■『GO!プリンセスプリキュア』感想まとめ2−1■


“夢見るだけで 世界は変わる その手で 明日の 鍵を開けて”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた, 《プリキュア》シリーズ初体験者の『GO!プリンセスプリキュア』感想の、まとめ2−1(12話〜17話)です。文体の統一や、 誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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<第2部・黄昏のプリンセス(1)>
◆第12話「きららとアイドル!あつ〜いドーナッツバトル!」◆
(脚本:伊藤睦美 演出:村上貴之 作画監督:中谷友紀子)
 きららの事務所の美人社長が登場……はいいのですが、いきなり寮内のはるかの部屋(ですよね?)に突撃してきて、それはいいのか。 いや、きららの部屋に不在だったので探したのでしょうが、出来る女の気配をそこはかとなく漂わせつつ、割と傍若無人。
 前回を受けて眼鏡っ子(ゆい)がチーム・プリキュアにサポート要員として正式に参加が決定し、はるか達と行動を共にする事に。 わかった事は、みなみ様とツッコミ役が被る。
 みなみ様は天然ボケ要素も持っていそうではありますが、きららも基本ツッコミだし、 このままではツッコミだらけという事態に。早くも存在の根本を問われます(え?)。
 ……いや、“プリキュアの事情を知る協力者”は居た方が何かと都合いいのですが、ゆいが基本、 ごく普通の常識人ポジションであり特に個性が強くない為、レギュラーとして常に画面の中に居ても、話は面白くならないというか、 むしろ面倒くさいな、と(笑)
 ……いうのが今回わかったので、今後は無理に連れ歩かなくてもいい気が、正直します(^^;
 マーブルドーナッツに目がくらんでTVのリポーター仕事を引き受けたきららは、ガツガツした同年代のアイドルと火花を散らす事に。 激しい3本勝負に勝利するきららだが、アイドルがシャットによりドーナッツゼツボーグにされてしまう。 ドーナッツの弾力ボディと高速回転に苦しむプリキュアだが、マーメイドが逆転の策を思いつく……て、12話にして、 戦闘中に初めて頭を使ったような……!
 前回いきなり合体技を使ってしまった為、各エレガントキーの必殺技が初お披露目。 変身自体はエレガントキー+パフュームで出来るけど、必殺技(個別&合体)の発動にはステッキが必要、という事なのか。
 基本ギャグ寄りの回で全体的にリアクション過剰なのですが、過剰すぎて一番エキサイトしたのがきららのドーナツへの執着になってしまい、 熱い夢とか、その夢の為にとか、大事な所がぼやけてしまってトゥインクルの男前ぶりが今ひとつ発揮されなかったのが残念。
 次回、ついにバイオリンの人が登場。バイオリン……くれな……うう、頭が……はさておき、 OPのバイオリンの人とキュアフローラが向き合うシーンで、フローラが少し切なげな表情からさっぱりした笑顔に切り替わる所がいつ見ても、
 「色々あるけど、ここからは、タイマンで勝った方が正義ね!」
 という割り切りすぎた笑顔に見えて仕方ありません。虎だ! おまえは虎になるのだ!!

