■駆け足『仮面ライダーフォーゼ』感想まとめ3■


“きっと GIANT STEP
1センチだって構わない”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーフォーゼ』感想の、 まとめ3(27話〜38話)です。配信の関係で週12話ずつの視聴だった為、駆け足気味。 文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ4〕



◆第27話「変・身・却・下」◆ (監督:石田秀範 脚本:中島かずき)
「軽い……私の扱いが、非常に軽い」 (速水公平)
 ちょうどクールの切れ目ですし、卒業したキングとクイーンはOPの映像を差し替えて欲しかった所。 ラストカットのフォーゼはどんどん増えているのですけれど。
 ――春休み、仮面ライダー部が弦太朗の家に集まって宇宙鍋パーティーを開催する事になる中、 落語家に呼ばれた流星は一人体育館に向かうが、そこではカニが生徒達に一発ギャグで自分を笑わせる事を要求し、 不合格の人間の魂(生命エネルギー)を奪い取る、という新たな能力を発動させていた。
 「ねえ流ちゃん、あたしと組んで、おもしろーい事しようよ。頭は切れるし、腹も座ってる。何よりあんた……――嘘つきでしょ」
 「厚意は嬉しいが、断るよ」
 落語家からゾディアーツにヘットハントされるも流星は断り、春休みの校内を回りながら戦うメテオとカニ。 戦闘中のべつまくなしに喋り続けているカニの台詞回しがなかなか面白く、 カニのペースに翻弄されながらも木星パンチを浴びせたメテオは、カニが逃げたと思い込んで油断から変身解除した所を、 バッチリ目撃され正体を掴まれてしまう。
 「もしメテオが君である事が他人にばれたら、君は、メテオの力を失う事になる」
 よりにもよって体育館に来る直前、メテオの強化をタチバナに要請した際に、 ご近所の平和を守る美少女仮面のような設定を念押しされていた流星、大ピンチ。
 まあバレた瞬間に、衛星からお仕置きビームが飛んできてローストチキンにされない分、だいぶん人道的とはいえますが。
 その頃、残りのメンバーは如月家に集い、弦太朗の両親が交通事故で亡くなっている事、弦太朗は祖父の吾郎と2人暮らしである事、 レースチームのメカニックを務めていた吾郎と日本各地を転々としていた為に転校続きの生活だった事など、 これまで謎だった如月家の背景が色々と明らかに。
 てっきり、弦太朗は背景不明の風来坊で通すと思っていたので意外でしたが、 さすがに2010年代に主人公の素性を一切描かずに走り抜けるのは無理だったのか。 そして生前の弦太朗の両親は何やら難しい事ばかり話していたと、仕事を変に隠される不穏な伏線。
 「友達作れよ弦太朗! 友達がおまえを救ってくれる」
 弦太朗が友情にこだわるのは、友達を作ると父親が非常に喜んでくれたから、とストレートに補強し、なんというか今作、 良くも悪くも、ときどき正気に戻ります。 たぶん今作にもう一つ足りないのは、全てを振り切る狂気(そういう点で『MEGAMAX』は、狂気とその感染拡大の描写が秀逸でした)。
 遅れてやってきた流星は弦太朗の発言に「君はまだ、友達の重さをわかってはいない」と飛び出していき、 親友にスイッチを選ばせてしまった過去のトラウマを思い起こす。
 ――友達? くだらない。俺に必要なのはスイッチだ!
 (俺はあの時、十字架を背負った。もう二度と友を作らない。そう決めた。……やはり俺は一人で戦う)
 「やっぱり、何かおかしい……」
 流星の異変に気付いた友子がそれを追いかけていき、先日不満を述べたら、急に距離が……!(笑)
 まあ以前に書いたように、せっかくメインキャラの人数が多いのだから、 弦太朗を軸にする以外の所でキャラクターの横の繋がりがあった方が断然面白くなりますし、 折角なら男女ペアの方が嬉しいという点も含め、コミュニケーションは苦手だけど勘の鋭い友子、 というのは裏表の激しい流星に対して絶妙な位置づけになりました。
 一方その煽りを受けて、賢吾の存在感が日に日に薄れていきますが、色々と背負っているので後半の巻き返しがあるでしょうし、 ほどほど頑張っていただきたい。ところで今回の私服賢吾、凄く横幅が広く見えるのですが、もう、 クール二枚目路線は諦めたのか。
 秘密を守る為、実力行使でカニを口封じしようとする流星だったが、魔法少女の掟により、変身不能に。 メテオスイッチを持っている限り、流星のプライベートは全てタチバナに筒抜けだったのだ!
 友子と一緒に弦太朗が駆けつけてフォーゼに変身するも、超電磁ボンバーさえ通用せず、進化を続けるカニは自ら超新星を発動。 そして流星には、非情な言葉が告げられる――。
 「残念ながら、君はもう、メテオではない」
 なお今回、理事長に「これからいよいよ計画は動き出す。もう少し大きな精神操作を考えた方がいいかもな」発言があり、 ゾディアーツサイドも後半戦の開始でじわじわと蠢動。

