■『GO!プリンセスプリキュア』感想まとめ3−1■


“笑おう、スカーレット”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた、 《プリキュア》シリーズ初体験者の『GO!プリンセスプリキュア』感想の、まとめ3−1(23話〜27話)です。文体の統一や、 誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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<第3部・四人のプリンセス(1)>
◆第23話「ず〜っと一緒!私たち4人でプリンセスプリキュア!」◆
(脚本:香村純子 絵コンテ:黒田成美 演出:岩井隆央 作画監督:爲我井克美/上野ケン)
 見所は、スカーレット、まさかの「GO!」担当。
 前回から引き続き寮で生活していたトワに気晴らしをさせようと、夢ヶ浜ニコニコツアーと称して街へ連れ出すはるか達。
 「こちらに来てから、ほとんど部屋に閉じこもっていたでしょう?」

 それは、専門用語で監禁というのでは。

 もはや何を一番にツッコめばいいのかわかりませんが、食事とか、どうしていたのですかね……。 第19話で「学園と学園寮という舞台」に物語上の意味を与えたのは良かったのですが、やはりどうにも、 全寮制という設定を持てあましている感はぬぐえません。さすがにこれをファンタジー居候の延長線上で納得しろというのは厳しく、 根幹設定には責任を持って物語を作って欲しい所です(^^;
 今作のこの、非常に丁寧に組み上げている部分と、物凄く雑な扱いをしている部分の落差は、 あまりに大きくてどうしてこんな事になっているのか。全体的に雑ならそれで強行突破できる部分も広がりますし (それで面白くなるかはまた別として)、或いは雑な部分が面白さに繋がっているなら話は変わりますが、 今作の面白い部分は概ね丁寧に組み上げている所から生じているので、雑な部分の問題がよりマイナスに目立ってしまっています。
 とにもかくにも、きららのコーディネートで素面では少々恥ずかしいトワの衣装をチェンジ。
 「決まりね。お願いします」
 私達からのプレゼント、と言っていますが、明らかにみなみ様が背後で顔パスしています。
 一行はトワを引きずり回すと、それぞれの好きな場所に案内してトワを楽しませようとするが、 罪の意識に悩むトワは浮かべかけた笑顔を押さえ込む。
 「ホープキングダムを救うまで、わたくしは、楽しい思いなどしてはいけないの。……わたくしが奇跡的にキュアスカーレットになれたのは、 天が償うチャンスをくれたからです。あなた方とは、違うのです」
 これが70年代なら、「おのれディスダーク! わたくしはこの力を使って、おまえ達を殲滅する!!」 となって新しい仮面を身に付け「我が名は復讐の炎・怪傑スカーレット!  貴様等にくれてやるのは希望でも絶望もなく――死だ!」とかやる所ですが、そこまで女の子を捨てられなかったトワは、 前向きに夢を目指す為ではなく、あくまで罪を償う為の奇跡、と変身を内省的に捉える。今作これまで居なかったタイプで、 新鮮な位置づけになりました。
 ドーナツ屋を1人飛び出すトワだが、そこでこの世界の常識を知らない事と、自分の生活能力の無さに気付く。……と、 定番のギャップギャグとトワ様可愛げキャンペーンなのですが、トワの場合、いってみれば幼少期に誘拐被害に遭っている人なので、 “異世界のお姫様の戸惑い”として素直に笑いにくい所があります(^^; むしろ、あまりギャグにしてはいけないような。
 そんなトワは通りすがりの望月先生と遭遇し、幼少期の反省もなく甘味につられて会話をかわすが、そこへロックが現れ、 望月先生からゼツボーグを生み出してしまう。プリンセス忍法・火の鳥を受けたディスピアが湯治の為に絶望の森へ一時帰還し、 ロックは絶望を集める闇の鍵をディスピアから受け取っていたのであった。
 「おまえが関わった者はみーんな不幸になる。ホープキングダムも、プリンス・カナタも。次はこの世界の番かな?」
 変身して戦うもロックの揺さぶりを受けて動揺したスカーレットは、ロックに強化されたゼツボーグに追い詰められるが、 そこへトワを探していたはるか達が駆けつける。
 「そいつと居ると、みんなどんどん不幸になるんだね」
 「そんな事、無い!」
 正拳突きを放つもロックに弾き飛ばされ、地面に叩きつけられるフローラだったが、 駆け寄ったスカーレットに向けて満面の笑みを浮かべてみせる。
 「笑おう、スカーレット」
 思った通りの笑顔と台詞だったのですが、思った通りで、少々ぞっとしました(^^;

 怖いよ、この娘!

