■『超人バロム・1』感想まとめ5■


“ふたりがひとり バロローム
みんなでよぼう バロムワン
必ずくるぞ バロムワン”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『超人バロム・1』 感想の、まとめ5(29話〜35話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る

〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕  ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕 ・ 〔総括〕


◆第29話「魔人ウロコルゲがドルゲ菌をバラまく!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)
 OP終了後、サブタイトル前に無音でしばらく
 「このドラマにでてくるドルゲはかくうのものでじっさいのひととはかんけいありません」
 という注意書きが表示されるのですが、放映時に「ドルゲ」絡みで抗議などがあった模様。
 校庭の片隅で野良犬に餌をやる猛達、第27話で登場した美少女カオルちゃんが再び登場してミス港南小と紹介されるのですが、 あれ……カオルちゃん=須崎くん?
 それとも須崎くん、マドンナの座から転落したのか。
 (※第1話を配信で確認してみたところ、須崎くんのフルネームは「須崎久美江」とクレジットから判明。物語上は別人のようですが、 演じる役者はともに「斉藤浩子」となっており、須崎くん、自分と瓜二つの少女にミス港南小の座を奪われるとは何という運命)
 ノラと名付けた犬に餌をやっている最中に裏山に隕石が落下し、猛と健太郎はそれを学校の標本室に勝手に保管。 今回久々に小学生コミュニティが話の中心になるのですが、校庭の隅に勝手に犬小屋作って給食を食べさせたり、好き放題です。
 ところがその隕石の正体は、宇宙から飛来したドルゲ魔人ウロコルゲ。全体では魚がモチーフのようで、 卵形の胴体にびっしりとウロコが重なり、左手が魚の尾びれになっているという、かなり奇抜なデザイン。
 ノラに水をやろうと標本室に入ったカオルちゃんはウロコに襲われ、前々回に続いて高度なヒロイン力を発揮。 ドルゲ反応に気付いて戻った猛と健太郎だがボップを奪われてしまい、空中バロムクロスを修得した代わりに通常バロムクロスが出来なくなり、 ボップなしでは変身できないという新設定が判明。
 車に変形する・ドルゲ反応をサーチ・気がつくとポケットや鞄に入っている(呪いのベルト機能)・飛び道具になる・ 打撃武器になる・正義のエージェントを短距離ワープさせる・実質的な変身アイテム
 と、ボップが機能盛りすぎで大変な事になっています。
 変身不能の危機に陥る2人だが、飛び込んできたノラがウロコに噛みついてボップが床に落ち、すかさずバロムクロス。 ……完全に言い訳効かないレベルでカオルちゃんの目の前で変身してしまい、これまでも多分にザル気味だったとはいえ、 秘密のヒーロー路線なら路線で、もう少し丁寧にやって欲しかった所です(^^; 勿論、 この状況で「変身をしない」という選択肢はないのですが、曖昧に濁す事で変身に劇的な意味が付加されないのは勿体ないところ。
 変身したバロム1に対し、ウロコ手裏剣で大暴れするウロコルゲ。
 「そこを動くんじゃない、カオルちゃん」
 カオルと犬を守って戦おうとするバロム1だったが、ウロコ手裏剣の爆発により標本室の天井が崩れ、それに巻き込まれてしまうカオルと犬。
 「ノラが死んだ……」
 「しまった、カオルちゃんが下敷きに」
 色々マッハで酷すぎるよ!!
 ……というかこれ、コプーの示唆した「災い」なのでは(^^;
 カオルは絶対安静の重傷を負って入院する事になり、苦しい息の下で魔人への復讐を望むカオルと約束を交わした猛と健太郎は翌日、 標本室を調査。水道水からドルゲ反応を確認するがアントマンに襲われ、バロムクロス。
 「ウロコ菌はどんな宇宙細菌なのだ!」
 「地球の科学では解毒剤はないのだ」
 自称「バロム・1の親友」として昼間からフラフラしてバロムワンを探していた松五郎(ポーズではなく、 猛と健太郎がバロムワンの正体である事に本当に気付いてない模様)は、この戦いを目撃。
 「そうだ、バロム・1が戦ってる姿をカオルちゃんに見せたら、きっと元気になるぞー。いい思いつき!」
 どうやら海野とのバロムクロスが解除されてしまったようですが、 松五郎の頭の緩さが間抜けとかコメディリリーフの領域を遙かにオーバーランしており、早く別の病院に連れて行かなくては。
 松五郎はバロム1の活躍をカオルに見せようと病室からカオルを連れ出し、おまわりさーーーん!!