◆第28話「星・嵐・再・起」◆ (監督:石田秀範 脚本:中島かずき)
「仮面ライダーメテオストーム。俺の定めは嵐を呼ぶぜ!」 (朔田流星)
 えええーっ?!
 メテオの左右非対称ヘッドが気に入っていた身としては、メテオストームの左右対称の金色イガグリヘッドが大ショック。 そして拳法系の武器として棒術なのはまあいいとして、どうして先端にベイブレード(TAKA●ATOMY) 付いているんですかタチバナさーーーーーん(実際に、玩具開発担当者がベイブレードを参考にしたとの事)。
 玩具の再現性を優先したのかもしれませんが、メテオ独楽を投げつける必殺技が完全に手元だけで発動しているのに不条理レベルの威力で、 映像的な説得力が弱いのもマイナス(^^;
 超新星を発動するも制御しきれないカニは、流星の魂の輪を奪って撤退。それを取り返そうと向かう流星だが、 病院の二郎の容態が急変したという連絡で大パニック。それを知った弦太朗、そして仮面ライダー部員達は、 流星の身代わりを申し出て自分たちの魂をカニに預け、「なんだいなんだい、この、集団『走れメロス』は」……て、 セルフでツッコんだ!
 16時までに必ず戻ると約束して病院へ向かった流星は二郎を力づける事に間に合うが、今度はそこに鉄仮面から、 約束の時間までにある場所に来れば強化アイテムと一緒にもう一度メテオになるチャンスを与えよう、 と学園に戻れない時間を指定されてしまう……。
 (すまない……。期待には応えられない。俺にはやらなければならない事があるんだ)
 流星が選んだ場所、それは――
 「流星さん……!」
 「おや……戻ってきたのかい。あんたも結構馬鹿だねぇ」
 「馬鹿で結構。やるべき事をやるだけだ」
 タイムリミット寸前に学園へ戻ってくる流星だが、そこでは既に、 友子以外の仮面ライダー部員が厳しいお笑い審査の壁に阻まれて倒れていた。部員達を救うべく一発ギャグを要求される流星だったが、 それを拒否してカニに立ち向かうも生身では敵うべくもなく一方的に叩き伏せられてしまう(ここで改めて、友子が流星の本気戦闘を目撃)。
 「ただの人間が刃向かって何とかなると思ったのかい? 笑わせるねぇ全く。はっはっはっはっは」
 「――今笑ったな」
 「あ?」
 「確かに今君は笑った」
 「え、違う」
 「君は戦っている時、笑わせるなが口癖なんだよ。今回も言うと思った」
 流星の機転を見せると共に、前回カニが戦闘中にひたすらベラベラ喋っていたのが巧い眩惑となって、良い逆転劇。
 「僕の勝ちだ」
 魂が解放されて部員達は息を吹き返し、フォーゼが戦闘している間に、 時間に遅れているのを承知でタチバナとの約束の場所へ辿り着いた流星は懸命に言葉を紡ぐ。
 「俺はあいつらの笑顔の重さを知った。俺はあいつらに、この秘密だらけの男を信じた仮面ライダー部の連中に借りを返したいんだ!」
 メテオスイッチは変わらず無反応……だがその時、流星は怪しげな靴箱に気がつく。
 「メテオストームスイッチ――それが、君の選択の結果だ」
 魔法を取り戻した流星はメテオに変身して戦場へ飛んでいくと、強化スイッチによりメテオストームにステイツチェンジ。 ど派手な青金の姿になると新装備の棒術でカニ忍者を蹴散らし、必殺マジカルメテオ独楽で巨大化したカニの手足とどめに舌をもいで粉砕。
 「俺がやられると掛けて、黒い犬と解く。そのこころは、そりゃあ、おもしろくない。おあとがよろしいよ、う、うぎゃっ、うぉぉぉ」
 メテオストームの第一印象は正直がっくりなのですが、いきなりこの姿になるわけではないだけ、マシと思うべきでしょうか。 主役ライダーの最強フォームより先に第二ライダーがパワーアップ、というのは珍しい……か?
 辛うじて学園まで逃げ延びた鬼島だが、軽石校長にスイッチを奪われ、幻術によって学園を探っていた刑事の姿に変えられると、 校長に乗せられたバルゴの手でシベリア送りにされてしまい……リタイア。
 12使徒、増えそうでなかなか増えません。
 今回、流星を善導するような動きを見せた鉄仮面ですが、最後に思わせぶりなアップのカットがあったり、 まだまだ素直に受け止めきれない謎だらけ。流星は部員達に感謝の念を抱くも距離を取るのは変わらずで友情タッチは拒否し、 次回、新年度スタート。

◆第29話「後・輩・無・言」◆ (監督:坂本浩一 脚本:長谷川圭一)
「簡単に友達になろうなんて奴、信用できない」 (黒木蘭)
 平成24年度入学式――さっそく新入生に絡む弦太朗は気の強い合気道少女・黒木蘭に投げ飛ばされ、 その光景を、“他人に無関心な今時の若者”とか雑にくくられても凄く困るのですが、自虐ネタなのですか歌星さん。 弦太朗に絡まれていた気弱なもじゃもじゃ頭の草尾ハルは、校長に目をつけられてスイッチを渡され、 蘭に守られてばかりではなく「僕も、強くなりたい!」という想いから、ハエ座のゾディアーツへと変貌してしまう……!
 あの子に守られている自分を変えたい男の子、という定番プロットですが、今作これまで、 “既に何度もゾディアーツに変貌している生徒”がほとんどだったので、ゾディアーツスイッチの、 使用前/使用後による人間性の変化を、後半戦&新年度のスタートに合わせて描いてきたのはポイント。新入生、 という素材もそれを見せる良い理由付けになりました。
 見所は、ハエを殴るだけ殴って、こいつ弱いから役立たずだ、と帰るメテオ(笑)
 だがハエは素体の感情の昂ぶりに応じて急速に進化していき、より攻撃的な性格になると共に思わぬ能力を発揮していく。
 一方、弦太朗・ユウキ・賢吾は、新たに3−Bの担任となった大杉に目の敵にされて付きまとわれ、ライダー部の活動に支障が出る事に。
 ……毎度思うのですが、弦太朗とユウキはともかく、どうして賢吾はここまで問題児トリオとしてくくられているのか。 授業をよく欠席するといっても体が弱くて保健室通いなのは事実ですし、何より成績が学年主席というだけで相当おめこぼしされると思うのですが、 画面に映っていない所でいったいどんな悪事をしているのか心配になるレベル。猫ゾディアーツに狙われる理由だけの為に、 学年トップの成績という設定にしたのは地味に失敗した気がしてなりません。頭は良いけど、 テストは適当にやっている設定で良かったのではないか。
 そして小型に分裂したハエ対策の為にネットスイッチをラビットハッチに取りに戻った賢吾は、 それを見とがめた大杉にラビットハッチへの侵入を許してしまう……。
 大杉先生がどうでもいいので、この展開自体が凄くどうでもいいのですが、新年度早々訪れた仮面ライダー部最大の危機を、 8人は果たして乗り越える事が出来るのか?!

