■『GO!プリンセスプリキュア』感想まとめ3−2■


“どの過去も生きるチカラに わたしの炎誰も消せない
つないだ手 永遠に信じて”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた、 《プリキュア》シリーズ初体験者の『GO!プリンセスプリキュア』感想の、まとめ3−2(28話〜30話)です。文体の統一や、 誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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<第3部・四人のプリンセス(2)>
◆第28話「心は一緒!プリキュアを照らす太洋の光!」◆
(脚本:伊藤睦美 演出:三塚雅人 作画監督:赤田信人)
 海、再び。
 しかし夏休みに海に来るなら、謎の休暇でお兄様の海へ行く必要はあったのか……てまあ、みなみ様パワーアップの都合だったのでしょうが、 エピソード自体の出来が悪かった事といい、何やら色々と強引だった事が改めて伺えます(^^;
 海藤家のプライベートビーチ、というか別荘付き島、に遊びに来るも、火属性なので水に弱いトワが、 泳げない事を言い出せないでいる内に、先んじてしまう眼鏡っ娘。忘れ物がある、と別荘に逃げ戻ったトワはそこでゆいと話し、 自分の今の居場所を確かめると共に、もう少し素直になろうとするのであった。
 前回、テーマ的な作品の両輪をまとめたのを受ける形で、トワがそれを、特に「支えてくれる人達の存在」を自覚的に受け入れる、 というエピソード。
 合わせて、地味な友達→避難誘導係だった眼鏡っ娘が「語り部」のポジションを得る事に。
 ゆいの絵本作家になりたい、という夢を拾って、絵本に始まり絵本に終わる(かもしれない)……という構造が見えてきましたが、 10年後、みたいなエンディングは作品の置かれている事情的に出来るのかしら。
 ゆいボーグ2号と戦うスカーレットが、人間花火ウルトラダイナマイト→プリンセス忍法火の鳥のコンボを打ち破られるも、 ゆいの大事なスケッチブックを守る為に覚醒し、再びの火の鳥でゆいボーグ2号をバーニング、というのはベタだけど盛り上がりました。 そしてフローラに負けじとお姫様抱っこを決めると、ゆいの中からスカーレット用の新たなキー、サンキー(語呂悪いけど、 サンライトキーとかでは駄目だったのか)が誕生。
 ラストでサンキーと背景の太陽を被せるのは演出としては面白いのですが、被っている太陽が“海に沈む夕陽”なので、 あまり良い事が起こりそうな気がしませんが、そのキー、使って大丈夫か。地球がたちまち凍りついたりしないか。
 生まれ方や位置づけとしては各自のミラクルドレスアップキーと類似しているサンキーですが、 ディスピアの絶望が転化されたわけでもなく、スカーレットのキーは未だ謎だらけ。ちゃんと物語の中に収まってくれればいいのですけど。
 一方、三色ロックに足止めを受けていたフローラ達はそれを撃退するも、去り際のロックの影にドレスアップキーを盗まれてしまう。 ロックの目的は最初から、トワイライトでもプリキュアでもなく、ドレスアップキーだったのだ!
 これまでも思わせぶりにフードの目玉が動いていたロックですが、3色分身では靴にも目玉がついて動いており、意味ありげ。 後ろから稲光を受け、城の床に異形のシルエットが浮かび上がる、という演出は格好良かったです。次回、 3色ロックを見たシャットの反応が凄く楽しみ(笑)
 夏だ浴衣だカーニバルだ、に続き、夏だ水着だレジャーだ、と油断していたら変身アイテムを奪われる、という急展開。 奪われてからしばらく気付かない辺り、これが夏休みボケというものか。スカーレット以外変身不能になってしまったプリキュアは、 この危機を脱する事が出来るのか。謎の美少女達が登場し、やはりノーブル学園とホープキングダムには関係があるのか……? て、 ディスピア様?
 あれ、これ、絶望の森=はるか達の世界とかだったら何だか凄い事になりそうですが、 巻き込まれたと思ったら実は汚染物質を垂れ流していました、みたいな展開だったらどうしよう。いや、矛盾なく繋がるかどうかとか、 まだ全然考えてませんが。
 果たして、ラスボスは望月先生なのか、それとも白金さんなのか?!
 「とうとう気付いてしまったのね……そう、ノーブル学園はね、夢と希望を煮詰め、 最強の絶望を作り出す為の蟲毒の箱庭なのですよ――」

