■『超人バロム・1』感想まとめ4■


“ゆくぜ番長! よしこいチビ!
バロム・クロスで変身だ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『超人バロム・1』 感想の、まとめ4(22話〜28話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る

〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕  ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ5〕 ・ 〔総括〕


◆第22話「魔人ヒャクメルゲが目をくりぬく」◆ (監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)
 雷の夜、タクシーに助けを求める純白のドレスの女。
 「化け物って、どんな化け物なんだね?」
 運転手が問いかけると、車内に、るろるろろ〜という不気味な唸り声が響き渡り、女は巨大な目玉の怪物へと変貌する!
 「見たか〜。儂は、地球の全ての人間の目を食う、ヒャクメルゲ。おまえの目がほしいぃ」
 巨大な目玉だけでも気持ち悪いのに左の手の平にも目玉がついているのが更に怖いヒャクメルゲの力によりタクシー運転手は両目を奪われ、 タクシーは電信柱に激突。ヒャクメルゲは二つの目玉を手に悠々とタクシーを降り、夏の怪談シーズンなのか、ホラー演出が止まりません。
 「この世界はやがて、暗黒の世界になるぅぅ」
 次々と人間を盲目にしていくヒャクメルゲの活躍に気を良くしたドルゲは、バロム・1の目を奪うように命令。 女医になりかわったヒャクメルゲは眼科検診で精密検査が必要と健太郎を呼び出し、前回に続いての人体魔人ホラー編において、 巨大な目玉の怪物というビジュアル面だけでなく、病院の検診という子供にとって心理的な圧迫感や恐怖感をともなう要素を組み合わせたのは秀逸。
 ボップの反応から、アルバイトに採用された松五郎のタクシーで眼科に向かっていた猛だが、松五郎の安全運転は制限速度厳守どころか、 自転車にさえ追い抜かれる始末。業を煮やした猛が走行中の車内から窓外にボップを投擲するや自らもドアから飛び出すと、 病院で拘束されていた健太郎の両手が自然と跳ね上がって瞬間移動し、脅威の大脱出から空中バロムクロス(笑)
 眼科医院に格好良く飛び込んだバロムワンはヒャクメルゲの催眠光線に苦戦するも、爆弾パンチで反撃。 猛を眼科まで乗せてきたつもりの松五郎がタクシーを止めると、そこに院内から飛び出してきた百目女が乗り込んでしまう、 というのは面白い交錯。マッハロッドに追いつかれそうになった百目女は松五郎に催眠術をかけると姿を消し……その狙いは、ボップ!
 「あのにっくきボップさえ奪えば、バロム・1は非常に困る。それが私の狙い。いひひひひひ」
 困る、確かに困るのですが……
 「ボップだ。憎いボップを取り上げれば、バロム・1は必ず困るのだ」
 目的は「困る」でいいのか。
 ドルゲ探知機として非常に厄介にせよ、いつの間にやらドルゲ一党から憎しみの感情を向けられているボップですが、これもしかして、 コプーの魂の一部とか宿っているのでは。そう考えると、気がつくとポケットに入り込んでいる・突然変な音を出す・ いつの間にか機能が増えている、などの各種の謎になんとなく納得ができるのですが、恐るべし、宇宙的呪いのアイテム。
 ヒャクメルゲに操られる松五郎が猛の机からボップを盗み、深夜の不審な行動を気にして追いかけた猛姉、 いきなり「松おじ!」と背後から突き飛ばして墓石に叩きつける(笑)
 本編初といっていい活躍なのですが、どういう認識の末の行動なのか(^^;
 松五郎の怪しい様子に気付き、事前にバロムクロスして寝たフリしていたバロムワンも駆けつけるが、 ボップは取り戻すも猛姉がさらわれてしまい、祝・今度こそ単独で人質達成。
 猛姉を助ける為、魔人の要求に応えたバロム・1は、自分の目を渡す事を承諾。
 ナレーション「バロム・1の目は、一瞬にしてヒャクメルゲに奪われた」
 本当に取られた。
 その手前で逆転するのかと思ったら、目の部分が白く塗りつぶされ、視力を失ってアントマンにいたぶられる、という衝撃の展開。 結局はバロムイヤーで居場所のあたりをつけ、体当たりで取り返すのですが、刺激的な映像が続きます。
 猛姉を助け、メイスっぽい何かで殴りつけてくるアントマンを蹴散らしたバロム・1は、ヒャクメルゲに3連爆弾パンチ。 もげ落ちた頭部の巨大な目玉にトドメのバロムチョップを浴びせると、ヒャクメルゲは木っ端微塵に吹き飛ぶのであった。
 前回の唇は、スーツアクターの左手を胴の方に差し込んで下唇を動かし(その為、片手の怪人)、 今回は胸部がめくれるとそこにも巨大な目玉が、と人体パーツ魔人は凝った造形。徹底したホラー演出に、 ヒャクメルゲを演じた女優・声優の怪演が合わさり、インパクトの強いエピソードでした。
 次回――今度は脳で、怪奇と猟奇はまだまだ止まらない。