◆第30話「先・輩・無・用」◆ (監督:坂本浩一 脚本:長谷川圭一)
「おまえのダチは、俺達のダチだ」 (如月弦太朗)
 進退窮まった仮面ライダー部は、大杉先生に素直に事情を説明。弦太朗は目の前でフォーゼに変身し、 大杉を月面に連れ出して そのまま宇宙へ追放 説得するが、大杉はライダー部の解散を通告し、 ラビットハッチの中でてんやわんやの大騒ぎに。一方流星はタチバナから、流星が以前に通っていた昴星高校で新たにゾディアーツが覚醒したと知らされる。
 「スイッチャーの覚醒は、<ザ・ホール>の影響下にある天ノ川学園に限られていると聞いていたが」
 とここで、物語の核心に近いと思われる情報が一つ。
 昴星の様子を見に行った流星は、そこでフラフラしていたリブラと交戦するが、校長、またも女装。
 「前より遙かに強くなっている。――でも、心の甘さはそのままだな」
 友子の姿に眩惑されている内に校長に逃げられてしまうメテオだが、昴星には何か、以前と違う奇妙な空気が漂っているのであった……。
 天ノ川学園では、蘭を守りたいという思いはそのままに、面変わりし、性格の変わっていくもじゃもじゃ。 弦太朗達は蘭に代わって川に捨てられた大事なストラップを探し出し、その姿に蘭は弦太朗達を信じて助けを求める。
 「最初から素直にそう言えよ、後輩」
 ……いやもうほとんど、弦太朗が悪いと思うわけですが。
 もじゃもじゃを助ける為に協力しろと執拗に迫る弦太朗を頑なに拒否する蘭は、 中学時代の出来事で「先輩」という存在に強い不審を抱いていた……というのが前後編を繋ぐ重要な要素として描かれるのですが、 根本的な所で入学式の日に短ランリーゼントの先輩から強引に「今日から友達だ!」と言われたら、 宗教の勧誘かイジメの始まりと思って逃げるのが自然な反応なので、 蘭の側の問題を強調されても困るという、今作の悪い部分が盛大に噴出。
 弦太朗の「良かったら事情を話してみないか」ではなく「いいから俺に全てを話せ!」は、どうしても穏便に流せない部分ですが、 それを劇中人物が正面から否定できないひづみが、後半戦早々に思い切り出てしまいました。
 前回今回で、弦太朗が蘭の肩に気軽に手を置いて投げ飛ばされるシーンが2回ほどあるのですが、正直、 それでもまだ払いが足りないレベル(^^;
 フォーゼはラストワンしたハエと主題歌をバックに戦い、バキューム、スコップ、プロペラを、恐らく実質的な初使用。 再び小型分裂したハエをネットで捕らえるが、そのままリミットブレイクすると魂が肉体に戻っても精神崩壊してしまうので、 怪人になる前の心を取り戻させなければいけない、と賢吾が制止。
 なんだか急に設定が増えた気がするのですが、ラストワンした生徒のその後に関する前半のブレを修正する為でしょうか。 ラストワンすると魂が肉体から離れているという言及も今回初ですが、これはカニが突然、 魂の輪を取り出す能力を発揮した部分のフォローか。
 何はともあれ、蘭の言葉が届いて正気を取り戻したハエは、改めてマグネットでリミットブレイクされ、 後輩2人は仮面ライダー部の仮部員に。そして、もじゃもじゃが耳にした言葉から、 スイッチを生徒に渡しているのが学校の教員であるという疑惑を知った大杉は校長への報告を思いとどまり、 自らが顧問を名乗り出る事で仮面ライダー部の存在を非公式に承認するのであった。
 大杉先生が珍しく頭を使いつつ男を見せたのですが、引き続きどうでもいいです(直球) ところで、 「先生」と呼ばれる人物がスイッチを配っている件について、もじゃもじゃ→蘭→大杉で、情報止まった?(^^;
 こうして新入生とライダー部の危機は解決されるが、二郎から貰った時計のガラスが割れ、不吉な予感に襲われる流星。 そして昴星では、流星と交換で編入された天ノ川学園の生徒が、アリエスゾディアーツに覚醒していた――。
 カニのリタイアに代わって新たなホロスコープスが誕生しましたが、理事長の口ぶりだと、 12使徒は覚醒したスイッチさえあればいいのかなぁ……まあ、そうでなければシベリア送りにしない気はしますが。

◆第31話「昴・星・王・国」◆ (監督:坂本浩一 脚本:三条陸)
「この昴星はもう僕の王国だ」 (山田竜守)
 「これまでの、仮面ライダーメテオは……」というネタナレーションからスタート。
 39番までのスイッチを解析する事で具現化する、最強最後の40番:コズミックスイッチの起動実験が行われるが、 何故かドライバーに差し込む事が出来ない。そんな中、昴星高校を調べる為に、弦太朗・ユウキ・賢吾は、 大杉先生の尽力で流星と共に体験通学を行う事に。大杉先生が顧問を引き受けたのは、園田先生への妄想下心満載、 とかにされるのかと思っていたら、意外や真っ当にライダー部の活動に協力かつ役立ちましたが、 このまま便利なコメディリリーフ扱いになっていくのか。変態妄想抜きにしても、生徒への偏見丸出しで攻撃的な面が目立っていたので、 急に良識を発揮されると納得しがたい部分はあるのですが、とりあえず保留。
 どこか不自然な空気の漂う昴星高校、そこは、天ノ川学園からの交換編入生・山田竜守が覚醒したアリエスゾディアーツによって牛耳られていた。
 「この学校では生徒も先生までも全部僕の劇団、昴星王国の役者だ。配役もストーリーも僕が自在に組み替えられる。 逆らう者は皆――眠りの刑だ」
 アリエスは生体活動を操る能力によって逆らう者を任意の眠りにつかせ、 恐怖で支配した人々に自分の望むままの劇を演じさせていたのである。
 アリエス山田は、演技も喋りも良い感じで、変身すると一人称が「余」に変わる部分もアクセントとして効いています。 話の展開としても、さっくり正体を明かして、変に学校潜入捜査で引っ張らなかったのは良かった。
 アリエスの能力に敗れたフォーゼは、流星に想いを寄せる元クラスメイト・白川芽以らに救われ、一日の最後に行われる反省会に、 連絡をつけた台座ロボら仮面ライダー部と共に乱入。
 「今こそ学校を取り戻すのよ」
 ただの女子高生の筈なのに、鉄パイプで忍者を殴り飛ばす芽衣(笑) 前振りの30話にもちらっと登場するなど、 妙にフィーチャーされているなぁと女優さんを調べたら、姫か!(納得)
 フォーゼは39番スタンパーによる時限式スタンプ爆弾とマグネットの組み合わせでアリエスにダメージを与えるが、 何故かそこにアリエスを守るようにメテオストームが乱入し、第17話以来の直接バトル。
 「メテオ、なんでだ、なんで?!」
 「ダチに関する事なら、なんでも受け止めるって言ったよなぁ?!」
 言いましたね……。
 「おまえ、まさか……」
 「だったら受け止めて死んでくれ、如月!」
 「今やられるわけにはいかねぇ!」
 迫力ある激闘の末、メテオストーム彗星脚とマグネット光線が交錯し、押し負けたフォーゼは、トドメのメテオ発勁を喰らってダウン。 主人公を完敗させる為に、先にメテオを強化していたのだと、なるほど納得。 この裏切り行為で鉄仮面により変身解除されたメテオはライダー部員全員の前で正体がバレ、ちょっと驚く流星は、 変身システムを忘れていたのか(^^;
 「よくやったね、朔田くん。取引成立だ」
 「……俺は山田と手を組んだ。二郎を救う為には、どうしても、アリエスの力が必要なんだ」
 反ゾディアーツ同盟の目的も、12使徒スイッチの回収。タチバナからアリエス撃破を指示された流星は、 スイッチを分析する事によって二郎を救うという不確かな手段では満足できず、 生体エネルギーを操るアリエスに直接取引を持ちかけたのであった。
 この点、流星は初志と執着を貫徹しており、二郎の件を利用して流星を手駒にしていたタチバナの見立てが甘かったと言う他ありません(^^;
 「そうか……話が繋がった。……こうやって本気で戦って、初めておまえと語り合えた気がするよ、流星……」
 「如月……」
 「おまえの本当の心、本当の想いが受け止められて…………嬉しいぜ。……たとえそれが、殺意、でも……な」
 第18話のやり取りを拾うも、心臓の止まる如月弦太朗――再・起・不・能?!