 「嬉しい事、楽しい事、夢とか、希望とか、そういう、あったかい気持ち、みんなでいっぱい作ろうよ。あいつらに何言われても、 笑い飛ばせるぐらい……いっっぱい作ろう。一緒に、強くなろう。ね?」
 魔女を恐れぬ強さ、相手を思いやる優しさ、世界に花咲かせる心の美しさ――強く優しく美しく、 あらゆる負の感情をより大きな正の感情で呑み込む事で常に笑えるならば、我、なにものにも屈する事なし!
 “理想のプリンセス”を目指す事で、はるかがヒーローとして物凄い領域に到達してしまいました(笑)
 更にそれを他者にも適用する事で、罪を許すのでもなく許さないのでもなく、己の中の罪悪感を、己の中の幸いで乗り越えろ、 と助言しており、ネジの数本抜けた娘だとは思っていましたが、その内、善悪の観念とか簡単に飛び越えそうです。
 持って生まれた小市民的良識がストッパーになっているように見えていましたが、思えばそもそも、 「犬を飼ったら駄目なら寮のルールを変えたらいいじゃない!」という娘だったので、あれは割と壮大な伏線だったのか……?!
 「マーメイド。トゥインクル。そしてフローラ。今までの事、本当にごめんなさい! 今更謝った所で、 わたくしの罪は消えません……それでも! わたくしはあの方を、ディスピアに苦しめられる人々を、助けたい。だから、 どうかわたくしに、力を貸して下さい!」
 一緒に戦わせてほしい、ではなく、私に力を貸せ、な所にナチュラルな女王属性を感じます(笑) 新参者の癖に、 上に立つ気満々だ!
 スカーレットが参戦して4人となったプリンセスプリキュアはスカーレットのフェニックスでゼツボーグをどりーみんし、 望月先生を無事に解放して、ロックは撤退。
 少し気になるのは、前回今回と、はるかとトワの関係に集中した結果、みなみときららが完全にはるかに追従する形になってしまった事。 今作の特性としては、両者のトワに対するスタンスは早めに描いてほしい所です。
 まあ、根本的な所として、“祖国侵略の責任を感じている異世界のお姫様の罪悪感”に対して、 当然はるか達が今ひとつリアリティを感じられていない為に対応が軽い、というのはあると思いますが。 その辺りのギャップを調整するのかしないのか、というのも気になる所ではあります。
 そういう点で、どだい測りきれないものに対して、社会的な善悪の観念を振りかざさなかったのは良かったとは思います (トワの罪を許すとか許さないとか言える立場に誰も居ないので)。お陰で、はるかがだいぶ遠い所へ飛んでいってしまいましたが。
 あと個人的にスカーレットには、今作らしさを出す意味でも、罪と贖罪よりも、夢と責任感の持つネガティブ面、 をテーマにして欲しいのですが、さて。
 スカーレットとの戦闘中、「ロック! いつの間にこんな力を」「さあ、いつからだろうね」と思わせぶりな発言のあったロックは、 ディスピア不在の玉座にしれっと座ると、
 「楽しくなってきたんだね。さて、それじゃあ僕もそろそろ、本気を出しちゃうんだね」
 という台詞と共に、ふぉぉぉぉぉと気合いを入れてパンプアップ! すると、その姿がこまっしゃくれた少年から、 バタ臭い美形(例:広瀬匠)に…………!…………ならなかったぁぁぁぁぁぁ。