 実の叔父が完全に事案を発生させているとは知らずにウロコと戦うバロムワンだが、 ウロコは既に東京中の水道にウロコ菌を流したと宣言。更に、体型に似合わぬ素早さでウロコ手裏剣を繰り出し、 ウロコ三方シュートの直撃を受けたバロムワンは転落。松五郎のいらぬお節介によりその光景をまざまざと見せつけられたカオルはショックで気を失ってしまう。
 「さすがウロコルゲ、バロム・1を倒すとはよくやった」
 「どんな強い犬でも、一度負け犬になると、二度とは立ち直れない。バロム・1もきっと同じですぞ」
 その言葉の通り、完膚なき敗戦に失意のバロムワンは、今日一日が峠とまで症状の悪化したカオルの病室を窓の外から覗き見。 だが、危篤状態のカオルちゃんの無意識のエールを受け、再び悪に立ち向かう事を決意する。
 「私はやる。もう一度やってみる」
 猛・健太郎人格が表に出ているなら納得はできるのですが、ここまで20話ほど、 2人の人格はほぼバロムワン人格に統合されてしまっており、そのバロムワン人格は何度負けても「ははははははは、 私は死なん!」みたいなノリの宇宙的正義の化身なので、落ち込んだバロムワンが立ち直る、 という筋はここまでの流れと少々そぐわなくなってしまいました。
 今作はこの、“小学生2人が融合した正義の化身”というヒーローの設定をどうにも活かし切れないのですが、いっそ、猛・健太郎と、 第三の人格としてのバロム1が意思疎通して最適解を見出していくというような形でも良かったような (例えるなら勇者シリーズみたいな感じというか)。
 街では水道水を飲んだ人々がウロコ菌の影響により互いに暴力を振るい合うというドルゲの作戦が着々と進行する中、 カオルとの約束により不屈の戦意を取り戻したバロムワンは、吊り下げたボールをウロコ手裏剣に見立て、 色々と回転するという特訓を開始。その特訓を完成させて猛が家に戻ると、水道水が危険という報道を聞いた松五郎が、 水が駄目ならビールだ、と完全に酔っ払っており、危篤状態のカオルちゃんとの対比で、史上最低な事に。
 自分のやった事への反省から酒に逃げているとも取れますが、病室では医者にもカオル母にも悪気は無かったと安い言い訳を繰り返しており、 合わせ技で松五郎の人間的弱さがリアルにえぐり出されてしまいました。
 給水車の水にまでドルゲの魔手が及んでいる事を知ったバロムワンは、給水車に張り付いてウロコルゲを攻撃。 特訓の成果を発揮してウロコ三方シュートを回避して懐に飛び込むと、バロム爆弾パンチで魔人を撃破。 敗北→奮起→特訓という展開だったので派手な新必殺技でも繰り出すのかと思ったので、これは拍子抜け(^^;
 バロムワンの勝利はカオルちゃんに伝わり、コプーの呪いを克服して持ち直す薫ちゃん。圧倒的なヒロイン力を見せつけたカオルちゃんですが、 無意識のまま高々とVサインを掲げる姿で、最後の最後に少年マンガの主人公みたいな事に。
 カオルの回復を見届けたバロムワンは満足して立ち去り、正気に戻って目を覚ました松五郎は特にフォローされないのであった!
 前日まで絶対安静だった少女を無断で病室から連れ出して危篤状態に陥らせたってほぼ確実にPTAネットワークで街中に広がると思うので、 次回からしばらく、ほとぼりが冷めるまで街を離れた方がいいのでないか、松五郎。多分これまでも、有名な刑事の弟、 という理由で不審者扱いされずに済んでいた事案が諸々ありそうですし(本人は善意なのでタチが悪いタイプ)。
 中盤以降は5話に1回ぐらいのペースで参加の伊上さんですが、ツッコミどころ、というのも含めて、 滝沢・島田の両名と比べるとやはり一段上の切れ味(笑) これぐらいのペースが一番、伊上脚本を楽しめるのかも。

◆第30話「魔人ハサミルゲが待ちぶせて切る!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:滝沢真理)
 注目は、白鳥デスクのキリン柄ネクタイ。
 人間を溶かす泡を吐き出し横歩きする実質カニゲルゲな魔人ハサミルゲが登場し、 襲われた作業員の悲鳴→サブタイトル表示に重なる鳴り響く電話のベル→電話を取って怪事件の連絡を受ける木戸刑事、という凝った入り。
 さっそく現場に向かった木戸刑事はそこで取材にやってきた白鳥デスクと出会い、2人のやり取りを隠れて見ながら、 互いの父親の仕事熱心ぶりを誉め合う猛と健太郎。
 子供達の間にも『バロム・1』名物の世知辛い社交辞令が浸透していますが……父の日か何かだったのでしょうか。
 犯人は人間なのか動物なのか、それとも得体の知れない怪物なのか、社会におけるドルゲ魔人の扱いに踏み込みかけるのですが、 「うちの息子ならドルゲの仕業と言い出すところだ」「そんなマンガみたいな、あっはっは」で終了。
 その頃、多摩川沿いに写生に訪れていた2人の小学生が、巨大な切り株に偽装されていた入り口からドルゲの秘密アジトに入り込んでしまう。 白鳥デスクのもらした怪物の目撃情報から多摩川へ向かっていた猛と健太郎は、ハサミルゲに襲われている小学生の一団と引率の教師を目にしてバロムクロス。
