■『GO!プリンセスプリキュア』感想まとめ1−1■


“強く、優しく、美しく
GO! プリンセスプリキュア!!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた, 《プリキュア》シリーズ初体験者の『GO!プリンセスプリキュア』感想の、まとめ1−1(1〜6話)です。文体の統一や、 誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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<第1部・夢のプリンセス(1)>
◆第1話「私がプリンセス? キュアフローラ誕生!」◆
(脚本:田中仁 演出:田中裕太 作画監督:上野ケン)
 以前より、1度は『プリキュア』なるものを真面目に見てみようと思っていたのですが、このほどタイミングが合ったので、 新番組『Go! プリンセスプリキュア』第1話を見てみました。
 シリーズ作品に関しては、たまに地方局で再放送しているのをちらっと見た事があるぐらいで、 1エピソードを通しで見るのは初だったのですが、Aパートは女児向けアニメの文法で進んでいたと思ったら、 Bパートでいきなり変身ヒーロー物の文法で展開し、物語を貫く、凄いアップダウンに驚愕(笑) 急にスピード感も変わるし。
 例えば全て変身ヒーロー物の文法でやるなら、冒頭に忍び寄る闇の存在を匂わせるなどするわけですが、そういう段取りが一切無くて、 Aパートは全面的に女児向けのフックをゆったり散りばめたと思ったら、アイキャッチ前に悪い人が出てきて、 Bパートは不思議生物との出会いから、え? 殴り合いで解決するの? という凄いジェットコースター。
 これはもう、(『セーラームーン』辺りに象徴される)元々はやや異質な物を掛け合わせて作っていた文法が、 お約束と化して“《プリキュア》という文法”になってしまっているのでしょうが、凄い悪魔合体だなぁ。
 ・「プリンセスになりたい」という夢を持つ女の子が、みんなの夢を守る為にプリンセスとなって戦う話
 ・「ヒーローになりたい」という夢を持つ男の子が、みんなの夢を守る為にヒーローとなって戦う話
 と、Bパートにおける主人公の台詞の中の「プリンセス」という単語を全て「ヒーロー」に置き換えても通用してしまうわけですが、 主な対象年齢を考えた時の男女差って意外とその程度のものなのだろうか、など、色々と考えさせられます。 その辺りの差異は今後の物語の中でつけられていくのかもですが。
 これは、別に女の子がヒーローとして戦って悪いわけではなく、プリンセスが悪と戦っても良いわけだけど、 主人公が夢見ていたプリンセスと、Bパートのプリンセスって同じものとは思えなくて、 「女の子にとってのプリンセス」と「男の子にとってのヒーロー」が同じ描かれ方でいいのか?  そこで「プリンセスとは何か?」というのを描けないと、物語としてはヒーローの代替品にしかなっていないのではないか、という話。 女の子向け作品って普段見ないので、他作品や歴史的にその辺りどうなのかはわかりませんし、 “女の子向けヒーロー”の物語としてそれでいいというのなら、それでいいのですけど。
 ただまあ、そんな事を言いつつ、ヒーロー物の文法になった途端に凄くすんなり飲み込める自分はとても駄目だと思いました(笑)
 或いは私が勝手に、事象を全てヒーロー物の文法に置き換えすぎなのかもしれないですが。
 夢を嘲笑い、夢を閉ざす事で怪物を生み出す敵、というのは色々と物語のバリエーションを作れそうで面白い設定。 悪役もしっかり印象深い。
 演出としては、もう少しバンクシーンを本編に馴染ませてほしかったですが(バンクに入る時に直前のシーンからの流れがぶった切られすぎで、 初回ですし、もうちょっと予備動作が欲しかった)、バンクのあるアニメも久々に見るので、こんなものでありましょうか。
 にしても、学園物で、褐色紫髪の王子に、画面の四隅でレース模様が回転しているとか、世界を革命してしまうのか。
 それともパフュームを手にしたものは誰でもプリンセスになれるパラダイス・ロストかもしれないけど!
 主人公役の嶋村侑さんは、腹に力入れた感じの台詞だと、アイーダ様だ、とわかるけど、全く違って凄いなぁ。
 ちなみに一番面白かったのは、合間のCMの
 「攻撃もできちゃう!」
 CM全体の雰囲気から浮いてるけど、やっぱり、そこ、必要なんだ……という(笑)
 とりあえず、しばらく見てみようかと思います(例の如く、急に力尽きるかもしれないけど)。