◆第29話「ふしぎな女の子?受け継がれし伝説のキー!」◆
(脚本:香村純子 絵コンテ:鎌仲史陽 演出:岩井隆央 作画監督:上野ケン)
 前回ロックにキーを奪われてしまい、プリキュアに変身が出来なくなるという致命的な危機に沈み込むはるか達。固有、 というわけではありませんが、はるかが落ち込む姿も随分と久しぶりな気がします。
 「もし今、ディスダークが襲ってきたら……」
 大丈夫ですみなみ様! そんな時の為に、先日入手した、必殺・妖精爆弾で……!
 というかパフは寮に飼われている設定だけど、アロマは一緒にテントの中に居ていいのか。寮におけるアロマの待遇など、 100%どんな扱いだったか覚えていませんが。
 そんな中、不思議な夢を見たパフがキーの魔力と似た匂いを嗅ぎつけて皆でその後を追うが、 はるか・みなみ・きららの3人だけが森の中ではぐれてしまい、どこか非現実的な空間で、ガーデンパーティを開く3人の少女と出会う。
 一方、一挙に9個のドレスアップキーを手に入れたロックは、それに鍵をかける事で夢の力を封じて莫大な絶望を吸い出し、 一気に絶望ゲージが溜まってしまう、という予想外の展開。なお、3色ロックを見たシャットの反応は、ごく単純な驚愕で、 それほど面白くはありませんでした。
 不思議なガーデンパーティに招かれたはるか達は、そこでそれぞれの夢を語るが、その時、 突然の暗雲と共に巨大なゼツボーグとディスピアが現れ、6人に襲いかかる。プリキュアに変身する事が出来ず、 お茶会娘達の手を取って逃げる事しか出来ないはるか達は、徐々に追い詰められていく。
 「なんとかしなきゃ……」
 「どうやって?」
 「どうやっても。変身できなくても、逃げられなくても、何とかしないと。でないと、全部終わっちゃう。私達の夢も、 この人達の夢も。そんなの駄目! 絶対みんなで、助かるの」
 今回、さすがに眉を寄せて落ち込んだ表情の多かったはるかですが、土壇場で《鋼の魂》が発動して絶望からV字回復。 お茶会娘達を逃がしたはるか達の体に闇の触手が絡みつくが、3人は決して絶望に屈しない。
 は「まだだよ!」
 み「私達は、諦めない!」
 き「夢をかなえるまで、終わらない!」
 は「そうだよ、私達には――」
 み「守りたい夢が」
 き「叶えたい夢がある」
 は「絶望なんかに負けない夢、それが……」
 「「「私達の力!!!」」」
 3人の体が光り輝き、触手が消滅。何故かお茶会娘達からドレスアップキーを渡されたはるか達はゼツボーグを撃破すると、 ディスピアの影も消滅する。実はお茶会娘達は先代のプリンセスプリキュアであり、はるか達が迷い込んだのは、その記憶の世界。 巨大ゼツボーグとディスピアの影は、キーを奪われたはるか達と、大いなる闇の復活を懸念する先代の不安が重なって生まれた絶望の幻影だったのだ。
 「この戦いに一番大切な事。もう、わかっていますね」
 「――絶望しない事。自分や、みんなの夢を守りたいって気持ちが、私達の戦う力!」
 うーん……。
 内側から溢れる光が絶望を振り払う――本当に強い力は誰しも心の中に持っている、という暗示は悪くないのですが、 根本的な所で、展開に無理があった気がします。
 変身アイテム(だったり巨大ロボットだったり)を失ったヒーローの危機、というのはしばしば見られる筋立てですが、 特殊な訓練を受けていたり、変身前もある程度の戦闘力を持っているならともかく、はるか達の場合、 あまりにただの中学生女子すぎるので、その筋立てと相性が悪い。
 戦闘力皆無の女の子3人がノーガードで仁王立ちして「私達には夢があるから大丈夫!」で解決したらプリキュア要らなくなってしまうので、 極端に言えばこれやっていいのは最終回だけだよなーと。
