■『超人バロム・1』感想まとめ1■


“バロムとは、正義と友情のエネルギーを現し
ドルゲとは、地球の平和を乱す、悪をいう
超人バロム・1は、バロムクロスで変身するのだ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『超人バロム・1』 感想の、まとめ1(1話〜7話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕  ・ 〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕 ・ 〔総括〕


◆第1話「悪魔の使い 深海魚人オコゼルゲ」◆ (監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)
 魔人ドルゲを ルロルロロ
 やっつけるんだ ズババババーン
 OPは、『鋼鉄ジーグ』主題歌と並ぶ、水木一郎二大スキャット主題歌(私調べ)ギュンギュギュン。
 大宇宙で、数千年に渡って争い続ける善と悪。悪の化身たるドルゲは地球に飛来すると地の底に密かにその根城を作り、ある日、 地上に向けて行動を開始。
 新宿の目を背景に、電話をかけていた女性を殺害すると、自ら電話帳をめくって悪のエージェントを選抜するドルゲ。
 ……この人本当に、宇宙的悪の存在なのか。
 そんなドルゲの訪問を受けて、闇リーグへの転職を求められる須崎孝一郎さん(ごく普通の中年のおじさん)が物凄い被害者なのですが、 いったい何を根拠に選ばれたのか……。恐らく宇宙的悪の直感が働いたのでしょうが、 犯罪者でも格闘家でも天才博士でもなさそうな須崎は転職を拒否。ドルゲは須崎の娘を人質に取ろうとするが、 父の部屋で怪物の姿を見た娘は外へと逃げ出すのであった……。
 とりあえず第1話ぐらいは、と軽い気持ちで見始めたのですが、バロム・1に変身する小学生主人公の二人組、 白鳥健太郎と木戸猛の描写がとにかく秀逸。
 「殴りたかったら殴れよ。喧嘩に勝ったって、立派な男じゃないんだぞ!」
 「よし、殴ってやらぁ!」
 小柄な秀才肌の健太郎と、体格のいいガキ大将の猛はそりが合わないが、同級生である須崎娘がおかしな様子で走ってくると、 即座に駆け寄って心配するのが熱い。二人の呼びかけが終始「須崎くん」なのも素敵。
 「喧嘩は中止だ、来い!」
 二人は娘から異変を聞き、笑い飛ばすのかと思いきや「おっもしれぇや!」と友人を信じる猛と、「須崎くん、 どうかしてるんじゃないかい?」と頭から否定する健太郎の対比も鮮やかです。
 登場シーンでは、腕力に物を言わせようとする猛に対して心の強さを見せる健太郎の方が格好良く描かれているのですが、 その後すぐに、理性がかちすぎて頭でっかちの面がある健太郎に対して、好奇心もあるが情の厚いという猛の良い所を見せる流れが秀逸。
 「秀才野郎がどうでも、俺は須崎くんを信じるぞ」
 3人は娘を追ってきたアントマン(渦巻き模様の全身タイツを身につけたドルゲ配下の戦闘員)の襲撃を受け、 とにかく須崎くんを優先して逃がす二人が、素晴らしい紳士度の高さ。
 未来戦隊とか未来戦隊とか究極の救世主のメンバーは、そこに正座して各自、爪の垢を拝領するように。
 須崎くんを逃がす事に成功するも、地割れに飲み込まれそうになった健太郎に猛は手を伸ばし、 ここでも「俺に構わず先に行け」を連発する姿が熱い。猛は健太郎を引き上げようと懸命に腕を交差させ……
 「地球の子らよ、我がコプーの力を与える。コプーーー!!」
 それを見ていた、アスガルド辺りから来たような変な格好の老人が奇声をあげると、交差した腕を中心に回転する二人。

「バローム」 「クロス!」
「バローーム!」

 「猛……!?」
 「健太郎……!?」
 「……俺たち」
  「「入れ替わってるー?!」」
 ……すみません、時流に乗らずにはいられませんでした。
 「二人が一人になったかも」
 「物凄い力が湧いてくるぞ!」
 ここに友情のエネルギーを宿す正義のエージェント、超人バロム・1が誕生する!
 バロム1はアントマンを蹴散らし、戦いを終えて気絶した二人は、喧嘩を心配して駆けつけた家族(健太郎母、猛叔父&姉)に拾われ、 そのまま病院へ。二人を心配する母叔父姉に対して、後からやってきた両家の父(健太郎の父は新聞社のデスク、猛父は刑事)は、 大騒ぎするほどの事ではない、と仕事人間のような描写でやや家族の温度差が盛り込まれているのは微妙に面白いところ。あと、 互いの仕事と息子を誉め合う二人の社交辞令の応酬がリアルで怖い(笑) なお、猛父を演じるのは現在では声優として著名な小林清志で、 声の存在感が強力です。
 猛と健太郎が気絶したまま病院に泊まる事になったその夜、一度は立ち去ったドルゲは再び須崎の元を訪れていた。
 「何度でも私は来る」
 マメだ……。
 度重なる安眠妨害にたまりかね、音をあげた須崎はとうとうドルゲの勧誘を承諾。
 「聞く……なんでも言うことを聞く」
 「悪のエージェントになるというのだな」
 「…………なる」
 「よし! お前は、今から深海に棲む醜い魚オコゼのように、悪のエージェント・オコゼルゲになるのだ」