◆第2話「学園のプリンセス! 登場キュアマーメイド!」◆
(脚本:田中仁 演出:門由利子 作画監督:稲上晃)
 数年ぶりに聞いた気がする、「ざます」。
 そして仲裁に入ったみなみ様は、その流れでナチュラルに入学式をエスケープ。え? あれ? これから、 生徒会長挨拶とかするんじゃないんですか、みなみ様?
 プリンセスプリキュアは3人居る事が判明し、「強く・優しく・美しく」なければ真のプリンセスになれない事を聞いたはるかは、 学園のプリンセスであるみなみ様からプリンセスらしさを学ぼうと、バレエを教えて下さいと弟子入り、 と第1話に続いてプリンセスがゲシュタルト崩壊気味。
 高嶺の花の先輩キャラが、自分に真っ直ぐに向かってくる相手に心を開く、って物凄いギャルゲー展開ですが、 「最初はちょっと怖いと思っていたけど、今は物凄く優しい人だとわかりました」って、面と向かって言ってのける主人公が、 凄まじく、たらし。
 この娘はこの勢いで、全キャラを攻略していくのでしょうか。
 その後、サッカー怪人が登場し、バレエの練習で足をくじいたはるかが苦戦した所をみなみ様が拾ったマジックアイテムでキュアマーメイドに変身して、 ごきげんよう。
 クローズさんの立場が、物凄い勢いで悪くなっていくのであった。
 今回驚いたのは、全寮制のお嬢様学校みたいな雰囲気全開だったノーブル学園に、男子生徒が居た事。 勝手に勘違いしていただけといえばだけなのですが、ちょっとビックリ。

◆第3話「もうさよなら? パフを飼ってはいけません!」◆
(脚本:田中仁 絵コンテ:田中孝行 演出:岩井隆央 作画監督:フランシス・カネダ/アリス・ナリオ)
 そうだよ、世の中には、犬が嫌いな人だって居るんだよ!
 という、全国の、世の中の人はみんな犬が好きだと思っている犬好きに向けたメッセージは良かったと思います(笑)
 前回の「ざます」に続いて、同室の女の子が「眼鏡外すと目が3」というのは、親世代向けのネタなのか……? ただ、 「目が3」は今やると、ギャグ通り越して悪意に見えるので、やらない方が良かった気がします(^^;
 思ったより汗臭いノーブル学園では柔道部の存在が許されている事が発覚し、新たに登場した幹部が柔道部員を怪人に変えるが、 ごきげんよう。色々あって、犬は女子寮で飼われる事になるのだった。
 とりあえず、2、3話と、女の子達がきゃっきゃうふふしている間に、 その辺りを汗だくで走り回っている男が適当に怪人にされるという雑な展開なのですが、そう、夢見る乙女にとって、 王子様でない男の存在価値など、ゴミ同然……! というこの美しくも残酷な世界。
 パーフェクトビューティの筈のみなみ様は、寮生達の前ではるかに親しげに話しかけて嫉妬の渦を巻き起こさせ、 割と空気読めない警報が発令。まさかこの世界でも、青はざ(以下検閲)

◆第4話「キラキラきららはキュアトゥインクル?」◆
(脚本:田中仁 演出:座古明史 作画監督:爲我井克美)
 「おちょくりやがってぇ」
 「――あたしの夢を、邪魔するからだよ」
 「夢? おまえの夢なんてどうせ、大した夢じゃねえだろぉ!」
 「大した夢だよ! 天ノ川きららの夢は、この星空みたいに、きらきら輝いてるんだから!」

