ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『正義のシンボル コンドールマン』 感想の、まとめ1(1話〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
- ◆第1話「コンドールマン誕生」◆ (監督:松島稔 脚本:伊東恒久)
- ポップなメロディと明るい児童合唱で歌い上げられるOPの歌詞が川内康範節全開でいきなり超凶悪ですが、
「どこのどこのどこの誰から頼まれた 命を懸ける価値も無い それほど汚れた日本の」
を少しマイルドにすると、
「自分だけ可愛いなら やがて終わるこの世界 育まれ生きる輩ども この大地を傷つける」
で、今更ですが、ゴセイナイトって、コンドールマン+ジャンパーソンだったのか。
ナレーション「今、地球は、その星に住む一部の人間達によって汚され続けている。光は陰り、大地は砕かれ、そして海は死んだ。 これらは全て自分の利益だけを求める、人間達の仕業であった。そして、その人間の醜い欲望から、モンスター一族が生まれ出た」
ニューヨーク摩天楼の一室、大魔王キングモンスターの元に集うモンスター一族は、人類征服作戦を開始。
「我々は人類を征服する。だが、その前に思う存分痛めつけ、苦しめなければ楽しみがない」
欲望の権化たるモンスター達は、世界の不公平を進める事でアフリカの飢餓の原因なども作っていると語られ、 アジアの重要ポイントである日本を標的とした作戦を活発化させる……。
比喩があまり比喩になっていないというかする気も無いというか、かなり直截的に現実の社会問題をなぞらえているモンスター一族ですが、 シリアスな作風の中で一族同士が「ハールマゲドン」という挨拶をかわすのが、正統派悪の秘密結社やっていて、妙に面白ポイント。
その頃、暗殺された国連事務局次長の仇討ちの為に決死の追跡行に身を投じていた青年・三矢一心は、謎の老師タバと共に、 殺し屋をネバダ州の死の谷に追い詰めていた。だが、あと一歩の所で殺し屋は裏で糸を引いていたモンスター一族の手により、 口封じの為に新型爆弾によって抹殺されてしまう。辛うじて生き延びた一心は、爆発で傷を負った古代ムー帝国の守り神、 幻の怪鳥・ドラゴンコンドル(見た目は麒麟)を発見。
……え、ここ、ネバダ州だったのでは(笑)
一切全く説明ないまま同行している見るからに怪しい老人タバも、この後唐突にナレーションで「古代ムーの呪術者」と紹介され、 アメリカ大陸は、アトランティス大陸だったのか?!
モンスター刺客の追撃からドラゴンコンドルを守るも、身を挺してその卵をかばった事で、戦闘機の銃弾に倒れてしまう一心。
「残念だ……このままで死にたくない。初めて巨大な悪の一部を見たというのに、このまま何もしないで死ぬなんて。 タバ…………残念だ……」
Aパートで衝撃の死亡。
一心が守り抜いた卵からはゴールデンコンドルが生まれ、その命を懸けた勇気に報いる為、 一心の故郷である日本に恩返しをしたいというドラゴンコンドルの最期のメッセージを受け取ったタバは、呪術を開始。
ナレーション「タバは今、三矢一心の遺骨の一部を、祈りを込めて投じた」
……え、死体、損壊した?