 ひ ど す ぎ る(笑)

 そういう悪の存在なのでしょうが、自分から熱心に勧誘しておいて、どうして醜いのを強調するのか!
 存在自体が悪のガン細胞とでもいうべきドルゲの支配下に入った人間は、心身を汚染されて悪のエージェントと化してしまい、 須崎父は巨大な目玉がグロテスクさを強調するオコゼの怪人に。
 一方、猛と健太郎は夢遊病のようにふらふらと身を起こして病室を後にし……こっちもこっちで操られていた。
 「段々思い出したぞ……コプーは正義!」
 寝ている間にすっかり洗脳されてしまっていた。
 「ドルゲは悪。そして俺達に戦えって」
 もそもそと着替えながら、思い出した状況を整理していく二人。
 「わかった! 俺の力と、おまえの頭を使えって事だ」
 「君の力と、俺の頭を使ったって、大した事にはなりゃしないよ。まだまだ子供さ」
 バディ関係を示しつつ、健太郎の妙にドライな反応が面白い(笑)
 知らない間に変な発信器まで服に仕込まれていた二人だが、そこに須崎父が現れて姿を変え、 バロム1の抹殺を指示されたオコゼルゲとアントマン軍団の襲撃を受ける事に。
 「僕には無理だ。一人だけでも逃げてくれ!」
 「馬鹿野郎。おまえ一人残して逃げたんじゃ、猛番長の名がすたらぁ、行け!」
 自分を見捨てても構わないという健太郎を逃がす猛、猛を犠牲には出来ないと戻ってくる健太郎の姿がそれぞれ熱く、 二人が交差して偶然バロムクロスが発動。しばらく格闘アクションと、発信器が巨大化変形した車でのカーチェイスとなり、最後は、 ビルの上からオコゼルゲを思い切り投擲。
 (オコゼルゲの姿が、須崎に戻っていく……)
 猛兄と須崎娘が駆けつけると、地面に大の字に倒れている須崎父を二人がばつの悪そうな顔で見つめているので、 第1話にして小学生にキルマークがついたのかと動悸が激しくなりましたが、須崎父は無事で、良かった、 本当に良かった……。
 またも操られていた二人は、無言のままその場をふらふらを離れた所で正気を取り戻し、コプーと接触。
 「おまえ達は、生まれ変わったのだ」
 勝手に生まれ変わらせたの間違いでは。
 「おまえ達は、正義の為に戦うのだ。私の命も尽きた。だが二人とも、お前達が、バロム・1である事を、誰にも喋るな。喋れば、 ただちに、災いが……」
 「「災い?!」」
 「その、災いとは……」
 直後、エネルギー切れで爆死(笑)
 大宇宙の正義なるものを自称するコプー、どうやら寿命が尽きかけていたので、 やむなく目に付いた小学生二人を正義のエージェントに仕立て上げたと理由は付けられましたが、驚愕の外道ぶり。
 一応、ドルゲの行動が明確に悪なので、それに対抗するコプーの正義が担保されているのですが、ホント、正義の為なら、 人間はどこまでも残酷になれますね。まあ宇宙的存在なので、地球人類の年齢など誤差の範囲で気にとめていない、 という可能性が高そうですが、連綿と今も継承され続ける、東映ヒーロー伝統の暗黒メンター成分が濃縮されていて、 凄まじい破壊力でした。
 正直、爆死が全く信用できません。
 アクションシーンはそれほど面白くなく、設定上、生身の殺陣が期待できないのは今後の不安点ですが、 ドルゲとコプーのインパクトに加えて、何より健太郎と猛の描写が秀逸で、かなり面白い第1話でした。 振り返ったら第1話が一番面白かった……という可能性もありそうですが、続けて見てみようと思います。
 次回――
 「強盗殺人犯が醜い電気怪人、フランケルゲに、なるんだよ〜」
 予想外の軽さ(笑)
 「ゆけ、バロム・1! ぶっとばせ、マッハロッド! ミスター・ドルゲも、出るぞ〜。次回、「呪いの怪人フランケルゲ」。 みんなで呼ぼう、バローム・1! かっこいー!」
 本編は割とシリアスなトーンなのに、予告ナレーション(田中信夫さんの声が若い)が物凄く脳天気でクラクラ(笑)

