座の矢さえ防ぎ、宇宙に飛び出して戦うフォーゼvs射手座&獅子座。 続けて出てきた賢吾が衝撃波で射手座と獅子座を吹き飛ばし、飛んできたメテオが作った謎空間の中で、 フォーゼは変身を解いてドライバーを賢吾へと渡す。
 「おまえは、おまえのやらなきゃならない事をやれ」
 「おまえと会えて、本当に良かったよ…………弦太朗」
 「初めて俺の名前呼んでくれたな」
 「そうだな」
 1年かけて辿り着いた万感の友情タッチ……を真ん中で無言で見つめるバリア係(^^;
 もう少し、もう少し、ここは何とかならなかったのでしょうか……!!
 メテオは変身を解いた弦太朗をハッチの中に回収していき、ドライバーを装着した賢吾は帰還の為の手を振り上げる……だが!
 「月面の塵と消えよコアチャイルド!」
 旅立ちの寸前、自ら超新星を発動した、真紅のサジタリウスゾディアーツ@広島カープ優勝おめでとう!  の放った跳び蹴りが賢吾に炸裂して賢吾は倒れ、握り潰されるコアスイッチ、消滅する賢吾……。
 次回――最・終・回!

◆第48話「青・春・銀・河」◆ (監督:坂本浩一 脚本:中島かずき)
「仮面ライダーフォーゼ、最後の……タイマン張らせてもらうぜ!」 (如月弦太朗)
 「君の親友とやらの形見だ。それを使って救いたい者を救うがいい」
 自分を阻むコアスイッチ=賢吾を破壊した理事長は余裕を見せ、月面で拾ってきたフォーゼドライバーを弦太朗に投げつけると、 学園で待機していた仮面ライダー部員にも、「明日は始業式だ。私の最後のスピーチを聞かせてやろう」と言い残して、立ち去っていく。 弦太朗と流星はライダー部の旗を回収してなんとか地球へ戻るも、ラビットハッチは完全壊滅。
 この最終盤、友子が事あるごとに「流星さん!」と心配してくれるのが凄くおいしいのですが、まあ、それないとホント、 扱いが悲惨すぎるしな流星(メテオ)……。
 もはや理事長を止める事は出来ないのか……打ちひしがれる仮面ライダー部員達に、別れの時、 賢吾から託された手紙をユウキは読み上げる。
 「仮面ライダー部の友人達へ――」
 賢吾が仲間達それぞれに遺したメッセージが紹介され、俺が言うのもおこがましいけどキングはクイーンと頑張れ!  て本当に余計なお世話すぎるゾ(笑)
 「そして……如月弦太朗。君は、俺の親友だ。宇宙の果てへ行こうが、存在が消滅しようが、その想いは変わらない。 言っても言い切れないが、ただ一言……ありがとう」
 もし自分が消滅したとしても、我望を恨む事なく、我望の絶望に光を与えて止めて欲しい――賢吾の最後の願いを叶える為、 立ち上がる仮面ライダー部員。
 そして――始業式の日。
 「1時間後、私は宇宙の深淵に旅立つ。その時、この地上は壊滅する。残り少ない人生を、好きに使うがいい。――以上だ」
 我望は自ら全高放送で全てを告白。フォーゼとメテオはダークネビュラを召喚した理事長の下へと向かうと、 大量の獅子忍者軍団と最後に派手なバイクアクションを展開し、虚空に浮かぶ射手座へスーパーロケットで突撃するフォーゼ。
 「私の邪魔をするか!」
 「賢吾は言った! 恨みじゃ前に進めねぇ! だから俺は、あんたの怒りも、あんたの絶望も、全部ひっくるめてダチになる!」
 ロケットきりもみで射手座を地上へ墜としたフォーゼは、次々とステイツを切り替えて激闘を繰り広げ、一方、 レオゾディアーツとの最後の戦いに臨むメテオストーム。
 「心が折れない限り、勝機はある!」
 メテオストームは、弾き返されたメテオ独楽を更に打ち返すメテオ3倍返しでレオに大ダメージを与えると、 メテオスイッチ(?)をベルトに再装填したライダースーパー隕石キックでレオを撃破。
 「なぜだ……」
 「俺の定めは――俺が決める」
 最後まで理事長への忠心を貫いたレオは、江本を殺したという事もあってか、もやもやと消滅。 流星にも立派なキルマークが付きましたが、流星は実質2度目だし、もともと覚悟レベルがちょっとズレているので、多分大丈夫。
 「俺達は何度も、何度も失敗した! だけど、誰かがくじければ誰かが支える! そうやってぐるぐると、 人の思いが渦を巻いていく! それも銀河だ!! あんたが作った学校は、明日を信じる希望の銀河になってるんだ。天高は、 俺達の青春銀河だ!」
 射手座に対するフォーゼのこの台詞には、今作が目指したものと今作がそれ故に失敗した部分が極めて象徴的に織り込まれているのですが、 今作がはまってしまった最大の陥穽は、
 「若くて未熟でそれ故に失敗しながら一歩ずつ明日へ進んでいく若者達」という構図と 「それはそれとして全て良い方向の解決へ繋がる弦太朗ルール」の噛み合わせ、にあったと思えます。
 何度か書いていますが、今作における如月弦太朗の基本的な役割は、共同体(天高)の外側から来て、 その構造(最終的には、我望による支配)を変革するトリックスターという、アウトサイダーヒーローなのですが、それ故に今作は、 若くて未熟な筈の弦太朗自身の変革を描けなかった。