◆第32話「超・宇・宙・剣」◆ (監督:坂本浩一 脚本:三条陸)
「みんなの絆で、宇宙を掴む!!」 (如月弦太朗)
 「自分の友達を救う為に、他人の友達を奪っていいわけがない! 俺は絶対おまえを許さないぞ!」
 アリエスによって眠らされるライダー部員達だが、タチバナの助けにより、賢吾はなんとか弦太朗の死体を担いで逃亡に成功。 メディカルスイッチでも蘇生しない弦太朗だが、タチバナはコズミックスイッチにこそ弦太朗復活の鍵があると伝え、ここで、 賢吾にゲートスイッチを送ったのはタチバナ? という示唆。
 「如月弦太朗は、ここで終わるような人間ではない」
 一方、囚われの仮面ライダー部員は昴星の生徒として配役され、
 「俺も、あんま誉められた人間じゃあないっすけど〜……これよりクズなシナリオ、見たことが無い。――ゴミか」
 脚本を破り捨ててみせるジェイクが、珍しく格好いい役回り。
 「メテオも仮面ライダーだと思ってた! でも違った。そんなの、仮面ライダーじゃない!」
 前回今回と、芽衣に対して弦太朗とユウキがやたら「流星の彼女」を連呼するのですが(本人は「いずれそうなりたい」的発言)、 友子との絡みは継続され、公式が、タチ悪い感じで煽ってきます!
 友子の非難を浴びながらも流星は山田と病院に向かい、アリエスの能力によって目覚めた二郎は、スイッチを切る事に成功。
 「俺は裏切り者だ。でも、もういいんだ。おまえさえ助かれば」
 「おまえみたいな、強い人間になりたくて、スイッチに手を出したのに。結局俺の弱さでおまえを苦しめたんだ。 ……俺の為におまえは、自分を失った」
 意識は回復するも、まるで目を覚ますのを拒むかのように肉体が機能を取り戻さない二郎は再び昏睡状態に陥ってしまい、 流星は自分の過ちに気付く。
 (そうだ……あいつは俺を受け止めてくれた)
 「俺が裏切ったのは自分だ。如月と友達になりたい、その自分の本心を裏切ったんだ。如月ぃぃぃぃぃ!!」
 にしても、てっきりメテオ仮死発勁というオチだとばかり思っていたら、本気に殺しに行っていたようで、朔田流星、恐るべし。
 「ほぉぉぉぉぉぉ、うわちゃぁ!」
 友の言葉に自分の本心を認めた流星は、仮面ライダー部の処刑寸前、遂に生身で重力を無視してアリエスに跳び蹴り。
 「今更なにしに来たのよ!」
 「俺は全てを失った。仮面ライダーの資格も、二郎も、如月も。俺はせめて如月の守りたかったものだけでも、守る。 償いなどではなく、俺自身のけじめとして」
 ここで、敢えてドライバーを構えてから、足下に置くシーンが凄く格好いい。
 また、劇場版『MEGAMAX』と繋げて考えると、この「俺はせめて如月の守りたかったものだけでも、守る」が、 メテオの仮面ライダー宣言と捉えて良いのでしょう。……この点、本編だけだとちょっと弱いのが難ですが。
 「アリエス! 人の定めを操るのはここまでだ! ――おまえの定めは、俺が決める」
 生身でやるとどうなる事かと思ったあのポーズですが予想外にキマり、イケメンパワー高い。そしてこれを、 ドライバーを置いた後に言わせているのも、流星が本当の意味で仮面ライダーになった瞬間、という意図だと思われます。
 「余の芝居ではアドリブは極刑だ!」
 その頃、タチバナの助言を受けた賢吾は、ラビットハッチの外壁に刻まれた。父・緑郎のメッセージを発見していた。

宇宙を掴む若者達へ
宇宙は一人では挑めない
互いを信じ合い、手を繋ぎ合う、
最後に不可能を越えるのは、人間同士の絆

 その言葉を胸に、賢吾はコズミックスイッチをフォーゼドライバーへ強引に押し込もうとし、流星に負けじと賢吾も久々の見せ場。
 「こいつは如月弦太朗ですよ! なあ、そんなもんじゃないだろ、君の非常識は!」
 そしてその声は、お花畑を歩いていた弦太朗の足を止める……。
 「フォーゼの君と、それを支える俺達仮面ライダー部。その俺達の絆が、最後の扉を開く」
 「俺達の絆……」
 「そうだ、絆を心に思って変身するんだよ。如月、君のやってきた事は正しかったんだ!」
 コズミックスイッチを通して仮面ライダー部員達があの世の入り口に向けて手を伸ばし、その手が繋がった時、 スイッチはフォーゼドライバーに突き刺さり、弦太朗、復活。
 ……復活、というかこれ、全身を血液の代わりにコズミックエナジーが循環している新しい生命体が誕生していませんか。 大丈夫ですか。
 身も蓋もない事を言えば、40番目のスイッチに賢吾父が仕掛けていたセキュリティという事なのでしょうが、 肝心の絆を証明する仲間達が別の場所に囚われている、というのは少々厳しく、弦太朗の積み重ねよりも、コズミックエナジー凄い、 という方が強調されてしまったのは残念。本来なら、個々の部員それぞれからパスを繋げて欲しい展開なのですが、 この辺り今作はどうしても、部員の多さを捌き切れていない部分が出てしまっています。
 「賢吾……感じたよ、おまえとみんなの……手のぬくもりを」
 「そうか……」
 「腹の底でわかった気がしたよ。この宇宙に友達になれねぇ奴なんていねぇなって!」
 処刑場では死力を尽くして戦う流星が忍者軍団に追い詰められていたが、そこに戻ってくる部員達。 彼らを懸命に守ろうと手を広げる流星が遂に倒れた時、それを抱き留めたのは――如月弦太朗。なお賢吾も、 いつも通りポケットに片手を突っ込んで到着。
 復活のくだりはやや物足りませんでしたが、ここで主題歌が流れ出すのは、バッチリ決まりました。
 「お前も俺も、ダチを助けるために、全力で戦った! そんでお前が勝った! ただそれだけじゃねえか!  友情の真剣勝負が出来るのは、いい奴のあかしだ!」
 そしてこれくらい突き抜けてくれた方が、この世界の主人公理屈としては、受け入れやすい(笑)
 「おまえは俺のダチだ、流星。もう一点の曇りもねぇ。みんなもわかってくれたよな、ホントのこいつを」
 弦太朗が許すなら……と部員達も皆、コズミックエナジーを媒介に広がっていく友達ストーカーシンドロームにより流星を受け入れ、 遂に友情タッチをかわす二人。
 「今から俺の体は、ちょーーー強くなる!」
 弦太朗はコズミックスイッチを突き刺してからフォーゼに変身し、スイッチ全部乗せ、最強最後のコズミックステイツが発動。 肩にウイングがせり出し、胸部は全面スイッチディスプレイというコズミックステイツは、どうして、 ベースカラーをエメラルドグリーンにしたのか。そして、黒地に赤い目に黄色いラインの入った顔が、 クモの怪人にしか見えないのですが、このフォームを使い続けて大丈夫なのか、凄く不安です。
 見た目はともかく、胸のディスプレイで全てのスイッチを直接召喚操作するという、 いわばフォーゼシステムの完成形と思われるコズミックは、好き放題で羊を圧倒。最後は近距離ワープ能力まで用いて、 宇宙空間でライダー超銀河フィニッシュを炸裂させ、アリエスを一刀両断するのであった。
 ……ハッタリはわかるのですが、12使徒(中身人間入り)は、大気圏外で倒していいのか(^^;  宇宙に友達になれねぇ奴は居ないけど、友達がたまに星屑になるのは事故なのか。スイッチはなんか強引にバルゴが回収し、 山田は眠りっぱなしで入院、と処理されましたが。
 二郎の容態は持ち直し、さすがにタチバナさんがちょっぴり反省したのか、部員以外には正体を秘密にしつつ、 流星のメテオとしての活動も継続が承認される事に。この点を思いっきり端折ったのは正直誤魔化した感が強いのですが、 結果としてタチバナさんは胡散臭い路線を続行。今回のコズミック復活と以前のメテオストームの選択の道筋が重なっているのは気になる所ですが、さて。
 「お帰りなさい……秘密の仮面ライダー2号さん」
 「ああ……皆、ありがとう」
 だが、理事長はフォーゼやメテオの支援者の存在に気付き、その瞳を紅く輝かせるのであった……次回、太秦で恋の花咲く予感あり?