◆第2話「呪いの怪人 フランケルゲ」◆ (監督:折田至 脚本:伊上勝)
 今日も地道に悪の活動を続けるドルゲは、木戸刑事が護送していた凶悪犯人を逃走させると地下帝国に招き、 悪のエージェントして勧誘。暗黒ドルゲーズのロゴマークが、 子供向けに描いた虫歯菌のイメージイラストみたいでもう一つ緊張感が足りないのですが、 でかでかとあしらわれたアルファベットのDがいけないのではと思ったら、 バロムワンも額に力強くBとあしらわれていたので、宇宙では当たり前。
 その頃、健太郎と猛はバロムワンの超能力を把握する為に変身しようとしていたが、ただの体当たりになっていた(笑)
 「……よし、色々組み合わせてみるか」
 「うん、まず俺がおぶってやる」
 前回の変身が偶然だった為、まずはバロムクロスの発動方法を探るという遊び心のある展開なのですが、 宇宙的正義を自称していたコプーへの不信感はますます強まります。
 これを布石に、後半クライマックスでバロムクロスを発見するのかと思いきや、意外とあっさり解決するのですが、二人はその変身を、 凶悪犯人が姿を変えた、醜きフナムシの姿をベースにした電気怪人・フランケルゲに見られてしまう。 怪人どころかドルゲにも身許がバレている描写があり、災いは、と思ったのですが……
「だが二人とも、お前達が、バロム・1である事を、誰にも喋るな。喋れば、ただちに、災いが……」
 コプー最後の台詞を確認した所、自分たちから喋らなければ、不測の事態で見られる分には大丈夫な模様。
 木戸刑事が交通事故に遭ったと聞いて病院へ駆けつけた猛の周囲で、
 医者「(包帯ぐるぐる巻きだけど)肉体的な怪我は大した事がないが、精神的ショックが大きい」
 刑事「君のお父さんは刑事の癖に凶悪犯に拳銃盗まれたんだ」
 叔父「責任取って自殺しちゃうんじゃ」
 と次々と口にする大人達が、どいつもこいつも、人間じゃねぇ!
 容態の説明を求められた医者と、子供への気遣いとか薄そうな刑事はともかく、一番デリケートであるべき親戚の叔父さんが、 どうして一番無神経なのか(^^;
 前回、猛の兄なのかと思った木戸松五郎は、木戸刑事の弟で、「就職試験には失敗したが、柔道5段、空手3段(自己申告)」 の叔父と判明。居候なのかはわかりませんが、クレジットの扱いからすると、コメディリリーフ&変身はしないけど毎回それなりに動くという役回りになりそう。
 父のため、バロムワンの力で凶悪犯を捕まえて拳銃を取り戻したいと持ちかけてくる猛に対して、 人間の犯罪は警察に任せるべきだ、と健太郎はそれを拒否。
 「このガリ勉野郎! 親父が、親父があんなに苦しんでんのに、どうして俺がのんびりできるかい! な、頼む、この通りだ。 バロム・1になろう? な?」
 「断る! バロム・1は、個人の目的で動いちゃいけないんだ!」
 ヒーローの力を得た少年達が、その力をどう使うべきかについて意見が割れる、というのは面白い展開で、 猛の情と健太郎の理も上手く対比。決裂する二人だが、木戸刑事への恨みを晴らそうとするフランケルゲが病室を襲い、 松五郎を助けた猛と、コプーに押しつけられたドルゲ探知機でそれに気付いた健太郎は再び合流する。
 しかし、二人がお互いの判断を否定し合っていた事から、探知機に付属する、友情の熱バロメーターは0を指しており、 結構ドライに数値化される友情(笑)
 バロムワンになれず絶体絶命、命の瀬戸際で最後にお互いを認め合った二人は友情パワーを取り戻し、 ビルから投げ落とされた際にバロムクロスが発動する!
 アントマンを軽々と蹴散らすも、怪人の電撃を浴び、胸を押さえて膝を付くバロム1、だが――
 ナレーション「バロム・1の体は、電気を通さない特殊な細胞で出来ているのだ」
 気のせいだった。
 「フランケルゲ、悪は正義に勝てん!」
 反撃に出たバロム1は、腹パンチ連打 → 目つぶし → 連続パンチ → 鳩尾にニードロップ という泥臭い連続攻撃で怪人を追い詰め、 最後は抱え上げてトップロープから叩きつけるバロムフォールでフィニッシュ。
 前回は高い所から投げ飛ばしたら須崎父は人間に戻りましたが、毎回それだとカタルシス薄くなるけどどうするのだろう……と思っていたら、 フランケルゲは、あっさり爆発。
 「やったぞ!」
 「良かったな!」
 えええええええええええええええええええ。
 喜ぶバロム1は、フランケルゲが消滅した後に落ちていた、奪われたピストルを回収する。
 「これできっと元気になるぞ」
 逃亡犯が消滅したまま拳銃だけ戻ってくるという凄く謎の事態で、来週から木戸刑事は資料室送りでは……!
 基本的には『仮面ライダー』における改造人間と同じで、“もう人間ではない”という扱いなのでしょうが、
 〔人間であった頃が明確に描かれている・場合によっては元に戻る可能性がある・ヒーローの中身が小学生二人〕
 の為、悪のエージェントのあっけらかんとした爆殺が物凄い衝撃的な事に。拳銃の顛末を考えても、意識不明の犯人から回収、 の方がまとまりも良かった気がするのですが(^^;
 根本的な所では現代の視点から見ると、人間/怪人に関わらず、小学生にキルマーク自体がどうなのかと感じるのですが、 系譜としては少年探偵とか少年忍者の延長線上で、伊上勝×東映という点からも、時代劇だと思って見ればいいのか。
 なお今回、ドルゲは世界で5本指に入る大財閥の長、ミスター・ドルゲという人間体を披露(付き従う召使役に、 『コンドールマン』でマッドサイエンダーを演じていた花巻五郎)。 いつの間にか東京タワーに地下帝国への専用エレベーターが作成されていますが、もしかして、 地下資源の採掘とかして地味に組織の運営資金を稼いでから地上進出に打って出た堅実派なのか。

