■『GO!プリンセスプリキュア』感想まとめ2−2■
“憧れの花を咲かせて 想いは はるか彼方目指すよ
くじけない けして逃げない”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた,
《プリキュア》シリーズ初体験者の『GO!プリンセスプリキュア』感想の、まとめ2−2(18話〜22話)です。文体の統一や、
誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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〔1−1〕 ・ 〔1−2〕 ・
〔2−1〕 ・
〔3−1〕 ・ 〔3−2〕
〔4−1〕 ・ 〔4−2〕 ・
〔5−1〕 ・ 〔5−2〕 ・ 〔5−3〕
<第2部・黄昏のプリンセス(2)>
- ◆第18話「絵本のヒミツ!プリンセスってなぁに?」◆
(脚本:田中仁 演出:畑野森生 作画監督:上野ケン)
-
はるかのバイブル『花のプリンセス』の作者・望月ゆめの原画展&サイン会が夢ケ浜えほん美術館で行われる事になり、
テンション高くそれに向かうはるかとゆい(忘れそうだが夢は絵本作家)&それに付き合うきららとみなみ。
「うっわーーーーー、すっごい人気!」
とわざわざ俯瞰で見せた割には、やたらに狭い駐車場。
や、本来別にツッコむ所ではないのですが、個展が盛況であるという表現をするにはここで微妙な広さの駐車場を俯瞰で見せる必要が全く無いので、
どういう演出意図だったのだろう、と(^^; むしろ美術館周辺が広大な緑地で気になります。
道中、「郊外」という台詞がありましたが、馬が放牧とかされているし、ノーブル学園、けっこう田舎にあるのか。
ただその割には、きらら周辺の描写が明らかに主要都市圏なので、どういう設定の摺り合わせをしたのかちょっと気になります(^^;
まあ基本、ファンタジー時空でどうでも良いといえば良いのですが、最後に出てくる田舎感溢れすぎるバス停といい、
やたらに画で強調されるので、何かの伏線を勘ぐりたくなるレベル(笑)
さて今回遂に、第1話から提示されていた禁書『花のプリンセス』の物語が明かされましたが、これは特に捻った内容は無し。
花畑に降臨した一個の修羅が壮絶な死合いの末にプリンセスとして頂点に登り詰める話だったらどうしようと思いましたが、
そんな事は全くありませんでした。
『花のプリンセス』を大好きなはるかだが、一つだけ気になる事があった。それは物語が旅の途中で終わり、
プリンセスが王子様と出会えたのか、その結末がわからない事。
この絵本の結末はどうなるのか、続きは書かれないのか……
割と作者に聞いてはいけない質問を直球でするはるか。
挙げ句に出待ちをするはるか。
品の良い老婦人であった望月ゆめは、警備員を呼ぶ事もなく、絵本に結末の無い理由をはるかに諭す。
「想いの数だけ物語はある。そういう本でいいと思ったの。あなたの中にも、プリンセスにはこうなってほしいという、
未来があるのでしょ?」
「それは……」
「それがきっと、あなたにとっての『花のプリンセス』なのよ」
「私の……『花のプリンセス』……」
いい話から一つ学ぶはるかだがその時、美術館の上に立つ黒い影。
あれは、誰だ?!
「どんなに美しくとも、しょせんは作り話。真のプリンセスであるわたくしから見れば、虚しいだけですわ」
あれは、とうとう絵本にまで難癖つけ始めたトワイライト様だーーー!
ゼツボーグを用いず、自ら最前線に降り立ったトワイライトが魔法のステッキにキーを填めるとトワイライト空間が発動し、
周辺に居た人々が次々と額縁の中に閉じ込められてしまう。
「――さあ、宴の時間よ」
トワイライトは額の中に閉じ込めた人々から絶望のエナジーを吸収し、ステンドグラスに囲まれたような閉鎖空間の中に突き立つ、
無数の黒い十字架。
「冷たい額に閉ざされた夢。――返していただきますわ。お覚悟は、よろしくて!」
「高貴な者への振る舞いを知らぬ、愚か者たち。その罪、その身でしっかりと味わうがいい!」
から、凄まじく力の入った作画で展開する、時間無制限高圧絶望デスマッチ。
「気品と立ち振る舞いはなかなか。だけどわたくしには、勝てない!」
と精神的貴族であるマーメイドは蹴り飛ばされ、
「その才能の輝きも、わたくしの前には星屑も同然よ、キュアトゥインクル」
と、トゥインクルも一蹴される。
遂に直接対決、という事で気合いの入った舞台装置に加えてスピード感溢れる肉弾戦が展開し、
トワイライトが短評と共に次々と一騎打ちで撃破していく、という流れも格好いい。
……にしても、相手が意思疎通可能かつ少女の姿を取っていても、
一片の躊躇もなく拳と拳で語り合いに行けるプリキュアの肉体言語への信仰は、ちょっと引くレベル(笑)
OPのトワイライトとフローラもそうですが、清々しいまでに、殴り合って最後に立っていたものが偉いのよ、という価値観を感じます。
マーメイドとトゥインクルを次々と屠ったトワイライトはフローラに迫り、フローラ気合いの一撃を逸らして懐へと入り込む。
「貴女よ、キュアフローラ。気品も才能も持ち合わせない貴女のような存在が、プリンセスの名を汚す」
至近距離からの一撃を受け、壁に叩きつけられるフローラ。
「高貴なる者は、生まれた時から高貴な者。わたくしは絶望を統べる母、ディスピアの娘。ディスダークの黒きプリンセス。
――貴女は違う。終わりね。全ての夢はここで消え去る」
高みから3人のプリキュアを見下ろすトワイライトだが、夢を守る者達は簡単にはくじけない。
「そうはさせない! 私達は、夢を守る!」
「そうよ! 絶望のエナジーなんて、ぜっんぜん通用しない!」
「うん。あなたが何を言おうと、私達は、プリンセスプリキュアなんだから!」
立ち直ったマーメイドとトゥインクルが加わり、バブル・シューティングスター・ローズ、で一斉攻撃を放つが、
それを受け止めるトワイライト。
「偽物どもがっ!」
「偽物じゃない……私の夢は!」
「プリンセスとは、わたくしのような唯一無二の存在! いくら努力を重ねた所で、届きはしない!」
トワイライトは一斉攻撃を受け止めきると逆に弾き返し、吹き飛ぶプリキュア達。そしてトワイライトは、
物陰に隠れていたアロマ達が守っていた『花のプリンセス』を手に取る。
「可哀想に。こんな物があるから、報われない夢を見てしまったのね」
ここは、凄く良かった。
トワイライト様は、物凄く血統主義に凝り固まって、高貴な血に価値を見いだし生まれによって人を差別しているわけですが、
その蔑みがプリンセス僭称に対する“怒り”として主に表現されていた為、絶対者の余裕、
というものに少し欠けている所があったのから、ここで“憐れみ”になって出たのは非常に良かったです。
トワイライトからプリキュア達に向ける視線として、不愉快、よりも、可哀想、の方がより強烈で凶悪であり、
トワイライト様に欲しかった要素がここで入ってくれました。
「夢から覚ましてあげますわ」
トワイライトの手による暗紫色の炎が絵本を包むが、懸命に立ち上がったフローラは必死にそれを取り戻す。
「トワイライト……確かにあなたは凄いよ。私、あなたと出会ってから、プリンセスってこんな人の事を言うんだ、って思ってた」
……え? そうなの?