70年代だと、一度死んだ主人公が一種の転生をしてヒーローになる、という事自体はそれほど珍しくないと思えますが、 さらりと衝撃の展開が続きます。
そして――炎の中から誕生する、白タイツ。
「タバ、私の誕生に力を貸してくれてありがとう」
ナレーション「ここに誕生したコンドールマンとは、三矢一心の愛と正義の心、ドラゴンコンドルの鋼の体、 ゴールデンコンドルの飽くなき闘志が、三位一体となった、正義を守る超人である」
ゴールデンコンドルが炎の中に突っ込むのはフェニックス(再生)のイメージが入っているのでしょうが、 一方で「甦った」という表現は使われず、果たしてコンドールマンに、一心の意志(意識)がどれぐらい残っているのかは、 気になるところ。あくまで三位一体の人知を越えた超人が誕生したというのなら、記憶はあっても一心とは別の存在ぽいですが。
通してテンポの速い展開の中、国連事務局次長を日本に呼ぶ行動力、その仇討ちの為に殺し屋を追い詰める義侠心と正義感、 怪鳥の卵を守ろうとする勇気を持ち合わせた、ヒーローにふさわしい好漢、という主人公の見せ方は秀逸で、二枚目度も高いだけに、 これからどういう扱いになっていくのかは気になる所です。
移り変わって舞台は日本――モンスター一族の策謀により砂糖が買い占められ、日本全国から姿を消す砂糖や甘味嗜好品。
「一心、わかったぜ。俺は今日から、おまえの志を継がせてもらうぞ」
食料品店を経営する一心の父・源太郎は、遺影に手を合わせた際に(どうやら、家族には死去が伝えられている模様)聞いた気がした、 「(食糧危機が来た時に)同じ日本人同士が争い合うような事だけはしたくない。その為なら、 俺は何でもする覚悟だ」という息子の言葉に突き動かされると、砂糖買い占めを行う金満商事の倉庫に丁稚の石松と共に潜入。
……善良そうな小売店の中年店主が、一瞬で、理想の為なら過程の是非を問わない活動家になったゾ(笑)
倉庫で発見した大量の砂糖の存在を世間に暴露しようとする源太郎と石松だが、モンスター一族の手先に捕まり、消されそうに。
「品不足を苦に食料品店主が自殺。ははは。毎日どっかでやってる事だ」
口封じの為の抹殺手段が列車による轢死、という社会派路線が非常にエグい(^^;
あわやバラバラ轢断死体寸前のその時、列車のポイントを切り替えるコンドルの羽!
「何者だ?!」
「やめろモンスター! 正義を守るコンドールマンだ。人間の皮をかぶったモンスターども。 太陽の神に代わって打ち砕いてやる!」
颯爽と登場したコンドールマンがコンドール・アイ!を使うとモンスター達が正体を現すのですが、 「人間の皮を被ったモンスターども」という言葉がどこまでもストレートに、 本当の悪はTVの中の奇想天外な怪物ではなく、TVの向こう側に人間の皮をかぶって存在しているのだ! と痛烈に突きつけてきます。
アクションはかなりスピーディに展開し、両脇の戦闘員の背中を支えにくるりと後方一回転し、後方の敵を蹴り飛ばすなどは、 今見ても十分な格好良さ。1970年に結成されたJAC初の単独アクション担当作品にして金田治と山岡淳二がマッチアップする 『ロボット刑事』(1973)が、後半かなり格闘アクション面で充実してくるのですが、今作、技斗に金田治さんの名前があり、 その流れでしょうか。
毒液攻撃を仕掛けてくるモンスター怪人は、コンドール・ハリケーンで吹き飛ばすと、体内の毒を噴き出して死亡。 救出した二人の無事を喜ぶコンドールマンだったが、その背後に新たなモンスターが迫る! で、つづく。
ナレーション「善良な人々が気付かないうちに、モンスター一族の悪巧みは進む。コンドールマンの使命は重い。だが、今この瞬間、 コンドールマンの運命は?!」
- ◆第2話「吸血モンスターの挑戦」◆ (監督:松島稔 脚本:伊東恒久)
- コンドールマンはモンスターの火炎攻撃を防御技フェザーカーテンでからくも防ぎ、 モンスター達は倉庫から砂糖を運び出すと時限爆弾を仕掛けて帰宅。そうとは知らずに再び倉庫に乗り込んだ源太郎達は、 開始3分で今回は爆死しそうになるが、黄色い車で駆けつけたコンドールマンによって救出される。
命の恩人とはいえ謎の白タイツを平然と受け入れる源太郎の懐が日本海溝なみに深いのですが、 一方のコンドールマンは源太郎に対して全く反応を見せず、もしや、一心の記憶も無いのか……?