 せめてトラップを仕掛けるとか、正面から戦えないなりの方策――いわゆる「知恵と勇気」――を見せてくれれば、 「単純な力は失っても、諦めなければ、色々な方法がある」とまだしも巨大な敵に立ち向かう説得力が生じたのですが、 知恵を見せずに勇気だけを振りかざしてしまい、その上で思惑はともかく、やっている事は“無謀な自己犠牲”でしかないので、 勇気とは違う何とやら、になってしまいました。
 あまり踏み込むとデリケートな問題なのでさらりと書くに留めますが、大雑把に、“普通は出来ない事をやる、 現実に抗う力”と“それを支える心”というのは、ヒーロー性を成立させる両輪であります(※勿論、 必ずしも全てのヒーローに適用されるとは限りませんが、今作はこのタイプの範疇と見て良いでしょう)。
 で、“力を支える志”のほうは重要視されるのに対して、“志を実現する力”は付随物のように置かれがちなのですが、実の所、 力に担保されない志は、それが実現されないという点において空論にしかなりません。
 今回はるか達は、力を支える、心/志/理念については力強く語るのですが、それを実現する力を失った状態です。であれば、 今回やらなくてはいけなかったのは、「諦めない心を言葉で語る」のではなく、「諦めずに絶望と戦う姿を直接打撃以外で描く」事、 つまり、失った力の代わりにどんな方法で志を実現しようとするのかであるべきだったと思うのですが、 特に工夫のないまま演説しただけではそこに説得力を持たせられたとは言い難く、人事を尽くさないまま天命を得てしまった (その先ではなく、スタート地点に戻って実行力を得てしまった)のは、大きな失敗だったと思います。
 力を失っても心は失わない、というのは勿論大事なのですが、目前の物理的脅威に対して心だけで立ち向かってしまうのは、 それはそれでバランスを欠いてしまいます。それが許される展開というのもありますが、それはそれで、その為の積み重ねが必要で、 今回はそこまで足りていません。
 26−27話が前半戦とトワのまとめだったことを考えると、意識的に第1話をやり直したのかもしれませんが、 基礎の確認を繰り返しすぎて、却ってはるか達の成長が見えてこないエピソードになってしまいました。特に今作の場合、 同様の説教フェイズが(印象的に)多いので、テーマの強調とは別に、はるか達の行動はもっと具体性を持った次のステップに移って良かったように思えます。
 結局はイメージの世界だったので精神力の勝利が成立したわけですが、“はるか達はそれを知らない”わけですし。
 今作、キーワード部分の積み重ねが丁寧な事で、精神的パワープレイの勝利をプリキュアの暴力によってバランスを取るという基本構造 (一般的なパワープレイ戦隊の逆)を成立させているのですが、プリキュアの暴力という要素を一時的に失う事で、 その抱えている悪い部分が前面に出てしまいました。
 ……というここまでの話は、全てヒーロー物のロジックで語っているので、女児向け作品としてはまた別のロジックがあるのかもしれませんが。
 にしても、ゼツボーグ(幻影だとわかっている)が出てきた途端に急に無言になり、 無力を装ってきゃーきゃー逃げ惑いながら後輩達が決死の覚悟を決めるのを観察している先代達が 物凄くタチ悪いのですが、実はあれか、まんまとドレスアップキーを盗まれた後輩の小娘どもに、 腸煮えくりかえっているのか。本当はもっとこれから、突然の底無し沼、突然の虫の大群、突然のメガシャーク、 みたいな感じで盛り上がる予定だったのか。
 単独のエピソード構造で言えば、変身不能展開+先輩/師匠的キャラによる精神的試練、をミックスしたと言えるのですが、 その組み合わせが非常に悪くて、精神的試練だと知らないのに変身できないまま精神力で突破してしまう、という、 どうも引っかかりを覚える内容になってしまいました。
 単独の試練話だったら、もう少しまろやかに成立したとは思うのですけど。
 通常空間に戻った3人は、「ホープキングダムが、永遠に希望溢れる世界でありますように――」という先代の想いのこもった、 最後(?)のドレスアップキーを入手。その名を、桜・珊瑚・銀河。

