■『FLASH』<シーズン1>感想(後編)■


“走れ、バリー、走れ!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた海外ドラマ 『FLASH』<シーズン1>感想の、後編(第15話〜第23話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第15話「告白」(「out of time」)◆
 冒頭から、アイリスの空気読まなさに、凄い勢いでイライラゲージを溜めていくエディとリンダ(笑)
 アイリス、初期はもう少し賢かったと思うのですけど、アレな女への転落ぶりが凄まじいのですが……スタッフ、実は、 アイリス嫌い? という疑いの目を向けたくなります。
 そしてそんなアイリスの様子に、あれ? もしかしてまだこのルートの可能性あり? とまたもフワフワしだすバリー。
 ……エディはバリーかアイリスのどちらかの後頭部に44マグナムを撃ち込んでも、合衆国憲法は許してくれると思います。
 そして生き残った方は、鼻から唐辛子の刑で。
 …………とかまあそんな感じで、割と油断して見ていたのですが、いやぁ、とんでもないエピソードでした。
 死体安置所で警報装置が作動し、現場へ向かっている途中に、FLASHは自分と併走する“もう一人のFLASH”を目撃。 困惑しつつも安置所に到着したFLASHが目にしたのは、雹を投げつけて殺された検死官の姿だった。
 第1話でジョーに射殺されたメタヒューマン、クライド・マードンの兄であり、 弟と同じく天候操作の能力を身につけたマーク・マードンが登場。復讐の対象となったジョーを守る為、 シスコが天候操作対策に開発したマジックアイテムを渡すが、何故、エントランスに美術品みたいに飾るのか(笑)
 案の定、警察署を強襲してきたマーク相手にマジックアイテムを手に取る事が出来ず、電撃を受ける寸前、 ジョーを横から突き飛ばして助けるという、シン警部まさかの見せ場。駆けつけたFLASHがマジックアイテムを起動してマークは退くが、 一命は取り留めるも警部は重い後遺症の可能性がある重傷を負ってしまう。
 以前に同性愛者である事を匂わせる台詞があった警部ですが、病院のシーンでフィアンセ(男性)が登場。基本、 嫌な上司として描かれていた警部が、実は部下思いだったり口は悪いけど家ではバリーを誉めていた (こちらはフィアンセの社交辞令の可能性あり)という面を見せる、というのはよくある展開ですが、 家族以外面会謝絶の警部について、「フィアンセだから家族同然だ」とジョーが男性を紹介し、看護師もそれを受け入れて中に通す、 というのは印象的なシーン。
 ジョーが自らマークを逮捕する事にこだわるのは、かつての相棒を殺された過去に加え、弟の復讐を目的とするマークが、 必ずアイリスとバリーを狙うと考えていた為だった。ジョーからアイリスを守るように言われたバリーは、 新聞社でアイリスの先輩記者メイスンと接触。
 「ウェルズ博士をイカれた科学者だって思ってるらしいですね」
 「イカれた科学者とは言ってない。反社会的で嘘つきだって言ったんだ」
 いいぞ、もっとやれ(笑)
 「俺は暇になると彼を尾行するんだ」
 あ、あれ?(笑)
 「普段は一人で居るが、一人じゃない時は大抵君と居る」
 えと、そうですね、改めてよそから言われると、凄く、どん引きです……。
 博士に対して辛辣な発言を続けるメイスンは、博士の犯罪の証拠を握っていると断言。
 「日曜の新聞を読めばわかるさ。街中が知る」
 物凄い勢いで死亡フラグを積み上げてますが、大丈夫か……。
 メイスンの言葉に動揺しながらもウェスト家に戻ったバリーはアイリスを見つけ、 バリーが高校の時に付き合っていた彼女をアイリスがくさしていた事が発覚。
 どうしよう、この女。
 「……だけど、貴方にはもっと、ふさわしい人が居ると思う」
 「…………それって誰?」
 バリー、落ち着け、バリー!
 正直、アイリスが博士ばりのスーパーどん引きタイムを展開しているのですが、 その空間に引きずり込まれそうなバリーの好感度が今最大の崖っぷち!
 その頃、メイスンの指示でウェルズ博士について探りを入れていたアイリスの投じた一石がスターラボに波紋を広げ、 博士への疑念をどうしても抑えられなくなったシスコは、ケイトリンに時間稼ぎを頼み、リバースを捕獲する時に使った装置を再検証する。
 だが時間稼ぎに気付いた博士は、例の何やら怪しげな洗脳能力?を用いてケイトリンの前から姿を消し……
 「そんな、嘘だろ……」
 「リバースさ。いわば逆の存在だ」
 眼鏡を外し、車椅子も捨て、本性を露わにしてシスコの背後に立つ……!
 「やっぱり賢いな、シスコ。いつもそう言ってきた」
 「あなたが……リバース・フラッシュ」
 「君にちゃんとした自己紹介をした事はなかったね。私は……イオバード・ソーン」
 「ソーン? エディと同じ」
 「遠い親戚だと言っとこうかな」
 思わぬ名前が登場しましたが、バリー・アレンに憎しみの炎を燃やし続けるエディ・ソーンの血族とかだったら、嫌だなぁ……(^^;
 博士は、リバースと同時に存在しているように見えたのは高速移動による残像だと説明し、震えるシスコは真実を指摘する。
 「ジョーの言う通りだ。あの晩あなたは居た。バリーの家に。15年前、あなたがノラ・アレンを殺した」
 「ノラを殺すつもりはなかった。私はバリーを、殺そうとしたんだ」
 「……どうして?! だって、バリーは友達でしょ。教えてたじゃないですか」
 「スピードの出し方を? そうさ、目的の為だよ。教えてあげよう。私はこの時代から抜け出せず、15年間、 ずうっと身動きを取れずにいたんだ。わかるか、15年間だぞ。抜け出す鍵は、フラッシュのスピードが、握ってる。 ――私の世界に戻る鍵だ。私の時代に。誰にも、私の目的を果たす邪魔はさせない」
 物凄く厭な感じで余裕たっぷりに必要以上の事を語る博士と、その態度から(あ……俺、 死ぬわこれ……)と運命を予感してぷるぷるするシスコの対比が凶悪。また今回冒頭で、 ポップコーンを頬張りながらバスター・キートンの映画を見て楽しむシスコと博士という珍しいシーンが置かれていたのが、 えげつなさに拍車をかけます(なおここで、やはりシスコは家族との関係が悪いと示唆)。
 「知ってたか。この事を隠すのがどれだけ大変だったか。特に君には苦労した」
 博士の目的に協力しますと精一杯の延命を試みるシスコだったが、博士はそれを拒絶し、右腕を高速振動させる。
 「正直なところ……君の事が好きだった。君はある意味、息子のような存在だった。父親の気分だったよ」
 これが、本当の、スーパーどん引きタイムだ!
 これから殺す相手に対して告げる台詞で、これでもかという腐れ外道ぶりを見せつけた博士は、 高速振動クローでシスコの体を貫き、がっくりと倒れ伏すシスコ。
 て、シスコーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?
 「君は、何百年も前に死んでたんだ」
 博士は未来人のお約束めいた台詞を残して立ち去り、幾つかの事が明るみになると同時にまた幾つかの謎が示されましたが、 シスコーーーーーー!!
 一方、マークを追っていたジョーはまんまと囚われの身になってしまい、アイリスとバリーは呼び出しを受けた桟橋へと向かうが、 近くの公園まで来た所でバリーは沖合の雷雲に気付く。
 「アイリス、すぐに逃げるんだ。ここから出来るだけ遠くに」
 「あなたを置いてけない」
 「アイリス頼む!」
 「聞いて。あなたの気持ちを聞いてから私、あなたの事しか考えられなくなった。最初はあなたに怒ってたの。だけど気付いた。 あなたの事を、考えたいから、考えてたんだって」
 「……僕も君の事ばかり考えてた」
 抱き合った2人はそのままキスを交わす、て、シスコーーーーーーーーー、じゃなかった、えーーーーーーーーーーーーーー。
 うーん、アイリスが恋愛関係以外で人間として好感度を稼いだ上でこの流れになるのならまだわかるのですが、 むしろここ数回でアイリスの好感度が地に落ちたどころか地面を割ってマントルへ向けて直進中の所でバリーと気持ちが通じ合いましたとかやられても、 むしろ凄いダメカップル誕生でしかないのですが、基本的に物語は凄く面白いのに、どうしてこうなった。
 というかバリー、その女は多分、1年後に同じような事を言って別の男と浮気するゾ。
 リンダの事もあるし、駄目男レベルを一気に5つぐらい上げてしまったバリーだが、そんな2人と、公園に居た人々、 更にはセントラル・シティに向けて、マークが起こした大津波が迫る!
 ここで一気に雰囲気を変える、メタ・ヒューマンの大技は良い切り替え。
 「街が、津波に呑まれる! どうすれば止められるんだ?!」
 「……海沿いに、風のバリアを作る事が出来れば止められるわ。風で壁を作るの」
 慌ててケイトリンに電話をかけるバリーだが、ケイトリンさん、無茶振り。
 「走って往復するのか……スピードは?!」
 「あなたにも、出せないスピードかも」
 「……ごめんよアイリス。こんな風には知られたくなかったけど」
 バリーは鞄に入れていたFLASH衣装に早着替えし、遂に正体バレ。
 「――逃げて!」
 ここで、津波から街を救うべく、一瞬の迷いも見せずに海外線を猛スピードで往復ダッシュするヒーロー・FLASHの姿は、 今作の特徴である盛大な馬鹿馬鹿しさをやり切る姿勢と合わせて凄く格好いいのですが、 駄目男レベルの方は危険水域を突破しそうで、どうしたものか。
 津波を阻むべく、限界を超える勢いで走り続けて風の障壁を作り出すFLASH。ところが、 そのスピードがある段階を越えた時――――突然、FLASHは時間の壁を越えて、死体安置所へ急いでいた夜に戻ってしまう!
 三つの告白とそれに関わる衝撃の退場劇から、おお成る程、これで、ルートを変えるのか?!
 どん引き博士にまつわる真相を部分的に明かして視聴者のストレスを減らしつつ、“15年前の夜”に繋がる時間移動のギミックを、 核心に関わる展開の前に一度ジャブ気味に持ち込んでくる、という見事な構成。
 これはやられました。
 今後、バリーはジョーを助ける(結果としてシスコも助ける)為のルートを模索する事が予想されますが、それにより、 視聴者が知っている真実/劇中人物が見ている現実/バリーだけが知っている時間、 の3つの情報が分断されて錯綜するというのも面白そうな所で、バリーがメイスンから直接話を聞いているのは割と重要な伏線か。 また、シスコ生存ルートに入る事でアイリスルートのフラグ消失の可能性濃厚ですが、 それによりバリーがもやもやを抱えるという為の最近の展開だったのかと思うと、納得。
 ……にしても、これだけ登場人物の好感度コントロールに長けた作品で、アイリスだけこうなのは、どこまでわざとやっているのか(^^;
 このまま、アイリスルート入りを阻止するべく、シスコには頑張ってほしい。
 なお前回の感想で、ああでもないこうでもないと推測していたサブタイトル原題の意味は、 本当に「時間の外」だった模様。まあ、色々な選択ミスが積み重なった事に関して「時機を失した」というのもかかっているのかもですが。
 しかし次回、「巻き戻せない時間」(原題:「Rogue Time」)――果たして、シスコの、ジョーの、警部の運命は、 どうなるのか?! 警部はともかく、劇中好感度の高い2人を生け贄に使ってきたのもえげつないけど巧く、次回が楽しみです。