 元のデザインほぼそのままに等身だけを上げた結果、むしろ格好悪くなったよーな(^^; 動いてみないと何ともいえない所はありますが。
 登場時から別格扱いされていたロックが、ようやくその理由(の一端?)を見せたのは良かったのですが、さて、 ここから面白くなってくれるかどうか。そして、どんどん燃えないゴミに近づいていくシャットの明日はどっちだ。
 その後、とうとうトワを寮に監禁、じゃなかった、軟禁、じゃなかった、匿っている件ではるか達は学園長に呼び出しを受けるが、 学園長=望月ゆめがトワを学園に誘い、一件落着。……まあそもそも、白金さんから報告を受けた望月先生が意図的にトワと接触したのではありましょうが。
 うーん、望月先生って、ノーブル学園設立の資金を手に入れる為に此の世ならざるものと契約を結んでいて、 色々と奇矯な要件を満たさないといけない人生なのかもしれない。筆を置いて50年、幻の作家になっていたりとか。

◆第24話「笑顔がカタイ?ルームメイトはプリンセス!」◆
(脚本:伊藤睦美 演出:佐々木憲世 作画監督:青山充)
 トワもキュアスカーレットになったし、OPで描写している要素をだいたい本編で使い切ったので、 そろそろOPアニメが大幅に変わったりしないかなぁ(変わったら嬉しいなぁ)と思ったのですが、トワイライトもそのまま、 まだ変わらず。
 学園長の肝煎りでノーブル学園の生徒となったトワは、たまたま空いていたのか、はたまた高度に政治的な圧力か、 きららとルームメイトになり学園と寮生活の中に飛び込んでいく。先日のショーの成功以来、 モデルの仕事がますます忙しくなっているきららは、着替えも1人で出来ず、何かあるごとにパフ(メイド)を呼ぼうとするなど、 世間知らずで常識に疎いトワに振り回される事に……。
 前回も触れましたがトワの場合、“異世界のお姫様”である以上に、“幼少期に誘拐されている”という重い事情があるので、 本来はみなみ様あたりが率先して世間の常識をインストールしてから世に送り出すべきだと思うのですが、 何故か生暖かく放置プレイするみなみ様(さすがに勉強は面倒みている模様)。
 ……これはあれか、前回と今回の間できららとトワが同室になる事が決まった時点で、
 「トワっちの事は、あたしにどーんと任せてよ」
 「そうね。同室のきららが、責任を持ってやってくれるわね(にっこり)」
 みたいな感じで、魂の契約が発動していたか。
 ホープキングダムの名前を出して教室の空気を凍らせるという転入の挨拶で華麗なスタートダッシュを決めるトワだったが、 見事なバレエやバイオリンの演奏などで徐々に下々の心を掴むと、 “時々意味不明のボケをぶち込んでくるけど不思議な気品のある派手な赤毛の美少女”という立ち位置を確立し、早くも、 テーブルに座っているだけで食事を運んできてくれる下僕志望が現れるなど、派閥を形成。
 さすが、超魔法アイドル・トワ様。
 既に食堂では、きららとみなみと食事を一緒にしている姿が羨望の眼差しを集めており、あの地味な子2人なにさまー? という、 はるかとゆいへのヘイトゲージが着々と寮内にチャージされております。
 というか、1年生ばかりの所に混ざっているみなみ様がホント空気読めないのですが、この人、 深刻に友達居ないな!!