◆第13話「冷たい音色…!黒きプリンセス現る!」◆
(脚本:高橋ナツコ 演出:三塚雅人 作画監督:爲我井克美)
 学園の敷地内でバイオリンを弾くエルフ耳の黒衣の黄金仮面を目にして、 「なんて綺麗な人……」と陶然と呟く主人公のネジの飛び具合(と高精度すぎる美少女サーチャー)が相変わらず心配です。
 美少女とバイオリンの組み合わせに大興奮したはるかは、「バイオリンってプリンセスぽい」と持病が発動し (きららの若干苦笑気味のリアクションが細かい)、みなみと一緒にバイオリンの工房へ行く事に。 そこで工房の職人からバイオリンを譲られる事になり、最初は恐縮して断って、押し切られる時も少し申し訳ない様子になるのは、 いい表情の付け方でした。最終的に貰う事になった際、はるかだけでなく、横のみなみ様も一緒にお礼を言う、 というのも細かく2人の性格が出た上で、他人の親切に無頓着におんぶにだっこしないが、 厚意はむげにしないという一線がある程度描かれたのも良かった。
 この後、仕事帰りのきららと合流する2人、寮への帰り道はしゃぐはるか、部屋で眼鏡にバイオリンを見せる、という一連の流れを、 台詞無しでBGMだけにして見せたのも、好演出。
 はるかは早速ミス・シャムールを召喚し、バイオリンのレッスンを依頼。
 今回も超有能なミス・シャムールは、本来グランプリンセスになる為のレッスンをつける教師だった筈なのに、 すっかりはるかのやりたい事をレッスンするという、助けてド○えもんのような扱いになっていますが、 その使い方では極めて便利すぎる存在なので、忘れない内に自らレッスン内容を主導するエピソードを入れてほしいです(笑)
 と思ったら、
 「バイオリン……?」
 なんかちょっと、嫌な顔したゾ(笑)
 本当は、この小娘は私を何だと思っているのか、ぐらいの事は考えているのか。
 ミス・シャムールの内心はさておき、そのレッスンと、再び出会った黄金仮面の手ほどきを受けたはるかは、 バイオリン職人に上達を披露。だがそこにシャット、そして黄金仮面が現れる。その正体は――大魔女ディスピアの娘にして、 その正統な後継者、プリンセス・トワイライト!
 「プリンセスプリキュア……わたくしは、貴女がたをプリンセスとは認めません。プリンセスは、 努力などでなれるものではなくってよ。身の程を、わきまえなさい」
 トワイライトは黒いキーを取り出すとシャットを強化し、シャットがバイオリン職人を素体に作り出したゼツボーグも、 鍵の色が赤銅色になり、これまでよりもパワーアップ。
 「夢など、哀れなものが信じる幻。気高く・貴く・麗しく、全てを手にした、本物のプリンセスであるわたくしには不要なもの。 幻にすがる偽りのプリンセス、目障りね」
 トワイライトに追い詰められるフローラだがマーメイドとトゥインクルがゼツボーグを投げ飛ばして救援に。
 「生憎、貴方達がどんなに強くなろうと」
 「夢を馬鹿にする人になんか、負けてられないんだよね、あたし達」
 「うん。夢は、幻なんかじゃない! だから、私達は――強く」
 「優しく」
 「美しく」
 「「「みんなで夢を守ってみせる!」」」
 と、プリンセスの新たなキャッチコピーを唱えるトワイライトに対し、プリンセスプリキュアの信条を叩き返して、 3人はゼツボーグを撃破。余裕を見せて引き下がったトワイライトは、黒いキーを手に微笑むのであった。
 「暮れない一日がないように。夕闇が空を包むように。この黒いキーとわたくしが、世界を、絶望で染めてみせますわ。ふふっ」
 なお一瞬、「くれない」という音に過剰反応した事を正直に告白します(笑) バイオリン……くれない……ううっ、バブルが……。
 というわけで、OPに印象的に存在していた黒衣の少女――トワイライト登場編。真紅の瞳にエルフ耳の人間離れした美貌、 というデザインになっており、事あるごとにシャットが「美しい……!」と身悶えする事で、ついでにシャットの個性が少し付きました。