突然のはるか爆弾発言(^^;
トワイライトがこれまではるかの前で見せた姿というと、「美少女」「どこでも平気でひらひらドレス」「ヴァイオリンが弾ける」
「下僕が居る」「高圧的」「血統へのこだわり」という所だと思うのですが、はるかのプリンセス像ってそういうものなのか(笑)
ついさっきまで、夢への信念で戦っているような事を叫んでいたのに、どうしてこの子は、あっちこっちにネジを落とすのか。
「でも、望月先生の話を聞いて、それだけじゃないかもって……同じプリンセスでも、みんなの中に、
いろんなプリンセスが居て……私にも……私だけが目指せるプリンセスがあるかもしれないって思ったの!」
「私、だけのプリンセス……? 何を言っているの」
トワイライトはマジカルステッキから絶望の波動を鞭のように繰り出すが、フローラはそれをガード。
「それは、わたしの理想! 魔女を恐れぬ、強さ! 相手を思いやる、優しさ! そして、
世界に花咲かせる心の美しさ! 小さい頃からずっと憧れてきた、花のプリンセス。それが私の目指す、プリンセス!」
ここで『花のプリンセス』の物語と、魔法王国のキーワードであった「強く・優しく・美しく」を重ね、
はるかの目指す「プリンセス」が示される……という流れなのですが、ここまで、
はるかの「プリンセス」像が全くわからないまま進行し、
トワイライト様までプリンセスぽいと思っていたにも関わらず、
子供の頃からの憧れとして力強く理想のプリンセス像を語る為、
不明瞭だった信念が明確になる、を通り越して、もはや人格が分裂した感じに(^^;
で、どうやら見えてくるのは、『花のプリンセス』が基軸である筈のはるかのプリンセス像がここまでひたすらふわふわしていたのは、
はるかが「プリンセス」というのはいみじくもトワイライトの言うように唯一無二の至高の存在であると考えていたが為に、
むしろそこに夢を詰め込みすぎて“理想のプリンセス”がキメラ化していたという事。
そして仮にトワイライトの語る真のプリンセス像が肯定されるなら、理想のプリンセスとは唯一無二であるが故に、
自分の理想とするプリンセス像は否定されなければならないという問題に直面。
しかし望月先生の言葉を聞いた事で「想いの数だけ物語はある」事を知り、「あなたにとっての『花のプリンセス』」 を認められた事で、
「同じプリンセスでも、みんなの中に、いろんなプリンセスが居て」良いのだと思えるようになり、唯一無二のプリンセス像から脱皮。
これによりキメラ化していたプリンセス像の虚構の装飾がほどけ、「小さい頃からずっと憧れてきた、花のプリンセス」の原点を見つめ直し、
どんなに他の誰かに否定されても、それを「私の目指す、プリンセス」として、はるか自身が肯定できるようになった、
という流れで、分裂していたのは、はるかの人格ではなくプリンセス像、という着地はそれなりに納得いく所です。
ただ問題は、ここまでの物語で、二つのプリンセスの対比が成立していない事。
全体の流れは、理想への揺らぎを乗り越えてより強く肯定する、という構造なのですが、
これまでトワイライトとはるか(フローラ)の直接の絡みがそれほど描かれていない為、例えそれがキメラ化したものであっても、
“はるかの中のプリンセス像を揺らすエピソード”――はるかが、自分が夢見る「プリンセス」に疑問を抱く展開――というのが無いまま、
台詞だけでトワイライト様に真のプリンセスを感じるという揺らぎがねじ込まれており、非常に唐突。その為、
後に続く自己の理想の肯定に話が巧く繋がりきりませんでした。
そしてもう一つ、非常に深刻な問題が発生しているのですが、これに関しては後述。
なお、「美しさ」がこっそり、「(心の)美しさ」にすり替えられている辺り、勢いに見えてはるかも割と巧妙です。解釈、
解釈ですよ王子!