 銀河

 トゥインクルは次は、ブラックホールでも投げつけるのか。
 先代のドリーム体(お肌がぴちぴちだった頃の私達)が隠し持っていた事になった3つのキーは、恐らくそもそもは、 パフのクラスチェンジ含め、資格を得た者に渡す的なニュアンスだったのかとは思われますが、上述したように、 はるか達の「成長」を描いた感じではなかった為に、ただの嫌がらせのようになってしまいました。
 以前に召喚されたホープキングダムのゆかりの地も寂れた感じでしたし、ちゃんと祀ってないので怨霊になりかけているのではないか先代。 ……これ、ディスピア様って、同様の経路を辿った先々代のプリンセスプリキュアだったりしないかもしかして。
 はるか達が新たな力を得たその頃、ホープキングダムではロックが満タンになった絶望エネルギーを使い、 モードエレガント。
 「鈍く輝く鍵のプリンセス・キュアロック! 心に溢れる夢、閉じ込めさせていただくんだね。お覚悟は、宜しくだね?」
 ……ではなくて、そのエネルギーで何とホープキングダム城を丸ごとゼツボーグ化してしまう。浮上した城はそのまま次元の壁を破り、 はるか達の世界へと侵入し、まさかの、天空要塞・大絶望城、襲来。
 ここまで引っかかりの多いエピソードでしたが、ここで一気に面白くなりました。こういう展開は大好物です(笑)
 「さて、楽しいゲームの始まりだね」
 果たして大絶望城の力や如何に?! 3色ロックが愉悦の笑みを浮かべる中、その独断先行?を見つめる黒い鳥が姿を見せ、次回、 風雲急を告げる夏休み大決戦!
 3つのキーを手に入れた筈なのに予告では何故か生身で突撃していて「俺には……これがある、 徒手空拳」状態になっているのが気になりますが、今回のエピソードに色々引っかかってしまったので、 それを増幅する展開でないといいなぁ……。生身の意味を、巧く用いてくれる事に期待。
 ところで:サンキーの出番が無かった。

◆第30話「未来へ!チカラの結晶、プリンセスパレス!」◆
(脚本:田中仁 演出:中村亮太 作画監督:大田和寛)
 ロックが集めた絶望の力で生み出した、天空要塞・大絶望城が、はるか達の世界へ襲来! 極太絶望ビームが放たれるが、 それをスカーレットが花火シールドで受け止める!

 え? あれ?