 クローズがあっさりリストラされた事で不安視された三銃士の残り2人ですが、指揮系統がディスピア−トワイライト−三銃士、 となった事で、間にクッションが挟まったので、多少延命しそうか。……まあ、あっさり捨て駒にされる可能性もなきにしもあらずですが。 今後はトワイライト(既に濃い)とのやり取りでキャラを立てられそうなのは、期待できそうな部分です。
 さて……初期から薄々気になっていたのですが、ディスピアの娘が本物のプリンセスを名乗り、 血統主義を掲げる事で浮かび上がってくるのは、今作、「闇の勢力に異世界の王国が支配されて主人公達の世界にも危機が迫る物語」ではなく、 「身内の権力争いに異世界の女子中学生が巻き込まれる物語」なのではないか、という疑惑(笑)
 それどころか、
 父:? 母:ディスピア 兄:カナタ 妹:トワイライト
 という一家で、
 ディスピア様「あなた? また浮気をしたのね――(ゴゴゴゴゴ→大魔女化)」
 父「ま、待て! 話せばわか――カナタ、後は任せた!(逃亡)」
 カナタ「は、母上、落ち着いて下さい。ハーレムは男のロマ……じゃなかった、父上にもきっと事情が!」
 トワイライト「お兄様……最低」
 壮絶な夫婦喧嘩だったりしそうな気も。
 まあ、一口にプリンセスの血統と言っても、数代遡ると王家に連なる傍流から、 ディスピアが王位簒奪したのでこれからは我が家が正統主張、まで色々考えられますが……ミス・シャムールの「バイオリン……?」 という反応は、過去にトワイライトにレッスンした事を思い出したのではないかという想像が働き (カナタにレッスンした話を持ち出したのもそこから連想が働いたと考えると自然)、ある程度、王家の関係者である可能性は高いかな、 と予想。
 その場合、シャムールがトワイライトについて触れなかったのは(昔レッスンをつけたお姫様が居た、とか)、 政治的背景があるのではないかとも勘ぐれるところで、トワイライトが何らかの事情で王位継承権を剥奪された“忘れられたプリンセス”である、 という可能性もありそうです……一気に血なまぐさくなってきて素敵(笑)
 血統に強いこだわりを持って他者を見下す→考えを改めて仲間に(なるのか知りませんが、純然たる敵役という感じでもないので)、 のパターンとしては、後々「実はおまえは私の娘ではない」「……?!」と、 拠って立つアイデンティティを破壊されるというのが定番ですが、そういった展開よりは、血統から排斥された反動を抱えた、 捨てられたプリンセス、とかの方が個人的には盛り上がります。その場合、ディスピア様は実母ではなく、そそのかした人、 というポジションでしょうが。
 3人では無くなったけど“三銃士”が居るし、つまりトワイライトは“鉄仮面”ポジションなのではないか説(カナタとは似てないけど)。
 さて、とりあえずトワイライトについては本人と周囲の自己申告を素直に受け止めておくとすると、今作2クール目に入って
 トワイライト:王族
 |
 みなみ:ブルジョワジー(みなみ個人は、精神的貴族)
 |
 はるか:庶民
 と、階級闘争の様相を呈して参りました。芸能の要素が押し出されているきららは多分、漂白者ポジション。
 こう見ると今作の着地点は……共和政バンザイではないのか。
 思えば今作、そこはかとなく『少女革命ウテナ』へのオマージュらしきものが盛り込まれております……つまり、 『GO!プリンセスプリキュア』とは“革命”の物語……プリンセスを夢見た少女がプリンセス不要論に辿り着いて革命を起こし、 憧れの王子様をギロチン台に送る物語なのだっ!(待て)
 そういえば、パワーアップフォームがキュア“ローズ”だ……!
 ジュテーム!
 ……勢いの赴くままに書き散らしているので、何がどうしてそうなるのは聞かないで下さい。
 ただ、「誰もがプリンセスになれる」ではなく「プリンセスなんていらない」という物語は、 ここから何がどうしてそうなるのかさっぱり予測が付かないので、見てみたいといえば見てみたい(笑) そして、 今作における「プリンセス」がここまで、「ヒーロー」とほぼ同義である事を考えると「誰もがヒーローになれる」ではなく 「ヒーローなんていらない」物語、と置き換えてみると何だか行けそうな気がしてきた!