トワイライトの杖にヒビが入り、絵本からは新たなミラクルドレスアップキー・リリーが出現。
謎の発生をしていたミラクルドレスアップキーですが、以前にコメントでいただいた通り「各人の夢が生まれた場所」に潜んでいた、
という事でいいようです。
「あぁ……こんなに近くにあったなんて」
と、夢と理想を、原点に戻って掴み直して信念とするフローラ――この台詞と言い回しは凄く良かったです。
というか今回は、あちこちで微妙にちぐはぐなやり取りを、声優の演技でカバーしてもらっている所が多数。勿論、それもまた、
作品の力の内ではありますが。
フローラの放ったリリービーム(もう少し、ローズと差別化できなかったか(^^;)がトワイライトの杖を砕き、
立ち上がったプリセンスプリキュア達はミラクルドレスアップ! バブルドレスは人魚姫のイメージなのでしょうが、
どことなく夜の蝶な感じで、ちょっとけば(以下略)。
「勝てるつもりかしら? おまえたちの夢は、ここで潰えるのよ!」
「私は、私のプリンセスを目指す!」
青白い炎を放つトワイライト目がけて、ミラクル三色王冠バスターが炸裂。辛うじて持ちこたえるトワイライトだったが、
髪留めが砕けて膝をついた自分の姿を鏡で目にしてちょっと涙目。
「この、わたくしが……こんな…………。キュアフローラ、わたくしは、絶対に認めませんわ! プリンセスは、このわたくしだけよ!」
可哀想から、髪を下ろした姿で涙目撤退まで、トワイライトは幅が出て良かったです。
それにしてもトワイライト様としては、正統なる血統の者だけがプリンセスになれる、という至極正論を言っているつもりなので、
自分の好きに「プリンセス」って自称したっていいじゃない! というのは前提を共有できずに凄く論点ずらされている気分だと思うのですが、
殴り合いで負けたら引き下がるのがルールなので仕方がありません。
トワイライト様視点だと、私は私の勝手でプリンセスを名乗る、というキュアフローラは、
凄く、戦国脳。
こうして3人は強敵トワイライトを退け、学園への帰路、はるかは自分の夢を改めて胸に抱く。
(そうか……強く、優しく、美しく……。同じなんだ。花のプリンセスも、グランプリンセスも。私の夢が、
グランプリンセスに繋がるんだ)
と、キーワードが美しく重なりました…………となれば良かったのですが、ここに来て初めて明かされた『花のプリンセス』の内容を受け、
キメラ化していたはるかのプリンセス像が物語にとってあまりに都合良くほどけてしまい、
グランプリンセスのキーワードに合わせてはるかが絵本を解釈したように見えてしまい、
個人的には非常に居心地が悪く感じます(^^;
これを避ける為には、『花のプリンセス』の物語だけは先に(第1話で)視聴者に提示しておき、
“今まではっきり言語化できなかったけれど、絵本の影響によりはるかの中に確かにあった理想と信念が、
数々の戦いや望月ゆめの言葉を経て明確になる”という形で、
はるかの気付きと視聴者の気付きをシンクロさせるという仕掛けが必要だったように思います。
更により深刻な、今後にも繋がる非常に大きな問題は、はるか自身が肯定した「私の目指す、プリンセス」と、
ホープキングダムの提唱するグランプリンセスの要件が重なっているのが、
物語として矛盾してしまっている事。
今回はるかが辿り着いたのは、「みんなの中の、いろんなプリンセス」の肯定であり、ならばむしろ、
「はるかの目指すプリンセス」と「魔法王国の求めるプリンセス」は、別でなくてはいけない。
その肯定こそが今回示されたテーマであったと思うのですが、それが結局、「はるかの目指すプリンセス」が、
「作品として「正解」のプリンセス」になってしまい、全て台無しに。
いっけん多様性を認めているようで、実際は作品として既に用意してある「正解」と繋げてしまうというのは、
あまり良くない作劇だと思います。勿論、物語として作品世界なりの「正解」を提示する事は構わないと思うのですが、
今回に関しては「正解は一つではない」というテーマの話なので、そこを繋げてしまうのはどうだろう、と。
これを無自覚にやっていたりすると、少々先行きが不安になって参りました(^^;
最後にさらっと学園長の正体=望月ゆめと明かされ、「ノーブル学園を開いて50年」だそうですが、今、何歳なんだ。
絡め方としてはあまり面白くは感じないのですが、これが布石として活きるのかどうか、保留。
力の入った激しいバトルにフローラとトワイライトの感情もしっかり乗って盛り上がり、
憧れの絵本作家との出会いからトワイライトとの激突そしてはるかの成長までを1話に収めた物語も濃厚、
単独で見れば充分面白い出来なのですが、色々な部分が少しずつズレていて、どうも居心地が悪いという、困ったエピソード。
次回、戦え1人レジスタンス――僕が斬るから君も斬れ!
- ◆第19話「はっけ〜ん!寮で見つけたタカラモノ!」◆
(脚本:伊藤睦美 絵コンテ:村上貴之 演出:藤本義考 作画監督:飯飼一幸/五十内裕輔)
-
梅雨時の寮は娯楽が無くて退屈ね。……そうだわ、
愚民どもの鼻先にニンジンをぶら下げて右往左往する様を楽しみましょう ほほほほほ。
というわけで開催される、寮内宝探し大会。
まず今回良かったのは、3人一組のチーム分けで、はるか、きらら、みなみをバラバラにした事。
きららは、同級生から「思ったより打ち解けやすかった」と言われ、みなみは生徒会女子から「前より笑うようになった」と言われ、
自分達の変化を感じ取る。
この変化を、3人+1の身内だけではなく、外側のキャラクターから言わせた事で客観性が出ました。
(私、少しは、頑張ってこられたのかな)
そしてはるかもまた、自分の歩んできたノーブル学園での日々を、成長として感じ取れるようになる。
自分では気づけない変化や成長に、他人からの言葉で気付けるようになる、という構成で、ここに寮生のサブキャラを加える事で、
学園の意味を出した上で手前味噌にしなかったのが良かった。
宝探し大会、最後の問いは、「見る人によって違うものとなり、毎日少しずつ変わっていくもの」。
――その答えは、“鏡に映る私”
「みなさん、宝物を見つけましたね。人は自分でも気付かない内に、少しずつ変わっていくものです。みなさん、鏡に映る自分は、
どうでしたか」
白金さんが綺麗にまとめたのも、今回のテーマが寮(学園)という事で、良かったと思います。
だがその時、トワイライトの意趣返しに自発的に出撃してきたシャットが食堂のおばさんからゼツボーグを生み出し、
巨大な炊飯器が寮を襲う。プリキュアは炊飯器の凄まじいパワーに苦戦するが、傷だらけになりながらも決して諦めない!
「守って……みせる!」
「私達の、この寮を!」
「私達が、一歩一歩成長できる、大切な場所だから!」
リリーの一撃が炊飯器を転ばせ、プリキュアは逆転勝利。雨上がりの空の下、はるかはバイオリンを手に夢への思いを馳せるのだった。
(大丈夫。少しずつ、少しずつ、プリンセスに近づいている……)
前回が、「夢とプリンセス」に関するこれまでのまとめと発展だったとすると、今回は今作のもう一つの軸である「学園と寮」の意味を、
綺麗にまとめたエピソード。正直ここまで、全寮制という設定は持てあまし気味で巧く使えていませんでしたが、成長途上の少女達、
に対して、その成長の学びと同時に気付きの場、と置く事で物語の中にうまく収めました。
“誰か”がそこに居なければ、人は己の変化に気付く事が出来ない、だからこそ、そういう場が大切なんだ、
と持ってきたのは今回お見事。
……男子は多分、男子寮の中でボール遊びとかして挙げ句に窓ガラスを割って反省文を提出とかいう事になっているけど、
男子だから仕方ない。
一方その頃、1人レジスタンスに勤しむカナタ様は悪を成敗すると白馬にまたがり、
鳥取砂丘を駈けていた 湖畔でバイオリンを奏でていた。
久々に尺のある登場という事もあってか、今日のカナタ様はイケメン度が2割増しぐらいのような。
そして――何かに呼ばれるようにとある城の中に入り込んだトワイライトは、そこでプリンセスパフュームを見つける。
闇の力とプリンセスパフュームが出会う時、果たして何が起こるのか?!