 真・主人公、現る。

 「プリンセスにならんか?」

 「断る」

 の拒否イベントに始まり、生身で巨大な敵と対峙→建機で攻撃→信念を持って悪役に啖呵→仁王立ちで天を指さす→変身、 と溢れるヒーロー力ですキュアトゥインクル。
 格好いい。
 はるかは、夢に向かって一直線ではあるものの、その夢自体がどうもふわふわとしている。
 みなみ様は、信念に裏打ちされているというよりは天然でハイスペックなノブレスオブリージュの人っぽい。
 という中で、中学生にして「自分の生き方」を持っているキャラクターが出てくれば格好良く見えるのは当然なのですが、 そんな2人との現時点での違いが大きく打ち出された事もあって、物凄い男前に。
 これは当然、どこかふんわかしたはるかの夢との対比でしょうし、そこをどう描くのか、 そしてはるかは如何にきららの「生き方」を攻略するのか、次回、お手並み拝見で楽しみです。
 「私の夢は……プリン」
 は絶対、
 (……ああ、プリンをバケツ一杯食べたいとか、あれね)
 と思われているから、今後の選択肢は慎重に選べ、はるか!
 きららのプリキュア拒否にはるかと同レベルで驚いているみなみ様は、善意は他者に通じるし、善行は人間の責務であり、 能力ある人間は他者の期待に応えなくてはならない、と考えているタイプなのかなぁ。そう思うと、 2年生の1学期に生徒会長やっているのも納得です。てっきり3年生だと思っていましたよみなみ様。
 前回色々とあれでしたが、今回は物語も演出面も良かったです。
 2話3話と、ストーリーイベント起こすのが最優先でエピソードの展開は雑だったのですが、今回は、 同世代のジュニアモデルへの憧れ→街に出てお洒落な服や靴に目を輝かせる→(はじめての買い食い)と、 女の子らしいキラキラを積み上げた上で後半のファッションショーに繋げ、ジュニアモデルの怪人化ときららの変身、 という流れも綺麗にまとまりました。
 トゥインクルの、星空をバックにクレーンを駆け上がり、急降下キック、という演出も良かった。
 作画的な捨て回を作って重要回にリソースを回す、というのは如何にも1年物っぽくて、なんだか、懐かしい(笑)
 惜しむらくは変身バンクで、「煌めく星のプリンセス、キュアトゥインクル」の名乗りまではモデル属性でアリとして、 その後の「お覚悟は、よろしくて」の方は、プリンセスの役割を既に理解している内容含め、どうにも違和感。
 はるかは1人目の約束事でまあ仕方がない、みなみ様の場合は逆に「お覚悟は、よろしくて」の方に違和感が無いのでまあ良しとして、 3人目でもありますし、少し変則で、ここは次回以降に回しても良かったような。真のパーティインがこれからなら、 尚更そういう工夫はあって良かったように思います。

◆第5話「3人でGO! 私たちプリンセスプリキュア」◆
(脚本:田中仁 演出:鎌谷悠 作画監督:赤田信人/上野ケン)
 「キュアトゥインクルになった天ノ川さん、凄く素敵だった〜。本当に星のプリンセスって感じだったね」
 前回のトゥインクルの打撃シーンを思い浮かべながら、頬を染めるはるか。
 ……本当に、この子の中の、「プリンセス」像は、いったい。
 「私、天ノ川さんに、プリキュアになってほしい!」
 …………もしかしてこの子、ネジが数本飛んでいるのか。
 世の中には変身ヒーローに勧誘されて、命を落とす人だって居るんですよ!!
 きららをプリキュアに勧誘するはるかは、一日スケジュール体験できららの忙しさとモデルへの情熱を知り、 きららを応援する事にして綺麗さっぱり引き下がる……とここは性格の良さが出て良かったところ。
 「公私を混同するなと言っただろう。私たちは、プリキュアなんだ」とか言い出さなくてホッとしました(待て)
 一方きららは、はるかがあっさり引き下がった上でこれまでと変わらず自分に接してくれる事に戸惑い、 大事なオーディションに受かった事をきっかけに、そのオーディションに合格するアドバイスをくれ、 自分を応援してくれるはるかの為に、200%の力でプリキュアもこなす事を決意する。
 ゼツボーグに苦戦する2人、そこへ走るきらら、というのは定番の盛り上がる展開なのですが、 ここまでの今作の戦闘が良くも悪くもアクロバットな打撃戦オンリーな為、前回今回と突然物凄く2人が苦戦しているのが、 すんなり飲み込みにくかったのは残念な所。数字のブロックで肉弾戦の間合いに入れない、という演出意図だったのかとは思うのですが、 今ひとつ上手く伝わってきませんでした。
 また、「2人の苦戦」と「きららがプリキュアになる決意」は意図的に分けたと思われ、2人の苦戦とは関係無く、 きららはきららの意志でプリキュアになり、あくまで「結果的に2人のピンチを助ける事になる」 という形で描きたかったのだと思うのですが、映像の流れがお約束に引っ張られすぎて「苦戦している2人を助ける為にプリキュアになる」 という形に見えてしまったのは、ちょっと上手く行かなかったかな、と思う所。
 まあ、背後からの握り拳でゼツボーグを一撃で沈めるトゥインクル(男前)は格好良かったですが。
 市街地(学園から離れた場所)にゼツボーグを出したり、不思議生物に2人のピンチを伝言させるという手段を使っていない所など、 意図的にそこを繋げなかったと思われるので、出来上がったものがやや中途半端になってしまったのは、惜しい。
 で、あくまで人助けではなく、自発的にプリキュアとなったきららの背中を押したもの、 それは……友 達 い な か っ た !
 ……としか理解できないけど、それでいいのか(笑)
 興味本位で近づいてくる相手に冷たくしていたり、仕事が忙しくて友達付き合いできない結果、 という事なのでしょうが……そういえば確かに、前回今回と、きららの周囲には誰も居ませんでした。
 で、今回のオチを見る限り、みなみ様も…………友 達 い な か っ た !
 そういえばみなみ様、同学年の友人と親しげに歩いているような描写が無かった……!
 というわけで、全方位たらしモードの主人公が友達の居ない2人を籠絡して、プリンセスプリキュアは遂に3人揃うのでありました。
 一人より二人がいいさ 二人より三人がいい 力も夢も そして勇気も それだけ強く でかくなる!
 きららとの対比で、はるかの「夢(プリンセス)」についてもう少し固めるのかと思ったのですが、そこに関してはあまり踏み込まず。 むしろますます、プリンセス=打撃系ヒーローという図式が固まりつつありますが、それでいいのか。
 次回、新展開の予感。