 その辺りのバランスを取る為に、微妙に年齢不詳だったトワは2年生になるのではと思っていたのですが、 1年生としてきららに近づける事で、これまであまり描写の無かった教室でのきららの姿に今回は焦点が当たっています。
 また、トワは学園生活を送るにあたって、紅城(あかぎ)トワと名乗る事に。
 命名:望月先生。
 確かに、苗字は無いと不便ですが……望月先生、自由すぎる。そして発想が、トッ○ュウジャーと同レベルだ……。
 その頃、ホープキングダムではシャットが、ばたくさい美形になり損ねたロックの姿を目にしていた。
 「まあ、成長期ってやつなんだね」
 「なんという成長速度……!」
 玉座で足を組み、人間を絶望させる事に喜びの表情を見せるロックの姿に、若干の違和感を覚えるシャット。
 「ロック……おまえちょっと変わったか?」
 急成長を遂げたロックに対し、凄く真っ当に対応するシャットが、かつてなく面白い(笑)  ちょっと変わったとかそういうレベルの話ではないと思うのですが、割と真面目属性だシャット……!
 あまり魅力を感じていないキャラクターだったのですが、ここから巧く広がってほしいなぁ(笑)
 洗濯当番中の騒動の末、トワから笑い方についての相談を受けたきららは、トワの抱えているものの一端を知り、 最近の自分の空回りに気付くと、もっと肩の力を抜いて笑えばいいと、トワと少し打ち解けるのであった。
 前回今回と基本設定の難しさが出てしまっているのですが、トワの事情をはるか達が真っ正面から受け止めて真剣に対応すると話が重くなりすぎる為、 適度に認識のギャップを残したまま進めており、日常パートと、そこから一歩進んだお互いの交流、 そしてはるか達が馬鹿っぽくならないように(最悪、はるかはなってもいいけど、みなみときららはならないように)、 どこまで物語の中にトワの事情をシリアスに食い込ませるか、のバランスにはまだ苦慮している感じ。
 とりあえず、はるかの「笑顔」論をキーに、「まずは生きよう」というテーマで進めていくようですが、 つまり戦場帰りの傭兵が社会復帰する物語となっており、プリンセス・怒りのホープキングダム。
 絶望を集める為に再び人間界へ現れたロックは、新雑誌立ち上げに燃える編集者からゼツボーグを作り出すが、 意気投合したトゥインクルとスカーレットが、これまでになく攻撃的な友情合体技・灼熱メテオ酸性雨で付せんバリアーを突き破った所を火の鳥でばーにんぐ。 これも、戦場の倣いなのだ。
 ロックは今回も絶望をちょっぴり集めて退却し、トワは少しずつ、平穏な日常に馴染んでいくのであった……。
 次回――学園には馴染んでいるみなみ様は、果たして労働者階級の生活に馴染む事は出来るのか。 格差社会に一石を投じる(かもしれない)夏のお泊まり会に同志諸君は刮目せよ。

◆第25話「はるかのおうちへ!はじめてのおとまり会!」◆
(脚本:成田良美 演出:暮田公平 作画監督:フランシス・カネダ/アリス・ナリオ)
 ノーブル学園が夏休みに入り、トワに「故郷」というキーワードを浴びせていきなり地雷を踏むアロマ、 3つのスーツケースを装備してテンション高いみなみ様……事前に何の相談もせずにトワを引きずり、いざ向かうは、 はるかの実家にお泊まり会……川越?
 そして番組から重要なお知らせです。
 今回は! 眼鏡っ娘も! 居るよ!!