なお、「一心の遺体は俺がこの目で確かめた」という台詞が源太郎にあり、やはり老師、死体の一部を損壊して火にくべた疑惑(^^;
なにぶんムーの呪術者なのでタブーに対する感覚も違うのでしょうが、前回今回で作品としてはここが一番衝撃的 (コンドールマン誕生の経緯が不死鳥を想起させる事を考えると、本来は「遺灰」としたかったのが、今回と明確な矛盾を避ける為に 「遺骨の一部」という曖昧な表現にされた可能性はありそうですが)。
モンスター一族の次なる一手により今度は市場から肉と魚が消え失せ、前回今回と、好きな物を食べられなくて子供が悲しむ姿を描き、 社会問題を身近で共感しやすい表現にも落とし込んでいるのは手堅く巧い。
人間としては一心の姿を取るコンドールマンは、モンスター捜索中に弟分であった丁稚の石松と、 源太郎の孫娘のまこと(一心の姉の娘)と出会うが、「俺は君を知らん。人違いだ」と無造作に振り払い、すがりつかれても無表情で、 一心としての記憶は存在しない事が明確に。
「違う。一心お兄ちゃんじゃない」
なにかを敏感に感じ取った少女の言葉に、肉親を失った事情を知ると、にこやかに目線を合わせる一心。石松には冷たいけど、 子供には優しさを見せるのが素敵(笑)
「君は?」
「三矢まこと」
「三矢……」
果たしてその名前に聞き覚えがあったのか無かったのか、二人に連れられた一心は三矢家を訪れる……
ナレーション「三矢家の人々の驚きは、コンドールマンにさえも痛々しく感じられた。我が子と瓜二つの人間が、 まったく別人であろうとは。家族、とりわけ母親・民子にとっては、この上もない残酷な事実であった」
死んだと思われていた主人公の家族との再会が描かれるが、しかし主人公は全く別の存在に成り果てており、 そこに生まれる感情は肉親としての親愛ではなく、他人ゆえの「痛々しさ」であるという、非常に痛切な展開。
一心が実に好青年然とした爽やかな二枚目なので、その真摯さと笑顔が悲劇に拍車をかけます。
「おじさんおばさん、僕には父も母もいません。まだ日本へも来たばかりで。でも……こうして親切にしていただいて、嬉しく思います」
「あたし達お友達よ!」
「うん。もし御迷惑でなかったら、時々寄らせて下さい。お世話してもらったアパートの近くですし」
一心は倒れた民子を気遣い、まるで本物の一心が戻ってきたように喜ぶ三矢家の人々……精一杯の歩み寄りを見せるコンドールマンですが、 これはどうやら、一心を素体にした記憶すら無いのか……?
仮にその記憶があれば、そもそも三矢家に来ないか、来たら来たで一心の遺影に対して思うところありそうですがそんな素振りは微塵も見せませんし、 もし、そこはわかっている上でこうまで平静に別人であると断言しているなら、それはそれで、その精神がまさに異形。
どちらに転んでも、人間の感情は理解できてもやはり人間ではなく、 しかし死んだ青年の恩義に報いる為に「どこの誰にも頼まれていない」のに、「命を懸ける価値も無い」者達の為に戦う、 という凄まじいヒーロー像です。
そうであるからこそ、太陽の神に代わって欲望から生まれた悪徳を打ち砕く、正義のシンボルとなれるのでありましょうが。
(暖かい人達……あの人達がかりそめにも不幸な目に遭うような事があってはならない。その為にも、モンスター一族を倒さなくては)
街では肉と魚の買い占めが続いて店頭から姿を消し、人々は缶詰を買い求めに殺到。 第一次オイルショック(1973)の記憶も鮮やかな頃でしょうが、これといってコミカルにせず、 人間の欲望を炙り出すシーンは非常にストレートな表現。