 「プリンセス」に関しては未だぼんやりとした今作ですが、それとは裏腹に「夢」についての各自のスタンスは丁寧に描き分けられており、 トワイライトが加わってこんな感じに。
 はるか:ふわふわした夢に向かって我武者羅に突き進む。
 みなみ:大抵の物事を能力ある者の責務として捉えている為、自分の目標を夢と呼んでいいのかわからない。
 きらら:具体性を持った夢に向かって、現実的なステップを着実に進めている。
 トワイライト:全てを手に入れた私に夢などいらぬ! もちろん愚民どもは夢など見ずに24時間働き続けるがいい!
 構図としては、はるかの夢に対して、トワイライトが現実の壁をぶつける、という流れになりそうですが、そこを突き抜けていくのか、 それとも現実にぶつかった所で何らかのターニングポイントになる出来事が起こるのか。トワイライトの登場で、 はるかと「夢」の関係性も変化していきそうで、注目したいところです。

◆第14話「大好きのカタチ!春野ファミリーの夢!」◆
(脚本:成田良美 演出:門由利子 作画監督:河野宏之)
 時々疑問になりますが、ノーブル学園はやはり「名門」でいいらしい。
 OP、クローズはまだ居るけどトワイライトの仮面が外れるという、細かい仕様。サブキャラの増加などもやっているだけに、 クローズだけそのままなのが、復活の目と見ていいのかどうか、気になる所です。凄く動かしてしまったので、 勿体なくて外せないだけかもしれませんが(笑)
 家族を招くファミリーパーティの準備に浮き立つノーブル学園1年生達。
 きららとゆいの
 「妹?」
 「はるはる、妹いたんだ」
 という際の、「え? 妹いてコレなの?」という隠しきれない反応が誤魔化されずにしっかり作画から伝わってくるのは、 今作の優れた所だと思います(笑)
 妹大好きのはるかだが、同じくはるか大好きの妹・ももかは、はるかが好きすぎる為に、 全寮制のノーブル学園でよろしくやっている姿に言いしれぬ苛立ちを感じ、こじれて学園を飛び出してしまう。 みなみときららの仲立ちもあり、無事に和解する姉妹だが、その時シャットが現れて春野一家をまとめてゼツボーグにしてしまう。
 「娘の夢がかなうのが夢だというのか。今まで多くの夢を見てきたが、これほどくだらぬ夢はない」
 ドレス姿のはるかを祝福してどら焼きが乱舞している(春野父は和菓子職人)という絵につい笑ってしまったのですが、 “自分が勝ち取る夢”ではなく“他者を応援する夢”というのは、いみじくもシャットの言う通り、今作において珍しいものであり、 春野一家の夢を通して、他人の夢を守る為に全力を振るえるキュアフローラ/はるかの背景・特殊性を補強する、という構造。
 ……ああそうか、最終的に、トワイライト(?)の夢の為に、はるかがプリンセスを諦める話、になる可能性はありそうだなぁ。 「プリンセスなんていらない」ではなく、はるかが「プリンセスにならない」を選択する、という着地点はありそう。
 「夢は……自分の力で頑張ってかなえるものだと思ってた。でも……支えてくれる人が居るから頑張れる。 応援してくれる家族がいるから、私は夢を思いっきり追えるの!」
 このエピソードでフローラが、ヒーローとして一つ階段を昇ったのも、意味ありげ。
 どら焼きゼツボーグを倒して春野一家は解放され、トワイライトは撤退。ラストはバレエのお披露目会、 と綺麗にまとめたエピソードの中で、ノーブル学園らしい部分として、序盤に用いたきりだったバレエを拾ってくれたのは良かったです。
 なお今回、黒いキーが何かに反応している描写やトワイライトに「キーが絶望を欲している」という台詞があり、 黒いキーは黒いキーで何らかの意志めいたものを持っている模様。

◆第15話「大変身ロマ!アロマの執事試験!」◆
(脚本:香村純子 絵コンテ:黒田成美 演出:岩井隆央 作画監督:赤田信人)
 ホープキングダムでは執事見習いだったアロマが、落第した試験の再試を受ける事になり、 ミス・シャムールのマジカルパワーで人間の少年の姿に。プリンセス・はるかに一日仕える、 という課題を出されたアロマはスケジュールの遵守にこだわってはるかを振り回し、ドタバタの末に不合格を言い渡されてしまう。 自分が執事として何が足りないのか……納得出来ずに駆け去ったアロマは危うく車に轢かれそうになった所を、 通りすがりの老執事に助けられる。
 不思議生物の人間化という個人的にあまりときめけない展開から、Bパート、突然の、 超イケメン(ロマンスグレイ)登場!