予告から、前回盛り上げた所で1本軽い話を挟むのかと思いきや、軽めは軽めながら、予想外にしっかりと足場固め。
トワイライト様がまたがる馬が、顔が鍵になっているゼツボー馬だったり、梅雨時にやってきたシャットが傘を差していたりと、
小技もお洒落。
また、ミス・シャムールの口からバイオリンをきっかけにカナタ妹の存在が語られました。以前に推測した通り、
シャムールの表情がしっかり伏線になっていたようですが、リトル・プリンセスの髪の色、ピンク……?
ちょっと捻りを入れてきましたが、そろそろ、人間関係が色々と絡み合いそうなのは楽しみです。
次回、革命勢力、侵攻。
- ◆第20話「カナタと再会!?いざ、ホープキングダムへ!」◆
(脚本:高橋ナツコ 演出:鎌谷悠 作画監督:河野宏之)
カ・ナ・タ様ーーーーー!!
ここまで、王国の大事な魔法のアイテムを人間界でナンパに使った疑惑、武勇に偏りすぎたパラメーター配分疑惑、
海藤兄に対抗する為だけにイケメンアピール通信を送ってきた疑惑、など数々の問題が取り沙汰されてきた1人レジスタンスことカナタ様ですが、
全ての疑惑を一刀両断して地平線の果てに蹴り飛ばす、カナタ様超格好いいフェスティバル。
ヤバい、カナタ様が格好良すぎてヤバい。
前回、ホープキングダムに眠っていた謎のパフュームを手に入れたトワイライトは、ディスピアから新たな闇のキーを渡され、
更なる力を手に入れる……その不穏な音楽を繋げたまま、9つ集まったキーを並べるはるか達に場面は変わるが、突然、
まばゆい光に包まれて、はるか、みなみ、きらら、パフ、アロマ、はホープキングダムへと召喚されてしまう!
メガネっ子、居残り。
鬱蒼と茂る紫色の森、落葉、そして紫闇に染まる空に浮かぶ巨大な門――はるか、みなみ&パフ、きらら&アロマ、
バラバラになった3組は困惑するが、その時、ドレスアップキーが輝きを放つ。ロングのカットを多用しつつ、不安を煽る薄暗い森と、
それを切り裂くドレスアップキーの光が印象的。
キーの光に導かれて歩き出すはるかだが、突然、目の前に2体のウサギ型ゼツボーグが姿を現す。
……って、罠だ!! キーの。
Wウサギの華麗な連携ツープラトンに苦戦するフローラだが、間一髪のその時、白馬に乗った王子様が駆けつける!
誰あろうその名も1人レジスタンス、プリンス・カナタ!
王子、普通に超格好いいんですが、王子。
「はるか……」
「カナタ……」
「どうしてここに……」
と呟くもすぐにその疑問を振り払うと、カナタは自分から距離を詰め、膝を折って恭しく一礼する。
「ようこそ、ホープキングダムへ」
なんだこのイケメンーーーーーーー。
「……またお会いできて嬉しいです、カナタ王子」
プリンセスらしく、礼を返すフローラ。
「素敵なプリンセスになったね、はるか」
なんだこのイケメンーーーーーーーーー。
カナタ様何が凄いって、ただ顔がいいだけでも、ちょっと自分に酔い気味なわけでもなく、
女の子に恥をかかせないように振る舞っている、わけですよ! 何この純粋培養された王子力の高さ。目眩がするほどの攻撃力。
なにぶんこれまで、パフとアロマの反応しかカナタの人徳を担保していなかったので、
まさかここまでレベルの高い王子キャラだとは予想外でした。この人、人間界に放つと道行く女子がみんな「え?
もしかして私もプリンセス……?」とか勘違いしてしまうから、ホープキングダムに閉じ込めておかないとダメだ!
カナタと合流したはるかは2人でキーの光の示す先へと向かい、ちょっミステリアスな音楽で3パーティそれぞれの移動シーン。
ここで台詞は無いけど口の開閉などはさせた上で、ただ真っ直ぐに歩くみなみ様、階段昇って疲れたーみたいなきらら、
など表情や仕草でそれぞれのキャラクターを見せているのが秀逸。
3パーティはそれぞれ、先代プリンセスプリキュアに関わる建物に辿り着き、先代の残したメッセージを受け取る。それは、
大いなる闇を封じた先代の3人が、闇の復活に備えてもう一つのパヒュームを準備していたが、それが今、闇に染まろうとしている事。
それを阻止しなくてはならないと、はるか達はキーの力で強制召喚されたのであった。
「そういう事だったのね」
「やるっきゃないみたいだね」
メッセージが語り始めたところで盛り上げ音楽が流れ出し、3人それぞれがメッセージを受け取った所で音楽の山が来て、
一番盛り上がる所で、次の目的地へ向けて一直線に闇を貫く、キーの光。
「この光の先は恐らく、ホープキングダム城」
決意を込め、歩み出す3人。
「行きましょう」「行こっか」「行こう」
今回、ロングや口元だけのカットを割と多用して作画の省カロリーをしているのですが、それを巧く演出に取り込んでおり、
統一された演出のトーンと、それを補う劇伴の使い方が非常に素晴らしい。
また、一方その頃……を小刻みに交えつつ、そこで描かれるちょっとした表情や仕草、
台詞回しで3人のキャラクターをしっかり描き分けられているのは、今作の強みです。
道中、マーメイドの前にはシャット、トゥインクルの前にはロックが立ちふさがり、ここでようやく、
OPの対決の構図が用いられました。まあ今更、改めて因縁付けとも思えないので、折角だからというサービスの範疇でしょうが、
パーティ分割をうまく用いてここでOPの始末をつけたという感じで良かったと思います。
ジェット噴射する空飛ぶ馬で城へ向かっていたはるかは、バイオリンの話をした事で、カナタの妹――トワにまつわる悲劇を知る。
カナタと共にバイオリンを練習し、グランプリンセスになりたいという一途な夢を持っていたトワは、幼い頃に謎の失踪を遂げ、
今も行方知れずのままなのであった。そして、王国の希望の象徴ともいえたトワを失った事で国民が覇気や夢を失った事が、
後のディスピアの侵攻を易々と許してしまう原因となったのであった……。
国の景気動向を左右するとか、トワ様、超アイドル。
そしてカナタ様は国民に勇気とか与えられないのか不安になりますが、
「そうだ、俺達にはまだ、顔が良くて性格も良くてジェントルで武勇に優れたカナタ様が居るじゃないか!」「でもカナタ様、