◆第23話「魔人ノウゲルゲが脳波を吸う!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:滝沢真理)
 見所は、「おい、猛、健坊、入れよ」と廊下に声をかけたら、物凄く普通に病室に入ってくるバロム・1。
 日常パートへの侵食が止まりません。
 ノウゲルゲのドルゲ帽子により脳波を吸い取られ、老人と化してしまった青年の記憶を探り情報を得るバロムワン。 青年の弟に対して「男の子が泣いてはいけない」と励まし、このゲスト少年との交流が通して強調されるのですが、 デートのだしにと弟を連れ出し一人でニヤニヤし、、彼女を待っている間にふかしたタバコをポイ捨てする兄の姿に全く好感が持てず (タバコの扱いは40年前なので仕方ないですが)、そんな兄を慕う弟の姿にも感情移入しにくい困った作り(^^;  魔人から弟をかばうとか、最初に兄に好感を持たせる仕掛けが一つあるだけで、だいぶ全体の印象が変わったと思うのですが。
 巨大な脳の怪物である魔人のデザイン(なお頭部にあたる箇所が無いと見せて下半身に小さな顔が存在しているという一工夫したデザインで、 なんとなく『ウルトラセブン』の宇宙人を彷彿とさせます)と、老けメイクの廃人演技がひたすら気持ち悪く、 怪奇ショッキング路線が続くのですが、猛&健太郎パートとバロム1パートがまるで繋がっていないなどあまりに雑で、 もう少し丁寧さが欲しくなります。
 怪しい帽子の謎を追う内、松五郎もドルゲ帽子の被害に遭ってしまい、木戸家へと運び込まれる事に。
 「おまえの兄貴の木戸刑事を忘れたか」
 ……猛父は、どこまで刑事である事に自己同一性を依拠しているのか(笑) 拳銃を奪われたショックで、廃人になるわけです。
 バロムワンは脳ゲルゲとの戦いに臨むも少年を人質に取られ、「動けまい。やれ!」とアントマンに襲われるが、喰らったのは最初の一発だけで、 平然と、回避・回避・反撃・刺殺。
 コプーは正義!
 ドルゲリングをかぶせられて脳波を吸収される危機に陥るバロムワンだが、少年が落としたハンドライトが脳波を跳ね返す事に気付き、 必殺・脳波返しでピンチを脱出すると、3連爆弾パンチで脳ゲルゲを撃破。
 劇中でハッキリとした描写と言及がなくてわからないのですが、少年が持っていたハンドライトは、 以前に出てきたバロムペンダントと同じものでしょうか?? だとするとメタ的には玩具販促キャンペーンなのでしょうが、 物語途中からやたら世間的な知名度が上がっていると思ったら、駅前で配り歩いていたのかバロム・1!
 宣伝 宣伝 僕らの バーロム ワーン