 この後、行方不明の生徒を思う女教師の熱意にスポットが当たるのですが、猛や健太郎の担任というわけでもなく、 バロム1は社会性ゼロのヒーローなので会話が本質的に噛み合わず、一方的にゲスト女教師の感情が放出されるだけなので、 見ている側としては気持ちの置き所がありません(^^;
 「お気持ちはよーくわかります。だが、私を信じて、任せない」
 そして正義のエージェントは、またも《説得》に失敗。
 2D6の期待値は5。
 残りの子供達が不審者の家に預けられている一幕はいつもの事として、 警察署がカニ泡に襲撃されるシーンはバロム1の行動にも事件の顛末にも全く影響しないのですが、 これから謎の怪物の存在について官憲とマスコミが本格的な調査を始めてドルゲの存在が明るみに出たりするのか…… 大きな伏線としてここから話が広がってダブル父さんがバロムクロスで社会的地位と名声の力を見せつけてきたら面白いですが(笑)
 バロム1は秘密通路の先にあった謎の洋館に辿り着き、ハサミクローで襲い来るアントマンを相手に、 鎧の置物から抜き取った剣で見せる立ち回りは格好良かったです。最終的には、先生+小学生3人が人質に取られ、 生徒の命を助ける為に先生がバロム1を罠へと招き寄せるも最後の瞬間に翻意して事なきを得、ハサミルゲは爆弾パンチを食らって大爆死。
 子供の命を守る為に苦渋の決断を下す先生……みたいな扱いになっているのですが、 折角の複数の人質を4人まとめて並べておくというハサミルゲの人質活用法があまりに間抜けすぎて、 それを切り抜けるヒーローという盛り上がりは皆無(^^; どうして今作、これだけ人質展開を多用するのに、 解決はやたらめったら雑なのか。
 ハサミルゲは巨大なカニのハサミといったデザインで、胴体の真ん中に一つ目がついているのがドルゲ魔人らしい不気味さ。 二本の巨大なハサミを表現する為に、基本万歳の姿勢という、中の人が大変そうでした。

◆第31話「魔人カミゲルゲは悪魔をつくる!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:村山庄三)
 「猛くん、人間すべてが幸せとは限らないのよ」
 先生に甘え、高級車で送り迎えされる同級生、田村財閥の御曹司・田村賢治に嫉妬の炎を燃やす猛と健太郎だが、 いっけん恵まれた環境にいる賢治にも母を亡くしたという辛い過去があるのだ、と積極的に現実のままならなさを突きつけていく 『バロム・1』スタイル。
 その賢治が魔人カミゲルゲに襲われ、殺人鬼計画のサンプルとされてしまう。魔人の髪を植え付けられたものは殺人鬼となり、 今まで最も愛していた者にその殺意を向ける事になる……賢治が殺意の眼差しを向けたのは、慕っている井上先生!
 太い髪の毛の先に目玉が一つ付いている(全体のイメージとしては『寄生獣』のミギーぽい) というデザインはどちらかといえばユーモラスで、「伸びろ〜、髪!」はどうも間抜けなのですが、 少年少女を周囲の知らぬ内に殺人鬼に仕立て上げる、という計画自体は非常に凶悪。
 井上先生が招待された賢治の誕生パーティの日、様子のおかしい賢治をいぶかしんだ猛と健太郎は田村家へと潜入を試みるが、 相次ぐ小学生の蒸発事件を警戒して、不審者を見張る日雇いパトロールに雇われた、と主張する松五郎に猛が門前で捕まってしまう。
 自家製の手錠で、蒸発事件の関係者としてはどう考えても圏外の猛を拘束する松五郎……これ、 日雇いパトロールに雇われたつもりの妄想なのでは。
 もはや完全に、松五郎が容疑者。
 木戸刑事は手遅れにならない内に、松五郎を座敷牢に入れた方がいい。
 一方、首尾良く邸内に潜入した健太郎は、庭の片隅に作った小さな墓に賢治が手を合わせているのを目撃する。
 ナレーション「カミゲルゲに操られた賢治は、自分の手で、愛するアスターを殺したのだ」
 いきなり愛犬の斬殺シーンがざっくりと挿入され、前々回から間を置かずに、犬の扱いが酷い。
 「ごめんよ、アスター」
 「自分で殺しておいて泣いてる……」
 ……そして何故かそれを把握している健太郎(^^;
 視点が時空を越えてしまった健太郎に背後から髪ゲルゲが襲いかかるも、松五郎を振り切った猛がボップを投げてバロムクロス。 髪と戦うバロムワンがショベルカーのショベルにすくいあげられてしまい……CM開けると何故かショベルの上で猛と健太郎に分離していた所を松五郎に助けられ、 誕生パーティに直接乗り込んだ2人が井上先生に直接「ドルゲ魔人」だの「田村くんに狙われる」だの言い出し、さすがに滅茶苦茶(^^;
 そして、2人が叩き出された誕生パーティの出席者は、当人、父、めかしこんだ井上先生、女中頭(カミゲルゲに憑依されている)、 という酷い絵で、もうこれ、父さんが再婚相手として先生を狙っているようにしか見えません。
 「この子は母親に死なれてからというもの、先生を母親のように慕ってるんですからね」
 モーションかけてきた!!
