■『超人バロム・1』感想まとめ2■


“バローム!” “クロス!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『超人バロム・1』 感想の、まとめ2(8話〜14話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕  ・ 〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕 ・ 〔総括〕


◆第8話「毒液魔人 ナマコルゲ」◆ (監督:田口勝彦 脚本:山崎久)
 ドルゲは地下基地建設の為に、表の顔で札束の山を積んで次々と土地を買収。反対する住民はナマコルゲにさらわせると、 地下の労働力として使役する……という、高度成長期の世相も窺わせる清く正しい地上げ展開。
 一般人と対比に置くと、恰幅のいい謎めいた紳士ミスター・ドルゲと、痩身短躯の召使いという組み合わせの怪しさも増し、 海外ミステリやサスペンスじみた雰囲気も出て秀逸。
 「これでまた2人……ドルゲ様に反対する奴は、地下基地建設の為にこき使ってやる」
 多用される「こき使う」という言葉に含まれる意趣返しのニュアンスが、なんともいえず、首領自らこつこつ働くドルゲ組織らしい(笑)
 ところで前回から、ドルゲ本拠に名称がつくようになったのですが、「ドルゲ洞」「ドルゲ島」? イメージとしては前者なのですが、 どちらとも聞き取れず(どちらでもないかも)。
 健太郎と猛は級友2人(須崎くん、三郎)と休日に水族館へと遊びに行くが、くしくもその地こそ、 ドルゲが地下基地建設の為に土地買収を進める村であった。前夜ナマコに成り代わられた館長は水族館を突然閉めてしまい、 猛や健太郎にも黙って、裏口から侵入する須崎くんと三郎……って、須崎くーーーん!!
 第1話で、「学校のマドンナ」云々というくだりがありましたが、須崎くん、 いざとなったら自分の可愛さで大抵のトラブルは誤魔化せると思っている、割と太い女なのでは。ドルゲは、 こちらを悪のエージェントとして選抜するべきだったのではないか。
 須崎の悲鳴を聞きつけた猛と健太郎は水族館の中へと入り込み、灯りの消えた水族館、というのはなかなかホラー。 配信の画質だと何やっているのかよくわからないのが玉に瑕ですが、児童層に対して、おっかなびっくり怖い物見たさ、 を狙う正調スリラー演出が続きます。
 迫り来るナマコに対してバロムクロスしようとする二人だが、その瞬間、猛が落とし穴に! という意表を突く展開。 まんまと分断した二人を抹殺しようとするナマコだが、何者かの手によって再び落とし穴が開いて健太郎も落下し、水中バロムクロス。
 だいたい露骨な合成か、敵味方のアップ映像をカット割りで戦っているように見せるとなりがちな水中戦ですが、 OPクレジットに水中バレエ団の水中演技指導という表記があり、水中でしっかりと格闘戦を見せた上で、一回転から、 バローーーーームまで決めるという、なかなか面白い映像。
 館内に復帰するバロムワンだが、ナマコは須崎と三郎を人質に取る。
 「この2人を水槽の中に叩き込むぞ? どーだ、手が出せまい!」
 「くそ〜、ナマコルゲ。――行くぞ!」
 知っているか?! バロム・1に人質は通用しない!!
 一応、抵抗する三郎がアントマンに蹴りを入れた隙を突いて、という流れにはなっているのですが、 結局二人ともそのままさらわれてしまうので、人質への配慮はわら半紙より薄い。
 外へと逃げるナマコを追うバロムワンだが、須崎と三郎を連れたまま地下へ逃げられてしまい、 ドルゲの奴隷狩りにより無人となった漁村を探し回る。途中、歩き疲れた健太郎がへばるなどあったものの、 同じく村を探り回る謎の青年を発見する。その男は、九州から本社に転任となり、白鳥家へ下宿する事になっていた新聞記者・海野 (演:水木一郎)であった。
 海野はまるっきり、今回1秒も登場しなかった松五郎の代替えなのですが、白鳥家に下宿するという設定なので、 これからレギュラー化していくのか。松五郎と二人並べても困る気がするのですが、松五郎役の役者さんに、 急なスケジュールなどの問題でも発生したのでしょうか。ドルゲ怪人と普通に対応している、 物陰から明らかにバロムクロスを助けている、など諸事情に通じているようにも見えるのですが、 今回の限りでは全くその辺りに触れられないままオチではゲスト脇役と十把一絡げの扱いを受けてしまう為、凄くもやっとします(^^;
 まあ落とし穴のスイッチを押すシーンは手しか映っていないので、海野だと思わせて、実は全く別の助力者が居た、 というミスディレクションの可能性もありますが。
 水族館の館長を見かけて後を追う3人だが、海野はアントマンに背後から殴られてあっさり気絶。洞穴の奥へ入った猛と健太郎も、 バロムクロス封じの別々の牢屋に閉じ込められてしまう。両手を拘束されて絶体絶命のその時、健太郎が回避したナマコ毒液が鎖を溶かし、 右手の自由を取り戻した健太郎はバロムクロス。
 須崎くんと三郎に思い切り変身を見られている気がしますが、喋らなければ見られてもいいのだ!