◆第24話「魔人ウデゲルゲは神社で呪う」◆ (監督:田口勝彦 脚本:島田真之)
 「悪魔シリーズ・奇祭の村連続殺人事件 沈黙する少年に迫る恐怖の手 昭島観光ホテル202号室にドルゲが笑う!  東京〜松阪間フェリーに秘められた謎が解ける時 デッドライオンは既に消えていた!」
 サブタイトルコール時に、<悪魔シリーズ>と追加。
 今回の人体魔人は、ウデゲルゲ。下半身・黒タイツ+上半身・巨大な右手の被り物という、 冷静に見るとギャグ以外のなにものでもなさそうな姿なのに、生々しい肌のてかりと、人差し指の先に一つだけついた目玉が超怖く、 ギャグを全く感じさせないのが凄いデザイン。なお構造上、恐らく親指と小指の所に入れた両腕を常に斜めに広げたような体勢の為、 中の人はきっと辛い。
 久々にドルゲ奴隷を作りたくなったドルゲの指示により、小さな村の村長を殺害して成り代わる腕ゲルゲ。
 「俺が村長になればこの村の人間はみんな俺に従う。俺の奴隷になる。ふふふふふふふ」
 ちょっと待ってドルゲよりその村の方が怖い。
 この光景を目撃した昇少年だが、目撃したその時に人気の無い神社で賽銭泥棒をしていた為に、 真実を言うと自分の泥棒がバレてしまうのではと恐れ、なかなか思い切る事ができない。 バロムワンとゲスト少年の交流を軸にした構造は前回と同じですが、少年の葛藤が前回より遙かに共感しやすく、 またそこに「悪の心」という今作のキーを絡めているのも秀逸。
 落ち着いて考えれば賽銭の件は誤魔化せそうではあるのですが、少年を沈黙させる為、 訥々とした不気味な口調で心理的に追い打ちをかけて、罪悪感を煽る腕ゲルゲも良い味を出しています。
 久々登場の白鳥デスクのコネで照島観光ホテルに遊びに来ていた健太郎と猛はこの事件に巻き込まれ、 腕ゲルゲに襲われた猛がボップを投げると、全く猛の危機を知らずに普通に歩いていた健太郎が突然振り返って大ジャンプするのが 操り人形みたいで超怖いですがコプーは正義!
 村ではドルゲ奴隷を生み出すための奇祭の準備が盛り上がり、バロムワンになら真実を伝えられるかもしれない、 と考える少年に更なる揺さぶりをかける腕ゲルゲ。
 「喋れるかな……?」
 「話す、みんなに話すよ俺。バロム・1に嫌われる子供になりたくないもん」
 地道な宣伝活動が功を奏し、世間的に認知度の高まるバロム・1ですが、劇中の子供達視点で見た時に、 正しくありたいと思った時に勇気を与えてくれる存在、としたのはメタ的なヒーローの意味も重ねて巧い位置づけ。
 「無駄だ。バロム・1は悪い心の人間が一番嫌いだからな」
 ……そうですね、下手するといきなりバロムフォールですね。
 果たして巧妙に仕込まれた連続殺人事件の真犯人は誰なのか――。海岸線で独り佇む重要参考人・昇に、 名探偵・バロムワンは指を突きつける。
 「君は知っているね」
 シチュエーションがはまりすぎて、変に面白かったです(笑)
 敬愛するバロムワンに出会った昇だが、腕ゲルゲの脅しが脳裏をよぎり、バロムフォールへの恐怖から真実を口にする事ができない。
 「何も怖がる事はない。さあ、話すのだ」
 話せばすぐに楽にしてやる!
 「昇くん、君に一番必要なのは君の勇気だ」
 今作の人物配置から言えば、子供の罪の意識に対して、同じ小学生目線の猛や健太郎がアプローチして解きほぐす、 という物語の作り方もあったとは思うのですが、ここで年長者ポジションとしてのヒーローからの説得になってしまうのは、 特色を活かすかヒーローを前面に出すか、その両取りまでは行けないという今作につきまとうジレンマを感じてしまうところ。
 「いいかね、私を信じるんだ」
 良い事言って力強く少年の肩に手を置くバロムワンだが、ヒーローへの信頼よりも
 (間合いに入られた……!)
 と恐怖が勝った昇は逃亡(笑)  まさかの《説得》失敗で、「バロム・1に嫌われる子供になりたくないもん」から勇気を出して悪事を認める(「悪の心」を乗り越える) 事なくクライマックスに突入してしまうという、壮絶なコースアウト。
 このあと昇少年は奇祭を妨害して偽村長の腕ゲルゲが真犯人であると名指し、現れたバロムワンが「昇くん、 よく言ったぞ」とボップをぶつけて村長の正体を暴くのですが、ここまでの積み重ねが全て瓦解して岸壁から投げ捨てられてしまい、 どうしてこうなった。
 バロムワンが腕ゲルゲを倒すと賽銭泥棒については全く言及されないまま大団円を迎えてしまい、 話の流れからすると昇少年は母親に告白したりするのでしょうが、色々と投げ飛ばしてしまって惜しい。