 そして先生も、満更ではなさそうだった。
 重要なのは資産である、と積極的に現実のままならなさを突きつけていく『バロム・1』スタイル。
 誕生プレゼントを渡したい、と庭に誘い出した先生に賢治はナイフを向け、それを止めるバロムワン。
 「賢治くん、思い出すんだ、あの涙を。戦うのだ、悪い心と」
 愛犬の死に涙を流した賢治の中には、悪に汚染されていない良心が残っている筈……と《説得》を試みるバロムワンだが、 賢治を操る洗脳毛髪に気付くと、それに慌てて正体を現した髪ゲルゲをダッシュで追い、説得そのものの意味が消滅(笑)
 犬を殺すという伏線を用意しておきながら、人間の持つ正義の心が植え付けられた悪の意志に打ち勝つ、という王道を場外に放り捨て、 いったいどうしてそうなった。
 なんだか久々な気がするマッハロッドのカーチェイスを挟み、髪ゲルゲを追い詰めるも毛髪攻撃でエネルギーを吸われるバロムワンだったが、 ボップで逆転して爆弾パンチ。賢治少年の洗脳は解け、ドルゲの殺人鬼計画は失敗に終わるのであった。
 脚本の出来も良くなかったのでしょうが、演出で修正できそうな箇所や、編集段階でおかしくなったと思われる箇所が放置されており、 さすがに田口監督に働かせすぎでは(31話目にして、21回目の演出、なお5連投中)。

◆第32話「魔人トゲゲルゲが死の山へまねく!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:滝沢真理)
 誘い合わせて紅葉狩りに向かう木戸家と白鳥家だが、その山では毒イバラの化身・トゲゲルゲが近づく者を次々と毒のトゲの犠牲にしていた!  トゲゲルゲは、食虫植物+鋼鉄の処女、といった感じのデザインで、右手で胴体を覆う蓋部分を操作し、 その内部に犠牲者を挟み込んでトゲを突き刺す、というのがなかなか面白いギミック。今作のこの、 スーツアクターの手を手以外の要素に使う怪人デザインの工夫は、中盤以降の見所の一つになっています。 今回のアントマンの手持ち武器、トゲソードも格好良かった。
 白鳥母、ゲスト少女・かよ子、かよ子祖母が次々と犠牲になり、ここまで最長の出番となった白鳥母がひたすら苦悶の演技を続けるのは、 あまりに強調しすぎて描写としてはくどくなった感(^^;
 それを見つめる健太郎の心境に焦点が当たったのは良かったですが、母の苦悶の叫びでAパートが終わり、 Bパート入ったらやたらコミカルなBGMの探索シーンになり困惑した所で、
 「健太郎のママ達はもう少ししか持たない。それまでにドルゲ魔人を見つけて倒さなくては」
 小学生ながらドライな状況判断はいつもの正義のエージェント!
 トゲゲルゲと遭遇した松五郎、更にかよ子の母親も犠牲となり、登場人物の顔に次々とトゲが突き刺さっていくというハイテンションな展開。
 マッハロッドで空中から魔人を発見したバロム1はトゲミサイルを受けてしまうが、ドリラーの遠心力でそれを抜き取り、 悲壮なBGMまで流した割には、毎度の事ながらあっさり(^^;
 だが、トゲゲルゲには更なる巨大トゲミサイルという切り札があり、それを喰らったバロム1は、 今度こそ絶体絶命のピンチに陥ってしまう。
 「バロム・1倒れたり」
 エネルギーを吸われ、苦痛に呻くバロムワンだが、その脳裏にトゲゲルゲの毒で苦しむ人々の姿がよぎる。
 (私は負けられないのだ……くっ……よし、岩……)
 藻掻き苦しみながらも頭上に手を伸ばしたバロムワンは、勝負あったと近づいてきたトゲゲルゲにバロム投石で逆襲。 渾身のフルパワーで体に刺さったミサイルを粉砕すると、トゲミサイル返しからの爆弾パンチで大逆転勝利を収めるのだった。
 健太郎が回復した母の元へと駆け寄り抱き合う姿を物陰から見つめ、「甘えちゃって」と笑った後に、 「そうだ松おじは……」と身内を気にする猛がいい味。
 その松五郎は猛姉と、姿を見せない猛について言い争っており、猛が「相変わらずだなぁ」みたいにコメントするのですが…… いやこんなやり取り、初めて見たのですけど!