 ……この勢いだと最終回、
 「「俺たちはバロム・1なんだ!!」」
 「知ってた」「変身を見た」「わかってた」「うんうん」「気付いて黙ってた」
 みたいに全方位から生暖かい視線を受ける事になるのでは。
 バロムワンは、通路に転がっていた海野に須崎と三郎を頼むと、自らの体をドリルのように回転させ、 洞窟の壁を突き破る荒技・バロムドリラーでナマコを追撃。
 「この毒を喰らえ!」
 と岩陰から不意打ちで毒を浴びるが、
 ナレーション「バロム・1の体は、あらゆる劇薬にも耐えるのだ」
 またもぞんざいに無効化(笑)
 頼みの超能力を防がれて狼狽しつつも体当たりを敢行するナマコだったが、斜面を転がり落ちている内に水分切れを起こし、 ふらふらと水たまりへ向かうその背後から、容赦なく殴る蹴るの暴行を加えるバロムワン。
 「おまえの弱点は水か!」
 「水ぅ……俺の体は、水が無いと駄目なんだぁぁ!」
 「ナマコルゲ、勝負は決まったな!」
 もはや弱点を突かなくても圧勝の状況なのに、 心理的に追い打ちをかけて悪のエージェントの精神をズタズタに破滅させようとするバロムワン、鬼畜。
 「最後の手段だ! この球を食らえ! この毒を吸えばおまえの体は爆発するんだ!」
 だが窮鼠猫を噛む、追い詰められたナマコは切り札の毒ガス弾を投げつける、が、しかし――
 「へ?」
 「バロムワンはなにものにも負けん!」
 両手を広げて平然と爆弾を受け止めたバロムワンは、ナマコを抱えてフライングバロムフォールを放ち、 いまだかつてないど派手な角度からの落下で、ナマコは大爆発。……おまえの運、良くなかったな!
 そしてその爆発により洞穴の壁が崩れ、囚われていた村人達が脱出に成功。
 一歩間違えると、落盤で全滅していましたが……よっしゃラッキー!
 大宇宙の正義、それすなわち、適者生存。
 伊上さん以外の脚本家が入り、話のパターンを変えてきてくれたのは良かったです。今回が特別面白かったというわけではないですが、 少年冒険活劇ものの体裁を取ってくれれば話のバリエーションが広がりますし、今作として最低限の面白さはキープできると思うので、 この路線を続けて期待したい。

◆第9話「冷血魔人 クモゲルゲ」◆ (監督:田口勝彦 脚本:滝沢真理)
 「ドールゲー。悪の卵から現れるのは悪。悪のエージェント、ドルゲのアントマン達がおまえをさらうのだ」
 ドルゲはエージェントの素体として、小学生向けの絵画教室を開いている画家・菊村を地下へと拉致。 地中から渦巻き模様の卵が現れるとアントマンが誕生する映像は、よくわかりませんが勢いは面白い(笑)
 地下帝国では不気味の絵の描かれた巨大なキャンパスが内側から引き裂かれ、
 「ドールゲーーー」
 と、微妙にコントめいて登場するドルゲ、自分の家で何をしているのですか(笑) 連戦連敗のダメージなのか、 随所に挿入されるおどろおどろしい絵と相まって、少々、精神が不安定気味に感じます(^^;
 「バロム・1を倒し、ドルゲのテスト用捕虜を集めてくるのだ」
 菊村が姿を変えたクモゲルゲは、目玉の中に白目が抜いてあるのがグロテスクというよりコミカルに見え (今でいうとエグゼイドっぽい瞳)、声といい見た目といい、菊村先生の方が怖い(笑) そして何故、 吠え声が「ギガ」なのか。