今度こそ金満商事の尻尾を掴もうと探りを入れる源太郎達だが、それが原因で直接襲撃を受けてしまう三矢食料品店。 チンピラ(モンスター戦闘員)による実力行使のみならず、肉や魚の買い占め犯人呼ばわりして大衆煽動のおまけをつけるのが、 実に脂っこくて、天丼の上にカツ丼が特盛りです。
また、主人公が(あの人達がかりそめにも不幸な目に遭うような事があってはならない)と決意した直後に一家が袋だたきに遭う、 という展開は、どんなに力と志があっても全ての社会悪には抗しきれない、というヒーロー個人の限界を第2話にしてえぐり出してしまい、 天丼の上のカツ丼の上に中華丼まで特盛りです。
鳥たちの声?から助けを求めるまことの叫びを知った一心は変身を初披露。コンドールマンが真の姿だとすると、 普段は一心に「化身」している、というのがふさわしいのでしょうが。
近くのアパートを世話してもらった筈なのに、黄色い車でえらく遠回りして、 食料品店を見下ろす道路に回り込んで駆けつけるコンドールマンですが、片足を車体に、 前に踏み出したもう片足をガードレールに乗せて眼下を見下ろすという、立ち方が滅茶苦茶格好いい。
コンドールアイ!によってモンスター一族はけっこうな衆人環視の中で正体をさらすと、波止場に移動して戦闘に。 モンスターの炎攻撃に苦戦するコンドールマンだが、懐に入って火炎放射フォークを破壊すると、続けて繰り出される飛び道具もかわし、 最後はマントで敵の視界を奪ってからの跳び蹴りを炸裂させると怪人は丸焼きになって死亡。
だが日本餓死作戦を主導するサタンガメツクは、石松とまことを人質に取り、処刑台にかけられるコンドールマン。 あわや銃殺の危機! と今回もクリフハンガー形式で、つづく。
ちょっと面白かったポイントは、上司に作戦の進行をせっつかれ、通信が切れた途端に酒をグラスに注ぐサタンガメツク(笑) 人間の欲望から生まれただけあって、実に人間くさい。
- ◆第3話「殺しが命ダンガンマー」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:伊東恒久)
- この時期は小学生でもぐりぐり頭を踏みに行くのがホント凄いですね。
「開けコンドールマン!」
ベルトが火を噴いた! 煙幕吐いた!!
銃殺危機一髪、磔から脱出に成功したコンドールマンは石松とまことを助け、サタンガメツクと痛み分け。 ガメツクの毒を浄める為に綺麗な水を求めるが都市部の河川は水質汚染が激しく、山奥へと向かう事に。
一方、コンドールマンに受けた傷を治療中のガメツクは、果物と野菜の買い占め強化を配下の怪人ダンガンマーに指示。
「ちょっとお待ち下さい」
本気で嫌がられる(笑)
殺し以外の仕事なんて嫌だ! とアップで熱弁を振るう殺し屋が凄く面白いのですが、 弾丸のモンスターなので殺しの欲望を満たす事しか考えていない、という事でしょうか。なお正体の、 弾丸をモチーフにデザインが割と秀逸。
ちょっと撃ってもいいから、と社長に丸め込まれた弾丸マンは農家に直接野菜を求める市民達を猟銃で追い散らし、 戦闘員に一心姉が手に入れたミカンを奪わせ、挙げ句、姉がやっとの思いで持ち帰ったミカンを銃撃。
家に上がり込んでミカンを撃つ殺し屋の姿はギャグなのですが、日本人飢え死に作戦も3話目に入って事態は深刻化の一途を辿っており、 たった一個のミカンを食べる事すら殺意の対象にされてしまう、というのが今作の恐ろしい所。
ミカンの勢いで皆殺しにされそうになる一家だが、すんでの所で駆けつけるコンドールマン。