 勿論マグネット回などのように、弦太朗自身の失敗と反省にともなう成長要素が全くないわけではないのですが、基本構造として、 “そういう弦太朗”が周囲に変化をもたらす物語である為に、“そういう弦太朗”を大きく変化させるわけにはいきませんでした。 そして弦太朗自身はこの物語において、自らは共同体に所属しない「他界」の存在として位置づけられます。
 それを象徴しているのが、弦太朗の短ランとリーゼントとであり、これは民俗学的にいうと、 弦太朗にアウトサイダー(「他界」から来た者)としての聖性を与える為の、天高における「やつし」(変装)といえます。
 (※ちなみに、「仮面を被る」とか「非日常的な服装をする」事で神霊の属性を帯びるという概念は、 変身ヒーロー物の基本的な下地と言えるので、今作において弦太朗は二重に「変身」しているといえます)
 このやつしは、序盤においては弦太朗の持つトリックスターとしての機能を象徴する大きな意味を持っていたのですが、 しかしそれ故に、実は弦太朗は、本質的に天高の青春銀河の中に居ない。今作は、そういう構造の物語といえます(なお勿論、 中島かずきはその辺りの意味性を遙かに詳しく抑えた上で書いていると思います)。
 なので、始業式の日、ライダー部が結集した時に弦太朗と流星が天高の制服姿だったら凄く感動したかもしれない、とは思ってみたり。 そういうのはエンタメの要請もあるので、意味づけ通りにはなかなか行かない部分ですが(^^;
 で、そういう観点で考えた時に閃いたのですが、コアスイッチやプレゼンターの設定が大まかにでも最初から存在したのなら、 構想としては今作、恐らく賢吾の使命を継ぐという形で、弦太朗をプレゼンターの元へ旅立たせるつもりだったのかなー。
 そもそもの弦太朗のアウトサイダーとしての役割は、共同体に影響を与えたら去って行くという形が一般的ですし、 賢吾との友情やフォーゼとして戦ってきた事の意味、今作のテーマと繋げた弦太朗自身の明日への旅立ち、 自ら運命を掴んで理事長という巨人を乗り越える、という所まで合わせて、そう考えると個人的に、凄くスッキリ辻褄が合うのですが。
 ああなんか、ほぼ妄想ですが、私の中で今『フォーゼ』という作品が勝手に腑に落ちてしまいました。
 本編戻ります。
 フォーゼと広島サジタリウスはライダーキックを打ち合い(凄く監督の趣味を感じたシーン)、 フォーゼはコズミックワープで射手座を学校の体育館へと連れ込むと、自ら変身を解く。そこでは仮面ライダー部の面々が、 理事長の卒業式を準備していた。
 「開会の言葉――只今より、我望光昭理事長からの、卒業式を行います」
 「俺達の想いを、受け取ってもらうぜ、理事長!」
 部員達が次々と声を張る理事長への送別の言葉をバックに、生身で射手座に殴りかかる弦太朗。
 「学園も地球も宇宙も、みんなみんな、私たちは私たちの手で掴む!」
 「希望を! ずっと! 仲間と! それが俺達の絆だ! だから今日、天高はあんたの支配から卒業する!」
 以前の卒業ダンス回で使ったボーカル曲をバックに、理事長が自分の為に作った銀河は既にそこに生きる者達の銀河になっているのだ……と、 大人を乗り越えていく子供の姿を、逆卒業式として描いた展開は学園物として面白いのですが、ここで最後の皆で声を合わせての変身に、 除け者にされる流星……。
 流星…………(涙)
 まあ流星、コズミックの絆エネルギーの対象でもないしな!  という事で仮面ライダー部員達の絆の力を結集したフォーゼはライダー卒業ドリルドリルドリルキックでサジタリウスゾディアーツを撃破。
 「卒業生代表――仮面ライダーフォーゼ。如月弦太朗」
 これにより、消滅するダークネビュラ。を流星は外で確認する係です(涙)
 「負けただと、この私が……」
 「ダチになってくれ、理事長」
 「如月……」
 「賢吾も、きっと賢吾のオヤジさんも、それを望んでる」
 「まったく……君は何者なんだ……」
 「俺は如月弦太朗! 天高の連中全員と友達になる男だ!」
 弦太朗は理事長と半強制友情タッチをかわし、如月弦太朗という言う男に飲み込まれた理事長は憑き物が落ちたかに見えたが……その体に異変が生じる。
 「これも、自業自得だ」
 さすがに理事長をなぁなぁで済ますわけにはいかず、ゾディアーツスイッチによる強制進化の反動という形で、退場コースへ。
 「如月くん、最後の頼みだ。君達が……プレゼンターに会え。私が出来なかった事を、成し遂げてくれ」
 「わかった。約束する」
 独り静かにその場を立ち去った理事長は、夜の公園で、満天の星空へ――かつて自分を導いた声へ向けて、届かぬ手を伸ばす。
 「約束は果たせなかったな……だが、私の生徒が必ず行く。……その時はよろしく頼む」
 最終的に理事長も次代に夢を託す側に回る、というのは今作として納得のいく着地ではあるのですが、同時に、 理事長が本当に友達になりたかったのはプレゼンターだった、というのは、ひどく残酷な結末。
 物語全体としては、あるバランスを取っている、ともいえますが。
 そして……新学期、賢吾からの手紙を川に流して供養しようとしていた弦太朗は背後からそれを止められる――そこに居たのは、 歌星賢吾その人。自らの消滅の寸前、理事長は最後の力で賢吾を再生させ、賢吾は(たぶん人間として)生まれ変わったのだ!