◆第33話「古・都・騒・乱」◆ (監督:諸田敏 脚本:中島かずき)
「俺はただ、我望様の意思を実行するだけだ」 (立神吼)
 衝撃! 友子は2年生だったのか!!
 ……ずっと、弦太朗達と同学年だと思っていました(^^;
 修学旅行で京都に行く天高3年生。賢吾が父の旧友だった江本教授を尋ねている間に班行動で観光する弦太朗達だったが、 弦太朗に気のある高村優希奈の熱烈なアタックに振り回される事に。そんな中、何故か修学旅行についてきていた校長/リブラゾディアーツが、 京都で暗躍を開始する。
 実は京都上空にはコズミックエナジーが地上に降り注ぐポイント――<ザ・ホール>――が存在しており、古都の先人達は、 四神相応の陣を持ってしてこのエネルギーを利用していた……現在の天文学にも通じる陰陽道や占星術により、 古代の人々も宇宙からの力を捉えていたのだ! とオカルトに進みそうになった所から科学に繋げたのは今作らしい展開。
 リブラの目的は、フォーゼが放つコズミックエナジーに反応して姿を見せた、四神の石碑を破壊する事。 存在の軽い校長が終始シリアスな一方、優希奈の猛烈アタック、弦太朗への恩返しと称してそれを妨害する流星、 映画村でのコスプレなど、基本ドタバタ。虚構の仮面を外した流星が、友情バリケードモードで弦太朗に執着するようになったのは、 悪い意味でのお約束になって、少々やりすぎ感。
 諸田監督は『オーズ』『フォーゼ』と、前編ではコミカル成分増し、後編はシリアス成分増し、 と色彩をハッキリさせた演出が多いのですが、どうも今作は、それが過剰になりすぎて見えます。
 映画村で忍者軍団と戦うフォーゼ&メテオだが、その戦いの中、遂に理事長の腹心、存在の重々しいレオゾディアーツ (正体の立神吼役は、スーツアクターとして様々なヒーローなどを演じてきた横山一敏)が姿を見せる!
 財団Xと、回想シーンで賢吾父・緑郎(風間トオル)が登場したのは、時期的に劇場版の関係?

◆第34話「天・穴・攻・防」◆ (監督:諸田敏 脚本:中島かずき)
「あの石碑は壊させないぞ! それが俺の修学旅行だ!」 (如月弦太朗)
 メテオストームとコズミックはレオにまとめて手玉にとられ、賢吾は映画村にあった四神の石碑が破壊されていた事に気付く。 理事長の命を受けたリブラは、四神の石碑を破壊する事で、京都上空の<ザ・ホール>を消滅させようとしていた。 弦太朗達は手分けして残り二つの石碑を守ろうとするが、優希奈の攻勢は留まるところを知らない。 遂に弦太朗は優希奈の前でフォーゼに変身してみせるが、弦太朗をずっと見てきたという優希奈は、 それを知っていた上でつきまとっているのだ、と告げる――
 そう、すなわちこれは、友情ストーカーvs恋愛ストーカー頂上決戦!
 いつでもどこでも変身する弦太朗が、今回は旅行先で優希奈を巻き込まない為に(スイッチに絡んでいないので) フォーゼである事を隠していたようなのですが、その上でやろうとする事が宿に一人で置き去りなので、 弦太朗の闇が大噴出(^^; 賢吾と流星(今回珍しく、二人だけの会話あり)は最初から目的の為に手段を選ばない側なので問題ないのですが、 どう転んでも優希奈の旅行を台無しにするなら、最初から腹を割って話す方が弦太朗らしかったような。
 「だって、いっつも戦ってるんだもん。修学旅行ぐらい楽しもうよ。あたしと一緒に。みんなと同じように。 なんで弦太朗だけそれが出来ないの? 可哀想だよ。普通の高校生になろうよ」
 「普通……? いや、普通って……んー……えー……?」
 「やめちゃえばいいんだよ、仮面ライダーなんて!」
 優希奈はまさかのドライバーにスティールアタックをクリティカル成功させ、 慌てて追いかけようとした弦太朗とユウキはもつれて川に落ちる……シーン、 ユウキの慌て方とか弦太朗の台詞が笑いそうになっているのとか、台本通りではなく素で落ちてませんか(笑)
 北の石碑へ向かっていたメテオストームはレオに完敗し、ただでさえ地味な映像のメテオ独楽がさくっと弾かれて、 涙も涸れるほど悲惨な扱い。……コズミックと合わせて、強化→敗北の間隔の短さは記録的では。
 そして賢吾は、父と江本と理事長が、共同でコズミックエナジーの研究をしていた事を知る。
 「賢吾くん……君のお父さんを殺したのは、私だ」
 あくまでも、コズミックエナジーの研究を止めなかった事で結果的に殺したようなもの、と注釈を入れる理事長だが、 賢吾はその姿に言い知れぬうすら寒さを感じるのだった……と繋がっていく過去の線。
 なお今回、フォーゼの両手両足の△○□×は、そもそも、京都の石碑それぞれの形を元にしたもの、と由来が明かされるのですが、 正体がわからないなりに当時の技術でコズミックエナジーを利用していた中世社会と、 それを再発見して現代科学で分析した研究がフォーゼの起源、というネタの繋ぎ方は、けっこう好き。
 今作のコンセプトを考えると、これもまた、過去・現在・そして未来へ……というテーゼと言えるでしょうか。
 北の石碑は既に破壊されており、最後に残った東の石碑に辿り着いたリブラは、フォーゼドライバー抱えた優希奈とばったり遭遇。 優希奈を追っていた弦太朗はリブラに跳び蹴りを決めると、級友を守る為、ゾディアーツの陰謀を砕く為、 生身でリブラに立ち向かっていく。
 「たとえフォーゼじゃなくても……弦ちゃんは一緒だよ。友達が危ない時は、体を張って助けてくれる。それが弦ちゃんの普通なの」
 「弦太朗の、普通……」
 「だからゾディアーツが出る限り、仮面ライダーになって戦うのが、弦ちゃんには普通なんだよ」
 今作ここまで1ミリも存在していなかった「戦いの代償」的テーゼが突然飛び込んできてどうなる事かと思ったのですが、 弦太朗にとっては、“仮面ライダーだからダチの為に戦うのではなく、ダチの為に戦う手段がたまたま仮面ライダーであった”――だから、 仮面ライダーであってもなくても弦太朗のやる事は変わらないし、仮面ライダーとして戦うのもまた、 弦太朗にとっては普通に青春の謳歌である、というのは今作の特性を活かし、「戦う理由」を巧く着地させました。
 ただ弦太朗の場合、この「ダチの為に」が、平成ライダー的な個人の拠って立つ正義の背景になっているわけですが、 肝心のその部分がややもすると曖昧で、説得力がもう一つ不足している、というのが今作の難点。
 恐らく作り手の側としては、弦太朗はまだまだ未熟な若者なので志を貫徹できない部分がある、というつもりなのかもしれませんが、 その“つもり”が適用される場所されない場所が、話の都合に振り回されすぎているかなーと。
 今回の「戦う理由」の置き方は、よくあるパターンの逆を弦太朗が自然体で進んでいて良かったのですが。
 ユウキの言葉に頷いた優希奈はドライバーを手に弦太朗に駆け寄り、リブラ、とうとう女子高生に突き飛ばされる。
 「一つだけ約束して! この戦いが終わったら、一緒に写真を撮って。とびっきりの笑顔で!」
 「ああ、任しとけ」
 フォーゼはコズミックを発動すると、恋する女子高生よりヒエラルキーの下がったリブラを宇宙へ転送し、 宇宙規模で馬に蹴られて死んじまえスラッシュで一刀両断。転送される直前に地上へ放った杖を利用してなんとか石碑の破壊には成功したリブラは、 爆死寸前にレオかバルゴによって理事長の下へ回収されるも、この敗北で見切りを付けられ、遂にシベリア送りに――。
 「やだぁ! 俺はやだぁ!!」
 だがその寸前、必死の足掻きでリブラスイッチを押した校長は存在の危機から裏目エネルギーが反転、進化を起こし、 新たな力――他人の星の定めを見極める<ラプラスの瞳>――に覚醒、理事長の体に重なる射手座の輝きを目にした事で、 左遷を回避される。
 良かった、校長、良かった。
 それにしても、皆さんダークネビュラをやたらに恐れていますが、やはり12使徒に昇格すると最初の講習会で、 ダークネビュラが如何に酷い場所か――ネットもマンガもTVもなく、1日16時間ひたすら、 おっとっとの中のまんぼうをより分ける作業に従事させられる――を叩き込まれるのか。