 健太郎がこの菊村の所に絵を習いに行く事になるが、習い事より体を動かして遊ぼうぜ、 という猛を「野蛮人」呼ばわりして喧嘩となったり、その猛が打ち込んだホームランボールが窓ガラスを割って菊村家に飛び込んだ事で助けられたり、 という展開は小学生主人公らしいギミック。
 二人はバロムクロスするが、クモは絵画教室に通う少女・マツミを人質に逃走。助け出したマツミとバロム・1が、 顔見知りと思われる会話をごく普通にかわすのですが、マツミちゃん、いったい何者。あまり派手に活動しているイメージは無いのですが、 バロム・1もいつの間にやら、“みんなのヒーロー”として世間に認知されているのか。
 人質を奪還されたクモはすごすごと地下に逃亡し、ドルゲより更なる超能力を授けられる。
 「さあ行けー! そして人をさらい、テスト用の捕虜の檻をいっぱいにし、バロム・1を倒し、おまえの使命を果たすのだ」
 指示は一つでお願いします。
 日本語の不得意な人みたいになっているドルゲは、今回どうも、情緒不安定気味に見えてなりません(笑)
 再出撃したクモは次々と市民を卵に入れて地下へとさらっていき、ナレーションの発声でアジトは「ドルゲ洞」と確定。
 一方、この連続失踪事件を記事にした日読新聞の白鳥デスクの下を、 根拠無く世間の不安を煽っているだけだと報道の中止を求めて木戸刑事が訪れていた。
 「新聞社には新聞社としての立場があるんですよ!」
 「いかん、この俺が許さん」
 イリーガルヒーローみたいな事を言い出した木戸刑事の、官憲の横暴を振りかざす姿に記者魂の燃え上がった白鳥デスクは反発を強め、 その対立は会社を訪れた二人の息子を巻き込んで大炎上。
 「よーし、そんならもう、君の息子とは、付き合わせないからな」
 (人の×××で飯食ってるブン屋風情がお高くとまりやがって。扇風機みたいにベラベラよく回る舌だが、 口も軽けりゃ頭の中身も風船みたいに軽いと見える。てめぇんとこの口ばっかり達者な小僧と一緒に居たら、 うちの猛まで薄っぺらくなっちまう。部屋にとじこもってクロスワードでもずっと解いてろ!)
 「ああ! こっちこそ望むとこだ」
 (いい情報源だと思ってちょっとおだてたら調子に乗りやがってこのポリ公が。鬼刑事だかなんだか知らんが、 間抜けな犬ほどうるさく吠えるとはよく言ったものだ。あんたのとこのバカ息子と付き合っていると、 大事な健太郎まで頭が空っぽになってしまう。あんたら親子は山にこもって脳まで筋トレがお似合いだ!)
 変身ヒーロー物で、昭和40年代の家長主義が噴火するという、あまりにも予想外の展開。
 「あの猛と付き合うなよ。いいな。……いいな!」
 「やだよ!」
 「よーし、猛と付き合うなら、監禁だ」

 お父さーーーん。

 70年代的な仕事人間ではあるものの、インテリ肌の良識派と思われた白鳥父が、思わぬ形で大暴走。子供同士は仲が良いのに、 父親同士のメンツのぶつかり合いで間を裂かれて深刻な事態に……というのは今作ならではの変化球が良い所に決まりました。
 一方、立場が小学生寄りかと思われた松五郎も意外と冷たく、ロープで縛って猛を拘束……って、 木戸刑事に買収されていた。
 かなり最低な感じになった松五郎は猛の口に猿ぐつわまでかませ、そこにやってきた事情を知らない姉、 猛が悪戯を叱られたのだと思い込み、轡を更にきつく締める(笑)
 この当時の作品を色々見ていくと他にもぶつかるのかもしれませんが、未だかつて見たことのないクラクラする展開で、 冷や汗が出ます(笑)
 片や監禁、片や緊縛、果たして真ヒロインに近づくのはどっちだ?!
