■『GO!プリンセスプリキュア』感想まとめ1−2■


“羽ばたけプリンセス
ふわり ひらり まっすぐ夢へすすめ!!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた, 《プリキュア》シリーズ初体験者の『GO!プリンセスプリキュア』感想の、まとめ1−2(7〜11話)です。文体の統一や、 誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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<第1部・夢のプリンセス(2)>
◆第7話「テニスで再会! いじわるな男の子!?」◆
(脚本:香村純子 演出:中村亮太 作画監督:松浦仁美)
 OP、前回と劇場版ダイジェスト映像の編集が変わった結果、
 こぉぉ……1発で駄目なら10発、10発で駄目なら100発! この拳に、突き破れぬものはない!!
 みたいな感じに。
 今更気付いたけど、ハナさん(『仮面ライダー電王』)って、世界が世界ならプリキュアだったのか……!
 (或いは、かつてプリキュアだった)
 男女混合球技大会が行われる事になり、“プリンセスぽいから”という理由でテニスを選んだはるかは、 テニス部の藍原ゆうきとダブルスのペアを組む事に。ところがその藍原は、はるかの幼稚園の同級生で、 「プリンセスになりたい」という夢を笑い、はるかに数々の悪戯を繰り返してきた少年だった。更に、 遊びでも試合でもテニスには絶対負けたくないという藍原から戦力外通告を受けたはるかは、憎しみのオーラの赴くがまま、 ミス・シャムールにテニスの特訓を願い出る。
 今回も非常に汗臭いノーブル学園ですが、藍原少年は120%、空気読んでテニス以外に出ろ、というタイプ。
 女子の前衛に向けて、ネット際から思い切りスマッシュ打つな(笑)
 グランプリンセスと何も関係無いはるかの無茶な要求に応えて、しっかりテニスのトレーニングを行う有能なミス・シャムールの手により、 サーブの鬼と化したはるかは、藍原の驚くようなサーブを決めて見直させるが、そこにシャットが登場し、 藍原の夢からゼツボーグが生み出されてしまう。
 みなみときららの到着が遅れて単身で戦うフローラは動きを封じられるが、シャットの言葉に怒りの炎を燃やす。
 「私、わかるから……夢を、踏みにじられる痛み。わかるから! だから――あなたの夢、絶対助けてみせる!!」
 と、ここまでネジの飛んだ危ない娘一直線だったはるかの“夢を守りたい理由”が描かれた事で、 はるかのヒーローとしての背骨が成立。合わせて、踏みにじったその張本人の夢でさえ守ろうとする事で、 はるかが夢を大切に思う気持ちと、物事に対する考え方が巧く強調されました。
 啖呵を切って戒めを破る→遅れて到着した二人が援護攻撃→連携で反撃を決めて逆転勝利
 という流れも決まって、良かったと思います。
 ……で、ED見たら脚本が香村純子で、ヒーロー物のツボを押さえてるなーと感心(笑)
 夢を解放された藍原少年は朧ろな意識の中で花のプリンセスを目にし、はるかの夢もありかもしれない、 と考えを改めるのであった……て、これはあれか、藍原少年はキュアフローラにときめいてしまったパターンか。
 なお、衆人環視の中でのゼツボーグの誕生と大暴れは、被害状況が自然回復(?)し、集団幻覚という事で片付けられました。
 プリキュアが3人揃って目的と目標がハッキリした所で、学園ゆかりのゲストキャラがゼツボーグの素体になる…… とベーシックなフォーマットを意識したと思われますが、その中ではるかのヒーローとしての足場も固め、面白かったです。
 前回と今回でようやく、あちこちに空いていた水漏れの穴が少しずつ埋まってきた感じ(笑)
 後は敵幹部に台詞回しと見た目以外の個性が欲しい所ですが、今から急にゼツボーグの差別化とか出来ないだろうし、どうしたものか。 謹慎処分を受けたクローズ復帰の暁には、出来れば一ひねり欲しい所です。
 ……で、私、ほんの与太から、恐ろしい真実に辿り着いてしまいました。
 花のプリンセス
 ↓
 ハナのプリンセス
 ↓
 打撃系ヒロインのプリンセス
 ……つまり、プリンセスとは平和な学園に降り立った一個の修羅だったんだよ!!