 いやまあ、幾らゼツボーグによる被害が、戦闘終了後に自然回復する設定にしても、 あまり大規模な被害はどうかというのはあったのでしょうが、前回ラストでようやく盛り上がった超兵器の登場が、 冒頭であっさり安い扱いにされてしまって、レッドシグナルが激しく明滅。
 花火シールドが凄いのか、絶望ビームが凄くないのか、というのは判断の分かれる所ですが、 そもそも花火のシールド転用が劇中初めての気がするので、色々と納得しがたい所があります。
 もう少し違う形で、最初に大絶望城の威力を見せる工夫は欲しかった所。冒頭でそこに失敗した為に、全体の危機感の不足と、 ロックのここまでの活動に与える意味の低下を、招いてしまいました。
 既にプリキュア変身不能という危機を与えているので、これ以上はやり過ぎという判断があったのかもしれませんが、 ロックがこれまで集めた絶望を利用して生み出した最強最大ゼツボーグの登場でプリキュア史上最大のピンチ!  という危機感はもっと煽って良かったと思います。
 合わせて、今作の一貫した短所としての悪玉サイドの魅力不足があり、突然の成長期に続いての突然の反乱、 というロックの描き方があまりに唐突で感情の流れに欠ける為、善玉サイドとの釣り合いが悪く、プリンセスプリキュアvsロック、 という対決の構図そのものが山場としては上手く機能しませんでした。
 クローズの「考えろ、考えろ俺……!」や、トワイライトへの愛が憎しみに変わるシャットなど、 三銃士にはディスピアの人形から徐々に自我を得ていく、というニュアンスはあるようなのですが、はるか達の描き方が丁寧な分、 直接対決した時の格の不足がどうにも否めません(シャットはようやく面白くなってきましたが)。 そのギャップを「強大な敵として描く」事で埋める手法もあるのですが、今作はその辺りも上手ではないというのが正直(^^;
 スカーレットが外で緑ロックと戦っている間に、パフとアロマの力で城内に潜入したはるか達は玉座の間に辿り着き、 囚われのキーの解放に成功。
 ……私、ここで初めて、プリンセスプリキュアへの変身は基本のキーのみで行え、それ以外のキーは必殺技とフォームチェンジ用である、 という変身システムを理解しました(^^; どうして、前回手に入れたキーで変身しないのだろう、 と前半ずっと思っていた事を白状します。
 遂に変身能力を取り戻すはるか達だが、対する3色ロックは一つに戻ると、巨大カエルドラゴンの本性に変身。 3人はその圧倒的な力に追い詰められるが、そこにスカーレットが駆けつけると、またも花火シールドで完全防御………… そういえばカナタ様も魔法のステッキでイケメンシールドを張っていたし、実は防御魔法が得意な血統なのか。
 「希望を無くしてはいけません! あなた方はっ、ただキーの力を受け継いだだけでは無い筈です!!」
 「そうだよね……このキーには、託された想いと、夢が――それに、たくさんの人達に、助けてもらったり、支えてもらったから、 ここまで戦ってこられた」
 「あたし達だけじゃ、無理だったよね」
 「ええ。みんなの気持ちに応える為に、この先も、歩み続けなければいけない」
 ここで、プリキュアの力がただの暴力ではない――それは、みんなの夢を守ろうとする意志と、 そんな彼女たちの夢を応援する意志とのポジティブな繋がりによって成立しており、プリンセスプリキュアの戦いもまた、 彼女達だけの戦いではないのだ――、と“正義の背景”を互いに補完し合う繋がりとしてまとめてきました。
 「みんなの想いと一緒に!」「この手で!」「この足で!」「未来を切り拓く!」
 「それが――私達の力!!」
 反撃に転じた4人の、カエルを取り囲んでの連続攻撃は格好良かったです。……特にスカーレットは普段の大技のCGが微妙なので(^^;
 「ほんとにもう……うるさい奴等だなぁぁ! みんなとか、想いとか、どうでもいいんだよぉ! 僕はぁ!」
 「「「「私達はっっ」」」」」
 「王になる!」
 「「「「絶対に負けない!!!!」」」」
 プリキュアの力の背景を踏まえる形で、孤独な王であるロックの絶望と、 皆の心の繋がりであるプリンセスプリキュアの希望の対比を念押しで入れているのですが、 上述したようにロックの積み重ねが不足しているので、あまり効果的には機能しませんでした。
 また、どういうわけか戦いの舞台を、キュアフローラvsブラックプリンセス(トワイライト)の時と似た場所(城内)に設定しているのですが、 これはどうしても、対決の構図が上手く行っていたフローラvsトワイライトの戦闘と比べてしまう為、二重に悪く、 大きな失敗だったと思います。
 プリキュア達とカエルの攻撃が衝突した瞬間、16のキーが反応。突如として絶望城が消滅し、宙に浮かんだ4人の手元に、 光輝く小さな城が現れる。
 ……商業的な事情で割り切ってはいるのでしょうが(例えばスカーレットのバイオリンも、 弦としてのリアリティを放棄して玩具に準拠したデザインですし)、激しい戦闘の末に出現したニューアイテムが、 あまりにも玩具玩具しているのは、フィクションの幻想性を著しく傷つけるのではないか、というのは気になる所(^^;  まあこういうのは、主要な市場層にとってその方が嬉しいなら、それが正解なのだとは思いますが。
 4人がサクラ、サンゴ、ギンガ、サン、4つのキーをお城に差すと、新たな力がその身に宿り、プリキュアはドレスアップ・プレミアム。 白くテカテカしたドレス姿になった4人は、プリンセスパレス空間を展開し、カエルドラゴンの動きを封じると、 最大エネルギーを放出する!
 「「「「響け! 全ての力!! プリキュア・エクラエスポワーーール!!!」」」」
 ――プリキュア・エクラエスポワールは、桜、珊瑚、銀河、太陽、の四大エネルギーを、 一瞬の内に、相手の体内に注入して、爆発させる、恐るべき、必殺武器なのだ。
「「「「プリキュアァ・コバック!」」」」