 (厳密にはAパートのドタバタシーンの背景にこっそり居たけど)
 俄然、盛り上がってきました(待て)
 「あなたは?」
 「こちらにいらっしゃる奥様の、執事でございます」
 ……多分アロマは名前を聞きたかったのだと思うのですが、自分の属性を即答する辺り、こだわりすぎてちょっと危ない人かもしれません。
 それとももはや、名前など捨てたのか。
 老執事とその主人とのやり取りに、アロマは自分がはるかの気持ちに寄り添うのではなく、 自分のいい所だけを見せようとして独りよがりになり、主人の心を汲むという執事の本分を忘れていた事に気付き、反省。 ところが今日もふらりと絶望を集めにやってきたトワイライトとロックにより、老執事がゼツボーグにされてしまう。
 ロック・ユア・ドリームから奥様をカバーリング! とか、 誕生したゼツボーグがスマートかつ後ろ手の格好いい立ち姿に高速移動+フォーク飛び道具+格闘+拘束攻撃、 とやたらめったら格好良くて、この突然の執事フィーバーはいったい何なのか(笑)
 単身立ち向かうも苦戦するフローラの姿に、今自分が出来る事を考えたアロマは、格好つけて戦いに加わるのではなく、 格好悪くても笑われても必死に学園へと走り、みなみときららに助けを求め、 3人揃ったプリキュアは強敵バトラーゼツボーグに勝利するのであった。
 マスコット要素は妹(パフ)にほぼ持って行かれ、小姑ポジションと化していたアロマに焦点を合わせたエピソードで、 1話できっちりと、アロマにはアロマなりの目標と懸命さがあるのだ、というのがまとめられました。合わせて、 アロマに試験に合格してほしいと応援し、アロマを最後まで信じる姿を描く事で、はるかの真っ直ぐな善良さを補強。
 これまでアロマは、今作で最も熱心なカナタシンパだったのですが(ある意味、これがアロマの一番重要な役割であった)、 ここではるかの事をある程度認める、という要素も含んでいるのかとは思われます。
 アロマの問題が、突然の超格好いいロマンスグレイ登場! で解決してしまったのは飛び道具でズルい面もありますが、 存在が埋没する前に取り上げて、未熟で悩み多い存在だと見せながらも好感度を上げてきたのは、良かったと思います。
 なお、パフもメイド見習いとして人間化するのですが、単なる子供、以外の何物でもない存在に。……実は、 パフの本来の姿はカナタの妃候補、みたいな可能性も考えていたのですが、全然そんな事はありませんでした(^^; パフは基本、 マスコットとしての立ち位置を確立しているので、今回のエピソードではばっさり切って基本ギャグにしか使わなかったのも、 いい判断だったと思います。
 ――次回、若いイケメン(みなみ兄)、登場!  5月は、イケメン月間なのか!?