 物凄く納得(待て)
 (何を言っているかわからないという人は、『仮面ライダー電王』を見よう!)

◆第8話「ぜったいムリ!? はるかのドレスづくり!」◆
(脚本:伊東睦美 絵コンテ:田中孝行 演出:岩井隆央 作画監督:赤田信人/上田ケン)
 学園主催のパーティに着るドレスを自分で一から作る、と張り切るはるか。洋裁の経験値全く0で無駄に溢れるやる気しかないはるかに、 今回もレッスンをつけてドレスを形にさせるミス・シャムール、超有能。
 某道士とか某司令とか某所長とかに、爪の垢を煎じて擦り込みたい。
 にしても、現実の厳しさを告げるきららに対して、自分基準で「人間、努力すれば大抵の事は出来る」と思っているが故に、 暖かい笑顔でネジの飛んだ子を見守ってしまうスタンスのみなみ様は、割とタチ悪いなぁ(笑)
 真心で人を追い詰められるタイプです。
 「どんなに素敵なドレスを作っても、中身がともなわなくては、折角のドレスが台無しよ」
 そして、自分基準のハードルを越えられなかった相手には、容赦ない。
 ドレス制作に熱心になるあまり授業が疎かになったはるかはみなみの叱責を受けて落ち込み、 その姿に懸命にはるかを励まそうとするきららは、最初に壁を示すけど、友達がいざ壁にぶつかると途端に甘やかすタイプ(笑)
 みなみときらら、2人の言葉にやる気を出したはるかは学業もドレス作りもどちらも頑張り、 授業の課題をこなしつつドレスを仕立てていくが、パーティー前日、完成寸前のドレスにパフが紅茶をひっかけ、 大幅な直しが必要になってしまう。時間は無い……それでも自分1人でドレスを作り上げる、とはるかに手伝いを拒否されたきららは、 たまたま出会ったみなみに相談するが、
 「はるかは自分でやるって言ってるんでしょ。だったら、そうさせてあげればいいわ」
 「みなみ、冷たいよ。はるはるの事、応援してないわけ?!」
 「勿論、してるわ」
 「だったら、なんで」
 「はるかなら出来るって信じてるから」

 みなみ様、怖いよ……!

 おかんむりのきららを終始淡々と受け流すみなみ様の「信じてる」は、“はるかの能力”を信じているのではなく、 “気高い人間は自分で設定したハードルは乗り越えられて当然”→乗り越えられないヤツはクズ →はるかはクズじゃないわよね?(にっこり)、という「信じてる」なので、はるかの預かり知らぬ所で 魂の価値がベットされているという、超恐怖(一応、今なら降りても許す、 と一度忠告に来ているのがみなみ様なりの優しさです)。
 「出来ないって!」
 「出来るわ。夢を心から大切にしているはるかなら、きっと」
 「また夢? 夢もいいけど、現実的に考えて、時間なさすぎだよ! 間に合わないってば」
 その時、ロックにより料理部の女子を素体としたゼツボーグが出現し、はるかに気を遣ったみなみときららは2人だけで立ち向かうが、 そこに遅れてやってきたはるかが、猛然とオーブンレンジゼツボーグへ躍りかかる!
