■『GO!プリンセスプリキュア』感想まとめ5−1■
“きらびやか星が踊れば 夜空はキララ上がるハードル
スポットライトへ飛び込め”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた,
《プリキュア》シリーズ初体験者の『GO!プリンセスプリキュア』感想の、まとめ5−1(40話〜43話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、
若干の改稿をしています。
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〔1−1〕 ・ 〔1−2〕 ・
〔2−1〕 ・
〔2−2〕 ・ 〔3−1〕
〔3−2〕 ・ 〔4−1〕 ・
〔4−2〕 ・ 〔5−2〕 ・ 〔5−3〕
<第5部・私の花のプリンセス(1)>
- ◆第40話「トワの決意!空にかがやく希望の虹!」◆
(脚本:伊藤睦美 演出:中村亮太 作画監督:中谷友紀子)
-
映画ダイジェストOPは、前回までの舞踏会という名の死亡遊戯に続き、
今回はフローラがかぼちゃ大王に腹パンし、スカーレットはサーベルを白羽取りと、毎度無駄に面白いチョイス。
……まあ、本編の展開的には、前回あたりから平常のOPが見たかった所はありますが(^^;
冒頭1分、バイオリンを奏でるカナタ様、動物たちさえその音色に耳を澄ます……と、スーパー王子タイムが発動。
記憶の戻ったカナタ様に居候継続をOKし、お祝いにバイオリンをあげるバイオリンお爺さんは、
海藤家から一体幾ら積まれているのか。
兄と念願の再会を果たしたトワはひたすらテンションが高く、一方のカナタ様はひたすら高い王子力で妹を優しく包み込む。
「トワ、バイオリンは練習してるのかい?」
「ええ、勿論!」
て、僕のバイオリンが得体の知れない姿に?!!!!
というかトワ様、普段からそれ使っているのか。
その時、ロイヤルキーが謎の光を放ち、導かれるようにトワが鍵を射し込むと、一行はホープキングダムにまとめて転移してしまう。
そこは、完全に絶望の茨に覆い尽くされていた……。
「前に来た時と、全然違うわ」
「ディスピアめ……僕が居ない間に」
最近忘れがちだったけど、カナタ王子の本職はワンマンレジスタンスです!
例の如く出鱈目なドレスアップキーですが、最後まで見ると、以前にはるか達が先代プリキュアゆかりの遺跡に呼ばれたように、
第4のパヒュームが封印されていた遺跡に召喚されていた、と一応の理由付け。
エピソードとしては、テンション上がり過ぎて大事な部品を幾つか道ばたに投げ捨ててしまったトワ様に現状を再認識させ、
落としたパーツを拾わせるという位置づけなのですが、相変わらず、先代の魂?はやる事が鬼畜。
まあ、カナタと再会したトワが素に戻らないのもおかしいし、
かといって残り1クールで性格激変されても色々面倒くさい上にプリキュア活動にも支障が出そうだしで、
一度タガを外した後に締め直す、という流れはバランス取って良かったと思います。
変わり果てたホープキングダムの姿にショックを受けて迷子になってしまったクロロを探すはるか達は、
青い炎の獣というデザインが格好いい地獄の番犬ゼツボーグと遭遇。ディスピア自らが放ったゼツボーグに手も足も出ず悔し涙を流すスカーレットは、
戦いに巻き込まれたクロロをかばい、その二人をイケメンシールドで守るカナタ王子。
「トワ……僕も、想いは同じだ。思い出すんだ、あの日の言葉を……!」
ホープキングダムが夢と希望に包まれていた頃――誕生日の一般参賀行事に緊張していた幼い日のトワは、
両親から王族としての心得を伝えられる。
――母「わたくし達が笑えば民も笑い、涙すればまた、民も涙を流す」
――父「そんな顔では、民が心配するぞ」
それは高貴なる責務、血統の誇り。
かつて、その重圧から闇に堕ちた少女は、今、それを力へ変える。
「クロロ……大丈夫。ホープキングダムは、必ず取り戻してみせますわ。だからもう、泣かないで」
ここでクロロに笑顔を向け、「何のために笑うのか」を掴んだスカーレットは、ヒーローとして立ち上がり、
ディスピアの分身たるゼツボーグに向き直る。
「この国は、もう滅びたのだ」
「いいえ! なぜなら、わたくしが、まだここに居るから。わたくしは、キュアスカーレット。
プリンセス・ホープ・ディライト・トワ! ホープキングダムの王女!!」
兄は一人レジスタンス! 妹は一人キングダム!