◆第25話「魔人ホネゲルゲの白骨が風にうめく!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:滝沢真理)
 前回に引き続いて猛と健太郎達は照島観光中。全人類白骨化計画を進めるホネゲルゲを目撃してしまった兄妹を助け、 計画の阻止の為にドルゲ魔人と戦う事に。強引に挿入される照島ランドPRタイムは仕方ないにしても、通してテンポと話の繋がりが悪く、 冴えない出来。
 骨ゲルゲはトカゲの骨から生まれたという設定で、人体の一部としての骨ではなく、化石怪人といったデザイン。 後頭部に脳がはみ出しているのがグロテスクで、暗闇で明滅する瞳の色が青、というのはなかなか格好いいのですが、知力は低め。
 地元の漁師を特殊能力で白骨化した後、
 「体の中を風が通る……寒い」
 というのが何か洒落た決め台詞なのかと思ったら、
 ナレーション「ホネゲルゲは、筋肉を失った為に、少しの風にも寒さを感じるのだ」
 が、凄く台無しでした(笑)
 目撃者の兄妹をさらってバロムワンを倒そうとするも失敗した骨ゲルゲは、兄妹の母を誘拐して改めてバロム1へと挑戦状を叩きつける。
 「動くな! 俺の骨ミサイルを受けてみろ!」
 勿論、バロムワンはよける。
 「おまえの骨を受けてみろ!」
 アントマンを蹴散らしたバロムは、至近距離で骨ゲルゲのあばらに手を突っ込み、取り外した骨ミサイルを逆に直撃させるが、 骨ゲルゲはバラバラになっても瞬く間に再生してしまう。唐突に、風に弱いという敵の弱点に気付いたバロムワンは距離を取って骨ゲルゲを風下に追い込むが、 骨ゲルゲは完全に見捨てられる形になった人質を白骨化。
 「あ! なんて事をする!」

 おい。

 人質に対する投げやりな対応には定評のある正義のエージェントですが、この発言には、 逃亡する犯人の車に空中からの体当たりを繰り返した挙げ句、ハンドル操作を誤った犯人の車が電柱にぶつかって大爆発したのを見て、
 「しまった……。秘密を守る為に自爆してしまったんだ」
 と言ってのけた某ロボット刑事Kさんを思い出してしまいました(笑)
 「俺を倒して、俺の灰を撒けば、骸骨どもは元の肉体を取り戻す事が出来る」
 更に突然、白骨からの回復方法をベラベラ喋り出した骨ゲルゲは、白骨呪いの抱擁によりバロム1を追い詰めるが、 バロムドリラーで巻き起こされた風に防寒マントをはぎ取られ、弱った所に爆弾パンチでジ・エンド。
 兄妹の母親はじめ被害者達はその灰で元に戻って大団円となるのですが、そこまでやって元に戻るなら何も白骨化でなくて良かったのでは……と、 映像上のハッタリを優先しすぎてしまった感。勿論ハッタリは必要ですし、今作の狙いは明確に“子供を怖がらせる事”に向かってはいるのですが、 この所の滝沢脚本が“怖がらせ”以外の内容があまりに無い事もあり、バランスの悪さが気にかかってしまいました。 同じ“怖がらせ”でも眼科検診など心理的効果を交えている伊上脚本と比べて、工夫もないですし。
 またゲスト兄妹の出番がやたらと多く、どういうわけか照島ランドPRタイムも担当したり、人妻の折檻シーンに時間を割くのなら、 もっと猛と健太郎の出番を……というのも気になってしまいました。まあ、 猛と健太郎の二人がメリーゴーラウンドできゃっきゃうふふされても、それはそれで困りますが!