◆第16話「海への近い!みなみの大切な宝物!」◆
(脚本: 成田良美演出:中村亮太 作画監督:青山充)
 みなみの招待で、海藤グループが開発を進めるリゾート地へやってきたはるか達。だがそこでは、 金に物を言わせて強引な土地の買い上げを行う海藤グループとリゾート開発反対派の漁師達が対立し、 更に反対派をそそのかす反社会的集団の陰も見え隠れしていた。金と欲に目がくらんだ大人達の醜い陰謀が渦巻く中、 地元の漁師の子供と仲良くなっていたはるかが何物かに誘拐されてしまう。事件の真犯人は、海藤グループなのか、反対派なのか、 それとも別の何者なのか。疑心暗鬼による諍いが激しくなる中、反対派の住民達が次々とマシンガンの餌食になり、 ふらりと現れたトワイライトはギターを抱えた渡り鳥と接触する。ぶつかり合う、ギターvsバイオリン!  そして突き付けられた選択に、家と友、果たしてみなみはどちらを選ぶのか?! 
 渡り鳥の正体が、3年前に行方不明になっていたみなみ様の兄だったのは衝撃的でしたね!!
 …………ハイ、すみません、そろそろ正気に戻ります。
 えー、海藤グループが開発を進めるリゾート地にはるか達が遊びに来た所までは本当です。
 なお、最近存在感をアピールしている眼鏡っ子は呼ばれませんでした!!(割と酷い)
 みなみ様の家が、世界的な大企業グループである海藤グループと判明し、リゾート部門を中心に、 そんな海藤グループで10の会社の社長を務める、みなみの兄・海藤わたるが登場。
 わたるお兄様は、顔良し・性格良し・能力値高し・おまに金も地位も有り、という非の打ち所の無いハイグレードなイケメン。 柄物の短パンが少し間抜けだけど、あれは、地元住民の心を掴む為の高度に戦略的なファッションだ!
 ちょっとシスコン気味のわたると、ちょっとブラコン気味のみなみがいちゃいちゃしているのにイラッと来たトワイライトは、 ロックとシャットをけしかけゼツボーグを誕生させる。と、ここで仲の良い兄妹の姿に不快感を得るというのは、 カナタと血縁ネタがあるのかないのか。
 ロックが封じたわたるの夢、それは――
 「既に専務派は完全にこちらのもの。次の総会でオヤジを引きずり降ろして、 海藤グループは全てこの俺のものになるのだ、ふははははははは」
 ……ではなく、「この海でみんなを繋ぎたい!」という、お兄様、出来が良すぎてツッコミ所がありません! というものだった。
 更にシャットが地元のおっさんからタコゼツボーグを生み出し、掟破りの同時攻撃に苦境に陥るプリンセスプリキュア。 兄から生まれたシャチゼツボーグとの水中戦で追い詰められたマーメイドは、 幼い頃に溺れた自分の命を救ってくれたイルカに再び助けられる。負傷したイルカを、兄の愛した海を守りたいとみなみが願う時、 海の底に眠っていたミラクルドレスアップキーがその想いに応え、大いなる海の力を体現するバブルキーが覚醒!  その力を得たマーメイドの反撃によって、プリキュアは2体のゼツボーグを打ち破るのであった、
 「キュアフローラ同様、偽りのプリンセスなど、取るに足らないと思っていたけれど、キュアマーメイド、その名、覚えておくわ」
 と、兄の件も合わせてか、トワイライトに目を付けられるみなみ様。まあ、みなみ様は精神的貴族なので、 実はトワイライトと立ち位置が近いというか。
 そんなこんなで、早くも次のドレスアップキーが追加というスピードにビックリでしたが、 ここまでのみなみ様のキャラクターの積み重ねが放り捨てられ、よくある大金持ち設定+よくある自然(生き物)大好きネタ、 というだけの内容にガックリ。
 これまで少しずつ仄めかされていた、「家」という前提があるが故に、はるかやきららと比べた時に純粋に夢を追いかけている、 のとは少し違うスタンスであるみなみ様の内面を全く掘り下げる事なく、ただただお兄様大好き、 そして特にこれまで積み重ねの無かった海とイルカの話が中心になってしまい(今作ここまでの物語の流れからすれば、 この要素はあくまで脇であるべき)、特に「夢」も何も関係しないという、ここまででワーストクラスのエピソード。
 なんだかんだメインキャラの描写の積み重ねが丁寧、という今作の長所が全く活かされず、実に残念な出来でした。
 突然、この近くにドレスアップキーの反応があるカナ! と出てくるカナタの扱いも超ぞんざいでしたし。
 というかあれか、先週今週と立て続けに自分以外のイケメンが活躍してしまったので、イケメンアピールか王子……!