 宇宙最高裁判所の判断が待たれる中、謎のアイテム(造花?)で内部からさらりと鍵開けに成功した健太郎だが、 白鳥家に出現したクモゲルゲにさらわれてしまう。猛の部屋には、健太郎をさらった、という投げ文が放り込まれ、 割れた窓ガラスを利用してロープを切断する猛が、健太郎に負けず劣らずの冒険野郎ぶりを披露。
 EDテーマをバックに、罠を覚悟で健太郎を助けに走る猛。ヒロインゲージのぎゅんぎゅん上昇する健太郎はボートに乗せられて 「来るな!」と叫んでおり、これは猛がボートに辿り着いた途端にボートが爆発するやつでは、と身構えていたら、 池に飛び込んだ猛を襲う水柱。水中にアントマンが待ち構えていた? という事かと思われますが、 健太郎がボートから手を伸ばして水中でバロムクロスしてしまい、待ち構えて罠を張ったにも関わらず 「健太郎と猛を近付けてはいけない」という基本の基本がすぐに放棄されてしまうのは残念。
 ボートに爆弾なら「2人が近づこうとするのを逆に利用する」罠になりますし、 当時のヒーロー番組としてはこのぐらいの障害があれば充分盛り上がったのかもしれませんが、 バロムクロス対策が毎度雑に破綻してしまうのは、もう一工夫欲しくなる所です。
 水中から飛び出したバロムワンは、突然の手持ち武器・バロム銛を投げつけてアントマンを刺殺。
 「マツミちゃんはどこだ!」
 とクモゲルゲに向けて叫ぶのですが……いつそんな話に(^^;
 クモゲルゲはドルゲより付与された超能力でクモ糸を放つも、肩を揺らしてそれを笑い飛ばす正義のエージェント。
 ナレーション「バロムの体は、クモゲルゲの電気糸にも耐えるのだ」
 ストロンガーばりに何もかも通用しない。
 恒例のカーチェイスでクモを追い詰めたバロム1は、バロムブレイクで高所から叩きとして弱った所をバロムフライからの超高度バロム踏みつけを浴びせ、 クモは卵に戻ろうとするも爆死。その際に超能力の反動なのか、地底に捕らえられていた捕虜達は卵に乗って地上に帰還し、 菊村も人間の姿に戻り……今回は、みんな運が良かったな!
 捕虜はそのまま、菊村は爆死、という酷い結果になるかと思ったらマイルドに着地しましたが、基本、 悪のエージェントの変身前が登場した場合は人間に戻る、という形になるのか。
 マツミは大団円シーンの絵画教室にごくごく普通に登場し、編集段階で、だいぶカットでもあったのか謎(^^;
 木戸刑事と白鳥デスクの軋轢も特に触れられないままなのですが、両父の問題が次回に続いたりは……しないだろうなぁ……。 罠の突破が毎度の『バロム・1』で大雑把だったのは残念でしたが、途中の予想外の、しかしあり得る展開部分は面白かったです。

◆第10話「地震魔人 モグラルゲ」◆ (監督:折田至 脚本:伊上勝)
 「出やがったなぁ……柔道5段、空手3段の木戸松五郎の腕を知らないな! 剣道6段、空手5段の、三条先輩と合わせて19段。 ひとり3段で片付けてやる!」
 こういう台詞は、伊上さんは実に上手い。
 ドルゲは地上侵攻の為の前線基地として地上にドルゲ第一マンションを建設。夜中、 地底へと沈んだマンションは何事も無かったかのように再浮上するが、なんと住人まるごと洗脳されてドルゲの忠実な下僕と化してしまうのだった!