◆第3話「恐怖の細菌魔人 イカゲルゲ」◆ (監督:折田至 脚本:伊上勝)
 「時間を守らないって、日本人の一番悪い点なのよ」
 1972年って、世間的にそういう認識だったの……?!
 今回は冒頭から悪のエージェント・イカゲルゲが登場し、山村にある新聞社の支局員を殺害。
 「悪のエージェント・ドルゲマン3号、イカゲルゲ。この村にドルゲ基地を作るのだ」
 この支局員から最後の電話を受けていたのが上司である白鳥デスク(健太郎父)であり、 デスクから相談を受けた木戸刑事は現地の駐在を支局へ確認に向かわせる事に。
 主人公が小学生二人である一方、いつも息子が何かとお世話になっておりますし大新聞のデスクさんの頼みともあれば今後の関係性からも断れませんねはははははああ奥さんお気遣いは無用ですこれにて失礼しますから、 とどうしてこう、大人達のやり取りが妙にリアルなのか(笑)
 くしくも、松五郎の引率でその村を経由するハイキングの予定だった健太郎達だが、 突然ボップが鳴き声のような変な音を出すようになり、懸命に誤魔化す羽目になる健太郎。
 ナレーション「ボップと呼ばれる小型の機械は、宇宙の正義の支配者コプーが健太郎と猛に与えたものだ」
 なんかいつの間にか、支配者になってるーーー!
 ボップに導かれるように進んだ健太郎は、待ち合わせに遅れた猛が他校の番長に絡まれているのを見つけ、 売り言葉に買い言葉でバロム・1について口を滑らせかけた所で、危うく仲裁に入る。
 「このやろー! 俺を、俺とうとうキチガイ扱いにしてくれたな!」
 「僕たちがバロム・1になることは、絶対秘密なんだ。コプーの言う事を忘れたのか!」
 「ちくしょう……正義を守るって事は、辛い仕事なんだな」
 BGMが主題歌の切ないギターアレンジで、妙にしみじみ(笑)
 健太郎はそんな猛に、すぐに頭に血が上って危なっかしいからこれを持ってろ、とボップを押しつける(笑)  ……さすが頭脳担当です。
 ハイキング中、急な雨で村の支局に駆け込んだ子供達は、支局員(イカゲルゲ)に雨宿りをお願いするも嫌な顔をされるが、 健太郎が「僕の父親は本社の偉い人なんですけど、あなた、そんな態度でいいんですか?」的なカードを切り、だからどうしてこう、 あちこち世知辛いのか。
 しかし村は既に、浴びせた者をドルゲマンの忠実な奴隷に変える神経ガスの効果によりドルゲ基地へと変貌しており、 襲撃を受ける猛と健太郎。うら寂しい山村を舞台に、冒頭の殺人シーンや人気のない廃屋の映像などスリラー調の演出が続き、 視聴者が自身を投影しやすそうな少年主人公2人の冒険活劇に、変身ヒーローの要素を組み合わせ、成る程これは人気が出るわけだ、 と色々納得。
 猛が口を滑らせかけたのを機転を利かせて助けた健太郎が、慣れないハイキングでは後れを取って「ガリ勉だけが人生じゃないんだぜ」 とからかわれつつ気遣われるも、肝心な所でその猛が脚を怪我してしまうが、二人の知恵と勇気で切り抜ける、 という2人の関係の回し方も上手く面白みになっています。
 実写作品では色々とハードルが増えるので、“子供の為のヒーロー”から“守られていた子供達がいつかヒーローになっていく” というテーゼを引き出す形が定番の一つですが、“子供そのものがヒーロー”というのも、一つの正調ヒーロー活劇の形であるのだな、と。
 現代ではキッスホビーアニメがこの系譜に近いのかなと思われますが、それらが身近なホビーから(作品によっては) 大きな世界へ物語が広がっていく構造なのに比べると、いきなり宇宙的な正義と悪の抗争最前線に巻き込まれる、 というのが特撮ヒーロー的というか、殺し合いの回避に配慮の見えない70年代前半の倫理観というかでありますが(笑)
 級友達と合流しようとする猛と健太郎だが、いきなり巨大ドルゲ(イメージ映像と思われる)が現れ、 既に村がドルゲの支配下にあると宣言。ドルゲとの顔合わせは初の筈ですが、これについては特にコメント無し。
 「一緒にドルゲの仲間になりなさい」
 既に神経ガスによって洗脳され、顔に吸盤マーク付きで迫り来る級友達が、そこはかとなく楽しそうです(笑)
 「松おじ、みんなが助かる方法は、ただ一つ。全速力で走って、僕とぶつかって下さい」
 健太郎は脚を怪我して走れない猛を背負う松五郎を巻き込んでバロムクロスを発動し、秘密云々に関しては早くも穴だらけもいい所ですが、 「自分からバラさない」限りは大丈夫という屁理屈でいいのか(^^;
 1−2話と戦闘シーンはさほど面白くありませんでしたが、今回の材木置き場でのバトルは、ロケーションを活かしてなかなかの面白さ。 特に、左右に柱が並ぶ細い通路をバロム1が真っ直ぐ走ってくる、というシーンは格好良かったです。
 バロムワンはジャイアントスイングの要領で放つバロムスイングでイカを力強く投げ飛ばすと、額の矢印が赤く輝いてパワーをチャージ、 ダッシュからのショルダータックル・バロムブレイクでイカゲルゲを撃破する。
 これにより洗脳は解除され、松五郎に対しては「夢でも見ていたのでは」とすっとぼけて雑に誤魔化し大団円。 ドルゲ基地建設の野望は砕き、クラスメイト達は元に戻ったけれど、村人達も元に戻ったのか……?(^^;  明確にイカに襲われていた支局員と駐在が最後に出てくれば良かったのですが出てこない為、 どうにも村は全滅したように見えて仕方ないのですが……。