「ダンガンマー、子供達を苦しめた報いだ。地獄へ落ちろ!」
直球の死刑宣告から戦闘になり、きりもみ回転反動3段蹴り、という派手な必殺キックで吹っ飛んだダンガンマーは大爆死。 毎回クリフハンガー形式は大変だったのか、今回はそのまま大団円。
コンドールマンは太陽エネルギーで活動している、変身ではなく「化身」と呼称、転心術で鳥に心を乗り移らせる事が出来る、 黄色い車はマッハコンドル号、太陽エネルギーで走るからエコだ! と、随所に挟まれる設定の説明が多く、 全体的にテンポ悪かったのが残念。
また、凄く太陽に吠えそうな濃い顔の義兄(一心姉の夫で、まことの父)が登場し、職業は新聞記者と判明。 社会悪としてのモンスター一族に立ち向かう、正義のジャーナリスト魂の持ち主、という立ち位置になりそう。
- ◆第4話「輝け!ゴールデンコンドル」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:伊東恒久)
- 見所は、弾丸が勿体ない、と自ら米屋の店主をくびり殺すサタンガメツク。店舗丸ごと10円で買い上げようとしたり、そろそろ、 金満商事の経営が苦しいのか。
砂糖に始まり、肉・魚・野菜・果物と進行してきた日本人飢え死に計画はとうとう米・麦へと及び、 戦中戦後の食糧難へのなぞらえが直球なのですが、一つの大がかりなプロジェクトを数話かけて展開し、 着々と人々の生活が苦しくなっているという描写が、恐ろしいと同時に、構成として面白い。
「ダンガンマーの残した、特別製の黄金の弾丸。ただで黄金をやるのは惜しいが、コンドールマンの命と引き替えならやむをえん」
ガメツクを追い続けるコンドールマンは遂に金満商事の会議室に直接乗り込み、 隠しスイッチが押されると額縁の後ろに隠された機関銃が火を噴くという仕掛けがお洒落。 コンドールマンに戦闘員を蹴散らされたガメツクは命乞いをするフリで時間を稼ぐと、腹の口から伸ばした手でまたも隠しスイッチを押し、 机が銃撃、念力ビームで反撃するコンドールマン、と冒頭からスピーディなバトルが展開。
隠し扉を強引に頭突きで破壊しながらガメツクを追い詰めるコンドールマンだったが後一歩で姿を見失ってしまった上に、 胸に突き刺さった黄金の弾丸により、あと1時間で爆発してしまう体に。
いつ弾丸を喰らったのかよくわからなかったのですが、見返したら机に撃たれた時に軽く胸を押さえていました。 まるで痛がらずに反撃するので、念力で防御したものとばかり。
魔神コンバット部隊に追われながら、弾丸による継続ダメージに倒れてしまったコンドールマンは、 「もう駄目だ……」と意外と早く弱気になるが、「ここで死ぬわけにはいかない……」と足掻いていた所に、問題の老師が突然現れ、 呪術パワーで弾丸の摘出に成功。老師はその弾丸でコンバット部隊を吹っ飛ばし、化身の解けた一心は九死に一生を得る。
「タバ……悔しいんだ! 俺にはモンスター一族からみんなを守る使命がある。奴を倒せば、俺の体なんかどうなってもいい。 どうなってもいいんだ!」
魂のベースが一心という事でか捨て鉢の玉砕主義を垣間見せるコンドールマンですが、 これを一心への恩返しを遂行する事しか考えられない存在と見ると、 欲望から生まれそれを満たす為に活動するモンスター一族とは表裏一体といえるのかもしれません。前回、 生き甲斐は殺しなので畑仕事なんて御免被る、と必死に社長命令を断ろうとしたダンガンマーの姿が克明に描かれたのは、 コンドールマンの鏡という意図だったのかもと思えます。