◆第35話「怪・人・放・送」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:長谷川圭一)
「あのDJジーンは、俺の夢の残骸なんス」 (JK)
 渡辺勝也監督は『アギト』以来の《平成ライダー》参戦? と思って確認したら、そうでした。余談にそれますが、 今季(2016年)は『仮面ライダーゴースト』にがっちり入っていたそうで、渡辺監督をライダーに回した上で、 スーパー戦隊シリーズ1999−2000回SP(『動物戦隊ジュウオウジャー』)を任されるなど、 戦隊の方では加藤弘之監督が次代の主力監督として期待と信頼感が増しているのだなぁと改めて。
 正式に仮面ライダーになった、という事でか、タイトルロゴ表示前にフォーゼと並ぶ形でメテオが追加され、これは格好良い、 と思ったら、キングとクイーンもようやく新カットに。更に大杉先生も(何故か)新カット、メテオストームにコズミック、 如何にも悪の大ボス然とした理事長も目を光らせ、実質的な後期OPに。ライダー部全員集合シーンまで撮り直されているので、 むしろこれ、全キャラクター新規カットに出来なかったのかレベル。
 ところで、ハエを追いかける時にも出てきたキングの真っ赤なオープンカーは、これはもう「アメ車」と呼ぶべきであろう所まで含めて、 如何にもキングな感じで好きです(笑)
 天高の生徒にも大人気で弦太朗やユウキも気に入っている人気ネットラジオDJ・ジーンを探して友達になろう、 と盛り上がる仮面ライダー部(の一部)。実はジーンの正体であるジェイクは、 ラジオ放送中に旧友・五藤東次郎から連絡を受け再会するが、数日前に転校してきたという五藤は無造作に山羊座のゾディアーツに変身。 驚くジェイクに構わずギターを弾き出すと何故か人間の時とは似ても似つかぬ技巧を発揮し、 それに合わせたジェイクの歌まで上手くなってしまう……!
 京都上空の<ザ・ホール>が消滅した影響で、天高に降り注ぐコズミックエナジーが増量された事と、 リブラがラプラスの瞳によって他人のクラスチェンジを解明できるようになった事の二つが説明され、残り話数も考えると、 今後はざくざく12使徒が敵として出てくる事になるのか。
 なお、校長は、超調子に乗っていた。
 ジーンを探していたライダー部が楽器店でヤギとジェイクと鉢合わせし、その場はどっちつかずに誤魔化すジェイクだったが、 ヤギの誘いに乗ってバンドを再結成、ジーン&ゴッドとしてヤギのメロディをラジオで流してしまう。 プロのギタリストであった父に憧れて歌手を目指していたジェイクは、中学自体に五藤とバンドを組んでいたが、 お互いの適性不足から笑いものにされ、夢を諦めた過去を持っていたのだ……。
 ラジオから流れるヤギの音楽は聴取者を興奮状態にする作用を持っており、 ラビットハッチに響き渡る「はやぶさくん」ロックアレンジ(笑)(ユウキ・賢吾・友子バンド)
 「はやぶさくん」も、ここまで使われれば本望でしょう……!
 なお今回と次回の賢吾は、ほぼひたすらドラムを叩き狂っているだけという、 主人公の相棒ポジションだった気がするキャラクターとしては近年稀に見る悲惨な扱い。底辺から一歩ずつ這い上がっていくのではなく、 高みから見下ろしていた筈が気がつくと地下の背景の一コマに引きずり込まれているという相棒ポジションはなかなか斬新でしょうか!
 学生達の異変を知ったジェイクは「友達の方が大事だ」と放送を中止しようとするが、五島に父親の話を持ち出され、 番組を継続してしまう……一度は諦めた夢へのチャンスを餌に、悪いと知りながら易きに流れてしまう人間の欲望、という流れは秀逸で、 信念や良識や誠実さという言葉からは遠めに位置するジェイクの立ち位置も上手く拾いました。
 放送を止めに向かうフォーゼとメテオだがヤギと戦闘になり、そしてジェイクはフォーゼに自分の選択を告げる。
 「気付いたんスよ。……大切なのは今じゃない。未来だって」
 「どういう意味だ」
 「俺は夢を捨てて、親父みたいな大人になりたくない。……ビッグになりたいんスよ! 高校生活なんて人生に比べたらほんの一瞬。 友達だって……卒業したら二度と会わない奴がほとんどだ。そんなもんの為に将来のチャンス逃したら、一生負け犬っすよ!」
 「それ本気で言ってるのか!?」
 「俺……ライダー部辞めます」
 その途端、先の戦いでも不具合のあったコズミックスイッチに異変が起こり、コズミックステイツが強制解除されてしまう……て、 うーん……。