 予告を見る限り、次回、きららの家族の話をやりつつ、きららも更なる強化キーを手に入れ、 はるかが一歩取り残される所から話を転がすのかと思われますが、これまで、 本人よりもどちらかというと「家」に軸があるキャラクターとして描写されていたみなみ様の家族エピソードがこの内容と出来だったのは厳しい。 何らかの問題を乗り越えて強化キーを手にいれる、という成長の物語にもほとんどなっていないので、今後の振りとしても弱いですし。 少なくともお父様が残っているので、海藤家の話は何とかどこかで取り返してほしいものです(^^;
 今回の数少ない面白かった所↓
 はるか「イルカと友達なんて、素敵!」
 むしろ、イルカ以外に友達が(以下略)

◆第17話「まぶしすぎる!きらら、夢のランウェイ!」◆
(脚本:香村純子 演出:芝田浩樹 作画監督:フランシス・カネダ/アリス・ナリオ)
 見所?は、
 「私もきららの家に連れてけよ! 友達だろ?! ていうか空気読んで電話してこいよ?! それとも結局、 私の扱いってそれぐらいなわけ?!」
 と、はるかに迫る眼鏡っ娘。
 存在のアピールが悪い方向に行ってしまって、これはあまり良くないやり取りだったと思います。
 後、その辺りの街中ならまだともかく、モデルショーの会場で避難誘導をするのはさすがに無理があり、別に今回、 出さなくても良かったよーな。
 待望のボアンヌコレクションが翌日に迫り、はるかとみなみを連れて会場の下見に向かったきららは、そこで母ステラと出会い、 はるか達と獣たちを紹介。
 「みんな、あたしの友達」
 「友達……? きららの友達?!」

 母、戦慄。

 これ以上深く突っ込まれないけど(今作のいい所)、やはり、きららには友達が少ないという確信が深まっていきます(笑)
 ショーに対して余裕を見せていたきららだが、改めて母と共演するという事実に緊張し、 そんな娘の姿にステラは一計を案じて3人の外泊許可を取り付けて家へと泊まらせる。
 白金さんに直接電話して外泊許可を取るステラさん凄いという意図のシーンだったのでしょうが、ノーブル学園ホント緩いな、 となってしまうのが困り物(^^; この辺り、寮設定が全く巧く積み上げられていないのは、勿体ない。
 「あたし下町育ちだから、こういうとこが落ち着くのよ」と、地元商店街で夕飯の食材を買い求めるステラだが、 住んでいるのは見るからに超高級マンションだし、夕食はすきやきだし、庶民派アピールは必要あったのか。
 また、きららの父親は世界的に活躍する超有名俳優と判明。モデル母娘の父はいっけん冴えない中年、 とかでも面白かった気はしたのですが、それは男の視点で、セレブな家庭はひたすらセレブ設定の方が、女児にはウケるのかなぁ(笑)
 いよいよショー当日、前夜の母親の空気を読まない振る舞いに苛立っていたきららだが、はるかとみなみに愚痴をぶつける事で力が抜け、 自然体を取り戻す。だがその会場にティーンズファッション誌片手に現れるシャットとトワイライト。
 「もう始まったの?」「あの子モデル?」「まるでプリンセスみたい」
 観客の声を耳ざとく聞きつけて明らかに喜んだ微笑になり
 「みたいではないわ。私は真のプリンセス」
 と返してしまうトワイライト様は、薄々思っていたけど、結構転がしやすい人なのではなかろうか。
 「きゃー! トワイライト様ー!」「素敵ー!」「プリンセス!」「プリンセス!」「プリンセス!」とか持ち上げると、 東京ドームでコンサートぐらいやってくれそう。