 『ウルトラセブン』の某団地宇宙人を思い起こさせるエピソードですが、集合住宅の住人が(自分以外)まるっきり何者かと入れ替わっていた!  というアイデアは系譜がありそう。
 先輩のツテでこのマンションで夜警のアルバイトをしていた松五郎は、沈みゆくマンションから先輩によって逃がされるが、 途中で気絶して翌朝目を覚ますと、そこは何故かマンションの屋上。木戸刑事から呆れられた松五郎は、猛と健太郎をともない、 一緒に怪現象を目撃した筈の先輩の元へ……。
 猛をそのまま大人にしたような雰囲気の三条先輩は、後輩を先に逃がしてマンションに残り竹刀一本でアントマンに立ち向かうなど、 見た目はともかく魂がやたら男前。
 だが三条もマンションの住人同様にドルゲに洗脳されており、その誘導で猛&健太郎と松五郎は分断されてしまう。 猛は罠にはまって落とし穴に落ち、助けを求めて伸ばす手が土中に飲み込まれていく、という映像がエグい。 地下でモグラルゲに土をかぶせられ、更にエグい。
 助けを求めて松五郎と合流した健太郎も2人まとめて落とし穴に落ちてしまい絶体絶命となるが、 根性で脱出を目指して横穴を掘り進んでいた猛が地中でモグラと遭遇し、 健太郎&松五郎が捕まった落とし穴の壁の向こう側で猛とモグラが格闘をしている、 というのを一画面に収めて見せる趣向は面白いのですが、どうもコントめいた映像に(^^;
 猛の叫びを聞いた松五郎は、大人の意地を見せ、空手三段の正拳突きでコンクリートの壁を破壊。
 コメディリリーフとして間の抜けた人格を与えられた都合で、 あまりにも雑な扱いの上に精神的に不安定みたいな描写が続いている事のフォローを考えて活躍の場を与えたのでしょうが、 やりすぎてすっかり危険人物になってしまいました。
 猛と健太郎はなんとかバロムクロスし、モグラは逃走。フロントガラスに渦巻き模様が書いてあるドルゲジープが、凄く、 走らせづらそう。
 アントマンによる地雷……というか自走ロケット攻撃が直撃するも無傷なマッハロッドだったが、 一計を案じたバロムワンは煙幕を出して車が破壊された偽装をすると、 安心してアジトへ向かうモグラのジープ後部に張り付く事にまんまと成功。
 「ドルゲ様、やりました。バロム・1は片付けました」
 第二ドルゲマンション予定地に到着したモグラは、そこに現れたミスター・ドルゲに胸を張って報告するが、 ドルゲはそんなモグラを冷たく一瞥する。
 「……愚かな。バロム・1を始末するどころか、この第二ドルゲマンションの場所まで奴に報せてしまった。――見よ!」
 とドルゲが視線を動かすと、主題歌インストと共に崖の上に仁王立ちするバロムワン! と格好いいヒーロー演出。
 2人で回している監督ローテも三巡目に入ってそろそろ変化をつけ始める頃合いなのか、 今回バロムワン統合人格の台詞がだいぶ増量なのですが、アントマンも手斧や槍で武装するようになり、岩を飛ばしながら出てくるなど、 色々細かいハッタリを付け加えて、全体的にアクション演出が強化。
 アントマンを蹴散らすも土中に引きずり込まれそうになるバロムワンだが、格闘戦でモグラのゴーグルをはぎ取る事に成功。
 「目が焦げる……!」
 お約束通りに太陽光線に弱かったモグラが逃げ出した所を背後から捕まえ、豪快にバロムスイングで投げ飛ばすと、 カメラに向かってレッ○マンばりにまっしぐらに突撃して放つバロムハイキックでモグラを爆殺。
 これにより正気を取り戻した三条は、落とし穴の松五郎を助け出して最後までやたらな男っぷり。マンション住人ともども、 渦巻き模様は完全なアントマン化ではなく、一時的な洗脳だった模様です。
 ラストは猛と健太郎ではなく、バロムワンがマッハロッドに乗って走る姿にナレーションが被り、ここもバロムワンの出番増量で、 次回へ続く。……だんだん人格の統合が進んで分離できなくなるのではないか、と少々不安ですがコプーは正義!
 次回――「今度はゲジゲルゲが出てくるぞ〜。何をするのかなぁ?」
 サブタイトルの読みはおどろおどろしいのに、どこまでも、軽い次回予告であった。

◆第11話「毒ガス魔人 ゲジゲルゲ」◆ (監督:折田至 脚本:滝沢真理)
 見所は、神経ガスを吸って頭をやられるゲストヒロイン。
 「あー、赤いちょうちょが……」
 ゲジゲルゲの神経ガスによって精神に異常を来した人々を、ドルゲージ心理学研究所の患者として診察し、「入院」と称して拉致。 労働力として扱い、地下空洞に蓄積されていた毒ガスを地上に噴射する事で地球を我が物にせんとする、 用意周到と言えばいいのか迂遠と言えばいいのか悩ましい作戦を展開するドルゲ。
 ゲジゲルゲの人間体が下地(げじ)博士だったり、ゴミ焼却場の煙突から出た赤いスモッグを浴びた人々が次々と狂気の笑みを浮かべたり、 なんだか『コンドールマン』を思い起こす描写です(笑)
 「大金は出しても口は出さぬという、まことにご立派な方で」
 と、研究所開設の共同会見で博士がミスター・ドルゲを褒めそやす世知辛い描写は、凄く『バロム・1』ですが(笑)
 ……どうして今作は、大人社会の濁った灰色を定期的に視聴者に突きつけてくるのか。
 いよいよ面倒くさくなってきたのか松五郎がすっかりドルゲの悪事を認識しているのですが、コプーの呪いの為に、 松五郎は猛&健太郎の変身を明確に見てはいけない、という縛りがまさしく作劇を呪縛しており、 余計なテンポの悪さといらぬ手間を生む事に。さすがにどう見ても松五郎は知っていて黙っている (これで気付いていなかったらドルゲージ心理学研究所に入院した方がいい……)のですが、 設定上の縛りが完全に作品の足を引っ張ってしまっています(^^;
 毒ガスを一気に地上に噴出させようと目論むドルゲだったが、間一髪、煙突から地下施設へと飛び込んだバロムワンがそれを阻止。 バロム真空投げでゲジゲルゲを爆殺し、ドルゲ毒ガス作戦は失敗に終わるのであった。
 次回――出た、行川アイランド!