 「なんで? あんなにふらふらだったのに」
 「私、プリンセスになりたい。その夢の為に、ドレス作りも勉強も、プリキュアもっ! 全力でやる! 夢を、この手でかなえる為に!!」
 いっけん良い事を言っているようですが……これ、徹夜明けのテンションによる、いわゆる修羅場モードというやつでは……(笑)
 「夢を掴む為には、もっともっとがんばらなくちゃ駄目だって、そう教えてくれた、マーメイドの為にも! そして!  私の事をすっごく心配してくれた、トゥインクルの為にも! 私は頑張る! 頑張りたいの!!」
 「フローラ……!」
 テンションMAXのキュアフローラの姿に、みなみがはるかを理解していたのに対し、 自分は余計な心配をしていただけだったのではと沈むきららだったが、即座のフォローにときめきゲージがぎゅんぎゅん上昇。
 ……きららさん、友達居ないから、退いたと見せかけて側面から撃つ! みたいな攻撃に弱いのです。
 オーブン熱風攻撃に苦しめられるフローラを救うべく、トゥインクルが必殺技の星で防壁を破って援護攻撃。これまで、 発動するとゼツボーグの活動を停止させる精神系の魔法攻撃っぽかったプリンセスの必殺技ですが、 物理的な影響も及ぼせる事が判明しました。
 3人はゼツボーグを撃破し、はるかのドレスも無事に完成。最初はどんな無茶な話になるのかと思ったのですが、 はるかのドレス作りを通して、みなみときららのスタンスの違いを描く、という構成が面白かったです。
 ざっくり言うと、
 みなみは「自分に厳しく他人に甘く友達には厳しい」
 きららは「自分に厳しく他人に厳しく友達には甘い」
 更にもう一つ、今回のはるかの、学業とドレス作りの両立というのは、200%でモデルとプリキュアを両立する、 というきららの姿と重なる所があるのですが、その上で象徴的な台詞が、
 「また夢? 夢もいいけど、現実的に考えて、時間なさすぎだよ! 間に合わないってば」
 と、自分の夢を掴む為に、常に現実を見据えてアプローチしているきららには、 はるか(とそれを応援すると言いながら手出しはしないみなみ)の「夢」へのただ我武者羅なだけのアプローチが、 言葉だけが上滑りしているように見えて納得出来ない、という所。
 漠然とした夢に向かって手当たり次第にぶち当たっていくはるかと、 明確な目標に到達する為に現実的な努力を重ねて道を繋げていっているきららの、 「夢」に対するスタンスの違いも1つのエピソードの中に盛り込まれており、かなり凝った作りになっています。
 おまけで今回、プリンセスプリキュアの戦いが
 「ドレス姿の人達が学園の周りで怪物を退治しているという噂」
 になっている事が発覚(笑)
 危なすぎる……。

◆第9話「幕よあがれ! 憧れのノーブルパーティー!」◆
(脚本:田中仁 演出:芝田浩樹 作画監督:大田和寛)
 OPが通常バージョンに戻り、藍原少年のルートも解放された事が判明。
 良かった。無視されるかと思ってドキドキしたよ……!
 藍原くんには是非、はるかを散々ちんくしゃ扱いした挙げ句にキュアフローラに告白しようとして玉砕してほしいです!!(おぃ)
 武闘派希望王国では、謹慎を解かれたクローズが女王様から早くも最後通牒を受け、出撃。全体像の描かれた女王様は、 どことなく『デビルマン』系のデザイン。
 ノーブル学園では前回を受けてはるか待望のノーブル・パーティが開催され、眼鏡の子や藍原など、 ここまでのゲストキャラがちょっとずつ登場、とこういう広げ方は嬉しい。生徒会のヅカ系の人はドレスが大人っぽすぎて、 26歳・OLみたいに。前回、怪人の素体となった料理部の人がワンカットだけ登場するのですが、 怪人の素材が続けて出てくるだけでも珍しいのに、えらく美少女に描かれていて、作画担当者の偏った愛を感じます(笑)
 パーティは生徒会が中心となって運営する為にみなみ様は忙しく、はるか、きらら、 眼鏡っ子という組み合わせてしばらく会場のシーンが描かれるのですが、案の定、最初に社交辞令でドレスを誉めて以降、 一切眼鏡に話しかけないきららさん。それだから友達が出来ないんですよ!!