もはや今作の根幹をなすといっていい「笑おう」イズムを王族の責務と繋げ、より綺麗に物語の中に収納。合わせて、
ここまで存在が無視され続けてきたカナタとトワの両親に、志を伝える者、という役目を与え、
個人の依って立つ正義(信念)の背景として、しっかりと意味を持たせました。
更に、いまひとつ存在意味のわからなかったクロロを臣民の象徴とする事で、
民を守り民に支えられるという「王家と民」の姿をミニマムに表現したのが、お見事。
他の不思議生物達は元から王家に仕えている存在なのに対し、クロロはごくごく平凡な民間人に過ぎなかった事により、
主従の敬意を抜きにした所で王家と民の姿を描く事で、ホープキングダムの民衆に色彩を与える事にも成功しました。
ここから最終盤へ向けてまとめに入るタームではあるのでしょうが、まずはホープキングダム周りの要素を、
非常に綺麗にまとめてきました。
また、前回はるかが「私のプリンセス」に辿り着いている事で、トワにはトワの「プリンセス」、はるかにははるかの「プリンセス」、
というのが建前ではなく並んで成立。なぜ「笑う」のか? にも根を同じくしつつそれぞれ別の意味を与えました。最近、
単語が出なくなっている「グランプリンセス」にここからどう繋げるのかにやや不安が残っていますが、
それぞれの着地点もじわじわと見えて来た気配です。
スカーレットがサンキー単独発動で放ったプリキュアプロミネンスから、プリキュア・ボンバーでゼツボーグを撃破。
長い眠りの時を乗り越え、王女としての覚醒を果たしたスカーレットは茨の森の中でカナタと共にバイオリンを奏でる。
(誓いますわ。次はこの音色を、甦ったホープキングダムで響かせてみせる。その為に、この国の王女として、皆の夢を取り戻します)
そして、その想いに反応したスカーレット4つのキーをお城で回すと、希望の炎が周辺を浄化。スカーレット遺跡が炎の城として新生し、
絶望の茨を寄せ付けない結界が出来上がると共に、紅の虹が空にかかるのであった……。
在りし日のホープキングダムの回想シーンで、空にかかる虹が王国の象徴として印象づけられており、
どうやら各プリンセスが遺跡を新生させて空に虹を取り戻していく、という展開になりそうですが、なんだか、RPGみたいな(笑)
……にしてもこの成り行きだとやはり、
スカーレットのキーの元を生み出したディスピア様は歴史の闇に抹殺された第4のプリンセスプリキュアの怨念とかではなかろうか(^^;
他の3人も、怨霊になりかけていたし。
次回、素人どもの無責任な煽りに、予告時点でゆいちゃんの絶望が臨界を突破しそうです。
簡単にコンクールとか言うなやそこの金持ち!!(心の叫び)
- ◆第41話「ゆいの夢!想いはキャンパスの中に…!」◆
(脚本:高橋ナツコ 絵コンテ:入好さとる 演出:鈴木祐介 作画監督:フランシス・カネダ/アリス・ナリオ)
-
久々の通常OP。気がつけば、空に浮かぶ人々が随分と増えていました。キミマロまで居るし。
見所は、さらっと一人レジスタンスに戻っているカナタ様。
ロイヤルキーの効果により、炎の城を通して、自由にホープキングダムに行き来できるようになっているとの事。
カナタ様が「調べたい事がある」と言う一方、ディスピアからは「我々にもう猶予は無い」という発言があり、何やら、
ホープキングダムとディスダーク周りで、もう一ネタありそうな気配。
はるか達に背中を押されて絵画コンクールへの参加を決めたゆいだが、考えすぎるあまり、モチーフどころか画風から悩みだしてしまう。
悩むゆいと対比する形で、久々にプリンセスレッスンしたり、夢へ向かって進む学園サブキャラ達が描かれたり、
メンターとしての望月先生が登場したり、と前回に続いて諸要素を拾っていく展開。
周囲の無責任なキラキラした瞳とコンクールに感じる重圧から筆が止まってしまったゆいは、望月先生の青空絵画教室にばったり遭遇。