◆第12話「魔人キノコルゲはうしろからくる!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:滝沢真理)
 サブタイトルのパターンが変更になると同時に、OPのクレジット表記が縦書きになり歌詞も入るようになったのですが、 全ての文字が凄く画面の中央に寄っていて、見づらい(^^;
 また、台詞が増えてきたと思ったらバロム・1の声が上田耕一から村越伊知郎に変更され、以前より声が太めでいかめしいのですが、 やはり、統合人格の融合が進んでいるのか。
 「地底に生えた醜き毒キノコよ、おまえは悪のエージェント・キノコルゲとなり、人間どもをドルゲキノコにするのだ。 そして地球を悪の支配下に置くのだ」
 一方、電話帳をめくるのが面倒になったドルゲは、1クール目のコンセプトをあっさりと破壊(笑)
 そもそも問題の多いコンセプトではあったのですが、全体的な路線修正なのか、今回限りの事なのか。
 ドルゲ細胞を注入され悪のエージェントとなった巨大キノコは、ぎょろっとした巨大な目玉の焦点が絶妙に合っていないのが効いて、 目玉が入ってからの怪人ではここまで一番の怖さ。キノコの傘を渡世人の三度笠に見立てて仕草や口調がそれらしいなど、 これまでにない遊び心も個性的(なお今作放映の1972年は、1月より主演:中村敦夫によるTVドラマ『木枯らし紋次郎』が放映、 6月には主演:菅原文太、東映製作による映画が公開)。
 近海にウラン鉱脈があったりキャプテン・クックの財宝が沈んでいたりする房総・行川アイランドに現れたキノコルゲは、 漁民やアイランド従業員を次々と巨大なキノコに変えていく。キノコガスによりキノコ人間とされた者達は、 昼間は巨大キノコの姿でじっと時を待ち、夜な夜な人間の姿を取り戻すと仲間を増やす為に活動を開始するのだ!
 太陽光線に弱いキノコ人間にとって、昼間の巨大キノコ姿は正体を隠す為の偽装と説明されるのですが、 松五郎でも不審を抱くレベルの怪しさです。
 「待てよ。これが、ドルゲの仕業だとしたら、もしかすると……」
 その松五郎の大学時代の恩師がキノコ研究の権威という事で、 巨大キノコの正体を調べてもらおうと考える松五郎の知力が悪魔に家族の分まで魂を売り渡したレベルで急上昇していくのですが、 もしやこれは、全く出てこない海野とバロムクロスしたのでは。
 そもそも松五郎と位置づけが被って使いにくそうな海野は3話連続で1秒も出てこないのですが、そういえば第10話では、 松五郎が正拳突きでコンクリートの壁を破壊する、という不自然な行動があり、バロムとは友情のエネルギーを示し、 コプーは正義でドルゲは悪なので、バロムクロスで変身するのだ!
 ゆくぜウミー! よし来い、マツ!