◆第36話「本・気・伝・歌」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:長谷川圭一)
「ジーンに会いに来た。ジーンとダチになる為にな!」 (如月弦太朗)
 「コズミックは……絆の力」
 この流れだと、コズミックスイッチの発動条件は、弦太朗(フォーゼ)に対する仮面ライダー部6人分の絆エネルギー (流星は含まれない)、という事になってしまうのですが、それでいいのか。弦太朗が話を大きくしようとしているのに物語が小さくまとめてしまう、 という今作の悪癖がまた出てしまった気がします。
 今作において重要な部分は、弦太朗が出会う人々全てとダチになろうとしている事であり、だからこそ
 「如月、君のやってきた事は正しかったんだ!」
 が活きてくるわけで、コズミック発動に際して“弦太朗が繋いできた絆の象徴”としての仮面ライダー部、というのはわかりますが、 実際にコズミックスイッチに不具合が出てしまうとまた話が変わってきてしまいます。理屈をつけるなら、 ラビットハッチに一定の時間以上滞在した人間が宇宙パワーによりマーキングされているとも考えられますが、それならそれで、 コズミック発動回の話の組み立て――現場に居合わせたのは賢吾1人で、 残り5人もその時特別弦太朗の事を考えているというわけでもなかった――に改めて疑問が生じてしまいます(^^;
 仮面ライダー部から脱退宣言をしたジェイクはジーンの正体だと名乗り出ると、ジーン&ゴッドのメロディを全高に放送し、 それを聞いた生徒達は熱に浮かされたように狂奔する。一方、ヤギの音楽がスイッチと共鳴する事を知ったレオは、 その共鳴作用を利用して失われた筈のコアスイッチの探索を進言し、理事長はヤギに超新星を投入。 レオにはシベリア送りになった面々の12使徒スイッチを渡す。
 「歌星が使って消滅したと思っていたが……コアスイッチか」
 とここで、終盤のキーになると思われるアイテムの存在が浮上。
 レオは放送を妨害しようとするメテオを相手に、他の12使徒スイッチを使って変身できる特異体質を披露するが…… そもそもレオの時点で圧倒的に強いので、別の12使徒に変身する必要性が感じられないのが困った所(^^;  この能力に関しては何やら今後の展開の為に必要な布石なのかもしれませんが、 既にリタイアしているヒツジ・カニ・サソリの戦闘を見ても大して嬉しくなかったりと、現時点ではかなり微妙な展開。 急に口数が増えた事も合わせて、重厚だったレオの存在感がむしろ軽くなってしまいました。
 そして、本格的にただの玩具扱いでメテオ独楽を弾き返されたメテオストームの存在感は、そろそろヘリウム並に軽くなっていた。
 予告された大規模ライブの当日、メテオはまたもレオに足止めを受けるが、ステージ会場に飛び込んだ弦太朗が、 会場から罵声を浴びながらもギターを披露。
 「俺はジーンの原点を探しに行った!」
 学園を流星と大学生組に任せた弦太朗は、今は漁師をやっているジェイク父と会い、頼み込んでギターを教えて貰っていたのだった。
 「歌えジェイク! おまえが夢見た、本当のジーンの歌を!」
 懐かしいメロディをバックに、ヤギの宇宙パワー無しで会場の笑い物になりながらも本当の歌を取り戻すジェイク。
 「やっと会えたなジーン。俺とダチになってくれ」
 弦太朗はジーン(ジェイク)と友情タッチを交わし、その瞬間に解除される聴衆達の洗脳。
 弦太朗が虚構の存在であるジーンと真っ直ぐに向き合う事で、それによって顕在化したジーンにジェイクも向き合わざるを得なくなり、 真実のジーンと誘惑に負けたジェイクが再合一を果たす事でジェイクの自己と仮面ライダー部の絆が取り戻される、 というのは友情タッチの物語的意味づけが鮮やかに収まり、コズミックスイッチ周りの設定に疑問がある以外は、 まとまりの綺麗な好エピソード。
 ヤギはざっくりコズミック宇宙斬りされ、今回も本体とスイッチはバルゴが回収。……これ、 バルゴが割と暇かつ生真面目な人だから助かっていますが(無論、万が一のない証言封じの目的があるのでしょうが)、 中身を知った上での仕事としては、やはり弦太朗が雑すぎでは。
 理事長が満足する仕事をしたヤギは、ダークネビュラ送りにされず記憶を消されて一般学生へと戻り、理事長は、 コアスイッチの波動を確かに感じ取っていた。それは、学園の誰かの手の中に……?
 なお、ヘリウムのように軽くなったメテオストームは、一点集中攻撃で文字通りにレオの足下をすくって撤退させる事に成功していたが、 正直こちらは、メテオとレオの扱いをまとめて軽くしてしまった感(^^;
 最後に、自分1人だけのラジオ最終回というポエムを奏でていたジェイクの本名が、JK=神宮海蔵と明かされ、次回へつづく。
 海蔵は、「カイゾーグ」+「(Xとゆかりの深い)海」という事かと思われますが、同時に、 ジェイクが本名を名乗らない理由にそれとなく納得できたのは秀逸(笑) で、相棒は、ゴート/五藤/ゴッド/GOD、という事か。
 次回――みんな、宇宙飛行士になりたいかーーー?!