そんな一心に対し、焦る心が隙を作って罠にはまる、もっと冷静になれ、と諭す死体損壊老師。
1−2話では、かなり完成された人外の存在、という雰囲気だったコンドールマンですが、今回でかなり一心に寄せた描写がされ、 まだまだ未熟な生まれたての超人という事に。
「己自身と戦え。それに勝たねばならぬ」
雑念を振り払え、と一心と老師はザゼーンを開始。座禅ではなく、ザゼーンです。ムー帝国に古来から伝わる、心を無にする修行法です。
その頃、農家で直接、米や野菜を確保していた義兄と石松がガメツク一味に捕まり、更に姉とまこともさらわれてしまう。 今回も踏まれる小学生の危機を感じて立ち上がる一心だが、逸る心で突撃しても死ぬだけだ、と老師に諭され、ザゼーンを続行。
極端に言うと老師、まこと達の危機はコンドールマンにとって雑音であり、大を救う為には小を救えない事もあるのを認めろ、 と教えているようにも取れ、一心がその理屈を振り切らずに修行を続行してしまったのは、ややどうかと思った所(^^;
まあ、志だけではどうにもならない事はある、というのは今作、それこそ第1話の一心の死から提示されてはいるのですが。
ザゼーンを続けた一心は開眼し、自分の中のもう一つの化身ゴールデンコンドルの存在を掴むが、その大いなる力を使いこなすには、 天・地・人の修行をこなさねばならなかった。体力を作る人の修行、心を鍛える地の修行、二つを合わせた天の修行を終えた時 、宇宙空間を己のものと出来るであろう……そう、大事なのはまず走り込みから。 真理に近づく手段、それは筋肉。
「しかし! 今街には私を必要としている人がいます」
「うむ、行くがよい」
さすがに許可が降り、一心は「こんどーーーーーるまん!」へと化身。マッハコンドルに乗って一家を助けに向かう所でOPが流れだし、 価値なき存在の心から生まれたモンスターにより、自らその命を脅かされる人々の元へ敢えてひた走るコンドールマン、 というのが合わせ技でなかなか熱い。
果たしてコンドールマンは間に合うのか! ……でつづく。
第1話の問題児であった老師タバは、今回も特に説明しないまま、しれっとコンドールマンを導く立ち位置に収まり、 謎の呪術で絶体絶命の危機も回避など、かなりタチの悪い便利キャラに(^^; とても真っ当な手段で入国したようには見えないのですが、 泳いできたのか飛んできたのか。
- ◆第5話「紅コウモリ現わる」◆ (監督:伊賀山正光 脚本:山崎晴哉)
- コンドールマン、マッハコンドルで倉庫に突っ込む(笑)
三矢家の人々を救出したコンドールマンはサタンガメツクと対決し、ガメツクローでマントを縫い止められ、 「奥の手だ!」と腹の口から飛び出した手に剣を掴んで迫るガメツクに対し、マントを脱ぎ捨てて大ジャンプ、 コンドルカット!で腹の手を切断するとそれを逆に投げつけ、ガメツクは自らの剣に刺されて死亡、と壮絶なバトルで幹部を撃破。
そして……
ナレーション「サタンガメツクの霊を呼び出したキングモンスターは、コンドールマンの弱点が、空を飛べない事にあると知った」
数秒前に死んだ幹部の霊を呼び出してヒーローの弱点を聞く特撮は、(たぶん)『コンドールマン』だけ!
「このサタンガメツクも空さえ飛べたら、死なずに済んだものを。うらめしや〜」
それは単に、追い詰められても逃げられたというだけの話では?!
「ええーい、未練がましいぞ。仇は必ず取ってやるから、大人しく地獄の番人を勤めていろ」
「ハールマゲドン」
そして普通に挨拶して地獄へ帰っていくのは、(きっと)『コンドールマン』だけ!