算数出来ないんだぜ……」「やっぱりトワ様じゃないと駄目だーーーーー!!」
みたいな、初期パラメータ配分のミスなのか。
或いは、ホープキングダムは伝統的に女王制だったりするのか(これはありそう)。
「はるか……僕が笑顔を取り戻せたのは、はるかのお陰なんだよ」
過去の悲劇に涙をこぼすはるかに、優しい言葉をかけるカナタ。かつてキーを追いかけて人間界に出た時、カナタは、
はるかに妹トワの面影を見て、プリンセスという夢を目指す者へキーを託したのだった。
「君のお陰で、僕は夢の大切さを思い出せた。――君と出会えたから、僕はディスピアとの戦いにも、耐える事が出来た。
……そして今も、闇に染まらず、こうしてここに居られる。はるか、僕と出会ってくれて、ありがとう」
ここで、10年ほど前からの諸々が繋がりつつ、これまで、魔法の道具の授与者であり、都合の良い助言者でしかなかったカナタ王子が、
はるかと互いに補い合う関係だった事がわかり、キャラクターとして物語の中に降りてきました。
これは非常に素晴らしい。
「……私こそありがとう。そんなに辛い思いをしていたのに、私を励ましてくれて。私、もっとカナタの力に、なりたいよ」
すっと涙をすくうイケメン無罪。
「僕はね、こう思ってるんだ。僕のバイオリンの音色は、今もトワに届いてるんじゃないかって。だから僕は妹を――トワを、
見つけてみせる」
それは、彼女と出会って得られた、希望の心。――夢を諦めないという力。
はるかとカナタは城へ辿り着き、はるかを馬から下ろすカットがちゃんと描かれている所に、カナタ王子の王子力の高さを感じます。
妨害を振り切ったマーメイドとトゥインクルも追いつき、城内で全員合流。
「キュアマーメイド、キュアトゥインクルも、今までありがとう」
狭い世界に入らないで、即座にこれが出てくる辺りがまた、カナタ様はレベル高い。
無人の城内を進む4人+2匹だが、その前に、トワイライトが姿を見せる。
「トワ……?!」
……それはちょっと無理がある気がしますよ王子?!
「トワ、僕だ、カナタだ」
無防備に近づいていったにもかかわらず、トワイライトの大火力の攻撃をしれっと受け止めてみせるカナタ様。
「わたくしはブラックプリンセス。大魔女ディスピアの娘、トワイライト」
トワイライトは黒く染まったパヒュームとキーを使い、暗黒蝶々仮面へと変身する。
「気高く貴く麗しく――わたくしこそ、唯一無二のプリンセス」
- ◆第21話「想いよ届け!プリンセスVSプリンセス!」◆
(脚本:成田良美 演出:三塚雅人 作画監督:稲上晃)
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「その大きく強い夢、かなえてあげよう……」
バイオリンの練習をしていた幼いトワに忍び寄る黒い闇……と、回想シーンで、トワ失踪の真実が判明。それは、
夢を求めるトワの心につけ込んだ、ディスピアの囁きであった。兄の名前を出され、期待と不安を煽られたトワは、魔女の甘言に乗って、
夢をかなえられると信じてディスピアの手中に囚われてしまったのである。
「わたくしは、グランプリンセスになりたい! 夢を、かなえたい!」
今作ここまで、ほのめかされながらも正面から見つめてはこなかった、“強い夢のネガティブ面”――その一つとして、
夢をかなえたいと願う余り道を踏み外してしまう事、がトワがディスピアに囚われた原因として描かれました。これは幼さゆえの過ち、
として片付けられる可能性もありますが、今作において避けない方が面白くなる要素だと思うので、後半戦へ向けた大きな布石だと期待したい。
「わたくしは、ブラックプリンセス。この世界に、絶望を……」
幼いトワと、闇に染まったブラックプリンセスの姿が重なり、変わり果てた妹の姿に動揺するカナタ。
しかも闇のキーとパヒュームの力は、振るえば振るうほど、トワ自身を削り取ってしまう。
「大丈夫。そんな事、絶対にさせない!」
「詳しい事情はわからないけれど、このまま、彼女を放ってはおけないわ」
「ま、兄妹の再会ってのは、もっと感動的じゃないとね」
はるかの前向きな善良さ、みなみの力ある者の責任感、きららの浪花節、と、この局面で大義や英雄的正義ではなく、
それぞれの拠って立つところに従って戦う姿が、台詞一つで描写されているのが、今作の良く出来ている所です。
きららが口に出しては浪花節になるのは、照れでありましょうが。
プリキュアはドレスアップキーの連続攻撃で闇のキーの力を浄化しようとするが、ブラックプリンセスは絶望の力で第二形態に変身。
極太ビームを発射して消し飛ばされそうになるプリキュアだが、カナタが光子力バリアでそれを防御。
基本的に強い、しかし作品の構造上、戦闘であまり活躍させるわけにもいかない、
と強引に役立たずにされる可能性が危惧されたカナタ様ですが、精神的動揺によるステータス低下の上で、
プリキュアを守る防御力を見せる、とバランス良く用いました。
だがそこに、巨大なディスピアの影が姿を現す。
「どうだカナタ王子? これが、絶望の力だ」
ディスピア様は、とうとうと過去のネタばらし。
「だが夢は、大きければ大きいほどその道のりは遠く険しい。己の未熟に苦しみ、不安に溺れた王女の心に、私は呼びかけた。
そして――王女は、自ら踏み行ったのだ。絶望の森の、奥深くへ」
トワの過去シーンに続き、ディスピアの象徴として茨のイメージがハッキリし、ディスピアは“森の魔女”化が進行しました。
トワの失踪により国民の労働意欲が減退し、ホープキングダムは弱体化。更に国民の「駄目だ、もうこの国はおしまいだ……」
「カナタ様が王位についたら、1日6時間の筋トレが国民の義務になってしまう……」「うちの娘とトワ様で、
ユニット組んでCDデビューを目指す予定だったのに……!」等々という絶望からディスピアは力を得ると、
戯れにトワの記憶と心と夢を消し去り、ディスダークのプリンセス・トワイライトとして育てたのであった。
絶望のエネルギーに押し負けて王子バリアが砕け、崩れ落ちる王子の姿でホワイトアウト。そこから対照的に黒反転し、
倒れるプリキュア達を傲然と見下ろす大魔女ディスピア。
「さあ、絶望せよ――」