 巨大キノコを調べるキノコ教授だが、正体を現したキノコ人間に襲われ、 光に弱い事に気付いて窓から太陽の光を浴びせると溶けるように消滅。それを見たショックでふらふらと外に出た博士もまた、 キノコルゲに襲われてキノコ人間にされてしまう。キノコ教授の後を追ったバロムワンは待ち受けていたキノコルゲ軍団と戦闘になり、 本日のアントマンは、キノコ型のメイス装備でお洒落。また、海面に日光の照り返す砂浜での戦いは、水中への大胆なダイブもあり、 なかなかの面白さとなりました。
 いい所にキノコパンチをもらって割と苦戦するバロムワンだったが、巨大な反射鏡を利用してキノコに強い太陽光線を浴びせると、 大ジャンプから脳天に叩きつけるバロム爆弾パンチを直撃させる。 物凄い勢いで崖を落下したキノコが無惨に爆死するとキノコ人間達は正気に戻り、かくして房総の平和は守られた!
 母子が必死に探していたお父さんは無事に戻ったものの、家族ぐるみの付き合いをしていた老人は日光の塵となりましたが!
 恐らくキノコ教授はこの件について口をつぐむ(或いは自己防衛反応として悪夢や幻だと思い込む)ので、 老人は失踪・行方不明で処理されると思われますが、コプーは正義!(「フォージャスティス!」に並ぶ汎用性の高さ)
 エピソードの下敷きはかの有名な『マタンゴ』(未見)でしょうが、 ハワイアンショーと巨大キノコ増産が交互に描かれる映像が凄くシュール。それにしても日本全国(?)、 ハワイアンショーにそんなに需要があるものなのか、と70〜90年代作品まで、どこで見ても謎(いや今でも、 観光地では需要あるのかもですが)。
 そこかしこに路線修正の芽が見え隠れしますが、次回あっさりいつのも調子に戻る可能性もあるので、判断保留。 とりあえず前回今回の限りでは、「行くぞ!」と声をかけられて勢いでマッハロッドの助手席に乗り込む(第11話)など、 バロム・1とバロム・五郎のコンビ化が急速に進行しましたが、一方で猛&健太郎の個性と存在感が薄れてしまい、 妥当性を強めたらセールスポイントが見えなくなってしまったのは気に掛かる点。

◆第13話「魔人タコゲルゲが子供をねらう!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:島田真之)
 海底を蠢く悪のエージェント・タコゲルゲがダム爆破作戦に取りかかるが、警備員を殺害した姿を写真に撮られてしまう。 現像した写真を警察に持ち込むも相手にされなかった少年だが、猛と健太郎と出会い、松五郎の発案で写真を街頭で公開し、 それを始末して油断したエージェントの後を追う事に……。
 前回同様、怪人に合わせて凝った手持ち武器を用いるアントマン。今回はタコの足を鞭に見立てて襲ってくるのですが、 まるで痛そうに見えず、集団でタコ足を振り回して人質を叩いたり、首を絞めたりする映像がひどくシュールな事に。
 バロムワンに葬られたかに見えたタコだが、それは油断を誘う計略であり、逆に捕まってしまう松五郎達。 第13話にしてとうとう人質になる猛姉だが、松五郎、ゲスト少年と一緒であり、その価値は三分の一なのであった…… 扱いが面倒くさいからと、一人だけ放置されずに本当に良かった(笑)
 駆けつけた猛は、健太郎の策略でタコにダム爆破について喋らせると、バロムクロス。ダムに仕掛けられた爆弾を無事に解除すると、 爆弾パンチによりタコを撃破するのであった、
 タコは冒頭でダムに爆弾を仕掛けた後、少年に写真を撮影されてしまい、「なんたる失敗、本当は処刑する所だが、 その少年を始末してついでにバロム・1も倒せば許してやる」という命令で行動しているのですが、 その爆弾がそのまま設置されていた為、余計な事をしなければ最初の作戦は明らかに成功していたという、 何とも言えない締まりの悪さ(^^;
 バロムワンのアクション尺が増量している関係で、それに対抗する悪のエージェントの個性を強めようという意図は見えるのですが、 タコが何か喋る前に、いちいち変な動作をしたり、口元で何やらぶつぶつ言う、というのが物凄くテンポが悪くて大失敗。
 頭から湯気を出したり、ハゲ頭をポンと叩いたりするので、基本は「タコ入道」という事かと思われるのですが、 繰り返し入る謎の間合いにも当時の視聴者にはわかる元ネタが何があったのでしょうか……とにかくこれといって面白い要素が無いまま、 ひたすらテンポの悪い展開で、残念な出来。
 ところでバロム・1のスーツの黄身が増している気がするのですが、モデルチェンジ? それとも、融合が進んでいる?