◆第4話「吸血魔人 ケラゲルゲ」◆ (監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)
 前回、猛に押しつけた筈のボップがまた健太郎の所に戻っているのですが、これはやはり、 カテゴリ:呪いのベルトなのか。
 乗客を乗せたまま暴走する路線バスが、トンネルに入った所で煙のように姿を消してしまう。 ドルゲの地下帝国にさらわれた乗客達はケラゲルゲの爪を打ち込まれてドルゲの忠実な下僕として洗脳を受け、 前回と作戦コンセプトが全く同じですよミスター・ドルゲ! ドルゲは乗客の一人ルミが猛と健太郎の同級生である事に気付くと、 洗脳したルミを利用して離間の策を講じ、罠にはまったバロム・1は、ルミを人質に取ったケラゲルゲと対峙する事に。
 「やるんだ猛!」
 「駄目だ。俺にはできない」
 「何を言うんだ。ケラゲルゲをやっつけておかないと、悪のドルゲは地球を荒らすぞ」
 「そんなこと言ったって……ルミちゃんを助けなければ……俺はやだぁ!」
 「ちぇっ、だらしがねぇ! 俺がケラゲルゲを倒す!」
 巻き込まれた同級生の存在に一切惑わされない健太郎の姿は、ルミに気がある猛の迷いとの対比になっているのですが、 ドライな判断が非情のライセンスすぎて、それどころではありません。
 「だけど、ルミちゃんはどうするんだよ?!」
 「仕方がないだろ」

 バロムワン・フォー・ジャスティス!