◆第16話「巻き戻せない時間」(「Rogue Time」)◆
 リンダのいい女ゲージが上がった! 
 バリーのいい男ゲージが激しく下がった! ↓↓↓
 バリーの駄目男ゲージが凄まじく上がった! ↑↑↑↑↑
 見るのに変な精神力を消費する回でした……。
 砂浜を全力で往復ダッシュしていたら、時空連続体を引き裂いて1日前に戻ってしまったFLASH。 端々の言動からバリーが過去に遡ってきた事に気付いたウェルズ博士は、以前の時間で起こった出来事を変えてはいけないと警告するが、 警部の為、ジョーの為、バリーはFLASHとなって速攻でマーク・マードンを拉致ってパイプラインに閉じ込めてしまう。
 タイムリープもののお約束として、前回の出来事を繰り返しつつちょこちょこ修正していくのかと思ったら、 1時間(1話)丸ごと繰り返しはどうかと思ったのか、いきなりの大胆な修正。前回大暴れだった兄マードンは、 特殊能力を見せる間もなくリタイア(^^;
 「時間は必ずまた、違う悲劇を引き起こす。しかも、もっと悲惨な事をね」
 時間変動の揺り戻しによる別の悲劇を危惧する博士だが、それは、マルコメブラザーズの帰還という思わぬ形でやってくる。
 「おまえはトラブルメーカーで、トラブルは商売の邪魔だ」
 あ、やっぱり、トラブルメーカーなのか(笑)
 全てばっちり計算している風の割に毎度アクシデントが多い気がする氷のスナートと、その相棒・炎のミックは、 自分たちを捕らえたマフィアのシマを力技で強奪。スナート妹の美人局に引っかかり、シスコは別の死亡ルートへ。
 「やっぱりだよ! 俺がこんなにツいてる筈ないんだ!」
 不仲の兄を人質に取られたシスコは、やむなくコールドガンとヒートガン、そして妹の為に新兵器ゴールドガンを作る事に。
 その場の素材だけで人を金属化する銃を作るとか、シスコ、無駄に天才で困ります。
 ……というかシスコ、間違いなくこういう変態武器のアイデアをストックしている。
 その頃、友人の危機を知らないバリーは、見ている方の具合が悪くなってくるぐらいハイテンションだった。
 前回の時間でアイリスの気持ちを知り、内心もやもやしながら過ごす事になるのかと思ったら、 成層圏を突破する勢いのテンションのバリーにはブレーキもギアもなく、アイリスと約束を取り付けると自ら 「僕は君の事がずっと好きなんだリンダとの関係は清算したし僕は君の事がずっと好きなんだ君も僕の事がずっと好きなんだ 僕は君の事がずっと好きなんだ君の気持ちは全部わかっているから僕は君の事がずっと好きなんだ イケメンマッチョを捨てて僕と二人で薔薇色の世界に踏みだそう踏み出すべき踏み出したい何故なら君も僕の事が好きだから」 と熱烈なアタックを仕掛け、大爆死。
 ……うん、まあ、なんだ、ヴィンテージものの片思いを引きずり続けていた相手の好感度メーターが思わぬ形で視覚化されてしまって、 勢い余ってヘアピンカーブから飛び降りてしまったのはわからないでもないでもないのですが、 現在彼氏と同棲中の女性にかけるアプローチとしては、最低すぎると思うよバリー!!
 有頂天で超へらへらへらへらしているバリーの演技は面白かったですが(ある意味、ラストの伏線に)。
 どうしてバリーは、恋愛モードに入ると何かも駄目なのか(^^;
 フラグスイッチ的に言うと、前回の時間では
 〔メイソンがアイリスをつつく→アイリスがバリーをつつく→バリーがスターラボをつつく→シスコの疑念が深まる→ぐさっとな〕
 だったのが、今回の時間ではテンション:鼻から唐辛子が生えそう、 のバリーがメイソンとアイリスの会話の邪魔をした事で連鎖が発生しなくなっているので、 シスコの死亡を回避(当面)したのは、バリーの駄目男レベルのお陰、という事になるわけですが(笑)
 ……やっぱり、大切なのは男の友情じゃないかな。
 無惨に轟沈してスターラボに顔を出したバリーは、ジョーからの連絡でキャプテン・コールドの帰還を知り、 一味が襲撃したカジノへ向かうが、そこでシスコが人質になっている事を知る。警察官として現場の検証中には、 アイリスに粉をかけた事がばれてエディに殴られ、踏んだり蹴ったりで博士に愚痴るバリー。
 「僕が、前に、最初のバージョンの今日を過ごした時には、シン警部が、酷い……怪我を負いました。ジョーには危険が迫り、 アイリスは、僕への気持ちを打ち明けたんです」
 博士「(なあバリーくん、心の中にとどめておくが、最後のは凄く、私にとってどうでもいい情報なんだが) だが今回はシスコが危険にさらされ、アイリスには自覚がない」
 「……でも、気持ちは、ある筈です。でしょ?」
 博士「(気にするのそっちか)」
 自分の事は棚上げして軽く引きながらもバリーのメンタルケアには熱心な博士は、最初の時間でのアイリスの告白は、 潜在意識が吊り橋効果で表に出たのではないか、と解説。
 人々の命を救ったつもりが、思わぬ形で“巻き戻せない時間”の存在を知るバリーだが…………アイリスの態度が変わったタイミングを考えると、 導き出される結論は、〔先にリンダと別れてはいけなかった〕 (継続的な揺さぶりダメージで吊り橋の共鳴効果を高めておく必要があった)なので、アイリスほんと外道。
 またここでは、博士がFLASHが可能にした時間移動能力の危険性を重ねて説きつつも、バリーの母親を救いたいという気持ちは強硬に否定せず、 15年前に戻るのは計画の内に入っているという事か。
 その頃、囚われのシスコは仲の悪い兄から自分への劣等感や昔の彼女を掠奪愛した真相を明かされ、 懺悔した兄は決死の覚悟で弟の為に立ち上がるが、脱出に失敗。流派スターラボで立ち向かうシスコも、 あえなくYOU LOSE。兄を拷問されたシスコは、やむなくコールドにFLASH=バリー・アレンだと明かし、解放される。
 「愛する者を、どちらか一人選ぶのは、耐えがたい苦しみだったろう」
 責任を取ってラボを出て行こうとするシスコを引き留める博士のこの言葉は、前回の今回という事もあってか (場所も同じシチュエーション)博士にしては珍しく、本心の一部が感じられます。 ジョーの調査によると博士は15年前に恋人を失っているようですが、それが関係してくるのか。
 「そして我々が、君に残ってほしいのは、愛しているからだ」
 まあ、邪魔になったらさくっと殺すわけですが、今はまだ利用価値を見出している模様。
 「私は、子供を持った事がない。だが、いろんな意味で、君は息子のような存在なんだ」
 これも意図的に前回と重ねている台詞でしょうから非常に意味深ですが、いったい何が「いろんな意味」なのか、 巧く興味を繋いできます。
 コールド一味の真の狙いがカジノから金を運ぶ現金輸送車と判明し、シスコも流れでスターラボ復帰。 FLASHは輸送車襲撃中のコールドをひっ捕まえ、マスクを外して対峙する。
 問答無用で私設刑務所にぶちこむぞと脅すFLASHに対し、俺を捕まえれば即座に全世界にFLASHの正体を配信する、と引かないコールド。
 「お前が俺達を追うのと同じ理由だ。アドレナリンが溢れ、スリルを味わえる。このゲームが好きだし、俺には、才能もあるんだ」
 FLASHがヒーロー活動を生き甲斐とするならば、犯罪そのものが生き甲斐であると宣言するコールドと言う形で、 ヒーローとヴィランが対比され、しばらく押し問答。
 「おまえは僕には勝てない。僕の能力は知ってる筈だ。欲を張り続けたいなら好きにしろ。だがこの先、一人の死者も出すな。 本当に才能があるなら、誰も殺さずに目的を果たせる筈だ」
 「……確かにな」
 「それに、おまえや、仲間の、悪党のローグ達が、もしまた僕の友人や家族に近づくなら、僕は世界に、正体を知られても構わない。 それでもお前を倒す」
 「……おまえの秘密が漏れる事は無い。FLASH。――今はな」
 百戦錬磨の悪党と正面から堂々と対峙する迫力を見せたFLASH/バリーが精神的な成長を示し、 脅しも含めてコールドにある種の条件を呑ませるのですが、弱みを握られたヒーローが、一線を守りつつも悪に譲歩を見せる、 というのは予想外の決着。悪役を爆発させて解決というわけにはいかない物語の難しさを感じますが、悪党が部分的には勝利を収める、 という形になったのは驚きました。途中の、「よそ行けよ!」は、よそならいいのか?! と思ったのですが、 よそには背後から馬用の麻酔剤を矢でぶち込んでくる緑の覆面の人とか、もっと危ないヒーローが居るので、 そういう人が始末してくれるのか。
 「ローグか……いいね」
 FLASHが去った後、キャプテン・コールドはニヤリと笑い、今回の原題サブタイトルは、 1日巻き戻ったら「悪党の時間」に辿り着いた、という意味でした。「俺は最初のコールドガンを何度も分解して、 構造を全て把握してる」とか、FLASHと引き分けに持ち込むとか、コールド格好いい祭でしたが、 シーズン1での出番はまだあるのかなぁ……。ポジションが少し変化した状況で、もう一度ぐらい絡みが見たい。
 キャプテン・コールドとの第3ラウンドが引き分けに終わり、いつものカフェへ寄ったバリーは、 そこで出会ったエディにいきなり無言のハグを受ける。バリーがやらかした事を知った(アイリスから聞いた?)ケイトリンが、 落雷精神疾患なる病気をでっちあげ、バリーのテンションがおかしかったり君の心が超能力でわかるとか譫言を言い出したのは全て落雷の後遺症で、 スターラボでその治療をしているのだとエディとアイリスに嘘の説明をしてくれていたのだった。
 ケイトリンが病気の説明をしている間、超心配そうな顔のエディが非常においしい(笑)
 バリーはエディに、超高速で煩悩の数だけ土下座を繰り返すべき。
 こうして腐れヒロイン問題にもひとまずの決着がつく、が……その頃、見ず知らずの部外者には仕事の邪魔をされ、 後輩の新人記者には「今おまえの話を聞く気はない」と邪険な扱いを受け、一人寂しく夜のオフィスで仕事をしていたメイソンが、 その集めたデータごと、ひっそりとリバースに始末されていた――。
 「君はあまりにも多くを知りすぎた。ま、この時間では、だが」
 以前の時間でも、遅かれ早かれ消されていた可能性の高いメイスンですが、ここでまた、リバースから思わせぶりな台詞。 それにしても博士の超高速振動は、分身できたり、壁と人体を丸ごと貫けたり、ハードディスクを綺麗に掃除できたり、超便利。 現状のFLASHの上を行く力の表現としても秀逸ですが、分子結合を破壊してその隙間に入り込めるとか、そういう感じの理屈なのかしら。
 博士の関係者の処理もけっこう雑になっている感じですが、これは体調の問題なのか、計画の進行度の問題なのか。 前の時間でのシスコに対する「君は賢いけど、それほどではない」みたいな台詞を「もっと賢い協力者が既に居る」と解釈するなら、 腐れメガネとは裏で繋がってそうですし。……まあ、ゴリラ、という可能性もありますが。
 幾つかの波乱を抱えながらも、表向きは落ち着きを取り戻した時間の流れ。だが……メイソン失踪の報道をバリーが知った事で、 物語は大きく動き出す。
 「バリー、どうした? こんな時間に呼び出すなんて」
 「ウェルズ博士の事、多分ジョーの読み通りだ」
 「……どの点だ?」
 「何もかもさ」
 上書きされた(或いは、枝分かれした?)時間がバリーという特異点を通して繋がり、 とうとうバリーが博士に疑惑の眼差しを向けた所で、つづく。
 テクニカルな構成から大きな転機に繋がった前後編ですが、こうなるとアイリスは、メイソンの隠しデータを見つける、 みたいな役割になるのかなー。心配なのは、博士に対して疑いの目を向けつつも表面上はいつも通りに振る舞って情報を集める、 みたいな器用な真似がバリーに出来るとはとても思えない事なのですが、一歩間違えると全滅エンドだぞ、大丈夫か、バリー!

◆第17話「トリックスター」(「Tricksters」)◆
 15年前――赤い閃光と黄色い閃光が激しくぶつかり合い、それに巻き込まれるアレン一家。 戦闘を離脱して路上を走っていたリバース・フラッシュは突如もんどり打って地面を転がり、サポートAIギデオンから、 細胞の中のスピードフォースが失われた事により、超スピード能力とタイムトラベル能力が使用不能になった事を告げられる。
 この時間から抜け出せない、という事実に激昂したリバースはマスクを外し……

 ……誰?

 顔認識能力の低さには自信があるので、髪型と髪の色が違うウェルズ博士かと思って困惑したのですが、実際違う人の顔でした。 今回は現在の事件の合間に15年前の出来事が幾つか挿入され、本来のウェルズ博士は、 リバース――イオバード・ソーンによって肉体と経歴を乗っ取られ、恋人まで殺されて歴史の闇に葬られた被害者であった、 という大きな事実が判明。
 これでアレン家の現場に残っていた血痕がウェルズ博士のものではなかった理由(その時は別の肉体だった)が解明され、同時に、 悪役の同情要素かと思われた博士恋人は、そんな事が無いどころかもっと酷い扱いだった、と思いっきりぶったぎってきました。
 前回の思わせぶりな「そして我々が、君に残ってほしいのは、愛しているからだ」とか、 普通にどん引きムーヴでしたよ!!
 本来のウェルズ博士は、実際に割といい人だったようなので、文字にするとややこしいのですが、当面、 リバース/イオバードに関しては、ハリソン・どん引き・ウェルズ博士で通したいと思います。
 正史(仮)においてウェルズ夫妻が2020年に粒子加速器の起動に成功する事を知っていたり、 ギデオンやウェルズ博士を乗っ取った装置のオーバーテクノロジーなど、リバースが未来から来た事はほぼ確定のようですが、 そもそもこの時代に何をしにきたのか、などはまだ謎。
 あと、以前からずっと引っかかっている要素なのですが、リバースの正体が明らかにされた事でどうしても気になるのは、 バリー母はどうしてナイフで刺殺されていたのかという事。リバースがFLASHとの戦闘のはずみでナイフでバリー母を刺した、 というのはかなり不自然に思えますが、今回もバリー母の死亡シーンは明確に描かれなかった事 (いつもの閃光が周囲をぐるぐる回っていて叫んでいるシーンだけ)で、ますます嫌な感じになって参りました。
 うーん……。
 現在――とりあえず、もう博士に直接聞くよ! と言い出したバリーを、ジョーが止めてくれてホッとしました(^^;  慎重に粘り強く調査を続ける事を約束する二人だが、博士に向けて不機嫌オーラを放出しまくるバリー。
 そんな中、20年前にセントラル・シティを震撼させた連続爆破テロリスト「トリックスター」の模倣犯が出現。 刑務所に収監中の本物のトリックスターから話を聞いたジョーとバリーは、 模倣犯がオリジナルの隠していた大量の爆弾を入手した事を知る……。
 刑務所の特別室で座禅を組む伝説的犯罪者との面会という、サイコサスペンス風味の変化球で味付け。いつもと違う雰囲気で、 最初に公園で遊ぶ子供達のシーンが入ったので、子供が被害に遭う陰惨な展開は嫌だなぁと思ったのですが、そちらへは行かずに一安心。
 一方、メイソン失踪を気にするアイリスはFLASHに連絡を取り、懲りずに会いにいってしまったFLASHは、 メイソンの件を探る事を約束してしまう。
 「お願い。私の為に、調べて」
 「……君の為だ」
 待てバリー、そこは(立場はFLASHだけど、アイリスに頼られてるよ、ひゃっはー!)と喜ぶ所ではなく、その女は、 別の場所で別の男にも「私の為に」と言っているに違いないと学習する所だからな!!!!!
 お願いなので、ケイトリンさん辺りから、バリーに懇々と説教してあげて欲しい。
 そこへシスコから、トリックスターの新たな爆破予告がUPされたと連絡が入り、アイリスにノートPCを借りて動画を確認するFLASH。
 喫茶店のテーブルに座って真剣な顔でノートPCを見つめるFLASH、 というのは衝撃的な絵面(笑)
 全然顔隠れてないけど、大丈夫かバリー。
 悪党なので悪党の心理を理解する博士の助言を無視し、爆弾を探し回るFLASHだが、それは博士が看破した通りに囮であった。 トリックスターは警察の目が爆弾に集中している間に刑務所を襲撃。まんまと、初代トリックスターを脱獄させる。 二代目トリックスターはただの模倣犯ではなく、最初から初代トリックスターと繋がっていたのだった!
 原題サブタイトルには「s」がついており、オリジナルと模倣犯のようで実は共犯者だった2人の暗示として洒落ているのですが、 こういうのは日本語だと表現しにくい所か(「達」と訳すと、どうも間が抜けますし)。
 まんまと陽動にはめられた上に、トリックスターが脱獄時に実父を人質に取った事を知らされたバリーは大ショック。 父親を助ける為に、全ての元凶の可能性があるウェルズの助けを受けないといけないのかと、打ちひしがれる。
 「おまえは、いつも人のいい面を見ようとしてるんだ。俺は25年間警察をやってるから、人の欠点や、嘘や、 隠してる裏の顔ばかり見ようとする。俺もなりたいさ、おまえみたいにな。おまえの一番の力は、それだ。速さじゃない。 ウェルズのせいでそれを失うな。あいつが、どうして、協力するのかはわからんが、力になってるのは、確かだろ」
 そんなバリーを励ますお養父さんが、いつものようにおいしい。
 トリックスターは政治家の資金集めパーティをジャックし、そこに乗り込むFLASHだが、 初代を拘束している間に横から二代目に爆弾を取り付けられてしまう。……FLASHはホントいい加減、 相手を拘束して自分が動きを止めた時が最大の弱点である事も学習してほしい(笑)
 速度計と連動した爆弾により走り続けなければいけない大ピンチのFLASHに、 博士は空気と同じ周波数で振動する事により物質をすり抜けるという、FLASH忍法・壁抜けの術を伝授。ここ一番、 博士のアドバイスを受け入れたFLASHは細胞にスピードフォースを行き渡らせる事でタンクローリーをすり抜けて爆弾解除に成功し、 パーティー会場に取って返すと今度こそ二人のトリックスターを拘束。囚われの父親も無事に救出すると、 積み重なったストレスの勢いで、父に正体を明かし、スターラボにご招待。
 「あなたの息子さんは、貴重な存在ですよ。どんな力を使ってでも、バリーの未来を守るつもりです」
 基本、身近な協力者が黒幕だった、という展開はあまり好きでないのですが、今作、 開始時点から露骨に匂わせた上でそのシチュエーションゆえのウェルズ博士のどす黒さをじわじわと蓄積していき、ここで、 視聴者の「博士気持ち悪い」とバリーの「こいつ全力でぶん殴りたい」がシンクロする、という構造がお見事。
 「お父さんも貴重な人だ。君はラッキーだ」
 「…………ええ。あなたも居ますからね」
 諸々の葛藤を胃の底に呑み込み、博士と握手を交わして微笑んでみせたバリーが、背中を向けてから見せる覚悟の表情が格好いい。
 そして――先輩刑事に呼ばれたら何故か一人だけ椅子に座らせて、え? 俺これから、拷問とか受けるの?  という顔になったエディの前に現れたFLASHは、遂にその正体を明かす。
 ここでエディに明かしてきたのは驚きましたが、エディの好感度がドンドン上がってきた所だったので、 除け者扱いでなくなったのは良かった。今回、15年前のリバース、父親に、そしてエディに、と3回のマスク脱ぎがあるのですが、 今作のスタッフはそういった被せが好きな印象。
 アイリスを深入りさせない為に共謀した3人は「メイソンは運命の人を見つけてブラジルに引っ越し1年ほどアマゾンを旅するらしい」 というでっちあげを信じ込ませ……あなた方、3人で知恵を絞った末に出てきたのがそれなのか。
 「余計な事は知らない方が安全なんだ」
 「俺はそうは思いません。ですが今は、あなたに従います」
 エディはもうアイリスにも明かしてしまった方が良いと思っているようで、ここは娘可愛さのあまり、 ジョーの目がくらんでいる部分といえますが…………今作においてトップクラスに誠実な人物であるバリーとジョーの、 良識と判断力を著しく低下させるアイリスこそ、真のラスボスなのかもしれない。
 かくして、スターラボの愉快な仲間達とは別に、ウェルズ博士に疑惑の目を向けるもう一つのチームが生まれ、 博士の超高速ポエムの出来の良さから、バリーは一つの推論に到達する。
 「ハリソン・ウェルズが、リバース・フラッシュなんだ」
 シーズン1のラストに向けて様々な伏線が加速をつけて収束していきますが、次回、新たなるヒーロー競演。