◆第6話「レッスンスタート! めざせグランプリンセス!」◆
(脚本:高橋ナツコ 演出:三塚雅人 作画監督:河野浩之)
 OPが映画宣伝モードに。
 編集の関係で、
 〔美形と踊っていい雰囲気になる赤い髪の子→「ちょっと待ったー」と壁をぶちやぶって他のプリキュアが乱入しバトルに→ それを観戦してやんやと喝采を浴びせる不思議生物たち〕
 という、少女達のキャットファイトを娯楽にする異世界のごろつきども、という 地獄絵図のような構成になっていますが、それでいいのでしょうか。
 それともこれは、痛烈な風刺なのか?!(^^;
 新たな不思議生物、マジカルティーチャー、ミス・シャムールが登場。
 「強さ・優しさ・美しさを兼ね備えた究極のプリンセス、グランプリンセスを目指せ」という目標が提示されたのは良いのですが、 どうしてゼツボーグとの戦闘と並行してグランプリンセスを目指さなくてはいけないのか、 グランプリンセスになると何かいい事があるのか、という理由の紐付けが一切されない為、 はるかが「プリンセス」という単語に騙されている感じだけが加速していきます(笑)
 この子このままだと、将来間違いなく、ネズミ講とかに引っかかる!
 みなみときららにとって「グランプリンセス修行」が完全にはるかの付き合いになってしまって、 これは「プリキュアの戦い」と関連付けてくれないと困るな……と思っていたら、Bパートで王子と通信が繋がり、 王国の秘宝である12のドレスアップキーがはるか達の世界に飛んだ事、それを集めてグランプリンセスが用いる事で、 悪の女王が絶望の門に封じた王国の人々の夢が解放されるであろう事、という目的と繋がり、ほっと一安心。
 ……はいいとして、はるかが持っていたドレスアップキーは、10年以上前に単独で王国を飛び出していった物 (カナタが幼いはるかと出会ったのは、ドレスアップキーを回収しようとしたその時)であると判明し、王子、 キーとはるかが出会う運命だったノリではるかに渡して帰ってきてしまったとの事なのですが………… 王国が侵略されたの、それが原因では。
 まあ王子、どうやらひとりレジスタンス遂行中のようなので、 〔《統率》80/《武勇》95/《政治》10/《知略》5〕ぐらいのステータスの人なのかもしれない。
 戦って、勝てばいいのだ!
 王国におけるプリンセス像が肉弾系ヒーローなのも、これで辻褄が合いました。
 そう、人の上に立つ者に必要なのは、全てを超える圧倒的パワァーーーーー!!
 この世には、支配する者とされる者、どちらかしかないのだ!
 新たな幹部ロックに、今回も汗臭い野球男子が大雑把に怪人の素体とされ、プリンセスプリキュア初めての3人揃い踏み。 2人の時もやっていましたが、単体バンクを順々に流すのではなく、小刻みに混ぜて使うというのは、面白い。 そしてやっぱり「強さ」担当だったキュアフローラは、 窮地をジャイアントスイングで逆転。
 黄「うちのフローラを、甘く見ないでよねっ」
 青「遅咲きの花ほど、大輪なものなのよっ」

 持てる者達の残酷な余裕……!

 野球ボーグを撃破したプリキュア達はナイター照明の上でヒーロー立ちし、ドレスアップキーの探索とグランプリンセスを目指す、 という二つの目標の為に励む事を誓うのであった。
 ドレスアップキーは12種類、OPも考えると、これから追加戦士が加わって、4人×3フォームになるのかしら。 3人揃った所で「プリンセスプリキュアとして戦う理由」が明示され、設定面がスッキリ。そして王国が戦う集団だと判明し、 プリンセスの定義付けもスッキリ(え?)
 今後はいつ、「何あのちんくしゃ、みなみ様に取り入った上にきららさんとまで親しくしてるなんて、上手いことやったわねむきー」 から始まる寮での陰湿な嫌がらせという展開が発生するのか、楽しみです(わくわく)。

→〔<第1部>(2)へ続く〕

(2016年3月22日)
(2017年4月8日 改訂)
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