「絵、描くの好きなの?」
「大好き」
「どうして?」
「だって、楽しいんだもん!」
子供達の自由な絵に触れて、大切な事を思い出す。
「コンクールで入賞する事ばかり考えて、それで……大切な事が見えていなかった。忘れていたのかもしれません。絵を描く、楽しさを」
迷える者が見失っていた原点を見つめ直す、という非常にオーソドックスな話なのですが、
そこにコンクール(評価される場)という関門を置く事で、「結果を出す」(夢を達成する)事は確かに大切だけど、
その為に歩む道のりそのものにも価値がある、だからそこにある「楽しさ」、そして得られた幸せを忘れてはいけない、
と第39話の転換と繋げて補強、物語としての厚みを加えました。
再び筆を取るゆいだが、そこに現れるストップとフリーズ。子供達をかばったゆいは絶望の檻に閉じ込められてしまう(通算3度目)が、
夢を守りたいと願う想いで強く抵抗……したせいで、やけに強いゼツボーグが生まれてしまったのでは(笑)
「ゆいちゃんの夢は!」
「「「「私たちが守る!」」」」
ゆいボーグガンマに立ち向かうプリキュア達の姿に、自分が描きたいものを見つけ出すゆい。
「私の、描きたいものは……私にしか描けない、強く、優しく、美しい、プリキュアの姿……! ……出なきゃ! ここから!」
ここでやたらヒロイックな音楽で絶望の檻を内側から破ろうとするゆいの図は、
いいシーン通り越して変な笑いがこみ上げてしまいました(笑)
「ゆいちゃん……?」「意識が?!」
そしてフローラとマーメイドが、その光景にちょっと引いた。
「出てみせる! 私は描かなきゃ、いけないの!!」
そうだそれが、正しい作家魂だ!!
絶望の檻に閉じ込められた被害者の心象という珍しい描写(初?)を入れる事で、外で戦うプリキュアと内側で戦うゆいの姿を対比。
プリキュアは確かに夢を守るヒーローだけど、夢をかなえる為には一方的に支えられたり守られているだけではいけない、
人は迷ったり悩んだり立ち止まったり躓いたりくじけたりするけれど、夢の為に必要なのは自分で立ち上がろうとする事なのだと、
プリキュアでも無ければ「笑おう」イズムの体現者でもない一般人のゆいを通して描き、
これがはるかだと結局「主人公だから」に着地してしまうので、そうではない事に意味があるゆいの位置づけも巧く収まりました。
同時に、あくまで内と外の双方があってゼツボーグを撃破する事で、ヒーローの意味と、
転んだ時に手を伸ばしてくれる存在(今回でいえば望月先生も入る)の大切さも描いており、
「自ら立ち上がろうとする事」と「誰かに支えてもらっているという事」の今作の両輪がうまく盛り込まれています。
「自分にしか描けない物語を描いて、夢の力と、夢を守る事の大切さを、伝えたい……」
解放されたゆいのイメージシーンで、プリンセスプリキュアの4人が後ろ姿、というのはちょっと面白いと思った所。
フローラが振り返って微笑みますし、単純にゆいの立ち位置なのかもしれませんが、何となく今作は、
旅立ちと別れを匂わせている感はあります。
まあ、肝心のフローラどこに旅立つんだ、というのはあるのですが。
現実的にはカナタ様に嫁入りするのが名実ともにプリンセスになるベターな手段かと思われますが、
この世界ではるかの夢のプリンセスになろうとすると、行き着く先は「通りすがりのプリンセスプリキュア」な気がするのですが……まあ、
それはそれで、はるからしいか。
個人的には、ゆいのモノローグで綴られる10年後の七瀬ゆい先生サイン会エピローグとか見てみたかったりもしますけど。
子供達を避難させた後に助けを呼んで戻ってきた望月先生がやってくるが、既にプリキュア達は退散済み。
「もしかしたら、噂の、プリンセスかもしれませんね」
「噂?」