 一行は、はるかの実家である和菓子屋へ向かい、はるか、地元では意外と人気。
 お世話になる家で「うちのあんみつ、どう?」と聞かれて、その感想が

 「申し分ないわ」

 のトワ様は、今までで最高に格好良かったです。
 ここまでの今作における、名台詞のトップに躍り出る勢い。
 和菓子屋を手伝ったり流しそうめんを体験したり、労働者階級の暮らしぶりに感嘆の眼差しを向ける王族とブルジョワ。 何もかも「一夏の体験」で済ませて納得してしまうみなみ様、ちょっと危ない(笑)
 ついつい畳の部屋で大の字になってうたた寝する一行だが、トワはディスピアに追いかけられる悪夢にうなされて目を覚ます。と、 部屋に居たのはトワを団扇であおぐみなみ様だけ。はるか達は即席和菓子教室に参加中と明かされるのですが、 ここで「一夏の体験」よりも、トワの面倒を見るのを優先して残っている辺りが、みなみ様。
 「少し、うなされていたわ。悪い夢でも、見たのかしら」
 「…………いいえ、何でもないわ」
 「その言葉……私もよく使ってしまうわ」
 「え?」
 「心配をかけたくなくて、つい、ね。でも、話す事で楽になる事もあるわ」
 「夕方……この時間になると、トワイライトの時の記憶を思い出すの。また闇に呑み込まれてしまうような気がして。夜が来るのが、 怖い……」
 ここまで、丁寧に雰囲気を出して情緒的に描かれていた夏の一幕、風鈴を鳴らしていた涼やかな風が、黄昏、 不安を招く風に変わる――トワを魚眼レンズ気味に描いたり、遠目のカメラを斜めに置いたりと、不安定なカットを幾つか繋げ、 ギャップを出して雰囲気を変えたのは巧い演出。
 そこへはるかが顔を出し、一行は河川敷で花火を楽しむ事に。途中でみなみが第二のスーツケースから大量の花火を持ち出し (なお第一のスーツケースはご挨拶用の大量のメロンであった)、通りすがりの家族連れも加わって賑やかになる中、 少し離れた場所で川面を見つめていたトワに、みなみは花火を手渡す。
 「こんな夜も、あるのね……」
 「まだ怖い?」
 「え? ……今は、そんなに」
 「夜が怖くなったら、こんな風にみんなと一緒にいればいい。もっと私達を頼ってもいいのよ」
 「みなみ……。……みんなと居れば、お化けも怖くない?」
 「う! え、ええ、少しは、多分ね」
 ここでみなみ様にカウンターパンチを炸裂させる事で、トワの独自性がちょっと出ました(笑)
 だが、そんな平和な休日に忍び寄る黒い影……今回、このままゼツボーグ抜きでも行けてしまうのではないかと思われたその時、 いきなり玉座にふんぞり返り始めたロックに絶望集めを命じられ、憂さ晴らしに旅に出ていたシャットの乗った小舟が、 この河川敷を通りがかり、賑やかな声を耳にしてしまう。
 「誰だ、人が落ち込んでいるのにっ。……?! あ、あれは、元トワイライト様!  おのれ! 人の気も知らないで楽しそうに!  許せんっ」
 愛しい主人を失い、同僚だと思っていたちんくしゃに顎で使われる羽目になり、傷心旅行に出た先で逆恨みを発動させるという、 シャットが、凄く、面白くなってきた!!(笑)
 またここで、表面上の姿だけでトワの心情を測る身勝手さと主観のズレが盛り込まれる事により、 悪としてのシャットに厚みが増したのも良かった部分です。
 シャットは背景が目に痛く強化されたシャット・ユア・ドリームにより消防団ゼツボーグを作成。 水の代わりに闇を放出するゼツボーグと、逆恨みに盛り上がるシャットの攻撃に狙われるトワを、間一髪の所で助けるみなみ。
 「邪魔をするな。私が狙うのは、トワイライトのみ」
 「それなら用事は無い筈よ!」
 「なに?」
 「この娘はもう、トワイライトじゃない。私達の仲間――紅城トワよ! そうでしょ? トワ」
 「ええ!」
 最近ちょっぴり影が薄くなっていましたが、久々に格好いいみなみ様でした。そしてトワに対する「さん」付けが外れ、 2人は揃って変身。
 「う、美しい! ……は?! おのれ、それゆえますます憎らしい!」
 三銃士はとにかく前半、見た目と語尾以外に特徴が無いという雑な扱いで個性不足だったのですが、 人間的な感情を乗せる事で一気に面白くなりました。クローズの前例を考えると、凄い勢いで死亡フラグを積んでいる不安も若干ありますが。
 消防団ゼツボーグに苦戦する2人だが、フローラとトワイライトも助けに入り、ワンマンアーミーからツーマンセル、 そしてファイアチームへ――戦場で背中を預けられる戦友の大事さを学んだスカーレットは、マーメイドと協力して、 ゼツボーグに打ち上げファイアワーク。
 「ハナビ」キーは、本当に、この名前しかなかったのか(笑)
 「闇に追われるのがわたくしの定めならば、もう目を逸らす事はしません。この手で闇を払います、何度でも!」
 そう、降りかかる火の粉は打ち払い! すかさず握り潰し! そして踏みにじるのみ!