 ダンスタイムに興奮しすぎて転びそうになったはるかはみなみ様に助けられ、忙しいみなみを気遣うが……
 「第一、私は生徒会長が大変なんて思った事もないのよ。私のお父様とお兄様は、私よりずっと凄くて、 会社でたくさん立派な仕事をしているわ。私はいつか、2人のような大人になりたい。その為には、 このぐらいの仕事はこなせないと駄目なの」
 やはりみなみ様は、“能力ある人間の責務”として、“やれる事をやるのは当然”と考えている人の模様。
 その上で、みなみ様、別にハイソな家庭ではなかったらそれはそれで面白いですが、台詞回しなどからすると、 そこまではひねってきそうにないか(はじめてのかいぐい、とかもあったし)。
 「それが、みなみさんの夢ですか?」
 「夢……? …………そうね」
 ここで返事に少し間があり、みなみ様に関してそこかしこで匂わされてきた要素が、順調に形になってきました。
 その頃、リストラ一歩手前のクローズは、パーティの撮影を担当する映画好きの少年を素体にゼツボーグを生み出し、 カメラゼツボーグの持っているカチンコに、「オレ参上!」と書いてある小ネタ(笑)
 ホラー映画を撮りたいゼツボーグの悪戯によりパーティ会場が停電し、配電盤を見に行ったみなみ様と生徒会男子2人だが、 ゼツボーグのお化けトリック映像を追いかけた男子2人は役に立たずに気絶。みなみはマーメイドに変身するも、 お化けが苦手な為に苦戦するが、そこへみなみの苦手を知ったはるかときららが駆けつける。
 生徒会の女子2人がみなみと小学生からの付き合いで、過去に肝試しでヅカ系が脅かしすぎた為にみなみはお化けが苦手になった…… との事なのですが、その事実を知り、情報を提供し、「ついていけば良かったかなー」と言いつつ行動には移さない所に、 友情レベルの薄さを感じる所です(笑) みなみ様、ガンバ!
 ゼツボーグの関与を知って変身し、へたり込むマーメイドに手を伸ばすフローラは、7−8−9話と、 だいぶヒーロー力が上昇してきました。打撃系プリンセスとして、確かな成長を感じます。
 「情けないところを見られてしまったわね。みんなの為に戦わなきゃいけない。でも……仕方がないじゃない。怖いものは、怖いのよ」
 斜め下に視線を逸らす所といい、この自己弁護の仕方が、絶妙に駄目なエリートぽいですみなみ様!
 「今日は私、学園のプリンセスを守るナイトになります!」
 強さ担当のフローラはそんなマーメイドの手を取り、トゥインクルがメガホンに閉じ込められたりあったものの、反撃開始。 今回かなり戦闘シーンは力の入った作画で、単独で戦うマーメイドのアクロバット回避は無駄作画の域で動きまくり、 クライマックスは天井を利用したダブルプリキュア反動三角蹴りからマーメイドの必殺技でごきげんよう。
 「踊りましょう、ナイトさん」
 無事にパーティは再開し、みなみ様は最初のダンスの相手にはるかを指名。
 「これからも、たまには頼りにしていいかしら」
 2人のダンスと、みなみ様の笑顔で締めて大団円。
 予告から、前回頑張ったはるかが浮かれ騒ぐエピソードかと思ったら、全体的にかなり力の入ったみなみ様大反撃カーニバルでした。 誰に反撃……って、それは勿論、き(以下、不穏当なので削除)。
 モテるみなみ様、デキるみなみ様、可愛いみなみ様、と連続攻勢を仕掛けた上でみなみ様の背景に触れてきましたが、その上で、 「夢……? …………そうね」については演技のニュアンスだけで印象づけて、今回は踏み込まずに先に引いてくれたのはとても良かったです。
 何でもかんでも1エピソードで解決しないで、こういったロングスパンの仕掛けを入れてくれるのは好み。
 リストラ通告を受けていたクローズは、今回も失敗で「もう帰れない」と失職してしまいましたが、 シャットもロックも失敗続きなので、クローズだけ早くも追い詰められてしまったのは、少し気になる所。まあクローズは、 最初にフローラ誕生を阻止できなかった分が乗っかっているのでしょうが。敵幹部の差別化は進めて欲しい所ですが……次回、 無職クローズ、アウトドア生活?