「夢を守って戦うプリンセスが居るという噂が、生徒達の間であるんですよ」
今作の世界観でプリキュアと一般人を絡めるとややこしい事になるのですが、
今回敢えて望月先生と会話をさせた上でプリキュア都市伝説に振ってきたのは、最終盤への布石でしょうか。あと、
何かと素っ頓狂でホープキングダムの存在ぐらい知っていそうだった望月先生の疑惑払拭の意図もあるか。
ちなみに望月先生が連れてきた“助け”が、白銀さんとテニスのコーチと男性もう一人なのですが、
白銀さんはニンジャなのでゼツボーグと互角に渡り合えるのです。
その後、コンクールで佳作を取ったゆいの絵を目にする望月先生、でエンド。
ゆいを中心に学園関係をひとさらいし、「夢を目指す少年少女達の集まる学舎」という今作の土台を再確認。……正直、
学園関係はもう一つ活かし切れなかったかなと思う所ですが、こだわりすぎるとそれはそれで“わざとらしく”なりすぎてしまったかもしれず、
今となってはこれはこれで良かったのかな、と、第39話に到達してくれたので、割と全てに寛容な気持ちになっています(笑)
今回の感じだと、最後の最後でもう一度、スプリングボードに使いそうですし。
あと、前々回:凄かった、前回:けっこう頑張った、でこれから最終盤に向けてどこで作画の一休みを作るのかと思ったら、
ゆい回が綺麗に挟まり、ゆいちゃん、色々な意味でナイスサポーター。
- ◆第42話「夢かプリキュアか!?輝くきららの選ぶ道!」◆
(脚本:伊藤睦美 絵コンテ:佐々木憲世 演出:平山美穂 作画監督:河野宏之)
きららさんは本当に男前。
誰か(ステラ)に憧れて夢を抱いたきららだからこそ、そんな自分が誰かの憧れになった時、
その憧れに恥じない存在でありたい……だから、天ノ川きららは格好つける。
『俺フィー』的に言うと(なぜ)、
「なんせムチャクチャに…………よ……ムチャクチャ惚れちまった女が……あそこで俺を見てるんだ…………カッコ…………つけねえと……なあ」
というやつですよ!
(※『俺たちのフィールド』(村枝賢一)は筆者が愛好してやまないマンガの為、時折、発作的にたとえ話になりますが、
適当に生暖かい目で下さい)
本日も寮に突入してきた社長から、人気モデルが集う世界的なファッションショー、
ジャパンコレクションのメインモデルの一人に選ばれた事を知らされるきらら。
サブタイトル後、一旦ホープキングダムでレジスタンス活動中のカナタ王子が星の城を見つけるシーンを挟む事で、
(視聴者には概ねわかった話とはいえ)状況説明をしつつ、カナタ様が単独行動をしているのは、
プリキュア達にはプリキュア達の日常を送ってほしいからである、というのがシーンの対比から伺える形になっており、
カナタ様はどこまでも王子。
ジャパンコレクションで評価を得られれば、国際的なトップモデルに向けて更に前進できる、と力の入るきららは、
社長から事務所で面倒を見る事になった新人モデル・明星かりんをアシスタントに付けられる事になり、
ますます気合い十分でモデル業とプリキュア活動を両立させていく。
ここでちょっと引っかかったのは、寮の食堂内の観葉植物……というか大生垣障害が、きららと、
社長&かりんの間に置かれている事。そして、きららの背中側には、テーブルを囲むはるか達。
美術設定に忠実に描いただけかもしれませんが、それこそロケーションが食堂でなければいけない必然は無いので、
敢えてここに境界線を置いたのは、この後の展開を考えると随分と示唆的です(逆に、何も考えずに生け垣越しに握手させていたらおかしいですし)。
順調に人気モデルとなっているきららの仕事ぶりと、かりんとの交流を描いていき、
きららは相変わらず仕事モードになると面倒見が良くなります。そして最近はTVの仕事も増えてきているというきらら、これは、
あれだ……
『すイエんサー』ガール→『仮面ライダー』ヒロインの流れ!