◆第18話「アトム参戦」(「All Star Team Up」)◆
 まずは前回の変化を受けて、エディを交えてのFLASH大活躍から。
 「こいつは?」
 「ああ、公然猥褻。パウエル公園に居た」
 「そんなもん人に見せちゃ駄目だろ」
 今回この手のやり取りがいつにも増して軽妙で面白いのですが、エディのFLASHを見る目が、 「変なスーツ着るとテンション高いなこいつ」になっているような(笑)
 ジョー&エディと協力する事で立て続けに犯罪事件を解決していくFLASHだが、 大量のハチに刺されたアナフィラキシーショックによるものと思われる遺体が発見される。相手はハチを操るメタヒューマンなのか?  スターラボに協力を求めるバリーだが、そこへ突然訪れるフェリシティ。そして――
 「あれは何? 鳥?」
 「いや飛行機だ」
 「私の恋人よ」
 と、『スーパーマン』パロディを交え、空飛ぶパワードスーツを身につけたマッチョのナイスガイ、 レイ・パーマー(役者さんが元スーパーマン役との事)がスターラボに着陸。
 「君とだと、彼、背高すぎない?」
 「バリーやだ、やきもち焼いてるの?」
 「まさか、ちがう、やきもちじゃない」
 僕は、世界中のマッチョなイケメンを憎んでいるだけだ!
 アローの友達のフェリシティの友達のバリーの友達のスターラボの愉快な仲間達に、 自ら開発したスーツを見てほしいとやってきたレイは、電流閃くものがあったのか、さっそくシスコと意気投合。 どうやら基本は『アロー』のキャラのようですが、ウェルズ博士に憧れていたり、バリーに精神ダメージを与えつつも、 世界観を噛み合わせてきます。
 「忘れたの? ハチの大群を操って人を殺したメタヒューマンが居るって」
 「面白い。ははっ…………いや、酷いな」
 ダメな人が増えたーーーーーーー!
 レイ/アトム(仮称)は、優秀だけど、若干、脳が迂闊仕様。
 ウェルズ博士への懸念から非協力的な態度を取るバリーの妙な様子に気付くフェリシティは話を聞こうとするが、 そこにFLASHの件を秘密にしている事でアイリスとぎくしゃくしているエディが相談に現れ、結局、5人で食事会をする事に。そんな折、 再びハチによる殺人が起こり、ハチの軍団に囲まれて敗北するFLASH。
 …………某『ゼルダの伝説』シリーズで、ゲーム中で最初に死亡したのが、ハチに追われて海に逃げ込もうとしたのに間に合わなくて、 だった事を思い出しました。
 スーツに付いた除細動器で一命を取り留めたバリーは、復活するやいなや会食を強行するが、主にアイリスのせいで、雰囲気最悪。 ウェルズ博士を敬愛するレイの言葉に挙動不審になったバリーは、別室でフェリシティに問い詰められる事に。
 「私たちが来てからずっと様子が変よ。何があったか話して。タイミングが悪いっていうなら、 今オリバーは暗殺者集団のボスになりそうだし」
 ……それは、凄く、タイミング悪いですね。
 『アロー』の筋は全く知りませんが、フェリシティがレイを連れてかなり強引に押しかけてきた事や、 セントラルシティまでなんかカリカリしてるの? という反応の理由がうっすらと判明。
 「わからないよ。もう何もわからないんだ! 誰を信じていいのかも」
 ウェルズ博士が超気持ち悪くて殴り飛ばしたいけどそうも行かない上に、自分をサポートする理由がわからない事、 それにともなうシスコとケイトリンに対して秘密を抱えるストレス……。
 今作ここまで、良き父性の象徴であり、正しい選択をする事が多かったジョーの、刑事としての慎重さと、父親としての娘可愛さが、 一理ありながらもバリーとエディを精神的に追い詰めていく、という展開が実に巧妙。
 フェリシティに気持ちを吐露するバリーは友達を信じるように励まされるが、一方、エディとアイリスの方はこじれにこじれていた。
 「頼むから、楽しく食事できないか」
 「楽しく食事できないのは、私のせいだっていうの」
 そ の 通 り だ。
 場の空気を無視して、なんでもかんでも、個人的な悪意から厭味に変換するって、人間としてかなり最低の部類に所属する行為だと思うのですが、 アイリスはホント、どうしてこうなった。
 FLASHスーツにくっついてラボに潜り込んだハチを確保した事で、それが昆虫ではなく小型のメカと判明し、 犯人はメタヒューマンではなく工学者だったという変化球。……まあ実際の所、敵がメタヒューマンのエピソードって全体の半分ぐらいな気はしますが。
 被害者が共にマーキュリーラボに勤めていた事が判明し、炙り出される犯人の素性。その所在を追う傍ら、 アトムスーツを夢中でいじり回すシスコとレイを、カメラで覗くケイトリンとフェリシティ。
 「いい大人2人が玩具で遊んでるわ」
 「羨ましいわ。レイは優しくて頭が良くて、しかもセクシー」
 ハリウッド映画など見ていると毎度思うのですが、この「セクシー」という概念は、なかなか理解しにくい(笑) 勿論、 日本にも「男の色気」という表現はありますが、ここで使われているアメリカ人女性の男性に対する「セクシー」とは意味が違う気がするわけで。
 「彼中身はバリーに似てるかもね……体はオリバーに似てる。――お願い! 今の誰にも言わないで」
 「わかった、内緒にする」
 頭脳優秀な筈なのにどこか危なっかしい善人+イケメンマッチョの融合は、フェリシティの好みにパーフェクト(笑)  加えて金持ちだし、ちょっとネジが緩めな事を除けば、やたらなハイスペックです。このままだと、 タイムトラベル能力を強化したバリーがいつか、地球上全てのイケメンマッチョのDNAを消し去る為に石器時代へ飛んでしまわないか心配になってきます。
 そんな時、マーキュリーラボにハチメカが出現。確保したハチから犯人の居場所も突き止められ、FLASHが犯人確保に、 アトムがマーキュリーラボへと向かう事になる。
 「僕のスーツなら刺されない。――行くよ」
 「おい待て、電力系統をテストしてないぞ」
 「これがテストだ」
 「俺もついてく」
 「私が運転を」
 「……私はキスを」
 アトムに協力するシスコとケイトリン、FLASHに協力するフェリシティ、お互いのサポート役を入れ替えてのチームプレイというのが、 ヒーロー共闘として非常に熱い展開で、実に鮮やかなコラボ。
 アトムの活躍でマギー博士は救われ、FLASHも犯人を確保。だが生き残っていたハチメカがロイをかばったシスコを刺し、 またも死にそうになるシスコ。
 死んだ時間の出来事がフラッシュバックしている事を考えると、これは死亡イベント回避の揺り戻しではないのか(^^;
 全て精算し終えるまで、あと3回ぐらい死にそうになるのではシスコ。
 シスコは駆けつけたFLASHの高速心臓マッサージで生還し、バリーはシスコの友情と良心を、改めて信じる事にする。 ヒーロー共闘のコラボ展開がそれだけで終わらず、来訪者としてのフェリシティの助言を含め悩めるバリーの霧を晴らすのに繋がるという構造が、 実によく出来ています。
 後日、マギー博士が警察署を訪れ、過去のウェルズ博士との関係を尋ねるバリー。
 「悲しみで性格が変わる人も居るけど、彼の場合はそんなんじゃない。テスが死んでから、別の人間になってしまったかのようだったわ」
 と、前回の回想シーンを裏打ちする、重要な示唆。
 一方、エディの元にはアイリスが訪れ、バリーからフォローがあった事を語る、が……
 「納得できる説明だったわ。もっともよ。……でも、そんなのどうでもいい。だって愛する人になら、なんでも話すもの。 だから私を愛してるなら、何が起きてるのか話してほしい」
 面倒くさい。
 ……いや、こういう面倒くさい女性キャラ自体を全否定する気は無いのですが、なんだろうこの、 1人だけ別ジャンルのドラマから来たような面倒くささ。
 加えてもう何度も書いていますが、アイリスに人間としての好感要素(例えばジョーのような)があったり、 劇中での問題解決への貢献度(例えばシスコのような)があれば、面倒くさいけどまあアイリスの気持ちもわかる、となるのですが、 ゼロむしろマイナスなので、物語としてただただ面倒くさい事に。
 トドメは、そんなアイリスが物語の中で許されているのは、バリーがアイリスを好きだから、という理由だけなので、 壮絶にイライラします(^^;
 本当にどうしてアイリスだけこうなのか……。
 特に今回、ゲストキャラのフェリシティが『FLASH』サイドに登場する度にいい女度が上がっていく為、対比がますます地獄絵図。 これだけ物語構造の巧い作品なので、スタッフ故意にやっているとしか思えないのですが、 この果てにいったいどんな仕掛けが待っているというのか?! それともアメリカの視聴者にはこの性格がウケるのか?!
 エディが苦悩を深める一方、バリーはシスコとケイトリンに、ウェルズ=リバース説を明かし、 なんだかますます可哀想な立場になっていくエディ。
 そしてシスコは、最近見る夢の事を話す。
 「博士がリバースフラッシュで…………それで、俺を殺すんだ」
 いよいよ真実へ迫る包囲網が出来上がっていく中で、次回、「ウェルズ博士の正体」(「Who is Hrrison Wells?」)。