◆第10話「どこどこ? 新たなドレスアップキー!」◆
(脚本:香村純子 演出:畑野森生 作画監督:フランシス・カネダ/アリストテル・ナサリオ)
 今回の、心に染みた名台詞。
 「考えろ、考えろ俺!」 (クローズ)
 追い詰められた時に、頭を使おうという発想が素晴らしいと思います(笑)
 バイオレンス王子からの連絡でドレスアップキーの反応が見つかった事を知るはるか達。キーはなんとノーブル学園のどこか、 “夢の集まる場所”にあるらしい。部活巡りなどをするも空振りに終わった3人は、 学園の隅々までを知っているような寮母の白金なら何か心当たりがあるかもしれないと考える。 神出鬼没の白金が早朝に不審な散歩をしていると聞いた3人は白金の後をつけ、隠し扉の地下通路の先で、 広大なローズガーデンをその目にする……。
 代々の卒業生の夢を書いたタイルを敷き詰めた小屋の建つ、崖の上の秘密の花園……というのが どうして秘密施設になっているのか激しく謎で戸惑います(^^;
 ミステリアスでファンタジックな“学園の秘密”みたいな要素を入れたかったのかもしれませんが、もう一声、 それを成立させる為の“真偽定かではない由来”みたいなものは欲しかった所です。
 「こういう話が伝わっていて、それ以来〜」とかあればまた違ったと思うのですが、ただ単に、学園長が奇矯としか思えず、 今ひとついい話になりませんでした。わけありげで変な学園長とか理事長、 が劇中にちらちら出ていればまた話を広げられますが、基本的に今作ここまで、学園の偉い人、は不在ですし。
 それこそ白金さんが一番、劇中において学園の権威を代表する存在だったりするわけで。寮母、実は……というのも充分に有り得ますが、 今回のエピソードに関しては、後出しの設定ではなく、この場で補強が欲しい内容でした。
 続きエピソードだったので、次回のラストで、革張りの椅子に腰掛けた黒いシルエットの人が猫を撫でながら 「そうか……プリンセス達があの場所に気付き、キーを手に入れたのか。計画は順調に進んでいるようだな……ご苦労だった、白金。 引き続きプリンセス達を監視するのだ」とかあるかもしれませんが(笑)
 卒業生のタイルのシーンでは、既に言及されていたきららの母親の他に、みなみ様の兄も卒業生であったと判明。前回に続いて、 みなみ様の背景が少しずつ言及されてきました。
 小屋の中で、壁に潜んでいたドレスアップキー一気に3つを発見するはるか達だが、そこへ崖っぷちのクローズが来襲。 クローズは卒業生達の夢の詰まった建物そのものをゼツボーグ化する事で最強のゼツボーグを作り出し、追い詰められるプリキュア。 てっきり新フォームで逆転するのかと思ったら、信念のパワーから3連続必殺技でごきげんよう。
 上級生べったりのはるかに雑な扱いを受け続け、私の人間としての価値って、眼鏡外した1発ギャグしか無いの……?!  と悩める眼鏡っ子が後を追いかけてきていた為に、3人が正体を明かす事になるという大きな変化はあったものの、 眼鏡がその後で物語に絡まないので消化不良……と思ったら、ディスピア様が登場して、次回へ続く。

◆第11話「大大大ピンチ!? プリキュアVSクローズ!」◆
(脚本:田中仁 絵コンテ:座古明史 演出:鈴木祐介 作画監督:稲上晃/上野ケン)
 ディスピア空間ではゼツボーグは3倍の力を持つのだ!