……いや、きらら、女優業には興味無さそうですけど。
また、
(きららは、夢への階段を真っ直ぐ駆け上っているのね……)
きららの出演したCMの後、大型スクリーンに映ったイルカと海の映像に足をとめるみなみ様……と、きららの話ばかりではなく、
みなみの心の惑いを伏線としてチラリと挟んだのは秀逸。
どうやら最終クール、各メインキャラに一人ずつ焦点を当てていくという構成になるようで、もう一度、
みなみ様の夢の問題とは向き合いそうです。一つ処理に失敗すると、大爆発で見るも無惨に木っ端微塵の箇所だと思うので、
期待半分・不安半分(^^;
なんとなく悪いお姉さんにそそのかされている気もしますが、いい着地をして欲しい。
ゲストキャラのかりんは、ビジュアル・演出・性格と、揃ってやたら可愛く描かれすぎているので、
これは差し入れの手作りドーナッツを口にしたところで、
「うっ?! は、謀ったなかりん……ぐふっ(吐血)」
「ふふふふふ、油断しましたねきららさん……」
みたいな事になるのかと思ってドキドキしたのですが、そんなわけはなく、ひたすらいい娘でした。
作品の立ち位置として意識的に外してはいるのでしょうが、
このスタッフなら今作において“嫉妬”の要素は入れても巧く転がせたのではないかなーとはちらっと思ったり。
敢えて言えばディスダークサイドに少々入っているのですが、三銃士もそういった要素を押し出して叩きつけてくるタイプではないですし。
出発当日の朝、緊張した様子を見せるきららの髪をトワが梳く、というのはベタだけど、
トワに少し心の余裕が出来ているのも窺えて良いシーンでした。
「きららは本当にパワフルですわね。モデルの仕事も、プリキュアも、何をするにも全力ですもの」
「仕事もプリキュアも、あたしにパワーを与えてくれる。だから、ずっと走っていられるのかも。今日のあたしは、
今までで一番輝いている。世界が、夢が、あたしを待ってるっ」
第34話で社長に、「ステラも言ってたけど、あんた友達が出来てから、なんだか、可愛くなったわね」という台詞がありましたが、
夢へ向かってひたすら現実的に邁進していたが故に、同世代の人間関係と縁遠かったきららが、その、
寄り道だと思っていたものから大切な力を得ている事を自覚している、と繋げて、
きららがどんなに忙しくてもプリキュア活動を大切にしている部分を補強。
ところが、いよいよ出発直前の空港で、プリキュア達を直接標的にしてきたディスダークにより、
かりんがゼツボーグの素体にされてしまう。
「私の夢はモデルに……見る人に、夢を与えられるようなモデルに……きららさんのようになりたい!」
(りんりん……)
「早く行かないと、大切な夢を逃してしまってよ!」
(ジャパンコレクションは、大事な大事なスタートライン。あたしの小さい頃からの、夢……)
皆に促され、空港へ向けて走り出すきらら、だが……
(あたしの夢、世界で活躍するトップモデル……それが、あたしの夢…………夢……)
――私の夢は……秘密ですっ。
(……ごめん、りんりん。……聞いちゃったよ。りんりんの夢は、あたしを見て、描いてくれた夢なんだよね)
夢が持てず何ができるのだろう、と悩んでいた頃、たまたま見かけた雑誌の表紙に見とれてお洒落を始め、
それが高じて憧れの人と同じモデルの道を目指す事になったというかりん……その憧れの人が自分だったと知ったきららは、足を止め、
旅行鞄を手放し、振り返る。
この「聞いちゃったよ」が、「秘密にしていた事を聞いてしまった」、というのと同時に、
「それを知ったら引き下がれない事を聞いてしまった」というニュアンスも感じられて、良い言い回し。
だから、天ノ川きららは立ち向かう。
夢へ進み、夢を守り、誰かの夢にふさわしい自分で在り続ける為に。
「あたしがやらなきゃ。りんりんの夢は、あたしが、あたしの手で守りたい。夢を守るのが、プリンセスプリキュアの使命。
そしてあたしは、プリンセスプリキュアだから!」
男 前。
4人揃っても都合3体目ぐらいな気がするモデルゼツボーグに苦戦するプリキュアだが、強風攻撃の中、立ち上がるトゥインクル。
ここで盛り上げ音楽がかかるのですが、トゥインクルのテーマは特に無いようで、
前回ゆいちゃんが絶望の檻をこじあけようとした時と同じBGMだった為、変な笑いが出てしまいました(^^;
スカーレットは専用BGMがあっただけに、ちょっと勿体なかった所。
「りんりんの……りんりんの夢を、返せぇーーーーーっ!」
トゥインクル、遂に銀河を投げる。
最終盤、それぞれのワンステップを描く中で4つ目のキーを単体仕様する流れになるようですが、えー……という事は、マーメイドは、
珊瑚を投げるのか。
……何か、色々と、問題を感じます。
マーメイドの技の性質からいっても直接物理とは限りませんが、
珊瑚っぽい能力……珊瑚怪人の能力…………思いついたのが石化(珊瑚化)ガスなのですが、どうしましょう。
プリキュア・コーラルガスクラウド!