……だが。
「……夢は、あるよ。夢も、希望も、まだ、消えてない!」
ここで立ち上がったフローラの姿でCMへ、と前回今回と、気合いの入った演出。この辺り、1年物の強みを活かし、
前後編でそれぞれのシーンをしっかりと描きつつ、間延びしていないのはお見事。今作の得意とする細やかな感情の見せ方と、
ヒーロー文法の作劇が、ここに来てうまく融合しました。
「希望はある……今、私の目の前に!」
笑顔を浮かべるフローラが胸に抱く希望、それは、初めて出会ったあの日聞いた、トワイライトのバイオリン。
襲いくるトワイライトの拳を弾き、舞うように戦いながらフローラはトワイライトへと語りかける。
「バイオリンは、心を閉ざして弾くもの。貴女は、そう言ったよね。でも私、あなたの演奏に凄く感動した。
貴女みたいに弾けるようになりたいって、思った! それはきっと、あなたの音色は、心を閉ざしても抑えきれない夢、それに、
遠く離れたカナタへの想いで、溢れていたから!」
「言ったはずだ。王女の心は消え失せた」
「心の無い人に、あんな素敵な演奏、出来ないよ! 貴女の心は、無理矢理閉ざされているだけ! 貴女の夢も、カナタへの想いも、
その中で生きてる!」
トワイライトが奏でていたバイオリン――そう、記憶も、心も、夢も失った筈のトワイライトがバイオリンを弾き続けていた事こそが、
黄昏と茨の奥に閉じ込められていたトワの思い、カナタとトワの繋がりだったのだ!
ここでフローラの長台詞に重ねて、花びら(2人の闘気?)が舞い散る中をダンスのステップを踏むようにしばき合う2人のプリンセス、
というのは『プリンセスプリキュア』だからこそ、という素晴らしい演出で良いシーンなのですが、
終始笑顔のフローラが超怖い(笑)
ここまで、良くも悪くもネジの2、3本抜けた娘として描かれてきたはるかですが、その猪突猛進な前向きさが、
“希望がある限り笑顔を浮かべ続ける強さ”として集約され、強さ担当の面目躍如。21話にして、
真の強さとは――どんな時でも微笑みを忘れない事だ!!みたいな領域に到達してしまいました(笑)
夢を希望を失わない限り、笑い続ける打撃系ヒロインとして、OPのカットに繋がったのも良し。
また特に、「心の無い人に、あんな素敵な演奏、出来ないよ!」という台詞と共に、
満面の笑顔で正拳突きを放つシーンは、マッド系ヒーローの歴史に新たな1ページを刻んだと思います。
フローラの示した希望にカナタは立ち上がり、マーメイドとトゥインクルもシャット&ロックの横槍を防ぐと、今度こそ、
プリキュアは合体必殺技を発動。その光輝はブラックプリンセスの動きを止めるが、後一歩のところで黒いキーがそれを防いでしまう。
「無駄な事。私が生み出した黒いキーより溢れ出る絶望。おまえ達ごときでは、消せはせぬ。
まして12個全て揃っておらぬドレスアップキーの力ではな」
「私達だけじゃない。希望の力は――」
「――そして夢は。トワ、君の中に」
王子ーーーーーーー!!
ここでアップから、バイオリンを弾き出すカナタ王子! この前のシーンでパフが画面の外へ向かうシーンがあり、
バイオリンを取りに行っているのが細かい。
「……トワ、この曲を覚えているかい。あの頃、トワの喜ぶ顔が見たくて、僕は何度も弾いてあげた。
一緒に弾きたいと懸命に練習するトワを見て、とても幸せだった。君と、また一緒にバイオリンを弾きたい。それが、僕の夢。
君とでなければかなえられない夢。トワ、どうか思い出してほしい。あの時、聞かせてくれた、君の夢を。強く願えば、
夢は必ず叶うのだから」
カナタの想いがバイオリンの響きと重なり合って最後の一押しとしなり、遂に砕け散る闇の仮面。
「おにい、さま……」
トワイライトは燃えるような赤毛の少女、プリンセス・トワの姿を取り戻す。
前回、はるかとカナタの相互の補完を描いた所で、今回も、プリキュアだけでもなく、カナタだけでもなく、
両者の繋いだ希望がトワの夢を呼び覚ます、というのが綺麗に収まりました。
特にカナタを、役立たずにするのでもなく、都合の良い奇跡の行使者にするのでもなく、
物語の流れに沿ったパスを受け取った上で最後のゴールを決めさせた、というのはお見事。脚本間のパスも綺麗に繋がりました。
ここで、変貌したブラックプリンセスの姿を見て美しいーーーと大興奮していたシャットが、トワの姿に興味を失う、というのは、
人間とは違う価値観が強調されて細かく良かった所。それはそれとして、「トワイライト様に会えた事が生涯最大の喜び!」
とか騒いでいたので勢いでリタイアするかと思ったら生き残りましたが、三銃士はここからV字回復できるとも思えないし、
後半戦はどうする事やら(^^;
トワを取り戻し、城の転移ゲートから人間界へ撤退しようとするはるか達だが、
その背後に怒れるディスピアの魔力の結晶である茨の触手が迫る。
「逃がさぬ。夢はかなわぬ、希望は消える、世界は絶望で満たされるのだ――」
これまで、ホープキングダム侵略→プリキュア抹殺、の後の行動計画が見えないディスダークもといディスピアでしたが、
世界を絶望に満たしたい人、という事で良いのか。
一行は何とか扉に辿り着き、カナタは王子バリアで触手の追撃を食い止めると、トワを連れたはるか達へ転移を促す。そして……
「君たちが翔んだ後、この扉を破壊して、閉ざす」
ディスピアの魔力が人間界まで影響を及ぼさぬよう、自らはその場に残り、ゲートを破壊する覚悟を決めるカナタ。
「そんな! 1人じゃ無茶だよ! 私も!」
「はるか」
背を向けたままの、ここの台詞のニュアンスが素晴らしかった。前回今回で株価が急上昇した王子ですが、ここでまた、非常にいい芝居。
「え?」
「君たちのおかげで、僕は再びトワと会うことが出来た。無くしていた希望を、見つける事が出来た。……すぐに行くよ。まだ、
かなえたい夢もあるからね」
カナタは立ち止まるはるかを魔力で扉の向こうへ押しやると、扉を封じる。
「はるか……トワを、頼む」
バリアが砕け散り、迫り来るディスピアの影に向けて、力を振り絞るカナタ。
「逢いたいと、心から望めば、きっと…………はるか、また逢おう!」