 というわけで、プリキュアに最後の戦いを挑むクローズともども、ディスピア空間に呑み込まれるプリキュア達&巻き込まれた眼鏡っ子。 分断されたプリキュアは、強力なゼツボーグの襲撃を受けて苦戦し、見所は、

 クローズ、美形になる。

 今回でお別れ(?)という事でか、えらく作画に気合いの入ったクローズさんが、『ドラゴンボール』のような地形で、 亀仙流のごとく大暴れ。……まあこういう、特定のキャラだけを全体の雰囲気から逸脱して描いてしまう作画、 って個人的にはあまり好きではないのですが(^^;
 マーメイドとトゥインクルが合流し(Aパートさんざん苦戦を煽っていて、Bパート冒頭でいきなり大技で片付けてしまうのはどうか)、 3人揃ったプリキュアは、エレガントキーの発動に必要な魔法のステッキを手に入れるべく、カナタの元へ夢の力を届けようとするが、 巨大な漆黒の鴉の姿に変貌したクローズがそれを霧散させてしまう。
 3人がそれぞれの夢を口にする所で
 「私は、兄や父のような、人の役に立てる人間になる」
 と結局、みなみ様はそれでいいのか……? 前々回わざわざ戸惑うようなニュアンスを入れた後で、 今回は話の都合優先といった感じになってしまったは、ちょっと残念。
 ドリームコールを巨大クローズに防がれ、次々と仲間を吹き飛ばされ、さすがのフローラも絶望に膝を付いてしまう。だがその時、 駆けだした眼鏡がクローズの攻撃からフローラをかばう。
 「私の夢も、力になれないかな?」
 夢を守ってくれたはるか/キュアフローラの為にも、必ず夢をかなえてみせる、その時も一緒にいよう、という眼鏡の言葉に、 自分が夢を守る意味、戦う希望を取り戻すはるか。
 「私は、私の夢を叶える。みんなの夢も守る。……だって、今の私は――プリンセスプリキュア! キュアフローラなんだからっ!」
 これまで、「プリンセス」という言葉の響きに踊らされていたはるかが、ここで「プリンセスプリキュア」としての自覚を強くし、 夢を守るプリンセスという立ち位置が確定。
 ようやく眼鏡っ子の存在意義が出ましたが、溜めて面白くなったというよりは、放置→ベタといった使い方で、可も無く不可も無く。 ……この後また、イベント片付いたから、という感じで蔑ろにされそうで怖い(^^; ただ、 実は改めてはるかにとっての「友達/友情」を描いた事が無かったので、その要素を正面から持ち込んだのは良かったと思います。
 「私も……同じ気持ちよ。海藤みなみとして、キュアマーメイドとして、ディスダークと戦う」
 「キュアトゥインクルとしては、ここは乗っからないと駄目だよね」
 3人は眼鏡を交えて再び夢の力を掲げ、それはクローズの妨害を突き破ると王国へ届き、魔法のステッキとの道しるべに。 新装備を手に入れた3人は、ローズ、アイス、ルナを発動し、合体光線技トリニティリュミエールで、巨大クローズを撃破するのであった。
 新しいキーによるフォームチェンジは、もっと派手に変わるのかと思ったら、装飾品以外は、並べないとわからない感じ。 この辺りはあまり、個体認識が難しくならないように、という所なのでしょうか。
 巨大クローズを撃破して、黒い羽根が舞い散る中で、フローラが悲しそうな顔で目を伏せるのは、 意識を持った存在を消滅させた自覚あり、という事なのかなぁ……。これまでゼツボーグとの戦闘は、 外装を封印して素材の人間を解放する、というイメージだったので、明確な“敵の撃破”というのは劇中初なわけですが、 基本的にそれを避ける設定で通常戦闘を展開していたと思われるので、敢えてそれをやってきたのを、どう活かすのか気になります。
 フローラもフローラで、通常、人権派の主人公なら試みそうな《説得》などは一切していないわけですが、そう、 プリンセスプリキュアの辞書に、「和平」の文字は無いのだ!