◆第19話「ウェルズ博士の正体」(「Who is Hrrison Wells?」)◆
 バリー達は意を決してシスコとケイトリンにウェルズ博士への疑念を伝え、ジョーとシスコは休暇を使って、 かつてウェルズ博士が婚約者と暮らしていたスターリング・シティへと、15年前の事件を再調査に向かう。 その間にエディと即席コンビを組む事になるバリーだが、接触した他人の姿を写し取るメタヒューマンと対決する事に。そして、 ケイトリンはどうしてもウェルズ博士を疑えずにいた……。
 ジョーとシスコが再びコンビを組む一方で、バリーとエディが共同で捜査に当たる事になり、 いつもと違う組み合わせで話を展開するだけで面白いという、キャラクターの積み重ねが大きな魅力。
 ジョーとシスコはスターリング・シティで現地の警察に協力を求め、何故かキャラクター名のテロップが出ると思ったら、 バリーの事を知っているコラボヒーローでした。
 「私が、ブラック・キャナリーだからよ」
 毎度の事ながらコラボヒーローの説明が無いのは困惑する所ですが、そこを割り引いても面白いので、もう、割り切りました(笑)  私は全然わからないですが、コミックファンの方だとある程度、ドラマでの設定は別にして、「ああ、 あのキャラかー」的な感じで楽しめるのでしょうし。
 ……そしてまた、便利な改造屋として扱われるシスコ(笑)
 シスコはスターラボ辞めても、流しの改造職人として「貴方の装備を強化します」の売り文句でこの世界を渡っていけそう。
 一方ウェルズ博士の助言により、「事件の始まり」を追うバリーは、変身メタヒューマン・フェイスシフター(仮称) とおぼしき男を見つけだすが、追跡中、エディに変身したフェイスシフターが警官を撃った事で、 その犯人とされたエディが拘束を受けてしまう。
 「触られないように気をつけろ」
 「それと猛スピードを出すところ見られないようにね」
 「どうやって捕まえるんだよ?!」
 「昔ながらの方法さ。普通に走るんだ」
 「わかりました。……参ったな」
 そんな緊迫した展開の手前なのに、隙あらば面白いやり取りを挟んでくるのがホント好きです。センスもいい。
 このままでは刑務所行きというエディの陥った窮地に父親を重ねたバリーは、思わずその身柄をかっさらってしまうが、 エディから止められる。
 「いいか、バリー、あの時君はまだ子供だった。出来る事はなかった。だがもう子供じゃない。科学者だ。それに――君はフラッシュだ」
 ここでバリーに対して「今の君はヒーローなんだ」と正道を進むように諭すのがエディというのが格好いいし、 過去に絡む葛藤を主人公が自らの力だけで乗り越えるのではなく、周囲の人々が手を貸して正していくという今作のスタイルも貫かれています。 普段なら父親ポジションに言われて考え直す部分を、友人ポジションに言われて改める事で、バリーの成長も少し。
 「逃げないで戦おう」
 バリーとエディの関係は、間にアイリスが居るのでややこしい事になっていますが、 いっけん合わない2人のバディ物としても普通に面白いので、もう少し友情が描かれるといいなぁ。
 改めてフェイスシフターを追おうとするバリーだが、相変わらず迂闊な為、エディに変身したシェイプシフターに気絶させられ、 姿を奪われてしまう。偽バリーはケイトリンと共にスターラボに入り込み、以前から、 勢いでバリーに流されてもいいかもオーラを出していたケイトリン、とうとうバリーとキスシーン(まあ中身は今回の悪役なので、 酷い展開なのですが(^^;)。
 個人的には、ええええええ、ロニーはーーーーー?! と思う所ですが、アメリカンなドラマ(映画)はこの辺りが何かと緩めの印象(偏見)。 まあアメリカン的には、彼女置いてどこか飛んでいった男には文句を言う資格無し! なのかもですが。
 実際問題としては、バリーとケイトリンは割と似合いのカップルというのが見る側の問題を複雑化しているのですが、 ケイトリンはそもそも、展開によってはヒロインに昇格できるキャラとして造型されていたのだろうしなぁ……。
 この件のお陰でバリー、後で救出された際に思いっきり頬をはたかれたり、肩に手を置いただけで過剰反応される羽目になりますが、 なんとなく身から出た錆の気もするので仕方ない。
 危うい雰囲気になりそうだった所で、バリーから連絡を受けていたアイリスがスターラボに突入してきて、 父親のアカウントを使って入手した警察内部の資料映像をスターラボのパソコンで勝手に開いて検証するなど好き放題。 だがそれがきっかけでフェイスシフターは馬脚を現し、ウェルズ博士のディザー銃の一撃を受けて気絶。 このままパイプラインにぶち込んでしまいたかったスターラボの困った人達だが、アイリスの主張に折れて、警察へ連れて行く事に。
 珍しく、アイリスの正論が、駄目人間達の曲がった感覚にメスを入れた!(笑)
 ところが警察への移動中、少女の姿に変身したフェイスシフターに逃げられてしまい、ようやく出番の来たフラッシュは、 海外に高飛びしようとしていたフェイスシフターを追い詰めて格闘戦に。 目の前でケイトリンに姿を変えた相手に狼狽えて防犯スプレーを吹きかけられる辺りが相変わらず迂闊ですが、 一度割り切ると思いっきり殴り飛ばせる辺り、だいぶヒーロー強度も身についてきました。
 お陰で、次に変身したアイリスには最初から思い切り打撃を入れる辺り、何やらスタッフの悪意も感じます。そこは順番、 逆じゃないのかと(笑)
 「女を殴るとは……それでもヒーローか」
 フラッシュの好みを見誤ったと思ったのか、エディに変身するフェイスシフターだが、フラッシュ、 これ幸いとばかりに本気パンチ。
 そしてフラッシュvsフラッシュになるも、スピードのないフラッシュはただの変態赤スーツであり、一方的に本物に殴り倒された末、 ケイトリン謹製・細胞変化を抑制する血清を撃ち込まれ、一時的にアイリスの姿で変身が固定化されると、気絶。
 この戦闘の映像が空港の監視カメラに記録されており、それが証拠となってエディは不起訴に。
 「今まであり得なかった存在があり得る世界になったわけね」
 「ああ。だが幸いフラッシュも存在してる」
 エディを最初からかばうなど部下思い路線が固定化した警部は、フラッシュへの信頼も語り、すっかりおいしい役どころに。
 そして今回、法体制の側の人間が明確に“得体の知れない能力を持った人間”=メタヒューマンの存在を認める という大きな転機が到来。アイリスがこれらメタヒューマン事件を追っていた事が改めて強調されるなど、物語世界の一般社会と、 メタヒューマンの関係に変化の兆しが描かれ、ウェルズ博士を追う件とは別に、 作品世界がより拡大したパラダイムシフトの準備に入ってきました。
 ドラマの制作スケジュールなどはわかりませんが、もしかしたらこの辺りで、<シーズン2>の制作が決まって、 続編へ向けた大きな布石を打っていけるようになったりしたのでしょうか? 
 スターリング・シティ組では、現地の刑事(ブラック・キャナリー父)とジョーが、娘を持つ父親の会話。
 「娘とうまく行ってないのか?」
 「まー……なんというか、大事な事を隠していたんだ。しばらく嘘をつかれていた。それが許せなくてな」
 多分、娘が覆面ヒーローやっている件かと思われますが、それを聞いたジョー、ちょっと目が泳ぐ(笑)
 「理由は聞いたんだろ?」
 「だが納得してない」
 「そうか、まあ……愛してるからこそ、つく嘘もある。家族なら尚更な」
 自 己 弁 護 し て 誤 魔 化 し た!
 この辺り、ジョーの弱点からも目を逸らさない作りで、それをコラボキャラから側面攻撃させる辺りは上手い。
 そんな会話が背後でされているとは露知らず、ブラック・キャナリーに頼み事をされてテンション高いシスコは、 道路脇でタキオン粒子の痕跡を発見。地面を掘り返すと、そこから遺体が発見される……と、15年前の入れ替わりの際に生まれた筈の、 本物のウェルズの死体の存在が、伏線として機能。地元刑事をなんとか説得したジョーとシスコは、 その遺体をセントラル・シティへと持ち帰る……。
 エディはアイリスに、これまで隠していた事として「フラッシュと仕事をしてるんだ」と説明し、 フェイスシフターはパイプラインに無事御用…………ただでさえ困った事例なのに、 生きた物証である犯人をヒーローが連れ去って私設刑務所にぶち込んでいるの、検事さんとしては凄く迷惑だと思いますが!
 「なんなのよ、早く出して!」
 そして今回、エディを助ける為に奮闘したり、結果的にフェイスシフターの確保に役立ったりと珍しくプラスポイントを稼いだ (合計はまだ遙かマイナスですが)アイリスの姿で、パイプライン刑務所をガンガン叩かせるという、酷いオチ(笑)
 スタッフは、絶対わざとだ!
 「君が色々な人間に変身できるのはわかったが、ハンニバル、君は、どんな人間だ?」
 「……どんなって、はは、自分でもわからない……覚えてない」
 変身能力を使い続けてきた男が、自分の顔を忘れてしまう、というのは定番ですが、 ここで“他人の全てを奪った男”であるウェルズ博士/イオバード・ソーン、に言わせているのが上手い。
 事件が一件落着し、ケイトリンを連れたバリーは、ジョー達が持ち帰った本物のハリソン・ウェルズ博士の遺体とご対面。
 「本当に別の人間になっていたんだ」
 15年前の恐るべき事件の一端が明るみになった後、ジョーは署を訪れていたウェルズ博士と遭遇(ここで、 ほぼ面識のない筈のエディにお祝いを述べに来たというのは、何やら意味ありげ)。
 「ウェスト刑事、そういえば、君も同じような経験をしてるね。君となら、気持ちを分かち合えそうだ。……話さないんだな、 アイリスのお母さんの事」
 「……ああ……話さない」
 「そうか。……我々のような、辛い経験をした人間は滅多に居ない。奇遇だね。こんな仲間にはなかなか会えない。また今度、 酒でもどうだ。話そう」
 これまで伏せられていたアイリスの母親の件が表に出てくると同時に、 最低に気持ち悪い博士の下衆さを上乗せしてくるのが、実に最高です。
 ホント気持ち悪いよ博士!
 ED映像で使われていたフラッシュvsフラッシュは、蓋を開けてみたらそれほど重みの無い対決でしたが (これはED映像の編集チョイスがお見事)、スターラボの3Dモデルを検証していたバリー達は、 博士の隠し部屋を発見してリバース・フラッシュの衣装と未来の新聞を見つけてしまう……! という衝撃の急展開で次回へ続く。

◆第20話「リバース・フラッシュ」(「The Trap」)◆
 全編・博士が超気持ち悪い祭。
 「貴方は僕らの人生を滅茶苦茶にしたんだ!」
 「何があっても私たちは、貴方を支えてきたのに!」
 「君達には理解しがたい事だと思うが、私を――信じろ。君達の人生は遙かに良くなってる。これまで私がしてきた事のお陰でね」
 −−−
 「僕を殺したいなら、好きにすればいい。でも、警察には真実を話して、父さんの濡れ衣を晴らしてくれ!」
 「君は殺さない、必要だからね。それに……ははっ……自分でも予想しなかったよ。私にとっての辛い15年と同じぐらいに、 君と働く事がこんなにも、楽しくなるとは。だとしても、今後の計画は変わらない」
 「なら今戦え!」
 「あぁ、はは……またすぐ会えるとも。約束しよう、バリー。すぐだ。本当にすぐね」
 −−−
 「……だが実に……勉強になったよ。少年だった君が成長していく過程を見る事は」
 ひぃーーーーーーーー
 15年越しの、ストーカー宣言。
 博士は役者さんの表情も素晴らしいのですが、そこに気持ち悪さを特盛りつゆだくで上乗せしてくる、CV:宮本充が最高すぎます。
 前回、とうとう博士の隠し部屋(割と唐突に、「タイムボルト」と呼称)を探り当てたバリー達は、 そこでリバース・フラッシュの衣装と未来の新聞記事を発見。そこには、2024年4月25日、 フラッシュがリバース・フラッシュとの戦闘中に<クライシス>により姿を消した事が記されていた――。
 「実はスーツのあの明るめの赤、びしばし来てるんだよね。それにシンボルの白もいい感じだ。……ちょっと待った。 今スーツの色をあれに変えたら、それはこの画像をヒントにしたからって事だよね。つまり、俺達には因果関係が成り立つ。わお、 これってビックリだ」
 更にその記事を書いた記者の署名が、アイリス・ウェスト−アレンであった事に激しく動揺するバリー。
 前回の仲直りを経て、とうとうプロポーズを決意したエディがひたすらテンション高いのですが、バリーはバリーで(え? あれ?  フラグ消滅したんじゃなかったの? それともやっぱり、事故に見せかけてエディをビルの屋上から突き落として心の隙間につけ込むべきなの?!) と目を白黒させ、だからもう、君達二人がくっつけば全て解決するんじゃないかな(待て)
 そして、博士が計画について話し合っていた人工知能ギデオンが未来のバリー・アレンが制作したものである事もわかり、 博士が来る前に何とか退散したバリー達は、シスコの夢――上書きされた時間の出来事――へのアクセスを試みる事に。
 明晰夢の世界にアクセスしながら外部と通信する事で情報を得よう、とかさらっとトンデモを言い出して実行するスターラボの愉快な仲間達の、 相変わらずの心の強さ。同じ回で、火災の救援に向かったフラッシュが、博士のアドバイスにより、 両腕を超高速でぐるぐる回す事で真空状態を作り出して消火する、 という気の狂った展開を大真面目にやって、トンデモを上書きしてバランス取ってくる辺りが素晴らしいです(笑)
 シスコが夢(別の時間)で経験した出来事を把握したバリー達は、同じ状況を作り出す事で、博士にノラ殺しを自白させようと罠を張る。 あの時と同じく、シスコがリバース・フラッシュの秘密を解明してしまった場所に車椅子抜きで現れた博士はシスコに殺意を向け、 あの時と同じにならないよう仕込んでおいたバリアを発動するシスコだが、何故かそれをすり抜けて迫る博士。咄嗟にジョーが銃を撃ち、 心臓に直撃を受けて即死してしまうウェルズだが……なんとその正体は、ウェルズにそそのかされたフェイスシフター。
 「前にも言っただろう? 私はいつも、一足先を行ってるんだ、フラッシュ」
 シスコが仕掛けていた発信器の反応に急いだバリーは、隠し部屋に捨て置かれた車椅子(発信器付き)と、 壁一面に表示された監視カメラの映像を目にする……。
 「全部見られてた。奴を罠にかけたつもりが、僕らがかけられてたんだ」
 もともと序盤で、博士がバリーの仕事部屋に監視カメラを仕掛けている事は示されていましたが、その後どうしたのかと思ったら、 ずっと見ていた。というか、ジッターズとか警察署どころか、エディ宅まで見ていた。
 博士、ホント気持ち悪いよ博士、最高に気持ち悪いよ博士。
 監視カメラの映像は過去シーンで構成されているのですが、 ウェスト家の居間にリンダを置き去りにするバリーとかエディとアイリスがベッドでくんずほぐれつとか、 がわざわざ再生されているのは、博士の地味かつ悪辣な嫌がらせなのか(笑)
 エディ宅の寝室の盗撮映像とか、使い方次第では、バリー、死ぬ。
 新聞社まで盗撮の対象だった事を知ったバリーはアイリスの元へ急ぐが、一足早く動いていたリバースは何故か、 アイリスにプロポーズ直前だったエディを拉致。
 本人のテンションとは裏腹に、ジョーからはアイリスがあいつと付き合っているのは一時の気の迷い扱いを受け、 回想シーンのアイリスからはバリーが昏睡状態のせいでデートに誘われてOKしてしまった私って凄く馬鹿と言われ、 リバースフラッシュにはプロポーズを邪魔されるという悲惨すぎる扱いのエディ、とうとうヒロインに昇格。
 一足遅れで駆けつけたFLASHがエディの奪還を約束して走り去り、伸ばした手にかすかに走った電光から、 昏睡状態だったバリーとの間に走った電光を思い出したアイリスがFLASHの正体に気付く、というのは、 ヒーロー物としては凄く格好良いのですが、相手がアイリスなので1ミリも嬉しくない(直球)。
 怪しげなアジトにエディを連れ込んだリバースは、イオバード・ソーンの名前を明かし、「何故? それは、 家族だからだ」と未来から来た血縁関係である事を示唆。
 「だからあの夜、スターラボで俺を殺さなかったのか。…………これは全部……俺の為なのか?」
 「大外れだ。エディ、君は、ただの保険にすぎない」
 正直、俺の為じゃなくてホッとしました(笑)
 ――1年数ヶ月前、スターラボ。昏睡状態のバリーを病院から引き取ったウェルズは、その治療をしながら滔々と語り続ける。
 「だが私が……はぁ……待っていたのはこんな君じゃない。あまりにも、無力すぎる。運命は……複雑だよ、ふふっ。だろう? 私は、 君を壊し……君を生み出さないと元の時代に戻れない。……はっ。……だが実に……勉強になったよ。 少年だった君が成長していく過程を見る事は。君が、いつか、あんな人間になる兆しはどこにもない。憎むべき君の姿は。 だからといって――決して許されない。君は報いを受けるんだ。約束しよう、バリー・アレン。――君は死ぬんだ」
 果たして、イオバード・ソーンがバリーを憎む理由とは何なのか?! イオバードはFLASHに何を求めているのか?  ウェルズ博士が虚飾の仮面を捨て去り、物語はいよいよ<シーズン1>クライマックスへ! 次回――ゴ・リ・ラーーーッ!