ホープキングダムまで来てしまった時点で、王子の一時リタイアは予定調和として、最後のこの台詞で、
王子が自己犠牲ではるか達を逃がしたのではなく、希望を信じて次の戦いを始めたのだ、
としたのは作品のテーマと重なってうまくまとまりました。前回今回でとにかく王子を格好良く描いた事で、
新展開へ進む物語の中で新たなモチベーションを自然に生めたのも良し。
敢えて言えば、「強く願う→夢は叶う」が強調して肯定されすぎたとは言えますが、
今作はここまにでおいて「夢を強く願う」=「夢を叶える為に努力する」事が描かれているので、許容範囲かと思います。
王子の扱いがどうなるにせよ(ディスダークのテコ入れは必要でしょうが、洗脳されて新幹部ネタは続けないでしょうし)、今回、
魔法のステッキがダメージを受ける描写がやたら繰り返し強調されたので、後半の新たなキーアイテムになるのか。
トワイライトが、元来ホープキングダムの王族だった、というのは割とストレートに来ましたが、
バイオリンに対するミス・シャムールの反応、海藤兄妹の姿へ苛立つトワイライト、など、細かい伏線が丹念に張り巡らされており、
改めて今作、引っかかる描写はだいたい意図的であると信用して良さそうです。
というわけで今後、他人に勝利して達成される夢、という要素に向き合うのと、みなみ様のリカバリーに期待したい。
次回、新プリンセス、降臨。
- ◆第22話「希望の炎!その名はキュアスカーレット!」◆
(脚本:田中仁 演出:田中裕太 作画監督:中谷友紀子)
-
OP、大人王子がはるかと微笑み合うカットから王子が消えて、王子の消えた空間を決意を込めた表情で見つめるはるか、
というカットに変更。
カナタを残し、城の<扉>から何とかノーブル学園へと戻ったはるか達は、トワをひとまず寮へとかくまう。
20話冒頭で取り残された眼鏡っ娘が、寮の前ではるか達を待っている、というのは流れが繋がって地味に秀逸。
それにしても学園寮が不審者だらけですが、もうそこは気にしない方向で!
……は?!
王子も一緒に脱出していたら、王子女装展開もあったのか?!(落ち着け)
トワイライトであった罪の記憶に苦しむトワは、はるかにカナタのバイオリンを差し出されて受け取るのを拒絶するが、
そこにディスピアが現れる。
「もうお母様とは呼んでくれないのかい」
前回今回と、ディスピア様がまさしく魔女という凄く嫌な感じで素敵。
「おまえの夢など最初から終わっていたのだ。おまえが自分で私の森に足を踏み入れた時にな。さあ、いい子だ。そのまま、絶望しろ――」
トワはディスピアに囚われてしまい、ノーブル学園にビオランテ……もとい、トワを取り込んだ巨大な植物のつぼみが出現。
周囲の一般人は一瞬で心を凍らされてしまい、トワの絶望を吸収するディスピアに立ち向かうプリキュアだが、
圧倒的な力の差で叩きのめされる。
ここでフローラがいつもの不屈のプリンセスガッツではなく、カナタの「トワを頼む」の言葉を思い出して立ち上がったのは、
パターンに少し変化がついたのと、はるかの精神力の基礎がカナタとの出会いにある、というのが補強されて良かった所。
この流れだと終盤、カナタになんやかやあってはるかが精神に大ダメージを受けてぐずぐずに、みたいな展開は有り得るかもしれません。
フローラはバイオリンによってもう一度トワの心に呼びかける事を思いつき、マーメイドとトゥインクルの援護攻撃を受けて、
つぼみの内部への侵入に成功。……トゥインクルはすっかり、八つ裂き光輪の使い手みたいになってきたなぁ(笑)
「やめて。……聞きたくないわ。それを聞くと思い出す。お兄様……ホープキングダム……わたくしの……罪」
「そんな事言わないで。まずはここから出ようよ」
自ら心を閉ざすトワに語りかけるフローラ。
「もう、グランプリンセスにも……」
「なれるよ。心から望めば、きっと夢はかなう。カナタは……私に、そう、教えてくれたよ」
「おにい、さま……」
「カナタはもう一度、貴女とバイオリンを弾くのが夢だって言ってた。私も、その夢を応援したい。だから、前を向こうよ。もう一度」
はるかはトワの人となりを知っているわけではないので、ここで無条件な慈愛や善良さへの信仰を発揮するよりも、
あくまでカナタとの約束にウェイトを置いた上で、前々回−前回の流れを組んで“カナタの夢を応援する”という形で、
はるかとカナタの関係を補強しつつトワを助けようとする、というのはバランスの取れた所。
またここが後で、グランプリンセスとはなんぞや? という問題とも繋がる構成になっています。
「大丈夫、大丈夫だよ……どんなに失敗したって、一歩ずつ、取り返していけばいいんだよ」
ただこの最後の一押しは、ちょっと踏み越えた感。
もともと、はるかはアビリティ《ヒーロー属性》により、「キュアフローラに変身すると<説教>スキル+2」の能力持ちですが、
それはあくまで、“はるかの中にあるもの”が言語化するから許されるのに対し、この一言に関しては、
過去のカナタの言葉と重ねる都合で、“はるかの中に無いもの”を台詞にしてしまった気がします。
はるかは特別、他者に対して大きな責任感を抱いているわけでも、大きな過ちを乗り越えようとしているわけでもないですし、
この言葉が幼いカナタとトワの間で通じるのは、両者が“王族の責任”を自覚しているからであり、はるかには、それがない。
これまでの物語を通して、はるかが“プリンセスの責任”に目覚めつつある、というニュアンスも含んでいるのかもしれませんが、
第18話でようやく「私の目指す、プリンセス」を肯定し、なおかつその理想像――花のプリンセス――を考えると、
はるかがそれに付随するリアリティに対して考えが及んでいるとはとても思えません。
また、逆にトワは、そのリアリティを感じていたが故に魔女の甘言に乗り、今は罪の意識に苦しんでいるわけなので、
両者の基盤にある大きなズレを(意図的なものかもしれませんが)強引に均してしまったようにも見えます。
事をはるかレベルで考えると、物語の流れとしては、紅茶の入れ方とかバレエとか、失敗を繰り返したけど諦めずに頑張って成長したよ、