 まーその辺りの事情も含め、しれっと復活しそうな気もしないでもないですが(笑)
 パワーアップの踏み台として登録抹消さたクローズですが、戦闘をやたら盛り上げてしまい、 役職上は同格の上にこれまでもさしてパッとしていない残り二人の今後がとても心配です(^^;  しかもそのクローズが限界突破の強化した所を、新フォームで瞬殺してしまいましたし。まあ、残り二人も電光石火で始末して、 OPからもデリートする、という方向性もあるかもしれませんが(笑)
 前後編でのパワーアップ展開で、存在の限りなく透明なクリスタルだった眼鏡っ子をフィーチャーして改めて「友達」を描き、 合わせてキュアフローラの立ち位置を確定しましたが、出来は2話とも今ひとつ。
 絶望的に強大な力の敵に立ち向かうが大逆転、というプロットが全く一緒になってしまいましたし、 逆転のキーとしての友情と強化アイテムを2話に引っ張って用いた結果、前編は消化不良、 後編は悪い意味でRPGのイベント戦闘のようになってしまいました。 もらい物の強化アイテムに対して主人公達の感情が乗っていないので、淡々とムービーを進める為にボタンを押している気分というか(^^;
 友情の確認と夢を守りたいという意志が、「強化アイテム」そのものと繋がれば良かったのですが、 「強化アイテムを手に入れる手段」になってしまったのが、少しピントがずれてしまったように思えます。
 あ、謎のシルエットの悪い人は居ませんでした、ハイ(初めから妄想です)。


◎第1部まとめ
 立ち上がり、はるかの「プリンセス」像が全くわからない・設定の説明不足という2点を解消しないまま突っ走ってしまった為、 非常に不安定だったのですが、第6話で設定関係を整理してプリキュア活動とグランプリセス修行と物語の目的を繋げてまとめ、 第7話で「何故はるかは夢を守ろうとするのか?」を描いた事で物語が軌道に乗り始め、続く第8話も、はるか・みなみ・きらら、 の3人の物の考え方を交錯させながら、それぞれの「夢」に対するスタンスの違いも織り交ぜて描いた好篇。
 この、6−7−8話はいずれもサブライターの手によるものなのですが、そこで話が流れに乗ってくれたというのが、 かなり大きかった序盤のポイントと思えます。
 学園物としての弱さ、パヒュームやキー関係の扱いの雑さ、などがある一方で、キャラクターの細やかな描写と、 メイン3人それぞれの物事の見方・考え方を大事にする作りは序盤からしっかりしており、今作の大きな長所。
 ちょっとした仕草や表情を、伏線や積み重ねとして後々まで用いていく演出は徹底しています。
 反面、メイン3人にウェイトを置きすぎた事で特にディスダーク側に手が回らず、3幹部の個性化と掘り下げが進まない、 という短所を抱えてこれは中盤〜終盤まで引きずる事になるのですが、虻蜂取らずになるよりは、 長所を研ぎ澄ますという選択は良かったのかとは思います。
 少なくとも個人的に、色々と不満がありつつも今作を見続けた理由の1つは、この丁寧なキャラクター描写にあります。
 特に、長期ブランドタイトルかつ、シリーズに連続して関わっているスタッフが多く居るという事もあってか、 脚本やコンテ段階にあったであろう、ほんのちょっとしたニュアンスをしっかりと汲んだ作画、というのは素晴らしい点。
 “1年間の物語”として、これが非常に良い効果をもたらしました。
 とはいえそれらが大輪の花を咲かすのは最終クール。この時点では、細かい整備が行き届いているのに、 ガソリン漏らしながらの荒っぽい運転に不安が募る、というものでしたが、 南の海で起きた大事故の先で文字通りのターニングポイントを迎える<第2部>へ続く。

→〔<第2部>(1)へ続く〕

(2016年3月22日)
(2017年4月8日 改訂)
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