◆第26話「魔人ハネゲルゲが赤い月に鳴く」◆ (監督:折田至 脚本:滝沢真理)
 「おまえを殺しはしない。そのわけはいずれわかる。殺すより恐ろしい悪。それは、愛する者を変えてしまう事だ。恐ろしい怪物にな」
 醜い始祖鳥の羽より作られた悪のコウノトリ・ハネゲルゲは、呪いの赤い月の下、 次々と赤ん坊をさらうとドルゲの赤ん坊へと変えていく。
 「ドルゲの赤ん坊は、赤い月が欠けゆき、三日月になる晩までに育つ。その夜、三日月が山の端にかかる時、恐ろしい正体を現し、 母親を殺して夜空に飛び立ち、地球を征服するのだ。るろろろろろろ……」
 母親の愛情を利用し、赤ん坊を破滅への尖兵にしようと目論むドルゲの狙いに気付いたバロムワンだが、 すんでの所で羽ゲルゲには逃げられてしまう。
 「ドルゲの赤ん坊の姿に母親が気が付いても、母親は自分の子を殺す事はできぬ。バロム・1も手が出せぬ筈」
 「ハネゲルゲよ、バロム・1を侮ってはならん」
 ヤツなら、殺りかねない。
 「正義に取り憑かれ、命も惜しまず、戦う奴だからな」
 珍しくドルゲがバロムワン評を口にするのですが、まさしく宇宙的正義の亡霊に取り憑かれているも同然と考えると、 的を射ているだけに、劇中においては痛烈な皮肉であり、メタ的にはかなり酷い指摘です(^^;  悪のエージェントがドルゲ細胞の汚染により生まれるように、正義のエージェントもコプー細胞の汚染によって生まれるわけで、 コプーは正義! ドルゲは悪!
 バロムアイにより、カラス天狗のようなドルゲ赤ん坊の真の姿を目にしたバロム1は直接赤ん坊を回収しようとするが、 スキルLVが低すぎて今日も《説得》ロールに失敗(笑)
 「いやー、しかし……」
 「キヨシ、おまえがどんな子でも、誰にも、誰にも、お母さん渡しはしないからね」
 母親は赤ん坊とともに部屋に閉じこもってしまい、ここで母と弟を守ろうと、上の子供がバロムワンの前に手を広げて立ちはだかる、 というのが秀逸。
 「……仕方がない。 まとめてバロムブレイクしよう 夜を待とう」
 その夜――赤い三日月の晩、悪の子供達を覚醒させようとする羽ゲルゲの奇声を捉えるバロムイヤーは地獄耳。
 バロムワンはサンシャインボップで赤い三日月を消し飛ばして昼に変え、ドルゲの計画を力尽くで木っ端微塵に粉砕。 羽ゲルゲのくちばし攻撃を受けるがバロムブランコで反撃すると、巨大な目を打撃で潰して弱った所に、バロム爆弾パンチでフィニッシュ。 羽ゲルゲの消滅により、全ての赤ん坊は元に戻った……の?(ちょっと不安)
 “子供を怖がらせる”という要素から離れ、母親の愛情を悪用するドルゲに焦点を合わせてこれまでとガラリと切り口を変えた異色作。 台詞回しや展開も凝っており、母と乳幼児の関係だけではなく、もう一人の子供が小さいなりに家族を守ろうとする姿が描かれたのも、 話の奥行きが広がって良かったです。
 立ち向かう相手がバロムワン、というのもかなりのひねりで、ドルゲのバロムワン評も含めて、挑戦的な1本。
 それにしても、どうして前回今回と2話連続で、妙齢の婦人を繰り返しいたぶるエピソードだったのか(笑)

◆第27話「魔人キバゲルゲが赤いバラに狂う!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:島田真之)
 見所は、少年を念入りに柱に縛り付け、外から倉庫に鍵をかけるバロム・1。
 そして、その鍵をヘアピンで開ける少女(笑)
 思えば以前に健太郎も自室の鍵をこじ開けていましたし、70年代の地球の小学生にとって、《鍵開け》は基本的なスキルなのです。
 子供達を美しい物を壊さずにはいられない悪の心を持ったキバ人間に変えてしまう魔人キバゲルゲは、 肩から胸部が巨大な唇に見立てられ、そこから突き出した2本の巨大な牙が両腕を為すという、なかなか面白いデザイン。
 玩具屋店主の殺人事件から、現場を立ち去ったオサム少年の身辺を調べる猛と健太郎だが、オサムを気にかける少女カオルからは、 オサムを虐められているのだと勘違いされてしまう。 カオルに襲いかかったキバ人間・オサムを気絶させて倉庫に監禁したバロム・1はキバゲルゲを探すが、その前に、 キバ人間にされた大量の少年少女が立ちふさがる。
 (これでは迂闊に手は出せない……ドルゲめぇ)
 今更ですが改めて、こういった葛藤をバロムワン内部の猛と健太郎に与えて欲しかったな、と思うところ。 2人セットで行動するのも通例になってしまい、序盤の面白みだった2人の個性が皆無になってしまっているのは、本当に残念です。 ……まあ健太郎、かなり序盤に「仕方ない」まで振り切れているので、果たして葛藤するのだろうか、という問題はありますが。
 正義に冒されすぎて葛藤できない主人公達の代わりに、苦しむオサムとそれを見ていられなくて逃がしてしまうカオル、 という形で葛藤をゲストキャラに振り分けているのですが、キバ人間になる前の少年の描写がほぼ無い事もあり、 前回の島田脚本における、賽銭泥棒の少年ほど上手く機能せず。
 キバ少年少女に囲まれてもジャンプ一発で脱出したバロムワンが、オサム少年を人質に取られると急に反撃不能に陥ったり、 カオルが出てきたら唐突にアクティブに反撃したり、今度はそのカオルが人質に取られて慌てたりと、 いつも以上にしっちゃかめっちゃかになってしまい、カオルの歌がオサムの中に残った正義の心を呼び覚ますというのも、 劇的に盛り上がらず残念でした。