モンスター一族としては比較的よくある事例なのか、何事もなかったかのように会議が続けられ、 飛行能力を持つという事で白羽の矢を立てられた幹部候補生のレッドバットン(キング秘書の妹)が、総指揮官不在の日本へと飛ぶ。
部下につけられたモンスターGと反目し合いながらも日本餓死作戦を引き継いだレッドバットンは、 買い占めた食料品の一部を小売店に販売した後、その帰路を襲撃して商品を強奪。 踏んだり蹴ったりの小売店を買い占めの犯人とデマを流して精神的に追い詰めた上で、 自らは義賊・紅コウモリを名乗って缶詰を1個ずつ家々のポストに入れて回り、 正義の味方コンドールマンのお株を奪って賞賛を浴びる事で虚栄心を満たす、という一石二鳥の作戦を展開。
レッドバットンは2番手に登場した女性幹部(候補生)という事で、名前からも黒トカゲ的な「魔性の女」路線なのかと思っていたら、 しゃがれた声で高笑いという化粧からKISSリスペクトだったのは、ビックリしました(笑) ……ただ調べたらKISSの米国でのブレイクが放映と同じ1975年だそうなのでタイミングとしては微妙で、単なる偶然の一致か、 あるいは監督などに洋楽趣味の人が居たのか。
缶詰一つで懐柔され、易々と煽動される市民の描写が今回も痛烈で、またまたご近所から一方的に責められる三矢食料品店。
「ねえ一心、なんとかならないの?」
「おい民子、この一心さんはな、死んだ息子とは違うんだぞ。それを何かといやぁ一心一心って」
「ごめんなさいね、ほんとごめんなさい」
「いえ、僕は嬉しいです」
3−4話でやや曖昧になった一心/コンドールマン問題ですが、苗字は不明なものの、 コンドールマン自ら「一心」と名乗っている事が判明(まことは「一心お兄ちゃん」、石松は「兄貴」と呼んでいるのも明確に)。
「やい一心! 俺達にはな、おまえと同じような気性の息子が出来たんだぞ。さびしかねえや!」
源太郎は仏壇に語りかけ、これが、コンドールマンが一心への恩返しとしてせめて息子代わりを演じようとしているなら少しはいい話なのですが、 なにぶん一心に関する記憶は無い筈なので、視聴者が見たい物語の枠組みと、コンドールマンが持っている感覚がズレている、 という仕掛けが地味に凶悪。
多分コンドールマン、人間社会に潜伏する為には人間の名前があった方が良い事に気付いて「偶然ですね……僕も一心ていうんです」 ぐらいの勢いで適当に名乗った気がするのですが、一歩間違えると無神経な行動が、 心を救う事に繋がっているので結果オーライという事でいいのか、どうなのか。コンドールマン自身に一心の記憶はないけれど、 たまたま出会った心優しい人々の、大切な存在を失った傷を少しでも癒やせるなら嬉しい、と思っているだろう事がまた複雑。 この辺りコンドールマンの精神性が、人の情と天の理の狭間で今後どう揺れ動いていくのか、というのは焦点を当ててくれるなら面白そうで、 期待したい所ではあります。
まこと達を助けにレッドバットンが拠点とする船に乗り込んだコンドールマンはGと激突し、 コンドール大開脚アタックから馬乗りパンチを決めるも、もろともに落下した船底に閉じ込められてしまう。 紅コウモリはコンドールマンとGをまとめて消し飛ばそうと船に仕掛けた爆薬を起爆させると高笑いしながら飛び去っていき…… 果たしてコンドールマンの運命や如何に?!
サタンガメツク撃破〜会議までの導入は面白かったのですが、後半は今見ると間延びして見える70年代らしい展開が続き、 いまいちの出来。
次回まさかの、出産?!