 遂にキュアスカーレットが、打撃系国家の希望の光として、正しいプリンセス魂に目覚めました。
 汝の敵を狩れ。
 ……もう少し真面目な話としては、これまで、自分の中の罪の意識と向き合う事で押し潰されそうになっていたトワが、 それに屈するのでもそこから逃げるのでもなく、仲間を頼る事でそれに立ち向かっていく覚悟を見いだすという、大きな成長。
 恐怖を認めた上で打ち勝つ勇気の理由が、「頼れる仲間の存在」として描かれ、誰かを頼る事を学んだ先達であるみなみ様と繋げる事で、 勢いで無から生みださずに今作ここまでの物語と繋がったのは、しっかりした仕事。
 「やはり美しい! は?! くっ、あなたは必ず私が倒すのみ!」
 シャットが今回、急速かつ予想外に面白くなってきましたが、凄く変態性も増しました。
 この際ロックに対抗して小さくなって、金髪美少年+半ズボン+網タイツ+ニーハイブーツ という魔性の絨毯爆撃で、全国の女児にコアなルート開放のきっかけを与えるというのは、どうか(待て)
 前回のきらら×トワ回に続いて、みなみ×トワ回でしたが、きららが親愛の情を身体的接触で示していたのに対し、 みなみとトワは言葉と表情のやり取りで縮まった距離感を表現している、というのは綺麗な描き分け。
 話数の多さや、シリーズの蓄積による経験値などがあるでしょうが、そういった部分の丁寧さは今作の優れた所です。
 「悪くないですわ。眠るのが勿体ないぐらい、楽しい夜ですわ」
 かくして夏の夜、また一つ、絆を深めるプリキュア達であった。
 次回、シャットvs犬。…………そういえば昔、鳩と戦って無様に崖から落ちた悪の幹部が居たような……ううっ、頭が……。

◆第26話「トワ様を救え!戦うロイヤルフェアリー!」◆
(脚本:高橋ナツコ 演出:村上貴之 作画監督:五十内裕輔)
 物語も折り返しという事で、OPの歌詞が2番?となり、映像も、入れ替え・追加多数。前半部分を適度に残して活用した追加カットの都合により、 トワと眼鏡っ娘が一緒にフレームインしてくるカットがあり、眼鏡っ娘の地位が劇的に向上しました!
 サブキャラを横に並べて増やしていくのには、いい加減無理が出ていたので、 一気にまとめてお空のお星様(違う)にしたのは良かったと思います。
 他、特に気になるカットとしては、新たな幹部クラスと思われるメットの2人。
 大人カナタ様は特に新規カット無しで、消滅したまま。
 色々入れ替えたにもかかわらず、クローズ続投。
 そして、明らかにフローラに影響を受けた感じで、不敵に笑うキュアスカーレット。
 「敵は数百のゼツボーグ……だけど!」
 「ええ、今夜は私と貴方で、ダブルプリンセスよ!」
 みたいなシーンは、後半戦もこの方向性で突き進む、という宣言だと受け止めていいのか(笑)
 最強とは、どんな絶望を前にしても、笑い続けられる者の事だ!