……は後のお楽しみとして、銀河召喚によるメテオストライクから、プリキュアボンバーでブルーミング。
トゥインクルはかりんの夢を解放するが、その背後で、飛行機は無情にも飛び立ってしまうのであった……。
後日、各方面に謝罪を繰り返す社長は、きららの仕事への深刻な影響を懸念。さすがに沈んだ表情を見せるきららだが、
心配する仲間達にはきっぱりと自分の信念を告げる。
「あたし、あの時、どうしてもりんりんの夢を自分で守りたかった。その事を、後悔なんてしてない。もしまた、
同じ事があっても、あたしはあの子を助ける。100回でも、1000回でも、やっぱり同じ事をすると思う。だから、いいの」
夢と使命の間で自己犠牲、という展開ですがその中で、ハイレベルなマッドヒーローのフローラ/はるかの影に隠れがちなものの、
元よりヒーロー気質の強いトゥインクル/きららの在り方が、きちんと汲まれたのは良かった所。
だが、現実として、夢への大きなステップで躓いてしまうきらら。自室に戻ったきららは独り冬の星空を見つめ、
異界の星の城は沈黙を続けるのであった……。
- ◆第43話「一番星のきらら!夢きらめくステージへ!」◆
(脚本:田中仁 絵コンテ:黒田成美 演出:岩井隆央 作画監督:爲我井克美)
-
節制せずにドーナツを平らげ、ハイテンションでゼツボーグを撃破し、休み時間にはバスケットを楽しみ、
いっけん全力で青春を謳歌しているようなきららを、複雑な気持ちで見つめるはるか。きららの仕事を心配するはるか達は、
寮にボアンヌ、社長、かりんがやってきた事から、きららがモデル休業を願い出ていた事を知ってしまう。
「あなたの輝きを曇らせるのは、まだ惜しいと思いまして。一つ、提案があるのですが」
「お気持ちは嬉しいんですが、今は駄目なんです」
ジャパンコレクション欠席を心配したボアンヌからの申し出も断ってしまうきららは、トワに追いすがられる。
「モデルはあなたの、大切な夢でしょう?!」
「だからだよ」
「え?!」
「あたし、200%の力で、プリキュアもモデルもやりきれると思ってた。でも……駄目だった。こんな半端な気持ちで仕事しちゃ、
社長や沢山の人に迷惑かけちゃう。それこそ、プロ失格だよ」
「プリキュアの使命の為、自分の夢を犠牲にするというのですか?!」
「そう――決めたんだよ」
ここに来て、仕事(夢)とプリキュアの板挟みになるきらら、という展開そのものはあまり面白くないと思うのですが、
はるか達との友情以外に、社長はじめ仕事関係者との間にも当然感情的繋がりはあって、その上で、誰に恥じないという信念と、
現実志向ゆえに、きっぱりと取捨選択をしてプリキュアである事を選ぶというのは、きらららしい所。
一方、かりんの話を聞いたはるか達は、何とかきららを翻意させようと考え、はるかが閃いたアイデアを企画にまとめて学園長へと提出。
「なるほど。素敵なイベントね。いいわ。講堂の使用を許可しましょう」
あー、このノリで面白そうな企画が来ると気軽にOKサイン出すのだろうなぁ……という、望月先生、貫禄の頬杖。
はるか達はそれぞれ協力者を募り、かくして学園の皆は秘密のイベントを作り上げる。それは……
「ようこそ。ノーブル学園サプライズイベント、ドリームファッションショーへ!」
「み、みなみん……?」
「今日は夢のお披露目会。それでは……イッツ・ショータイム!」
ウインク飛ばしたり意外とノリノリのみなみ様は、司会に収まる事で自分の夢については触れない、というのが実に巧妙です。
手作りのステージに、はるか、ゆい、きららの友達、テニスボーイにアイドル、生徒会に風紀委員などなどが次々とコスプレで登場し、
ここに来て、学園関係の脇役達が一挙登場。
最終盤、散りばめたピースを綺麗にはめていく作業をしつつ、装飾部分でも拾える要素は出来る限り拾っていこうとしているのは好印象。