 家族愛から猛と健太郎の心情に焦点を当てていったのは良かったのですが、内部人格とバロム統合人格の関係の曖昧さの為に、 変身しないとどうしようもないが、変身すると2人の心情を掘り下げきれない、 といういつものジレンマに陥って、いつも通りにそこを乗り越えられなかったのは残念。
 序盤に正体バレと身内狙いを真っ先にやってしまった事で、身動き取りにくくなった末に中盤色々無かった事にして家族から目を逸らさざるを得なかった為、 松五郎以外のキャラクターの関係性が定まっていないのも響き、惜しい一本でした。
 ところで、最初の犠牲者が猟師風だったり、衣装などゲストのかよ子周りが『赤ずきん』モチーフになっているのですが、 後半はその要素が全く消えており、初期プロットから途中で話が変わったのかなぁ……。

◆第33話「魔人マユゲルゲは地獄の糸で焼き殺す!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:滝沢真理)
 祝・バロムワン、《説得》成功。
 「いいか、こっから動くんじゃないぞ」
 絶対無視されると思ったのですが、子供が、言う事を聞いてくれた……!
 見た目は巨大カイコなマユゲルゲがドルゲの布を作り出し、その布で仕立てた赤い服を着た人々が次々と溶けてしまう。 事件が群馬県・藪塚を中心に発生している事を知った健太郎と猛は、健太郎母をスポンサーに藪塚温泉へと向かう。
 「姉ちゃんは溶けてしまったのだ。俺を倒さぬ限り、元には戻らぬ」
 ……戻るのか!
 開始当初よりハードとマイルドの間で揺れ動きの激しい今作、骨ゲルゲの回などもでしたが、 映像はハードなのに強引にマイルドに着地しようとする為に、 しばしば必要以上に支離滅裂になって物語が二重人格のような事に。
 色々と世間への配慮などもあったのかもですが、作風を完全に変えるわけではなく、映像のショッキングさにはこだわり続ける為に、 時に随分と中途半端な事になってしまっています(^^;
 被害者の弟がマユゲルゲに人質にされ、赤い糸が壁にメッセージの文字をつづる、というのは今回唯一良かったところ。
 呼び出しの場所に赴いたバロムワンはマユ爆弾の罠にかかるものの、バロム死んだフリで逆転。赤い糸の拘束をドリラーで引き裂き、 バロム張り手から爆弾パンチでマユゲルゲを見事に撃破。マユゲルゲの言葉通りに溶けた被害者が戻ってきて、 なぜか女性陣がみんな揃って歌を唄って大団円。
 執拗にドルゲソングを唄うマユゲルゲ → 歌手が被害 → みんなで歌うオチ というのは元々エピソード的な意味があったのかもしれないのですが、 突然の藪塚遠征により腸捻転を起こして悶死、みたいな残念エピソードでした。遠征ありきだったのか、 そうではないシナリオを強引に遠征仕様にしたのかは不明ですが、ただでさえゲスト少年中心で展開が鈍くなった上で、 物語と一切関係なく藪塚ヘビセンター(現:ジャパンスネークセンター)の紹介が入るなどテンポもズタズタに引き裂かれてしまい、 無惨な事に。
 旅行に猛どころか猛姉や松五郎まで同行している辺り(白鳥母が猛姉を可愛がっているというのは理解できる範囲ですが、 松五郎はどう考えても押しかけてきているとしか)、白鳥家からは昭和の小金持ち感が漂いますが…… これは後の『プリキュア』に影響を与えているのでしょうか(笑)
 次回――《説得》成功は終局への兆しだったのか、いよいよドルゲ最後の手段!

◆第34話「大魔人ドルゲが地底から出る!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)
 このサブタイトルは、ツッコミ待ちなのか。
 「るろろろろろろろ……ドールゲー。忠実なるわがしもべよ、現れよ」
 「これはこれはドルゲ様、ご機嫌はいかがですか」
 渦巻き模様の帽子をかぶり、闇の中に浮き上がる潮健児!