 夏休み中、無人の寮でテンション上がったトワ様は、ここはお城、私のお城♪ とはしゃぐが、実は高熱を出していた。 はるか達もそれぞれ出かけており、寝込んだトワの為にパフとアロマが大奮闘する、という妖精回。
 流れ流れて旅路の果て、ノーブル学園に辿り着いてしまったシャットは、無人の学園で仕方なくセミをゼツボーグ化し、 それに立ち向かうパフとアロマ。奮闘する二匹に癒やしの光が宿り、外付け補給装置として覚醒を果たすのはギャグの勢いによる一発ネタかと思ったら、 伝承にあるロイヤルフェアリーの力、と説明が入ったので今後も使うのか。かなり便利な能力なので、 使うなら連発せずに切り札として温存してほしい所。
 トワが倒れたと連絡を受けて急ぎ帰寮した3人と、癒やしの光で回復したトワが揃って変身し、 ロイヤルフェアリー殺法ギガアロマブレイクからプリンセス忍法・火の鳥のコンボでバーニング。バトルは基本ギャグながら、 セミゼツボーグが変態を繰り返して3モードある、というのはこれまで無かった要素で面白かったです。
 なお、寮が開いているという事は普通に居るのでは、と思われた白金さんはしっかりワンカットのみ登場。寮母は見ていた。
 EDは完全新規に。この手のCGダンスってのっぺりとしてフレームのわかりやすい動きをするイメージだったのですが、 もう少し丸みをつけて塗りが絵本ぽかったりするのは、ちょっと新しい方向性だったりするのでしょうか。

◆第27話「ガンバレゆうき!応援ひびく夏祭り!」◆
(脚本:田中仁 演出:芝田浩樹 作画監督:河野宏之)
 藍原ゆうき(駄目男)、「おまえでもいっか」と昔なじみを適当に引っかけたら、 ノーブル学園の三大綺麗どころがついてきてしまってハーレム状態になる、の巻。
 はるかだけでなく、5人全員に驕っていたら、それはそれで男気ポイントを獲得ですが。
 夢ヶ浜の夏祭り……練習中に腕を怪我して大会のレギュラーから外された事で、現状への不満から目を逸らす為に殊更にはしゃぐテニスボーイ。 そんな藍原を心配する追っかけ3人娘から激励を頼まれるはるかだが、敢えなく轟沈。ところが、 ますます落ち込んだ3人娘がシャットによってゼツボーグにされてしまい、テニスボーイはその戦闘に巻き込まれる事に。
 藍原少年、お姫様だっこ……される。
 一切の躊躇なくお姫様抱っこするフローラが、実にヒーロー度高い(笑) まあファイヤーマンズキャリーなどで運ばれても、 それはそれで困りますが、割とお花畑な感じで“プリンセスっぽい”事に憧れていたはるかが、 ヒーローとしての経験値を積み重ねる事でさらっと男子をお姫様抱っこ出来るようになってしまったシーンを見ると、 何やら色々と考えさせられます。
 「あんた達、なんであんなのと戦えるんだ?」
 「……夢を、みんなの夢を守りたいから。……かな」
 身近な知り合いに面と向かって問われて、若干はるかが抜けきらずに照れるフローラ。変身時はもっと入りきっていると思っていたので、 ちょっと意外。
 「夢ね……。悪いな……無駄になっちまいそうだ」
 かつてフローラに守られた夢――テニスへの情熱から目を逸らし、自分の境遇をただ嘆く藍原。
 「こんな所でつまづくなんて……格好悪すぎじゃねえか!」
 理想の俺のレールから外れた自分は格好悪いと陰に篭もるその姿に……フローラ、キレる。
  「黙って聞いていればぐちぐちとこの、×××××野郎! 貴様のその青カビ以下の腐った根性をたたき直してやる!  いいか、貴様の恋人は今日からそのテニスラケットだけだ! 肌身離さず身に付けてたっぷりと可愛がってやれ!  ×××の××××よりはマシな所を見せてみろ! 怪我をして同情を引きたいのか? そんな事で目立ちたいのか?  ××が×××に×××××同然の貴様には女子寮がお似合いだお嬢さん! 悔しいか? 悔しかったら殺す時の顔をしてみせろ!  そうだ、殺す時の顔だ!」と罵詈雑言を浴びせられた藍原少年は、「もう考えるのは疲れた……」じゃなかった、 「もっと、もっと俺を罵ってくれフローラ……いや、女王様!」と新しい性癖に目覚め、 フローラもまたグランプリンセスへの階段を一歩上るのであった。