 「やれないのか猛。猛の弱虫!」
 「ちくしょー! 健太郎!」
 猛が内部で健太郎にパンチを浴びせ、揉めている内にケラ爪ミサイル攻撃を受けたバロムワンは、 ケラゲルゲを逃がした上に変身が強制解除されてしまう。
 ナレーション「猛と健太郎の、友情が破れた時、2人は、ただの子供になるのだ」
 「君の、君のせいでドルゲマンに逃げられたんだぞ」
 絶対正義の使徒、悪のエージェントを追うハンターとして骨の髄までコプーの精神汚染を受けている健太郎は、 袖で涙をぬぐう仕草を見せる悔しがりよう。だいぶ人の心が失われていて心配です。
 「わかってくれよ健太郎、番長木戸猛にとって、あのルミちゃんは、女王様と同じなんだよ。な!」
 猛も猛で、人質がルミで無かったら見捨てていそうな発言。
 健太郎が頭脳/猛が筋力、であると同時に、健太郎が理/猛が情、であるという事は第1話から示されているのですが、 “目の前で人質が殺される事よりも、ケラゲルゲを逃がして更なる被害がもたらされる方が重大である”と明確に優先順位がついている健太郎の理の勝ち方が強烈無比。
 大事の前の小事は路傍の石に過ぎず、すなわちバロムワンのジャスティスとは、 1人を殺して100人を助けられるなら躊躇無く1人を殺す事であり、 悪のエージェントは自覚的に抹殺している事が実質的に判明。
 倫理的にどうなのかと思われた劇中描写が、実は当人達はとっくに飲み込んでいた(或いは何も感じなくなるように処置されていた) という、思った以上に突き抜けた正義の使者である事が明らかになる衝撃の展開。
 70年代というくくりで考えても、これを“ヒーロー”と呼んで良いのかには疑問も湧きますが、正義を為すとはどういう事か、 というのを恐ろしいほど厳しく突きつけてきます。
 ボップの反応したバスを追った2人は、中で倒れているルミを発見。ルミの救助を優先するか、ドルゲの計画打破を第一と考えるか、 大の為に小を捨てていいのかで2人の意見は再び割れる。
 「ケラゲルゲはいつでも殺れる。それより早く、ルミちゃんを手当しないと」
 「ケラゲルゲを今やっつけておかないと、ドルゲバスはどんどん人間をさらってってしまうぞ」
 「今ルミちゃんに死なれればどうなんだよ! ガリ勉だけで、人の心がわからないんだ。馬鹿野郎!」
 これを見ていたミスター・ドルゲはアントマンとケラゲルゲを繰り出し、 友情の熱量が下がった2人はバロムワンに変身できない大ピンチに。……ドルゲ、バロム1の正体が小学生2人とわかっている割には、 遠回りな小細工ばかりして対抗手段が手ぬるいのですが、宇宙的な善と悪の代理戦争の構造なので、 ドルゲは正義のエージェントに直接攻撃できず、悪のエージェントに倒させなければならない、というルールでもありそう。
 今回もルミを見てすぐに、それが猛の思い人である事や、人質に使えば2人の間に対立を招ける事を即座に見抜いているので、 綿密なリサーチはしているようですし。
 オケラミサイルの標的になった2人は、命の前には好きも嫌いもないと再び友情を取り戻し、大事の前の小事もシビアなら、 友情も現実的で実に世知辛い(笑)
 幾らなんでも、という感じだったボップ→マッハロッドの登場演出がやや強化され、今回も激しいカーチェイスの末、 前回みたいに体当たりで横転させてコマのように吹き飛ばしたらどうしようかと思いましたが、ジャンプで乗り込みルミの身柄を確保。 逃げるオケラをバロム真空投げで仕留め、ドルゲバス計画は阻止されるのであった。
 ……一応、これで洗脳は解ける筈、と締められるのですが、ルミ以外の被害者の姿が全く描かれないので、 本当に正気に戻って日常生活に復帰したのかはとても心配になります(^^;
 ルミを利用して猛を捕らえるくだりや、仲違いした筈なのにBパートではにこやかになっている2人、 意見の対立に関して特に結論は出ないなど、話の流れはかなり雑で面白いとは言いがたかったのですが、「私に人質は通用しない。 何故なら私の行動が正義だからだ」というバロムワンの姿勢が明らかになり、思わぬ角度で強烈なエピソードでした(^^;
 現代の視点から今作の世界観をスムーズに受け止めるには、 60年代の少年向け作品の流れを把握していないといけないのではという気もしてきましたが、1972年にして、なのか、 1972年ゆえに、なのか、火薬庫すぎます『バロム・1』。 ジャンパーソンの前身であるMX−A1の「1」は、バロム・1の「1」ではないのか……!
 次回――またもグロテスク路線の怪人登場、「発狂魔人 ミイラルゲ」。 ……この時点でヤバすぎてどうすればいいのか。

◆第5話「発狂魔人 ミイラルゲ」◆ (監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)
 見所は、凄い勢いで鉄橋から線路に向けて放り捨てられる猛。
 「飛び降りるのだ! その勇気こそ、ドルゲマンに必要なのだ!」
 都内で続く、原因不明の連続転落死。それは、新たなエージェントを探すドルゲによる選抜試験であった!
 「死も恐れぬ勇気。やれと言えばなんでもやる強い意志。この男こそドルゲマンに最もふさわしい男だ」
 求人広告を出し、眼鏡にかなう人材を発見したドルゲは、その青年をミイラルゲへと改造。悪の病原菌をばらまく作戦を指示するが、 ビルから飛び降りた青年がそのまま地割れに飲み込まれるのを目撃した松五郎が、それを怪しんで猛と一緒に尾行を開始。一転、 ミイラルゲは正義のエージェントの片割れを始末する為に猛へと襲いかかる……!
 ビルから真っ逆さまに転落する男、グロテスクなミイラルゲの左の眼窩から飛び出すヘビ!  などショッキング系の演出はインパクトがあるものの、話の内容はこれといって面白くない出来。
 バロム・1の正体がドルゲ側にバレており、ドルゲマンが割と容赦なく小学生を狙ってくる為そこで話の展開が止まってしまい、 後はバトルするだけになってしまう、という根幹設定が、早くも色々と厳しさを感じさせます。
 今回はミイラに悪の病原菌をばらまくという目的があり、バロムワンがヘビ攻撃を引きちぎった事で「バロム・1、 貴様がドルゲの病原菌を街に振りまいたのだ!」という一ひねりは入るのですが、まるきっり狙った作戦のようには見えませんし、 その後は松五郎に変装して再び猛の命を直接狙ったりするので、直接攻撃→病原菌拡散→直接攻撃、 と怪人の行動が臨機応変というより場当たり的で必要以上に一貫性が無く見えてしまいます。
 ヒーローの迂闊な行動で都内では次々と謎の伝染病が広がっていくが、「超能力を破壊」という表現で、 ドルゲマンを倒すとその広めた伝染病も消滅する、と理由付け。前々回の細菌ガスや前回のケラ洗脳もこれと同じ理屈で、 媒介はなんであれ、本質的にドルゲマンの超能力であり、根元を立つと効果を失う(その際、 バロム・1の超能力が何らかの作用を及ぼしている可能性はあり)という理屈の模様。
 ミイラルゲのドルゲフォールを受ける猛だが、咄嗟に飛び降りた健太郎と空中バロムクロス。
 ドルゲが、その指示に従ってビルから飛び降りる勇気を見てドルゲマンを選抜するというエピソードで、 健太郎が友情の為に躊躇無く線路へと飛び込む姿が描かれ、くしくも正義のエージェント:バロム・1と、 悪のエージェント:ドルゲマンの表裏一体な性質が浮き彫りに。
 最初からメーター全開のバロムワンはその勢いに乗せてどたどたと走り回り、バロムワンはハイパーダッシュの慣性をコマンド挑発 「バローーーム」でキャンセルする事ですぐにその場に静止する事が出来るぞ!
 壁を突き破るバロムダイナミックパンチを披露したバロムワンは、バロム空中落としでミイラルゲを大爆殺。
 今回のエージェントは、どういうわけか爆発後に人間の姿に戻り(ドルゲマンであった間の記憶は失っているという描写)、 二人はそれを確認して「良かったな!」と喜ぶのですが、マイルドな着地というよりむしろ、 これまでは全てを理解した上で「良くなかったな!」で済ませていた事がより明確になってしまい、 つまるところバロム・1の悪のエージェントへの対応というのは
 「さあ、おまえの運、試してやるぜ!」
 であるとハッキリしたのでコプーは正義!
 健太郎の見立て通り、ミイラルゲを粉砕した事で伝染病は収束し、松五郎も帰ってきて大団円。
 ドルゲマンの扱いに関してはこのままマイルド路線に切り替わるのかもしれませんが、 今作の根本設定の抱える厄介な問題が話が進むほどに大きくなっており、色々ねじ伏せる事はできるのか。