◆第21話「グロッド」(「Grodd Lives」)◆
 「貴方にとっての親友は誰? 奥さん、お父さん、それとも幼なじみ? 親友には何かあれば最初に話したくなるし、 貴方の事なら何でも知ってて、いつも応援してくれる存在。もしそんな親友に秘密があったとしらどうする? しかも一つじゃない。 秘密だらけだったら? 直接問いただす? それとも黙ってる? どっちにしろ、今までと同じ関係は続けられない」
 OPナレーションから、圧倒的な面倒くささを発揮するアイリス。
 個人の思想としてはどうぞご勝手にですが、正ヒロインとしては、ホント辛い。
 そしてそんなアイリスの理屈に好感度の高い主要人物達が次々と殴られていくのが凄く辛い。
 前回、ウェルズ博士に拉致されたまま行方不明のエディを捜し回るバリーだが、街では連続金塊強盗が出現。金塊保管所が襲撃され、 重武装の犯人に立ち向かうFLASHだが、突然、強烈な恐怖のイメージを受けて倒れ、犯人に逃げられてしまう。 ラボに戻って治療を受けるバリーは、不信感剥き出しで乗り込んできたアイリスと赤いスーツ姿でごたいめーん。
 やすやすとアイリスの侵入を許してしまうスターラボの面々が緩すぎますが、今回、 ウェルズ博士が消えた事で不本意ながらバランスを欠いてしまうヒーローチーム、というのが全体のスパイスとして機能。
 「怒ってるだろうね。相当……怒って当然だ」
 「怒ってるんじゃない。私。……でも、がっかりしてる」
 怒り心頭のアイリスをなだめようとするバリーだが、相変わらず《説得》スキルには1ポイントも割り振っていないので判定に失敗し、 ますます燃え上がるアイリス油田。
 「待って待って、まさか、パパも知ってたっていうの? パパが私に黙ってろって言ったの?」
 ハイ、概ね、その人が原因です。
 ラボを出て行ったアイリスに、今度はバリーから話を聞いたジョーが接触。
 「俺が…………間違ってたかもな。……いや、違う。間違ってた。おまえを守りたかったんだ」
 「その言い訳はもう、聞き飽きたわ」
 アイリスが絡むとジョーの人間性が急降下するので、この件に関しては弁解の余地は全く無いのですが、 デフォルトで人間性に問題のあるアイリスはアイリスで話が勢いで色恋沙汰に及ぶと「誰かが正直に話してくれてたら、 きっとエディは捕まってなかったわ。彼が私と付き合ってなかったら巻き込まれてなかったかもしれない」 とか口を滑らすので、すっごい地獄絵図。
 秋波をカットするだけカットしていたのは棚に上げ、バリーの気持ちに気付いていたならどうして教えてくれなかったのか、 と身勝手にキレるアイリスですが、そんな羞恥プレイに陥ったら、バリー、死ぬ。(2話連続2度目)
 個人的にここまでのアイリスへの好感度の積み上げが全く無いので、色眼鏡が入っている自覚はありますが、今回、 正ヒロインとしてのアイリスの存在をクローズアップしてその感情に焦点を当てれば当てるほど、 アイリスの「自分のプライドは大事」だけど「他人のプライドは尊重しない」面がさらけ出されて、阿鼻叫喚。
 「て事はおまえ、バリーの気持ちを知ってたら……」
 「言いたいのは、エディが捕まったのはパパのせい、て事よ」
 いっけんエディを心配しているようで、根本的な所では、ジョーのせいでルート選択を間違えなければエディなんて私の人生の眼中に無かった、 という宣言であり、心底酷い。
 今作の三角関係において何が酷いって、百歩譲って、アイリスがエディと同棲しつつもバリーを憎からず思い続けている、 というのを許容するにしても、そのアイリスがエディと付き合っている理由が「なんとなく……」以上に描写されない為、 「本当はバリーが好きだけど、現在はエディと付き合っていてこういう風に幸せ」――つまるところ、 アイリスにとってのエディの存在意味――にまつわる表現が限りなく薄く、話が進めば進むほど、 アイリスにとってのエディが「バリーの代用品」と化している事。
 勿論、アイリス×エディのカップル描写に時間を取っている余裕があまり無かったという事情はあるのでしょうが、 しかしそれをやらないとアイリスの印象が悪くなる一方なのは目に見えていたわけで、本当に今作、他が良く計算されているだけに、 アイリス周りだけ綺麗に抜け落ちているのが首を捻ります(^^;
 当のエディは博士によって監禁中で、居なくなって初めてわかる存在の大切さ、の代わりに、居なくなって初めてわかる「あいつ、 別にこの世界に要らなかったね」という、残酷すぎる扱い(涙) …………て、あー、ウェルズが前回言った「君は、 ただの保険にすぎない」というのはもしかして、状況次第でエディを次の容れ物にする、という事なのかなぁ……。
 アイリス問題はさておき、武装連続金塊強盗を確保するFLASHとジョーだったが、覆面の下の正体は、なんとエーリング大将!  二人はひとまずエーリングをパイプラインにぶち込むが(いや、表向き連続強盗事件の容疑者なのですが、 毎度の事ながらそんな気軽に拉致っていいのか)、エーリングはまるで人形のような反応を見せると、奇妙な事を口にする。
 「俺の……名前は……グロッド。俺を、恐れろ」
 グロッド、それは、かつてウェルズとエーリングが共同で進めていた、兵士の認知能力を高める研究――平たく言えば、 超能力兵士の作成――において実験材料にされていたゴリラの名。粒子加速器の爆発後にラボから行方不明になっていたグロッドは、 エーリングによる投薬とダークマター波の影響により、テレパシー能力を操るスーパーメタゴリラと化していたのだ!
 リバースによってさらわれ、姿を消してから3ヶ月…… グロッドの操り人形にされて現れたエーリングがこれみよがしに起こした事件の背後にウェルズの影を感じたバリー達は、 またも乗り込んできたアイリスからの情報提供(新聞社勤め、役に立つの巻)によって、 グロッドが潜んでいるかもしれない下水道の探索へ向かう。
 潜入した3人(バリー、ジョー、シスコ)を最初シルエットで見せて、護身用にか珍しくシスコが拳銃持ってる……? と思ったら、 画面明るくなったらバナナだったというのは面白かったです(笑)
 薄暗い下水道・壁に刻まれた文字・外部モニター映像、と正調サスペンス演出をたたみかけ、
 「『ジュラシック・パーク』を見てなかったら、ここまでビビる事はなかったのに」
 と、今回、みんなもっと映画ネタでツッコめよ! 基礎教養でしょ?! を繰り返していたシスコが、 必要以上に想像力の翼を広げない事も人生大事、となる小ネタも秀逸。
 一方、スターラボに残る女性陣。
 「あなたに嘘をついて、バリーは苦しんでたわ」
 「当然よ。……あなたも嘘をついた。婚約者の事」
 率直にケイトリンの立場では、アイリスにそんなデリケートな私事を話す必然性が全く無いので、 アイリスの自分本位がますます滲み出ます。
 「ロニーの事ね。……加速器が爆発した時に死んだと思ってたんだけど……ただ少し……燃えただけだった」
 さすがにばつの悪そうな表情になり、女同士で地雷を踏んだ事については反省しましたが。
 下水道では、グロッドの精神攻撃を受けてバリーが気絶、ジョーがさらわれてしまい、バリーを抱えてシスコが一時撤退 (鍛えているからお茶の子さいさい)。さっそくスターラボの面々に噛みつくアイリスが物凄く嫌な感じ。
 本来なら、ただでさえエディが行方不明な上にジョーまでゴリラにさらわれてパニック状態なので同情すべき余地がある、 という作劇なのですが、なにぶん本心ではエディの事がどうでもいいらしいのと、アイリスが口を滑らせるのは仕様の為、 ただただ嫌な感じです。
 「貴方の事を誰よりも知ってると思ってたのに、どうして黙ってたか。しかも人生が大きく変わるような事を。 貴方の事を親友だと思ってたのに、違ったの?」
 「もちろん親友だよ」
 「それならどうしてよ?! 大事な事こそ親友に話すべきなのに、なんで話してくれなかったの? なんで全部隠してたの?!  しかも、嘘までついて。そんなの酷いわ」
 アイリスは徹頭徹尾、「私は親友に対してそうする」ではなく、 「私が親友認定したおまえはそうすべき」と押しつけてくるのが悪質なわけですが、クライマックス直前になって、 アイリスの孕む毒がこれでもかと噴出してスターラボの床を赤黒く染めていきます。…………まあ、よくよく考えてみると、 アイリスの性格がここまで歪んだのって、家庭内に常に精神的奴隷(バリー)が居た影響はありそうなので、 責任の一端はバリーにあるような気もしますが。
 「だからわかってるって、全部僕のせいだ。でも君も、正直に話してない事があるだろ」
 そのバリーが追い詰められて自棄気味に色恋ネタを持ち出すと、それに対して口をつぐむアイリス、 という相変わらずの最低カップルぶり。君達! エディの事! ナチュラルに過去の思い出にするなよ!
 この間ずっと、暗い部屋で食事も与えられずに椅子に縛り付けられっぱなしという、可哀想なエディは、 「おまえは刑事としてもろくに出世しないし女も奪われるし、一族の落ちこぼれだ」と、未来を知るイオバードから煽られていた。
 「落ちこぼれだと? 俺が何したっていうんだ」
 「……エディー。そんな事聞くのか。どこから始めよう」
 ここの台詞回しが、最高でした(笑)
 「君は、ソーン一族の中で唯一歴史に残らない人物だ」
 ……うーん、だから、いざという時は成り代わっても歴史に与えるリスクが少ない、と考えると凄く不穏になってきたなぁ…………(^^;
 スターラボでは、シスコとケイトリンが超特急で仕上げた抗テレパシーヘッドセットをつけたFLASHが再出陣。 下水道に置いてきた装置から蒸気を噴出させ、誘導したグロッドに8.5kmマッハパンチを放つが、まさかの、 「ぬるいわ!」で受け止められてしまう! 連続パンチでもダメージを与えられず、 追い詰められたFLASHはヘッドセットを破壊されてテレパシー攻撃で行動不能に。地下鉄の線路に投げ飛ばされたFLASHに列車が迫るその時、 ラボからのアイリスの声がFLASHの正気を取り戻させ、なんとか回避に成功。
 チームの歯車が狂った所に現れる強敵、最大の窮地に陥ったヒーローをその正体を知ったヒロインが救う……と、 物凄く燃える展開の筈なのですが、肝心のヒロインへの好感度が地獄の第九圏辺りの為、心の針がピクリとも振れません。
 グロッドは別方向の電車と衝突して姿を消し、FLASHは無事にジョーを救い出すが、ウェルズの行方は杳として掴めないのであった……。
 グロッドが大きなダメージを負った事で(?)、マインドコントールの解けたエーリング大将は、パイプラインから解放。
 「ここはメタヒューマンを収容する場所だ。刑務所じゃない」
 て一応、そういう理屈で倫理観に言い訳していたのか。……そのまま受け止めると、 「メタヒューマンであるFLASHがメタヒューマンの人権を認めていない」という事であり、物凄い地雷なのですが、諸々考えると、 かなり意識的にやっているのかも。
 「……だけど報いは受けますよ。いつかね」
 「私の判断が間違っているとは思ってない。メタヒューマンの恐ろしさは見ただろう。こんな牢屋じゃ、足りない」
 当面はウェルズという共通の敵が居るから手は出さない、と言いつつも、FLASHの正体を知り、軍隊を動かせる、 という非常にややこしい人を解放してしまいましたが、これは、メタヒューマンと人類社会の関係、 という今後の物語展開への大きな布石でしょうか。
 ここ数話で強調されてきた要素を考えると、未来のFLASH/バリー・アレンは、“正義”の名の下に行きすぎたメタヒューマン狩りの先頭に立っていて、 リバースはその抵抗勢力、とかだったりするのかなぁ……。
 ところで、FLASHの正体よりも、民間人を拉致って私設刑務所にぶち込んでいる事 を知られた方が大問題な気はするのですが、もう一つの問題は、果たして、3ヶ月も無断欠勤していたエーリング大将は、 職場に机が残っているのか。
 意気揚々と「ひゃっはー! ゴリラ狩りだー!」の前に、軍法会議が待っていそうな予感。
 死の淵を除いたジョーは深く反省してアイリスと仲直りし、スターラボの愉快な仲間達も改めて結束。
 「3人なら何でもできる」
 「3人じゃない。4人居たわ」
 という台詞そのものは凄く良いし、通常なら、大きな変化が起き、 正体バレによって険悪な状態になった所から新たなチームの可能性が見える……という詰め具合に感心する所なのですが、 肝心のヒロインへの好感度がタルタロスの辺りを彷徨っている為、全く嬉しくなくてどうしたものか。
 改めて言葉をかわしたバリーとアイリスは更に距離を縮め、 着々と歴史から消し去られそうな雰囲気になってきたエディをとってつけたように心配するその姿に、 ばっちり生きていたグロッドが代理として怒りの咆哮を上げる――(ようにしか見えない)。
 そして、ドブに落ちた1円玉のような扱いのエディに嫌がらせを行いながら、一人何かの作業を続けていた気持ち悪い博士は、 真空管のような物を完成させる。
 「やっと…………鍵を手に入れた」
 アジトを出て、巨大な施設に隠された装置の中に、その管をはめ込む博士……て、あれここ、映像からするとパイプラインの中?
 「――うちに帰れる」
 で、つづく。
 長らく細かな伏線を張られていたグロッドが遂に本格登場し、8.5kmマッハパンチを片手で防御・連続マッハパンチのダメージ0・ 精神に直接恐怖攻撃・人間の行動を操作可能・電車に轢かれても大丈夫☆、と普通に出すと白けるレベルの強敵ぶりを披露。 あのジョーを恥も外聞もなく死の恐怖に怯えさせるなど、人間とは全くスペックの違う野生動物に、 高度な知性が備わったら強くないわけがない、というのをこれでもかと主張してくる、ゴリラフィーバーでした。
 さすがにフルCGのゴリラをぐりぐり動かすのには限度があったのか、直接対決の時間は少なめでしたが、 そこでエーリングを再利用してきたのも上手かったです。
 いよいよ残り2話で、次回――「ライバルの罠」(「Rogue Air」)。原題からすると、ここに来て、コールド回?  これだけ正ヒロインに不満がある上でなお、凄く面白いのですが、そろそろ、 物語的に<シーズン1>がどの辺りでぶった切られるのか不安になってきました(笑)