 ………………すみません、今回はさすがに反省しています。
 正しくはこちら。
 「――そうだね。格好悪い。今のゆうき君、格好悪い! 一回ぐらい試合に出られないぐらいで何よ! 私だって、 うまく行かない事いっぱいあるけど、たくさんの人に助けてもらって、今、頑張れているの! ゆうき君はもうちょっと、 周りを見なきゃ駄目だよ。あなたの事が、心配で心配で、元気になってもらいたい人達が居る。その気持ち、知らないふりしちゃ駄目だよ!」
 一度や二度のつまづきで現実から目を背ける事の方が格好悪い、とフローラが藍原を叱り飛ばすというのは、 以前にトワに向けた「どんなに失敗したって、一歩ずつ、取り返していけばいいんだよ」を、具体的かつ身近な形で拾って良かった所。 もっと周りを見てと諭すのも、はるか達とトワの関係にかかっていると同時に、2クール目から入ってきた「夢を応援してくれる人達の大事さ」と繋げました。
 また、今作はずっと、単純な努力至上主義(努力すれば何でも達成できる)になる危険性を孕んでいたのですが、 以前にテニスに関する(いきすぎた)情熱と練習熱心さに焦点を当てた“努力している”藍原少年の蹉跌を描く事で、 どんなに努力しても巧く行かない事はある……けれど、そんな時に周りを見れば支えてくれる人達が居るんだよ、それを大事にしよう、 とする事で、「夢に向かって努力する」と「夢を支えてくれる人達が居る」という二つの要素を、作品の両輪として巧くまとめました。
 この辺りはさすが、メインライターの仕事。
 尤も本来は、はるか自身の経験として描くべきつまづきの部分を、はるかを転ばせるのが難しいのでサブキャラに押しつけた感じはありますが(^^;
 我が身を省みた藍原は支援攻撃を決め、プリキュアはチアガールズゼツボーグをばーにんぐ&どりーみん。 仕事の意味とか上司との人間関係とかを考えるのを止め、絶望を集めるマシーンになる事を目指すシャットは引き下がるのであった。
 いい男ぶりに関して、カナタ様から地球規模で周回遅れしているテニスボーイですが、 久々に焦点が当たるも特にポイントは稼げず。むしろ、おっかけ3人娘の方が好感度を上昇させました(笑)  カナタ様をイケメンに描きすぎた為に、男性キャラとしては非常に存在感の薄いテニスボーイですが、ここから一発逆転の目はあるのか。 ……そもそもそういう立ち位置なのかわかりませんが。
 はるかがいつもと少し違った対応を見せる、という点では貴重なキャラの筈なのですけど、 定期的にあるサブキャラ大量投入エピソードでも、平均して一番尺が割かれるのが風紀委員メガネなので、 あまり重要視されていない感じはあったり(^^; 第3話が、内容・作画ともに微妙な内容だった反動なのか、 風紀委員メガネが妙に愛されているのですが、いったい誰のお気に入りなのか。
 前半戦のテーマ部分を巧くまとめてきましたが、プリキュアがサブキャラと明確に接触するという要素があった割には、 話の内容はさして面白くもなく。まあ、イケメン執事回でも堂々と接触していましたし、正体バレでもしない限りは、 プリキュアの秘密にはそれほどのウェイトは無い、という事なのでしょうが。やや構成重視になりすぎた感じがあり、 もう一声欲しいエピソードでした。

→〔<第3部>(2)へ続く〕

(2016年7月11日)
(2017年4月8日 改訂)
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