◆第6話「怪腕魔人 エビビルゲ」◆ (監督:折田至 脚本:伊上勝)
 今回わかった衝撃の事実:アントマンも元人間
 「アントマンにするには、心を悪の心に変えねばならん。警視庁の鬼刑事の心を悪に変えるには、時間がかかる」
 そして割と、自分の能力に謙虚なドルゲ。
 電話帳をめくったり、求人広告を出して面接したり、宇宙的悪の化身も組織運営が何かと大変です。 地球の子供達に丸投げしたコプーと比べると、むしろ責任感があるように見えて困ります。
 木戸刑事の貴重な休日、釣りに出かけた木戸家の男達だが、猛がサンドイッチボックスを開くと、 中から点滅する 呪いのベルト ボップが。
 海中に潜んでいたエビビルゲは通りすがりのトラック運転手の姿を奪うと、 転落事故から助けを求めるフリをして木戸刑事を地下帝国へと誘拐。ドルゲは木戸刑事を使って白鳥デスクを誘き出し、 猛と健太郎の両親を手中に収める事で、バロムワンの友情のエネルギーを引き裂こうと画策する……。
 ドルゲより、木戸リンタロウという木戸刑事のフルネームが明かされるのですが、白鳥デスクは白鳥デスクのままで、もしかして、 名前なのか、デスク。ドルゲまでいちいち、日読新聞を繰り返すのが、説明台詞というよりも、 今作の世知辛い世界観を感じさせて仕方ありません。
 社会的ステータスは正義!
 行方不明になった筈の木戸刑事が白鳥デスクを呼び出していった事を知った猛と健太郎は、 「人類全体の問題なんです!」とタクシー運転手を脅してその後を追うが、運転手はアントマンの変装で、 タクシーを暴走させたまま姿を消してしまう。「死んだ気でやれ! 死んだ気でぇ!!」と宇宙的正義に骨の髄まで染まる2人はバロムクロスを発動させ、 なんとか脱出。だが互いの父親を人質に取られた事で、エビを見逃して一時退却。猛は逃げた健太郎を詰り、 2人の友情はまたも決裂してしまう。
 「父親の為には、友情も忘れ、使命も忘れ、コプーは大きな間違いをしたわけだ」
 人質無効が判明したバロムワンも、さすがに肉親の情には弱かった、と弱点を突かれて追い詰められるのですが、 敵の手段といい台詞といい、ラスト間際のような展開。
 なにぶん第2話でバロムワンの正体が小学生2人である事がバレてしまった為、 ドルゲが正義のエージェント抹殺の為に容赦なく身内を狙い、 第6話にして2人の父親が人質に取られてしまうというのが今見るといっそ斬新なのですが、 エピソードとしてはドルゲ側の行動が面白みに欠け、必然的に残る人質要員が白鳥母と木戸姉(なお一度、 病院で存在をスルーされておりヒロイン力は父親より低い)のみになってしまうなど、その先には手詰まりと後退しか見えません。
 身近な怪事件を追いかけていたらドルゲの陰謀に繋がり、ドルゲもドルゲで、 「バロム・1の正体は何者なのだ」と探りを入れていく……という方が面白く転がせた気がするのですが、ドルゲには、 一度、記憶を失ってもらった方がいいのでは。
 松五郎を伏兵に使って木戸刑事と白鳥デスクを救出した猛と健太郎は、「2人の喧嘩は芝居だったのさ!」と、エビビルゲに反撃。
 「ははは、さっきのは違うんだな」
 「本当のバロムクロスを、見せてやろうぜ!」
 「おう!」
 という台詞は格好良いのですが、話の成り行きはかなり大雑把。
 今回は海の話という事で、この時期にはよくあったモーターボートバトル。マッハロッドは逃げるモーターボートを空から追いかけ、 飛行可能な事が判明。バロムワンはエビビルゲを追い詰めると、バロムブレイク→パンチ連打→バロムブレイク、 と執拗に大技で痛めつけ、最後はバロムスーパーヤクザキックで上半身を吹っ飛ばして爆殺!
 良くなかったな!
 前回決着時の描写からすると、ドルゲマンが爆発した後、2人から見えない所で人間に戻っている可能性はあるのですが、 上半身と下半身が泣き別れで最期を迎えたので、人間に戻っていた場合(以下検閲)。
 コプーは正義!
 助っ人として活躍した松五郎は、小学生2人にいいように使われた挙げ句、ドルゲについては適当に誤魔化されて納得してしまう、 という安定の酷い扱いで、就職失敗しすぎて、心が弱っているのでは。
 助監督に長石多可男の名前がありましたが、この時期、『仮面ライダー』と掛け持ちか……?
 次回――第7話にして学校初登場。