◆第22話「ライバルの罠」(「Rogue Air」)◆
 「つまり……連中を違法な闇刑務所から移すってわけだ。別の闇へ」
 ハリソン・ウェルズはずっと、パイプラインの内部に潜んでいた! 突如姿を見せたリバースはFLASHを嘲笑うかのように走り去って姿を消し、 エディーの救出に成功するバリー達。ところがウェルズが完成させていたエネルギー管により、壊れてた筈の粒子加速器が動きだし、 そのフルチャージまで後36時間……。このまま粒子加速器が再起動すれば、 パイプライン刑務所に閉じ込めているメタヒューマン達が消し炭になってしまう。拉致監禁は出来ても見殺しはできないバリー達は、 どうにかしてメタヒューマン達をオリバー(アロー)の私設刑務所に移送しようと考える。
 「あんな箱に閉じ込められる気持ちが、わかる?!」
 ウェルズが嫌がらせで解放していったテレポート女により珍しくケイトリンが物理的なダメージを被るのですが、 この件に関しては多少殴られるぐらいではまだ生ぬるいので、仕方ないと思います(^^;
 「だから俺は最初からこのやり方には反対だったんだ。連中を更生させて、また自由にしてやるんじゃなかったのか?」
 「そのつもりだけど……ちょっと、忙しくて」
 ウェルズ博士の圧倒的気持ち悪さが飛び抜けて目立ちますが、 スターラボの愉快な仲間達は多かれ少なかれマッドサイエンティスト気質なので、人倫に色々問題がある点が、 この最終盤に改めてクローズアップ。
 ……まあ、囚人が全員生きていたので、栄養は与えているようですが。
 ジョーを頼りに司法関係にそれとなく協力を求めるも、地方検事セシル(再登場)から
 「貴方がしている事は監禁だし、人の密輸なのよ。許される事じゃない」
 と、当然のように「頭に虫でもわいているのか」扱いで激怒され、ジョーの社会的地位と人間的信頼が大ピンチ。 というか警護の車列に関して「大統領が来ている事にすればいい」って発想が小学生レベルなのですが、考えたのは誰だ。
 切羽詰まったバリーはやむなくキャプテン・コールドに協力を求め、交換条件としてコールドにまつわる犯罪記録や証拠の一切を消し去り…… 完全に道を踏み外してしまうヒーロー。
 元々、前回のコールド回における、人を殺さずに犯罪を実行してみせるなら現状維持だ、という交渉もかなり危うかったのですが、 そこで埋めた地雷を、クライマックス手前で、物語全体の大問題と繋げて派手に爆破してくるという衝撃の展開。
 思えば、FLASHが過去に跳んで歴史を上書きした事で「Rogue Time」に辿り着いてしまったわけで、今回、 バリーが音速を越える勢いでヒーローとしての壁に顔面からぶつかる事になるのも、その揺り戻しの一貫ともいえるでしょうか。
 いよいよ移送の当日、スターラボ一行はコールド兄妹を護衛につけ、 昏睡させた囚人達をメタヒューマン無力化装置搭載のトラックに詰め込んで空港へと向かうが、 突然のエネルギー切れにより能力を取り戻した囚人達がトラックの荷台から飛び出してしまう!
 複数のメタヒューマンとの乱戦になり、サイク……目からビーム男は本編で見た記憶が無いのですが、 コラボ回の登場キャラとかでしょうか?
 毒ガスマンを先日覚えたスーパー腕ぐるぐるで撃退するFLASHだが、目からビームと天候操作によるサンダーフォールの連続攻撃に倒れ、 トドメを刺されそうになった所でしかし、ビーム男を灼き尽くす絶対零度の炎。
 「今夜は引き分けって事でどうだ?」
 「いい子にしてなきゃその顔を溶かすわよ」
 「ここで各自解散するとしよう」
 そのまま、メタヒューマン達を逃そうとするコールド兄妹。
 「俺達を逃がすのか? なんでそいつは撃った?」
 「金を貸してたんだ」
 と、ビーム男の扱いだけ酷いのですが、帰りに拾っていった感じでもなく、コールドガンが顔面直撃だったのでリタイアなのでしょうか。
 「……なんだ、礼でも言えってのか?」
 「礼が嫌いな奴はいない」
 「…………ありがとう」
 「いいんだ。礼には、及ばない」
 初期は“自称策士”みたいな所もあったコールドですが、今作にあまり居ない外連味のある悪役ポジションを確立し、 キャスティングの良さも合わせて出てくるごとに面白くなっていきます(笑)
 毒ガスマン、テレポート女、気象使い、バーサーク男、の4人のメタヒューマンが野に放たれ、 コールドは落雷のダメージにピクピクしているFLASHを嘲笑う。
 「約束した筈だ」
 「ははははっ、確かにしたなぁ。だが気付いた。俺は犯罪者で、嘘つきで、人を傷つけ、強奪もする。俺に何を期待してたんだ?  改心か? 優位に立てる、いいチャンスが来たと思ったんで、乗っただけだ。おまえが今、 腹を立てている相手は俺じゃない。おまえ自身だ。バリー」
 「ならなぜ僕を殺さない?」
 「――今回は貸しにしといてやるよ。じゃあせいぜい、頑張れ。どんな結末が待ってるか、見るのが楽しみだ」
 社会システムがその存在に対応していない、というやむを得ない事情はあったものの、 非合法活動に麻痺しつつあったスターラボがそのツケを払う事になり、誰かの命を救う為とはいえ独善的な正義に陥ったFLASHは、 自己保身をしながら法をねじ曲げるという間違った道を選んだ事で、完全失敗の末に悪役から過ちを突きつけられるという、 痛烈なしっぺ返し。
 シーズン1単体で見ると、ラスト手前でFLASHのこれまでのヒーロー活動を半ばリセットしてしまうという壮絶なちゃぶ台返しなのですが、 そもそもヒーローとしてずっと間違った事をしていたのかもしれない、という疑問がエピソードを通してFLASHに向けられており、 シーズン2へ向けての大きな布石……でしょうか?
 人治と法治とスーパーヒーローというかなり難しい所に踏み込んできていますが、巧く広げて着地させてくれると、非常に面白そう。
 「おまえはアローじゃない。バリー、おまえはそういうタイプじゃないんだ」
 憧れのオリバーのように、清濁併せのんで悪党も利用できると思っていた自分への過信を深く悔恨するバリーに対し、 だからあの緑覆面の真似しようとするのをいい加減やめろ、と指摘するジョー。お養父さんはバリーに甘いので、どちらかというと、 次回予告にちゃんと「よい子は真似しないでね!」と書いておけやアロー!と投書したい気持ちで一杯です。
 「……じゃあ、どういうタイプなの?」
 「犯罪者達の命も、大事に思ってやれるヒーローだ。たとえマードンや、ニンバス、ショーナが何をしたとしても、彼らは人間で、 ウェルズが彼らを駒にするのは、間違いだと知ってる。善悪の違いをちゃんとわかってて、その二つの境界線を、曖昧にはしない。 それがおまえなんだ。そこが、お前とアローとの違いだ。だから、二度と……ダークサイドに足を踏み入れるな」
 大分その人間の尊厳を踏みにじる行為に積極的に荷担していた気はしますが、これは、 シーズン2からはその問題にしっかりと向き合います、というある種のメタ宣言でもあるのでしょーか?(^^;
 これを機会にきっぱり考えを改めろ、というジョーからの叱責も入っているのでしょうが、 狙った地雷を爆破させた上で次に繋げてくる手並みは鮮やかで、この辺りの問題にどう向き合っていくのかは、気になってくる所。
 一方その頃、未来を教えられ、そもそもの最初からアイリスの気持ちがバリーにある事に薄々勘づいていた事を認めたエディは、 アイリスに別れを告げていた。
 「悪いけど…………俺を愛してるなら、終わりにしてくれ」
 ここ数話、どこからも切れないマジックカットのように無価値な存在として扱われていたエディですが、 恋愛問題でも一方的に敗者にされるのではなく、男の矜持を見せてエディの方から別れを切り出すという、せめてもの救済措置(^^;
 なお、私の未来は私は決めるし愛があれば運命だって変えられる、とか口にしているその女は前回、 バリーに迫られて好意を否定しなかった上でエディが見つかったらその後の事は保留、とか宣っていたので、現在、 本当に好きなのはバリーだけど、こんなエディを放っておけないから愛を貫く私って素敵!  とかいう悲劇のヒロイン気取りだと思われるので、どう転んでも別れるのが正解だと思います。
 しかしエディはこれだと、バリーとアイリスの関係をかき回すだけかき回した末に歴史的に存在意味のない塵芥、 という酷い扱いのままフェードアウトしそうな勢いなのですが、最終話やシーズン2でフォローは入るのか?! というか、 出番はあるのか……?! 博士の「保険」発言があるので、まだ何らかの要素を持っていると思われますが、 フェードアウトしないといいなぁ。
 もっと、男の友情も大事にしようよバリー!
 しかし遂に粒子加速器のチャージが完了し、堂々と正面からラボにやってきたウェルズと対峙するバリーもそれどころではなくなっていた。
 「君に私は倒せない」
 余裕たっぷりの博士だがその時、男の友情にはぞんざいだけどヒーローの連帯には熱心なバリーの応援要請を受けていたファイアストームとアローが駆けつける。
 「あんたが幾ら速くても、同時に僕ら3人とは戦えない」
 「そうかな? ……断言しよう。きっと、楽しい時間になる」
 3人のヒーローとリバースが激突し、 だからお前遭遇予想地点にトラップを仕掛けておけと何回メールを送ったらわかるの後いきなりハイスピード殴り合いに突入されると支援攻撃出来ないんだよていうかうちから送った飛行機墜落したってどういう事なのか正座して説明しろみたいな感じになっているアロー先輩だったが、 危うく寿命を縮められそうになった所をFLASHに助けられたので、頭も丸めたし広い心で色々と許してくれそうな感じです。
 足を止めての格闘戦でも強さを発揮するリバースに苦戦する3人だったが、ファイアストームとFLASHの連携により、 高速移動でも回避不能な落下ダメージを与えると、よい子は真似しちゃいけないスタンアロー攻撃で遂にその身柄を確保。
 色々と忙しいのでしょうが、リバースを気絶させた途端に、そそくさと帰っていく助っ人2人がなんか面白い(笑)
 シーズン1の集大成という事でか、『アロー』世界やコラボネタの固有名詞を色々と出しつつ、 明らかにレベルが上の相手をヒーロー協力で撃破。その為、FLASHとリバース、因縁の決着という意味合いがやや薄まってしまったのと、 最後のやり取りなどのコラボ要素の押し出しが色々わざとらしくなってしまったのは少々気になりましたが、 これをラスト1話前に持ってきた事で、最終回はフラッシュvsリバースの要素に集中してくれる事を期待。好きなキャラなので、 アローだけでなくファイアストームも参戦してくれたのは嬉しかったです。
 シーズン1のまとめに入りつつ、かなり明確にシーズン2へ向けた要素が盛り込まれてきましたが、まずはとにかく、次回、 シーズン1最終回――手に入れたスピードの向こう側で、バリー・アレンは真実に追いつく事が出来るのか?!
 走れ、バリー、走れ!!