という事なのかもしれませんが、その場合、「取り返す」という言葉がそぐわなくなります。
はるかはゼロから積み上げているキャラクターであり(そこがポイント)、マイナスから取り返すという要素はあまり持っていないので、
いっけん「プラス思考」でまとめられそうだけど、実は本質の違うものを、一緒にまとめてしまったと思います。
前々回−前回といい流れで来ていただけに、最後の着地の所で、今までの積み重ねの無い言葉が出てきてしまったのは、残念。
フローラの言葉に、幼い頃のカナタの言葉を重ねたトワはバイオリンを手に取り、2人は曲を奏でる。
はるかがシャムールから教わった曲と、トワイライトがいつも弾いていた曲、それは元々、合奏用の一つの曲だったのだ。
「絶望が……消えてゆくだと……」
「いいかい、トワ。どんなに辛い事があっても、諦めちゃいけない。常に、人々の夢を照らし続ける希望の光。それが、
グランプリンセスなんだよ」
ここで、これまでのプリンセスプリキュアの戦いを受ける形で、グランプリンセスの定義付けが概ね完成。
「絶望」に対するより明確な対義語として「希望」が持ち込まれ、それが人々に「夢」を抱かせる光なのだ、と定められました。
超便利ワードの「希望」を、既に劇中の重要キーワードとなっている「夢」と繋げる事で、物語の中に手早く収めてきたのは好印象。
これ、一歩間違えなくても、特大の地雷なので。
「……一度犯した罪は、二度と消えない。でも、心から望めば……ならわたくしは、この罪と共に、この罪を抱いたまま! もう一度、
グランプリンセスを目指す!!」
ディスピアの不意打ちを受けて落下するトワだが、黒く染まっていたパフュームと、ディスピアが生み出した闇のキーが浄化され、
プリンセスエンゲージ。
「真紅の炎のプリンセス! キュアスカーレット!」
スカーレットは、ドレスの袖口が広がっていて、少しオリエンタルな感じ。そして縦ロールがバーニングしていて、
作画がやたらに大変そう(^^; しかし、耳が尖ったり、髪の色に白が入ったり、
見た目がトワとトワイライトの中間みたいな姿になるのは、ディスピア様お手製のキーの副作用ではないのか。そのキーで変身して、
本当に大丈夫なのか。
変身したスカーレットは、迫り来るディスピアの攻撃を華麗に退ける。
……なんだろうこの、王家に流れる狂戦士の血に目覚めた感。
「なんだ、その力は……」
「闇を払い、夢を照らす、希望の炎! いつの日か、お兄様とホープキングダムを取り戻す、その時まで。ディスピア! わたくしは、
あなたと闘う! さあ、お覚悟を、決めなさい!」
スカーレットの言葉に応えるかのように、カナタのバイオリンが魔法のアイテムに変化し、スカーレットはモードエレガントを発動。
スカーレットバイオリン・フェニックスで火の鳥を召喚し、ディスピアは撤退するのであった。
自爆装置を取り付けないなどセキュリティには問題のあった4つ目のパフュームですが、
先代が大いなる闇に対抗する為に作ったというだけあって、植物属性のディスピア様に有効な炎属性でした。そう、
圧倒的な火力で一族郎党皆殺しにすれば、マラソンはそこで終了だ!
ディスピア様の作った闇のキーがそのまま3つのドレスアップキーになったのは少々謎ですが、
これでいきなり12個揃った事になるとは思えないので、番外という事でいいのか。そうすると、
先代はパフュームだけ作ってキーは作っていないのか、という話も出てきますが、この辺りは後で辻褄が合うのだろうと先の展開を待ちたい。
「キュアフローラ。お兄様はどこかで、生きています」
「ホント?!」
「感じるのです。このバイオリンを通して」
「また、会えるよね……」
「ええ。きっと……!」
こうして、カナタ王子は立派なヒロインとなるのであった。
うむ、それもアリだ。
…………というかカナタ様、あんな二枚目なのに誰もときめいてくれないし……! 個人的にはもう少し、
ラブネタあっても良いんですが……! ただ、はるかは恋愛ヒロインとしてはあまり面白く感じないので、
トワが本当は妹よりもカナタに憧れる遠戚のお姫様とかだったら良かったんですが……!
風の噂によると前作で色々あってその辺りはタブーなのですか……?!
◎第2部まとめ
本文にも書きましたが、何はなくとも、カナタ王子が物語の中に降りてきた事が大きな意味を持ち、
第20−22話は話数的にも内容的にも、物語の大きなターニングポイント。
放映時は、第16話の大惨事、第18話の首をひねる着地、と来て中盤手前でホープキングダムに行ってしまうのは、
ますます物語が出鱈目になってしまうのでは……とかなり危惧したのですが、その第20−21話で物語に一つの芯が通り、
後半の物語を積み重ねていく為の骨組みが成立しました。
続く第23話で「笑おう」が台詞になりますが、この第20−23話が、今作の核を形にしたエピソード群だと思います。
20&21話はとにかくカナタ様の使い方が素晴らしくて、カナタ様一人では解決しない、かといって役立たずにはならない、
というバランスが絶妙。
このパスワークは後半の大きな山場、第39話にも反映される事になりますが、キュアフローラというヒーローの確立、
夢・希望・絶望の関係、幾つかの重要な台詞など、最終盤に収束する要素が姿を見せた極めて重要なエピソード群。
個人的には、この4エピソードが無ければ、今作視聴を途中で脱落していた可能性もあったとは思っています。
また、「学園と寮」の意味を描いた第19話も、作品全体のテーマと繋がって終盤に大きな意味を持つ事になり、
重要なスプリングボードとして機能しました。
今作が積み重ねてきた丁寧な描写が一つの果実を得て、終盤に向けた幹となる、そんな20話台。
一方で、第18話における「私のプリンセス」に見え隠れする都合の良い解釈がもたらした歪みはしばらく今作の根底に澱む事になるのですが、
その蓋を開いて、想像を超えるウルトラCが披露されるのは……――第4部を待て!
→〔<第3部>(1)へ続く〕
(2016年4月27日)
(2017年4月8日 改訂)
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