◆第37話「星・徒・選・抜」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸)
「まったく、生徒に好かれない校長先生だな」 (立神吼)
 弦太朗がロケットの前で知り合った女生徒、エリーヌ須田は宇宙飛行士を目指す転校生だが、 同じ夢を持ちながらふざけているようにしか見えないユウキと激しく反目。折しも天高の恒例行事、 合格者は特別奨学生となる宇宙飛行士選抜試験がスタートし、筆記テストを突破して一次選考に進んだ弦太朗、ユウキ、流星、賢吾、 友子は、エリーヌと同じチームに。試験中、いつもの目眩で賢吾が倒れた時、突然現れた水瓶座のゾディアーツが賢吾を治療し、 弦太朗はその正体がエリーヌだと知る……。
 「ゾディアーツは人間が宇宙で生きる為の体だから!」
 理事長と旧知の仲というエリーヌが騙されているだけかもしれませんが、思わせぶりな台詞が一つ。
 宇宙へ行けなかった宇宙飛行士である父の為にも、どうしても宇宙飛行士になりたい、 というエリーヌの真っ直ぐな想いを知った弦太朗は、 エリーヌが宇宙飛行士の資格なしと断定するユウキが最後まで勝ち残ったらゾディアーツスイッチを捨てて欲しいと約束するが、 二次試験においてユウキが故意に自分の足を引っ張ったと思い込んだエリーヌは激昂。それを止めようとするフォーゼと再び戦う事に。
 ハーフ?設定で日本語がやや不自由なエリーヌ(それが正体判明のきっかけになる)は、演技なのか役者さんの素なのか、 興奮して叫ぶと台詞がわちゃくちゃになって何言っているのかさっぱりわからないのですが、試験中、 冷静と評していた試験管の見る目が節穴な事だけはわかります。試験官が目にしている限りでも明らかに冷静からはほど遠いのですが、 今回次回と、そういった細かい部分が凄く雑(^^;
 後、ユウキがテンション高すぎて、今作序盤を思い起こさせる面倒くささ。
 選抜試験の緊張状態の中で12使徒の資格者を観察する為に一枚噛んでいたリブラと、 一次試験で不合格になっていたメテオが戦闘に加わり、大量に出現する忍者軍団。メテオの「ちょっと火を貸してくれ!」 という台詞は格好良かったのですが、そこから放ったファイアー旋風脚で忍者軍団を一掃…………できず、軽い、 メテオストームの扱いが、非常に軽い……。
 結局、コズミックとメテオストームの同時攻撃で忍者を改めて一掃し、 巻き込まれてダメージを負うアクエリアスだが無敵の治癒能力で復活。果たして怒りのアクエリアスを弦太朗は止める事は出来るのか……?! で続く。

◆第38話「勝・者・決・定」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸)
「俺は友情に関しては超甘党だ」 (如月弦太朗)
 二次試験の結果が発表され、選抜試験の最終候補者は、エリーヌ、賢吾、ユウキ、杉浦(生徒会副会長)の4名に決定。 怒れるエリーヌを説得する為に弦太朗は理事長、そして審査委員長に話を聞き、ユウキが認められた理由が 「宇宙飛行士としての覚悟の強さ」だと知る。二次試験においてユウキがエリーヌの足を引っ張ったように見えたのは実は、 故意にトラブルを起こすようにという、審査員の仕込みによる指示だったのだ。
 既に脱落している弦太朗相手とはいえ、まだ試験中なのに二次試験の仕込みをペラペラ喋ってしまう審査委員長が非常に雑。
 そんな「覚悟」を評価されたユウキが最終試験のトレッキングで、吊り橋を嫌がって逃げ出す素振りを見せるしつこいギャグが、凄く雑。
 エリーヌは明らかに場の和を乱しまくるタイプで理事長と校長の手回しがなければ最終候補に残れなかったのが歴然としており、 一体全体どういう基準でリーダーシップがあると評価されているのか、基盤から雑(審査員全員が理事長サイドの人間と考えれば筋は通りますが)。
 一方で、割とリアルで使い物にならないユウキとコンビを組まされながら、文句一つ言わずにユウキを引っ張り、励まし、 水瓶座に闇討ちされたユウキが負傷した際には懸命に探し回る杉浦が、とてつもなくデキる人。
 前回ノーマークでしたが、完全に今回のオアシスです。
 弦太朗から二次試験の真実を聞いたエリーヌは水瓶座の力でユウキを治療し、 全く与り知らぬ所で試験を台無しにされかけていた杉浦とも合流した4人は仲良く合格。エリーヌとユウキは友情を結ぶが、 エリーヌは12使徒スイッチを捨てるという弦太朗との約束を反故にする。
 「ホロスコープスのボスは私の大好きな人。その人を裏切れない。これ、私のプライド。覚悟だよ」
 互いの譲れないものの為にフォーゼとアクエリアスは敢えて激突し、 ロケット剣にクロースイッチをはめたコズミックフォーゼは水瓶の両肩にある回復装置を同時破壊する事で、 特殊能力を奪ってからアクエリアスを撃破。
 「ありがとう……弦太朗」
 「馬鹿野郎……」
 この戦闘、対峙から決着までやたらドラマチックに描かれているのですが、そもそも、 これまで一切の逡巡も躊躇もなく(12使徒)ゾディアーツをぶった切ってきた弦太朗が、 “12使徒を倒すとどうなると認識しているのか”がさっぱりわからない為、何をそこまで悲痛になっているのか、 弦太朗の感情に全く乗れませんでした。
 アリエス山田が意識不明になっているので、それなりのリスクを覚悟しているという事かもしれませんが、 そこに焦点を合わせてしまうと、その後リブラとカプリコーンを何の迷いもなく宇宙斬りしているという大問題が噴出。
 結局ここ、弦太朗がエリーヌの心情を知っているからという従来作品における“いい怪人”の文法で物語を処理してしまっているのですが、 今作が「ダチ」という概念を持ち込む事によって従来作品と違う倫理観で展開しようとしていた事を思うと、 それはやってはいけない処理だった筈で、ここまででも十分にブレてはいたのですが、 最終クール前にトドメを刺す形になってしまいました。
 水瓶は今日も仕事熱心なバルゴに回収され、かき消えたエリーヌの姿にフォーゼが「俺がやっちまったぁぁぁ」みたいなポーズなのですが、 弦太朗は本当にどういう認識で戦っているのか。
 ラスト、タウラスの候補者が見つかった事で上機嫌な理事長に、記憶を消されただけで放流されたエリーヌとロケットの前で再会し、
 (覚えてねぇのか……)
 (記憶を、消されちゃったんだね)
 という反応から、ヤギの件を踏まえて記憶を消される可能性を認識していたという事はわかり、 結んだ絆を自分の手で断ち切る苦しさがあった、というのはここでようやく頷けるのですが、それを活かす為には、 この点は水瓶との戦闘前に強調しておく必要があったと思います。どちらにせよ、 これまでの12使徒に対する躊躇無い宇宙斬りは弁解不能なので、根本的にここに焦点を合わせて話を作ってはいけなかったと思うのですが。
 またこのシーンもやたら苦い感じで描写されるのですが、エリーヌとはすぐにダチになるし、 本人の「宇宙飛行士になる」という夢も全く消えていないしで、逆に不幸中の幸いもいい所であり、話の流れが全く噛み合っておらず、 石田×三条で、どうしてここまで頓珍漢な事になってしまったのか。
 (今度こそ私の忠実な手駒になってくれよ……タウラス、杉浦雄太)
 一方、杉浦くんが、ポイント稼ぎすぎて退場を許されなかったーーーーー。そしてこれまで、 理事長に従っている理由が特に描かれていなかった校長に、少々思わせぶりな台詞。
 そんな軽石の心中を知ってか知らずか、理事長は、揃いつつある星団を見つめる――。
 「残るは2名。ジェミニとピスケス」

→〔その4へ続く〕

(2016年11月6日)

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