 な感じで、抵抗を許されずにカエルドラゴンは昇天。吹っ飛んだロック本体は森の中に転がり、 思わせぶりな黒い鳥はパーカーから絶望エネルギーを回収すると飛び去っていく……。大きな危機を乗り越えたプリキュアは、 必殺アイテム・プリンセスパレスを入手するのであった。
 総じて、綺麗にはまとめたけど、やや盛り上がり不足。大絶望城がさして役に立たない、変身できなくてピンチは前回やった、 ロックの積み重ねが足りない……と、危機感や絶望感を増させる為の仕掛けが、もう一つ機能しませんでした。そしてその、 押さえつける力が足りないと、逆転のカタルシスというジャンプの高さも不足してしまいます。
 中盤の山場という事で、どこまで追い詰めてどこまで盛り上げるかの計算が難しかった部分もあるかもしれませんが、そういう時は、 「え? ここでこれだけ盛り上げてしまって、終盤どうするの??」ぐらいのものを、見せてほしい(笑)
 山とは、受け手の浅はかな憂慮を乗り越える為にあると思うのです。
 完全破壊されずに森の中に転がったロックは、意識があるような描写のあったパーカーだけ消滅したので、 悪いのは衣装だったという事にされるのか。人間社会に放置されると、金無し・宿無し・戸籍無しですが、 果たして生き残る事が出来るのか?
 そして今頃、ホープキングダムで寂しく野宿中のシャットは屋根のある生活に戻る事が出来るのか?!
 次回まさかの、あいつが虚ろな瞳で復活。


◎第3部まとめ
 ちょっと短めですが、スカーレットの仲間入りからトワとの交流〜夏休み編を経て、ロックと決着する所までを一区切りという事に。 29−30話にはかなり不満があるのですが、トワとメインメンバーの距離を近づけつつ前半戦をまとめていった、 夏休み編の流れは悪くなかったと思います。
 そして何はなくとも、第23話――
 「笑おう、スカーレット」
 トワとトワイライトを切り替え、前半戦と後半戦を繋ぐ、文字通りの節目のエピソードなのですが、ここで、 キュアフローラ/春野はるか、というヒーローも大きな節目に到達し、以後、この「笑おう」が物語を貫く重要な芯となっていく事になります。
 キュアフローラ、というキャラクターが、跳ねたエピソード。
 ところでキュアスカーレット/トワというのは今作において少々特異なキャラクターで、 メイン3プリキュアが「夢」に対するアプローチの違いという形でそれぞれ別のテーマを与えられているのに対し、 実はトワは第4のテーマを背負っていません。
 トワが抱えているのは「夢」というよりも、「失われた故国を取り戻す」という極めて古典的な使命感としてのヒロイズムであり、 これは今作においては例外的な動機付けといえます。
 そんなトワの特徴となるのは、〔プリンセス・責任感・偶像〕という既存3プリキュアの要素を少しずつ与えられている事で、 はるか・みなみ・きららの持つテーマ性に対する鏡像ないし補完という役割を担っているといえます(また、その使命感により、 物語全体の目標も補完しています)。
 言い方を変えれば、新たなテーマを持ち込むのではなく、既存のテーマ要素を足し算して作られたキャラクター。
 個人的に視聴当時からそこにずっとイレギュラーなものを感じていたのですが、 トワというキャラクターが今作においてどの時点で登場決定する事になったのか、というのは少々気になる所であったり (玩具展開の事などを考えると、番組スタート時点では存在決定していたでしょうが)。

→〔<第4部>(1)へ続く〕

(2016年7月11日)
(2017年4月8日 改訂)
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