◆第23話「過去との決別」(「Fast Enough」)◆
 「いつか母さんを殺した犯人を見つけて、父さんの無実を必ず証明してみせる。――今日がその日だ」
 ロニーはさくっと帰っていなくてホッとしました(笑)
 そして、かなり好きなキャラであるシュタイン教授が大活躍で嬉しい。まあこれも、新ドラマの関係はあるのでしょうが、 なんでもかんでもシスコが理解してしまうより、教授が解説する方が説得力も増しましたし。
 それにしてもファイアストームは前回ラストで、リバースが倒れた途端に「じゃ、録画したドラマがあるから」 みたいなノリでフラッシュの肩を叩いて画面外へ走っていっていたのですが、アローに釣られて帰りそうになって、 途中で引き返してきたのか。
 そんなアローとファイアストームの協力もあり、遂に母の仇であり父の冤罪の原因でもある、 ハリソン・ウェルズ/リバース・フラッシュ/イオバード・ソーン、をパイプライン刑務所に閉じ込める事に成功したバリー・アレン/フラッシュは、 ガラス越しにご対面。
 この“ガラス越しの対面”というのが、バリーと実父ヘンリーとの関係性になぞらえているように見えるのは、なかなか面白い。
 そして――最後まで最高に気持ち悪い博士による、最終回、怒濤のスーパーどん引きタイムが今始まる!
 「手ぶらか? ビッグベリーバーガーは? この時代の唯一の楽しみだった」
 早速、もうこいつ、泣いたり笑ったり出来なくなるまで殴りたい、という顔になるバリーだが、自制して話を進め、 イオバードが136年後の生まれであるなど、色々一気に種明かし。
 「ある未来で、我々は、敵となる。ライバル、宿敵、逆の存在だ」
 「どうして? なんで敵になるんだ?」
 「どうでもいいさ。……もう、今となってはな」
 未来での両者の関係は濁されるのですが、バリーは自分(?)が、推定約180年後の世界でもヒーローやっている事に、 もう少しツッコめ(笑) まあ、2024年のクライシス消失とか間にありますし、時空を越えたり吹っ飛んだりに関しては、 もはや何でもアリではありますが。
 同レベルの能力を持った存在による決定打の無い互角の戦いが続く中、フラッシュの真の名を知ったリバースは、 過去のバリー・アレンを殺す事でフラッシュを倒そうとタイムトラベルを敢行するが、 同じく過去へタイムトラベルしたフラッシュの妨害を受け、作戦失敗。そこで一計を案じたリバースは、 幼いバリーに重いトラウマを与える事で、フラッシュになる可能性の芽を摘もうと、ノラを刺殺。わざわざナイフでノラを刺し殺したのは、 嫌がらせの一貫であった。
 だがその後、未来へ帰ろうとしたリバースは、タイムトラベルの影響?で体内のスピードフォースを失ってしまい、 時の虜囚となってしまう。
 「自分が居た時代に戻る、唯一の方法は……フラッシュだった。だがもうフラッシュは誕生しない。だから――作り上げた」
 「……僕を訓練したり、大勢の命を救う手助けをしたのはどうしてだ」
 「速くなってもらう必要があったからだっ。超高速で、おまえが走って、時空間バリアを破り安定したワームホールを開けられたら、 それを通って、私は帰れる!」
 かくしてリバースは、自分の世界へ帰る為に自分の仇敵を育成しなくてはならない、という厄介な因果に巻き込まれ、 ハリソン・ウェルズに成り代わると粒子加速器を作成。意図的に事故を引き起こす事でダークマター波をばらまき、 人為的にメタヒューマンを生み出すとバリー・アレンをフラッシュとして鍛え上げたのだった。
 「おまえになんか協力しない」
 「するさ。バリー・アレン、私に協力すれば……――君の願いはかなう。過去に戻って母親を助けられる。 父親も刑務所に入れられる事はない。そして、君は家族と幸せに暮らせる」
 「……嘘だ。そんなの信じない」
 ニヤリと笑う博士に激昂して、ガラス戸を叩くバリー。
 「今すぐお前を殺したい」
 「気持ちはわかる。私も君を見る度に怒りを感じてた。だが、今は……ジョーやヘンリーと、同じ気持ちだ。 ……君を誇らしく思う。息子のようにね」
 ひぃーーーーーーーーーーーーーー。
 「やめろ! そんな事は二度と、僕に言うんじゃない!」
 「怒るのは当然だ。だが私はチャンスを与えてる。私が台無しにした、君の人生をやり直すチャンスだ。ものにしたくはないか?」
 前回ラストで意外とあっさり倒れたリバースには何か裏があるのかと思ったら、閉じ込められた上でなお余裕たっぷりで、 物語当初からの、バリー個人の最大の目的を天秤の片方に乗せて取引を持ちかけてくる、という少々意外な展開。
 いや、博士としては充分筋が通っているのでしょうが、最終回はもっと派手に展開するものと思い込んでいたので、 8割方会話シーンで展開する作劇はビックリでした。
 それが面白くないかといえばそんな事はなく、<シーズン1>集大成としてしっかり面白いですし、思えば前回、 キャストもアクション(演出効果)も心配になるぐらい山盛りだったのは、最終回がこういう作りになるからだったのか、と納得。
 「滅多にないチャンスだ。間違った過去を正すとはな。それに、母親も助けられる。ウェルズはなかなかのパラドックスを提示してきな」
 だがそれには、15年分の出来事が変わるリスクをともなう。
 「今とは全く違う人生になるが、君がその事を知る事は、決してない。前の人生の事は忘れてる」
 「……こういう事? 母さんは殺されないし、父さんも捕まらないけど……ジョー達と暮らす事もない」
 「俺と会う事もないかも。ケイトリンとも。ロニーとも」
 「そうだな。君の人生がどうなってしまうか、やってみないとわからない」
 「……迷う事は無い。やるしかないだろ。過去を変えるんだ」
 心の揺れるバリーの背中を押すジョー。
 「お前が、両親と暮らせるチャンスだ。母親も側に居てくれる」
 「でも、父親が側に居なくなる」
 「父親は居るさ。本物のな。ウェルズは、俺達の人生を弄んだ。お前がフラッシュになったのは、この状況を、収拾する為だ。 この1年でおまえは何人も助けた。今度は、自分を助ける番だ」
 迷えるバリーは、刑務所で実父にも相談するが……
 「駄目だ。……やるんじゃない」
 ヘンリーはハッキリと、過去を変えようとする試みを制止する。
 「だけど、母さんを、助けられる」
 「リスクはあるだろう? 過去を変えた事で、おまえが変わったら、どうする?」
 「変わったっていい」
 「駄目だ」
 ここでバリーが言葉に詰まるのが凄くいい。
 「私は、本当に、嬉しいんだ。お前がこんなにも、素晴らしい存在になって。これからも、そうあり続けるだろう。 フラッシュとしてだけではなく、バリーとしてもだ。誠実で、優しくて……いつもヒーローだった。母さんも、誇りに思ってる筈だ。 もし母さんがここに居たら、きっと止めてる。今の特別な貴方が少しでも変わってしまうなら、私を助けないで頂戴って、そう、言う筈だ」
 父の言葉に、男泣きにくれるバリー。
 「バリー、お前に望むのは……父親が、息子に、何よりも望む事だ。いつか、お前にも、父親になってほしい。それだけだ。 そうすれば、理解できる。……私がお前の事を、どれだけ、愛してるか」
 歴史改変要素が入った所で、過去を変えられる力を得た者が、それを変えない事で“今の自分”を肯定する、 というのは定番のテーゼでありますが、とかく自己否定の傾向が強かったバリーが、フラッシュとなり、仲間を得、人々を助け、 自分自身を少しずつ受け入れられるようになっていき、アイリスの件を除けば見ていて好感度も高い、そんな23話分の積み重ねの末に、 改めて父親から、「今のお前が最高なんだ」と肯定される、というのは美しく決まりました。
 バリーは認められ、そして、変えなくてもいいと許される。
 ここ数話、全く出番の無かったお父さんが最終話でしっかり、抑えるべき所を抑えてくれたのも良かったです。
 一方スターラボでは、ロニーがセントラルシティに残る事を決断し、ケイトリンに改めてプロポーズ。
 「最近はあいつが居るけど、俺には君が必要だ。じゃないと俺は、俺じゃない」
 気を遣っているのか準備に夢中で気付かないだけなのか、ガラス越しに隣の部屋でうろちょろしているシュタイン教授がおいしい(笑)  なおクライマックス手前で、そのシュタイン教授を司祭にして、晴れて二人は結婚。ED映像に使われていた指輪を渡すシーンは、 回想シーンの可能性も含めて誰と誰なのか気になっていたのですが、まさかのロニー&ケイトリンでした。
 父の言葉にますます悩めるバリーは、いつもの屋上でアイリスと遭遇。
 「……やるつもりなの?」
 「…………あまりに大きすぎて、わからない」
 お父さんの振り→ロニーのプロポーズ→過去を変えても私たち結婚するのかなぁという正直どうでもいい話、 と一つの要素をきっちり繋げてくるのは今作らしい話運びで、これがクライマックスにも効いてきます。
 「君とジョーと暮らして……最高の人生を送れたんだ」
 ここでバリーが、改めて、“今”を肯定してくれたのもまた良かった。
 「私もそうよ」
 「どうすればいいと思う? 誰かに教えてほしい」
 「……じゃあ教える。貴方はいつも人の事を優先してる。今は貴方の気持ちを考えて。自分の心に従うべきよ。 貴方がやるべき事をやればいいわ」
 ジョーもアイリスも、ヒーローとして多くの人を助けてきたバリーには見返りを得る権利がある、というスタンスなのですが 「いつも自分の事を優先して、自分の気持ちだけしか考えず、自分の心に従ってやりたい事をやる」って、凄く、アイリスの生き様デスネ。
 決意を固めたバリーは、再び博士の下へ……て誰だよ、ビッグベリーバーガー差し入れしたの?!
 「あ〜……来たか。予想が外れた。私の予想より1時間長く悩んでた」
 「まずは(殴りたい)、どういう(殴りたい)、プランなんだ(全力で加速つけて殴りたい)。おまえの、壮大な計画は」
 ウェルズは、再起動した粒子加速器の中で、フラッシュと陽子を衝突させる、という計画を明かす。
 「もし十分な速度で、君と粒子が、衝突すれば、それによって時空に、穴を開ける事が出来る筈だ。穴は別の時空に繋がっていて、 通ればここから、別の時空に行ける」
 「……ワームホールか」
 「つまり、君は過去に戻ってお母さんが亡くなった夜に行けるし、私はうちに帰ることが出来る。未来にだ」
 ワームホール発生の為にフラッシュに求められる十分な速度――Fast Enough――は、マッハ2。
 「お願いしたい事がある」
 「へえそう? 何しろって? みんなはどうか知らないけど、君が死ぬかもしれないのにお願いなんて絶対聞くもんか」
 「タイムマシンを作って」
 「……聞こうか」
 シスコが不機嫌なのには、両親を救いたいという気持ちはわかるけど俺達と君の友情が消滅するかもしれない可能性についてはどう思ってるわけ、 という部分も入っているのかと思うのですが、それはそれとして、未知の科学の誘惑にあっさり翻意してしまうのが、 どこまでもおいしい(笑)
 シスコとロニーは、スピードフォースを失い速度をコントロールできないウェルズの為のタイムマシン制作に取りかかり、 設計について博士に相談しに行くシスコ、リバーススーツの指輪圧縮技術が気になって仕方ないと、どこまでもブレない。
 「俺達もちょっとは使えた?」
 「勿論君には助けられてた。……ロニーにも。加速器を、作り直した時、君が居たら楽しいだろうなって、いつも考えてたよ」
 ひぃーーーーーー。
 「本当に言いたい事はないんだな?」
 「何言えって言うんだよ?!」
 「私に聞くな! 君なら少しは私の気持ちがわかるだろう。こんな野蛮な時代、私には、ふさわしくない。死人と暮らしてるようだ」
 立ち去るシスコを引き留めた博士が、設計図を放り投げて珍しくストレートに声を荒げ、さすがの博士も多少は、 この時代に共感してくれる相手が欲しかったという描写。まあそれも、博士の身勝手に過ぎないのですが。
 「俺を死人だと思ってるから、殺したってわけか」
 「…………今……なんて言った?」
 ウェルズにぐさっと殺された、上書きされた時間の記憶を告白するシスコ。
 「シスコ…………残念だ」
 シスコの話を聞いた博士は、シスコが別の時間軸の記憶を保持しているのは、ダークマター波の影響を受け、 揺れ動く時空間を見通す力を得た為だと指摘。
 「…………どうせそれも嘘だろ? ……違うね。……嘘だ」
 「怖がらなくてもいい。素晴らしくて、名誉な運命が、待ち受けてる。冒険の人生だ。 その冒険を君に与えたのが……誰だったか忘れないでくれ。愛を持って、君に与えた」
 ひぃーーーーーーーーーーー。
 今後使う予定があるのかどうかわかりませんが、シスコが上書きされた時間の記憶を持っていたのはかなり都合が良すぎたので、 そこに一応の理由付け。博士の「残念だ」発言と、「名誉な運命」「冒険の人生」が微妙に噛み合っていない気はするのですが、 これは翻訳のニュアンス問題なのか、揺らぎの影響を受けやすい時空ワープ体質とかになってしまって、 性格によっては楽しいけど平穏とは無縁な人生になってしまうという事なのか。
 どうしてまた、タイムマシンの素材がどうとかいう話に尺を割くのだろうと思ったのですが、今後への布石を置きつつ、 ウェルズを腐れ外道の極悪人だとは思いつつも、どこか親離れし切れないシスコの微妙な感情を拾ってくれたのは良かったです。
 その頃ラボのセンタールームでは、応援に駆り出されたやさぐれエディが、シュタイン教授と出会っていた。
 「念のため居るようにってジョーに言われたけど、邪魔なだけですね」
 「この世に邪魔な人間なんて居やしないさ。誰だって意味があって存在してる」
 「俺は違います。未来から来たウェルズが言ってたんだから、確かです。俺はヒーローにもなれないし、好きな女も取り逃がす」
 「どうして、彼を信じるんだ?」
 「2024年の新聞を見せられた」
 「私は、“最高のボス”って書いてあるマグカップを持ってるが、それを私のアシスタントに見せても信じてはくれないぞ」
 なんか違わね? という顔になりつつ、教授の話に耳を傾けるエディ。
 シュタイン教授は今回の非常に便利な解説キャラなのですが、それ以外の要素もしっかり持たせて物語の中に組み込んでくるのが、 手抜かりのない作りです。
 「今、ここでは最先端の科学で、タイムトラベルを実現しようとしている。だがそんな事よりソーンくん、君が、 最も興味深い研究対象かもしれん」
 「俺が?」
 教授は、イオバードが自身にとって7代前の曾曾曾曾曾祖父にあたるエディと同じ街で生活する羽目になった事、 フラッシュを育成する過程で共に事件に関わり、自身の存在を守る為にエディの命に注意を払わなければならなかった事など、 現在の極めてねじれて、微妙なバランスの上に成り立っている状況の中心近くに、実はエディが居る事を指摘。
 「つまり君は、君は、科学では作り出す事ができない、非常に珍しい現象なんだ」
 「現象?」
 え、俺もの扱い? 無意味な存在とどっちがマシ? という表情になるエディだが……
 「偶然だ。偶然は、科学じゃ、予測できない。ソーンくん、君はアノマリーだ。あー、いってみれば不確定要素だ。 普通じゃ知れない自分の未来を知っている。その運命を、変える事だって出来るんだ」
 そこに存在しているという事そのもの、の価値を教えられ、目を見開く。
 ジョーさえ救ってくれないエディにシュタイン教授が光をもたらすというまさかの展開ですが、 日常のほんのちょっとした物言いから学者トークに入った結果……というのが実においしい(笑)
 同時に、例えばジョーが科学バカ達と知り合って知見を得たり、バリーがエディにパンチの打ち方を教わったり、 境界を越えて人が繋がっていく事で思わぬ化学反応が発生する事がある、というのは、主人公バリーを中心に、 出会いによる変化を丁寧に描いてきた今作らしい展開。
 にしても最終盤のジョーは、幾ら優先順位が