- ◆第6話「コンドール・ジュニア誕生」◆ (監督:伊賀山正光 脚本:山崎晴哉)
- 衝撃のサブタイトルでしたが、先に書いておくと、「少年ライダー隊」的なあれでした。
貨物船の大爆発に巻き込まれるも九死に一生を得た一心は海岸に流れ着いていたが、 どっこいGモンスターもその体にへばりついて助かっていた! 両者は再戦し、謎の青年(一心)=コンドールマン、 という割と重要な情報を得て逃走するGだったが……頭が悪すぎて特に活用されず。
この後、戦闘員を相手にしても目の前で普通に化身するので、第4話までのすれ違いはたまたまで、 一心の方に特に正体を隠そうという意図はないようですが(なお戦闘員は皆殺しにするので結果的にバレない)。
その頃、紅コウモリの正体を知った少年達は、徐々にカリスマアイドルになりつつあるまことの指導の下、 コンドールマンシンパに鞍替え。その内の一人の妹が栄養不足で病気になってしまったと聞き、 大事に隠していた食糧を各自が持ち寄る過程で、凄く嫌な映像でゴミ問題に思いを馳せるまこと。
妹の元に持って帰ろうとした食糧(すいとんや、芋粉の団子など)は、途中で出会ったGによってひっくり返されてしまい、 地面にぶちまけられる食糧、それを必死に拾おうとする子供達、踏みにじられる食糧、が今回も執拗に描かれ、 これが事前に示されたゴミ問題と繋げられて、日常生活の中で食べ物を粗末にしていないか? という風刺になっているのが今作らしい所。
石松と子供達は勇気を持ってモンスターに向かっていき、食糧問題が深刻化していく中で少しずつ伝わっていく、 コンドールマンの正義の魂。
コンドールマンが駆けつけてGは飛んで逃げ、それを追って走り去るコンドールマンに声援を送ったまこと達は、 少しずつでも自分たちの手で出来る事をしようと、G対策に街の美化運動を開始する。
「俺達モンスターと戦ってるんだ」
「モンスターを倒してくれるのは、コンドールマンだけど、私たちにだって、ゴミを綺麗にして、 モンスターを出さないようにする事ぐらい、出来るはずよ」
ネガティブな描写が率直で厳しい分、こういったポジティブな描写が映え、子供達の想いがストレートに響きます。
一方、紅コウモリは缶詰を餌に市民を紅コウモリ団に勧誘して着々と団員を増やしていき、ますますその矮小な虚栄心を満たしていた。 大群衆に讃えられるという妄想の中に、「だいとうりょー!」という声が入っているのが凄く謎(笑) それ、 飲み会帰りの酔っ払いが混ざってますよ紅コウモリ!
娘に食べさせる缶詰の為にそんな紅コウモリ団に加わってしまった父親の後を追っていた子供達が捕まってしまい、 団員として子供を撃てと命じられる父。他の子供を撃てば実の子供は助けてやると脅され、 「僕は死んでもいいから他の子は撃っちゃ駄目だ!」と叫ぶ息子がやたら覚悟が決まっているのですが、 他の子供達は「(自分たちを)撃たないでー!」と大合唱するので、正直だけどちょっぴり台無し(笑)
息子に拳銃を突きつけるGモンスターに脅されながらも遂に父は猟銃を投げ捨て、モンスターを生み出す醜く汚れた心にも、 コンドールマン→子供達→その親、と正義の想いが連鎖していく姿が一縷の希望として輝いたその時、風を切るコンドルアロー!
「正義のシンボル、コンドールマン、そのような悪は断じて許さん!」
ここからは、正義の味方のターンだ!
それにしても高い所に現れるコンドールマンはホント、立ち姿が格好いい。
主題歌と共にコンドールマンvsGモンスターの3回戦が開始され、割と華麗に空を舞うGに有効打を与えられず苦戦するコンドールマン。
(空さえ飛べたら……)
「くらえ目つぶしー!」
妙に可愛い叫び声で放たれた目つぶしを受けたコンドールマンは背後から首を絞められそうになるが、 起死回生のコンドールカット!がクリティカルヒットし、哀れGモンスターは首ちょんぱで大爆死。意外な強敵でしたが、 ただただ頭が悪すぎた……という事に(^^;
難敵を撃破し、コンドール・ジュニアを結成すると宣言した子供達と和気藹々とするコンドールマンだったが、 大団円許すまじと迫り来るレッドバットンのバットタイフーンを受け、あわや崖から転落の危機に。果たしてコンドールマンは、 空を飛べないという弱点を克服できるのか?!
第4話で、筋肉を鍛えれば精神も磨かかれるので空も飛べる筈、と明らかな布石が置かれるも、 5−6話と立て続けに苦戦したまま弱点は解決されないで続く、というのが飢餓作戦ともども今作の独特な引っ張り構造になっており、 今見ると逆に新鮮です。
コンドールマンと子供達との絆が描かれる事で今作の見せたい希望がわかりやすく打ち出され、 ヒーロー登場のカタルシスも決まって気持ちの良いエピソードでした。
(2017年3月21日)
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