◆第28話「魔人クビゲルゲが窓からのぞく!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:滝沢真理)
 霊能力者・影小路に扮し、悪魔の首飾りによって若い女性を次々と洗脳していくクビゲルゲ。 延々と暗いトーンのスリラー演出で洗脳した女性を屋敷に呼び出したと思ったら、
 「おまえは、ドルゲの首飾りを作る為に、働くのだ!」
 人手不足だったのか!
 クビゲルゲは真ん中に頭部のない太い首がでんと構え(例えるなら『タイガーマスク』のミスター・ノー風味)、 両手の先に長い髪を振り乱す二つの頭がついているという、直球でホラーな造形。手に首を持っているとも捉えられ、 その首が宙を飛んで襲ってくるなど、デュラハンやろくろ首の要素も入っている感じ。また、若い女性を下僕に使うという所からの発想か、 夜が明けると棺の中で眠るなど吸血鬼の要素も混ざっており、人間体の影小路がちょっと岸田森風味なのは、 和製ドラキュラとして岸田森が名を馳せた『呪いの館 血を吸う眼』(1971)への意識もあったのかも。
 悪魔の首飾りの洗脳により、姉が行方不明になってしまった少女の話を聞き、 姉を助けてくれるなら大事な人形をあげてもいいという少女の願いに密かに燃える猛と健太郎、 は久々に秘密のヒーローとしての2人が格好良くて良かったです。
 少女を励ます猛姉になんとなくスポットが当たるが特に掘り下げはなく、クビゲルゲにさらわれた少女を追ったバロム1は、 誘い込まれた影小路の屋敷で、隠し通路の奥に地下首飾り工場を発見。
 そうとは知らない影小路は、応接間でバロム1を待っていた(笑)
 バロム1が地下工場を破壊した事で、屋敷に鳴り響く警報……
 「誰だ、地下の洞窟に忍び込んだのは」
 おまえが呼び込んだ奴です!
 クビゲルゲが困惑している内に目を覚ました少女は自力で屋敷を抜け出し、大事な人質に逃げられた、と慌てて探し回る怪人。 それとすれ違う形でバロム1は、ようやく応接間に辿り着いていた(笑)
 洗脳を解くためにクビゲルゲを倒さねばならぬと応接間を探るバロム1は、秘密通路から出てきた棍棒装備のアントマン、 そして一旦戻ってきたクビゲルゲとばったり遭遇。
 「待ってたぞ、バロム・1」
 クビゲルゲ、その場を誤魔化す勢いで、人質作戦を諦める。
 実力でバロムワンを排除しようとするクビゲルゲだったが、どたばたしている内に夜が明けており、苦悶しながら退散。 日光に弱い上に防御手段を持たないという致命的な弱点を突かれ、棺の間を破壊されて陽光の下に引きずり出されると、 破れかぶれになって首ナパームで突撃するも、爆弾パンチで粉砕されるのであった。
 Aパート前半を割いたゴシックホラーのパートは長すぎるように感じましたが、ヒーローにそれを力技で蹴破られ、 目標を見失うクビゲルゲの反応は一周回って面白かったです(笑)

→〔まとめ5へ続く〕

(2017年8月2日)

戻る