 それはさておき、シャットの狙いはステラをゼツボーグの素体とする事であり、
 「きららと一緒に、同じステージに立ちたい!」
 という母の素朴な夢を知るきららだが、その前に2体のモデルゼツボーグが迫る。
 「強い夢ほど、絶望も深い。さすがプリキュアの親という所かしら」
 「ママ……やっぱりそうだったんだ……昨日のあれは、無駄に気負った、あたしの力を抜こうとして……。――待っててママ!  今度はあたしが、ママを助ける! みんな、行くよ!!」
 母の真意を知り奮戦するトゥインクルだが、強力なモデルゼツボーグはプリキュア達を追い詰める。
 「ふふっ、母親の夢から生まれた絶望に倒されるがいいわ」
 「冗談。あたしが負ける筈ないじゃない! ……だって、知っちゃったもん。ママの夢が、あたしと共演する事だって。あたし、 ずっと夢見てた……ママみたいなモデルになりたい。ママと同じステージに立ちたい、って。だから、こんなとこで、 負けてる場合じゃない。あんな達なんかパパッと倒して――あたしとママ、一緒に夢を叶えるの!」
 きららは力を振り絞ってゼツボーグを弾き飛ばし、その叫びに応えて、何故か、 ステラの中から新たなドレスアップキー――シューティングスターキー――が現れる!
 「きららとステラ、2人の絆に引き寄せられたんだロマ」
 ミラクルドレスアップキーの扱いは、実に適当(笑)
 「ママとあたしを結ぶ、夢のキー!」
 この台詞で誤魔化しましたが。
 シューティングスターキー(長い)を入手したトゥインクルは、流星落としの範囲攻撃を取得。 ゼツボーグがひるんだ所を合体技でごきげんようし、トワイライト達は撤退。ショーは再開し、きららは母と無事に共演。 楽屋でステラの夢がかなった事について触れるきららだが、母はすぐに笑顔を浮かべる。
 「でもまだまだ、私には次の夢があるから」
 「え? なに?」
 「きららと2人で、トップモデルになる事!」
 「あはっ。OK、わかった! 待ってって。すぐに叶えてあげる!」
 と、笑顔を浮かべ合う、男前の母娘(笑) 父親(夫)が、高倉、じゃなかった、高天原ケンなら男前一家で仕方ない。
 さて、2クール目に入って、プリキュア3人の家族が改めてエピソードゲストとして登場。それぞれの、プリキュア−夢−家族、 の関係を描く物語が展開しましたが、
 はるか:「家族に応援される夢」
 きらら:「家族と重なる夢」
 と描かれているのに対し、前回が惨憺たる出来だったみなみ様だけ、やはり見事にぼやけてしまいました(^^;  物語のテーマに対して少しずつ異なる三者三様のスタンスを描き、それが時に交わったり離れたりしながら全体像を織りなしていくという今作の構造からすると、 みなみ−夢−家族の関係が描かれてしかるべき筈だったのですが、この失点は痛い。
 今回は一応、新キー入手と「夢」を繋げましたが、前回はそこもしっちゃかめっちゃかでしたし。
 作品の核となる部分だけに、何とかリカバリーして欲しいところです。
 ――次回、遂に開かれる禁断の扉。
 「絵本のヒミツ! プリンセスってなぁに?」
 しかもなんか、作者の設定が怪しげだ!

→〔<第2部>(2)へ続く〕

(2016年4月27日)
(2017年4月8日 改訂)
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