◆第14話「魔人アリゲルゲと13のドルゲ魔人」◆ (監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)
 「もっと岩をーーー!」
 ドルゲは、昼夜問わず働かずにはいられない悪のエージェント・アリゲルゲに、宇宙から飛来するドルゲ菌満載のカプセルを回収し、 首都を狙った細菌テロ計画を指示。ところがそのカプセルは海水浴に来ていた松五郎に直撃、徹夫という少年に拾われる事になり、 少年に迫るやたらと気ぜわしいアリゲルゲの前に、立ちはだかるバロムワン。
 「蟻酸の匂い……するとお前はアリから変化した、ドルゲ魔人!」
 素体が人間ではなく動植物という新設定(?)を、主人公の方から強引にねじ込んできました(笑)
 「がきぃーーーん! ドルゲのエージェント、アリゲルゲ。がきーん!」
 一度はアリゲルゲを退け少年からカプセルを受け取るバロムワンだったが、その前に、 一挙13人の復活ドルゲ魔人が現れる大盤振る舞い!
 EDテーマをバックにしばらく派手なバトルが続き、力技もいい所なのですが、なんだかんだ、 怪人軍団との大立ち回りというのは一定の盛り上がりが生まれます。ところが松五郎と徹夫が人質に取られてしまい、 バロムワンはカプセルとの交換を迫られる。
 しかし……バロムワンに人質は通用しないのだ!
 「爆弾パーンチ!」
 おもむろに跳び上がるので人質を助けに動いたのかと思ったら、天辺の首を獲ってやる!  とばかり不意打ちでアリを強襲するバロムだったが、
 「パンチがえーし!」
 で、ここ2話のフィニッシュブローを防がれてしまう。
 後の『仮面ライダーストロンガー』でも悪の幹部タイタンが、「ファイヤー返し」などでストロンガーの必殺技を無効化していましたが、 「○○返し」は伊上さんの中でお約束なのでしょうか。
 「駄目だ……! 正義の為とはいえ、二人の命を見殺しにはできない!」
 不意打ちを失敗したので理論武装を始めた正義のエージェントは、そんな事を言いながらもカプセルはしっかりと抱きかかえたままで、 人質が本格的にどうでもいい事だけは、濃厚に伝わってきます。
 弱ったバロムワンは13魔人の攻撃を次々と受けて遂にカプセルを奪われてしまうが、松五郎のファインプレーで何とか窮地を脱出。 強敵アリゲルゲを破り、ドルゲの作戦を阻止するべく、さっそく松五郎をパートナーに特訓を開始する。
 「その岩を落としてくれー!」
 「え? この岩を受けるつもりかい? 俺知らねぇよー? 責任持たねぇよー?」
 と言いつつ、一抱えもある岩を崖下へ向けて投げ落とすバロム五郎。
 コプーは正義! ドルゲは悪!
 そもそもバロム爆弾パンチがここ2話で登場した必殺技なので、破られたから新しい必殺技を修得しなくては、 という説得力は薄いのですが、とにもかくにも厳しい特訓の末、雨のように崩れ落ちてくる岩を打ち砕く事に成功したバロムワンは、 必殺爆弾パンチに開眼。直後にさらっと急斜面を降りてバロムワンの元へ辿り着いている松五郎は、 やはり海野とバロムクロスしているとしか思えません。
 バロムワンは再び人質に取られた徹夫少年を救出すると、今度はOPをバックにちぎっては投げちぎっては投げ13魔人を打ち破り、 アリゲルゲも新必殺技で撃破、ドルゲ菌風船爆弾作戦の阻止に成功するのであった。
 元々「爆弾パンチ」は、爆撃機から落下する爆弾のイメージで高空から脳天へのパンチ攻撃だったと思われるのですが、 「必殺爆弾パンチ」はただの空中パンチになっており、色々と意味不明な特訓編(笑)
 しかし、特訓に意味を求めてはいけないのだ!!
 全怪人登場・特訓・新必殺技、と大盤振る舞いのアクション編。猛と健太郎の出番が3シーン程でしたが、 このままドンドン出番が減ってしまうのか(^^; 最近ほぼ「友情」要素が存在しないので、 そろそろ初期のテイストも見たい所ですが、どちらへ向かっていくのかバロム・1。

→〔その3へ続く〕

(2017年6月23日)

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