 「人の心をそそのかし、善をたぶらかす、我が愛しのドルゲピエロよ。おまえの力を見せる時が来た」
 この後の展開を見るに、恐らく組織の資金稼ぎに関わってきた地上工作員である所のドルゲピエロは、 よみうりランドへと子供達を招き入れ、そこで子供達を前にバロム・1誕生秘話を語り出す少年 (クレジットによるとアリゲルゲ回に登場したトオル少年なのですが、劇中で特に言及はされず)。
 劇中ではトオル少年の語りという事になっているのですが、ナレーションによりバロム・1(コプー) とドルゲの基本設定がおさらいされ、明らかに普通の地球人が知らない事を少年が知っており、 ドルゲ菌カプセルに触れた際に宇宙的真理に近づいて、正気度と引き替えに新しい技能を修得してしまったのか。
 それを傍らで聞いていたドルゲピエロは少年にドルゲ催眠をかけ、人相の悪くなるトオル。
 「だが、いつしか超人バロム・1は、段々と自分の強さを威張りだし、そして超人バロム・1は、段々と地球に悪の力を働かすようになったのだ」
 朗々とした語りの内容が急にガラリと変わる、というのは普遍的なスリラーとしての面白さ有り。
 「超人バロム・1は、次々に地球の平和を乱すようになったのである。そして、彼は、自分から魔人を作るようになったのだ」
 しばらくドルゲ魔人名場面集となり、みんな台詞が「おまえを殺す」になっている為、集団ヒイロ・ユイみたいな事に。
 「超人バロム・1こそ、正義の敵だ!」
 バロムワンを糾弾してそれまでかぶっていたお面を投げ捨てるトオルだが、それを空中で受け止めたのは、通りすがりの松五郎。 松五郎は少年に絡むと、バロム・1は親戚どころか自分の子分だとタチの悪い騙りを開始。
 「おい、おまえ子供のくせに大人を疑うんじゃないよ?」
 ホント最低です。
 今度は松五郎の語りによる、バロム・1爆殺名場面集となり、オコゼから順番に始めたので33魔人全部やるのかと思ってドキドキしたら、 さすがに途中で省略されてほっとしました(笑) それでも回想シーン、約4分。まあ今作、 怪人デザインのバリエーションが豊富なので、改めてまとめて見る事自体は案外面白かったですが。
 気分良くバロムワンの活躍を語り終える松五郎だったが、話し終えるといつの間にか、聴衆の子供達も含めて周囲は暗い洞穴の中。
 「どうだね? 幻の世界の居心地は。さーて、お次は死の世界へとご案内しようか」
 ドルゲピエロにより生き埋めにされてしまう猛&松五郎&子供達だったが、外に居た健太郎がボップ反応を受けてとにかくバロムクロス。 洞窟に突入したバロム1はアントマンをけしかけられた隙にピエロ催眠を受けて眠りに落ちてしまい、生き埋めにされそうになるが、 後頭部に岩が当たった衝撃で目を覚ます(笑)
 ドルゲピエロはこの際に岩の下敷きになってあっさり死亡しており、ドルゲの忠実な配下としてちょっとした能力を与えられた人間、 とかであったのかもしれません。戦闘無しでざっくりリタイアは残念でしたが、着ぐるみ怪人の代役を務めてしまう怪優・潮健児、 恐るべし。
 子供達を無事に救出するバロムだったが、外に出ると巨大ドルゲが地上に出現。
 「るろろろろろ……バロム・1、まだおまえにやられる私ではない。おまえは今に驚く。既に、私はおまえに勝ったと同然だ。 おまえの親兄弟は、既に私の手の中にある」
 「なんだと?!」
 「ドールゲー!」
 慌てて家に戻る猛と健太郎だが木戸家も白鳥家も無人であり、ドルゲは正義のエージェントがこれ以上逆らうのならば、 両家の人間を苛烈な拷問でいたぶり殺してやると宣言、ラスボスが出馬して作戦が最初期に戻るという、 壮絶な顔面ダイブで岸壁に衝突。
 やはり序盤の、速攻で正体がバレる → 身内や近い関係者が次々と人質にされる、 という展開が最後で再び大きな問題点として浮上してしまいました(^^;
 ドルゲ催眠によるバロム1への風評被害から、偽バロム1が登場でもするのかと思ったら、 ただただ回想シーンの前振りに終わってしまったのも残念。
 次回――コプーは正義! ドルゲは悪!

◆第35話「大魔人ドルゲがくだけ散るとき!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)
 「我は宇宙の悪の源。ド〜ルゲ〜」
 猛と健太郎は手向かえば親兄弟の命はない、とドルゲから宣告され、襲いかかってくるアントマンに対し、 しばらく生身で立ち回る健太郎だが、おもむろにバロムクロス(笑)
 「ドルゲの薄汚い手先、今日という今日は許さんぞ」
 いつだって沸点の低いヒーロー、それが僕らの超人バロム・1!
 だがドルゲもこの宿敵の、とりあえず殴り返してから人質を気にする行動パターンは知り抜いており、 バロムワンを罠にはめようと手ぐすねひいて待ち構えていた。
 気絶したフリでその言葉を耳にし、反撃の機会を伺う松五郎は、縄抜けに成功。アントマンをあっさり沈め、 どうやら久々に海野とバロムクロスしている模様。
 「へへへへへへ、ここまでは誰でもやるんだよね。これからが問題ですよ」