前半のギャグ回以来(?)の登場になるドーナッツアイドルらんこも、きららと大きく関わった学園サブキャラという事で、
しっかり長めの尺が割り当てられています。
また、成長を描いているにしても、ここ最近“出来過ぎ”だったはるか(前々回もさらっとカップケーキ作ってたり)が、
ドレスの裾を踏んづけて転ぶ、というのは細かく良かった所。
スペシャルゲストとして登場したかりんの姿に、幼い日、ステラに褒められた喜びを思い出すきらら。
「どうかな、私たちのショー」
「ぜんぜん駄目。ステージは雑だし、モデルは素人ばっかで、見ちゃいられないよ」
「えへへ……そりゃ、本当は見る側じゃないからね、きららちゃんは。初めてきららちゃんのショーを見た時、本当に凄いと思った。
とっても綺麗で、格好良くて、私もこの人みたいに、真っ直ぐ夢を追いかけたいって、思ったんだ。
きららちゃんがみんなの夢を守りたいと思うのと同じように、私たちも、きららちゃんの夢を支えたい、力になりたい。だから、
どうか……夢を、追い続けて」
この「守る」と「支える」というのは、“ヒーローと大衆”の関係としては古典的なテーゼなのですが、
2クール目にまず家族テーマとして取り込み、それをミニマムな個人の関係に落とし込んだ上で、
ここで“学園の皆”の姿を通して関係の拡大を描く事で、マクロな大義にする事なく「守りたい」と「支えたい」という両輪を、
今作らしい形でまとめてきました。
「…………控え室はどこ?」
「やっと来ましたわね」
トワは皆できららをイメージして作ったという衣装を渡し、それに身を包んだきららは、貫禄のモデルウォークを披露。
(まったく……お節介さんがこんなに)
ここは今回、一番説得力を絵で見せなくてはならない難しいシーンだったのですが、
ちょっとあおりをつけて普段と違う大人っぽい表情を見せたり、非常に作画がしっかりしており、
“ステージの上のきらら”を描き分けたのがお見事でした。
(あ〜あ、やっぱり……)
夢の舞台で、星はまばゆい光を放ち――。
「……楽しいや!」
「さて、あなたの夢は?」
「――キラキラ輝く一番星。世界一の、トップモデルだよ!」
決め台詞のように、沸く観衆(笑)
ここで、「あなたの夢は?」と問うのは当然司会のみなみ様なのですが、その後の静かな表情といい、先の布石としても効いています。
いつの間にかショーを見ていたボアンヌと社長が控え室を訪れ、きららは今度こそ、その提案を聞く事に。
一方ホープキングダムでは星の城が輝き始め、「そういう事か……城を目覚めさせはせぬ」と、それに気付いたディスピアは、
はるか達の世界へと黄竜ゼツボーグを送り込み、天空要塞絶望城を除くとこれまで最大級の巨大ゼツボーグとの戦闘に。
見所は、スカーレットとマーメイドによる、プリキュア砲弾投げ。
「あたしはもう、止まらないよ!」
強力な雷撃を操る黄竜だったが、マーメイドとスカーレットの支援を受けたトゥインクルがまさかのダークネスムーンブレイク(射撃)
からプリキュア銀河落としを炸裂させ、本体が出た所にプリキュアボンバーでブルーミング。
黄竜ゼツボーグを倒すと再びロイヤルキーが光り輝き、星の城に転移するプリキュア達。
トゥインクル城に関する都合のいい情報提示キャラで終わるかと思ったカナタ様は、最後にばばーんと白馬で背景にやってきて、
さすがの王子力を見せつけました(笑)
遙かなる星の力により星の城が目覚め、周辺が浄化されると空にかかる黄色の虹。
そして……
「さっき、ボアンヌと話したよ。今度新しくブランドを立ち上げるから、あたしをその専属モデル候補として、パリで育てたいんだって」
ボアンヌときららの会話シーンで、その場に立ち会ったゆいちゃんが眉毛をハの字にする姿が描かれるだけで会話内容は無音にされたので、
観測者であるゆいだけが胸に秘める話になるのかと思ったのですが、本人からあっさりと告白。