◆第7話「変化魔人 アンゴルゲ」◆ (監督:折田至 脚本:伊上勝)
 悪のエージェント・アンゴルゲの素体を探すドルゲは、猛と健太郎の担任教師・佐野(演じるのは、 特撮では『仮面ライダー』シリーズの怪人声優として著名な辻村真人)に目を付け、 学校を狙うドルゲを校門の前に浮かぶシルエットで見せるのが格好いい。今回は他に、佐野の影が真っ赤なアンゴルゲの姿で浮かぶなど、 シルエットを用いた演出が効果的。
 アンゴルゲと化した佐野は、猛と健太郎のクラスメイトである後藤と山崎をアンコウフラッシュで洗脳すると、 正義のエージェントの抹殺を狙う。
 小学生にとって極めて身近な存在がいつの間にか怪人になっていたら……というシチュエーションは面白いのですが、 とにかく怪人の狙いがバロムワン抹殺一直線な為、今回も話の広がりに欠けてしまいます(^^;
 またここ数話、悪のエージェントがどれもこれも「俺の超能力を見せてやる!」で性格が偏っており、 根本的にドルゲ細胞に問題があるのではないか。
 アンコウフラッシュの催眠効果に惑わされそうになると、すかさず馬乗りからチョウチンアンコウのチョウチン部分(誘引突起、 というとの事)をもぎ取ろうとするのは、凄くバロム1。
 様子のおかしい級友2人を探る猛と健太郎は、ボップの警戒音で罠を回避し、それを苦々しげに見つめるミスター・ドルゲ。
 「忌々しいボップめ……」
 確かにボップが高性能すぎて一番厄介ですが、こればかりはコプーに感謝すべきなのか。
 猛と健太郎は駐車場の車の中で気を失っていた後藤と山崎を発見し、「普段は虫の好かねぇヤツでも、ドルゲに利用されちゃうんだ。 ほっとけねぇな」と、私情よりも正義を優先する姿がヒーローらしいのですが、この正義が「仕方ないだろ!」と表裏一体なのが、 正義の闇をえぐり出します。
 洗脳された後藤と山崎にバロムクロスを妨害されるも結局あっさり変身し、バロム1はアンコウと激突。 突然のシャットゴーグルで催眠フラッシュを無効化すると、バロムブレイクから連続パンチ、そしてバロムフォールで投げ飛ばすが、 バロム1は崖から転がり落ちるアンコウをキャッチ。
 「どうして助けたんだ」
 「見ろ、アンゴルゲの姿が」
 幸いにも佐野は、ドルゲ細胞から解放されて人間の姿へと戻る。
 「きっと今の行動が、心の中の憎しみを消したのだ」
 バロムワン人格のこの言葉が具体的に何を指しているのか微妙にわかりづらいのですが、 転落キャッチの事だとしたら――お姫様だっこは正義!
 さすがに先生だとわかった上で爆殺しなくて良かったのですが、悪のエージェントに対してこれといった治療法を持たないバロムワンとしては、 「先生だとわかった上でも爆殺しなくてはならない」というのが現実であり、 序盤から極めて心理的に追い詰められているヒーローともいえます。
 その葛藤が猛と健太郎の中で既に処理済みの為に全編に殺意が横溢する事になっているわけですが…… コプーは正義!
 やはり、感謝しなくて良い気がしてきました。
 今作の根にある問題は結局この、猛と健太郎の掲げる“正義”が、「自分たちで辿り着いたもの」ではなく、 「誰かから与えられたもの」な所にあるのですが(無論、前者が必ずしも善ではないのですが)、主人公たるヒーローの姿が、 極めて普遍的な世界の闇を活写してしまっているのが、実に恐ろしい。
 最後は関係者全員が浄化され、クラスでの諍いも過去の事、と爽やかに駆け出して大団円。

→〔その2へ続く〕

(2017年6月3日)

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