 最終回にして他の家族と十把一絡げに人質扱いかと思われた松五郎ですが、まさかの脱出に成功し面目躍如。 マッハロッドでドルゲ魔人を追うバロムワンに、待ち受けるドルゲの罠を伝える。
 「ありがとう松五郎。しかし、私はゆかなければならない」
 「駄目だバロム・1!」
 これまで一方的な友情をアピールしていた松五郎は、家族の為に死地に赴くバロムワンを黙って見ている事が出来ず、 体を張ってでもバロムワンを止めようとするが、正義のエージェントはそんな松五郎を諭す。
 「いいか松五郎。罪も無い人を守る、それが正義に通じる事になるんだ」
 物語の積み重ねでいえば、正義執行=悪の抹殺→ゆえに人質に多少の犠牲は出てもやむを得ないがバロムワンのスタンスでしたが、 後半には多少は人質を気にするようになりましたし、無辜の人々を守る事が使命である、と最終回にして自らの正義語り。
 やはり今作、完全正義の化身たるバロム1人格が、地球での動力源である猛と健太郎の人格の影響を徐々に受けて自らの正義を見出す、 という形で話を進めた方がテーゼとしてはまとまった気がするのですが、その辺りの要素が無かったのは実に残念。
 思えば最初と最後を伊上さんが締めた翌年の『ロボット刑事』において、 ロボットである主人公Kが人間の刑事達と触れ合って徐々に変化していくという要素がありましたが、 今作でやれなかった事への意識はあったのか無かったのか。
 このテーマだと、後年の『大鉄人17』(1977)も巨大ロボと少年の友情を軸にしているのですが、 どれも本来は王道である筈の“人間を学ぶ”パターンが上手くまとまってはおらず、伊上さんにしろ、 『ロボット刑事』『大鉄人17』に主力で参加している上原正三にしろ、あまりこだわりのあるテーマ性では無かったのかもしれません (私は好きなので、つい期待してしまうのですが)。
 作品としては途中から明らかに、猛・健太郎よりも、ヒーローたるバロムワンを目立たせる方向にシフトしており、 その際に人格の問題がわやくちゃになったまま放置されてしまったのは掘り下げる余地があっただけに勿体ない部分でした。
 まあ今作の場合は、『ウルトラマン』的に考えた方が適切なのかもしれませんが、 それはそれでバロムワンのベース人格はどこから来たのかという問題が発生し…………もしかして、コプーの理想とする、若い頃のオレ、 なのか。
 「たとえ、私が敗れるような事があっても……いや、私は決して負けない。たとえ私が死んでも、ドルゲはきっと倒す!」
 そんな宇宙的正義の魂が、地球人の中にある正義の心は負けない、と大衆への信頼を口にするのではなく、 最悪でも玉砕して引き分けに持ち込むと言い切るのが、変に積み重ねのない綺麗事を持ち出すよりも、 潔くて好感が持てます(笑)
 バロムワンの固い決意を感じ取った松五郎は他の4人が連れて行かれた場所を伝え、十字架に磔にされた4人は多分、 (松五郎のやつ、一人でまんまと逃げやがったな……)と悪の心をたぎらせていた。
 マッハロッドから飛び降り、アントマン軍団を蹴散らしたバロムワンは4人を解放……ところが4人は、ハサミ、ウデ、ノウ、 クチビル、という再生魔人の変装であった!
 …………て、あれ、これ、松五郎、わざと逃がされたのでは。
 残念な事実が判明し、4魔人に囲まれ窮地に陥るかに思われたバロムだが、 主題歌が流れ始めると勢いに乗って再生魔人を次々とぞんざいに叩き殺していく。
 「ドルゲ! 卑怯な奴め! 自分の手では私と戦えないのか。出てこい!」
 「慌てるなバロム・1。ドルゲは既に、おまえと戦ったのだ」
 虚空に浮かぶ巨大ドルゲは、全てのドルゲ魔人はドルゲの一部――分身――であったと明かし、 今回も回想シーンで魔人軍団を見せていき、とにかくこれが売りだった、というのは非常にわかりやすいラスト2話。
 「貴様にドルゲの本当の力を見せてやる」
 力を解き放ったドルゲはドルゲマグネチュードにより激しい局地的地震を発生させ、ドルゲこだわりの生き埋め作戦により、 あっさり絶命するバロムワン。
 「ド〜ルゲ〜、我は勝てり、地球はドルゲ、ドルゲの星」
 勝利を確信したドルゲは姿を消すが、しかしその時、天空からまばゆい光が降り注ぐ!
 「我はコプーなり。再び生きよ!」
 今まで何をしていた。
 ……いや、なにぶん宇宙的正義のなんやかやなので、大気中に漂う正義のエナジーを集めて部分的に復活とかしたのでしょうが、 第1話で不吉な言葉を遺して颯爽とリタイアし、最終話でざっくり奇跡を起こすという、完璧な芸風。
 一応、これまで二人の必死の戦いがあったので、 それにより蓄積されたジャスティス成分が消滅した筈のコプーに辛うじて部分的な力を取り戻させ、その報償として二人に力を与えた、 という解釈は成り立つ範囲ですが……
 コプーの光により生き埋め状態から解放された猛(死体)と健太郎(死体)は、コプーから命の泉を与えられて復活。
 目を閉じたまま無言で、見るからに洗脳されたままままバロムクロス。
 これまでの戦いの見返りで完全な傀儡とされるという……これか、これが宇宙的正義のする事なのか!!