アイリス>(アイガー北壁)>バリー>>>>>(時空の狭間)>>>>>エディ

 にしても、エディに対して酷いと思う。
 目から鱗が20枚ぐらい剥がれ落ち、やさぐれモードを脱したエディはアイリスの元を訪ると、 そもそもアイリスとの出会いが偶然の積み重ねであった事を語る。
 「偶然がどれだけ凄いか、ある人に教わった。で、考えた。俺達が一緒になるまで、幾つの偶然が重なったんだろうって。 最近……バリーの運命の事ばかり考えて、自分の運命の事を忘れてた。運命は君だ。アイリス・ウェスト。俺がしてきた事は、全部、 君に繋がってたんだ。――未来がなんだ」
 「未来が何よ」
 かくして、よりを戻す二人。エディに関しては、この先バリーに負ける事はあるかもしれないけど、 運命に屈して自分から白旗を振るよりは堂々と運命に挑みたい、というのはわかるのですが、アイリスは……まあ、 バリーが過去を変えるという事はイコール、“今のアイリス”より“過去の家族”を取るという事にはなるので、 後は成り行き任せなんでしょうけど。
 その頃、スターラボではタイムトラベルにより発生する問題点が見つかっていた。それは、 ワームホールの発生にともなって特異点――ブラックホール――が地上に誕生し、地球そのものが危険にさらされるという可能性。
 「少しのリスクはあるさ」
 面々に囲まれながら、モニター越しにしれっと言ってのけた博士は、これまで共に幾多の苦難を乗り越えてきたじゃないか、 と悪びれる事なく気持ち悪さを全開。
 「必ず君達の側に私が居た。私が20年近く考えてきた計画だ。成功する」
 その対策とは、ワームホールが開いてから特異点が発生するまでの1分52秒の間に、フラッシュが過去を変え、 現代へ戻ってきてワームホールを閉じる事。
 「約2分あれば、ノラを助ける事は出来る」
 「おまえをやっつける時間は無いけど」
 「どっちを取るかだ」
 「時間を過ぎたら?」
 「過ぎないさ。君を信じてる。いつも信じてきた。家族や友達は、私ほど君の事を信じてないのかな」
 ここで今作全体を貫く重要なキーワードでもある「信じる」を口にして、 自分を少しずつ信じる努力を続けてきたバリーのナイーブな部分に火であぶった毒蛾のナイフをぐさぐさ刺してくるウェルズ博士が、 最終回まで最高に気持ち悪くて最低で最高です。
 歴史のバタフライ効果という大きすぎて想定もしようがない不確定な事象ではなく、目に見える明確な危険の可能性に苦悩するバリー。 改めて決行の是非を問われたジョーも躊躇を見せ、バリーの背中を押したのは、自分の事を心配して躊躇わないようにという、 親としての強がりだったと白状する。
 「僕に出来ると思う? 僕に……母さんを助けられる? マッハ2なんて出せる?」
 「ああ。……出来るさ」
 だがその上で、ジョーもまた、バリー・アレンを全力で肯定する。
 「……今まで、ずっと母さんを助けて……父さんを自由にしたいって、思ってきた。…………それでもう一人の親を失うなんて」
 「バリー……」
 「いやジョー、これだけは伝えたい。あの事件で失ったものばかりに気を取られたけど、手に入れたものも、沢山あるんだ。 父さんは刑務所だけど、別の父さんが出来た。……ジョーだ。……また失いたくない」
 「俺はどこにも行かない。いいな絶対だ。いいな」
「……今ようやく、人生を生きてる気がするんだ。正直、母さんが死んでから前に進めなかった。色々な事を諦めてきた。今は違う。 僕を支えてくれる、仲間もできた。前に進んでる」
(第1話)
 そしてバリーも、歩き出した1年近くの成長により、足踏みしていたと感じていた時間を肯定できるようになり、 <シーズン1>の集大成として、二人の父親とのシーンは、いずれも素晴らしかったです。
 ケイトリンとロニーの結婚式を挟んで、いよいよタイムトラベルに臨むバリーは、ジョーと父子の抱擁をかわす。
 「じゃあね、父さん」
 「…………じゃあな息子」
 スーツを着込み、粒子加速器の円筒の中へ入ったフラッシュを、檻の中から見下ろすウェルズ。
 「バリー。我々の運命は君が握ってる。君なら必ず出来る。さあ……

 走れ、バリー、走れ!」

 これしか無いだろう、というフレーズが期待通りに決まって鳥肌ものでしたが、 この台詞を口にするのが因縁の仇というのが実に『FLASH』というか、ウェルズ博士あっての<シーズン1>だなぁとしみじみ。
 粒子加速器の中をぐるぐる走りながら加速していくフラッシュに、“いつも通りに”ウェルズ博士が声をかけるという構図がまた、 最高に気持ち悪くて凄い。
 「いいぞバリ−、その調子だ」
 遂にマッハ2に到達したフラッシュは、入射された陽子と衝突。ワームホールが発生し、15年前、あの晩のアレン家へと時空を跳躍して辿り着く。 だが、居間を覗き込んだフラッシュは子供バリーを救おうとしていた未来フラッシュと目が合って手振りで制止され…… 母親を助けない事を選ぶ。
 断腸の思いで母の死を受け入れたフラッシュは、リバースが去った後、瀕死の母親の前でマスクを外す。
 「私の父にそっくり」
 「……理解できないと思うけど、僕なんだ、母さん。バリーだ」
 今回、至る所でバリーが泣いているのですが、23話分の蓄積が効いており、胸に迫ります。
 「またここに来れたんだ。母さんの事…………安心させたくて。父さんも僕も大丈夫だ。僕も父さんも、母さん……大好きだ」
 そしてバリーは、絶命した母親の胸で泣きじゃくる……。
 一方現在――
 「そろそろハリソン・ウェルズとお別れの時間だな」
 ここでワームホールから謎の帽子?が転がり出てくるのですが、微妙にどこかで見たことあるような気もして、 アメコミネタの今後の布石でしょうか。
 「これはいったいなんだ?」
 「別れの合図だ」
 それにしても、スターラボは律儀にウェルズ用のタイムマシンを完成させてしまいましたが、 言ってしまえば壮大なマッチポンプであるウェルズの計画に全面的に荷担する事になっているわけで、タイムトラベルの方法だけ聞いて、 「僕は過去に行く。おまえはずっとここに居ろ」では駄目だったのか、というのはさすがに気になってしまう所。
 基本的には、リバースがノラを殺さなかった時間――正史――に戻す、というスタンスなのでしょうが、 バリーと両親の問題に焦点が集中しすぎて、リバースの扱いに関する葛藤が描かれなかったのは、不足を感じた部分です。
 もう少し書くと、メタヒューマンの実質的な人権無視と拉致監禁に関して、自分に言い訳をしながらの現状維持は出来ても、 ウェルズのように完全に改悛の余地が無い極悪人を一生飼い殺すだけの度胸と覚悟が無いのはバリーとスターラボの弱さ(無論これは、 人間として当たり前の弱さであり、それを乗り越えるには並外れた精神力を持つか、或いはどこか壊れるしかない)であり、 抗議はしても黙認するしかないジョーも、この弱さを抱えているといえます。
 そして今作は、“人間の弱さ”と丁寧に向き合う事で一貫しており、その弱さにつけ込んで他者を利用する腐れ外道にして、 奪われた全てを取り返す為と自己の権利を正当化しながら、その為に他の誰かの全てを奪える絶対悪こそが、 イオバード・ソーンであります。
 だからこそ――
 「帰れる……」
 博士の乗ったタイムマシンがワームホールに進入する寸前、 過去から戻ってきたフラッシュのパンチがタイムマシンを粉々に粉砕する!
 砕け散ったタイムマシンの部品を放り投げ、激昂するイオバード。
 「助けなかったのか? 何故! なぜだぁ?! おまえの望みがかなったのに。全てが手に入るのに、なぜ助けなかったんだぁ!!」
 「もう手に入れてる」
 確かにそれは、誰かの思惑で狂わされ、その敷いたレールに乗せられてきた人生だったのかもしれない……けれど、 それによって手に入れた物も、確かにこの手と心の中にある。ならばそれを捨てず、父の想いに応え、 今のままのヒーローである事を選んだフラッシュ/バリー・アレンは、弱さを乗り越え、悪の目論見を打ち砕く。
 ここでフラッシュがイオバードの帰還を阻止するのは、「僕は過去を変えない、 だからお前も一生この牢獄のままだ!」という覚悟の宣言とも思え、これが<シーズン2>でどう踏まえられるのかはわかりませんが、 <シーズン1>のラストが、ヒーローとしての新たなステップアップで締められる、というのも、 ヒーローの成長を丹念に積み上げてきた今作らしいかな、と。
 そう考えると、今作のかなり危うい部分に突っ込んで、悪との取引でヒーローが痛烈なしっぺ返しを受けるという第22話そのものが、 この最終回の為の大きな布石であったのかもしれません。
 「なら奪ってやる」
 イオバードはリバースへと転じ、因縁渦巻く粒子加速器の中で、激しくぶつかり合う赤い閃光と黄色い閃光。混乱の中、 ジェネレーターの停止によりワームホールは閉じられるも、フラッシュはリバース怒りのフラッシュ百烈拳に追い詰められてしまう。
 「ちゃんと伝えておこう。お前を殺した後で、あいつらを全員殺す。勿論お前の父親もな。勝つのはいつも私だ、フラァッシュ!!」
 殺意を込めた高速振動ハンドが振り下ろされようとしたその時、パイプラインに木霊する一発の銃声――。
 そこに立っていたのは、拳銃を手にワイシャツの胸を真っ赤に染めたエディ・ソーン。
 「エディ! 何してんだ?! どうして?! お前なんて事を?!」
 「偶然なんてあり得ないんだ……」
 偶然バリーの同僚で、偶然バリーの養父の相棒で、偶然バリーの思い人の恋人で、 偶然……偶然……偶然……それは、偶然そこに居たという、積み重なった運命の悪戯という名の必然。
 先祖であるエディが自らの命を絶った事により存在が揺らいでいくリバースは、力を失い、最後の最後で、 ウェルズからイオバードの顔に。
 「あいつは間違ってた。俺は……ヒーローになったんだ」
 「ええ、そうよエディ、あなたはヒーローよ」
 「それが俺の、夢だった。……君のヒーロー。ああ…… I Love ……アイ……リス」
 率直なところ、凡人が英雄になる為には死ぬしかないというテーゼは好きではないのですが、 さんざんイオバードから存在の無価値を吹き込まれたエディが、イオバードにとって自身の最大の存在価値を用いて一矢報い、 他者の人生や心を踏みにじり弄んできたイオバードが、その邪悪さ故に余計な事を口にしたのが原因で足下をすくわれる事になる、 というのは、納得はいく構図。
 また今作の大きなテーマでいうならば、エディが自死を選ぶ事によりリバースが消滅するというのは、 “個人の決断で運命を書き換えられる事”の、これ以上ない証左といえます。
 一つ面白いのは、自信たっぷりに見え、セクシーヒゲ系イケメンマッチョで、アイリスの恋人、 というバリーの対極に居るかのようだったエディが、失意を乗り越えて自己の存在の肯定に辿り着き、 バリーの軌跡をなぞるようにしてヒーローになる事で、今作の裏主人公として着地している事。
 同時に、エディがやった事は、少年バリーを殺す事でフラッシュの存在を歴史から消し去ろうとしたリバースと類似しており、 エディ・ソーンを通して間接的に、正義と悪が交錯する、という<シーズン1>の構造を凝縮した存在となって最期を迎える事になりました。
 ついでにもう一つ付け加えると、
「僕は知ってる。…………彼はヒーローだ」
「ヒーローになんてなって欲しくなかった。夫になって欲しかった」
(第3話)
 帰ってきたロニーがケイトリンの夫になったエピソードにおいて、くしくも同じ粒子加速器という舞台で、 エディがヒーローになって死ぬというのは、要素の重ねが好きな今作のスタッフだけに、意図的なものでしょうか。
 思えば今作の警察関係者は初期から死亡フラグを適度に所持していましたし、今回はロニーが、 がっつんがっつん死亡フラグを立てまくっていたので、ジョー、ロニー、それからシスコの揺り戻し分など、 エディは周辺キャラの死亡フラグを全てまとめて精算してくれたともいえるのか。
 後凄くどうでもいい話ですが、イオバードによるとエディは「一族で唯一歴史に残らなかった駄目人間」だそうですが、 それを額面通りに受け止めるなら(たぶん大げさに言っていると思いますが)、エディは息子も孫も歴史に残る人物になるわけで、 種牡馬(失敬)としては物凄く優秀だったのでは。……というか、外道ヒロインに引っかかって捨てられたショックで、 駄目人間になってしまったのでは。
 「君はずっと私にコントールされてた。私無しじゃ、生きていけないぞ。……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 エディの衝撃の決断に皆が呆然とする中、ハリソン・ウェルズ/リバース・フラッシュ/イオバード・ソーンは、 最後の最後までいやらしい捨て台詞を残して、遂に消滅。ところが、一度は閉じた筈のワームホールが再び拡大を始め、 特異点を生み出してしまう。バリー達は慌ててパイプラインから脱出し、エディの亡骸が特異点に吸い込まれていったのは、 使うか使うかわからない布石の類でしょうか。
 ……エディまで、超人になって戻ってくるとやりすぎな感はありますけど(^^;
 セントラルシティの上空に巨大な特異点が出現し、世間的にはこれはまた、スターラボやっちまった案件になるのか(笑)
 今回は、シュタイン教授の、社会的地位と名声が危ない!!
 ここで、空の異常を見上げる姿で、準レギュラークラスの人物がちらっとずつ登場するのですが、 キャプテン・コールドとシン警部の間に出てきた女性は、初めて見るような……セシル検事には見えないのですが、 私が覚えていないだけか、<シーズン2>のキャラなのか(※『レジェンド・オブ・トゥモロー』登場キャラの模様)。
 なお、〔コールド→?→シン警部→ヘンリー〕と登場する為、シン警部(新婚旅行帰り)が凄く重要人物みたいな扱い(笑)
 膨大なエネルギーの塊である特異点は周囲のビルなどを次々と吸い込んでいくが、このまま世界を崩壊させるわけにはいかない。
 「やるしかない!」
 巨大な特異点の中心へ向かって疾走していくフラッシュ……で、つ・づ・く!
 終わってないから、つづく!!
 ……実のところ、米国ドラマを第1話から最終話まできちっと見るのが初めてだったので、「おお、これが噂のえげつない引き……!」と、 ちょっと楽しかったです(笑) いや、冷静になると、えーーーなんですが、そういう物だと思って念入りに覚悟を決めてから見た事もあって、 体験としては楽しめてしまいました。
 あと、えげつない引きは引きでも、謎の狙撃でジョーが倒れて現場を怪しげに離れるシン警部とか、 刑務所で凄く悪い笑みを浮かべるお父さんとか、キャラクターを使っての引きでなかったのは良かったです(^^;
 今回、良い会話が多くて、大量の書き取りにより物凄く長くなってしまいましたが、<シーズン2>へ向けての引き要素、 謎のままの伏線、解決していない諸々、などはあるものの、今作のテーマとしてやるべき事はきちっとやり、 そう来なくてはという所はしっかり期待通りに収まって、<シーズン1>の集大成としては満足いく最終回でした。
 特に好きなのは、二人のお父さんとバリーのやり取り、これ以上なく決まった「走れ、バリー、走れ!」、そして「もう手に入れてる」。
 興味はあったものの、おっかなびっくり見始めた作品でしたが、作品構造の巧さ、ユーモア溢れる会話の面白さ、 キャラクターの好感度コントロールの鮮やかさ、締める所は締めるヒーロー物としての格好良さ、そして炸裂するスーパーどん引きタイム、 と出来の良さにがっつりはまり、非常に面白かったです。
 特に、最初から最後まで全力全開で気持ち悪かったウェルズ博士は、オールタイムベスト級の悪役(笑) もうホント、 最低すぎて最高でした。何度か書いていますが、インテリ系好青年役を得意とする宮本充を、 この博士にあてたというキャスティングの妙が実に素晴らしかったです。
 キャストで言うと、福山潤の、“普通の好青年”役の巧さも印象的。アニメ的なデフォルメや、 アクの強いキャラの印象がどうしても強いですが、吹き替えでこういう、さらっとした演技させてもピタッと作ってくるなーと、 改めて感心。
 <シーズン2>をどうするかは色々と検討してみようと思いますが、大変楽しい全23話でした。

(2016年11月23日)

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