 「今度は人間の力で、宇宙に行こう! プレゼンターに会いに行こう!」
 「ああ」
 「「宇宙キターッ!!」」「キターッ!!」
 から、主要メンバーの姿が少しずつ描かれ、 昴星の女子は彼女じゃないと否定する流星に改めて桃色の波動を出す友子など最後までやたらこのカップルが押される一方、 キングとクイーンはウィザード顔見せの踏み台となり、退院した蘭ともじゃもじゃを加えて、宇宙ライダー部の旗を広げて、 若者達は明日を目指す! でエンド。
 …………ところで、タチバナ(江本)は死んで、理事長も消滅して、バルゴスイッチの使い手が居ない今、 マジカル衛星で眠っている人達は誰が回収するのでしょうか。気になる。
 −−−−−
 劇場版『MEGAMAX』含め(これは本編スタート前から織り込み済みでしょうから)、 「昨日−今日−明日」と「それを守るもの」というテーマは一貫しており、そこは綺麗にまとまっているのですが、その一方で、 「共同体を変革する役割のアウトローヒーローが未熟な若者ゆえに説得力が不足する」 という基本構造の噛み合わせの悪さが最後まで解消し切れず、キャラクターの勢いで突破しようという狂気と、 それはそれとして土台を補正しようという正気の中途半端な混在が、全体の荒っぽい作りに繋がってしまった感があります。
 その荒っぽさが良くも悪くも独特の“癖”になっており、そこを面白がれるかどうかが評価の大きな分かれ目かと思いますが、 個人的には、どうせならもっと突き抜けた狂い方をしてほしかったなぁ、という所。
 この辺り、前作の主人公が、いっけん正気に見えるけど物凄く狂気、だったので、2年連続、狂気全開はどうか、 という意識が制作側にあったのかもしれませんが(逆に言うと、『オーズ』直後でなければ弦太朗はもっと狂って見えたのかもしれませんが、 くしくも放映通りにほぼ連続で見る形になった事もあり、映司の壊れっぷりが感想に影響を与えた部分はあります)。
 ギミック的には、最初は盛りすぎではと思われた40個のスイッチをむしろ立て続けに出していき、 初期のステイツチェンジも割とさらっと発動していく用い方などは割と好きでした。
 特に好きなキャラクターを5人あげると、流星、友子、校長、理事長、アリエス山田。レギュラー以外のゾディアーツでは、 アリエス山田が一番好きです(笑) 流星はとにかく、顔が好みでキャラ的にも良くメテオも格好良くてお気に入りだったのですが、 それだけに終盤の軽い扱いがちょっと残念(^^; その分、友子からの愛がガロン単位で供給されていましたが。
 校長は最初はあまり面白がりすぎるのもなぁと思っていたのですが、存外生き延びた末の、 45−46話のコンボは強烈すぎました(笑) あの空に浮かんが笑顔は、シリーズ屈指の名シーン。 理事長も最初はあまりピンと来ていなかったのですが、じわじわと存在感を増していっての最終盤の貫禄は、良い敵役でした。 終わってみると、バルゴを始末した後の「…………江本」が、視聴者に色々な事を想像させて非常に本編の奥行きを広げており、 あれは実にお見事。
 後、終盤の挿入歌「COZMIC MIND」はお気に入り。
 以上、かなり駆け足だったのでだいぶ落としている部分もありますが、『仮面ライダーフォーゼ』感想でした。青春スイッチ、ON!

(2017年1月2日)

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