 一体全体もはやその中に友情は存在しているのか、正義の人形と化したバロムワンはドルゲ洞を目指すが、 それに気付いたドルゲが気象を操って落雷を落とし、派手な演出で崖から転落してマッハロッドごと吹き飛んでしまう。
 人質の4人はアントマンにされそうになり、名称としては「働きアリ」がかかっているのでしょうが、 ドルゲは本当に地球人を労働力として搾取するのが好きすぎます(笑)
 悪の奴隷にされるぐらいなら自害してやる、と実に70年代らしい方向に走る4人だが……
 「いや、その必要はない! バローーーム!!」
 マッハロッドの殉職で死線をくぐり抜けたバロム1が現れて4人を救出。 姿を消したドルゲを追って遂に地底のドルゲ洞に乗り込んだバロムは、ドルゲ洞そのものこそドルゲの体内である事を知る。
 「ドルゲめ……正義のボップを受けてみよ!」
 まさかの最終兵器ボップにより、体内で危険物を投げつけられたドルゲ、大爆発(笑)
 地上では松五郎が4人と合流し、向かい合うバロムワンと巨大ドルゲの姿を目にする。
 「ドルゲは不滅だ。ドルゲは地球から消える。しかし、いいか、必ず再びやってくる。さらばバロム・1!」
 往生際の悪い捨て台詞を残したドルゲは雄々しく宇宙へ飛び立つが、それを追って大気圏を突破する正義のエージェント。
 「宇宙の悪、絶対に逃がさんぞ!」
 「やめろ! お前のエネルギーと、俺のエネルギーがぶつかれば、爆発する! るろ?! るろ、るろろろろろ、ろ?!」
 歴史的な断末魔を残し、ドルゲ、今度こそ消滅(笑)
 改めて最後に、ドルゲがこれまで直接出馬しなかった理由が判明しましたが、最後の最後で凄い台詞を残していきました、ドルゲ。 シルエットが印象的かつ特徴的な台詞があり、適度に自分で働く、いいボスキャラだったとは思います。最終回、終始、 巨大な影として現れる、というのも力関係の対比として良かったですし。
 宇宙空間で衝突した二つの巨大なエネルギーの余波は地球をも揺らし、 バロムワンはドルゲと相討ちになってしまったのかと不安げに空を見つめる5人だったが、すくっと崖の上に立つ形でバロムワンが帰還。 歓声をあげる5人が崖の下へと走り寄ってヒーローを讃えるのですが、松五郎と紀子はともかく、 他の3人はバロムワンとの絡みがほとんど無かったので、かなり空々しい事に。
 それを反映するかのように、最終回にして、崖上のヒーローと崖下の5人が、物凄い距離感。
 そう、城戸猛と白鳥健太郎、家族を想い篤い友情で結ばれていた二人の魂はもう……
 「悪の支配者、大魔人ドルゲは滅びた。しかし、宇宙の悪は密かに地球を狙うかもしれない。その時、正義のエージェント、 我らの超人バロム・1は、再び戦うのである。正義と友情が、永遠に地球にある限り」
 ナレーションがまとめに入り、バロム・1がいつものポーズを取った所で、おわり。
 …………猛と健太郎の劇中ラストシーンは、目を閉じたままのバロムクロスとなり、 二人の存在が出てこないまま物語が閉じるという、衝撃の結末。
 正義とはいったいなんだろう、と深く深く考えさせられるラストでした……。
 EDテーマ後に、ドルゲ含めて全魔人が格子状のマス目に並んで次々紹介され、 中央のバロム1だけ動いて爆弾パンチのバンク映像で完、という洒落たおまけが入って完結。
 第1話の感想で「振り返ったら第1話が一番面白かった……という可能性もありそうですが」と書きましたが、 実際エピソードの出来としては第1話がピークだったものの、随所に変な爆発力があってその分は楽しかったです。 筋としては破綻したエピソードがかなり多いのですが、スリラーによる恐怖とショックを主眼に置き、子供を存分に怖がらせ、 後バロムワンが爽快に叩き殺す、という作風が成立して以降は、優先すべき部分には忠実であったと思います。
 そうすると、人間が悪のエージェントにされる、という設定とは相性が悪いので、中盤以降に消えていったのも納得する所。 バロムワンの扱い、ドルゲ魔人の扱い、物語の中心、などなど、路線の細かな修正が多く、 数話単位で作品の基本構造が変化するのが一つ特徴で、それによってテーマ的な部分を詰めていけなかったのは勿体なかったですが。
 第1話において提示された猛と健太郎のキャラクター性、その家族達、正義と悪の心、と掘り下げていけば面白そうな要素が幾つかあり、 特に小学生主人公ゆえの親子の関係や、小学生コミュニティにおける対照的なダブル主人公の立ち位置など、 今作ならではの特徴になりそうだった部分が排除されてしまっていったのは残念でした。
 個人的にはそちら側に舵を切った『バロム・1』を見たかったですが、ヒーローのアクション重視になった時に、 バロム・1の中の猛/健太郎を消してしまったのが物語上の大きな転換点といえ、そこが再浮上か整理されれば別の奥行きが出たと思うのですが、 そうならなかったのは惜しい。
 45年前(!)という事もあり、あれやこれやと惜しい部分の気になる作品でしたが、 ドルゲ魔人――特に人体魔人編以降――のデザインは今日見ても印象的で、非常に面白かったです。異形の恐怖、 というのを押し出した、良い怪人軍団でした。
 とにもかくにも、
 コプーは正義! ドルゲは悪!
 バローーーーーム!!

→〔総括へ続く〕

(2017年10月7日)

戻る