確かに隠しておく必要はあまり無いのですが、今回だけのサスペンス要素だったようです(^^;
「待って、パリって。それじゃ……」
「……うん。春には来いってさ」
「どういう事です?」
「ノーブル学園に居られるのは、あと少しって事」
「そんな……」
「……行くん……だよね」
「うん。もう、決めたから」
序盤と対比する形で、きっぱりと新たな選択を告げるきらら。
「……じゃあ、それまでにグランプリンセスになって、ホープキングダムを、救わなきゃ。ね」
満面の笑みになるはるかは、別れの悲しさを飲み込んで、前向きな目標を持ち出す、というニュアンスだったのかもしれませんが、
発言の内容が内容の為、全力できららを煽りに行っているようにも見えます(笑)
そもそも、「どうか……夢を、追い続けて」ときららの背中を押したのは、はるかだったのですが、すっかり全方位に容赦が無くなってきました。
「…………当然! あたしに任せなさい」
そして、この娘はまったくしゃーないなぁ、とでもいった表情の後、それを承諾するきらら。
煽られたら応えるのが生き様です。
ホープキングダム救済に繋がっているとはいうものの具体的な理屈は未だにさっぱりわからず、
こと「グランプリンセス」に関してどうしても、みなみときららが、はるかの付き合いに見えてしまう、
というのは今作序盤からの問題点の一つでしたが、ここでタイムリミットが区切られた事で、
旅立ちまでに全てを片付けなければ天ノ川きららの名がすたるといった形で、
きららがグランプリンセスを目指す主体的な動機がギリギリながら生まれました。
そう、
「夢がなかったら、生きていられない。格好良くなれなかったら、生きている資格がない」
のです。
「そんな、簡単に出来ると」
「出来るの〜。あたしを誰だと思ってるの。いひひ」
200%で駄目なら300%、夢も、友情も、全て掴んで、誰かの憧れであり続ける。何故なら――
「あたしは、天ノ川きららだよ!」
「おちょくりやがってぇ」
「――あたしの夢を、邪魔するからだよ」
「夢? おまえの夢なんてどうせ、大した夢じゃねえだろぉ!」
「大した夢だよ! 天ノ川きららの夢は、この星空みたいに、きらきら輝いてるんだから!」
(第4話)
主要人物の中で、今作の主題である「夢」に関して最も完成度の高いキャラクターとして登場したきららですが、
ここで本格登場回の第4話を思わせるポーズ(前半にちらっとはるかの回想もあり)で決め、最もブレていない人物として、
きららがきららである事が貫かれました。
元々きららのモデル業とプリキュア活動の両立は劇中に盛り込むと無理が出がちな要素であり、
それこそ少し前に一泊二日の撮影旅行に際して大騒ぎがあったばかりなのに、前回はニューヨークまで行っていいのか、
という問題も生じたり、メタ的には必殺技の問題などあったりするわけですが、そういった諸々全てを、
天ノ川きららはスターだから
という理由でねじ伏せるという渾身の力技。
格好いいは正義。
さてこれで、
フローラ:どんなに痛くても苦しくても夢見る事の幸いを守りたい
スカーレット:ホープキングダムの王族としての誇りと責務
トゥインクル:天ノ川きららはスターだから
と、それぞれのプリンセスの最終的な立ち位置がびしばしと決まった感じですが、果たしてマーメイドはどこに立ち、
何の為に戦う事を選ぶのか。
次回、まさかのザマス先生まで再登場。そして、プリンセス三連石柱割りに戦慄せよ! ……はともかく、予告のやり取りからすると、
“はるかの笑顔がみなみを追い詰める”みたいな展開になってくれると面白そうだなぁ。
→〔<第5部>(2)へ続く〕
(2016年8月15日)
(2017年4月8日 改訂)
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